2023.09.23

大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(PHP新書)買いました

以前紹介しました↓

2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』9月16日発売 (「新生活」版)

 

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16

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を買ってきました。
わがまちでは、19日に本屋さんに並んでいました。

またペラペラとみただけですので、
本格的な紹介はまたいずれということで、今回は、第一印象とでもいますか、「まえがき」「目次」他、全体をパラパラッとのぞいてみた印象をいくつか書いておきましょう。

 

 ●タイトルについて

まずは、タイトルですね。
かなり工夫の跡が見られます。

著者の大路さんから以前どこかでお聞きしたと思うのですが、前著のタイトルに「左利き」という言葉を入れなかったのは失敗だった、というのです。

前著――
『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館 1998/10/1

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確かに「左利き」のキーワードでの検索ではなかなか引っかかりにくいですよね。

「左利き」に何らかの意味で興味を持っている人であっても、そのストレートなキーワードでの検索では届きにくくなります。

今回はズバリ「左利き」入っているので、その点はクリアしています。

 

次に「言い分」という表現。

これは工夫でしょうね。
私なら素直に「主張」としますね。

「言い分」の意味を調べますと、ネットの「コトバンク」(精選版 日本国語大辞典)では、

① 主張したい事柄。言うべき箇条。また、不満で、言いたい事柄。不平。言い条。

というふうに、ズバリ「主張」という意味もありますが、「不満」とか「不平」といった意味合いもあります。

もちろん、左利きの立場から「不満」や「不平」を主張することもあります。
特に現状の社会の在り方が「右利き社会」(右利きが優先される社会/右利きに偏重した社会)といわれるなかでは、こういう主張も多いとは思います。

ただ、それをタイトルに付けるかと問われると、私は回避したいという気持ちになります。
「売り言葉に買い言葉」ではありませんが、人によっては「不満」「不平」と受け取って嫌な感じを受ける、ということもありそうです。
ケンカはしたくないので、私は避けたいと思いますね。

「少しぐらい強くいわないと無視されますよ」という考えもあるかもしれません。

「まえがき」のおしまいの方にこうあります。

「左利きであることの不便さを訴える若年層が存在するいっぽうで、意外にもソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)の観点から左利きに関心を示す右利きが増えている」という現実でした。/そう、今まさに「右利き社会」のなかで「左利きの言い分」を分かち合い、右利きと左利きが共感し合いつつ、左利きにやさしい社会へと向かう千載一遇のチャンス到来です。》p.5

今が「左利きの言い分」――たぶんに「不満」「不平」を含む――を届けるチャンスだ、というのです。

それは「あり」だと思います。

 

 ●内容の概要

さて内容についてですが、まず「目次」を掲げておきましょう。

まえがき
序章 左利きはどのくらい存在し、なぜ生まれたのか
第一章 左利きの苦労
第二章 世界の宗教は左利きをどう捉えたか
第三章 日本における左利きの歴史
第四章 左利きの脳と身体はすぐれているのか
第五章 左利きの才人、偉人たち
第六章 「右利き社会」から「左利きにやさしい社会」づくり
主要参考文献
左利きのためのサポートファイル

*各章末に【注釈】が付されています。

 

内容は、まず「序章」では、左利きの割合、左利きの定義、左利きの成因、利き手の決まる時期、といった左利き/利き手の科学について。
第一章からは、左利きの前著も踏まえて、左利きの歴史。
左利きの苦難の歴史が綴られている、というところです。

正直この部分を読んでいると、私はちょっと平静ではいられなくなります。
この本を読むのは、つらいところがあります。

著者は私より13年後の生まれで(この本には生年が書かれていませんが、前著には「1967年生まれ」とありました。ちなみに筆者・私は1954年生まれ、昭和30年代に幼少期を過ごしました)、著者には「歴史」になっているような事項でも、私には頭では歴史になっていても、心はまだ「生(なま)」の感覚が残っている部分もあり、かなり厳しい思い出につながるものもあるのです。

第四章・五章は、左利きの脳の話と、左利きの偉人/才人、有名人のお話。

第六章は、いよいよ左利きの現状から未来へのアプローチです。
まずは「右利き社会」の現実に気づき、左利きの生活向上のために「(左手)左利き用品」や「(左右)ユニバーサルデザイン」製品の普及について、左利きを取り巻く新たな「サイレントストレス」について、左利きの人への言葉、左利きの子の育児について、左手書字について、右利きの人との友愛精神と未来作りについて、といった私が一番気になる部分が語られます。

 

 ●全編を通して感じたこと

先に左利きの苦難の歴史のくだりを読むのが、つらいと書きました。

それだけでなく、全編パラパラッと目を通した程度ですが、そうして読んでいるだけでも、ちょっと腹が立つといいますか、憤りを感じるといいますか、気持ちがいらだってくるのです。

これは、大路さんの考え方や書き方のせいというのではなく、要するに「この社会が間違っている」という事実に、です。
さらにいえば、その現状に甘んじている人が多すぎる、という現実に対する苛立ちですね。

若い人で左利きの不便を訴える人が増えているし、右利きの人で共感してくれる人も増えているそうですが、もっと強力に「社会を変える」という行動に進んでくれる人が増えてほしいものです。

変えようとしなければ、社会は変わりません。

昔どこかの国の左利きの大統領候補で「チェンジ」といって当選した人がいました。

まさに、必要なのは「チェンジ」です。
そして「チェンジ」に向かって「チャレンジ」することが大事です。

もちろん、暴力や武力で変えるというのではなく、言論と“政治”的な行動を通して、ですが。

 

 ●巻末の「主要参考文献」と章末の「注釈」を読む楽しみ

この本に限らず、私がこれらのリアル系の本(論文や硬派のエッセイ系の文章やドキュメント、ノンフィクションなど)を読むときに一番楽しみにしているのが、巻末の「主要参考文献」の類いを見ることです。
この本では章末に「注釈」がついていて、これも楽しみです。

どういう文献やデータを根拠として書かれているのか、とか、さらなるこちらの興味を誘うような文献等の情報源を知ることができます。
今後こういう事柄に関してはどのような本を読んでみればいいのか、と大いに参考になるからです。

前著の「主要参考文献」とかぶっている部分があるのは当然ですが、25年の間にどういう本や情報を採取し読み込まれたのかなど、私自身の手持ちのデータと照らし合わせながら見てみるのは勉強になります。

 

 ●「左利きのためのサポートファイル」にわがメルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」が!

最後に、前著同様、巻末に左利きの関連情報「左利きのためのサポートファイル」が掲載されています。
「左利き教材メソッド」(書道・手縫い・ギター)、「左利き専用品」(通販・リアルの販売店)「左利き友愛団体」(日本左利き協会他)、「左利きのためのメールマガジン」(わが左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkiii』)。

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ここに掲載していただけて、嬉しく思います。

*追記: 日本左利き協会のサイトの「左利き便利帳」に、わが左利きメルマガ&このブログが紹介されました。
左利き便利帳005:左利きライフ研究家・レフティやすおさんのメルマガとブログ

 

反面、ネットの時代にもかかわらず、大路さんの御眼鏡に適うこの手の総合的な<左利きサイト>等の紹介がないのは、やはり寂しいと感じます。
25年前にはあった、あるいはその後生まれて長年頑張っていた、そういう左利きサイトというものがありました。

今は、鉄板級のそういうオススメサイトがないというのは、非常に残念なことです。

出でよ、新人左利き研究家&活動家!

 

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2023.09.16

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii創刊18周年記念号-第649号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第649号(No.649) 2023/9/16
「創刊18周年記念号――明日のために」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第649号(No.649) 2023/9/16
「創刊18周年記念号――明日のために」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今月は、2005.9.28の創刊号以来、18年周年となります。

 

20239hikkiimagmag

 

 当初は、軽い気持ちで週刊としました。
 実際書き始めると、なかなか大変で、徐々に手抜きとなり、
 月4回、そして現状の月2回となりました。
 さらに8月は、猛暑を理由に、合併号で月一回なんてことにも……。 

 そういうわけで、週刊とうたいながら、18周年で649号なのです。

 

 18年といいますと、今では成人年齢となります。
 始めたころに生まれたお子さんも今では大人ということです。

 このようなメルマガでも、左利きの子の育児のアドバイスの
 何かしらの足しにしてくださった方がいたとしますと、
 もうそのお子さんは、二十歳を過ぎていることでしょう。

 どのように育っていることでしょうか。

 幸か不幸か、たいしたことはできていないので、
 マイナスにはなっていないことでしょう。

 そして、少しでもお役に立っていたのなら、幸いです。

 ということもあり、
 今回は、暑さの手抜き? で、記念放談とします。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

  創刊18周年記念号――明日のために

  「汗で書く」―「汗をかく」ぐらいの気持ちで書き続けたい

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●初心忘るべからず

創刊号の編集後記にこう書きました。

 

 《=●レフティやすおの編集後記●=======

 色々迷った末の出発です。これからも多少の変更があるでしょう。
 しかし左利きの人のお役に立ちたいという思いは変わりません。
 左利きの人の力になりたい、そして幼い頃の自分のように左利きで
 嫌な思いをする人がいなくなるように、そう願って左利きの活動を
 続けています。
 これからもよろしくお付き合いのほどを!》

 

あれから18年が過ぎてしまいました。
今も変わらぬ思いは、

 左利きの子供たちに自分と同じ嫌な思いをして欲しくない

ということです。

そのために何かできることはないか、と始めたのがこのメルマガです。

ブログは2003年12月25日、
ホームページは2004年1月1日に始めていました。

それだけでは何かしら満足できず、もっと能動的なイメージの活動を、
と思って始めたのです。

 ・・・

「初心忘るべからず」の初出は、
世阿弥の「花鏡(かきょう)」(1424年)だそうです。

習い始めのころの謙虚で真剣な気持ちを忘れてはならない、の意。
(出典 小学館 デジタル大辞泉)

から、

「何かを始めた最初のころの気持ちを忘れてはいけない、
 という戒めのことば」

となったといいます。

始めたときの思いを今も胸に秘めて、メルマガを続けていきます。

 

 

 ●当時を振り返って

当時、左利きメルマガを出している人がいたのです。

記憶で書いてしまいますが、なんとなく気が合う感じがして、
思いつくネタをいくつか提供しました。

まぐまぐの先輩でもあり「左利きメルマガ」の先輩でもある
渡瀬謙さんの発行する『レフティサーブ』がそれでした。

(のちに、
 『左利きの人々』(渡瀬 けん:名義 中経の文庫)

 にまとめられた。)

 

メルマガという、こういうやり方もあるのだ、と思い、
ちょっと相談したうえで始めました。

創刊号を書いて「まぐまぐ!」に送り審査の上、発行にこぎ着けました。
渡瀬さんに報告をすると、早速メルマガで紹介していただき、
一気に68部でスタートできました。

 

その後、教師生活23年、現・教育評論家の親野智可等さんの
家庭教育メルマガ『親力で決まる子供の将来』
https://www.mag2.com/m/0000119482?l=iib0008fb8
(「左利きを直す必要はない」という文章を書いておられるのを知り、
 連絡をし、左利き対応の100ます計算というのを実践されている先生が
 いることをお知らせしたり、時折お便りをしていました。)
でも紹介していただき、
またまた一気に300あまりまで伸ばすことができました。

その後は、私の力が及ばず、発行部数は減る一方です。

卒業される読者も多く、現在は200ちょいになっています。
左利きのお子さまを持つ親御さんの場合、
お子様がある程度大きくなられますと、自然と卒業されていくようです。

それはちょっと悲しいことなのですが、
当面の問題が解消されれば、人はそうなってしまうものなのですね。

喉ものと過ぎれば熱さを忘れる、とも申します。

本音を言いますと、親御さんたちにはいつまでも読者のままで、
左利きの子(および人)の味方でいて欲しいのですけれど……。

 

 ●大路直哉さんの新刊『左利きの言い分』にこのメルマガも…

基本、読者を想定して書いているつもりですけれど、
どうしてもその時その時の自分自身の思いが先行して、
読者の方々の意識からずれることも多々あるのかもしれません。

反響を待ちながらも、なかなかいただけなくて、
その辺は私の悪い癖が出てしまっているせいかもしれませんね。

お便りをいただけたら嬉しくて、許可も得ずに書いてしまったり……。
反省していますが、遅かりし、かも……。

 

もう一度初心に戻って、
気を入れてやっていこうと思います。

そういうモチベーションを上げるいい機会になりそうな、
ニュースがあります。

9月16日今日ですが、大路直哉さんの左利きの本が発売されます。
この本の巻末情報欄に、
このメルマガのことも載せていただくことになっています。

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉
PHP新書

 

『見えざる左手』(三五館)、共著『左ききでいこう!』
(フェリシモ出版)につづく、著者三冊目の左利き本。
最初の社会学的アプローチの『見えざる左手』からは、ちょうど25年。

Amazonの情報によりますと、
左利きの人たちが経験してきた、歴史的な出来事やその背景も含めて、
左利きについての世間的な話題をまとめた、
最新版の左利き入門書(応援本)となっているように思います。

楽しみな一冊です。

 

 ●ネット活動20年の変化

このメルマガは18年ですが、ネット活動は20年になります。

この20年の変化を思い起こしてみますと、
ネット環境が電話回線から光になったということは大きかった変化です。
オフラインで、とかでなく、そのままネットサーフィンというんですか、
検索などできるのは、大きな変化です。

そして、当初はパソコン向けでよかったのが、
今ではスマホ向けを考えなければならなくなっている、ということ。

私のネット活動は、今はまだパソコン向けというレベルですね。
スマホ対応しないと、取り残されていくのでしょう。
このメルマガも、部数を伸ばすことはむずかしいでしょうね。

 

 ●20年間でいちばんうれしかったこと――教科書に左手書字例

ここで左利きを取り巻く環境の変化について見ておきましょう。

20年で変わったといえば変わっています。
左利きを否定されることが少なくなったのは事実でしょう。

ネット活動を始めたころは、例えば箸使いについていいますと、
左手で箸を持つことは日本の食事作法として認められない、
という意見が強く残っていました。

左手用の躾箸(練習箸)を作っていないメーカーさんがありました。
日本の作法として認められません、という意見です。

裏を取るように、作法・エチケットの本で、
悪い箸使いの一例として「左箸」を上げている人がいました。

今ではそういう例を見つけるのはむずかしくなっています。
実際には(本心は)どうかわかりませんが、
表向きはなくなってきています。

駅の自動改札も挿入式からタッチ式になっている部分もあるようです。
最新型では生体認証装置付きも出てきているようで、
少しは改善されてきているのかもしれません。

 

一番嬉しかった変化は、2020年に、このメルマガで長年訴え続けてきた
「小学書写教科書に左手書字例を!」
を実現させた教科書が誕生したことでした。

東京書籍の令和2年度用の小学校教科書「新しい書写」がそれでした。

https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou_current/shosha/
--
特色 3 書くことが楽しくなる教科書
全ての子供に「分かった!」「できた!」の喜びを。
 特別支援教育への配慮
 色覚多様性への配慮
 左利きへの配慮
--
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou_current/shosha/data/shosha_m_pamph_04.pdf
PDFファイル

230909-tousho-shosha-kyoukasho

あたらしいしょしゃ 1 [令和2年度]
(小学校国語科書写用 文部科学省検定済教科書)‎ 東京書籍 2019/3/1

200204-tousho-atarasiishosha-shosha_1

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2020.2.9
左利きへの配慮がなされた東京書籍・小学校教科書
「新しい書写 2年度用」
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/02/post-0fbe38.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/dd08c16d81a211f5c60266bf57191f20

 

 ●10年ごとに一区切り

10年ぐらいの間隔で、
左利きの本があれこれと出版されることがあるようです。

理由として考えられることは、世代交代が進むということでしょうか。
十年一昔といいますように、十年もたちますと小学生も成人となり、
その親の世代は人生の次のステージへと進み、
かわって新しい世代が子を持つ親となります。

左利きや利き手についての知見は、学校の教科書には含まれず、
その知識や経験は、一世代毎に個人的に学ばれては失われて行き、
次の世代がまた新たに個人的に学び直すことになります。

そういう状況のなかで、
左利きや利き手に関する知識を本に求める人々が現れ、
そのニーズに応えるように、
こういう現象が起きるのではないか、と思われます。

以下に、ここ20年ほど、主だった左利き本の年表をまとめてみました。

 

2000年前後――

(1998 平成10)
10/『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提案』大路直哉 三五館
(1999 平成11)5/
『おいしい左きき』造事務所編著 イーハトーブ出版
(2000 平成12)
7/『左ききでいこう!―愛すべき二一世紀の個性のために―』
 フェリシモ左利き友の会、大路直哉 フェリシモ出版
(2001 平成13)
2/『あなたは完全な右(左)利き? それとも○○利き?』鮫島良文
 文芸社
(2002 平成14)
6/『左利きで行こう! 目からウロコの左利きツアー』
 リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー
 丸橋良雄、尾島真奈美訳 北星堂書店

 

2010年前後――

(2005 平成17)
12/1『左ききのたみやさん。―哀愁ただよう左きき爆笑エッセイ』
たみやともか 宝島社 
(2006 平成18)
7/『「左利き」は天才? 利き手をめぐる脳と進化の謎』
デイヴィッド・ウォルマン/著 梶山あゆみ/訳 日本経済新聞社
10/『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス∥著
講談社ブルーバックス 
(2008 平成20)
7/20『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN選書
12/6『左ききのトリセツ』貫吉達郎 グラフ社
(2009 平成21)
1/1『左利きの人々 悲しくも笑える』渡瀬 けん/著 中経の文庫
1/16『モノ・マガジン』2009年2月2日号「特集・左利きグッズ大図鑑」
ワールドフォトプレス
5/『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』
ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍
6/『神々の左手―世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト著
 スタジオタッククリエイティブ
8/31『左利きギターコード1008 -これは便利!左利きギタリスト御用達-』
中央アート
(2010 平成22)
3/5『選ばれし民 左利き』インフォレスト
(2014 平成26)
12/18『ぼくは左きき 本当の自分であるために』度会金孝
(わたらいかねたか)/著 日本機関紙出版センター

 

2020年前後――

(2017 平成29)
2/7『左利きあるある 右利きないない』左 来人/著 小山 健/イラスト
ポプラ社
(2018 平成30)
8/31『左利きの本【左利き専用メジャー&定規つき】』宝島社e-MOOK 
10/18『左利き専用 綺麗な字が書けるペン字ドリル』岡田崇花/著
ブティック社・ブティックムック
(2020 令和2)
7/23『左利き用 誰でも一瞬で字がうまくなる大人のペン字練習帳』
萩原 季実子/著 アスコム
(2021 令和3)
3/14『左利きギター専用! ギターコードブック』
ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
9/29『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き
「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社
10/7『ヒミツのひだりききクラブ (レアキッズのための絵本)』
キリーロバ・ナージャ/著 古谷萌, 五十嵐淳子/イラスト 文響社
(2022 令和4)
1/10『左利き用100ページのギター弾き語りノート&204パターンの
 ギターコードブック』楽譜乃音/著 Independently published
5/16『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫
7/29『眠れなくなるほど面白い 図解 左利きの話』八田武志/監修
日本文芸社
(2023 令和5)
7/19『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』佐野 純子/著
日東書院本社

★新刊★
9/16『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著
PHP新書

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』
9月16日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-64dede.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7baf11f00484a6f32b9d06781490e8bf 

★新刊★
10/24『左利きさんのためのはじめての棒針編み』佐野 純子/著
日東書院本社

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.11
佐野純子さんの左利き編み物本の第二弾
『左利きさんのためのはじめての棒針編み』10月24日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-e43f26.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a8d6067ceae1b5d06f69e2e65d3c82ba 

 

最近の傾向として、実用書も色々と出版されるようになってきました。
これは、啓蒙書の類いの時代からより実践的な実用書の時代への変化で、
左利きが世間で一般化してきた反映と言えるかもしれません。
よい傾向です。

 

 ●最後に――明日のために、今書くこと

このメルマガは先にも書きましたように、今も陸続と生まれてくる
左利きの子供たちが健やかに育つことができる環境を整備する
その一助となることを願って書き続けています。

あと何年書き続けることができるのかわかりませんが、
最期の時が来るまで、その時その時精一杯できることを、
と考えています。

ニーチェは、血をもって書け、といっています。

 《およそ書かれたもののなかで、私が愛するのは、
  血をもって書かれたものだけだ。血をもって書け。
  そうすれば君は、
  血こそ精神だということが身に沁みて分かるだろう。》
  『ツァラトゥストラはこう言った』フリードリヒ・ニーチェ
    森一郎訳 講談社学術文庫 2023/6/12
   「第一部 ツァラトゥストラは語る」<読むことと書くこと>p.66

「血でもって書く」とまでは行かないかもしれませんが、
「汗で書く」―「汗をかく」ぐらいなら私にもできそうです。

それぐらいの意気込みで無理せず続けていきたいと思っています。

では、これからもよろしくお願いいたします。

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本誌では、「創刊18周年記念号――明日のために」と題して、今回も全紹介です。

メルマガ18年で649号に達しました。
当初は文字通り週刊でしたが、さすがにしんどくなり、今では月二回発行になりました。
昔は総発行部数を表示するものがありましたよね。
今月は何部、一年で何部に達したとか。
単純に今の発行部数に649をかけると、約130000部になります。
それでどうだ、ということですが。

延べ13万人の人が読んでいる可能性がある、ということですね。
精読者数は1%として1300人、10%なら13000人です。
それでどうだ、ということですが。

これからも最期の日が来るまで頑張ってみようと思います。
これからもよろしくね。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈左利きメルマガ〉カテゴリ

 

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2023.09.02

楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 7月以来の「楽器における左利きの世界」です。
 前回は「『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
 と題して、左利きの人の音楽的才能について、調べてみました。

 今回は、再び<左用ピアノ>への第一歩として、
 鍵盤ハーモニカについて勉強してみようと思います。

 <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクトとして
 やっていけたら、と思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(1)
-コロナ禍で吹奏楽器は…… -
  『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)

私のまちの図書館で、ふさわしい本を見つけました。

 

『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)春秋社 2023/4/19

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長くなりますが、奥付にある著者紹介文を転載します。

南川朱生(ピアノニマス)Minamikawa Akeo (Pianonymous)

1987年生、東京都在住、元IT企業の銀座OL。
日本を代表する鍵盤ハーモニカ奏者・研究家。
世界にも類を見ない、鍵盤ハーモニカの独奏というスタイルで、
多彩なパフォーマンスを行う。
所属カルテット「Tokyo Melodica Orchestra」は
米国を中心にYouTube動画が37万再生を記録し、
英国の世界的ラジオ番組classic fmに取り上げられる。
研究事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」のCEOとして、
大学をはじめとする各所でアカデミックな講習やセミナーを多数実施し、
コロナ禍で開発したリモート学習教材類は
経済産業省サイトに採択・掲載される。
東京都認定パフォーマー「ヘブンアーティスト」資格保有。
これまでにCDを11作品リリースし、
参加アルバムはiTunesインスト部門第2位を記録。
楽器の発展と改善に向け多方面で精力的に活動している。
趣味は日本酒とテコンドー。

経歴だけでもすごいですが、この本の内容がまたスゴい!
まだ目次を見たぐらいですが、
鍵盤ハーモニカのことがすべてわかる本といってよいかと思います。

出版社の紹介文も一部転載しましょう。

《鍵盤ハーモニカに人生を捧げたプロ奏者による、長年の研究の集大成。
 鍵盤ハーモニカの製造の歴史や教育現場での受容、内部構造の秘密、
 そして〈誕生〉の瞬間など、様々なシーンを豊富な資料とともに巡る。
 楽器愛に満ちた、読んで、見て、楽しい究極の一冊。〔口絵2〕

 誰もが知ってる楽器の、誰も知らなかった世界!
 たったひとりの楽器に取り憑かれた人によって、
 その魅力は膨れ上がる!
 ――トクマルシューゴ(ミュージシャン)》

この本を読みながら、
まずは鍵盤ハーモニカについての知識を補充していこうと思います。

そして、<左(利き)用鍵盤ハーモニカ>の可能性を考えてみる予定です。

 

 ●序章から――鍵盤ハーモニカって何楽器?

今回はまず「序章」を簡単にみてみましょう。

<鍵盤ハーモニカは何楽器?>とあります。

鍵盤ハーモニカといってもご存じない方もいらっしゃるでしょう。
私のような世代は、使ったことのない人が大半でしょう。
お子さんがいらっしゃる方は、子供が使っていたよ、
ということはあるでしょうけれど。

本書の第一章の冒頭に、
《大人の方に「小学校で鍵盤ハーモニカを吹いたことがありますか?」
 と問うと》
三十代の人は、《大方「あるある? 懐かしいねぇ」》と答え、
六十代の人は、《ないなぁ、娘と息子はやってたけどねぇ》、
四十代から五十代の人は、「ある派」と「ない派」に分かれるそうです。
「ない派」の人に、小学校では何を演奏していたのですか、と問うと、
「ハーモニカ」と「たて笛」だそうです。

商品名でいいますと、
「ピアニカ」や「メロディオン」という名で出ています。

230902yamahap32e

(画像:国産の鍵盤ハーモニカの代表の一つ、YAMAHA(ヤマハ) ピアニカ P-32E)

 

それなら聞いたことがある、という年配の方もいらっしゃるでしょう。

では、この楽器は「何楽器」に分類されるでしょうか、
というのが最初の話題です。

 《問題:次の楽器は何楽器に属するか答えましょう。》
   ヴァイオリン (  )楽器
   小太鼓    (  )楽器
   トランペット (  )楽器
   フルート   (  )楽器
   鍵盤ハーモニカ(  )楽器

分類条件は、様々ですので、「学校の教科書」で正解とされる回答は、

それぞれ、弦楽器(擦弦楽器)、打楽器、金管楽器、
フルートが引っかけで、金属だけど木管楽器。

で、この鍵盤ハーモニカは? といいますと、

 《ここでは「鍵盤ハーモニカは○○楽器である」
  と片付けてしまうことはせず、
  この楽器の特徴をいくつか洗い出しながら、
  鍵盤ハーモニカの「複数にまたがる定義」、
  通称「ジェネリックな鍵盤ハーモニカの定義(generic melodica)」
を一緒におっていきたいと思います。》

となっています。

「鍵盤ハーモニカ」というぐらいですから、
鍵盤がついているので「鍵盤楽器」という答えも考えられます。

しかし、この楽器の誕生当初は、
鍵盤の代わりにボタンやレバーがついたものもあったそうです。

それでも一応、「ジェネリックな」鍵盤ハーモニカの定義として、
読者がパッと見てピンとくるデザインを優先し、
いったん「鍵盤楽器」としておきましょう、といいます。

次に、この鍵盤を押し下げ、どうすると音が出るかといいますと、
口で息を「吹く」ことで音が出ます。
ハーモニカのように、吸って音を出す場合もあるらしいので、
必ずしも「吹く」とは限らないようですが、
基本的には「吹く」ことで音を出す楽器ということで、
「吹奏楽器」としたい、と著者はいいます。

 

 ●いかにして教育現場に浸透したか

本書は、「第I部 国内歴史篇」が、鍵盤ハーモニカが教育現場で、
一人一台必携の楽器となるまでの歴史を探っています。

戦後、当初はハーモニカが小学生の楽器として普及したわけですが、
音を出すとき、息を吹いたり吸ったりする発音方法があるなど、
むずかしいということで、徐々に現場から消えてゆくことになりました。

輸入品を参考に、国内メーカーが次々と参入します。

音楽の器楽教育を進めるという一種の「国策」もあり、
国内メーカーの努力(開発および営業)もあり、
ピアノが弾ける音楽大学卒の先生にも扱えること、
鍵盤を押すことで決まった音が出せる
(実際には、様々な発音の技法があるらしいのですが)ので、
子供にも簡単ということで、
鍵盤ハーモニカが採用されることになった、ということです。

 

 ●フリーリードを震わせる吹奏楽器

「第II部 内部構造篇」では、
内部の構造、音の出る仕組みを解明します。

<第五章 鍵盤ハーモニカの叫び>によりますと――

結論だけ書きますと、楽器の内部には、それぞれの音に対応する、
フリーリードという金属製の細長い板が鍵盤の数だけ並んでいます。

息を吹きこみますと楽器内全体に空気がたまります。

鍵盤を押しますと、
押された鍵盤に対応する金属板の部屋のバルブだけが開き、
空気が外へ排出されます。
この空気の流れが、個別の金属板を震わせ、その音が鳴ります。

(私の理解が正しければ)こういう仕組みになっています。

230831kenban

(画像:144-145p 発音メカニズムについて――別冊編集後記を参照)

 

 ●「ホーナー社製ボタン式メロディカ」はかわいい

「第III部 海外歴史篇」は、ヨーロッパでの開発の歴史です。

一部で、鍵盤ハーモニカは日本が発祥という説があるそうです。
笙のような楽器がその源とされています。

実際は、世界同時発生的に、
色々なものがあちこちで作られてきたようです。
そのヨーロッパでの歴史を解説しています。
いかにも今ある鍵盤ハーモニカらしいものが誕生したのは、
19世紀頃のようです。

詳細は、本書をお読みいただくのが一番ですね。

 ・・・

本書で見てきた鍵盤ハーモニカで、私が気に入ったのは、
p.38やp.44、p.57の「ホーナー社製ボタン式メロディカ」ですね。
形状も両手を使うところも、かわいいです。

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(画像:p.44「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

230830melodica-p57

(画像:p.57上・中 鈴木楽器製ボタン式「メロディオン(ソプラノ)」
 下「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

このボタン式メロディカに「非常によく似た」ルックスの楽器が
日本のみならず世界中で作られた、といいます。

それだけ魅力的なデザインだった、ということのようで、
のちにホーナー社の広告に
「類似品にご注意」という文言が出るようになったそうです。

詳細はこちらのページ(pp.184-188)

「鍵ハモの楽堂――ボタン式メロディカ、クローズアップ!」

両手で演奏するタイプのようで、白鍵に当たるボタンが右手、
黒鍵に当たるボタンが左手で演奏するようになっています。
キーの配列も演奏自体も基本右手が主体ですが、
少しは左手も使うので、
左利きの人もちょっとぐらいは演奏した気になれるかもしれません。

あくまでも私の追求する理想とする形は、左右反転形の左手用です。

 

 ●<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ

最後に、本書を一読して気になったのが、
「第三章」の<エピローグ>にあった、

コロナ禍で、学校の教育現場では口を直接楽器に触れることや、
飛沫の飛散という、衛生面から使用が制約されている、という点です。

今年の5月以降、規制が解除されてきたものの、現場ではどうなのか、
ちょっと気になります。

さらに、近年は少子化でメーカーの販売数が減っているとか、
今後もかわらず、教育現場で一人一台の楽器として利用されていくのか、
非常に気になります。

コロナ禍でタブレット端末が一人一台携帯されるようになりますと、
画面でキーボードを出して演奏する、
なんて形にならないとも限りません。

そうなると、私の考えていた
<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ、
というプロジェクトが空中分解しかねません。

さて、どうなるのでしょうか。

 ・・・

もちろん、電子キーボードの方が断然開発しやすいとは思うのです。
しかし、現状において、物としての鍵盤ハーモニカの左用を実現して、
ピアノの左用へとつなげてこそ、意義があるという気がします。

なんとかメーカーさんにお願いして実現させたいものです。

要はお金の問題だという意見もあるのです。
でもそれをいいますと左用のお道具の類いの問題は
みなそれに集約してしまいます。

そうではなくて、あくまでも多様性の実現という観点から、
左利き用の楽器を他の左利き用のグッズの類いと同じように、
普及させていきたいと思い、この問題を考えていきたいのです。

 ・・・

次回は、過去のメルマガで、この鍵盤ハーモニカをどう扱ってきたのか、
その辺を振り返ってみたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(15)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」と題して、今回も全紹介です。

今や小学校の教育現場で一般化している楽器、鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。

私自身は、このピアノへつながる第一歩の楽器とされる鍵盤ハーモニカで、左用を採用させて、次にピアノへと進めてゆこうというのが、一つの左用楽器普及への道だと考えているのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2023.08.12

8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文-週刊ヒッキイ第647号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第647号(No.647) 2023/8/12
「8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」

 

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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第647号(No.647) 2023/8/12
「8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」
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 今年も、暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
 今年はまた一段と暑い夏となっています。
 大阪でも連日35度以上、37度、38度という日もあります。

 で、昨年同様、今年の八月も勝手ながら、合併号として、
 第二土曜日(12日、<国際左利きの日>の前日)にお届けします。

 ・・・

 8月13日<国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY>を前に、
 この記念日について、および
 この日に対するマスメディアの報道への注文(?)を
 書いておきましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ 始まりは1976年アメリカ ◆

 8月13日は「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」

-メディアに注文-
  左利き問題への本質的な取り組みを根底に置いて欲しい

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」について

昨年も書いたことなのですが、
8月13日は「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」です。

毎年この日に関しては、ブログ等で書いていますように、
日本語版 Wikipedia「左利きの日」等で紹介されている、

《1992年8月13日、イギリスにある「Left-Handers Club」により制定》

という、“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説は、
あくまでもこの会の「主張」であって、真実ではありません。

正しくは、1976年アメリカで始まった、が正解です。

英語の「International Lefthanders Day」
「International Lefthander's Day」等で検索しますと現れます、
英語版のWikipediaやその他の左利き系サイトには、

(私の英語読解力に誤りなければ)
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカに開店した
左利き用品店のオーナー、ご自身左利きである、
ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、
開店一周年を機に左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を
「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という
記念日に制定したのです。

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた)

 

イギリスの「Left-Handers Club」は、
イギリスの左利き用品専門店「Anything Left-Handed」の顧客を
もとにした左利きの人の会です。
「Anything Left-Handed」は、2018年に開店50周年を迎えたという、
1968年創業の老舗ですが、
当初は右利きの人が始めた隙間狙いの業態でした。
その後、左利きの人がオーナーとなり現在に至るのでした。
ロンドンという大都会での営業ということで、
特に宣伝に知恵を絞らなくても、世界中からお客さんが集まり、
結構経営的には、そこそこだったのでしょうね。

 

一方、州都とはいえ、アメリカの田舎での営業ということで、
1975年に開業した後発のお店であるキャンベルさんの左利き用品店は、
色々な工夫と宣伝が必要だったのかもしれません。

そこで、こういうイベントを考案されたのでしょうか。

イギリスの方は、キャンベルさんちが一足先に始めた
この記念日にあとからのっかったという形でしょうか。
(ほんとうのところは存じませんが……。)

 

 ●<国際左利きの日>の日本での報道について

さて、この8月13日の<国際左利きの日>ですが、
当日、テレビのニュース番組やネットのSNS等で、
「今日は何の日?」的に紹介、取り扱われることがよくあります。

そんな今までに見たテレビや雑誌、ネットの報道や投稿等について、
私の思うところを書いてみます。

 ・・・

先ほども書きましたように、
この日のテレビ番組やネットの投稿などでよくあるのは、
「今日は何の日?」的なニュースです。
それらではもっぱら次のような扱いが為されてきました。

まずはこの記念日について、

(1)「8月13日は<国際左利きの日>ですといい、
左利き用品の普及や生活向上を考える記念日で、先に書きました、
“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説を紹介する。

次に、左利きの人の日常生活での不便について、

(2)左利きの人の日常の不便の具体的な例として、
左利きの人は右手用のハサミの扱いで困るとか、
自動改札機が使いにくいとか、ファミレスのお玉が使いにくい等――
左利きの人の証言を流す。

という形が多いのですね。

(2)に関しましては、もちろん間違いではないのですが、
そもそもなぜ子おような現象が起きるのか、
どのような理由でこれらの左利きの人の不便が生まれるのか、
という根本の考察が見られません。

現象面のみが取り上げられるだけで、
それでは根本的な解決にはつながりません。

ただ単に記念日を取り上げただけの、
「気遣いましたよ」というポーズだけの発信です。

 

 ●「左利きの日」についてのメディア・発信者への注文

ここで、私からの注文です。

(あ)“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説をやめ、
 “1976年アメリカのキャンベル”説の正しい情報に差し替える。

(い)左利き用品の紹介の前に、なぜそのようなものが必要か、
 を「利き手の違い」という本質から解説する。
  
(う)現状の社会は、右利き優先/偏重の社会――「右利き社会」だ、
 という事実を示し、右利きの人は多数派ゆえに「恵まれた存在」だ、
 という認識を明らかにする。

 

 ●誤りを正したいという願い

(あ)“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説をやめ、
 “1976年アメリカのキャンベル”説の正しい情報に差し替える。

冒頭に書きましたように、
日本語版 Wikipedia「左利きの日」等で紹介されている
「1992年イギリス制定」説を鵜呑みにしたかのような、
情報を垂れ流している人たちがいる、というのが
いつも気になっているのです。

とにかく、この日本での「1992年イギリス制定」説はなんとかしたい、
という願いです。
それは何も、イギリスの左利きの会の人がマネした、とかパクったとか、
非難するというのではなく、もっと単純に
「もっと長い歴史があるのですよ」と強調したいということです。

左利きの人たちは、
「もっと昔から不便を解消しようと努力してきたのだ」
という事実を明らかにしてほしいのです。

日本語版 Wikipediaをチェックする係の人もいるらしいのですけれど、
どこにいえばいいのかわかりません。

 

 ●利き手の違いという本質論を

(い)左利き用品の紹介の前に、なぜそのようなものが必要か、
 を「利き手の違い」という本質から解説する。

テレビ番組の「左利きの日」のトピックとして、
左利きの不便について、右利き用の道具を左手で使ったり、
左利きの人のインタヴューを交えたりした動画を流す場合もあります。

左利きの不便について、現象面として確かにそのとおりなのですが、
そもそもなぜそういう状況になっているのか、
という本質について考えて欲しいのです。

 

前号

第646号(No.646) 2023/7/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
2023.7.15
左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ『ぼくはイエローで…』
-週刊ヒッキイ第646号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/07/post-e456f6.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/bef4ad5a52cfa242388eb430fbc39b3f

 

で、ブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のなかの、
エンパシーについて「自分で誰か人の靴を履いてみること」
という場面があります。

それに対して左利きの問題は、
「靴の左右を入れ替えて履く」ようなものだ、と書きました。

「右利き優先/偏重社会」で生きてゆく左利きの生活は、
左右の靴を入れ替えて履くような違和感があるものだ、という意味です。

以前、音楽に関しての号では、『マンウォッチング』にあった、
指組の例を挙げました。

第627号(No.627) 2022/10/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(6)左利きは楽器演奏に不利か?」
2022.10.1
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)
楽器における左利きの世界(6)不利な楽器-週刊ヒッキイ第627号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/10/post-6d2221.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7142edd7f782a8478966aa6006f16d06

 

指組も人により、決まった組み方があり、右手の親指が上になる人、
逆に左手の親指が上になる人がいます。
それを逆に組むと何かしら違和感があり、しっくりきません。
それが利き手の違いに似たようなものだ、と説明しました。
 

『マンウォッチング(上)』デズモンド・モリス 藤田統/訳
 小学館ライブラリー13 1991/11/1
「動作」p.20の指組イラスト

220930manwatching-yubigumi 220930manwatching-yubigumi-2

 

 

昔、左利きの不便について右利きの人に話した際に言われたことは、
「(左利き用の道具がなくて不便だというけれど、
 右手があるのだから、右手用を)右手で使えば済む問題」と。

「利き手・利き側とはなにか」という本質を知解していない発言です。

右利きの人に「どうして右手を使うのですか」と問いかけたとき、
こう答える人がいました。
「右手を使うように教えられたから」と。

例えば箸を使うとか字を書くとかの場合は、
そういうこともあるかもしれません。

実際に、字を書くのは右だけれど、箸は左という左利きの人がいます。
箸を使うというのは食事の際の行動で、早い段階から利用するものです。
一方、字を書くのは小学校に入る前、4、5歳ぐらいからでしょうか。

しかし、そもそも右利きの人の場合は、教えられなくても、
まず右手でものをつかむという行動に出ます。
左利きの子は、自然と左手が出ます。

教える教えないという段階よりも前に、そういう動作をするものです。

そういう利き手・利き側の性質をまずはしっかり理解できるように、
解説してほしいものです。

その上で、「右利き優先/偏重社会」で生きている
左利きの人の不便を伝えて欲しいのです。

 

 ●現状は「右利き優先/偏重社会」という「右利き天国」

(う)現状の社会は、右利き優先/偏重の社会――「右利き社会」だ、
 という事実を示し、右利きの人は多数派ゆえに「恵まれた存在」だ、
 という認識を明らかにする。

「左利きの不便」を裏から見れば、それは「右利きの便利」そのもので、
社会のあらゆる場面で、右利きを想定した状況が作られているのだ、
という事実をしっかり示し、右利きの人がいかに廻られた存在であるか、
ということを明確に示して、理解してほしいものです。

人は、自分が恵まれていると自覚したとき、余裕を持てたとき、
初めて人に「施す」という気持ちになるものです。

恵まれているからこそ、その一部でも人に分けてあげたい、
人と分かち合いたい、と思うものなのです。

右利きの恵まれた現状を知ることで、
他の立場の人への思いが生まれてくるものなのです。

 

今、右利きの人たちの多くは、自分たちの置かれている状況を、
「ふつう」と捉えているのではないでしょうか。

実は、それは「ふつう」ではなく、
主流派の、多数派の、優遇された立場なのだということを、
しっかり自覚して欲しいものです。

そういう報道をメディアの人たちには、心掛けて欲しい、
と私は思います。

 

 ●最後に――左利きの人のための実用書をもっと出版して欲しい

この手のニュースなどでは、
左利き用品のあれこれが紹介されるケースもあります。
それはいいのですけれど、たいていはありきたりなもので、
そんなの知ってるよ、というものも結構あります。

反面、左利きの本の紹介などはほとんど見られません。
その点をいつも残念に思ってきました。

ネットで、YouTubeなどの動画で、
なんでも勉強できる時代ではありますが、
いつでも手元に置いて参照できる紙の本の力は、
まだまだ捨てきれないものがあります。

 

昔から、左利きや利き手・利き側に関する科学的な研究本は
色々と出版されています。
とはいえ、最新の本といえるものがほとんどない状況です。

(2022年)
『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫 2022/5/16
――日本の利き手研究の第一人者による、2008年発行のDOJIN選書版の
 増補文庫版

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(2021年)
『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き
「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社
2021/9/29
――左利き・利き側の科学解説書というより、<左利きの脳内科医>に
 よる“左利き応援本”というのが本当のところでしょうか。

211006sugoihidarikiki

 

ただ最近では、ポツポツとではありますが、
左利き用の実用書の類いが出るようになっています。

左利き用のペン字練習帳とか、ギターのコード・ブックとか。

こういう本の方が、まさに実用性が高く、
科学的な解説書より需要があって、便利なものかもしれません。

 

(2021年)
『左利きギター専用! ギターコードブック』
ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス 2021/3/14

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(2020年)
『左利き用 誰でも一瞬で字がうまくなる大人のペン字練習帳』
萩原 季実子/著 アスコム 2020/7/23

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今年7月には、編み物の本が出ました。

編み物というのも、左利きの人にはむずかしいところがあるようです。

両手に針を持って編むものもあるでしょうけれど、
片手に針を持ってするという編み方もあるようです。

その場合、右手に針を持ってどうするこうする――
という教え方が基本になっているため、
左利きの人は二の足を踏むことも多いようです。

そういう人に朗報ですね。

(2023年)
『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』佐野 純子/著
日東書院本社 2023/7/19

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《手芸好きの左利きさん必携の一冊ができました!
 【左利き専用】かぎ針編み入門書
 編み物を諦めていた左利きの担当編集者が、
 どうしても編めるようになりたくて作った一冊》

 

著者は、《右利きの母から初めて編み物を習》ったという、
文部省認定毛糸編物技能認定1級で、人形作家、左利きの佐野純子さん。

 ・・・

今後ともこういう左利きの人のための実用書が、
様々ジャンルにおいて出版されることを期待します。

 ・・・

毎年書いてきました過去の
<8月13日国際左利きの日>に関するブログ記事は、
以下↓のカテゴリからご覧になれます。

*『レフティやすおのお茶でっせ』〈8月13日国際左利きの日〉カテゴリ 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」と題して、今回も全紹介です。

<国際左利きの日>を前に、この記念日をニュース等で取り上げてくださるテレビ番組や、メディア、SNS等で個人的に発信してくださる人たちには、感謝の気持ちを表明しておきましょう。

しかし、これらのせっかくの好意に、どうしても素直になれない自分がいます。

それはなぜかと考えますと、やはり本当のところ、どうも当事者である私の心に響かない部分がある、ということです。

正確な事実が反映されていなかったり、現象面を撫でるだけで、本質に踏み込まない報道になっているからではないか、と思います。

そこで、今回こういう注文を書いてみました。

ご理解いただけると嬉しいのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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2023.08.05

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii(号外)8月合併号(12日第二土曜発行)のお知らせ

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

(号外)8月合併号(12日第二土曜発行)のお知らせ

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(号外)8月合併号(12日第二土曜発行)のお知らせ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

弊紙は、<週刊hikkii>という名のとおり、
本来は毎週土曜日発行の週刊誌でした。

個人的な事情により、
現在は第一と第三の月二回の発行になりました。

この暑さですので、昨年に続き、
今年も八月は月一度の合併号の発行とさせていただきます。

昨年は、ちょうど8月13日の
「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」と
土曜日が重なりましたので、
「左利きの日」記念号といった形でした。

今年は一日ずれますが、第二土曜日の12日に発行します。

「<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」と題して、
この「左利きの日」の記念日報道について、
私が以前から思うところを綴ってみます。

ご了承ください。

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『レフティやすおのお茶でっせ』〈左利きメルマガ〉カテゴリ

 

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2023.07.15

<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』-楽しい読書346号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年7月15日号(No.346)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年7月15日号(No.346)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
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第646号(No.646) 2023/7/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2023から――。

 昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 しかも今年は、発行日の7月15日が第三土曜日に当たり、
 私のもう一つのメルマガ
 『左利きを考える 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
 の発行と同日になります。
 そこで、またまたコラボすることで、手抜きさせていただきます。
 毎日暑い日が続きますので、ご容赦!

 

新潮文庫の100冊 2023
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏推し2023
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2023 | 集英社文庫
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

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(画像:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023 の三社の小冊子)

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 ◆ 2023年テーマ:身近な思いから ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)

  新潮文庫 ブレイディみかこ
   『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

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 ●「新潮文庫の100冊 2023」について

まずは、「新潮文庫の100冊 2023」に選ばれた作品について
見ておきましょう。

フェアの小冊子『新潮文庫の100冊 2023』(新潮文庫編集部/著)
の出版社の紹介文から――

《約3000点の新潮文庫の中から「新潮文庫の100冊」として
 厳選した作品を、「恋する本」「シビレル本」「考える本」
 「ヤバイ本」「泣ける本」の5テーマに分類しておすすめします。
 かわいいキュンタの物語もお楽しみください!》

 

▼5つのテーマの主な作品(私の知っている本を挙げてみました)

「恋する本」20点―『ティファニーで朝食を』『あしながおじさん』
  『こころ』『雪国』『刺青・秘密』『錦繍』『キッチン』など

「シビレル本」20点―『マクベス』『シャーロック・ホームズの冒険』
  『十五少年漂流記』『ナイン・ストーリーズ』『深夜特急1』
  『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』など

「考える本」21点―『罪と罰』『車輪の下』『センス・オブ・ワンダー』
  『蜘蛛の糸・杜子春』『塩狩峠』『沈黙』『こころの処方箋』
  『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』など

「ヤバイ本」20点―『異邦人』『変身』『月と六ペンス』
  『狂気の山脈にて』『人間失格』『檸檬』『金閣寺』『砂の女』など

「泣ける本」19点―『星の王子さま』『老人と海』『銀河鉄道の夜』
  『博士の愛した数式』『夜のピクニック』など

 

私の既読本は、海外作品を中心に、明治以降の国内の名作など、
全部で26点程度でしょうか。

この出版社の傾向というものもありますが、
近現代の海外ものや国内の名作小説が多く選ばれています。

少数ですが、小説以外のノンフィクションも選ばれています。

今回はまさにそういう一冊、ブレイディみかこさんの、
2019年(令和元年)に出版されるや、
あちこちで評判となり、ベストセラーとなった
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を選んでみました。

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(画像:ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)と<新潮文庫の100冊 2023>小冊子)

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(画像:ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)と<新潮文庫の100冊 2023>小冊子の該当ページ(カバー装画:中田いくみ))

 

以下の文章は、私のもう一つのメルマガ
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』の第646号と
同様のものとなります。
すでにご覧の方は、スルーしていただいて結構です。

 

 ●左利き研究家の観点から読む『ぼくはイエローでホワイトで~』

ブレイディみかこ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(文庫版 2021/6/24)

です。

(日本式にいうと)中学生の息子さんの子育てを交えた、
異文化交流のノンフィクションです。

著者は福岡生まれの日本人の母親で、英国ブライトン
(ロンドンの南方のイギリス海峡に面した町)在住、元保育士で、
配偶者はアイルランド人のトラック運転手、
二人には息子さんが一人いて、このたび地元の中学校に入学。
今まで通っていたカトリック系の小学校とは違い、
地元の様々な子供たちが通う元底辺中学校に入学。
そこで親子が体験する出来事についての考察を描く。

*続編
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
ブレイディ みかこ/著 中田いくみ/イラスト 新潮社 2021/9/16

 

 ●「はじめに」から「子どもはすべてにぶち当たる」

冒頭「はじめに」に
「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。
若者はすべてを知っている」というオスカー・ワイルドの言葉を紹介し、
そのあとにつけ加えるなら「子どもはすべてにぶち当たる」だろう、
という箇所があります。

老人となってしまった私の感覚では、
老人は「信じる」というより「信じたい」で、中年や若者はともかく
最後の「子どもはすべてにぶち当たる」という発言は、
自分の子供時代を振り返ってみて、
当たっているなあ、という気がします。

子供というものは、社会の波風のあれやこれやをみんな受け止める、
ぶち当てられる、そういう存在のように思います。

私の場合は、主に「左利き」という事例に関する偏見や差別でしたが。

 

 ●一番気になった部分「誰かの靴を履いてみること」

文庫本で320ページ弱、16章からなる一冊です。

この16章中で、一番気になったのが、エンパシーに関する章
「5 誰かの靴を履いてみること」。

シティズンシップ・エデュケーションの授業の試験で、
最初に「エンパシーとは何か」という問いがあり、
それに対して、息子が「自分で誰か人の靴を履いてみること」と答えた、
というくだりです。

「自分で誰か人の靴を履いてみること」というのは、
英語の定型表現だそうで、《他人の立場に立ってみる》という意味。

 《日本語で、empathyは「共感」、「感情移入」または「自己移入」
  と訳されている言葉だが、確かに誰かの靴を履いてみるというのは
  すこぶる的確な表現だ。》(p.92)

なるほど。
確かに、他の人の靴を履く、とどうなるかといいますと、
「ピッタリで気持ちよい」ということは少なく、
たいていは「なんだこりゃ」になるでしょう。
サイズは一緒でも微妙な部分で合わなかったりするものです。

 

 ●「左利き」に置き換えると――「靴の左右を入れ替える」

ここで、ちょっと「左利き」の話をしておこうと思います。

右利きの人が多数派で、
社会のあれこれが右利きに都合のよいものになっている
いわゆる「右利き(優先/偏重)社会」になっている中で、
左利きの人が生きていくというのは、
「靴の左右を入れ替えて履くようなものだ」というのが、私の見方です。

たとえ自分の靴であれ、やはり右足用と左足用とは形が異なり、
うまく履けないものです。
特にオーダーメイドのように、足形に合わせたものであればあるほど、
左右は形状が違い、入れ替えるとうまく履けないものです。
窮屈だったり、ちょっと嫌な思いをしたり、思うように歩けなかったり、
そもそも履いているだけで痛かったり、大変な思いをするはずです。

これが靴ではなく、スリッパのようなものなら、
左右を入れ替えてもまったくといっていいほど気にならないでしょう。
スリッパというものは、そういうふうにできている履き物で、
左右兼用できる反面、靴のように跳んだり走ったリには不向きです。

「靴」は、右利き用だったり左利き用だったり、という専用品。
「スリッパ」は、左右両用可能なものや左右共用品というところ、
専用品ほど便利ではないかもしれませんが、どちらも使えるもの。

左利きの人は、この「右利き(優先/偏重)社会」で、
左右の靴を入れ替えて履かされているようなものだ、
というふうに理解していただけるといいのではないでしょうか。

 

 ●多様性について

もう一度『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』にもどって、
「4 スクール・ポリティクス」で取り上げられている、
多様性について考えてみましょう。

息子が学校で多様性はいいことだと教わったというのですが、

 《「じゃあ、どうして多様性があるとややこしくなるの」/
  「多様性ってやつは物事をややこしくするし、
   喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃない方が楽よ」/
  「楽じゃないものが、どうしていいの?」/
  「楽ばっかりしてると、無知になるから」》

すると、また「無知の問題か」と息子。
彼が道ばたでレイシズム的な罵倒を受けたとき、
そういうことをする人は無知なのだ、と母ちゃんが言ったことを受けて。

 《「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどうくさいけど、
   無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」》

 

最近日本でも
「ダイバーシティ diversity」という言葉を聞くようになりました。
「多様性」のことですが、
「多様性」というものも案外むずかしいものです。

自分では多様性について寛容だと思っていても、
実際には、世間には様々な人びとがいて、
時に自分の知らない存在も多々あるものです。

私の経験をいいますと、右利きの人の中には、
(左手で箸を使ったり字を書く)左利きの人なんて見たことがない、
という人もいました。

「知らないものは存在しない」というわけです。

そこで、先の無知云々とつながってきます。

 

 ●無知な人には、知らせなきゃいけない

無知の問題について、
本書の母ちゃんと息子の会話をプレイバックしてみましょう。
「2 「glee/グリー」みたいな新学期」での会話です。

 《「頭が悪いってことと無知ってことは違うから。知らないことは、
   知るときが来れば、その人は無知ではなくなる」》p.43

と母ちゃんが言うと、あるとき、息子は、
 《「無知な人には、知らせなきゃいけないことがたくさんある」》
と。

左利きの問題も同じで、知らせていかなければいけないのです。

 ・・・

無知についていいますと、
以前、江國香織さんの『こうばしい日々』(新潮文庫)に登場する、
黒人の教師ミズ・カークブライドが、
アメリカに移住してきた日本人少年に話した、
人種差別に関しての言葉を思い出します。

 《「一つのことを、はじめから知っている人もいるし、
   途中で気がつく人もいる。
   最後までわからない人もいるのよ」》

*『こうばしい日々』江國香織/著 新潮文庫 1995/5/30

 

本書の場合は、教えられて気がつくというケースですね。

 ・・・

ついでに書いておきますと――

アリストテレスの
『ニコマコス倫理学』「第一巻 第四章」に引用されている
ヘシオドス『仕事と日々』の詩にある言葉、

 《あらゆることを自ら悟るような人は、もっともすぐれた人
  立派なことを語る人に耳を傾け、これに従う人も、すぐれた人
  しかし、自ら悟ることもなければ、他人の言葉を聞いて
  心に刻むこともないような人は、どうしようもない人。》

*『ニコマコス倫理学(上)』アリストテレス/著 渡辺邦夫・
 立花幸司/訳 光文社古典新訳文庫 2015/12/8

 

『論語』【季氏 第十六】(9)

 《孔子曰(いわ)く、生まれながらにして之を知る者は、上なり。
  学びて之を知るものは、次なり。
  困(くる)しみて之を学ぶ者は、また其(そ)の次なり。
  困しみて学ばざる、民 斯(こ)れ下(げ)と為す。

  〈現代語訳〉孔先生の教え。生まれつき道徳(人の道)を
  理解している人間が、最高である。
  学ぶことによって〔すぐに〕道徳を理解する者は、それに次ぐ。
  〔すぐにではなくて〕努力して道徳を学ぶ者は、さらにそれに次ぐ。
  努力はするものの〔結局〕道徳を学ぼうとしない、
  そういう人々、これは最低である。
   
*『論語』加地伸行/全訳注 講談社学術文庫 2004
『論語 増補版』加地伸行/全訳注 講談社学術文庫 2009/9/10

というものに、似ています。

 

 ●エンパシーについて――「知ろう」とする能力

再び「エンパシー」にもどりましょう。

「エンパシー」に似た言葉として「シンパシー」があるといいます。

 《シンパシーのほうは「感情や行為や理解」なのだが、
  エンパシーのほうは「能力」なのである。
  前者はふつうに同情したり、共感したりすることのようだが、
  後者はどうもそうではなさそう。》pp.94-95

 《シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、
  自分と似たような意見を持っている人々に対して
  人間が抱く感情のことだから、
  自分で努力しなくても自然に出て来る。
  だがエンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、
  別にかわいそうだとは思えない立場の人々が
  何を考えているのだろうと想像する力のことだ。
  シンパシーは感情的状態、
  エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。》p.95

 

多様性には色々な要素があり、それぞれの多様性について、
人はそのすべてを初めから知っているわけではない。

自分の属する要素については、当然理解しているし、
他の人の場合にも共感することができる。
ところが、自分に無縁の要素に関しては、知らないしわからない。
そこで、当該の人から知らせてもらう、教えてもらう必要が出てきます。

ここで「無知」とか「知らせる」とかの言葉が出て来るわけです。

で、私たちは、「無知」なのだから「教えてもらおう」とか、
「知らないこと・わからないことなので、知ろう・理解しよう」
とすることが重要になってくるわけです。

「共感」できることなら問題ないのですが、
特に共感する立場にはなくても、「理解しよう」とする姿勢、
およびその能力を「エンパシー」といい、
これからの時代に重要なことだと思われるわけです。

 

左利きに関していいますと、
自分は左利きではなく、この社会にあって不都合は感じていなくても、
「そういう人もいるのだ、不都合を感じることがあるのだ」
と理解することが大事だ、ということです。

 ・・・

さて、このブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、
中学生の息子さんを持つお母さんと配偶者の子育て私生活エッセイ
のような、読みやすい、それでいてなかなか読み応えのある、
「ちょっと左翼っぽい」(p.159 配偶者の言葉)
――その点ではちょっとうーんと思う部分も時にありますが――
母ちゃんによる、おもしろいノンフィクションでした。

続編も機会があれば読んでみたいものです。

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本誌では、「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」と題して、今回は全文転載紹介です。

『週刊ヒッキイhikkii』とのコラボということで、導入部以外の本文は、9時40分発行のヒッキイの方と同じ内容です。

手抜きといえば手抜きですが、内容そのものは、かなりのものと自負しています。
素材がいいので当然といえば当然のことなのでしょうけれど、ね。

(共通する部分の本文は、ここではカットしようかと思ったのですが、やっぱり全公開です。)

 ・・・

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左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ『ぼくはイエローで…』-週刊ヒッキイ第646号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第646号(No.646) 2023/7/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」

 

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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第646号(No.646) 2023/7/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
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2023(令和5)年7月15日号(No.346)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
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 今回は本来なら、
 「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [23]
 <左利きプチ・アンケート> 全公開」
 を紹介する回ですが、
 私のもう一つのメルマガ
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
 の月半ばの発行日と重なりましたので、
 (手抜きとして)コラボして、
 <左利き研究家の観点から>の読書感想を披露しましょう。

 もう一つのメルマガで、この時期毎年恒例にしているのが、
 その年の新潮・角川・集英社、三社の<夏の文庫>フェアから、
 それぞれ一冊を選んで紹介するという企画です。

 そのうちの一社、新潮文庫の作品を取り上げます。

 新潮・角川・集英社、三社の<夏の文庫>フェア2023
 それぞれのフェア内容等に関しましては、12時発行の
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』の方で
 紹介していますので、そちらをご参照ください。

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(画像:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023 の三社の小冊子)

 

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 ◆ 週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1) 新潮文庫

  左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ

   『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

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 ●<新潮文庫の100冊 2023>から

何十年も昔から続いている<夏の文庫フェア>の一つ

新潮文庫の100冊 2023
https://100satsu.com/

の中から、今年私が選んだ一冊は、
2019年(令和元年)出版後あちこちで評判となった

ブレイディみかこ
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(文庫版 2021/6/24)

です。

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(画像:ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)と<新潮文庫の100冊 2023>小冊子)

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(画像:ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)と<新潮文庫の100冊 2023>小冊子の該当ページ(カバー装画:中田いくみ))

 

(日本式にいうと)中学生の息子さんの子育てを交えた、
異文化交流のノンフィクションです。

著者は福岡生まれの日本人の母親で、英国ブライトン
(ロンドンの南方のイギリス海峡に面した町)在住、元保育士で、
配偶者はアイルランド人のトラック運転手、
二人には息子さんが一人いて、このたび地元の中学校に入学。
今まで通っていたカトリック系の小学校とは違い、
地元の様々な子供たちが通う元底辺中学校に入学。
そこで親子が体験する出来事についての考察を描く。

*続編
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』
ブレイディ みかこ/著 中田いくみ/イラスト 新潮社 2021/9/16

 

 ●「はじめに」から「子どもはすべてにぶち当たる」

冒頭「はじめに」に
「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。
若者はすべてを知っている」というオスカー・ワイルドの言葉を紹介し、
そのあとにつけ加えるなら「子どもはすべてにぶち当たる」だろう、
という箇所があります。

老人となってしまった私の感覚では、
老人は「信じる」というより「信じたい」で、中年や若者はともかく
最後の「子どもはすべてにぶち当たる」という発言は、
自分の子供時代を振り返ってみて、
当たっているなあ、という気がします。

子供というものは、社会の波風のあれやこれやをみんな受け止める、
ぶち当てられる、そういう存在のように思います。

私の場合は、主に「左利き」という事例に関する偏見や差別でしたが。

 

 ●一番気になった部分「誰かの靴を履いてみること」

文庫本で320ページ弱、16章からなる一冊です。

この16章中で、一番気になったのが、エンパシーに関する章
「5 誰かの靴を履いてみること」。

シティズンシップ・エデュケーションの授業の試験で、
最初に「エンパシーとは何か」という問いがあり、
それに対して、息子が「自分で誰か人の靴を履いてみること」と答えた、
というくだりです。

「自分で誰か人の靴を履いてみること」というのは、
英語の定型表現だそうで、《他人の立場に立ってみる》という意味。

 《日本語で、empathyは「共感」、「感情移入」または「自己移入」
  と訳されている言葉だが、確かに誰かの靴を履いてみるというのは
  すこぶる的確な表現だ。》(p.92)

なるほど。
確かに、他の人の靴を履く、とどうなるかといいますと、
「ピッタリで気持ちよい」ということは少なく、
たいていは「なんだこりゃ」になるでしょう。
サイズは一緒でも微妙な部分で合わなかったりするものです。

 

 ●「左利き」に置き換えると――「靴の左右を入れ替える」

ここで、ちょっと「左利き」の話をしておこうと思います。

右利きの人が多数派で、
社会のあれこれが右利きに都合のよいものになっている
いわゆる「右利き(優先/偏重)社会」になっている中で、
左利きの人が生きていくというのは、
「靴の左右を入れ替えて履くようなものだ」というのが、私の見方です。

たとえ自分の靴であれ、やはり右足用と左足用とは形が異なり、
うまく履けないものです。
特にオーダーメイドのように、足形に合わせたものであればあるほど、
左右は形状が違い、入れ替えるとうまく履けないものです。
窮屈だったり、ちょっと嫌な思いをしたり、思うように歩けなかったり、
そもそも履いているだけで痛かったり、大変な思いをするはずです。

これが靴ではなく、スリッパのようなものなら、
左右を入れ替えてもまったくといっていいほど気にならないでしょう。
スリッパというものは、そういうふうにできている履き物で、
左右兼用できる反面、靴のように跳んだり走ったリには不向きです。

「靴」は、右利き用だったり左利き用だったり、という専用品。
「スリッパ」は、左右両用可能なものや左右共用品というところ、
専用品ほど便利ではないかもしれませんが、どちらも使えるもの。

左利きの人は、この「右利き(優先/偏重)社会」で、
左右の靴を入れ替えて履かされているようなものだ、
というふうに理解していただけるといいのではないでしょうか。

 

 ●多様性について

もう一度『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』にもどって、
「4 スクール・ポリティクス」で取り上げられている、
多様性について考えてみましょう。

息子が学校で多様性はいいことだと教わったというのですが、

 《「じゃあ、どうして多様性があるとややこしくなるの」/
  「多様性ってやつは物事をややこしくするし、
   喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃない方が楽よ」/
  「楽じゃないものが、どうしていいの?」/
  「楽ばっかりしてると、無知になるから」》

すると、また「無知の問題か」と息子。
彼が道ばたでレイシズム的な罵倒を受けたとき、
そういうことをする人は無知なのだ、と母ちゃんが言ったことを受けて。

 《「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどうくさいけど、
   無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う」》

 

最近日本でも
「ダイバーシティ diversity」という言葉を聞くようになりました。
「多様性」のことですが、
「多様性」というものも案外むずかしいものです。

自分では多様性について寛容だと思っていても、
実際には、世間には様々な人びとがいて、
時に自分の知らない存在も多々あるものです。

私の経験をいいますと、右利きの人の中には、
(左手で箸を使ったり字を書く)左利きの人なんて見たことがない、
という人もいました。

「知らないものは存在しない」というわけです。

そこで、先の無知云々とつながってきます。

 

 ●無知な人には、知らせなきゃいけない

無知の問題について、
本書の母ちゃんと息子の会話をプレイバックしてみましょう。
「2 「glee/グリー」みたいな新学期」での会話です。

 《「頭が悪いってことと無知ってことは違うから。知らないことは、
   知るときが来れば、その人は無知ではなくなる」》p.43

と母ちゃんが言うと、あるとき、息子は、
 《「無知な人には、知らせなきゃいけないことがたくさんある」》
と。

左利きの問題も同じで、知らせていかなければいけないのです。

 ・・・

無知についていいますと、
以前、江國香織さんの『こうばしい日々』(新潮文庫)に登場する、
黒人の教師ミズ・カークブライドが、
アメリカに移住してきた日本人少年に話した、
人種差別に関しての言葉を思い出します。

 《「一つのことを、はじめから知っている人もいるし、
   途中で気がつく人もいる。
   最後までわからない人もいるのよ」》

*『こうばしい日々』江國香織/著 新潮文庫 1995/5/30

 

本書の場合は、教えられて気がつくというケースですね。

 ・・・

ついでに書いておきますと――

アリストテレスの
『ニコマコス倫理学』「第一巻 第四章」に引用されている
ヘシオドス『仕事と日々』の詩にある言葉、

 《あらゆることを自ら悟るような人は、もっともすぐれた人
  立派なことを語る人に耳を傾け、これに従う人も、すぐれた人
  しかし、自ら悟ることもなければ、他人の言葉を聞いて
  心に刻むこともないような人は、どうしようもない人。》

*『ニコマコス倫理学(上)』アリストテレス/著 渡辺邦夫・
 立花幸司/訳 光文社古典新訳文庫 2015/12/8

 

『論語』【季氏 第十六】(9)

 《孔子曰(いわ)く、生まれながらにして之を知る者は、上なり。
  学びて之を知るものは、次なり。
  困(くる)しみて之を学ぶ者は、また其(そ)の次なり。
  困しみて学ばざる、民 斯(こ)れ下(げ)と為す。

  〈現代語訳〉孔先生の教え。生まれつき道徳(人の道)を
  理解している人間が、最高である。
  学ぶことによって〔すぐに〕道徳を理解する者は、それに次ぐ。
  〔すぐにではなくて〕努力して道徳を学ぶ者は、さらにそれに次ぐ。
  努力はするものの〔結局〕道徳を学ぼうとしない、
  そういう人々、これは最低である。
   
*『論語』加地伸行/全訳注 講談社学術文庫 2004
『論語 増補版』加地伸行/全訳注 講談社学術文庫 2009/9/10

 

というものに、似ています。

 

 ●エンパシーについて――「知ろう」とする能力

再び「エンパシー」にもどりましょう。

「エンパシー」に似た言葉として「シンパシー」があるといいます。

 《シンパシーのほうは「感情や行為や理解」なのだが、
  エンパシーのほうは「能力」なのである。
  前者はふつうに同情したり、共感したりすることのようだが、
  後者はどうもそうではなさそう。》pp.94-95

 《シンパシーのほうはかわいそうな立場の人や問題を抱えた人、
  自分と似たような意見を持っている人々に対して
  人間が抱く感情のことだから、
  自分で努力しなくても自然に出て来る。
  だがエンパシーは違う。自分と違う理念や信念を持つ人や、
  別にかわいそうだとは思えない立場の人々が
  何を考えているのだろうと想像する力のことだ。
  シンパシーは感情的状態、
  エンパシーは知的作業とも言えるかもしれない。》p.95

 

多様性には色々な要素があり、それぞれの多様性について、
人はそのすべてを初めから知っているわけではない。

自分の属する要素については、当然理解しているし、
他の人の場合にも共感することができる。
ところが、自分に無縁の要素に関しては、知らないしわからない。
そこで、当該の人から知らせてもらう、教えてもらう必要が出てきます。

ここで「無知」とか「知らせる」とかの言葉が出て来るわけです。

で、私たちは、「無知」なのだから「教えてもらおう」とか、
「知らないこと・わからないことなので、知ろう・理解しよう」
とすることが重要になってくるわけです。

「共感」できることなら問題ないのですが、
特に共感する立場にはなくても、「理解しよう」とする姿勢、
およびその能力を「エンパシー」といい、
これからの時代に重要なことだと思われるわけです。

 

左利きに関していいますと、
自分は左利きではなく、この社会にあって不都合は感じていなくても、
「そういう人もいるのだ、不都合を感じることがあるのだ」
と理解することが大事だ、ということです。

 ・・・

さて、このブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、
中学生の息子さんを持つお母さんと配偶者の子育て私生活エッセイ
のような、読みやすい、それでいてなかなか読み応えのある、
「ちょっと左翼っぽい」(p.159 配偶者の言葉)
――その点ではちょっとうーんと思う部分も時にありますが――
母ちゃんによる、おもしろいノンフィクションでした。

続編も機会があれば読んでみたいものです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」と題して、今回も全紹介です。

前々から興味を持っていた本で、一度機会があれば読んでみたいと思っていたのですが、ちょっとリベラルな感じがあり、その辺がどうかなあ、という不安もあって今日になってしまいました。

色々考えさせられる評判どおりの名著というところです。

ここでは、私の得意フィールドである左利きの観点から読んでみました。
他の読み方もきっとあるのでしょう。
それはそれでまた、ということで。

 ・・・

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2023.07.01

楽器における左利きの世界(14)<音楽の才能と左利き>-週刊ヒッキイ第645号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第645号(No.645) 2023/7/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(14)
 『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」

 

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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第645号(No.645) 2023/7/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(14)
 『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
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 前回は、最近始めた、初心者・独学者向けのピアノ練習や
 楽譜の読み方など音楽の基礎的なお勉強に関して、
 YouTube『まり先生のかんたんピアノレッスン』や
『初心者の為のキーボード講座』で説明されていました
キーボード演奏における指使いについて、
 右手利き優先の実態を見たと思ったことを書いてみました。

 今回は、前回のおわりに紹介した八田武志さんの著者
 『左対右 きき手大研究』にあった「音楽の才能と左利き」の項目を
 もう少し紹介してみようと思います。

*参照:
八田武志『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022/5/16)

 

220518hattatakesi-hidarikiki-2

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (14)

  ◆ <音楽の才能と左利き> ◆

   ~ 八田武志『左対右 きき手大研究』から ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●音楽の才能と左利き

八田武志さんのこの著書の記述によりますと、
「音楽能力には利き手による違いがあり、左利きの人の方が優れている」
といわれてきたそうです。

本格的な利き手の研究は、
左右の大脳を連絡する脳梁という部分を切断した患者を対象に、
それぞれの脳の機能差を見いだしたスペリーらの研究に端を発した、
ラテラリティといわれる研究分野の出現から派生したもの。

このラテラリティの研究は、1970年代は視覚機能が中心だったが、
1980年代に入って聴覚機能に移り、

《言語音は左脳がその処理に優れるが、音の高低の弁別や、
 音と音との間、音の大きさ、各種の音の配分など
 音楽を構成する要素については右脳のほうがその処理に優れることが
 次つぎと明らかにされた。
 「プロソディ(韻律)」と呼ばれる音声言語の周辺的要素も
 右脳のはたらきであることが立証された。》p.36

プロソディというのは、どういう調子で発音されるか、
といったところですね。
たとえば「すみません」ということばでも、
使われる状況で意味が変わってくる場合があります。
それを言葉の調子で異なる意味を持たせ、相手に了解させるわけです。

《いまでは音声言語は左脳だけのはたらきではなく、
 左右の共同によるものと考えるようになっている。》同

 

 ●音楽能力と利き手との関係――否定的データ

《音楽的要素の処理に右脳が優れるといわれるようになると、
 右脳は左手指の運動と関連が深いので、
 左ききは音楽の才能があるはずだという予測が生まれ、
 音楽能力ときき手との関係が話題になった。》p.37

ところが、明確な関係は見いだされなかった、といいます。

バイルーンは、音楽能力を測定するシーショア・テストと
利き手の関係を調べた。

グッドらの、イギリスの小学校7~8歳児897名を対象にした研究で、
ベントレー音楽能力検査を実施――音の高低の記憶、コードの記憶、
リズムの記憶などの音楽的要素と性差、学業成績、利き手などの関係を
検討した。
学業成績との関連は見られたが、
性差や利き手での差異は見られなかった。

 

 ●音楽能力と利き手との関係――肯定的データ

次に、利き手との関係の否定的データではなく、
利き手との関係の肯定的なデータを。

ドイッチは、右利きと左利きの普通の大学生を対象に
音の記憶実験を行い、右利きの正答率より、
左利きのそれの方がわずかではあるが上回った。
別の課題でも、左利きの方が優れていた。

ドイッチは、左利きは音の記憶を左右両脳でできるのに対して、
右利きでは、片側の脳(たぶん右脳)でしか記憶できないため、
このような結果が出たのだろうと説明している。

 

 ●プロの音楽家、音楽大学の学生を対称とした研究

クライストマンの研究については前回紹介しました。

 

《きき手と音楽に関する研究では音の記憶などの要素的な分析よりも
 包括的な能力との関連が問われるようになっている。》p.39

そうで、コッピーズらの研究では、
利き手と初見演奏能力について検討している。

初見演奏能力とは、初めて目にする楽譜を見て実際に演奏する能力や、
初めて聞いた音楽を再生する聴音演奏などをいう。歌唱も同じ。
様々な音楽の要素が総合的に発揮される能力と見なすことができる。

ドイツの音楽大学の学生52名を対象に実験を行い、
初見演奏で右利きは左利きや両手利きより劣ることを明らかにしている。

p.40の1-7図に示すように、
《右ききのピアニストは間違いが多く、
 左利きや両手ききは演奏能力に優れていることを示している。》p.39

ただし、この研究での利き手は、質問紙によるものではなく、
左右の人差し指と中指の30秒間のタッピング数で決定している。
この作業量による利き手と自己申告の利き手は必ずしも一致していなく、
他の研究結果と単純に比較することはできない、といいます。

《ただ、タッピングの作業量を左右手で比較すると、
 左手の巧緻性が優れるピアニストは52名の内45名と多く、
 ピアニストにとって左手の手指運動は鍵となる能力である
 と思われる。》p.40

 

 ●まとめ――左手の手指運動の訓練の難易度が差を生む

以上の結果からいえることとして、

《「小学生を対象としたグッドらの研究では
 きき手による音楽能力の違いは見いだせなかった。にもかかわらず、
 コッピーズらのように成人でその関係を支持するデータは多い。
 これは、左手での手指運動の訓練に困難さを感じる者(右きき)は
 楽器演奏の練習を途中で放棄するのに対して、
 強く感じなかった者が楽器演奏などのくり返し練習が長続きし、
 このような持続力が音楽家などの職業へとつながり、成人の音楽家や
 音大生には右ききが少なくなってしまう」というものである。》p.41

 

 ●親の利き手とその容認度の問題

音楽的能力に付いては、
当人より親の利き手の影響を指摘する報告もある、といいます。

ケラーらの研究は、
音楽専攻生と音楽を特別に学習したことのない学生を対象にしたもので、
当然、音楽専攻生の方が優れた結果を出しているが、

《音楽専攻生は左耳で聴く(右脳にまず入力される)ことを好み、
 非音楽専攻生では右耳で聴く(左脳にまず入力される)ことを好む
 という違いが示され、
 そのほうが反対の耳で聴く場合よりも成績がよかった。
 さらに興味深いのは、音楽専攻生の場合は、
 親に左ききがいる場合といない場合とで違いがあり、
 左ききがいない場合は左耳優位がとりわけ顕著に現れたと考えられる。
 親に左ききがいる場合には遺伝的要素の関与や左手を使うことへの
 養育者周辺の容認度が高いことなどが考えられるからである。
 音楽的能力には、きき手それも親の世代を含めたきき手が影響する
 ということかもしれない。》p.41

 

音楽家になるためには、楽器演奏における両手練習が必要で、
そこには両手の器用さという問題があり、
さらに、
親の利き手とその容認度という問題が見受けられる、
という研究結果が、私には、非常に興味深く感じられました。

確かに楽器演奏では多く両手を使用することになります。
ピアノのような鍵盤楽器では、右手が主導的であっても、
それなりに左手の動きも要求されます。

それに対応できるだけの運動能力を持っているか、
もしくは訓練に抵抗があるかないかの違いが大きな差になってくる、
というのは十分に想像できます。

 

私の経験からもいえることですが、
右利きの人は、その多くが右使いしか選択肢を持っていないものです。
右手だけでなく左手も使えるのだ、使っていいのだ、
という発想を持っていない人が大半なのです。

なにしろ、今の世界はたいていのことが、
(非常停止ボタンのような)重要なことであれ、
(水洗トイレのレバーのような)ちょっとしたことであれ、
何かにつけて右手一本で通用するように仕組まれています。
結果的に右利きの人は右手以外はほとんど使う機会がないまま、
日常生活をエンジョイしていたりします。

一方、左利きの人たちは、その逆で、
重要なことであれ、ちょっとしたことであれ、
右手を使うことを強制されています。
結果的に、右手もある程度は動かせる、両手使いのようになっています。

そういう意味では、右利きの人は「ちょっと不幸な人たち」、
という見方もできるのかもしれません。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(14)『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
と題して、今回も全紹介です。

前回の引き続きとして、日本の左利き研究の第一人者、八田武志さんの著書『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫)から左利きと音楽的才能についての項目を紹介しています。

 ・・・

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2023.06.17

『左組通信』復活計画<左利きプチ・アンケート>(23)利き手テストとの一致度は?-週刊ヒッキイ第644号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第644号 【別冊 編集後記】

第644号(No.644) 2023/6/17
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [23]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(23)「利き手調査」番外
第46回 利き手テストと意識の一致度は?」

 

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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第644号(No.644) 2023/6/17
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [23]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(23)「利き手調査」番外
第46回 利き手テストと意識の一致度は?」
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 今回は、<利き手調査アンケート>の番外として、
 利き手テストの結果とご自身の思っている利き手とのあいだに、
 違いがあったかどうかを調べるアンケートで、
 「自己申告版」にあたります。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [23]
  <左利きプチ・アンケート> 全公開(23)
  「利き手調査」アンケート編・番外
 第46回 利き手テストと意識の一致度は?
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 

 ●第46回 利き手テストと意識の一致度は?

↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓

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左利きを考える レフティやすおの左組通信
 Lefty Yasuo's HIDARIGUMI Announcement
 
  <左利きプチ・アンケート>
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<左利きプチ・アンケート>
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
(自己申告による利き手別の投票による )

(初出)2007.11.25 (最終)
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<左利きプチ・アンケート>第46回
利き手テストと意識の一致度は?

http://personal-dictionary.com/enq/view/enq.asp?EID=54255
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230614enq46

<左利きプチ・アンケート>第46回 利き手テストと意識の一致度は?

左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』誌上でも
ふれましたように、

第104号(No.104) 2007/10/20「<見かけの利き手>」
「週刊ヒッキイ」創刊二周年100号突破記念放談―その3―
<見かけの利き手>

利き手について研究している科学者の作成した
各種利き手テストの判定結果と、
自分自身が認識している利き手とが一致しない人も、
結構多数いらっしゃるように思います。

 

当アンケートでも何度か利き手テストを紹介しています。

06.9.24 第33回 新版・利き手調査第1回
         ―利き手テスト側性係数を調べる
(前原勝矢/著『右利き・左利きの科学』講談社ブルーバックス
 1989/6/1刊 で紹介されているテスト)

220219migikikihidarikikinokagaku

06.11.26 第35回 新版・利き手調査第2回
         ―エディンバラ利き手調査
(八田武志/著『左ききの神経心理学』医歯薬出版1996刊 による)

220412hidarikiki-no-sinkeisinrigaku

07.1.28 第37回 新版・利き手調査第3回
         ―H.N.きき手テスト
(八田武志/著『左ききの神経心理学』医歯薬出版1996刊 による)

07.3.25 第39回 新版・利き手調査第4回
         ―chapman利き手テスト
(八田武志/著『左ききの神経心理学』医歯薬出版1996刊 による)

07.5.27 第41回 新版・利き手調査第5回
         ―マクマナスの利き手テスト
(クリス・マクマナス/著『非対称の起源―偶然か、必然か』
 大貫昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006・原著2002刊 による)

200215kagamino-2

各テストは、十項目程度の主に片手で行う作業において、
どちらの手を使うかということを問うもので、
それぞれの項目で実際に自分が使う手はどちらであるかを答えて、
その項目数(もしくは点数)で、
「右(手)利き」なり「左(手)利き」なりを判定するものです。

中間的な「両(手)利き」の判定を下すテストもあります。

 

各アンケートの結果をご覧いただいてもわかりますように、
テストの判定結果と、
自分の意識している「利き手」とが一致する人もいます。

しかし、テストの結果による数値的に見た「利き手」の判定と、
自分の考えている―自称している「利き手」とは異なる、
という場合もあります。

あなたの場合はどうでしょうか。

利き手テストの判定結果と自分の意識との一致度は?

 

*投票者の利き手別で選択肢を用意しています。
ご自身でご自分の利き手を右もしくは左と、
どちらか判断した上で投票してください。

*一言言わせて、という方は投票後に表示されます一番下の
「ご意見ボード」をご利用ください。
もっと言わせて、という方は掲示板もご利用ください。
貴方のご意見ご感想をお聞かせください。

 

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する
2 (   〃   )まあまあ一致する
3 (   〃   )さほど一致しない
4 (   〃   )全く一致しない
5 (左利きの投票者)ほぼ一致する
6 (   〃   )まあまあ一致する
7 (   〃   )さほど一致しない
8 (   〃   )全く一致しない

 

現在の結果を見る(ご意見ボードはこちら)
________________________________________
●利き手調査テスト関連アンケート
第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?

 

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投票結果
実施期間2007.10.28-11.24(4週間・総数=17/R=5:L=13)
------------------------------------------------------------------

1(右利きの投票者)ほぼ一致する 2
2(   〃   )まあまあ一致す 0
3(   〃   )さほど一致しない 2
4(   〃   )全く一致しない 1
5(左利きの投票者)ほぼ一致する 6
6(   〃   )まあまあ一致す 1
7(   〃   )さほど一致しない 5
8(   〃   )全く一致しない 1

ご意見ボードへの書き込み
 ご意見はありません

 

------------------------------------------------------------------
投票結果 12:02 2007/12/15
(総数=17/R=5:L=13)

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する    7
2 (   〃   )まあまあ一致する  2
3 (   〃   )さほど一致しない  3
4 (   〃   )全く一致しない   2
5 (左利きの投票者)ほぼ一致する    7
6 (   〃   )まあまあ一致する  2
7 (   〃   )さほど一致しない  6
8 (   〃   )全く一致しない   1

 

≫何を持って左利き右利きというかは人によって違うんだろう、
 字を書くとか箸を持つとかで決める人も多い、そういう場合は
 右手を使うように指導された人は自分を右利きというんだろう。
 それでテストすると違ってくるというわけだ。
 本当の利き手はそういうもんじゃないってこと。
 覚えたことじゃなくて無意識に出す手だったりするんだなあ。
【右田左太郎│07/12/15 0:02:04】――(転載了解済み 2023.6.13-ly)

 

------------------------------------------------------------------
投票結果 23:42 2008/09/24
(総数=134/R=66:L=68

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する 22
2 (   〃   )まあまあ一致する 12
3 (   〃   )さほど一致しない 16
4 (   〃   )全く一致しない 16
5 (左利きの投票者)ほぼ一致する 20
6 (   〃   )まあまあ一致する 16
7 (   〃   )さほど一致しない 17
8 (   〃   )全く一致しない 15

 

------------------------------------------------------------------
<左利きプチ・アンケート>第46回 利き手テストと意識の一致度は?
投票結果 17:01 2009/01/22
(総数=162/R=79:L=83

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する    24
2 (   〃   )まあまあ一致する  16
3 (   〃   )さほど一致しない  19
4 (   〃   )全く一致しない   20
5 (左利きの投票者)ほぼ一致する    24
6 (   〃   )まあまあ一致する  17
7 (   〃   )さほど一致しない  22
8 (   〃   )全く一致しない   20

 

------------------------------------------------------------------
投票結果 15:46 2011/12/01
(総数=454/R=235:L=219

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する    68
2 (   〃   )まあまあ一致する  49
3 (   〃   )さほど一致しない  53
4 (   〃   )全く一致しない   65
5 (左利きの投票者)ほぼ一致する    59
6 (   〃   )まあまあ一致する  48
7 (   〃   )さほど一致しない  62
8 (   〃   )全く一致しない   50

 

------------------------------------------------------------------
投票結果 2016.9.19
(総数=488/R=254:L=234

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する 73
2 (   〃   )まあまあ一致する 53
3 (   〃   )さほど一致しない 59
4 (   〃   )全く一致しない 69
5 (左利きの投票者)ほぼ一致する 63
6 (   〃   )まあまあ一致する 51
7 (   〃   )さほど一致しない 67
8 (   〃   )全く一致しない 53

 

------------------------------------------------------------------
<左利きプチ・アンケート>第46回 利き手テストと意識の一致度は?

【最終投票結果】
(総数=530/R=272:L=258
http://personal-dictionary.com/enq/view/view.asp?EID=54255

1 (右利きの投票者)ほぼ一致する 78 ------◎
2 (   〃   )まあまあ一致する 57 --×
3 (   〃   )さほど一致しない 68 ----□
4 (   〃   )全く一致しない 69 -----○

5 (左利きの投票者)ほぼ一致する 74 ------◎
6 (   〃   )まあまあ一致する 52 --×
7 (   〃   )さほど一致しない 73 -----○
8 (   〃   )全く一致しない 59 ---□

≫何を持って左利き右利きというかは人によって違うんだろう、
 字を書くとか箸を持つとかで決める人も多い、そういう場合は
 右手を使うように指導された人は自分を右利きというんだろう。
 それでテストすると違ってくるというわけだ。
 本当の利き手はそういうもんじゃないってこと。
 覚えたことじゃなくて無意識に出す手だったりするんだなあ。
【右田左太郎│07/12/15 0:02:04】――(転載了解済み 2023.6.13-ly)

230614enq46-kekka

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2023.6.13(追記)

最終的な結果を見ますと、
最多は「ほぼ一致する」ですが、「一致」「不一致」に大別しますと、
ほぼ同数といってもいい状況です。

で、「右利きの投票者」では、
「ほぼ一致」と「全く一致しない」の両極が多いパターンです。

「左利きの投票者」では、両極というよりは、
「まあ一致する」と「さほど一致しない」と、
不一致度のレベルが少し弱くなっている感じです。

この辺がちょっと違うようで、
何かしら左利きの人の特徴になっているのかもしれません。

このアンケートとは別に、あくまでも私個人の一般的な印象ですが、
「左利きの人」に分類される人たちというのは、
様々なパターンがあるように感じます。

その点、「右利きの人」は比較的一様な標準形のようなものがある、
と感じます。

その辺の違いについて考慮すべき点があると思われます。

 

 ●一般的な利き手に対する認識と研究者のそれとの違い

世間一般では「利き手」といいますと、
「右利きか左利きか」の二者択一のように考えがちです。

「利き手」というのは、字を書くとか箸を使うとか刃物を使うとか、
主に片手で行う動作についてどちらの手を使うか、で決めるものです。

実際に右手使いの人が多数なので、「右利き」が標準とされています。
で、「右利き」以外の人はみな「左利き」と考えられがちです。
せいぜい「私は両利きです」と一部の人が発言する程度。

しかし実際に利き手について研究されている方々の考えでは、
利き手というものは、
各種の利き手テストの結果を、グラフにしますとわかりますように、
右利きから左利きまでその程度の差はあるものの、一続きの連続体で、
スイッチをオン・オフするように、右だ左だと分かれるものではない、
といいます。

利き手テストの結果を、
左端に「強い左利き」を、右端に「強い右利き」をおいて、
その分布をみますと、「J」の字のような曲線を描くといいます。

「J」の字の右端のお玉の柄のような縦棒の部分が
「強い右利き」の人で(私の思うに約半数の人)、
「J」の字の左端の小さな盛り上がりの部分が「強い左利き」
(一割程度か?)、
「J」の字の真ん中のへこんだ底の部分が、
弱い右利きや弱い左利きの人(私のいう中間の人で、四割程度か?)。

「片手利き」ともいうべき、「強い右利き」「強い左利き」の人は
合わせても60%程度ではないか、と思われます。

残りの三分の一以上を占めるであろう、
右利き左利きどちらの要素も幾分かずつ持っている、
中間の人たちの存在が、「左利き」に対する一般の人たちの認識を
複雑なものにしている、といえるのではないでしょうか。

ゆえに、それぞれの個人の意識としての「利き手」と
「利き手テスト」で測られる「利き手」の傾向とは、必ずしも一致せず、
こういう今回のアンケートのような結果が生まれるのではないか、
というのが、このたびの私の見解です。

 ・・・

今回のアンケートでも、結局「右利きの人」と「左利きの人」で、
あまり明確な違いというものは見られなかったように思います。

どのような調べ方をすればいいのか、
もう少し研究する余地があるようです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [23] <左利きプチ・アンケート> 全公開(23)「利き手調査」番外 第46回 利き手テストと意識の一致度は?」と題して、今回も全紹介です。

これで一連の「利き手テスト」に関するアンケートは終了です。

今見返してみますと、初期のものは購読者数も少なく、
結果投票者も少なく、これといった成果もありませんでした。
その後、mixiからの投票者が増えた回もあり、
数値だけはかなりに上ったケースもありました。
きちんと分析できる人間なら、それぞれに意味のあるものにできたかも、
という思いもあります。

またいずれ、改めて「利き手テスト」を扱ったアンケートに
チャレンジする機会があれば、と考えています。

 ・・・

次回からは、<左利きプチ・アンケート>全64本の中から、私が気になったものを紹介してゆく予定です。
読者・閲覧者の皆様も「これを紹介して欲しい」というものがあれば、ぜひご連絡ください。

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2016.09.21
『左利きを考える-レフティやすおの左組通信』目次―『左組通信』から 「新生活」版

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2023.06.03

楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い-週刊ヒッキイ第643号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第643号 【別冊 編集後記】

第643号(No.643) 2023/6/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い」

 

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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第643号(No.643) 2023/6/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い」
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 前回は、最近始めた、初心者・独学者向けのピアノ練習や
 楽譜の読み方など音楽の基礎的なお勉強に関する
 YouTubeのピアノ演奏の動画鑑賞についての感想として、
 「やっぱり現状のピアノは右利き向けなんだ」と思ったことなど
 ダラダラと書いてみました。

 今回は、その続きになります。

 図書館で見つけた

 『初心者の為のキーボード講座 ゼロから始められるあんしん入門書』
 (自由現代社 2022.8.30)

230602keyboaud-kouza 

 を読んでちょっと試してみたこと、思ったことなど、
 つれづれなるままに書いてみましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (13)
  ◆ キーボード演奏での指使い ◆
   ~ 「ピアノってやっぱり右利き用なんだ!」の巻・続き ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●指使い

『初心者の為のキーボード講座』でもそうでしたが、
前回紹介しました『まり先生のかんたんピアノレッスン』でも、
指使いについて説明されています。

両手の指について、指番号というものが付されていて、
親指から順に小指まで、1番から5番まで。

右手も左手も同じで、親指が1番で小指が5番です。

 

――(左手)――― ―――(右手)――

5|4|3|2|1 1|2|3|4|5 

小|薬|中|人|親 親|人|中|薬|小
指|指|指|差|指 指|差|指|指|指
      指     指

 

 ●「ドレミファソラシド」を弾いてみる――右手

で、「ドレミファソラシド」を弾いてみる場合の指使いというのが、

右手の場合――「真ん中のド」から右側(高音部)へ。

ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド
1・2・3・▼1・2・3・4・5
親・人・中・▼親・人・中・薬・小

▼の時に、親指を中指の下をくぐらせるのだそうです。
そうして、ファ以下を親指以下の指で弾くとなめらかに弾ける、と。

<指くぐり>という技を使います。

 

逆に、「ドシラソファミレド」と上から降りてくるときは、

ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド
5・4・3・2・1・▲3・2・1
小・薬・中・人・親・▲中・薬・小

▲の部分で、<指くぐり>ならぬ<指ごえ>なる技を使うのです。

中指で親指を越えるのですね。
こうして滑らかに演奏するそうです。

230602righthand

(画像:『初心者の為のキーボード講座』「第2章 メロディを弾こう」から<指使い>右手の図)

 

 

 ●「ドレミファソラシド」を弾いてみる――左手

次は、左手の場合――「真ん中のド」より1オクターブ下の「ド」から
上に「真ん中のド」まで。

ド・レ・ミ・ファ・ソ・ ラ・シ・ド
5・4・3・2 ・1・▲3・2・1
小・薬・中・人 ・親・▲中・薬・小

右手の場合とは逆で、「ソ」のあと<指ごえ>で、
「ラ・シ・ド」は、「中・薬・小」と滑らかに続けて弾く。

 

「ドシラソファミレド」と上から降りてくるときは、

ド・シ・ラ・ ソ・ファ・ミ・レ・ド
1・2・3・▼1・2・3・4・5
親・人・中・▼親・人・中・薬・小

「ラ」のあと<指くぐり>で、「ソ・ファ・ミ・レ・ド」と親指から
滑らかに続けて弾きます。

230602lefthand

(画像:『初心者の為のキーボード講座』「第2章 メロディを弾こう」から<指使い>左手の図)

 

「真ん中のド」といいましても、実際には真ん中やや左寄りの「ド」で、
ここからの一オクターブ分の白鍵8つ分が
キーボード全体のほぼ真ん中の位置になっているようです。

そして、この真ん中の一オクターブからの展開が右手で、
ここから一オクターブ下のドからのポジションが、
左手の持ち場となっているのです。

右手と左手では、
「真ん中のド」をはさんで右側と左側に持ち場が分かれる、
ということのようです。

 

 ●大譜表

『初心者の為のキーボード講座』の「第2章 メロディを弾こう」に、
「大譜表」という項目があり、

 《鍵盤楽器は音域が広いため、
  ト音記号(右手)とヘ音記号(左手)が上下二段になった
  大譜表が通常用いられます。
  中央のドから右手は高い音へ、左手は低い音へ白鍵の音を並べると
  下のようになります。
  五線に収まらない高い音や低い音は加線が追加されていきます。》

(ここでは図を示すことができませんので、言葉で書いておきます。)

右手:上段:ト音記号の五線譜の下にある一つ目の加線が「真ん中のド」
左手:下段:ヘ音記号の五線譜の上にある一つ目の加線が「真ん中のド」

230602daifuhyou

(画像:『初心者の為のキーボード講座』「第2章 メロディを弾こう」から<大譜表>の図)

 

 ●鍵盤楽器の音階配置や演奏の指使いについて

今回の「指使い」は、知ってる人は「なんだ、こんなこと!」
という感じでしょうけれど、
私のようにまったくの素人――初心者には、
「なるほど、よく考えたものだ」と関心するばかりの内容でした。

「よく考えたものだ」とはいうものの、これはやはり右利きの人が――
左手よりも右手の方が使いやすい右利きの人が、
考えに考え抜いた上での標準としての、音階の鍵盤配置であったり、
演奏のための指使いであったり――するのですよ、やっぱり! これは。

もし「強度の左利き」の私が考えるなら、
当然音階の配置は、「左手側が高音部」で「右手側が低音部」で、
「真ん中のド」も「やや右寄り」に位置して、
左手がより動かしやすい音階の配置にして、
「メロディは左手で演奏」し、「伴奏は右手が担当」して付いてくる、
というスタイルになるでしょう。

 

 ●音楽の才能と左利き

以前から、音楽能力には利き手による違いがあり、左利きの方が優れる、
といわれているといいます。

八田武志さんの著書『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022)の
「第1章 優れる左きき」に「音楽の才能と左利き」という項目があり、
プロの音楽家や音楽大学の学生を対称とした研究が紹介されています。

この研究では全体としては、左利きの人の割合は高くなかったそうです。
しかし、専門とする楽器との関係で特徴がある、といいます。

 《オルガンやピアノ、ハープなどのように
  左右の手が独立した運動供応を必要とする楽器の専門家には
  両手ききの傾向が強いが、
  ヴァイオリンやフルートなどのように、
  おもに左右の手が統合的な動作をする楽器の専門家は
  両手ききの傾向が弱かった。》pp.38-39

 

左右の手で別々の音を奏でるピアノやハープのような楽器では、
両手がある程度器用に動かせる<両手利き>傾向の人が多い。

一方、
左右の手が別々の動作(弦を押さえる、弦を弾く等)――を通して、
一つの音を演奏する、ギターやヴァイオリンのような楽器では、
両手が器用に使える両手利きの傾向の人は少なく、
一般的な片手利きの傾向の人が多い、というのでしょう。

ということは、
ギターやヴァイオリン、あるいはフルートなどの演奏者は、
片手利き傾向の強い人であればあるほど、
「自分の利き手を活かせる」楽器が必要になる、ということでは?

現実に、ギターでは、多くの左利きの演奏者がいます。
右用の楽器だけではなく、左用の楽器も製作販売されています。

他の楽器でもこれからはもっと多く、
左利き対応の楽器が求められるようになってゆくのではないか、
と思われます。

どうでしょうか。

*参照:
八田武志『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022/5/16)

220518hattatakesi-hidarikiki-2

(画像:八田武志・著『左対右 きき手大研究』の増補文庫版と元版のDOUJIN選書版)

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い」と題して、今回も全紹介です。

前回の「「ピアノってやっぱり右利き用なんだ!」の巻・続き」として、YouTubeの動画や『初心者の為のキーボード講座 ゼロから始められるあんしん入門書』(自由現代社 2022.8.30)で学んだ、キーボード演奏時の指使いについての紹介と、私なりに考えたことを書いてみました。

「よくできた楽器だ」と思う、反面やっぱり右利き用にこしらえられたものなんだなん、と実感してしまいます。

なんとしても「左右反転楽器」が欲しいものだ、と思ってしまいます。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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