2025.03.15

[コラボ]<左利きミステリ>第7回国内編(後)再発掘作-楽しい読書384号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!) 
【最新号】

2025(令和6)年3月15日号(vol.18 no.4/No.384)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第7回 国内編(後編)再発掘作紹介」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和6)年3月15日号(vol.18 no.4/No.384)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第7回 国内編(後編)再発掘作紹介」
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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
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第682号(Vol.21 no.5/No.682) 2025/3/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第7回 国内編(前編)新規発見作紹介」
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*「前編」も見てね! 「前編」はこちらで↓
 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(9:40 配信)

登録はこちら↓
https://www.mag2.com/m/0000171874.html

または、『レフティやすおのお茶でっせ』のサイドバーで!
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/

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 今回も先月に引き続き、私の発行しているメルマガ
 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』と
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』のコラボ企画、
 <左利きミステリ>の第7回目。

 過去5回は、第6回の(前編)をご参照下さい。

第680号(Vol.21 no.3/No.680) 2025/2/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第6回 海外編(前編)新規発見作紹介」

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  ★ コラボ企画 ★

 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』
  <左利きミステリ>第7回 国内編
(前編)新規発見作紹介

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 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
  <左利きミステリ>第7回 国内編
(後編)再発掘作紹介

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<左利きミステリ>についてです。

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』で、
「名作の中の左利き/推理小説編」として紹介してきました。

その後、機会ある毎に新たな情報を追加しながら、今日に至っています。

今回は、<国内編>を紹介していきます。

 ・・・

*<左利きミステリ>とは、
 左利きの人が主要登場人物である物語や
 左利きの性質をトリックに活用した推理小説、
 左利きや左手や左右に関連した推理小説、サスペンス小説、
 ホラー作品等の広義の「ミステリ」の総称をいう。


 国内ミステリ : 東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』
 海外ミステリ : エラリー・クイーン『シャム双子の秘密』

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*(新たに表示記号の追加・変更があります)

 1843:新聞・雑誌等初出年代 (1927):書籍刊行年代
 (フランス/中国):出版国/作品の舞台となる国―出版国と異なる場合
 「」:短編、長編の一章 『』:収録短編集、長編 
 エミール・ガボリオ:作者名 
 [シャーロック・ホームズ]:登場する「名探偵」(シリーズ探偵)の名
 ・特記事項
 [未]:<左利きミステリ>にもう一歩、未成熟
 [準]:<左利きミステリ>に準ずる
 [外]:番外編 (左利き/左手/左右関連)
 [H]:ホラー [SF]:SF [F]ファンタジー
 [傍]:メインのストーリーとは無縁の傍系の話
 [参]:参考作品(一般小説・児童書、小説以外のノンフィクション等)
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<左利きミステリ>の登場人物・分類表

 (探):左利きの探偵/探偵役
 (被):左利きの被害者
 (犯):左利きの犯人
 (容):左利きの容疑者
 (他):左利きのその他の事件関係者
 (脇):脇役、通りすがり、妄想中の左利きの人物
    ([傍]メインのストーリーとは無縁の傍系の話に登場する人物)

<左利きミステリ>としての紹介の都合上、
作品のネタバレとなるケースがあります。
基本的に、キーポイントとなる読みどころに関しては
問題が起きないように留意しながら紹介していますが、
ときに一部ネタバレになる場合もありますが、ご容赦ください。

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<左利きミステリ>:<国内編> 再発掘作紹介

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(再発掘/リスト漏れ<左利きミステリ>)
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今回は、<左利きミステリ>の国内編の再発掘編。
再発掘もしくは、忘れ物ですね。

ただ、内容を御覧いただければ分かりますように、
純粋に「ミステリ」と呼べそうなものは、山本周五郎の作品ぐらいです。
ほとんどが「非ミステリ」という感じです。
広義のミステリとしても、ホラー系です。

参考作品として「左利き」の性質といいますか、「左利き」の本質、
あるいは、発表当時の社会の平均的な「左利き」感、もしくは
「左利き」に対する見方というものを知っていただくための情報として、
その価値があるかと思います。

 

 ●「一粒の真珠」山本周五郎

1947「一粒の真珠」山本周五郎 (容)
<左利きの容疑者、「ぎっちょの文治」>
初出『新青年』1947年2月号
――窃盗容疑者の許嫁者の元不良の徒「ぎっちょの文治」。
 お嬢様の首飾りの真珠を盗んだ罪をかぶせられた小間使いの許婚者の
 文治は、元不良ということで、容疑者の共犯と疑われる。

・『山本周五郎長篇小説全集 23 寝ぼけ署長』新潮社 2014/11/27
(Amazonで見る)

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・『寝ぼけ署長』山本 周五郎/著 新潮文庫 第二版 2019/3/28
(Amazonで見る)

 

*参照:『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第214号(No.214) 2010/6/5
<左利きムーヴメントLHM>宣言!“左利き紳士・淑女録”

【新企画】“左利き紳士・淑女録”
(2)架空の人物編
■か行-き・ぎ■
【ぎっちょの文次】ぎっちょ・の・ぶんじ
・山本周五郎/著「一粒の真珠」の登場人物
  新潮文庫『寝ぼけ署長』(1981)収録
・本名 西山文次
・建具屋職人
 《十歳前後で孤児になり、
  富屋町の表通りに店のある建具屋の家で育てられ、
  親方は鈴木秀吉といい、
  文次にずいぶん目をかけて仕込んだし、
  当人も左利きが難だったけれど手の性が良く、
  十六七になると一人前の仕事をするようになった。》p.77
・若くして金を稼ぐようになり、一度ぐれて、
 「ぎっちょの文次」と呼ばれる不良の徒となる
 その後立ち直り、結婚を機に建具屋として独立する

 

 ●「眠れる美女」川端康成

1960.1-1961.11「眠れる美女」川端康成 [H]
『新潮』1960(昭和35)1月~1961(昭和36)11月
<怪しい宿の左利きの女(女性管理人?)>
――変態老人男性の女体偏愛小説? 老人の性を扱った佳編。1999年の
 新潮文庫「人は誰でも年を取る」フェアの一冊にも選ばれています。
 怪しい性風俗店の女主人を「左利き」らしく設定し「怪しさ」を演出
 していると、巻末の三島由紀夫の解説でもそのように解釈しています。
・『眠れる美女』川端 康成/著 新潮文庫(新版) 2024/8/13
(Amazonで見る)

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《(略)女は立って、隣室へ行く戸の鍵をあけた。左利きであるのか
 左手を使った。(略)なんでもないうしろ姿なのだが、江口にはあやし
 いものに見えた。帯の太鼓の模様にあやしい鳥が大きかった。(略)》

 

 ●[参考]「片腕」川端康成

1963.8-1964.1「片腕」川端康成 [参][H]
<男と片腕を交換した若い女性の「右腕」>
『新潮』1963(昭和38)8月~1964(昭和39)1月
――右腕を外して男に貸す娘。男は腕を取り換えて眠り、起きると元に
 戻すが、女の腕は冷たくなって……。『眠れる美女』に併録されている
 ように、こちらは孤独な男の性欲を描いている奇妙な味の一編。
・『眠れる美女』川端 康成/著 新潮文庫 2024/8/13
(著者没後50年、浅田次郎氏の新解説を追加した増補版)
(Amazonで見る)

 

《「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。/そして右腕を
 肩からはずすと、それを左手に持って私の膝の上においた。/
 「ありがとう。」と私は膝を見た。娘の右腕のあたたかさが膝に
 伝わった。》p.135

 

 ●[参考]『流しのしたの骨』江國香織

(1996.7) 『流しのしたの骨』江國香織 [参]
<「左利き」の恋人は便利?>
――三女の「こと子」を語り手に奇妙な家族を描く小説。こと子は、
 ダブル・デートの相手の恋人たちが手を繋ぎながらフォークを使うのを
 見て便利だと思い、以後、食事の際右手を釣って左手を使い始めます。
・『流しのしたの骨』江國香織/著 新潮文庫 1999/9/29
(Amazonで見る)

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《「あなたのお友達は左利きなの?」(略)
 「ほら、あの二人ずっと手をつないでいたでしょう? 
 もともと左利きなのか、それとも彼女と手をつないでいるために
 左手を使っていたのかしらって……」(略)
 「左利きだよ」/私は感心した。恋人が左利きだとすごく便利だ。
 そう感想を述べると、深町直人はわらっていた。》p.10
《「利き腕のことだけど、ことちゃんが練習してみれば? 真面目に
 やれば、フォークくらいきっとすぐ左手で使えるようになるよ」/
 「……そう思う?」/小さな弟は力強くうなずいた。》p.14
《ごはんを食べるときに右手を使ってしまわないように、
 右腕をスカーフで吊ってるの」/
 父は私の右腕をじっとみつめた。母も食べるのをやめている。
 弟だけがお行儀良く食べ続けながら、/「魚、むしってあげるよ」/
 と言った。/「ありがとう」》p.18
《「……なぜ右手を使っちゃまずいんだ?」(略)
 「だって便利でしょう? 両方使えると」/「……」/
 父は少し黙ってそうか、と言うと再び自分の食事にもどる。/
 「かまわないのよ。こと子。私はおもしろいと思うわ、右手を使わずに
 ごはんを食べるのも」/母が言い、そのあとはもう誰もなにも
 言わなかった。》p.19

 

 ●「左きき」伊集院静

(1996.10) 「左きき」伊集院静 (犯?/失踪人)
<姿を消した女の特徴は「左利き」>
――左利きの女性を探してほしいという依頼を受けた「探偵」(?)。

『昨日スケッチ』伊集院 静/著 講談社 1996/10/1
(Amazonで見る)

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・『昨日スケッチ』伊集院 静/著 講談社文庫 1999/11/1
(Amazonで見る)

 

「左きき」 p165-170
《「この女を探してる」(略)「ハワイで知り合った。日本へ一緒に
 戻ってきたら突然、いなくなった」/「名前は?」/「ミチコ……。
 それしかわからん」/「一緒にいて、姓も聞かなかったのか」/「そう
 いう関係だった」/国谷が少し悔むように言った。/私は渡された
 写真の女の顔をじっと見た。Tシャツに短パンツというラフな恰好で、
 ベッドサイドに腰かけて女は笑っていた。特別美人というわけではない
 し、どこかに特徴がある女でもなかった。》

 

 ●『左利きの剣法 本所剣客長屋』押川國秋

(2009.3) 『左利きの剣法 本所剣客長屋』押川國秋 [時代小説](脇)
<左腕一本の剣士>
――敵討ちを果たすべく江戸に出てきた古井虎之助を主人公とする
 時代小説シリーズ第二作、虎之助に右腕を切り落とされて左腕一本で
 剣を振るう剣士二人が登場する。 (ホームページ『左利きを考える 
 レフティやすおの左組通信』「小説で読む左利き」2009.9.13 より)
・『左利きの剣法 本所剣客長屋』押川國秋/著 講談社文庫 2009/3/13
(Amazonで見る)

 

 ●『闇彦』阿刀田 高

(2010.7)『闇彦』阿刀田 高 [H]
『闇彦』新潮社刊
<ホラー/ファンタジー、左利きのお話し上手の血を継ぐ少女>
――海彦、山彦、闇彦という、海の神、山の神、そして夜の神。
 夜の神は、語り部の血を引く一族で、語り手の小学生時代の同級生稲子
 も、語り手もまた、同じストーリーを紡ぐ血筋の仲間だったのか……。
・『闇彦』阿刀田 高/著 新潮文庫 2013/12/24
(Amazonで見る)

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《「ぎっちょでした。だーすけ字が書きにくくて、なんでも覚えてしまう
 んです。お話をたくさん聞かせてくれました」》p.18
《――稲子はどこへ行ったのか――/海の向こうに闇彦の島がある。
 死んだ人が行くらしい。/(略)人知を超えたあやかしの……闇彦の
 しわざかもかもしれない(略)――稲子はそこから来て、そこへ帰って
 行ったのかな――/お話がうまいのは、そのせいかもしれない。
 しばらくは心に残った。》p.24

 

 ●『ドリームバスター』宮部みゆき

(2011.11)『ドリームバスター』宮部みゆき [SF](ヒーロー)
<SFファンタジーの少年ヒーロー、左利きのD.Bシェン>
――悪夢から人をすくいだす、主人公の少年シェンと師匠のマエストロの
 二人のドリームバスター(D.B)の冒険物語。
・『ドリームバスター』宮部みゆき/著 山田 章博/イラスト 徳間書店
2001/11/1
(Amazonで見る)

《(略)話しながら彼が背中を向けたとき、細長くて少し反りのかかった
 刀を、斜めに背負っているのが見えた。(略)
 このタイプの長い刀は、鞘を払うときも、真っ直ぐには抜けない。
 自分の身体を中心に、ちょうど背負い投げをするように、
 斜めに半円を描くようにして抜くのだ。
 だから、右利きなら左肩の後ろに柄が来るように背負う。
 左利きなら右肩に背負う。少年の刀の柄は右肩に来ていた。/
 「君は左利きなんだね」/
 伸吾に問われて、腕組みして歩き回っていた少年は足を止めた。/
 「へえ……最初にそういうことを訊くD・Pは初めてだぜ」》

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本誌では、「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:<左利きミステリ>第7回 国内編(後編)再発掘作紹介」と題して、今回も全文転載紹介です。

2月、3月と月の半ばの号では、こういう<左利きミステリ>について書いてきました。
関心のない方には、無意味な企画かもしれません。
「左利き」のみならず、ミステリや推理小説のトリックやストーリーの一つのテーマと言いますか、モチーフとして使われる小道具の一つとして、関心を持つ方もいるのではないか、と思っています。

そういう面からだけではなく、ひいては「左利き」そのものにも関心を持っていただければ、という気持ちで続けています。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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[コラボ]<左利きミステリ>第7回海外編(前)新規発見作-週刊ヒッキイ第682号

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii(まぐまぐ!)

【最新号】

第682号(Vol.21 no.5/No.682) 2025/3/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第7回 国内編(前編)新規発見作紹介」

 

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  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
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第682号(Vol.21 no.5/No.682) 2025/3/15
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<左利きミステリ>第7回 国内編(前編)新規発見作紹介」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和6)年3月15日号(vol.18 no.4/No.384)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第7回 国内編(後編)再発掘作」
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*「後編」も見てね! 「後編」はこちらで↓
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』(12:00 配信)

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 今回も先月に引き続き、私の発行しているメルマガ
 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』と
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』のコラボ企画です。

 以前も何度か試みましたが、その7回目です。

 

【過去のコラボ】1回目から5回目までの詳細は、
↓ の第6回(前編)からご覧下さい。

■6回目――

(前編)
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第680号(Vol.21 no.3/No.680) 2025/2/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第6回 海外編(前編)新規発見作紹介」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.15
[コラボ]<左利きミステリ>第6回海外編(前)新規発見作
-週刊ヒッキイ第680号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-d8dc24.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/04302ce47c2cbca53937e7490e74f91e

(後編)
『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2025(令和6)年2月15日号(vol.18 no.2/No.382)
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:
<左利きミステリ>第6回 海外編(後編)再発掘作紹介」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.15
[コラボ]<左利きミステリ>第6回海外編(後)再発掘作-楽しい読書382号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-4c221d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ebac165aacd639b4e357741dc40953b6

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  ★ コラボ企画 ★

 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』
  <左利きミステリ>第7回 国内編(前編)新規発見作紹介

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 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
  <左利きミステリ>第7回 国内編(後編)再発掘作紹介

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<左利きミステリ>についてです。

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』で、
「名作の中の左利き/推理小説編」として紹介してきました。

その後、機会ある毎に新たな情報を追加しながら、今日に至っています。

今回は、<国内編>を紹介していきます。

 ・・・

*<左利きミステリ>とは、
 左利きの人が主要登場人物である物語や
 左利きの性質をトリックに活用した推理小説、
 左利きや左手や左右に関連した推理小説、サスペンス小説、
 ホラー作品等の広義の「ミステリ」の総称をいう。


 国内ミステリ : 東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』
 海外ミステリ : エラリー・クイーン『シャム双子の秘密』

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*(新たに表示記号の追加・変更があります)

 1843:新聞・雑誌等初出年代 (1927):書籍刊行年代
 (フランス/中国):出版国/作品の舞台となる国―出版国と異なる場合
 「」:短編、長編の一章 『』:収録短編集、長編 
 エミール・ガボリオ:作者名 
 [シャーロック・ホームズ]:登場する「名探偵」(シリーズ探偵)の名
 ・特記事項
 [未]:<左利きミステリ>にもう一歩、未成熟
 [準]:<左利きミステリ>に準ずる
 [外]:番外編 (左利き/左手/左右関連)
 [H]:ホラー [SF]:SF [F]ファンタジー
 [傍]:メインのストーリーとは無縁の傍系の話
 [参]:参考作品(一般小説・児童書、小説以外のノンフィクション等)
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<左利きミステリ>の登場人物・分類表

 (探):左利きの探偵/探偵役
 (被):左利きの被害者
 (犯):左利きの犯人
 (容):左利きの容疑者
 (他):左利きのその他の事件関係者
 (脇):脇役、通りすがり、妄想中の左利きの人物
    ([傍]メインのストーリーとは無縁の傍系の話に登場する人物)

<左利きミステリ>としての紹介の都合上、
作品のネタバレとなるケースがあります。
基本的に、キーポイントとなる読みどころに関しては
問題が起きないように留意しながら紹介していますが、
ときに一部ネタバレになる場合もありますが、ご容赦ください。

 

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<左利きミステリ>:<国内編> 新規発見作紹介

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(新たに見つけた<左利きミステリ>)
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 ●「血の文字」黒岩涙香

(1892)「血の文字」黒岩涙香 (被)
<左利きの被害者による左手のダイイングメッセージ>
――エミール・ガボリオ「バティニョールの老人」の翻案小説。
1892(明治25)年8月刊、小説集『綾にしき』収録
・『日本探偵小説全集1 黒岩涙香・小酒井不木・甲賀三郎集』
 創元推理文庫 1984/12/22
(Amazonで見る)

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《「...あの老人が左得手(えて)で、筆を持つのは左手だと云う事を
 御存じないと見えますな」》p.107

(参考) 1870 (フランス)(被)
「バティニョールの老人」エミール・ガボリオ
<左利きの被害者、左手のダイイング・メッセージ>
「ル・プチ・ジュルナル」(フランス四大日刊紙)1870年7月8日~19日連載
――自分の血で書いた犯人の名と思われるダイイング・メッセージ。
 左手の指に血が付いていたので、予審判事も警察署長も、犯人が誤って
 左手に血を付けて偽装したと判断し、犯人逮捕に辿り着くが……。
・『世界推理短編傑作集6』戸川安宣/編 太田浩一/訳 2022/2/19
(Amazonで見る)

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《右手は汚れていない……べっとりと血にまみれていたのは、
 左手の人差指だった。/では、老人は左手で血の文字をかいたのか……
 そんなばかな……》p.36(太田浩一/訳)
《「...おまえが血に浸したのは、死体の左手だったんだよ……」》
《「ビゴローの親父はもともと左利きだったんだよ!」》p.99

 

 ●「琥珀のパイプ」甲賀三郎

1924「琥珀のパイプ」甲賀三郎 (犯)(被)
<左利きの犯人、左利きの被害者>
『新青年』1924(大正13)年6月
――3つの事件の錯綜を解くと、左利きと右利きの犯人がいたとが判明。
・『日本探偵小説全集1 黒岩涙香・小酒井不木・甲賀三郎集』
 創元推理文庫 1984/12/22
(Amazonで見る)

 

《二人を殺した奴は別だと云うのです。二人とも同じ凶器でやられて
 います。そうして二人とも確かに左肺をやられています。然し一人は
 前からで、一人は後(うしろ)からです。(略)どれも一文字に引いて
 あるのは、左から右に通っています。(略)」》
《「林檎の皮を御覧でしたか、皮は可成りつながっていましたが、左巻き
 ですよ。林檎を剥いたのが左利き、襖を突いたのが右利き、女を刺した
 のが左利き、然し男を殺したのは右利きです」》

 

 ●[参考]「左ぎっちょの正(まさ)ちゃん」小川未明

(1935)「左ぎっちょの正(まさ)ちゃん」小川未明 [参]児童文学
<“左ぎっちょ”の正ちゃんは、不器用!?な左利き>
昭和10年5月『小豚の旅』四条書房 収録
――箸は左、まり投げも左、でも字は右手。最初は左だったけれど、
 お母さんの言葉で右に。でもお父さんは「しぜんのままに」で、
 学校で字を書くときは右、お弁当や家でご飯を食べるときは左。
 まりを投げるのは左で、左ピッチャー。でも“不器用”な正ちゃん。
 “不器用”な例として作者は、近所の小さい子をあつめて“大将”に
 なった彼が、小さい子に頼まれ、じゅず玉を作りますが、思うように
 できず、待ちきれぬ子供たちは紙芝居を見に行ってしまいます。でも、
 頑張って一つ作りあげた彼は、次はもっとうまく作れると思いました。
 挿絵を見ますと、右手で針を持ち、じゅず玉に糸を通そうとしている
 のですが、これでは“不器用”なのも仕方ない気がします。
 昔のお話ですので、現代の眼で見ますと、色々と問題があると思われ
 ますが、その時代の風潮、左利きへの理解度、容認度というものを知る
 資料としてお読み頂きたいものです。
・『定本 小川未明童話全集10』小川 未明 講談社 1977/8/1
(Amazonで見る)

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 《正ちゃんは、左ぎっちょで、はしを持つにも左手です。まりを投げる
 のにも、右手でなくて左手です。/「正ちゃんは、左ピッチャーだね。
 」と、みんなにいわれました。けれど、学校のお習字は、どうしても
 右手でなくてはいけませんので、お習字のときは妙な手つきをして、
 筆を持ちました。最初、鉛筆も左手でしたが、字の形が変になって
 しまうので、これも右手に持つ癖をつけたのです。/お母さんは、
 困ってしまいました。/「はやく、右手で持つ癖をつけなければ。」
 と、ご飯のときに、とりわけやかましくいわれました。すると、
 お父さんが、/「左ききを無理に右ききに直すと、盲(めくら)になる
 とか、頭が悪くなるとか、新聞に書いてあったよ。だから、自然のまま
 にしたおいたほうがいいのじゃないか。」と、おっしゃいました。》

 

 ●「虚像」大下 宇陀児

1955(1956年)「虚像」大下 宇陀児 (容)
<左利きの犯人/左利きの容疑者/鏡のなかの動き>
『サンデー毎日』昭和30年8月7日~12月17日号連載
『虚像』大下 宇陀児/著‎ 毎日新聞社 1956/1/1
――主人公が鏡のなかに見た、ぶきっちょな動きの犯人像の正体は……。
・『日本探偵小説全集3 大下 宇陀児 角田 喜久雄集』創元推理文庫
1985/7/26
(Amazonで見る)

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《(略)鏡の中で見ていたのである。(略)その短刀を握る手つきが、
 どうしてだか、ぶきっちょな、不自然な形に見えた。これはまことに
 重大なことである。》p.198
《問題は、手だった。/釘をうつのに右の手で釘をおさえている。
 だから、金槌のほうは、左の手へ握っているのであった。》p.286
《「うん、どうもね、子供の時分から、癖がついちまったのだ。生爪を
 はがしたことがあって、それから左ギッチョになったのさ」(略)
 「なおせって言われた。みっともないってね。だから、字を書くの
 なんか右手になった。でも、ピンポンしたり、力仕事するとなると、
 やっぱり左手のほうがいいんだな。(略)」》

 

 ●[参考]「左利きの独裁者――東条英機の悲劇」有馬頼義

(1971/昭和46)「左利きの独裁者――東条英機の悲劇」有馬頼義 (犯)
――<左利きゆえに、左手で持った拳銃では心臓を撃てず、右手で失敗>
(初出)『小説昭和事件史3』有馬頼義/著 三笠書房 1971/1/1
・『時代小説大全集6 小説人物日本史 昭和』新潮社/編 新潮文庫
1991/9/1
(Amazonで見る)

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《(略)胸をあけた。そこに、墨の丸があった。東條は左利きであった。
 左手に拳銃を持ち、これを自分の左の胸に向けて、ひきがねを引くこと
 の困難さに、気付いたのだ。しかし、時間がなかった。東條は、思い
 きって拳銃を右手に持ちかえ、ひきがねを引いた。あとのことは、
 覚えていない。東條は、失敗した。その失敗は、軍人としての東條が、
 過去においておかしたあやまちにくらべて、大きすぎただろうか。
 問題にならないほど小さな失敗だっただろうか。》p.107

 

 ●「左利きの月」阿藤玲

(2017)「左利きの月」阿藤玲 (容)?
<恋愛ミステリ? 双子のミラー・ツインズ(兄右利きと弟左利き)の
 兄弟の謎>
――去年のクリスマス・イブに告白した相手はどっちだったのか、
 恋人同士風の写真の人はどっちだったのか、といった謎?を解く。
 登場人物が多く、一度読んだだけでは分かりづらいところがあり、
 ネタが面白いだけに、ちょっと残念な気がします。
・『お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険』阿藤 玲/著
創元推理文庫 2017/8/31
(Amazonで見る)

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《「こうして見ると、本当に鏡に映っているみたいだ。ミラーツインズ
 だっけ」/朔さんは右利き、望さんは左利き、一卵性でも利き手が
 異なる双子をミラーツインズという。二人は鉛筆を持つ手も、さよなら
 と振る手も、左右対称にシンクロしていた。だからおれたちは、二人が
 一緒に居るとき、わざと名字で呼びかけたものだ。同じタイミングで
 手を振るのが見たくて。》p.111

 

 ●[参考]『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸

(2020)『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸 [参]書き方本
「第一章 そもそも「ミステリ」ってそんなもの?」
<「伏線を張るとは?」の例―「左利き」の場合>
――編集者の手になる、本格謎解きミステリ系のミステリ創作の入門書。
・『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸 新潮新書 2020/12/17
(Amazonで見る)

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《例えば、犯人を限定する要素が「左利き」であったとする。
 だとしたら、解決までの過程で、その人物が左利きである、と分かる
 記述がどこかになければならない。なにも、「○×は左利きだった」と
 書く必要はなく、左手で箸を使うとか、右利き用の道具を使いにくそう
 にしているとか、そういったことでいい。それらは複数用意しておく。
 毎回違った見え方――スプーン、筆記用具、ハサミの使い方――
 にして、出現頻度に偏りが出ないよう、物語全体にバランス良く配置す
 る。伏線すべてをちゃんと覚えていてくれるほど読者は親切ではない
 し、そこまで記憶力も期待してはいけない。》p.19

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本誌では、「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書 コラボ企画:<左利きミステリ>第7回 国内編(前編)新規発見作紹介」と題して、今回は全紹介です。

前回のこの記事でも書きましたが、興味の無い人には、ただのゴミ情報かもしれませんね。
しかし、左利きという性質を知っていただくために、役に立つものでもあると考えています。
その時その時の小説家の持っている、持っていた「左利き像」というものが垣間見れるのではないか、と考えています。
それが正しい情報であるかどうかは、それぞれの読者のみなさまがご判断していただければ、と思います。

これらの情報を一人でも楽しんで下さる方がいればいいかな、と思っています。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.12.31

レフティやすおの楽しい読書380号-告知-私の読書論192-私の年間ベスト3-2024年〈リアル系〉『都筑道夫の小説指南』

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!) 【最新号・告知】

2024(令和6)年12月31日号(vol.17 no.23/No.380)
「私の読書論192-私の年間ベスト3-2024年〈リアル系〉」
『都筑道夫の小説指南―増補完全版』中央公論新社」

 

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今年も一年お世話になりました。

コロナ禍以降、心身共に体調不良もありました。
それでも、コロナ禍も一応収まり、
その後少しずつですが、体調も戻りつつある気がします。

来年もなんとか続けていけそうです。

左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』ともども
これからもおつき合いの程、よろしくお願いいたします。

レフティやすお <(_ _)>

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年12月31日号(vol.17 no.23/No.380)
「私の読書論192-私の年間ベスト3-2024年〈リアル系〉」
『都筑道夫の小説指南―増補完全版』中央公論新社」
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 今年も早一年の最終日を迎えました。
 年末年始恒例の「私の年間ベスト3」を。

 その年、もしくは前年に私が読んだ本から
 オススメの「私の年間ベスト3」を選ぶという企画です。

 まずは、「リアル系」から。

 ・・・

 「リアル系」とは、いわゆる論文やエッセイ系の著作、
 実用書のような解説系のものも含めて、を言います。

 それに対して、小説や詩等の文芸作品は「フィクション系」。

 「フィクション」に対しては
 「ノン・フィクション」という言葉があります。

 でも「ノン・フィクション」というと、
 またそれで一つのジャンルのようになってしまうので、
 あえて、どなたかが使っていた
 「リアル系」という言葉を使っています。

 エッセイの中には、フィクションと見まがうような、
 ホラ話的な内容の境界線上の作品もありますけれど。

 まあ、ここでは、論文に準ずるような著作とお考えください。
 言わんとすることは分かりますよね。

 ――と、これは毎度の台詞でした。

 

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 - メルマガの為に読んだ本ばかり?(今年も?) -

  ~ 私の年間ベスト3・2024年〈リアル系〉~

 『都筑道夫の小説指南―増補完全版』都筑 道夫/著 中央公論新社

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 ●2024年の傾向

ここ数年コロナ禍の影響で読書量が減り、少しずつ回復してきましたが、
2020年以降、特にリアル系の読書が減ってしまっています。

今年の読書総数は、60冊どまり――。

リアル系は15冊程度。

今年もまたそのほとんどは、私の二つのメルマガ用に読んだものでした。

ということで、例年通り簡単に分類していきましょう。

 

 ●(1)メルマガ用のお勉強本―中国漢詩、読書、左利き関連

◆メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』向け――

(以下、略)

241109matikara-shoten_20241211162001

(画像:『2028年 街から書店が消える日 ~本屋再生!識者30人からのメッセージ~』小島俊一/著 プレジデント社 2024/5/22

――<元本屋の兄ちゃん>の<町の本屋>論の参考書の一つ。)

◆メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』向け――

(以下、略)

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(画像:『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27

――タイトル通り、左利きのフランス人によるヨーロッパ(主にフランス)における左利き迫害の歴史と、その後の少しずつの解放についての著書。訳者も左利き。原著は2008年の第二版。)

 

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(画像:『すみれのスミレの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅/著  未來社 1992/1/1

――左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの、初エッセイ集。自身の左利きにまつわる話、左利きとヴァイオリンの話などにふれた「涙のひだりきき」という文章を含む。)

 

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(画像:『すみれのスミレの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅/著  未來社 1992/1/1

――左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの、初エッセイ集。自身の左利きにまつわる話、左利きとヴァイオリンの話などにふれた「涙のひだりきき」という文章を含む。

 ●(2)その他の古典系のお勉強本
 ●(3)小説や左利き本等の著作のためのお勉強本

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(画像:『都筑道夫の小説指南―増補完全版』都筑 道夫/著 中央公論新社 2023/10/23

――こちらはズバリエンタメ小説の書き方を実地に、多面的に指南する、都筑流創作術の完全増補版。没後20年記念刊行。評論やエッセイ、推理小説を十代から読んできた作家さんだけに生の創作論で楽しい。)


 ●(4)個人的な趣味、仏教や空海・弘法大師に関する本
 ●私の2023年〈リアル系〉ベスト3候補
 ●私の年間ベスト―2024年〈リアル系〉
 ●小説について思うこと

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今回も冒頭のみの転載です。
冒頭以下は、見出しのみで本文は省略させていただきました。

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 ・・・

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(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

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2024.07.31

<夏の文庫>フェア2024から(2)集英社文庫『鉄道員(ぽっぽや)』浅田次郎-楽しい読書371号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2024(令和6)年7月31日号(vol.17 no.14/No.371)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(2)集英社文庫・
浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』から「ラブ・レター」」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年7月31日号(vol.17 no.14/No.371)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(2)集英社文庫・
浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』から「ラブ・レター」」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2024から――。

 昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 第二回は、集英社文庫の浅田次郎さん『鉄道員(ぽっぽや)』から
「ラブ・レター」を。

【角川文庫の夏フェア】
「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」特設サイト
https://note.com/kadobun_note/n/n94088457149e

集英社文庫『ナツイチ2024』フェア-
ナツイチ2024 言葉のかげで、ひとやすみ
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/

「新潮文庫の100冊 2024」フェア
https://100satsu.com/

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(画像:新潮・角川・集英社 三社<夏の文庫>フェア2024のパンフレット)

 

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 ◆ 2024年テーマ:夢か奇蹟の物語 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(2)

  集英社文庫・浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』から「ラブ・レター」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

●集英社文庫『ナツイチ2024』フェア

集英社文庫 毎年恒例・夏のフェア「ナツイチ2024」 - PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000584.000011454.html

によりますと、今年の集英社文庫『ナツイチ2024』フェアは、
6月20日にスタート。
集英社文庫の「夏の文庫フェア」は、1991年から始まり、今年は34回目。

 《全国およそ4000軒の書店で、
  6月20日(木)から9月30日(月)まで実施予定》

対象ラインナップ作品は全82冊。

【ラインナップ】

私が気になった作品(★)とその他の主な作品を挙げておきます。

 

■映像化する本 よまにゃ
『地面士たち』新庄 耕
『クラスメイトの女子、全員好きでした』爪 切男

■心ふるえる本 よまにゃ
『塞王の楯(上下)』今村 翔吾
『N』道尾 秀介
『逆ソクラテス』伊坂 幸太郎
★『陸王』池井戸 潤――以前取り上げた作品
★『鉄道員(ぽっぽや)』浅田 次郎――映画化もあり、気になる作品
★『星の王子さま』サンテグジュペリ 池澤 夏樹 訳――大好きな作品
他 13冊

■スリリングな本 よまにゃ
『真夜中のマリオネット』知念 実希人
『本と鍵の季節』米澤 穂信
『カケラ』湊 かなえ
『偉大なるしゅららぽん』万城目 学
★『傷痕』北方 謙三――デビュー以来、大好きだった作家
他 14冊

■ときめく本 よまにゃ
『猫だけがその恋を知っている(かもしれない)』櫻 いいよ
『一ノ瀬ユウナが浮いている』乙一
『オーラの発表会』綿矢 りさ
『吸血鬼と愉快な仲間たち』木原(このはら) 音瀬(なりせ)
★『アナログ』ビートたけし――ちょっと古くさい?感じが気になる
他 12冊

■じっくり浸る本 よまにゃ
『燕は戻ってこない』桐野 夏生
『ミシンと金魚』永井 みみ
『透明な夜の香り』千早 茜
★『よくわかる一神教』佐藤 賢一――多神教の日本人である私にとって、
 一神教は以前から興味があった
★『文明の衝突(上下)』サミュエル・ハンチントン 鈴木 主税 訳――
 西洋対東洋という、これも昔から気になっていた本の一つ
『人間失格』太宰 治
『坊っちゃん』夏目 漱石
他 16冊

 

 ●特設サイト

ナツイチ2024 言葉のかげで、ひとやすみ - 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/

2024年テーマ

--
言葉のかげで、ひとやすみ。
こころの夏やすみ。
それは一冊の本から始まる。
ファンタジーでも、
ロマンスでも、ミステリーでも。
ページをめくれば、
こころをリフレッシュさせてくれる
新たな出会いが待っているから。
さあ、よまにゃ。
--

――というわけで、新たな出会いを求めて、以前から気になっていた本
浅田次郎さんの『鉄道員(ぽっぽや)』を取り上げることにしました。

 

 ●浅田次郎『鉄道員(ぽっぽや)』――奇蹟の一巻

『鉄道員(ぽっぽや)』浅田次郎 2000年3月17日

巻末の「あとがきにかえて 奇蹟の一巻」で、著者・浅田さんは、
1997年4月に出たときの本書の帯に掲げられたキャッチコピー
<あなたに起こる やさしい奇蹟。>を紹介して、

 《「奇蹟」をモチーフにした短篇を集めました、というほどの意味》

だと解説されています。

それぞれの短編はすべて個別の物語で、
男性が主人公だったり女性が主人公であったり、
三人称多視点の作品であったり一人称の作品であったり、
まったく異なる内容の物語です。

で、共通するのは、「奇蹟」をモチーフにした物語だ、という点です。

それぞれの作品を簡単に紹介しておきましょう。

『鉄道員(ぽっぽや)』 浅田 次郎/著 集英社文庫 2000.3
『鉄道員(ぽっぽや)』(Amazonで見る)

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(画像:集英社文庫『ナツイチ2024』フェアのパンフレットと『鉄道員(ぽっぽや)』)
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(画像:【集英社文庫『ナツイチ2024』フェア パンフレットの『鉄道員(ぽっぽや)』の紹介ページと本と)

 

「鉄道員」――映画化されて有名な一作です。
旧国鉄時代からのJR北海道の鉄道員(ぽっぽや)一筋の男が
定年を迎えた最後の日の物語。
死んだ娘がだんだんと成長する姿を幻として見るのでした。
そして当日……。

「ラブ・レター」――これも映画化されて有名な作品です。
中国人の女性と偽装結婚した書類上だけの夫は、
彼女が仕事先で病気で亡くなり、夫として後始末を任されます。
彼女が残した彼へのお礼の手紙二通を読み、
ありえたかもしれない日々を想像し、涙するのでした。

「悪魔」――子供の目を通して描く怪奇・恐怖もの。
悪魔のような家庭教師により家庭が崩壊する姿を子供の目から描くお話。

「角筈にて」――出世だけじゃない、人生をやり直そうとする夫婦の話。
出世コースから海外支店長に左遷された男は、過去に父に捨てられた
経験を持ち、引き取られた先のおじの娘が今では妻となりました。
父に似た人物を見かけ、過去がよみがえるのですが……。

「伽羅」――洋装店の女店主にまつわる怪奇・恐怖もの。
高級既製服(プレタポルテ)を扱うブティックの素人女主人と、
素人経営者を食い物にするメーカーのトップ・セールスとの物語。

「うらぼんえ」――孫娘を守るためお盆に“帰ってきた”祖父の物語。
夫の愛人に子供ができ、離婚を迫られる身内のいない妻。
夫方の祖父の初盆にゆき、その話が義父からも出るが、育ての親の祖父が
“帰ってきて”妻の味方となり、この話し合いに加わる……。

「ろくでなしのサンタ」――異色のクリスマス・ストーリー。
クリスマス・イヴに出所した三太(さんた)は、留置所で知り合った男の
ために、妻と娘あてにクリスマス・プレゼントの豚まんと鉢植えと大きな
ぬいぐるみを置き「メリー・クリスマス」と一声かけて去って行く……。

「オリヲン座からの招待状」――映画館閉鎖で帰郷した別居夫婦の一日。
生まれ故郷に唯一残っていた映画館の最後の上映会に出席した、東京で
別居生活をしている幼馴染の夫婦と妻を亡くし一人となった館主のお話。

 

前回の<夏の文庫>フェアの角川文庫『ナミヤ雑貨店の奇蹟』でも、
相談を通じて何人かの人物の人生が描かれていました。

本書でも、短編毎にそれぞれに夫婦と親子の家族の問題を背景に、
奇跡的な出来事を交えて、人間の存在の軽みと重さを
時の流れとともに描いています。

なかなか読み応えのある一冊になっていました。

 

 ●リトマス試験紙のような作品集

巻末解説で、北上次郎さんが書いていますように、
この優れた短編集の中には、大きく四つの「名作」が含まれています。

北上さんのお話では、読者には「鉄道員」を支持する派と
「ラブ・レター」派のあいだで論争があり、
そこへ「うらぼんえ」派が割り込んで来て、
さらに「角筈にて」派が続く、といい、
本書は《リトマス試験紙のような作品集だ》p.294 といいます。

 《読み手の年齢、性別、経験、環境、人生観などによって、
  このように感じ入る作品が異なるからである。》p.297

私の場合、「鉄道員」は、男の話としては分からないではないのですが、
子を失い妻を失い、それでも仕事一途にやってきた男の話としては、
哀しいけれど、結婚もして子も生まれ、一時的ではあれ、
幸せの時を経験しているという点では、それで良かったのではないか、
また最終的にも、という気もします。

「角筈にて」と「うらぼんえ」も夫婦のお話である一方、
親子の情、または育ての親との情を描いています。
夫婦の間には、それなりに幸せな時があったのではないでしょうか。

しかし、「ラブ・レター」の主人公の場合はどうでしょうか。
40歳近くまでの20年、歌舞伎町で、ヤクザの末端の組の一員として、
バーテンやポルノショップの雇われ店長等の仕事を続けてきた男が、
偽装結婚した中国人の女性の死後、残された手紙を読んだ結果、
起きたかも知れない状況を夢想する、という物語です。

そう、一人なのです、どちらとも。
戸籍上は夫婦となってはいるものの。
本当の夫婦としての幸せな時間を経験していないのです。

そういう意味では、これら四編の中にあっては一つ異端の作品です。

 

 ●私のお気に入り「ラブ・レター」

この「ラブ・レター」は、先の北上さんのお話では、
女性読者に圧倒的に好評だったそうで、

 《現代の恋愛小説として哀切きわまりないから、女性読者の涙腺を
  刺激するのは理解できる。》p.294

というのです。

ところで、本書中私の一番のお気に入りが、実はこの作品なのでした。

では「ラブ・レター」について書いてみましょう。
(ちなみに映画は見ていません。)

なぜ私がこの作品に惹かれたかといいますと、
それは本書の作品中、一番自分の気持ちを感情移入できる作品だった、
という点です。

70歳まで独り者の私にとって、夫婦のお話というのは、ピンときません。

「ラブ・レター」の主人公は、まだ40歳手前のようですが、
それでも故郷を出てからずっと独身で東京の街中で暮らしてきたわけで、
そういう意味では、私にとって一番身近な存在といえるでしょう。

主人公の境遇のうちで、私にとって最も似つかわしいのがこれだった、
ということです。

そして、ありえたかもしれない日々を夢に見るようすなど、
私にも十分理解できるからです。

私も時折、ありえたかもしれない生活、起こりえたかもしれない出来事、
そういう日々を夢に見ることがあるからです。

 

 ●「おまえらがみんなふつうじゃねえんだ」

ここからは私が惹かれた部分の引用を、少しメモしておきましょう。

 《手紙の文句が甦った。/ここはみんなやさしいです。
  組の人もお客さんもみんなやさしいです。
  海も山もきれいでやさしいです。ずっとここで働きたいです。/
  謝謝。それだけ。海の音きこえます。吾郎さんきこえますか――。/
  自分はやさしさのかけらもない町で、二十年も生きてきたのだと、
  吾郎は思った。》p.74

吾郎にとって、自分の今までの“しょうもない”生き方を
改めて突き詰められた気持ちだったのでしょう。

その夜、夢の中で吾郎は、両親はすでにこの世にいないけれど兄のいる、
捨ててきたはずの故郷に帰った、あったかも知れない日々を思います。

 《(ありがとう、吾郎さん。あたし、もういいよ。
   お客さんみんなやさしいけど、吾郎さんが一番やさしいです。
   私と結婚してくれたから)/花の上に、吾郎は涙を落とした。/
  (俺、やさしくなんかないもね。やくざもおまわりもお客も、
   みんなしておめえのこといじめたもね。一番ひどいのは俺だよ。
   五十万で籍を売って、その金だって三日で使っちまった。
   おめえ、その金も体で返すんだろ。血を吐きながら、返すんだろ。
   俺たち、みんな鬼だもね。おめえを骨になるまで食いちらかした
   鬼だもね。おめえを骨になるまで食いちらかした鬼だもね。
   鬼がやさしいはずないべや)/
   物を言わぬ花を大地ごと抱きかかえて、
  吾郎は思いのたけをこめて声を絞った。/(もう何もせんでいい。
   俺と、結婚して下さい)》p.77

 

二通目の手紙から――

 《吾郎さんにあげられるもの、何もなくてごめんなさい。
  だから言葉だけ、きたない字でごめんなさい。/
  心から愛してます世界中の誰よりも。/吾郎さん吾郎さん吾郎さん
  吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん吾郎さん。/
  再見、さよなら。》p.84

手紙の途中から吾郎はまた泣き出します。

吾郎がおかしくなったという、組の若者に対して、

 《「ふつうだよ。どうもしちゃいねえよ。
   おまえらがみんなふつうじゃねえんだ」》p.84

と。
そして骨箱に「高野白蘭」と口紅で名前を書くのでした。

 《国へ帰ろう。ついに会うことのなかった弟の嫁を、
  兄はきっとやさしく迎えてくれるだろう。/
  「帰ろうな、パイラン、みんな待ってるから」》pp.84-85

 

モデルほどの美貌の女性だったそうで、だからというのは考えすぎで
(その辺は小説ですからね)、純粋に美しい心を反映した内容の手紙に
感動したというところでしょう。
それに対して自分たちのしてきたことは何だったのか、
という反省が込められているのです。

さて彼はこれからどういう人生をたどることになるのでしょうか。
結局また元の木阿弥になるのかどうか。
まあ、人生そう簡単でもないですからね。

でも、そうはならずに故郷に帰って、やり直してほしいものです。

 

 ●心に残る一編

年を取るにつれて、涙腺がゆるくなる、といいますが、
ちょっとしたことでも、思わず泣いてしまいます。
これもそういう物語でしたね。

先ほども書きましたけれど、
私のように、独身でここまで生きてきてしまった人間としては、
ひょっとしたらこういう何かがあったかもとか、
色々考えてしまうときがあるのです。

そういう意味で、このお話はやっぱりこの短編集の中にあっては、
格別な味わいです。

心に残る一編でした。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(2)集英社文庫『鉄道員(ぽっぽや)』浅田次郎」と題して、今回も全文転載紹介です。

今年の<夏の文庫>フェアは、ここまで映画化された人気作家の有名作品を扱ってきました。

案外無かったことかも知れません。
今までは基本的に、古典の名作名著を軸にしてきた、というところがありました。

最近は、出版社のフェア作品の選書が変化してきたという面もあるのでしょうか。
各社ともに自社の持つ日本の人気作家の作品を全面に押し出してきている感じがします。

売上を考えているのか、“古典や名作を若者に読んでもらいたい”主義では、老舗の出版社に勝てないといった事情もあるのかも知れません。
あるいは、“若者に読んで欲しい本”から、もっと単純に“若者に読んでもらえそうな本”に重点を置いた選書に変化しているのか。

私もこの機会に、少しでも読書の間口を広げようと、目新しい作家の作品を選んで読むようにしています。

さて次回は、最後に残った新潮文庫ですが、どうなりますか……。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.07.15

<夏の文庫>フェア2024から(1)角川文庫『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾-楽しい読書370号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2024(令和6)年7月15日号(vol.17 no.13/No.370)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(1)角川文庫・
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年7月15日号(vol.17 no.13/No.370)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(1)角川文庫・
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2024から――。

 昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 第一回は、角川文庫から東野圭吾さんの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を。

 

【角川文庫の夏フェア】
「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」特設サイト
https://note.com/kadobun_note/n/n94088457149e

集英社文庫『ナツイチ2024』フェア-
ナツイチ2024 言葉のかげで、ひとやすみ
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/

「新潮文庫の100冊 2024」フェア
https://100satsu.com/

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(画像:新潮・角川・集英社 三社<夏の文庫>フェア2024のパンフレット)

 

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 ◆ 2024年テーマ:夢か奇蹟の物語 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(1)

  角川文庫・『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾
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●【角川文庫の夏フェア】

まず今回は、角川文庫から。

例年は新潮文庫から始めていましたが、
今年、集英社と角川文庫は、6月からスタートで、
新潮文庫は、7月1日スタートとのことでしたので、
早かったこの二社の内、すぐにこれだという本を見つけた順、
という感じで。

 

【角川文庫の夏フェア】
「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」特設サイト
https://note.com/kadobun_note/n/n94088457149e

まずは、出版社の言葉――

--
■ はじめに
今年のテーマは「カドイカさんとひらけば夏休みフェア」!
本を読むことって、なんだか難しそう。
たくさんある本の中から、楽しいと思える1冊が見つかるかわからない。
そう思っている人は、少なくないはず。

けど、今年の夏は、
まずは1冊、本をひらいてみませんか?

カバーイラストが可愛い。
推しが好きと言っていた。
あらすじが面白そうだった。
きっかけは、なんだっていい。

目にとまった1冊をためしにひらけば、ドキドキ、わくわく、ハラハラ……
あたらしい世界がひらけるはず!
--

ということで、ラインアップを挙げておきましょう。

 

■ フェア対象書籍のご紹介
対象作品一覧①「はじめての扉!」13点

湊 かなえ『ドキュメント』『ブロードキャスト』
重松 清『かぞえきれない星の、その次の星』
伊与原 新『オオルリ流星群』
君嶋彼方『君の顔では泣けない』
米澤穂信『氷菓』
恩田 陸『ドミノ』
森沢明夫『エミリの小さな包丁』
斜線堂有紀『ゴールデンタイムの消費期限』
朝井リョウ『星やどりの声』
東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
原田ひ香『ギリギリ』
クレハ『結界師の一輪華』

 

対象作品一覧②「ミステリの扉!」15点

米澤穂信『黒牢城』
浅倉秋成『六人の噓つきな大学生』
染井為人『悪い夏』
堂場瞬一『刑事の枷』
歌野晶午『家守』
東川篤哉『谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題』
藤崎 翔『神様の裏の顔』
芦沢 央『僕の神さま』
五十嵐律人『六法推理』
鳴神響一『脳科学捜査官 真田夏希』
柚月裕子『検事の信義』
太田 愛『幻夏』
東野圭吾『鳥人計画』『夜明けの街で』『ラプラスの魔女』

 

対象作品一覧③「ホラーの扉!」&「名作の扉!」13点

■ ホラーの扉!
辻村深月『闇祓』
宮部みゆき『よって件のごとし 三島屋変調百物語八之続』『おそろし
三島屋変調百物語事始』
芦花公園『極楽に至る忌門』(角川ホラー文庫)
内藤 了『FIND 警察庁特捜地域潜入班・鳴瀬清花』(角川ホラー文庫)
小野不由美『ゴーストハント1 旧校舎怪談』
辻村深月『きのうの影踏み』
中野京子『怖い絵』

■ 名作の扉!
芥川龍之介『蜘蛛の糸・地獄変』
夏目漱石『こゝろ』
宮沢賢治『注文の多い料理店』
梶井基次郎『檸檬』
オイゲン・ヘリゲル 訳・解説=魚住孝至『新訳 弓と禅 付・「武士道的
 な弓道」講演録 ビギナーズ 日本の思想』(角川ソフィア文庫)

 

対象作品一覧④「ベストセラーの扉!」16点

佐藤 究『テスカトリポカ』
山田風太郎『八犬伝』上・下
高杉 良『転職』
群 ようこ『老いとお金』
雹月あさみ『トイレで読む、トイレのためのトイレ小説 よりぬき文庫』
(富士見L文庫)
坪田信貴『学年ビリのギャルが1年で
 偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話[文庫特別版]』
若林正恭『完全版 社会人大学 人見知り学部 卒業見込』
群 ようこ『これで暮らす』
垣谷美雨『うちの父が運転をやめません』
大泉 洋『大泉エッセイ僕が綴った16年』
松村涼哉『ただ、それだけでよかったんです【完全版】』
(メディアワークス文庫)
道草家守『青薔薇ブルーローズアンティークの小公女』(富士見L文庫)
パウロ・コエーリョ 訳=山川紘矢 山川亜希子
 『アルケミスト 夢を旅した少年』
伊坂幸太郎『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』

 

対象作品一覧⑤「特別企画」&「コラボカバー」16点

■【朗読アリ】KISHOW(谷山紀章)さん おすすめ本
星 新一『きまぐれロボット』(★朗読アリ)
恩田 陸『ユージニア』(★朗読アリ)
小林泰三『人獣細工』(角川ホラー文庫)(★朗読アリ)
伽古屋圭市『猫目荘ねこのめそうのまかないごはん』
原田マハ『さいはての彼女』
■【朗読アリ】「文豪ストレイドッグス」コラボカバー作品
中島 敦『李陵・山月記 弟子・名人伝』(★朗読アリ)
泉 鏡花『高野聖』(★朗読アリ)
坂口安吾『暗い青春』(★朗読アリ)
芥川龍之介『羅生門・鼻・芋粥』
江戸川乱歩『魔術師』
中原中也 編=佐々木幹郎『汚れつちまつた悲しみに…… 中原中也詩集』
太宰 治『斜陽』『人間失格』
■ mt masking tape コラボカバー作品
太宰 治『女生徒』
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』
田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』

 

対象作品一覧⑥「Pick Up!」19点

■ 号泣文庫
汐見夏衛『ないものねだりの君に光の花束を』
一条 岬『今夜、世界からこの恋が消えても』(メディアワークス文庫)
岩井圭也『永遠についての証明』
山田悠介『スイッチを押すとき』
■ ハラハラ文庫
伊岡 瞬『残像』
染井為人『震える天秤』
本城雅人『宿罪 二係捜査(1)』
畑野智美『消えない月』
■ 猫文庫
西 加奈子『きりこについて』
夏目漱石『吾輩は猫である』
■ 大活字で読める文庫
太宰 治『100分間で楽しむ名作小説 走れメロス』
江戸川乱歩『100分間で楽しむ名作小説 人間椅子』
森 絵都『100分間で楽しむ名作小説 宇宙のみなしご』
恒川光太郎『100分間で楽しむ名作小説 夜市』
■ 時代文庫
鈴木英治『江戸の探偵』
横山起也『編み物ざむらい』
■ ごちそう文庫
標野 凪『ネコシェフと海辺のお店』
長月天音『キッチン常夜灯』
秋川滝美『おうちごはん修業中!』

――以上、92点。

 

既読は十数点ぐらいです。
夏目漱石、宮沢賢治、泉鏡花、芥川龍之介、太宰治、中島敦等の文学系。
エンタメ系では、江戸川乱歩、宮部みゆき辺りは読んでいるかも、程度。
作品としては、昨年の<私のベスト3>に選んだ、山田風太郎『八犬伝』。

そんな感じでほぼ全滅に近い状況です。
例年、この機会に新しい作家さんとの出会いを考えるのですが、
せいぜい3社合わせて一人程度ですね。

今年も結局は、昨年(集英社文庫『白夜行』)に引き続いて、
また東野圭吾さんにしました。

 

 ●東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

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(画像:【角川文庫の夏フェア】「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」
パンフレットと『ナミヤ雑貨店の奇蹟』) 

東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』角川文庫 2014/11/22
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(Amazonで見る) 

 

フェアの紹介文によりますと――

--
東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

東野作品史上最も泣ける感動作! 手紙が紡ぐ奇蹟の物語。

悪事を働いた3人が逃げ込んだ廃屋。
そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。
店内に突然届いた、悩み相談の手紙。
過去と現在、時空を超えた温かな手紙交換が始まる。
悩める人々を救ってきた雑貨店は、再び奇蹟を起こせるか? 
心ふるわす物語。
--

240715-2024kadokawa-namiya

(画像:【角川文庫の夏フェア】「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024」
パンフレットと『ナミヤ雑貨店の奇蹟』)

 

ストーリーは、窃盗程度の悪さしかできない青年三人組が
逃げ込んだ廃屋で出会う“奇蹟”の物語です。

なかなかのハート・ウォーミングなお話です。

東野さんといえば、ミステリ、推理小説の印象ですが、
こういうファンタジー系の小説もあるのですね。
へぇー、という感じでした。

そういう点からこの作品に決めました。

 

 ●主なストーリー

こういうエンタメ系の小説では、あまり詳細なストーリーを語りますと、
興ざめな面となりますので、ポイントだけを紹介しましょう。

彼らが逃げ込んだこの「ナミヤ雑貨店」は、
週刊誌でも取り上げられたほどの、悩みの相談で有名となった店でした。
最初は小学生のとんち話的ないたずら半分の相談でしたが、
あるとき真剣な悩みの相談があり、それ以来、
悩みの相談は深夜までに店のシャッターの郵便受けに入れてもらい、
返事は裏通りの牛乳配達箱に入れる、というルールができました。

彼らの潜り込んだこの店に、なんと相談の手紙が投入されます。
彼らは、一から相談された経験も無く、それが逆に新鮮で、
自分らなりに考えて答えを書きます。

 《「だってさ、ふつうなら俺たちが誰かの悩みを聞くなんてこと
  ないだろ。俺たちになんか、誰も相談しようとしない。
  たぶん一生ないぜ。これが最初で最後だ。
  だから一回ぐらいいいじゃないかってこと」》p.29

オリンピックを取るか不治の病の恋人の看病を取るか、
という悩みでした。

彼らの何度かの返事に対し、最終的にお礼の手紙が来ます。

 《(略)「誰かの相談に乗るなんてこと、これまでの人生では一度も
  なかったからなあ。まぐれでも結果オーライでも、相談して
  よかったと思われるのは嬉しいよ。(略)」》

するとまた第二の手悩みの相談が届きます。
音楽の道を進むべきか、というものでした。(以下、第2章)

彼らは、相談者とのやりとりの末、彼の曲を聞き、
音楽の道を進むのはムダにならない、あなたの曲で救われる人がいる、
あなたの音楽は残る、それだけは信じてくださいと答えます。

なぜならそれは、彼らの知っている曲だったからです。

彼らが潜り込んだこのナミヤ雑貨店は、なぜかタイムマシンのように、
相談者たちの過去と彼らの現在をつなげるものだったのです。

第3章では、このナミヤ雑貨店の店主で相談役の親父さんが登場します。

人生相談を始めたいきさつを語り、
いつしかこの人生相談が生きがいとなったこと、
しかしある事件をきっかけに、自分の回答が本当に役にたったのか、
実状を知りたいと思うようになり、息子さんにあることを依頼します。

それは自分の33回忌の日に、一度だけこの相談受付が再開される、
という告知でした。

その時、病院を抜け出した店主は、多くの礼状を手にします。
それはもちろん未来からのものでした。

 ・・・

このナミヤ雑貨店のあるまちの近くに丸光園という養護施設があり、
こことナミヤ雑貨店には何かしら因縁があるようなのです。

この丸光園は女性篤志家が始めたもので、
死後も天の上から見守っていると言い残したといういわくつきでした。
ところが、その後丸光園を引き継いだ男が悪いやつで、
園の存続が難しくなっていました。

そんな時にこの事件が起こったのでした……。

 

 ●悩みと人生相談とその回答について

このナミヤ雑貨店と丸光園との関係は、読んでのお楽しみということで、
ここでは、悩みと人生相談とその回答の在り方について、
考えて見ましょうか。

相談の回答者となった浪矢雄治はこう言います。

 《「(略)『ナミヤ雑貨店』に手紙を入れる人間は、
  ふつうの悩み相談者と根本的には同じだ。心にどっか穴が
  開いていて、そこから大事なものが流れ出しとるんだ。その証拠に、
  そんな連中でも必ず回答を受け取りに来る。(略)ナミヤの爺さんが
  どんな回答を寄越すか、知りたくて仕方ないわけだ。(略)
  だからわしは回答を書くんだ。一所懸命、考えて書く。
  人の心の声は、決して無視しちゃいかん」》p.142

息子の貴之は、子供たちが巣立ち、十年前に妻を亡くし、一人暮らしの
父親にとって、たぶん生きがいというやつなんだろう、と思うのでした。

 《「長年悩みの相談を読んでいるうちわかったことがある。多くの
  場合、相談者は答えを決めている。相談するのは、それが正しい
  ってことを確認したいからだ。だから相談者の中には、回答を
  読んでからもう一度手紙を寄越す者もいる。たぶん回答内容が、
  自分が思っていたものと違っているからだろう」(略)
  「これも人助けだ。面倒臭いからこそ、やり甲斐がある」》p.150

そんな雄治が店を閉じます。

 《(略)大事なのは、あのときのわしの回答が本当に正解だったのか
  どうかだ。
  (略)これまでに書いてきた無数の回答が、それぞれの相談者たちに
  とってどうだったのかが重要なんだ。わしは毎回、懸命に考えて
  答えを書いてきた。適当に書いたことなんてただの一度もない
  と断言できる。しかしそれでも、その回答が相談者たちのために
  なったかどうかはわからない。もしかしたら、わしの回答の通りに
  行動して、とんでもなく不幸になってしまった、なんてこともある
  かもしれない。そのことに気付いた瞬間、わしはもういてもたっても
  いられなくなったんだよ。もう、気楽に相談窓口を開けている気分で
  はなくなった。だから店を閉めたんだよ」》p.172

 《(略)わしの回答が、誰かの人生を狂わせてしまったのではないか
  と思うと、夜も眠れなかった。病気で倒れた時も、わしは思ったん
  だ。これは天罰じゃないか、とね」》p.172

そして夢の中で、相談者たちが自分の人生がどう変わったかを知らせる
手紙を投函してくれるのを、雄治は知るのでした。
今行けばそれを受け取れると、貴之に話すのです。
そして実現します。

 《「(略)殆どが、わしの回答に感謝してくれている。
  それはありがたいと思うが、読んでみると、わしの回答が役に立った
  理由はほかでもない、本人の心がけがよかったからだ。本人に、
  真面目に生きよう、懸命に生きようという気持ちがなければ、
  たぶんどんな回答を貰ってもだめなんだと思う」》p.180-181

 

 ●70年生きてきて思ったこと

そう、たぶんそうなんでしょうね。
結局はどんな人生を生きるかは、本人の心がけによる、ということ。

そして、70年生きてきて私が思うことは、
やっぱり自分らしくある、ということ。

どんな時もどんな状況にあっても、
本来の自分の在り方を変えることなく、生きてゆくという姿勢が大事だ、
と思うのです。

自分らしく、といっても難しいのですが、
自分の性格に合わせた生き方というのでしょうか、
真面目な人は真面目に、ちょっと大胆な人は大胆に、
でも、大胆にとはいっても、基本的には階段を一段ずつ登るように、
こつこつやる、ということです。

人生に近道はない、ということ。

で、やるべき時にはやる、ということ。

「幸運の女神には前髪しかない」という言葉があります。
「チャンスの女神には後ろ髪がない」ともいいます。

「後悔先に立たず」ともいいます。

やってしまったこと、もしくは逆にやらずにしまったことは、
後からではどうすることもできない、ということです。

チャンスは確実にその時にしっかりとつかんでおけ、という教えです。

そうはいいましても、なかなか潔く決断できないのが、人間です。

でも、それはそれでいいのだと思います。
人生に遅すぎるということはない、ともいいますから。

 

昨今は、人生100年時代ともいいます。

若い頃のようには行かなくても、
それなりに生きることはできるようです。

要は、あきらめないことでしょうか。

私も今この程度のことはできています。
毎日こつこつと積み重ねることで、できることもあるようです。

 

青年たちが投じた白紙の手紙に対するナミヤ雑貨店の爺さんの回答が、
一つの答えかも知れません。
(あえて引用は辞めておきます。)

 

 ●奇蹟は起こる?

奇蹟は、本当に起こるのでしょうか。
もちろん、そんなことはわかりません。
しかし時には、起こって欲しい、
という願いを抱かせるものでもあるように思います。

ある人が一生懸命生きているのならば、
その人のまわりではなにかしら良いことが起きてほしいものです。

そうでなければ人生なんて、
生きるに値しないものになってしまいますから。

神様仏様が存在するのなら、ときには奇蹟も起こってほしいものです。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から(1)角川文庫・『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾」と題して、今回も全文転載紹介です。

私は人生相談というものに特別に興味はないものの、新聞の人生相談などはつい見てしまうことがあります。
どういうものを見るかといいますと、やはり自身高齢化したこともあって、そういう手の老後の在り方といったものですね。
それと、逆に若者の進路相談などにもつい目が行くことがあります。

よりよい人生航路を始めて欲しいという願いが出てしまうようです。

さて、本書では、未来を知っているゆえに、青年たちでも適切な相談ができてしまう部分があって、こういう風に未来を見通し、人生を俯瞰して生きて行ければいいのになあ、と思ってしまいますね。

実際には、白紙の人生であっても、そこにどんな人生地図を書いてゆくのか、人それぞれなわけです。
むずかしいけれど、だからこそおもしろいとも言えるわけです。

死の瞬間まで人は迷いながら生きてゆくものなのでしょうか。
あるいは、ある瞬間になにかしら確かな確信を抱けるものなのでしょうか。

まだ私にはわかりません。

 ・・・

弊誌をおもしろいなあと感じた方は、ぜひご購読の申し込みをお願い致します。

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(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

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2024.02.15

私の読書論181-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(後)初読編-楽しい読書360号

(まぐまぐ!)古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2024(令和5)年2月15日号(No.360)「私の読書論181-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(後編)初読編ベスト3 」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和5)年2月15日号(No.360)「私の読書論181-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(後編)初読編ベスト3 」
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 「私の年間ベスト3・2023年フィクション系(後編)」です。

 <フィクション系>は、文字通りフィクション、
 小説等の創作ものを指します。

 今回はいよいよ「初読編ベスト3」を。

「再読編」
『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2024(令和5)年1月31日号(No.359)「私の読書論180-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(前編)総リスト&再読編 」
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.1.15
私の読書論180-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(前)総リスト&再読編-楽しい読書359号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/01/post-244657.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/24ab2ce38b836145b195398a2c4197f6

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 - 青春ミステリか? 老人探偵団か? -

  ~ 私の年間ベスト3・2023フィクション系(後編) ~

  2023年フィクション系ほぼ全書名紹介&初読編ベスト3

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●<初読編ベスト3>候補

<初読編ベスト3>の候補となる、
初読のフィクションの全書名を紹介してみましょう。

例年のように簡単に分類してみましょう。

(1)メルマガ用のお勉強の本
(2)それ以外の古典の名作
(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

 ・・・

(1)メルマガ用のお勉強の本

・『曹操・曹丕・曹植詩文選』川合 康三/編訳 岩波文庫 2022/2/17
(Amazonで見る)

――読書メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』の
参考資料。

*参照:『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
2023(令和5)年3月31日号(No.339)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(21) ―曹丕(そうひ)」
『レフティやすおのお茶でっせ』2023.3.31
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(21) ―曹丕(そうひ) -楽しい読書339号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/03/post-849fb1.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e03d798d0eb5364d8cd88d8d0fc20004

 

(2)それ以外の古典の名作

・『八犬伝(上・下)』山田風太郎 山田風太郎傑作選・江戸篇 河出文庫
2021/2/5
(Amazonで見る)

(Amazonで見る)

――江戸時代の戯作本、滝沢馬琴『南総里見八犬伝』の「虚の世界」と、
それを書く馬琴が画家・葛飾北斎等を相手に、日常の作家として、一人の
世帯主としての葛藤を語る姿を描く「実の世界」を交互に綴る、風太郎版
『八犬伝』。

・『世界推理短編傑作集6』戸川安宜編 創元推理文庫 2022/2/19
(Amazonで見る)

――2018年にリニューアルされた江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』
全5巻を補完する第6巻。未収録作家13人の古典的名作を収録。冒頭、
1870年発表のエミール・ガボリオ「バティニョールの老人」は、左手に
よるダイイング・メッセージという<左利きミステリ>。既刊の短編集や
アンソロジーに収録されているものも多いが、まとめて読めるのは便利。

(3)小説や左利き本等著作のための勉強本

特になし。

(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

【新井素子】
・『二分割幽霊綺談』講談社 1983
――パラレルワールドにつながる?トンネルの向こうとこちらで
繰り広げる奇想冒険談。
『二分割幽霊綺談』講談社文庫 1986/3/1
(Amazonで見る)

・『・・・・・・絶句(上下)』早川書房 新鋭書下ろしSFノヴェルズ
1983/12/15, 1984/1/15
――異星人の起こした事故で、新井素子の創作したインナー・スペースが
現実化して大混乱……という奇想SF。
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(Amazonで見る)

・『あなたにここにいて欲しい』文化出版局 1984/7/1
――自分一人ではなにもできない女性と、彼女の世話をすることに自己の
存在意義を認めてきた女性。小学校以来の二人の友人同士の交流に、
新たな人物が現れ、互いの相互依存があらわになる……。
(Amazonで見る)

――80年代、本屋さん時代に買ってそのままになっていた本たち。
当時の人気作家でしたが、今では現行本がほとんどないようです。

【リチャード・オスマン】
・『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』羽田詩津子訳 ハヤカワ・ミステリ
2022/11/2
(Amazonで見る)

――第一作では謎の人物だった、老人探偵グループ〈木曜殺人クラブ〉の
中心メンバーのエリザベスと、死んだはずのかつての同僚英国諜報員の
事件。彼はダイヤを持ち逃げし、諜報組織とマフィアから追われていた。
メンバーは、この国際的陰謀との戦いに乗り出す。
一方で、メンバーの一人元精神科医のイヴラヒムが一人で町に出たとき、
若者に襲われスマホを奪われる、という事件が起きる。このとき、肉体の
負傷以上に、精神的にまいってしまう。それを老人仲間たちが支え、
励ます姿の美しさ。さらに精神科医の彼が女性警官の相談を受けたときの
回答も読ませます。

・『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』リチャード・オスマン 2023/7/4
(Amazonで見る)

――第三作では、かつて大規模詐欺事件を追求するうちに事故死した
女性キャスターの事件を、有名キャスターと捜査を始める。
一方エリザベスは、マネーロンダリングにまつわる事件に巻き込まれる。

以上、イギリスの高級高齢者施設に住む老人たちの探偵クラブ
〈木曜殺人クラブ〉の面々による探偵冒険譚のそれぞれ第二作と第三作。
老人たちの会話が読ませます。著者は第一作を書く前に、高齢者施設で
取材もしたというのですが、老人の仲間入りをした現在の私が読んでも、
迫るものがあって、単なる娯楽小説に終わらず、読む価値ありの作品に
なっているように感じます。

【ホリー・ジャクソン】
・『自由研究には向かない殺人』服部京子訳 創元推理文庫 2021/8/24
(Amazonで見る)

出版社の紹介文《イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と
 並行して“自由研究で得られる資格(EPQ)"に取り組んでいた。題材は
 5年前の少女失踪事件。交際相手の少年が遺体で発見され、警察は彼が
 少女を殺害して自殺したと発表した。少年と親交があったピップは彼の
 無実を証明するため、自由研究を隠れ蓑に真相を探る。調査と推理で
 次々に判明する新事実、二転三転する展開、そして驚きの結末。
 ひたむきな主人公の姿が胸を打つ、イギリスで大ベストセラーとなった
 謎解き青春ミステリ!》

・『優等生は探偵に向かない』服部京子訳 創元推理文庫 2022/7/20
(Amazonで見る)

出版社の紹介文《人の兄ジェイミーが失踪し、高校生のピップは調査を
 依頼される。警察は事件性がないとして取り合ってくれず、ピップは
 仕方なく関係者にインタビューをはじめる。SNSのメッセージや写真
 などを追っていくことで明らかになっていく、失踪当日のジェイミーの
 行動。ピップの類い稀な推理で、単純に思えた事件の恐るべき真相が
 明らかに……。『自由研究には向かない殺人』待望の続編。この衝撃の
 結末を、どうか見逃さないでください!》

・『卒業生には向かない真実』服部京子訳 創元推理文庫 2023/7/18
(Amazonで見る)

出版社の紹介文《わたしはこの真実から、決して目を背けない。『自由
 研究には向かない殺人』から始まったミステリ史上最も衝撃的な3部作
 完結編!
 大学入学直前のピップに、不審な出来事がいくつも起きていた。無言
 電話に匿名のメール。首を切られたハトが敷地内で見つかり、私道には
 チョークで首のない棒人間を書かれた。調べた結果、6年前の連続殺人
 事件との類似点に気づく。犯人は服役中だが無実を訴えていた。ピップ
 のストーカーの行為が、この連続殺人の被害者に起きたことと似ている
 のはなぜなのか。ミステリ史上最も衝撃的な『自由研究には向かない
 殺人』三部作の完結編!》

――数々のミステリベスト10で上位にランクインした、女子高校生ピップの
探偵譚三部作。さわやかな青春ミステリとして、謎解きミステリのように
開幕したシリーズでしたが、第三作では、意外な展開になります。
ストーカー行為を受けたピップが反撃に転じるのですね。真実とは何か?
非常に重たい問いかけです。彼女の選択を肯定できるかどうかが、
その人の人間としての一つの試金石ともいえます。
その時その時で人は意外な行動を取ることもあります。最終的に、人は、
起きてしまったこと、済んでしまったことを変えることはできません。
その時点で、人は自分の信じる道をただ前へ、前へと向かって進むしか
ないのです。

・『マジック・ミラー』有栖川有栖 講談社文庫 1993
新装版 マジックミラー (講談社文庫) 文庫 – 2008/4/15
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――双子の兄弟による兄嫁殺しのアリバイ・トリックもの。
被害者の妹が推理作家とともに謎に迫る。

・『不吉なことは何も』フレドリック・ブラウン 越前 敏弥 訳
創元推理文庫 2021/9/21
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――《『真っ白な噓』に続く巨匠の代表的ミステリ作品集》という
【名作ミステリ新訳プロジェクト】の一冊。アリバイ・トリックものの
中編「踊るサンドイッチ」がお目当てで読んだ一冊だったが。

・『スペースマン―宇宙SFコレクション(1)―』伊藤典夫、浅倉久志編
 新潮文庫 1985/10/1
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・『スターシップ―宇宙SFコレクション(2)―』伊藤典夫、浅倉久志編
 新潮文庫 1985/12/1
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――この二冊は本屋さん時代に買ってそのままだった、宇宙ものSFの
アンソロジー。ハインライン「地球の緑の丘」やアシモフ「夜来たる」等
名作も多く散りばめられた好アンソロジー。

・『ラブ・フリーク 異形コレクション(1)』井上雅彦監修
広済堂文庫―異形コレクション 1 1997/12/1
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――書き下ろしの恐怖小説・怪奇小説・幻想小説のアンソロジー第一弾。
異常な状況下の恋愛を描いたもの。集中一番のオススメは、岡崎弘明
「太陽に恋する布団たち」。明るく優しい気持ちになれる名作だろう。

・『下町ロケット ヤタガラス』池井戸潤 小学館文庫 2021/9/7
――『下町ロケット ゴースト』に続く、帝国重工・財前との共同事業、
準天頂衛星「ヤタガラス」を利用した無人農業ロボット開発での、
下町中小企業との競争物語。
(Amazonで見る)

 

以上17点ほどでした。

思いのほか少なく、ベスト3を選ぶのも結構大変と思われます。

といいつつ、勝負は決まっている感じです。

 ●2023年フィクション系<初読編べスト3>

今回の<初読編ベスト3>は、以下の作品となります。

 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡

   【2023年フィクション系<初読編べスト3>】

  (1)【ホリー・ジャクソン】
・『自由研究には向かない殺人』服部京子訳 創元推理文庫 2021/8/24
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・『優等生は探偵に向かない』服部京子訳 創元推理文庫 2022/7/20
(Amazonで見る)

・『卒業生には向かない真実』服部京子訳 創元推理文庫 2023/7/18
(Amazonで見る)

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(画像:【ホリー・ジャクソン】女子高校生ピップ三部作
『自由研究には向かない殺人』『優等生は探偵に向かない』
『卒業生には向かない真実』創元推理文庫―創元推理文庫のサイトから)

 

  (2)『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン
羽田詩津子訳 ハヤカワ・ミステリ 2022/11/2
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  (3)『八犬伝(上・下)』山田風太郎 山田風太郎傑作選・江戸篇
 河出文庫 2021/2/5
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(Amazonで見る)

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(画像: 図書館本『八犬伝(上・下)』山田風太郎 山田風太郎傑作選・江戸篇 河出文庫 2021/2/5) 

 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡

 

(1)と(2)は、真逆の主人公たちを描いています。
方や高校生、方や70歳を越えた老人たち。
(3)の<実の世界>の馬琴たちももう老人です。

ハツラツとした高校生たちの探偵冒険の世界と、同じ現代を舞台にして、
SNS等を活用する探偵物語でも、主人公がこれほど異なれば、
読む側の私も高齢者であり、感情移入的には、後者に軍配が上がっても
おかしくありません。

ただ一種の憧れに似た何かがあり、こういう青春ものには
肩入れしたくなるのも事実です。

老人への親近感と青春へのあこがれといった、個人的な読者として
感情的な評価は別にして、作品本来の評価として、
三部作込みの評価というのも、ちょっと卑怯な気もしますが、
あえて<ベスト1>に、この<ピップ三部作>を上げてみたいものです。

真実はいずれ明らかになるだろうし、正義は必ずまっとうされるもの、
と私は信じています。
ピップにもそう信じて生きていってほしいと思います。

 

2位には、老人の心理といったものをたっぷり書き込んだ探偵物語の、
『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』の方を上げたいと思います。

第三作も面白いのですが、ここでは、個人的な感情移入的な評価で。

元精神科医で80歳のイヴラヒムと女性警官のドナとの対話の一部を
引用しておきましょう。

 《「時間は戻ってこないことは知っているね?
  友人、自由、可能性も?」
  (略)
  「時間を取り戻すことはあきらめよう。過去は幸せだった時間として
  記憶するんだ。きみは山の頂上にいた。今は谷間にいる。今後も
  数えきれないほど、そういうことは起きるだろう」/
  「じゃあ、今は何をすればいいんですか」/
  「もちろん、次の山を登るんだ」/
  「ああ、そうか、そうですよね」シンプルだ。
  「そして次の山を登ったら?」/
  「うーん、それはわからないよ、そうだろう? きみの山だ。
   他の誰も今まで登ったことはないんだから」
   (略)
  「きみは好きなようにすればいいんだ。だが、前を見ろ、
   後ろを振り返るんじゃない。そして、きみが登るあいだ、
   わたしはここにいるよ。その肘掛け椅子は、
   必要とあらばいつでもきみのものだ」
   (略)
  「孤独はつらいものだ。大きな苦しみのひとつだ」
   (略)
  「きみはちょっと迷子になっただけだよ、ドナ。
   そして、人生で一度も迷わなかったら、まちがいなく、
   おもしろい場所には一度も旅をしなかったということだ」》pp.358-360

そして、若者の襲撃によるケガの後、一人では町に出られなくなり、
落ち込んでいるイヴラヒムに、今度はドナがいいます。

 《「あなたは悲しそうに見えます」/
  「ちょっと悲しいんだ、たしかに」イヴラヒムは白状する。
  「怯えているし、そこから抜け出す方法が見つからずにいる」/
  「次の山に登る、というのが、あたしからのアドバイスです」/
  「それだけのエネルギーがあるのか、自信がない」
  (略)
  「肋骨は痛むし、そのせいで胸まで痛い気がするんだ」/
  「あなたが登るあいだ、あたしはここにいますよ」》p.360

 

3位には、『八犬伝』を。馬琴の『八犬伝』のダイジェストに当たる、
<虚の世界>と、それを語る<実の世界>での、作家として、
世帯主として家庭第一を心掛けながら執筆に励む馬琴と、
家庭を顧みることのない北斎。
さらに、鶴屋南北らとの会話の中に出て来る、芸術論や人生論の
おもしろさ。
『八犬伝』のおもしろさはもちろんですが、この芸術論や人生論に
著者・山田風太郎の思いも重なっているようで、
読むほどに迫ってくるものがありました。

以上、<ベスト3>でした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論181-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(後編)初読編ベスト3 」と題して、今回も全文転載紹介です。

前回に引き続き、<フィクション系>の後編、初読編のベスト3発表でした。

改めて、三部作をひっくるめるのはどうか、という気もします。
しかし、この作品に関しては、一冊ずつもいいですし、しかも、三作で到達するところというものもある、という意味で、これは致し方ないという気もします。
<木曜殺人クラブ>も二作上げています。
こちらの方は、昨年二作読んだということで、ついでに上げているだけで、正味は第二作による結果です。

『八犬伝』も二巻本でしたし、今年は、冊数的には<ベスト3>が3冊ではなくなったというのは、ちょっとした事件だったかもしれませんね。

 ・・・

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2024.01.31

私の読書論180-私の年間ベスト3・2023年〈フィクション系〉(前)総リスト&再読編-楽しい読書359号

 古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

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2024(令和5)年1月31日号(No.359)「私の読書論180-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(前編)総リスト&再読編 」

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2024(令和5)年1月31日号(No.359)「私の読書論180-私の年間ベスト3・
2023年〈フィクション系〉(前編)総リスト&再読編 」
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 「私の年間ベスト3・2023年フィクション系(前編)」です。

 <フィクション系>は、文字通りフィクション、
 小説等の創作物を指します。

 まずは、「再読編」から。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - 昔の感覚に間違いはなかった!? -

  ~ 私の年間ベスト3・2023フィクション系(前編) ~

  2023年フィクション系ほぼ全書名紹介&<再読編ベスト3>候補作
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●傾向と分類

2023年は、冊数が40冊程度でした。
うち約半数の20冊が再読ものでした。
これは昨年と同数となります。

そこで今年も、<再読編ベスト3>と<初読編ベスト3>とに分けて
紹介してみましょう。

 ・・・

例年のように簡単に分類してみましょう。

(1)メルマガ用のお勉強の本
(2)それ以外の古典の名作
(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

*(再):自分の蔵書の再読本、[再]:作品そのものは再読、本は新本

 

 ●(1)メルマガ用のお勉強の本

・[再]『雨月物語』上田秋成/長島弘明 校注 岩波文庫 2018/2/17

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2023(令和5)年6月30日号(No.345)
「私の読書論172- 2023年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!
 小さな一冊をたのしもう」から 上田秋成『雨月物語』「蛇性の婬」」
『レフティやすおのお茶でっせ』2023.6.30
私の読書論172-2023年岩波文庫フェアから上田秋成『雨月物語』
「蛇性の婬」-楽しい読書345号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/06/post-ec8330.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/417d68371321fb4e635a0fa83166e4d2

 

・[再]『時をかける少女』筒井 康隆 角川文庫 新装版 2006/5/25

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・(再)『カドカワ フィルム ストーリー 時をかける少女』筒井康隆原作
大林宣彦監督作品 角川文庫 1984(昭和59年)/11/1

・(再)『タイム・トラベラー』石山透 大和書房 1984/2/1

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――1972年、NHKドラマ『タイム・トラベラー』全6話、と
 続編『続・タイム・トラベラー 』全5話のシナリオ集。巻末に
 「NHK少年ドラマシリーズ放送作品リスト」、主題歌楽譜を収録。

2023(令和5)年7月31日号(No.347)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・
筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」
2023.7.31
[新潮・角川・集英社]
<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』
-楽しい読書347号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/07/post-ea808e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/51993cafbd23c48808fba514944ef122

タイム・トラベラー』復刊ドットコム 新装版 2016/12/13 

 

・(再)東野圭吾『白夜行』集英社文庫 2002/5/25

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2023(令和5)年8月31日号(No.349)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・
 東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」
2023.8.31
[新潮・角川・集英社]
<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・東野圭吾『白夜行』-楽しい読書349号
17:36 2023/08/23
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/08/post-68005b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a591675405b6e87c3e89a1653c2d3316

 

 ●(2)それ以外の古典の名作

・(再)『親友(パル)・ジョーイ』ジョン・オハラ 田中小実昌訳
 講談社文庫 1977
――戦前のアメリカの風俗小説、表題の連作短編とその他の短編集。
表題作はペンフレンドに送る近況報告の手紙の形式で、
昔『ミステリ・マガジン』でそれぞれの短編として紹介されていた。
当時は面白い小説として読んだが、今回読んでみると、昔ほどの魅力は
感じず、まあまあ、というところか。私の主人公に対する見方が変わり、
真実の姿を理解できるようになった、というところでしょうか。

・[再]『少女地獄』夢野久作 角川文庫 1976
――同じく戦前の日本の小説短編集。

(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
特になし。

 

 ●(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

【新井素子】
・(再)『あたしの中の……』集英社コバルトシリーズ 1981
・(再)『グリーンレクイエム』講談社文庫 1983
・(再)『ひとめあなたに……』双葉ノベルズ 1981
・(再)『扉を開けて』CBSソニー出版 1982
・(再)『ラビリンス<迷宮>』トクマ・ノベルズ 1984
・[再]『いつか猫になる日まで グリーン・レクイエム』日下三蔵編
柏書房<新井素子SF・ファンタジー コレクション1> 2019
・[再]『扉を開けて 二分割幽霊綺談』日下三蔵編
柏書房<新井素子SF・ファンタジー コレクション2> 2019
・[再]『ラビリンス<迷宮> ディアナ・ディア・ディアス』日下三蔵編
柏書房<新井素子SF・ファンタジー コレクション3> 2019
――『あたしの中の……』は、記念すべきデビュー作。
『扉を開けて』『ラビリンス<迷宮>』は、異世界ものの女性が主人公の
ヒロイック・ファンタジー。『ひとめあなたに……』は地球最後の日もの。
柏書房版は、今や多くが絶版・品切れとなった初期新井作品の名作を
資料とともに復刊するもの。

<海洋冒険もの>
【セシル・スコット・フォレスター】
・(再)『スペイン要塞を撃滅せよ』ハヤカワ文庫NV 1973
・(再)『トルコ沖の砲煙』ハヤカワ文庫NV 1974
・(再)『パナマの死闘』ハヤカワ文庫NV 1974
――以上、帆船時代の英国海軍の<海の男ホーンブロワー・シリーズ>。

最初に書かれた『パナマの死闘』が好評で海軍士官候補生時代から出世
してゆく過程が順次シリーズ化されたという人気シリーズ。
人間的な弱みを持つスーパー・ヒーローでないところが、海外で人気の
シリーズというのも理解できます。なかなかのエンタメ作品。 

(再)『女王陛下のユリシーズ号』アリステア・マクリーン 村上博基訳
 ハヤカワ文庫NV 1972
――第二次大戦中のドイツ海軍と連合国側の輸送船団の護衛艦、
イギリス海軍ユリシーズ号との激闘。

 

<その他の冒険もの>
(再)『大洞窟』クリストファー・ハイド 田中靖訳 文春文庫 1989
――日本人の地質学者が主要登場人物となる洞窟で発掘中、
地震で閉じ込められ、いかに脱出するか、というサバイバル物語。

【ディック・フランシス】
(再)『重賞』菊池光訳 ハヤカワミステリ文庫 1976
(再)『追込』菊池光訳 ハヤカワミステリ文庫 1982
――元女王陛下のお抱え障害競馬騎手だった著者が書いたことでも有名な、
<競馬スリラー・シリーズ>の中期の作品。
毎回異なるヒーローを主人公に、競馬がらみの犯罪を暴いてゆく展開で、
そのヒーロー像の造形にしびれます。イギリスでは最も有名な探偵役
シッド・ハレーを主人公にテレビドラマも制作されていました。
私の大好きな作家でした。
中期以降の作品の手持ちの文庫本が十冊程度ありますので、
もう一つと思う作品は処分しようと思い、再読を始めました。

 

<その他>
・[再]『刑罰』フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳
創元推理文庫 2022
――ドイツの刑事弁護士が実際に経験した事例を元に描く犯罪物語集。
この作家の著作はみな問題意識が高い作品集で、読み応えがある。
ハードカバー本の文庫化で、また読んでしまった。

(再)『怪奇と幻想 第一巻 吸血鬼と魔女』矢野浩三郎編 角川文庫 1975
――怪奇小説・恐怖小説・幻想小説のアンソロジーの第一巻。
このアンソロジー全三巻は、創元推理文庫の『怪奇小説傑作集』全五巻、
近年新版『新編 怪奇幻想の文学』が出ている、その元版のアンソロジー
などと並ぶ、名アンソロジーではなかったか、と思っています。

 

 ●<再読ベスト3>候補

以上がほぼ全再読書です。

この中から<再読ベスト3>を選ぶにあたって、
まずは候補としていくつか上げてみましょう。

新井素子作品では、以下の三作。
1.『グリーンレクイエム』――昔読んだとき同様感動の一作。
以前紹介したゼナ・ヘンダースン『果てしなき旅路』同様、
マイノリティーの悲劇を扱う悲しい作品です。
2.『ひとめあなたに』――地球はあと一週間(だったか?)で滅ぶ
という状況で人はいかに生きるのか、という重いテーマの連作短編。
以前読んだときよりも、重さを感じたという気がしました。
ちょっと気になる一作でした。
3.『ラビリンス<迷宮>』――かつて繁栄していた文明を失った人類が
新たなスタートにつくというストーリーですが、迷宮で待つ<怪物>と
いかに対応するか、生け贄にされた少女たちの戦い。

メルマガで扱った三作は、それぞれに印象に残る作品で候補作です。
4.『雨月物語』――古典中の古典で、今回取り上げた「蛇性の婬」は、
集中最長の中編といったところで、一番の名作かと思います。
5.『時をかける少女』も、表題作の中編は、青春のまぶしさを描いた
永遠にの名作という気がします。
6.『白夜行』は、三編中唯一の長編ですが、長さを感じさせない名作で、
これはゆがんだ青春の物語で興味深いノワールという感じです。

次に<冒険もの>では、
7.『女王陛下のユリシーズ号』――マクリーンの処女作で、
戦争ものの長編ですが、男たちはなんのために戦うのか、という
戦争に対する見方と人間としての生き方を考えさせる反戦文学です。
8.『大洞窟』は日本人が主人公になっている点がポイント高く。

9.『怪奇と幻想 第一巻 吸血鬼と魔女』――<怪奇もの>の
アンソロジーとしては、名作揃いの好アンソロジーです。
珍しいダシール・ハメットの怪奇小説アンソロジーの「序文」を借りて、
作品もモーパッサン「オルラ」、M・R・ジェイムズ「マグナス伯爵」、
F・マリオン・クロフォード「血は命の水だから」等々。

<海の男ホーンブロワー・シリーズ>もなかなかのエンタメで、
スーパー・ヒーローでないところが人間的で、
海外で人気のシリーズだったというのも理解できます。
海軍士官候補生時代から出世するというシリーズ。
『パナマの死闘』が差史書に書かれた作品で、これが好評で、
順次シリーズ化されたという人気シリーズ。

ディック・フランシスも大好きな作家でした。
中期以降の作品の手持ちの文庫本が十冊程度ありますので、
もう一つと思う作品は処分しようと思い、再読を始めました。

 

 ●2023年フィクション系<再読編べスト3>

さて、では、<再読編べスト3>です。
やはりむずかしいですが、メルマガで扱った三作は、
そちらで書いてきましたので、今更選ぶのもどうかと思います。

 

 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡

   【2023年フィクション系<再読編べスト3>】

  (1)新井素子『グリーンレクイエム

 

  (2)アリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号
ハヤカワ文庫 NV 7 1972/1/1

 

  (3)矢野浩三郎編『怪奇と幻想 第一巻 吸血鬼と魔女』角川文庫

 

 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡

 

「読む価値あり」という意味で、この辺を上げておきましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論179-私の年間ベスト3-2023年〈フィクション系〉(前編)総リスト&再読編」と題して、今回も全文転載紹介です。

今回は、本文中にもありますように、再読した<フィクション系>の本についてです。

もう何年も前から、蔵書を少しずつ処分しています。
今までもとにかく本箱?本棚? が二本しかないので、押し出し整理法でここからはみ出す分はその都度処分するようにしてきました。
ここんところ古本屋さんも減ってきて、近所の一軒ぐらいしかない状況で、そこがなくなれば、処分もむずかしいということになります。
今は少しずつその近所のお店に持ち込んでいます。

今までは聖域としていた青春初期の本も最近は、処分しています。
そうは言いましても早半世紀という本もあり、赤茶けて、ほとんど値の付かないようなものも多いようです。
でも、売れるうちは売って何かの足しになればと思っています。

処分のために再読をしているというところです。
聖域だった、新井素子さんの本や、冒険小説などもそういう一環の本で、昨年末に処分してしまいました。
ディック・フランシスはこれから再読を続けて選定に入ります。

残念と言えば残念ですが、いずれは処分しなければならないので、今のうちに少しずつ減量を、というところです。

といいつつも、毎年20冊程度は購入していますので、実数はなかなか減ってはいませんね。
まだ、本箱からオーバーしている本の段ボール箱が大小6個ぐらいありますから。

 ・・・

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2024.01.15

私の読書論179-私の年間ベスト3-2023年〈リアル系〉(後編)田村隆一『ぼくのミステリ・マップ』-楽しい読書358号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

(まぐまぐ!)登録・解除

2024(令和6)年1月15日号(No.358)
「私の読書論178-私の年間ベスト3-2023年〈リアル系〉(後編)
田村隆一『ぼくのミステリ・マップ』」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年1月15日号(No.358)
「私の読書論178-私の年間ベスト3-2023年〈リアル系〉(後編)
田村隆一『ぼくのミステリ・マップ』」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 

 前回、長くなりすぎてしまい分割した後半です。

(前編)
2023(令和5)年12月31日号(No.357)
「私の読書論178-私の年間ベスト3-2023年〈リアル系〉(前編)」
2023.12.31
私の読書論178-私の年間ベスト3-2023年〈リアル系〉(前編)
-楽しい読書357号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/12/post-d85a13.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/b7d1b868920116ee23459ec47dfdd66e

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - メルマガの為に読んだ本ばかり? -

  ~ 私の年間ベスト3・2023年〈リアル系〉 ~

  田村隆一『ぼくのミステリ・マップ』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●(4)個人的な趣味、仏教や空海・弘法大師に関する本

・『『マイ遍路』白川密成 新潮新書 2023/3/17

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四国の八十八カ所の霊場を巡礼するお遍路旅を、
第五十七番札所・栄福寺の住職が、六十八日をかけて歩いた記録。
弘法大師の著作の言葉を引用し、その場その場のようすをたどりながら、
綴る「四国遍路」の実践的な旅日誌。
弘法大師空海のどういう言葉をどういう場面で引用しているのか、
といった興味で買ってみました。

出川哲朗さんのテレビ番組でのお遍路の旅で、
この方が住職をしているお寺をお参りされた際に、
著者が出演されたのを見た記憶があります。
まだ若いお坊様ですが、こういう著作のような活動も、
今の時代には信仰を広げる意味でも大いにありだと感じました。

生きることは悩むことでもあり、
そこに信仰というものが必要となる部分があると思います。

 

『ぼくのミステリ・マップ―推理評論・エッセイ集成』田村隆一 中公文庫 2023/2/2

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私の趣味であるミステリ――
特に海外ミステリ(翻訳ミステリ)についてのエッセイ集。

1923(大正十二)年生まれの著者の生誕100年記念出版としての
増補改編版。

海外ミステリ専門誌だった『(ハヤカワ)ミステリマガジン』
(通称HMM)の愛読者である私には、
『HMM』の前身『(日本語版)EQMM』の創刊前後、
それに先立つミステリ叢書「ハヤカワ・ポケット・ミステリ・シリーズ」
(通称<ポケミス>)の立ち上げに関連した部分が、
興味深く楽しめました。

 《生島 金はなかったけど、ただよかったのは社長以外は、
     編集長もくそもないって感じだったことだね。
  田村 社長だってないよ。あるはずないんだよ。
     もう前に会社つぶしているんだから。》p.342

 《生島 こっちは若いし、もうストレートに企画は通る。
     しかしおもしろいから企画出すと、
     全部てめえのしょいこみになっちゃうんだよな。
  田村 でも、ぼくがやめてから、君らががんばったからね。
     それで、ほんとの意味でいまの早川つくったんだから。》
   pp.343-344

かつては<海外文学の早川書房>として、
今やノーベル賞作家カズオ・イシグロの翻訳本の版元として、
大手に負けない出版社となった、
早川書房の草創期の物語の一つでもあります。

 

また文学について、田村さんは

 《田村 実際文学というのは、ユーモアのセンスなんですよ。
     文学というと、何か、しかめっ面しちゃってるけど、
     そんなものと文学は関係ないんだからね。
     どういうユーモアのセンスで言語表現していくかというのが、
     文学の鉄則ですからね。》    

と言うのです。そして、14,5のときから詩を書いていたが、
そのときから、《ユーモアのセンスで書いてるわけです》と。

田村さんの詩を読んだ学生さんは、
シリアスに詩を書いていると思っているが、
実際の田村さんは詩のイメージと全然違うので驚くという。

《そういうことと言語表現は関係ないんだから。》と。

「文学は、ユーモアのセンス」なんだそうです。

なるほど、私の好きな北杜夫さんなどは、その見本のような気がします。
高級な文学ほどユーモアのセンスに優れているのではないか、
という気がしますね。
海外の優れたミステリなどでも、しゃれた会話があったり、
ユーモアのセンス溢れる会話が魅力だったりします。

そういうところでセンスを磨くのも一法かもしれません。

以上、引用は本書「Ⅲエッセイ・対談
(×生島治郎「諸君、ユーモア精神に心せよ」)」より。

 

 ●私の2023年〈リアル系〉ベスト3候補

今年は「ベスト3」といいましても、
以上上げてきたような本の冊数ですので、数的にも選びにくく、
またそのほとんどをメルマガに利用していますので、
「この本を!」と改めてオススメするのは、むずかしく感じます。

候補としてあげておく程度にしておきましょう。

<2023年〈リアル系〉ベスト3候補>

『文学のレッスン』丸谷才一 聞き手・湯川豊 新潮文庫 2013/9/28

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『美しい本屋さんの間取り』エクスナレッジ X-Knowledge 2022/12/29

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『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ 新潮文庫 2021/6/24

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『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)春秋社 2023/4/19

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『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16

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・『ぼくのミステリ・マップ―推理評論・エッセイ集成』田村隆一
中公文庫 2023/2/21

 

『文学のレッスン』は、丸谷才一さんの文学論です。
とにかくメルマガ誌上でも紹介しましたように、
歴史的な視点からそれぞれの文学ジャンルの特徴などを
説いてくれていて、文学論などまともに学んだことのない私には、
とても役に立つといいますか、ヒントになるといいますか、
文学の理解に役立つ知識を得られた、という気がします。

『美しい本屋さんの間取り』は、<本屋さんになりたい>は、
<元本屋の兄ちゃん>として夢見たことでもあり、
妄想本屋さんは、今でも楽しめる遊びになりそうです。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』では、
以前から気になっていた本で、こういう機会に読めてホントに良かった、
という一冊でしたね。
人種や文化の違いをどう乗り越えるか、あるいはどう受け入れるか、
じゃあ、最終的に実際にはどうするか、
という問題で色々考えるヒントをもらった感じです。

『鍵盤ハーモニカの本』は、とにかく力作です。
一つのことをここまで突き詰めていることがスゴいと思います。
この辺でまとめておかないと失われる情報も多かったろうと思います。

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』は、前作同様、
丹念に調べた結果を基に、将来への展望などを語っています。
<左利きライフ研究家>として、色々参考になる部分も多く、
反面、「言い分」という表現にちょこっと引っかかる部分があったり、
本としての評価の面ではちょっとむずかしいところがありました。

『ぼくのミステリ・マップ―推理評論・エッセイ集成』は、
先にも書きましたように、私の中高生時代からの趣味である、
海外ミステリに関する教科書的なエッセイを含む本で、
楽しく読みました。
昔話など若い人には、あまり心惹かないものでもあるかもしれませんが、
歴史というものは、そういう部分があるものではないか、と思われます。

若い人には、常に、昨日があって今日があるのだということを、
忘れないようにしてほしいものです。

『鍵盤ハーモニカの本』や『左利きの言い分』にしても、
そういう歴史というものを語りながら、
その先に現状と未来を捉えているように思います。

こういう読み方をできるようになったのも、
自分が年を重ねた結果かも知れません。

 

 ●私の年間ベスト―2023年〈リアル系〉

2022年も〈リアル系〉は、以下の一作のみでした。

『生きがい―世界が驚く日本の幸せの秘訣―』茂木健一郎 恩蔵 絢子/訳 新潮文庫 2022.5.1
―脳科学者が英語で世界に向けて出した日本人の生き方をめぐる小著。

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今年も、同様に一作のみをオススメとしておきましょう。

 

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   私の年間ベスト―2023年〈リアル系〉

 (1)『ぼくのミステリ・マップ―推理評論・エッセイ集成』
    田村隆一 中公文庫 2023/2/21

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出版社紹介文より――

《『荒地』同人として鮎川信夫らとともに日本の戦後詩をリードした
 国際的詩人にして、早川書房の初期編集長兼翻訳者として
 海外ミステリ隆盛の基礎を築いた田村隆一(1923-1998)。
 アガサ・クリスティの翻訳に始まり、
 「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の出発、
 「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」の創刊……
 その比類なき体験による、
 彼にしか語りえない数々の貴重なエピソードとユーモアは、
 詩(ポエジー)と戦慄(スリル)の本源的考察を通して、
 やがて21世紀の我々をも刺し貫く巨大な文学論・文明論へと至る――
 人類にとって推理小説(ミステリ)とは何か?

 聞き書き形式でポーからロス・マクドナルドまでの
 クラシック・ミステリをガイドするロング・インタビュー
 (旧版『ミステリーの料理事典』『殺人は面白い』所収)を中心に、
 クロフツ『樽』やクイーンの四大『悲劇』といった翻訳を手がけた
 名作の各種解説、クリスティとの架空対談、江戸川乱歩や植草甚一に
 まつわる回想、生島治郎・都筑道夫ら元早川出身者との対談など、
 推理小説に関する著者の文章を単著初収録作含め精選し大幅増補した、
 まさに田村流ミステリ論の決定版。生誕100年記念刊行。》

【目次】
Ⅰ クラシック・ミステリ・ガイド(インタビュー)
Ⅱ 訳者解説(F・W・クロフツ/アガサ・クリスティ/
 ジョルジュ・シムノン/エラリイ・クイーン)
Ⅲ エッセイ・対談(×生島治郎「諸君、ユーモア精神に心せよ」/
 ×都筑道夫「EQMMの初期の頃」)
Ⅳ 資料編
〈解説〉押野武志

田村隆一
一九二三(大正十二)年東京生まれ。詩人。明治大学文芸科卒業。
第二次大戦後、鮎川信夫らと「荒地」を創刊。戦後詩の旗手として活躍。
詩集『言葉のない世界』で高村光太郎賞、『詩集1946~1976』で無限賞、
『奴隷の歓び』で読売文学賞、『ハミングバード』で現代詩人賞を受賞。
ほかに『四千の日と夜』など。推理小説の紹介・翻訳でも知られる。
一九九八(平成十)年没。

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本誌では、「私の読書論179-私の年間ベスト3-2023年〈リアル系〉(後編)田村隆一『ぼくのミステリ・マップ』」と題して、今回も全文転載紹介です。

前回も書きましたように、「メルマガの為に読んだ本ばかり?」で、そのため改めて<ベスト3>に上げるのはどうかと思いつつ選んでいます。

読んだ十数冊のなかでは「ベスト3候補」として上げた6冊が一段上というところでしょう。

今年のベスト1はそういう中では、一番自分の趣味に合った本ということで、勉強の本とか、自己啓発といった意味合いもなく、単純に「楽しめた本」といえるかと思います。

最後に、本文中に書き忘れましたが、昨年が生誕百年だった田村隆一さんの訳書として私が持っているのは、弊誌<クリスマス・ストーリーをあなたに>の
2013(平成25)年11月30日号(No.117)-131130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム
クリスマス・ストーリーをあなたに~『サンタクロースの冒険』ボーム
(「作文工房」版)

でも紹介しました

『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム/著 田村隆一/訳 扶桑社エンターテイメント(1994.10.30) [文庫本]
―『オズの魔法使い』の作者ライマン・フランク・ボームの描くサンタ・クロースの生涯を描く、サンタさん誕生物語

があります。

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他に<左利きミステリ>の一冊でもある、エラリー・クイーン『Zの悲劇』(角川文庫)、
ロアルド・ダールのポケミス版『あなたに似た人』(Hayakawa Pocket Mystery 371 1957/10/15)もそうでした。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2023.12.16

『左組通信』復活計画(26)左利き自分史年表(3)1980-1990―左利き用品に目覚めるまで-週刊ヒッキイ第655号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

(『まぐまぐ!』登録・解除)

第655号(No.655) 2023/12/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [26]
レフティやすおの左利き自分史年表(3)1980-1990―
左利き用品に目覚めるまで」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第655号(No.655) 2023/12/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [26]
レフティやすおの左利き自分史年表(3)1980-1990―
左利き用品に目覚めるまで」
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 前回は、
 「1972(昭和47)18歳-1979(昭和54)25歳 ――世界が間違っている」
 をお送りしました。

 高校卒業後、社会人となってから、「左利き友の会」を主宰していた
 精神科医・箱崎総一先生の著書『左利きの秘密』を読み、
 左利きの自分が間違っているのではなく、左利きを受け入れない
 この社会、この世界自体が間違っているのだ、と気付かされるまで、
 でした。

 

(第一回)
第651号(No.651) 2023/10/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [24]
レフティやすおの左利き自分史年表(1)1954-1971―高校卒業まで」

2023.10.21
『左組通信』復活計画(24)左利き自分史年表(1)1954-1971―高校卒業まで
-週刊ヒッキイ第651号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-ed7f5f.html

(第二回)
第653号(No.653) 2023/11/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]
レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」

2023.11.18
『左組通信』復活計画(25)左利き自分史年表(2)1972-1979―
世界が間違っている-週刊ヒッキイ第653号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/11/post-3f10f1.html

 

 今回は、それ以後、生まれて初めての左利き用品である、
 左手用カメラ「京セラSAMURAI Z-2L」を手に入れ、
 左利きは自分の身体に合った左利き用品を使うべきだ、
 と気付くまで。

 <左利きミステリ>を含む「左利き年表」になっています。

*(参照)
第595号(No.595) 2021/5/15
「楽しい読書コラボ企画:私の読書論144<左利きミステリ>その後」
2021.5.15
私の読書論144-<左利きミステリ>その後
-週刊ヒッキイ595号&楽しい読書294号コラボ企画
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/05/post-e0ec7a.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/400a7921be1d016f8bfbff350762971a

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第640号(No.640) 2023/4/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前編)」1900年代
2023.4.15
私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前)
-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/04/post-d5c13e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/131b4f7933014dcedf057c75702ff28e

 

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [26]

  <レフティやすおの左利き自分史年表>(3)
 
  1980-1990―左利き用品に目覚めるまで
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

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(画像:本編の元となった、今はなきホームページ『レフティやすおの左組通信』「レフティやすおの左利き自分史年表」のページ冒頭)

 ●「1980-1990―左利き用品に目覚めるまで
  【左利きライフ研究家】レフティやすおの左利き自分史年表-3」

*(注)科学書――特に脳・神経科学に関する本につきましては、
 最も発達が著しく、発行年代の古い本の場合、情報として
 古くなってしまっているものがありますので、ご注意ください。

====================================================================
(太文字=西暦(元号)年齢) レフティやすおの出来事 (茶文字=社会の出来事)(青文字=左利き・利き手関連文献
====================================================================

1980(昭和55)26歳 4/5(映画)『ミスターどん兵衛』山城新吾企画・製作・脚本・監督・主演、共演川谷拓三、他 ――山城新吾と川谷拓三の日清どん兵衛のCMがヒットし、映画に。

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(画像:映画『ミスターどん兵衛』ポスター、チラシ)

(参照)『レフティやすおのお茶でっせ』2009.8.16
8月14日「どん兵衛」CM等で活躍の山城新伍さん(70歳)死去
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2009/08/814cm70-86f5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/08876f2f71e930b97c821bbd6a163650

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(画像:産経新聞2009年8月14日 訃報欄より)

⇒1977(昭和52) (TV CM)日清食品「どん兵衛」 テレビCM始まる  「きつねうどんから おあげとったら何になると思う」…
 「ただの素うどん」出演:山城新吾、川谷拓三
――左利きコンビが左手にお箸を持って「どん兵衛」を食べるCMは
とても好ましく、左手箸の左利きの人に大いに勇気を与えた。
日清食品「どん兵衛きつね」――

「どん兵衛」はヒットした。最大の要因はテレビCMだった。山城新伍と川谷拓三のひょうきんコンビのCMが人気を呼び、売り上げが急上昇したのである。小品を擬人化したどん兵衛というネーミングがあったからこそ、あのかけ合い漫才のCM世界が生まれたのだと思う。山城新伍の突っ込みと川谷拓三のぼけ具合が絶妙だった。
 / 発売二年目の一九七七(昭和五十二)年に売り上げ数量が一億食を超えた。きつねうどんの発祥の地は大阪である。根強いうどん人気もあってか、その年の二月の調査で、西日本ではカップヌードルを抜き第一位になってしまった。もちろんしばらくして巻き返しにあったが、一瞬でもカップヌードルの牙城を崩したのはすごいことだった。...
》p.78

――『カップヌードルをぶっつぶせ!――創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』安藤宏基(あんどう・こうき) 中央公論新社 2009.10.7
「第2章 創業者とうまく付き合う方法/パッケージ戦力第二弾。ドンブリ型容器の「どん兵衛きつね」がヒット。「どんくさくてもいい」。社内の猛反対を押し切って商品名に。」より

 

『右手の優越』R・エルツ 吉田禎吾、内藤莞爾訳 垣内出版 (2001/6/1 右手の優越―宗教的両極性の研究 ちくま学芸文庫 ロベール エルツ (著), Robert Hertz (原著), 吉田 禎吾, 板橋 作美, 内藤 莞爾 訳)

(左利きミステリ、ショートショート)「最期のメッセージ」阿刀田高 『瑠伯』1980(昭和55)年夏季号 ――左利きの被害者の残したダイイング・メッセージの謎解き。
(収録短編集)『新装版 最期のメッセージ』講談社文庫 2009.1.15

12/20『左利きの本―右利き社会への挑戦状』ジェームス・ブリス/ジョセフ・モレラ 草壁焔太訳 講談社 The Left-Handers’ Handbook ――前半が、私が手に取った初めての翻訳ものの左利きの本。
後半は、翻訳を担当された草壁氏による日本編でした。

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第503号(No.503) 2017/10/7
「創刊500号突破!“13年目に向けて”特別号(3)」
 ●勇気を与えられた本
《この本で、“右利き社会と「闘う」”
 という行き方(方法)のあることを学んだ気がします。》
『レフティやすおのお茶でっせ』2017.10.19
創刊500号突破!13年目に向けて(3)-
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii第503号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2017/10/500133--hikkii5.html

 

1981(昭和56)27歳
5/31(左利きミステリ、ショートショート)「兄弟」阿刀田高  東京新聞等に掲載
――えこひいきされる兄弟のお話。
ネタバレになりますが「ぼく左手・兄右手」という設定。
ベンジャミン・フランクリンの左手からの手紙という
<教育監督者への請願書>を連想させる作品です。
(のちに『新装版・最期のメッセージ』講談社文庫 収録、

同書には、1980年『琥珀』夏季号初出の左利きネタの
ミステリ・ショートショート「最期のメッセージ」も併録。
*「兄弟」は『イソップを知っていますか』新潮文庫(2012/6/27)、
 『アイデアを捜せ』文春文庫(1999/2/1) でも紹介されています。

(左利きミステリ・番外SF)「ブルー・シャンペン」
Blue Chmpagne ジョン・ヴァーリイ 浅倉久志/訳
原著初出オリジナル・アンソロジー『ニュー・ヴォイスIV』(1981)
→(1985)邦訳収録短編集『スター・シップ―宇宙SFコレクション(2)―』
伊藤典夫、浅倉久志/編 新潮文庫 1985(昭和50)12/1
――脳の言語中枢に働きかけて言葉の混乱を起こす幻覚剤と
左利きの人の場合の反応の違い。

 

1982(昭和57)28歳 4/30(参考書)『手と脳―脳の働きを高める手』久保田競  紀伊国屋書店
――利き手(作用の手)と非利き手(感覚の手)の役割の違いなど。

『手と脳 増補新装版』2010/12/24
――《【旧版との違い】脳科学の新たな成果をアップデートするとともに、
読みやすいレイアウトに。/第2章、9章は全面的に書き下ろし》

6/『春夏秋冬殺人事件』「冬の部 団地警察殺人事件」齋藤栄

――右使いの左利きの被害者、自殺偽装殺人事件。連作短編集のラスト。
 左利きならではの場面はなく、<左利きミステリ>としては名目だけ。
『春夏秋冬殺人事件』齋藤栄 双葉社 1982/6 

『春夏秋冬殺人事件』 祥伝社 ノン・ポシェット 1995/4

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第420号(No.420) 2014/6/21 「名作の中の左利き~推理小説編27~
齋藤栄『春夏秋冬殺人事件』」
『レフティやすおのお茶でっせ』2014.6.25
左利きミステリ『春夏秋冬殺人事件』齋藤栄~
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii420号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/06/hikkii420-a208.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/2479f287f13c41d921ee64bb97abd4db

 

10/(左利きミステリ)「停電にご注意」鮎川哲也 『小説推理』昭和57年10月掲載
――安楽椅子探偵<三番館>シリーズ。
 アリバイの時刻を示す証拠の写真の人物がみな左利きという謎。
(収録短編集)
『クライン氏の肖像―三番館の全事件III』<鮎川哲也名探偵全集>出版芸術社(平成15年4月)収録。

『材木座の殺人』鮎川哲也 創元推理文庫 2003/8/1

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第364号(No.364) 2013/5/18「名作の中の左利き
~推理小説編16~全員が左利きの謎「停電にご注意」鮎川哲也」
『レフティやすおのお茶でっせ』2013.5.22
名作~推理編16~全員が左利きの謎・鮎川哲也~
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii364号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/05/16-hikkii364-3b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/cf81d782cad9508f380fe8b154670cb5

 

12/1『かくれた左利きと右脳』坂野登 青木書店

――指組み、腕組みでどちらの手が上側に来るかの違いが「利き脳」に関係しているという。

(文庫化・再刊)『鏡の国のアリス』広瀬正 集英社文庫

 

 

1983(昭和58)29歳 6/1『左きき学―その脳と心のメカニズム』ジーニー・ヘロン編 近藤喜代太郎、杉下守弘訳 西村書店  NEUROPSYCHOLOGY OF LEFT-HANDEDNESS(1980)
――近年の脳・神経科学の発達は著しく、情報としては古いが、第一章の左利き研究の歴史は目を通す価値はある。
「まえがき」近藤喜代太郎

ⅰp《利き手も脳の左右分化のひとつの表現であり、その研究を通して脳の神秘に迫るひとつの手掛かりでもあります。/左利きは古くから人々の注意を引き、それぞれの国や時代の水準を反映して種々の憶測が加えられ、また、少数者への寛容度を反映してさまざまに処遇されてきました。その意味で、左利きの問題は文化史の一側面ですし、それが脳機能の左右分化という立場から理解されるようになったのは、決してそう古いことではありません。》
〈近藤は自身が左利きで、それぞれ深い関心と同感をこめて本書の翻訳に当たりました。》

「序」J・へロン

ⅳp《嘲笑され、叱られ、物差しで打たれ、後ろ手に縛られもした悪い手。左利き者は辱められ、非難され、悪意に満ちた攻撃を受けた。こうした歴史にもかかわらず、左利き者は静かに朽ち果てるどころか、生き残っている。ではなぜか? それは、本書が示すように、彼らが好んでではなく、“神経学的命令”によって左手を用いているからである。》
ⅴp《原理の解明は例外を通じて行われることが多いので、左利き者の研究はこれら脳研究で重大な役割を果たしている。左利き者の仲には脳の非対称性の様相の異なる集団があり、様々の左利きの類型を調べ、個々の検討を加えて脳の機構について多くを学ぶことができる。/これらの研究の対象が左利き者であっても、真の設問は左利きそれ自体ではなく、ヒトの脳がどのように機能するかに向けられている。/本書を左利き者にささげる。ヒトの脳の神秘への疑問に回答をもたらす、最も重要な手掛かりになる近代的研究によって、ついには左利き者のユニークな特性が見出されるだろう。》

「第1章 左利き:初期の学説、事実、空想」ローレン・ユリウス・ハリス

(参照)『レフティやすおのお茶でっせ』2004.8.27
左利きの本だなぁ『左きき学 その脳と心のメカニズム』ジーニー・ヘロン編
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2004/08/post_3.html

 

1985(昭和60)31歳 4/11(TVドラマ)『スケバン刑事』主演斉藤由貴 フジテレビ系~85/10/31(全25話)

『スケバン刑事 VOL.1』 [DVD] 斉藤由貴, 林美穂 (出演)

11/7(TVドラマ)『スケバン刑事Ⅱ少女鉄仮面伝説』主演南野陽子 フジテレビ系~86/10/23(全42話) ――初代二代目と左利きの女優によるドラマ、武器の左投げのヨーヨーが決まってました。
『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説 VOL.1』 [DVD] 南野陽子 (出演), 相楽ハル子 (出演)

 

1/15(参考書)『左の脳と右の脳』サリー・P・スプリンガー、ゲオルク・ドイチュ(Springer, Deutsch) 監訳・福井圀彦、河内十郎 訳・宮森孝史、松嵜英士 医学書院
――第1章で「利き手と大脳半球」について、第5章「左利きのなぞ」で「左利きについての考え方の歴史」「利き手を決定することの難しさ」「利き手は遺伝により決まるのか」「なぜ双生児には左利きが多いのか」「利き手と機能的非対称性」「利き手と高次精神機能」など左利きに関する研究結果が示されている。

第2版 (1997/10/1)

 

12/1(左利きミステリ・番外SF)「ブルー・シャンペン」Blue Chmpagne ジョン・ヴァーリイ 浅倉久志/訳

邦訳収録短編集『スター・シップ―宇宙SFコレクション(2)―』伊藤典夫、浅倉久志/編 新潮文庫 1985(昭和50)12/1
→(1981)原著初出オリジナル・アンソロジー『ニュー・ヴォイスIV』(1981)
――脳の言語中枢に働きかけて言葉の混乱を起こす幻覚剤と
左利きの人の場合の反応の違い。

 

 

1986(昭和61)32歳 12/1『勝利投手』梅田香子 河出書房新社

――日本のプロ野球に左腕女性投手が入団。星野中日ドラゴンズがドラフト会議で指名した新人投手は、甲子園を沸かせたあのピッチャーだったが……。

 

1987(昭和62)33歳 『右利き・左利きの科学』前原勝矢 講談社/ブルーバックス

――手軽に手に取れる新書で、本格的な左利き・利き手の科学解説書。

 

9/ 『左ききの人の本 右にでるモノがない!』斎藤茂太 エムジー
――精神科医で性格の本などの当時の人気著述家<モタ先生>の左利き応援本。今では右利きから転換の左投手と知られる江夏豊さんを左利きの人の代表として、その性格を左利きの性格として解説している。

 

 

1988(昭和63)34歳 7/何度目かの就職先、電子機器製造の会社でハンダ付けの仕事を覚える。最初は見よう見まねで右手で始めるが、ある程度慣れたところで左手を使う。基本的にはどちらでもほとんど変わりなくできるようになる。みんなと流れ作業などするときは右手で、ひとり作業のときは左手で行うようになる。
――左手の方が細かい作業には向いている様子、スピードも若干速いか?
道具はペン型、ピストル型ともに右手でも左手でも使える対象形。 

 

9/ (SF、左右)『白壁の緑の扉』H・G・ウェルズ ボルヘス編バベルの図書館8 小野寺健訳国書刊行会
――「プラットナー先生綺譚」収録
「プラトナー物語」The Plattner Story (The New Review 1896/4)

 

(家電)シャープ、業界初、左右両開き冷蔵庫発売。

――<どっちもドア>、本来は置き場に困らない、出し入れ自由などキッチンでの使い勝手の向上という発想で作られたものだが、左利きにも便利で、家族で使う商品だけに、共用性のあるこの製品は好都合。
(参照)
SHARP > 冷蔵庫 > どっちもドア 選ばれ続けて35年
https://jp.sharp/reizo/door/

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1989(昭和64/平成元)35歳 4/(左利きミステリ)『8の殺人』我孫子武丸 講談社
――“8の字屋敷”で起きた連続殺人。左肩にボウガンを構えた犯人…?
『新装版 8の殺人』我孫子武丸/著 講談社文庫(2008/4/15)

『8の殺人』我孫子武丸/著 講談社文庫(1992.3.15)

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第382号(No.382) 2013/9/21「名作の中の左利き
~推理小説編20~左利きの容疑者『8の殺人』我孫子武丸」
『レフティやすおのお茶でっせ』2013.9.26
左利きの容疑者『8の殺人』我孫子武丸~左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii382号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/09/hikkii382-d77d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/56e12e92f4f6e9b32b29cf54de39238a

 

7/(カメラ)世界初左手用カメラ「京セラSAMURAI Z-L」発売。片手保持による縦型フォルムのニューコンセプト・カメラ、SAMURAI Zの左利き用。

 

9/(カメラ)「京セラSAMURAI Z」の一部機能を省略した廉価版「Z2」、左手用「Z2-L」発売。

(画像)1990のカタログから、左が左手用Z-L

 

4/1(プロ野球小説、文庫化再刊)『勝利投手』梅田香子 河出書房新社/河出文庫

 

 

1990(平成2)36歳 12/30左手用カメラ京セラ サムライSAMURAI Z2-L を買う。

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(画像:今はなきホームページ『レフティやすおの左組通信』の「左利きphoto gallery〈HPG4〉世界初 左手用カメラ/京セラKYOUCERA サムライSAMURAI Z2-L」のページから――hg.hph4(ページ冒頭)、hg.hph4 1(京セラSAMURAIZ製品カタログ)、2(雑誌の紹介記事より―『週刊プレイボーイ』1990年12月頃?、『モノ・マガジン』1991年4月2日号no.188)、3(添付の取扱説明書 専用アクセサリー 価格票) )

――生れて初めての左利き用品。当時各社からいろいろ出ていたニューコンセプト・カメラのひとつ。どれを買うか迷ったが最終的にはやはり左利きの私が買うならこれでしょう、ということで。まさにベスト・パートナーと呼ぶにふさわしい、フィット感。このときから、私は真に左利きに目覚めました! 左利きは左利き用のものを使わなきゃ、って。
ちなみに、これを買ったお店(大阪で一番有名なカメラ屋さんの日本橋店)の人に聞いてみたところ、左手用を売るのは3台目、引渡し前に動作チェックをするのだが右利きには扱いにくい、という話だった。

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第566号(No.566) 2020/3/7
「2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年
(その2)その後の30年―左利きライフ研究の30年(1)」
 ●運命の時――
1990(平成2)36歳の年末12月30日
 ●『週刊プレイボーイ』の記事
「ぐぁんばれカメラ」
《ニューコンセプトカメラの元祖、サムライの第2世代。
 すっごくコンパクトになったボディは、
 とても持ちやすいカタチだ。(略)
 (左利き用のZ2-Lも同価格であるぞ)》
 ●生まれて初めての左手・左利き用品との出会い
今は消滅したホームページに掲載した文章を再録しましょう。
(この文章は、元々は、
弊誌『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第144号(No.144) 2008/8/2
「<左利きQ&A>(21)カメラと左利き」
「左利き講座<左利きQ&A>(21)カメラと左利き」
より転載したものです。)
 ◆左手用カメラの使用感
<左手用「京セラKYOCERA サムライSAMURAI Z2-L」
 を使ってみて思うこと>
 ●<利き手は心につながっている>
脳科学者・久保田競先生の著書『脳を探検する』によりますと、
利き手と非利き手の役割分担というものを考えますと、
利き手は「作用する手」、非利き手は「感覚の手」だそうです。
https://www.amazon.co.jp/dp/4062085801/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
 ◆利き手では、反復練習で身につく作業より、心の作業を!
 ●自分が自分らしくなる
『レフティやすおのお茶でっせ』2020.3.7
2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年(2)その後の30年(1)左手用カメラ-週刊ヒッキイ第566号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/03/post-fe5897.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/88bb26fc85ae82e9284a377bbcdbeaf3
 

 

  6/『左手のことば』秋山孝 日貿出版社

1952年生まれ(2022年没)のデザイナーでイラストレーターで元・多摩美術大学教授。擬人化された「左手」がペンを持っているイラストが表紙。
巻末に英語対訳の著者インタヴューで、「矯正」指導を受け苦しんだ話がある。

ぼくが小学校1年生のころに、ぼくは昭和27年生まれだから……昭和33年前後かな?。
 まあ昭和30年代のはじめにいろいろな人に左ききというのは、一般人のモラルに反していて、いやしいものであるというふうに教えを受けて、直すように強要されたというのがあって。
 でもぼくは左手のほうが使いやすいしね、細かい仕事をする、つまり字を書くのも絵を描くのも左手のほうが非常にうまくいくと。
 でもぼくの先生たちは直させるのに何と言ったかというと、文字は右利きの人にしか描けない図形であると。
 そうすると草書体が書けないだとか、英語は左から右へ行くものだから直しなさいだとかいわれたんだけれども、ぼくはそれに対して納得ができなかった。
 使いやすい手を替えて不自由な手を持つということにものすごく抵抗を感じたし、本当に納得がいかなかった。
 そこでぼくは左手を使っているのがそんなにみっともないのかと思って鏡に映しながら手を書いてみたら非常にスムーズにね、自然な感じで鏡に映っているわけ。
 で、また学校に行くと先生がのぞき込んで「左手を使うのをやめなさい!」と怒鳴る。
 「右利きに変えなさい、それは片輪なんだよ」ってね。
 その片輪ということもぼくには理解できなかった。
 心の底からの理解や納得がないことはやってはいけないよね、子供でも。
 悪くいうと頑固なんだけれども理解して納得できれば頑固は直るわけ、でも納得できなくてぼくは使ってる。
 先生の考えの中での「左手は悪」という既成概念に対する抵抗だね。


 

(1990・原著発行)(左利きミステリ、番外編)「呪われたティピー」エドワード・D・ホック 
収録短編集『革服の男―英米短編ミステリー名人選集〈5〉』光文社文庫 1999/11/1
――<左利きの探偵>西部探偵ベン・スノウ

 

-- 1980-1990 ――左利き用品に目覚めるまで --

 

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [26]レフティやすおの左利き自分史年表(3)1980-1990―左利き用品に目覚めるまで」と題して、今回も全紹介です。

今回は、私にとって生まれて初めての左利き用品である、左手用カメラを手にしたときの感動から、左利きは自分の身体に合った左利き用の道具や機械を使うべきだと、目覚めたときまでの年表です。

また長くなっていますが、そのまま全文転載です。

これらの年表は、いずれさらに手を入れて個別にアップしてゆく予定です。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2023.11.18

『左組通信』復活計画(25)左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている-週刊ヒッキイ第653号

☆彡 Congratulations! ☆彡

11月17日、アメリカ大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスで活躍した、
大谷翔平選手が、2年ぶり2度目となる
アメリカン・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれました。

一昨年同様、投票権を持つ全米野球記者協会の記者30人全員が
1位票を投じる「満票」での選出で、2度目の満票は史上初の快挙!
今季は、打者として44本塁打を放って日本人初の本塁打王に輝き、
打率3割4厘、95打点、20盗塁を記録。
投手でも10勝5敗、防御率3・14、167奪三振をマークし、
史上初の2年連続の「2桁勝利、2桁本塁打」を達成!

輝かしい成績での受賞となりました。
おめでとうございます!

写真等でもご存知のとおり、大谷選手は、投打二刀流で知られますが、
実は、右投げ左打ちの“左右”ニ刀流でもあります。

左利きライフ研究家の私にとっては、
こちらの意味での二刀流――右投げの投手としてと左打ちの打者として
――での大いなる成績を大いに賞賛したいものです。

ケガを治してさらなる二刀流のプレイを拝見したいものです。

私はコロナ禍のここ数年は、
将棋の藤井聡太さんと大谷選手の活躍を見るのが、
数少ない楽しみの一つでした。

今後とも今までにまして大活躍されることを祈っています。

レフティやすお

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『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

(『まぐまぐ!』: https://www.mag2.com/m/0000171874.html)

第653号(No.653) 2023/11/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]
レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」

 

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【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第653号(No.653) 2023/11/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]
レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」
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 前回は、1954(昭和29)年の誕生から1972(昭和47)年春の高校卒業まで
 をお送りしました。

第651号(No.651) 2023/10/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [24]
レフティやすおの左利き自分史年表(1)1954-1971―高校卒業まで」

2023.10.21
『左組通信』復活計画(24)左利き自分史年表(1)1954-1971―高校卒業まで
-週刊ヒッキイ第651号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-ed7f5f.html

 今回はそれ以後のいよいよ左利きに目覚める時期を取り扱います。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]

  <レフティやすおの左利き自分史年表>(2)
 
  1972-1979―世界が間違っている
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●「1972-1979―世界が間違っている
  【左利きライフ研究家】レフティやすおの左利き自分史年表-2」

====================================================================
(太文字=西暦(元号)年齢) レフティやすおの出来事 (茶文字=社会の出来事)(青文字=左利き・利き手関連文献
====================================================================

1972(昭和47)18歳

3/高校卒業後、就職先で電気アーク溶接の仕事をする。これは
電線がつながった洗濯バサミの親分のようなものに溶接棒をはさんで
使うもので、裏返せば右手でも左手でも使えるので、左手で使った。
――横に溶接する場合は当然右利きの人と違い、右から左に移動してゆく。
(学校で実習したときはみんなと同じ右手で使った。機械の配置など
そういうふうに使うようにセットされていたから。)
しかしガス溶接機の場合は右手で持って左手で弁を調節する形式に
なっているので、これは右利き用の道具であった
(免許を取るところまで行かず、結局使う機会はなかったが)。

『右きき世界と左きき人間』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会(発売・産学社)
(原著 Left-handed Man in a Right-handed World, 1970)
――左利きのイギリス人左利き研究家の著者が代表を務める
左利きクラブのこと、ロンドンに開店した左利き専門店のことなど。
1978年刊『左と右の心理学―からだの左右と心理』M・C・コーバリス、I・L・ビール(白井、鹿取、河内訳 紀伊国屋書店)
の中で、「第八章 対称性と非対称性の進化」<右利き世界と左利きの問題>p.178に、「バーンスリ(1970)」として取り上げられている。

6/(左利きSF小説)『鏡の国のアリス』広瀬正 河出書房新社 ――〈左利き友の会〉主宰者で精神科医の箱崎総一をモデルにした人物と
会も登場する、左右逆転の世界に転移した左利きのサキソフォン奏者の
青年の物語。
初出:1972年6月(1972年3月9日死去,3ヶ月後)河出書房新社書き下ろし
『鏡の国のアリス』広瀬正 集英社文庫 1982/5/1

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第639号(No.639) 2023/4/1「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ
―その25― 楽器における左利きの世界(11)
広瀬正『鏡の国のアリス』より」
2023.4.1
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界
(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より-週刊ヒッキイ第639号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/04/post-bd12d8.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/da5e6246a452d429fefd7456233ff4a5

 

1973(昭和48)19歳

4/25『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会(発売・産学社) ――『右きき世界と左きき人間』に続く、左利き研究・応援本第二弾。
実は原書はこちらが先。

7/5(音楽)麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」(作詞千家和也 
作編曲筒美京平)のレコードが発売され、ヒットする。
――左利きがちょっとしたブームになる。新聞やテレビが、
左利き友の会の存在とその活動なども含めて左利きの話題を取り上げたり、
百貨店などに左利き用品のコーナーが設けられたりした。

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(野球)王貞治、日本で二人目、自身初の三冠王になる
(翌年も二年連続で)。
――「右の長嶋、左の王」は打順に合わせてイニシャルをとって「ON砲」
と呼ばれ、戦後の日本プロ野球を代表する選手の一人。左打ち左投げの
王選手の活躍に、左利きの子供たちは大いに勇気づけられた。

 

1975(昭和50)21歳

1/箱崎総一による左利き友の会『左利きニュース』42号を
もって活動停止。

(アメリカ)左利きの会“Lefthanders International”
カンザス州トピーカの左利きのMidge(ミッジ?)とディーン・キャンベルは
「レフトハンダーズ・インターナショナル」を設立し、
「Lefty(レフティ)」と呼ばれる隔月の雑誌を出版しました。
...その雑誌は1980年代後半まで発行され続けました。
(イギリスの著名な左手・左利き用品の通販“Anything Left-Handed”
 開業50周年記念サイトより、筆者訳)

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※注:《“Lefthanders International”》と
《「Lefty(レフティ)」と呼ばれる隔月の雑誌》
1991(平成3)年3月発行『モノ・マガジン』1991年4月2日号 No.188
「特集/左を制するものは時代を制す/左利きの商品学」
(ワールド・フォトプレス)で紹介されている。
私は、1993(平成5)年9月に、問い合わせの手紙を出し、
『Lefthanders Magazine』の既刊号をもらいました。
リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー『左利きで行こう! 
目からウロコの左利きツアー』丸橋良雄、尾島真奈美訳 北星堂書店(2002.6)
(原著 THE LEFT-HANDER'S GUIDE TO LIFE, 1992)

「第3章 左利きの歴史ハイライト」の「1976年」の項で、
《「レフトハンダー」という雑誌(もともとは「レフティ」と
呼ばれていた)》と紹介。
私もその後、11・12月号から定期購読を始めました。
雑誌内の通信販売で左利き用品を購入(電卓、フォルダー、他)。
少なくとも「90年代半ばすぎ」までは続いていた、と思われます。
上記『左利きで行こう!』の「第11章 左利き関連情報」に、
〈左利き関連団体〉及び〈左利き用品の小売店と通信販売会社〉として、
この「Lefthanders International, inc」が紹介されています。
原著の段階では、1992年刊なので活動していましたが、
邦訳版の出た2002年当時は、どうだったのでしょうか。
1980(昭和55)年12月に出版された、ジェームス・ブリス、ジョセフ・モレラ
『左利きの本――右利き社会への挑戦状』
(原著 The Left-handaers' Handbook) 草壁焔太訳(講談社)

「第I部 外国編/第四章/(3)入会できる左利きの組織」にも紹介。
《ジャンシー・キャンベル夫人が指揮をとっている。
 最初の左利き大会が一九七九年八月十日から十二日まで行われた
 (“左利きの日”は八月十三日である)。》
原著の発行年が不明ですので、資料としては不確かな部分もありますが。

(参照)
第529号(No.529) 2018/11/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
左利き者の証言から~ (特別編)ALH50年史概略(後編・第二回)」

 

1976(昭和51)22歳

(野球)張本勲巨人入り、ONに変わるOH砲の誕生。 ――安打製造機と言われた左打ちの張本選手と、左打ちのホームラン王・
王選手が並ぶ〈左利きの時代〉を現す代名詞のようにいわれる。
産経新聞(大阪版夕刊10月27日)の記事
「プレミアム+(plus)1 名球会リレーコラム 3000本安打 張本勲氏」
に、「世界のホームラン王」王貞治選手と並んで
「安打製造機」と呼ばれた左打ちの名選手だった、張本勲さん。
幼少時に右手を火傷して、右利きから左利きになった話、
野球を始めた話が語られています。
《私は4歳の12月、寒いときに右手にやけどを負った。
それまで右利きだった。半年ぐらい右手を使えず、
左手で生活していたものだから、字を書くことなど以外は
全部左利きになった。10歳のとき、待ちのお兄さんたちに
「1人足りないから来て」と言われ、初めて本格的な野球をやった。
右手が悪くて、その時は左打ち。覚えていないが、
いきなり二塁打を打ってびっくりされたらしい。
守るときに右にグラブをはめ、左手で投げたら遠くに投げられた。
右手投げるときはわしづかみ。薬指と小指がなくて、
残りの3本は中にひん曲がって球を握れず、遠くへ投げられない。
左は普通の指だから、これはいいと左投げになった。》

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(画像は「編集後記」で)

8/13(アメリカ)「LEFTHANDERS INTERNATIONAL(LHI)」の
チェアマン、ディーン・キャンベルが「International Lefthandaers
Day」(国際左利きの日)を制定
――左利き用品販売店のオープン二年目を記念して、「LEFTHANDERS
INTERNATIONAL(LHI)」という左利きの会とともに、左利き用品の普及と
左利き生活の向上と左利きの啓蒙活動を目的に始めた。
私の手元にある、雑誌「レフトハンダーズ・マガジン」の各年の
「国際左利きの日」INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY(LHD)の記事には、
記念日を設けたいきさつや催された行事等が記載されています。
リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー『左利きで行こう!
 目からウロコの左利きツアー』の「1976年」の項の後には、
 《1976年8月13日を最初の「国際左利きデー」としました。
  キャンベルがその日を13日にしたのは、左利きにまつわる
  すべての迷信を嘲笑するためだったと言っています。》と記載。
(参照)
第529号(No.529) 2018/11/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
左利き者の証言から~ (特別編)ALH50年史概略(後編・第二回)」

1976(昭和51)-1977(昭和52)22-23歳

(野球漫画)水島新司『野球狂の詩(うた)』<水原勇気編> 1976年、日本プロ野球初の女性左腕投手となる水原勇気(東京メッツ)が
魔球ドリームボールで活躍。(『野球狂の詩』講談社『少年マガジン』
1972(昭和47)-1977(昭和52)連載、のちにその他の作品でも登場した。)
(以上、日本語版ウィキペディアによる)
――1977年の木之内みどり主演の実写版映画の記憶はある。
『新装版 野球狂の詩 水原勇気編(1)』水島 新司 講談社漫画文庫 2009/2/6

2009410-yakyuukyou-no-uta-c13

『野球狂の詩 HDリマスター版 [DVD]』木之内みどり, 高岡健二/出演
加藤彰/監督

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1977(昭和52)23歳

(TV CM)日清食品「どん兵衛」 テレビCM始まる  「きつねうどんから おあげとったら何になると思う」…
 「ただの素うどん」出演:山城新吾、川谷拓三
――左利きコンビが左手にお箸を持って「どん兵衛」を食べるCMは
とても好ましく、左手箸の左利きの人に大いに勇気を与えた。
日清食品「どん兵衛きつね」――

「どん兵衛」はヒットした。最大の要因はテレビCMだった。山城新伍と川谷拓三のひょうきんコンビのCMが人気を呼び、売り上げが急上昇したのである。小品を擬人化したどん兵衛というネーミングがあったからこそ、あのかけ合い漫才のCM世界が生まれたのだと思う。山城新伍の突っ込みと川谷拓三のぼけ具合が絶妙だった。
 / 発売二年目の一九七七(昭和五十二)年に売り上げ数量が一億食を超えた。きつねうどんの発祥の地は大阪である。根強いうどん人気もあってか、その年の二月の調査で、西日本ではカップヌードルを抜き第一位になってしまった。もちろんしばらくして巻き返しにあったが、一瞬でもカップヌードルの牙城を崩したのはすごいことだった。...
》p.78

――『カップヌードルをぶっつぶせ!――創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』安藤宏基(あんどう・こうき) 中央公論新社 2009.10.7
「第2章 創業者とうまく付き合う方法/パッケージ戦力第二弾。ドンブリ型容器の「どん兵衛きつね」がヒット。「どんくさくてもいい」。社内の猛反対を押し切って商品名に。」より

8/30(野球小説)『赤毛のサウスポー』ロスワイラー 稲葉明雄訳 集英社 ――アメリカ・メジャーリーグ初の女性左腕投手の奮闘物語。

9/5(野球)王貞治、国民栄誉賞受賞(第1号) ――ホームラン世界記録通算756号を達成。

 

12/15(童話/ファンタジー)ライマン・フランク・ボーム
『オズのつぎはぎ娘』佐藤 高子/訳 新井 苑子/イラスト ハヤカワ文庫
NV158(原書The Patchwork Girl, 1913)
――左利きで13日の金曜日生まれのマンチキンの少年<不運なオジョ>
《「ぼく、左ききなんだ」/「偉大なる人物の多くは左ききだ」皇帝が、
 心配ないというようにいいました。「左ききは、ふつう、両方が使える。
 右ききはだいたいにおいて右しか使えない」》p.309
《ブリキの木樵りはいいました。「いまきみがあげた理由はどれも
 くだらないことばかりだよ。(略)」》p.310
『新版 自然界における左と右』(上)マーティン・ガードナー 坪井 忠二,
藤井 昭彦, 小島 弘/訳「9章 人のからだ」に紹介されていた
(ちくま学芸文庫 2021/1/9 p.161)。
このオズのシリーズは、高校生の時に創刊されたハヤカワ文庫で、
第一作『オズの魔法使い』から刊行されこの作品が第7作。
私は6作まで購読していたのですが、もういいやという気になって、
この第7作は未読でした。『新版・自然界における左と右』の記述を
読んでから本を探し読みました。

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1978(昭和53)24歳

1/1カール・セイガン『エデンの恐竜 知能の源流をたずねて』長野 敬/訳 秀潤社 ――『新版 自然界における左と右』(上)マーティン・ガードナー
坪井 忠二, 藤井 昭彦, 小島 弘/訳「9章 人のからだ」で紹介
(ちくま学芸文庫 2021/1/9 p.162)。
《過去、世界各地において、左利きに対する偏見がいかに実害を
 もたらしてきたかという例については、カール・セイガン『エデンの
 恐竜』(The Dragons of Eden, Random House,1977)の第七章と(略)》

3/25(音楽)ピンクレディー「サウスポー」(作詞阿久悠 作曲都倉俊一)
のレコードが発売されヒットする。
――左利きのケイちゃんよりミーちゃんが好きだった…。

3/1『左と右の心理学―からだの左右と心理』M・C・コーバリス、I・L・ビール 白井、鹿取、河内訳 紀伊国屋書店 (The Psychology of Left and Right, 1976)
――左右を区別すること、左右対称性について、右利きと左利きの問題を
含め、物理的・身体的・文化的・心理的に考察した著作。

1978(1980)「第二話 偽装の殺人現場」「第三話 消えた配偶者」山村美紗(『京都殺人地図』) ――京都府警捜査一課の検視官の警視・江夏冬子の事件簿。
 (第二話)被害者の傷跡から左利きの犯人と断定。
容疑者の中から左利き捜し。
 (第三話)同じく左利きの犯人捜し。左利きを示す証拠。
初出:「第二話 偽装の殺人現場」『問題小説』昭和53年1月号
 「第三話 消えた配偶者」『問題小説』昭和53年9月号
初出単行本:『京都殺人地図―女検視官江夏冬子』
『京都殺人地図』山村美紗 徳間書店 Tokuma novels 昭和55(1980)年10月

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第368号(No.368) 2013/6/15「名作の中の左利き ~推理小説編17~
検視官の見る左利きの特徴・山村美紗」
2013.6.18
名作~推理編17~山村美紗『京都殺人地図』~
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii368号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/06/17-hikkii368-1d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/4046bc5e70c8002d237372c8fffdf2e1

1978(左利きミステリ[番外編]<左手>)「ある東京の扉」連城三紀彦 ――「右手のための協奏曲」というアリバイ・トリック小説。
ラヴェル「左手のための協奏曲」をモチーフに。
 初出:1978(昭和53)年3月号
(収録短編集)『変調二人羽織』連城 三紀彦/著 光文社文庫 2010/1/13

 

1979(昭和54)25歳

12/8箱崎総一『左利きの秘密』立風書房マンボウブックス を
図書館で見つけ、読む。
――大いに共感するが、左利き友の会がすでに解散しているのが
残念だった。
なかでも私の心に響いたのは、左利きの自分が間違っているのではなく、
左利きの存在を受け入れないこの世界、社会の方が間違っているのだ、
という考えでした。

6/1『左利きの秘密』箱崎総一 立風書房 マンボウブックス 《右利きと左利きとが真に対等である社会――
 これは、単に左利きに対する偏見がないということだけでは、
 成り立たない。生活を営んでいく上で、
 両者の間に差別やハンデがまったくないということも、
 大きな条件である。いいかえれば、左利きの人たちが日常生活の中で
 なんら不便をを感じない社会、これこそが、
 ほんとうに平等な社会なのだ。》p.56
《いま、私は声高らかにこう訴えたい。左利きの人たちよ、
 右利きの人たちに対して何ら劣等感を抱く必要はない。
 左利きというのはひとつのりっぱな個性なのだ。その個性を磨いて
 右利き偏重社会、右きき偏重文化に挑戦しようではないか。》p.95
《その差別はいわれなきものであり、その迫害は理不尽なものなのだ。
 また冷遇・無視はじつに不当なものなのである。(略)
 右利きが右利きとして生まれてきたのと同じように、左利きもまた
 左利きとして生まれてきたのである。》p.96

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(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第564号(No.564) 2020/2/1
「2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年
(その1)初めの30年」
『レフティやすおのお茶でっせ』2020.2.1
2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年(1)初めの30年-週刊ヒッキイ第564号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/02/post-a8b3b5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/00be8ff2471350b61738e5f8e0efcae3
--
 ●世界が間違っている

「左利きの自分が間違っている」のではなく、

左利きを忌避し、右利き仕様を標準とする、
右利き偏重の「右利き社会」という
「この世界のほうが間違っているのだ」ということを教えられました。

左利きで悩む人の駆け込み寺的な存在だった
「左利き友の会」は解散したけれど、
その活動のおかげもあり、少しは社会も変化し、
左利きの人たちも勇気と自信を持てるようになれた、と思います。

たとえ左利きに生まれようと、右利きの人と同じように、
胸を張って生きてゆけばいいのだ、と。
--

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第601号(No.601) 2021/8/21「創刊600号突破記念―
  私が影響を受けた左利き研究家・活動家(1)第一期・箱崎総一」
『レフティやすおのお茶でっせ』2021.8.21
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(1)第一期・箱崎総一
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第601号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/08/post-f1f34b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d8a221789ac39a8af77d97a96f2d9873
1954-1989(0-35歳)第一期「左利きライフ研究家以前」
◆日本の左利き解放運動の父「左利き友の会」主宰―精神科医・箱崎総一
--
この時期は、私が左利きであることを意識させられた時期であり、
かつ左利きであることを容認され、
自覚するようになった時期でもあります。

いいことも悪いこともあった時代です。

そして、左利きであることに
少しずつ自信を持てるようになっていく過程の時期でもあります。
--

4/25(文庫化再刊)『赤毛のサウスポー』ロスワイラー 稲葉明雄訳 集英社 集英社文庫 c1976

12/20(音楽)アリス「秋止符」(作詞谷村新司 作曲堀内孝雄)発売~♪左ききのあなたの手紙~。

-- 1972-1979 ――世界が間違っている --

 

*参照:◆ 1970年代は日本における左利きの転換点 ◆

第582号(No.582) 2020/11/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(2)
 「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(1)」
2020.11.7
左利きの人生を考える(2)「わたしの彼は左きき」の時代:
1970年代(1)-週刊ヒッキイ第582号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-2a8f44.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/0ca665ee810b3e7d76930fa440e09892

第584号(No.584) 2020/12/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(3)
 「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(2)」
2020.12.5
左利きの人生を考える(3)「わたしの彼は左きき」の時代:
1970年代(2)-週刊ヒッキイ第584号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/12/post-353947.html

第588号(No.588) 2021/2/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(4)
 「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(3)」
 ――1970年代は日本における左利き観の転換期だった
2021.2.6
1970年代は左利き観の転換期「わたしの彼は左きき」の時代
-週刊ヒッキイ第588号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/02/post-be0a5a.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/25ecbd3c5e0310ed2de154eec14acfef

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」と題して、今回も全紹介です。

私の趣味の研究範囲として<左利きミステリ>も含めて、参照事項として弊誌のバックナンバーの記事などもはさみ、ホームページ時代の年表を補充しています。
思いの他、また長いメルマガになってしまいました。

記憶をたどり記録をあさり、できるだけ正確に事実を書き残しておきたいと考えています。

これが役に立つことがあるのかどうか現時点ではわかりませんが、もし将来において左利き文化史的なものを研究する人が出てきたとき、何かの足しになれば、という思いです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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