私の読書論181-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(後)初読編-楽しい読書360号
(まぐまぐ!)古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】
2024(令和5)年2月15日号(No.360)「私の読書論181-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(後編)初読編ベスト3 」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和5)年2月15日号(No.360)「私の読書論181-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(後編)初読編ベスト3 」
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「私の年間ベスト3・2023年フィクション系(後編)」です。
<フィクション系>は、文字通りフィクション、
小説等の創作ものを指します。
今回はいよいよ「初読編ベスト3」を。
「再読編」
『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2024(令和5)年1月31日号(No.359)「私の読書論180-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(前編)総リスト&再読編 」
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.1.15
私の読書論180-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(前)総リスト&再読編-楽しい読書359号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/01/post-244657.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/24ab2ce38b836145b195398a2c4197f6
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- 青春ミステリか? 老人探偵団か? -
~ 私の年間ベスト3・2023フィクション系(後編) ~
2023年フィクション系ほぼ全書名紹介&初読編ベスト3
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●<初読編ベスト3>候補
<初読編ベスト3>の候補となる、
初読のフィクションの全書名を紹介してみましょう。
例年のように簡単に分類してみましょう。
(1)メルマガ用のお勉強の本
(2)それ以外の古典の名作
(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
(4)個人的な趣味で、好きな作家、
ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など
・・・
(1)メルマガ用のお勉強の本
・『曹操・曹丕・曹植詩文選』川合 康三/編訳 岩波文庫 2022/2/17
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――読書メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』の
参考資料。
*参照:『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2023(令和5)年3月31日号(No.339)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(21) ―曹丕(そうひ)」
『レフティやすおのお茶でっせ』2023.3.31
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(21) ―曹丕(そうひ) -楽しい読書339号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/03/post-849fb1.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e03d798d0eb5364d8cd88d8d0fc20004
(2)それ以外の古典の名作
・『八犬伝(上・下)』山田風太郎 山田風太郎傑作選・江戸篇 河出文庫
2021/2/5
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――江戸時代の戯作本、滝沢馬琴『南総里見八犬伝』の「虚の世界」と、
それを書く馬琴が画家・葛飾北斎等を相手に、日常の作家として、一人の
世帯主としての葛藤を語る姿を描く「実の世界」を交互に綴る、風太郎版
『八犬伝』。
・『世界推理短編傑作集6』戸川安宜編 創元推理文庫 2022/2/19
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――2018年にリニューアルされた江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』
全5巻を補完する第6巻。未収録作家13人の古典的名作を収録。冒頭、
1870年発表のエミール・ガボリオ「バティニョールの老人」は、左手に
よるダイイング・メッセージという<左利きミステリ>。既刊の短編集や
アンソロジーに収録されているものも多いが、まとめて読めるのは便利。
(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
特になし。
(4)個人的な趣味で、好きな作家、
ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など
【新井素子】
・『二分割幽霊綺談』講談社 1983
――パラレルワールドにつながる?トンネルの向こうとこちらで
繰り広げる奇想冒険談。
『二分割幽霊綺談』講談社文庫 1986/3/1
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・『・・・・・・絶句(上下)』早川書房 新鋭書下ろしSFノヴェルズ
1983/12/15, 1984/1/15
――異星人の起こした事故で、新井素子の創作したインナー・スペースが
現実化して大混乱……という奇想SF。
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・『あなたにここにいて欲しい』文化出版局 1984/7/1
――自分一人ではなにもできない女性と、彼女の世話をすることに自己の
存在意義を認めてきた女性。小学校以来の二人の友人同士の交流に、
新たな人物が現れ、互いの相互依存があらわになる……。
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――80年代、本屋さん時代に買ってそのままになっていた本たち。
当時の人気作家でしたが、今では現行本がほとんどないようです。
【リチャード・オスマン】
・『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』羽田詩津子訳 ハヤカワ・ミステリ
2022/11/2
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――第一作では謎の人物だった、老人探偵グループ〈木曜殺人クラブ〉の
中心メンバーのエリザベスと、死んだはずのかつての同僚英国諜報員の
事件。彼はダイヤを持ち逃げし、諜報組織とマフィアから追われていた。
メンバーは、この国際的陰謀との戦いに乗り出す。
一方で、メンバーの一人元精神科医のイヴラヒムが一人で町に出たとき、
若者に襲われスマホを奪われる、という事件が起きる。このとき、肉体の
負傷以上に、精神的にまいってしまう。それを老人仲間たちが支え、
励ます姿の美しさ。さらに精神科医の彼が女性警官の相談を受けたときの
回答も読ませます。
・『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』リチャード・オスマン 2023/7/4
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――第三作では、かつて大規模詐欺事件を追求するうちに事故死した
女性キャスターの事件を、有名キャスターと捜査を始める。
一方エリザベスは、マネーロンダリングにまつわる事件に巻き込まれる。
以上、イギリスの高級高齢者施設に住む老人たちの探偵クラブ
〈木曜殺人クラブ〉の面々による探偵冒険譚のそれぞれ第二作と第三作。
老人たちの会話が読ませます。著者は第一作を書く前に、高齢者施設で
取材もしたというのですが、老人の仲間入りをした現在の私が読んでも、
迫るものがあって、単なる娯楽小説に終わらず、読む価値ありの作品に
なっているように感じます。
【ホリー・ジャクソン】
・『自由研究には向かない殺人』服部京子訳 創元推理文庫 2021/8/24
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出版社の紹介文《イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と
並行して“自由研究で得られる資格(EPQ)"に取り組んでいた。題材は
5年前の少女失踪事件。交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が
少女を殺害して自殺したと発表した。少年と親交があったピップは彼の
無実を証明するため、自由研究を隠れ蓑に真相を探る。調査と推理で
次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。
ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、イギリスで大ベストセラーとなった
謎解き青春ミステリ!》
・『優等生は探偵に向かない』服部京子訳 創元推理文庫 2022/7/20
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出版社の紹介文《人の兄ジェイミーが失踪し、高校生のピップは調査を
依頼される。警察は事件性がないとして取り合ってくれず、ピップは
仕方なく関係者にインタビューをはじめる。SNSのメッセージや写真
などを追っていくことで明らかになっていく、失踪当日のジェイミーの
行動。ピップの類い稀な推理で、単純に思えた事件の恐るべき真相が
明らかに……。『自由研究には向かない殺人』待望の続編。この衝撃の
結末を、どうか見逃さないでください!》
・『卒業生には向かない真実』服部京子訳 創元推理文庫 2023/7/18
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出版社の紹介文《わたしはこの真実から、決して目を背けない。『自由
研究には向かない殺人』から始まったミステリ史上最も衝撃的な3部作
完結編!
大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。無言
電話に匿名のメール。首を切られたハトが敷地内で見つかり、私道には
チョークで首のない棒人間を書かれた。調べた結果、6年前の連続殺人
事件との類似点に気づく。犯人は服役中だが無実を訴えていた。ピップ
のストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと似ている
のはなぜなのか。ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない
殺人』三部作の完結編!》
――数々のミステリベスト10で上位にランクインした、女子高校生ピップの
探偵譚三部作。さわやかな青春ミステリとして、謎解きミステリのように
開幕したシリーズでしたが、第三作では、意外な展開になります。
ストーカー行為を受けたピップが反撃に転じるのですね。真実とは何か?
非常に重たい問いかけです。彼女の選択を肯定できるかどうかが、
その人の人間としての一つの試金石ともいえます。
その時その時で人は意外な行動を取ることもあります。最終的に、人は、
起きてしまったこと、済んでしまったことを変えることはできません。
その時点で、人は自分の信じる道をただ前へ、前へと向かって進むしか
ないのです。
・『マジック・ミラー』有栖川有栖 講談社文庫 1993
新装版 マジックミラー (講談社文庫) 文庫 – 2008/4/15
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――双子の兄弟による兄嫁殺しのアリバイ・トリックもの。
被害者の妹が推理作家とともに謎に迫る。
・『不吉なことは何も』フレドリック・ブラウン 越前 敏弥 訳
創元推理文庫 2021/9/21
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――《『真っ白な噓』に続く巨匠の代表的ミステリ作品集》という
【名作ミステリ新訳プロジェクト】の一冊。アリバイ・トリックものの
中編「踊るサンドイッチ」がお目当てで読んだ一冊だったが。
・『スペースマン―宇宙SFコレクション(1)―』伊藤典夫、浅倉久志編
新潮文庫 1985/10/1
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・『スターシップ―宇宙SFコレクション(2)―』伊藤典夫、浅倉久志編
新潮文庫 1985/12/1
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――この二冊は本屋さん時代に買ってそのままだった、宇宙ものSFの
アンソロジー。ハインライン「地球の緑の丘」やアシモフ「夜来たる」等
名作も多く散りばめられた好アンソロジー。
・『ラブ・フリーク 異形コレクション(1)』井上雅彦監修
広済堂文庫―異形コレクション 1 1997/12/1
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――書き下ろしの恐怖小説・怪奇小説・幻想小説のアンソロジー第一弾。
異常な状況下の恋愛を描いたもの。集中一番のオススメは、岡崎弘明
「太陽に恋する布団たち」。明るく優しい気持ちになれる名作だろう。
・『下町ロケット ヤタガラス』池井戸潤 小学館文庫 2021/9/7
――『下町ロケット ゴースト』に続く、帝国重工・財前との共同事業、
準天頂衛星「ヤタガラス」を利用した無人農業ロボット開発での、
下町中小企業との競争物語。
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以上17点ほどでした。
思いのほか少なく、ベスト3を選ぶのも結構大変と思われます。
といいつつ、勝負は決まっている感じです。
●2023年フィクション系<初読編べスト3>
今回の<初読編ベスト3>は、以下の作品となります。
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【2023年フィクション系<初読編べスト3>】
(1)【ホリー・ジャクソン】
・『自由研究には向かない殺人』服部京子訳 創元推理文庫 2021/8/24
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・『優等生は探偵に向かない』服部京子訳 創元推理文庫 2022/7/20
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・『卒業生には向かない真実』服部京子訳 創元推理文庫 2023/7/18
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(画像:【ホリー・ジャクソン】女子高校生ピップ三部作
『自由研究には向かない殺人』『優等生は探偵に向かない』
『卒業生には向かない真実』創元推理文庫―創元推理文庫のサイトから)
(2)『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン
羽田詩津子訳 ハヤカワ・ミステリ 2022/11/2
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(3)『八犬伝(上・下)』山田風太郎 山田風太郎傑作選・江戸篇
河出文庫 2021/2/5
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(画像: 図書館本『八犬伝(上・下)』山田風太郎 山田風太郎傑作選・江戸篇 河出文庫 2021/2/5)
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(1)と(2)は、真逆の主人公たちを描いています。
方や高校生、方や70歳を越えた老人たち。
(3)の<実の世界>の馬琴たちももう老人です。
ハツラツとした高校生たちの探偵冒険の世界と、同じ現代を舞台にして、
SNS等を活用する探偵物語でも、主人公がこれほど異なれば、
読む側の私も高齢者であり、感情移入的には、後者に軍配が上がっても
おかしくありません。
ただ一種の憧れに似た何かがあり、こういう青春ものには
肩入れしたくなるのも事実です。
老人への親近感と青春へのあこがれといった、個人的な読者として
感情的な評価は別にして、作品本来の評価として、
三部作込みの評価というのも、ちょっと卑怯な気もしますが、
あえて<ベスト1>に、この<ピップ三部作>を上げてみたいものです。
真実はいずれ明らかになるだろうし、正義は必ずまっとうされるもの、
と私は信じています。
ピップにもそう信じて生きていってほしいと思います。
2位には、老人の心理といったものをたっぷり書き込んだ探偵物語の、
『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』の方を上げたいと思います。
第三作も面白いのですが、ここでは、個人的な感情移入的な評価で。
元精神科医で80歳のイヴラヒムと女性警官のドナとの対話の一部を
引用しておきましょう。
《「時間は戻ってこないことは知っているね?
友人、自由、可能性も?」
(略)
「時間を取り戻すことはあきらめよう。過去は幸せだった時間として
記憶するんだ。きみは山の頂上にいた。今は谷間にいる。今後も
数えきれないほど、そういうことは起きるだろう」/
「じゃあ、今は何をすればいいんですか」/
「もちろん、次の山を登るんだ」/
「ああ、そうか、そうですよね」シンプルだ。
「そして次の山を登ったら?」/
「うーん、それはわからないよ、そうだろう? きみの山だ。
他の誰も今まで登ったことはないんだから」
(略)
「きみは好きなようにすればいいんだ。だが、前を見ろ、
後ろを振り返るんじゃない。そして、きみが登るあいだ、
わたしはここにいるよ。その肘掛け椅子は、
必要とあらばいつでもきみのものだ」
(略)
「孤独はつらいものだ。大きな苦しみのひとつだ」
(略)
「きみはちょっと迷子になっただけだよ、ドナ。
そして、人生で一度も迷わなかったら、まちがいなく、
おもしろい場所には一度も旅をしなかったということだ」》pp.358-360
そして、若者の襲撃によるケガの後、一人では町に出られなくなり、
落ち込んでいるイヴラヒムに、今度はドナがいいます。
《「あなたは悲しそうに見えます」/
「ちょっと悲しいんだ、たしかに」イヴラヒムは白状する。
「怯えているし、そこから抜け出す方法が見つからずにいる」/
「次の山に登る、というのが、あたしからのアドバイスです」/
「それだけのエネルギーがあるのか、自信がない」
(略)
「肋骨は痛むし、そのせいで胸まで痛い気がするんだ」/
「あなたが登るあいだ、あたしはここにいますよ」》p.360
3位には、『八犬伝』を。馬琴の『八犬伝』のダイジェストに当たる、
<虚の世界>と、それを語る<実の世界>での、作家として、
世帯主として家庭第一を心掛けながら執筆に励む馬琴と、
家庭を顧みることのない北斎。
さらに、鶴屋南北らとの会話の中に出て来る、芸術論や人生論の
おもしろさ。
『八犬伝』のおもしろさはもちろんですが、この芸術論や人生論に
著者・山田風太郎の思いも重なっているようで、
読むほどに迫ってくるものがありました。
以上、<ベスト3>でした。
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本誌では、「私の読書論181-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(後編)初読編ベスト3 」と題して、今回も全文転載紹介です。
前回に引き続き、<フィクション系>の後編、初読編のベスト3発表でした。
改めて、三部作をひっくるめるのはどうか、という気もします。
しかし、この作品に関しては、一冊ずつもいいですし、しかも、三作で到達するところというものもある、という意味で、これは致し方ないという気もします。
<木曜殺人クラブ>も二作上げています。
こちらの方は、昨年二作読んだということで、ついでに上げているだけで、正味は第二作による結果です。
『八犬伝』も二巻本でしたし、今年は、冊数的には<ベスト3>が3冊ではなくなったというのは、ちょっとした事件だったかもしれませんね。
・・・
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(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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