2019.01.15

私の読書論115-私の年間ベスト2018(後編)フィクション系

―第239号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2019(平成31)年1月15日号(No.239)-190115-
「私の読書論115-私の年間ベスト2018(後編)フィクション系」

 前号と今号と、二号・二年にまたがって、
 私が2018年に読んだ本の中から、
 一番におススメしたい本を紹介しています。

 今回は、「フィクション系」編です。

 「フィクション系」とは、小説等の文芸作品です。

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(目次)
 ●(1)メルマガ用のお勉強の本
 ●(2)それ以外の古典の名作
 ●(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
 ●(4)個人的な趣味の作品
 ●カズオ・イシグロ
 ●シリーズもの
 ●その他
 ●2018年に読んだ〈フィクション系〉ベスト3ぐらい
 ●私の今年2018年〈フィクション系〉ベスト1
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本誌は、「私の読書論115-私の年間ベスト2018(後編)フィクション系」と題して、今年読んだ本の中から、私のおススメを紹介するという、毎年恒例の企画です。

(後編)は「フィクション系」の本から。

2018年のベスト3ぐらいは以下の5点です。

 ・・・

では、詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

2018bestf_s


*参照:
『戦う操縦士』サン=テグジュペリ 鈴木雅生訳 光文社古典新訳文庫 2018.3 [1942]
―久しぶりに登場の文庫版。実体験に基づく、第二次大戦中の作戦活動を通して描いた反戦もの。

『人間の大地』〃 渋谷豊訳 〃 2015.8 [1939]
―新訳本による“再読”。飛行機乗りの視点から人間の営みを見つめた文明批評であり人間賛歌。

『ジェニーの肖像』ロバート・ネイサン 大友香奈子訳 創元推理文庫 2005.5 [1939,1958]
―『それゆえに愛は戻る』を併録。ともに時間や次元を超えた? 愛(と渇き)の物語。多くの人に知ってほしい一冊。

『TUGUMI』吉本ばなな 中公文庫 1992.3/1997.8
―再読、やっぱり楽しく読めました。今回も「つぐみは、世界で一番かわいい女の子だ」(「まりあもかわいいよ」)と思いました。

『紙の動物園 ケン・リュウ短篇傑作集1』ケン・リュウ 古沢嘉通編訳 ハヤカワ文庫SF 2017.4/2017.5
―誰もが一度は読んでほしい作品集。表題作は、単純に家族愛・親子愛と人間愛の物語、でいいと思います。

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2019.01.10

ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションV(カルパチア)と(シュトーリッツ)を読む

↓の記事で紹介しました、ヴェルヌの本をお正月に読みました。

2018.10.29
おまたせ!ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションV 第三回配本10月31日発売

 

『カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 (ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション)』ジュール・ヴェルヌ 著 新島進 訳

 

インスクリプトのサイト

Carpathes_storitz

 

(画像:100ページ超の〈驚異の旅〉あらすじ紹介掲載『文明の帝国』、ヴェルヌの作品と時代を図版で紹介『ジュール・ヴェルヌの世紀』、集英社文庫ヴェルヌ・コレクション版『カルパチアの城』と第9章を抜粋した吸血鬼アンソロジー『ドラキュラドラキュラ』)

 

上の画像にある本で、あらすじは知っていたものの、いざ読むとやはりヴェルヌらしい作品です。

初期のいわゆる“SFの父”的な科学冒険小説の名作群(『地底旅行』・『海底二万海里』・『月世界』二部作・『八十日間世界一周』など)とは確かに一味違う内容ですが、ヴェルヌ印といったものがきちんと刻されています。
科学とイマジネーションとの融合とでも言えばいいのでしょうか。

 

でも、それだけではありませんでした。
ヴェルヌの作家としてのもう一つの顔とも言うべきものを見た気がします。
(これは、近年翻訳された『二十世紀のパリ』ほか、いくつかの作品等でも言えることですけれど……。)

 

『カルパチアの城』は、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』でドラキュラの里?として有名な地、カルパチアにある古城を舞台に迷信に生きる村人たちを恐怖に落とし込む(ことで隠棲を隠ぺいする)貴族との対決を描いています。
最初の主人公・林務官ニック・デックはあえなく打ちとられますが、もう一人の主人公となる、結婚相手の歌姫ラ・スティラを亡くしたフランツ・ド・デレク伯爵は、この城がラ・スティラを追い回していた因縁の男ロドルフ・ド・ゴルツ男爵の居城と知り、城に向かいます。
そこで彼が目にしたものは、亡くなったはずの歌姫の最後の舞台の場面と同じ歌う姿……。

読んでいる途中で、ガストン・ルルーの『オペラ座の怪人』(1910年刊で、ずっと後のこと)を思い出しました。

ちなみにブラム・ストーカーの『ドラキュラ』は1897年、本書はそれより前の1892年刊。

『ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』は、画家マルク・ヴィダルの兄アンリが、弟の結婚に立ち合うために向う旅の移動の道筋をたどるヴェルヌらしい地理的紹介に始まり、船旅の途中で見かける不審な人物の登場で、今後の展開をうかがわせます。
親フランスで反ドイツ/プロシアのハンガリー人の心情を背景に、結婚を申し込み断られたドイツ/プロシア人の伝説の科学者の息子シュトーリッツの横恋慕による、マルクと許嫁のハンガリー人医師の娘ミラへの復讐の物語。

すでにネタバレになっていますが、ウェルズの『透明人間』(1897)に対してヴェルヌの透明人間物語(執筆は最晩年―1905年死去。死後の1910年に息子のミシェルによる改作版。ヴェルヌのオリジナル版は1985年刊―本書はこちらの翻訳、ミシェル版の終章も収録)です。

 

 ●それぞれの結末

この2作、それぞれに結末に特徴があります。

ヴェルヌの諸名作では、基本的に行って戻る物語で、主人公は人間的に変化しません。
単なる観察者として〈驚異の旅〉を経験するだけです。

しかし、この二つの作品で主人公(または中心人物)は、意外な事態を迎えます。
そういう点では悲劇といってもいいでしょう。

 

『カルパチアの城』では、一人目の主人公ニックは危機に直面しつつも幸い恋人の看病もあり回復しますが、二人目の主人公デレク伯爵は、歌姫の二度目の死に直面する悲劇に見舞われます。

『ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密』では、中心人物である花嫁ミラは、透明人間になって復讐をしかけるシュトーリッツの餌食となり、何と透明人間になってしまします。
張本人は、花嫁の兄との戦いに敗れ、透明人間の秘密とともに死に絶えます。

かくして美貌の花嫁は、声とふれることのできる実体とを残して、その姿は誰の目にも映ることのできない身となります。

 

物語の結末には、二つあると言えるでしょう。

一つは、「取ってつけた結末」――結末のための結末。
物語の結構をつけるためだけの形の上での結末。
おとぎ話の「めでたしめでたし」的なもの。

言ってみれば、『シュトーリッツ』におけるヴェルヌの息子ミシェルが手を入れたバージョン(ミシェル版)の結末がそれ。

二つ目は、「行き着くべきゴールとしての結末」――それを示したいがためにここまで物語ってきたという内容的な〆となる結末。
『シュトーリッツ』ヴェルヌ版のラストはそういうものでしょう。

 

私の個人的な感想ですが、多分ヴェルヌは問題提起として、こういう状況を書きたかったのではないでしょうか。
いかなる悲劇的状況をもかえることができるのが、人の思いというものだと。
人間の、家族の絆というものだ、と。

人の目に見えない身体のヒロインが、輝ける一家の魂となるのです。

今の暮らしにも慣れていくだろうし、くり返すが、誰の眼にも、淑やかにほほ笑むミラが見えるようなのだ……。ミラは言葉をかけたり、手で触れたりすることで自分がそこにいることを示した!(略)彼女は家の魂だった――魂のように眼には見えないのだ!》「19章」p.329

人は慣れるものなのです。
そして、姿が見えないといっても、人の心も所詮は見えないものなのです。
見えないものであっても見えるように思うのが、人の心――気持ちであり思いでしょう。

 

そういえば、ヴェルヌと同様、私の大好きなもう一人のフランス人作家サン=テグジュペリは、『星の王子さま』(内藤濯訳 岩波少年文庫)の中にこんなことばを書き残しています。

王子さまはキツネから《「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目には見えないんだよ」》と教えられ、“ぼく”に《「だけど、目では、なにも見えないよ。心でさがさないとね」》。さらに《「たいせつなことはね、目に見えないんだよ……」》と伝えます。

 

このヴェルヌの“見えない花嫁”こそ、“永遠の美女”そのもの――記憶のなかの美女――であり、それは『カルパチアの城』のラ・ティスラ像にもいえることで、“あの一瞬”を記録した録音と画像がこわれる運命のモノ(物体)であるのに対して、人の頭の中の記憶は決してこわれることのない理想的な“永遠の像”なのではないでしょうか。

 ・・・

従来、ヴェルヌは晩年になって厭世的になったとされてきました。
しかし、『二十世紀のパリ』を読んでから、実は初期から厭世的といいますか、楽観的な科学信奉者ではなかったと知り、さらにいくつかの新たな邦訳作品を通して、ヴェルヌの作家としての真情といったものが単純なものではなかったと思うようになりました。

本当のヴェルヌ像を教えてくれる、さらなる邦訳作品の出現を期待してやみません。

 ・・・

(インスクリプトのサイトより)
元祖ヴァーチャルアイドルと見えない花嫁……。本巻では、東欧を舞台にしたゴシック小説的幻想味あふれる後期の傑作二篇を収録。「カルパチアの城」はブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に先立つこと五年、吸血鬼伝説の本場トランシルヴァニアを舞台に、作家が推敲を重ねた自信作。ホフマン、ポーやルルーの「オペラ座の怪人」などを好む方々には特におすすめの完訳版。レオン・ブネットの挿画40枚収録。
「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」は、H・G・ウェルズ「透明人間」の向こうを張ってヴェルヌが書いた透明人間もの。本作は息子のミシェル・ヴェルヌが書き換えた版(未訳)が長く読まれてきたが、今回がジュール・ヴェルヌのオリジナル版本邦初訳となる。唖然呆然の最終章のみ、ミシェル・ヴェルヌ版を併録した。
二作ともに、不在の女性への狂恋が物語を貫いており、美しきヴォーカロイドとも言うべきラ・スティラを追い求める二人の男(「カルパチアの城」)、完璧な令嬢ミラへの倒錯的愛に身を捧げるヴィルヘルム・シュトーリッツの、身の毛もよだつ透明人間ストーカーなど、さまざまな意味での現在性を孕んだ「〈独身者機械〉小説」(新島進)であり、ヴェルヌの最も21世紀的な小説。面白さ抜群の二篇を練り上げられた訳文と詳細な註を付して贈る。

両篇が秘めるヴェルヌらしさは決して他に引けをとらず、そして、なにより作品がきわめて現代的な、それもまさに今、二一世紀に通じるテーマを扱っていることを強調しておかなければなりません。[…]見えない花嫁と元祖ヴァーチャル・アイドル。[…]この二篇に共通かつ中心的なモチーフはなにかと問われれば、それは「不在の女性への熱情」ないしは「男性の一方的な女性への情念」ということになるはずです。二作合わせて四人の独身者と、独身者機械となった二人の花嫁[…]。この究極の独身者性は、視覚と聴覚による仮想現実に囲まれているわれわれ現代人の「戸惑い」を先どりしているのではないでしょうか。(「訳者あとがき」より)

【目次】
カルパチアの城
ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密
ミシェル・ヴェルヌ版第一九章
訳註
解説 石橋正孝
訳者あとがき
細目次

 

*『お茶でっせ』ジュール・ヴェルヌの記事: 【ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション】
・2018.10.29 おまたせ!ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションV 第三回配本10月31日発売 ・2017.11.21 ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』を読む ・2017.4.7 『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』を読む ・2017.1.23 『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売 ・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む ・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版 【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む ・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売 ・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売 ・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』 ・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増! ・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫 ・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

 

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2018.10.29

おまたせ!ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションV 第三回配本10月31日発売

毎回出版まで待たされる、「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」の第三回配本がようやく発売されます。

 

『カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 (ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション)』ジュール・ヴェルヌ 著 新島進 訳

インスクリプトのサイト

アマゾンにも出ています。

 

 

「カルパチアの城」「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」の2作収録。

「カルパチア――」は、吸血鬼「ドラキュラ」の里とも言うべき、トランシルヴァニアを舞台とした作品で、ブラム・ストーカーの名作『ドラキュラ』出版の5年前の作品だそうです。

「ヴェイルヘルム――」は、H・G・ウェルズ『透明人間』の向こうを張って書いたという作品で、息子のミシェルが書き替えた版が流布していた(未訳)そうで、今回ヴェルヌのオリジナル版が本邦初訳になるといいます。
しかも、参考としてミシェル版の最終章も併録とのこと。

「訳者あとがき」からの言葉によりますと、21世紀に通じるテーマを扱った両作品で、視覚と聴覚によるヴァーチャルな、仮想現実に囲まれている現代人の「戸惑い」を先取りしている、といいます。

なかなか楽しみな一冊です。

 ・・・

『カルパチアの城』は、私の子供のころに既訳があります。
アポロ計画で「人類ついに月に立つ」のころ、集英社からコンパクトブックス版〈ヴェルヌ全集〉全24巻のうちの一冊として出版されました。

その後、集英社文庫〈ジュール・ヴェルヌ・コレクション〉(14巻)の一冊として再刊されました。

今回は、新たな研究のもと、新訳決定版として、原著挿絵付きで登場。
さらに、未訳の「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」とのカップリングです。

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(画像:集英社文庫版『カルパチアの城』と「カルパチアの城」の一部を収録した吸血鬼小説アンソロジー『ドラキュラドラキュラ』種村季弘編、河出文庫、目次と解説)

 

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(サイトより)
元祖ヴァーチャルアイドルと見えない花嫁……。本巻では、東欧を舞台にしたゴシック小説的幻想味あふれる後期の傑作二篇を収録。「カルパチアの城」はブラム・ストーカーの「ドラキュラ」に先立つこと五年、吸血鬼伝説の本場トランシルヴァニアを舞台に、作家が推敲を重ねた自信作。ホフマン、ポーやルルーの「オペラ座の怪人」などを好む方々には特におすすめの完訳版。レオン・ブネットの挿画40枚収録。
「ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密」は、H・G・ウェルズ「透明人間」の向こうを張ってヴェルヌが書いた透明人間もの。本作は息子のミシェル・ヴェルヌが書き換えた版(未訳)が長く読まれてきたが、今回がジュール・ヴェルヌのオリジナル版本邦初訳となる。唖然呆然の最終章のみ、ミシェル・ヴェルヌ版を併録した。
二作ともに、不在の女性への狂恋が物語を貫いており、美しきヴォーカロイドとも言うべきラ・スティラを追い求める二人の男(「カルパチアの城」)、完璧な令嬢ミラへの倒錯的愛に身を捧げるヴィルヘルム・シュトーリッツの、身の毛もよだつ透明人間ストーカーなど、さまざまな意味での現在性を孕んだ「〈独身者機械〉小説」(新島進)であり、ヴェルヌの最も21世紀的な小説。面白さ抜群の二篇を練り上げられた訳文と詳細な註を付して贈る。

両篇が秘めるヴェルヌらしさは決して他に引けをとらず、そして、なにより作品がきわめて現代的な、それもまさに今、二一世紀に通じるテーマを扱っていることを強調しておかなければなりません。[…]見えない花嫁と元祖ヴァーチャル・アイドル。[…]この二篇に共通かつ中心的なモチーフはなにかと問われれば、それは「不在の女性への熱情」ないしは「男性の一方的な女性への情念」ということになるはずです。二作合わせて四人の独身者と、独身者機械となった二人の花嫁[…]。この究極の独身者性は、視覚と聴覚による仮想現実に囲まれているわれわれ現代人の「戸惑い」を先どりしているのではないでしょうか。(「訳者あとがき」より)

【目次】
カルパチアの城
ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密
ミシェル・ヴェルヌ版第一九章
訳註
解説 石橋正孝
訳者あとがき
細目次

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★2019.1.10 ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションV(カルパチア)と(シュトーリッツ)を読む --

 

*『お茶でっせ』ジュール・ヴェルヌの記事: 【ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション】
・2017.11.21 ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』を読む ・2017.4.7 『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』を読む ・2017.1.23 『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売 ・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む ・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版 【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む ・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売 ・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売 ・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』 ・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増! ・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫 ・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

 

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2017.11.21

ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』を読む

下↓の記事での紹介後も発売が遅れていました、ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』をようやく読み終えました。

 

2017.6.25
ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』7月31日発売予定

 

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(画像:『蒸気で動く家』『八十日間世界一周』他ヴェルヌの本)

 

ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション 第IV巻(第2回配本)
蒸気で動く家 ─北インド横断の旅─

荒原邦博・三枝大修訳[完訳]
挿画:レオン・ベネット
解説:石橋正孝

原著刊行:1880年/〈教育娯楽雑誌〉1879年12月1日号~1880年12月15日号連載


『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション IV 蒸気で動く家』 荒原邦博・三枝大修/訳 インスクリプト(2017/8/21)

 

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(画像:『蒸気で動く家』挿絵)

 

舞台は、19世紀のインド。
ヴェルヌ作品でインドが扱われるのは、『八十日間世界一周』に次いで二度目です。

ベンガル湾側の東インドの主要都市カルカッタ(当時の都市名、現コルカタ)から、デカン半島の東岸、インド洋側の主要都市ボンベイ(当時の都市名、現ムンバイ)をめざす、〈鋼鉄の巨象〉に引かれた〈蒸気で動く家〉(スチーム・ハウス)によるマンロー大佐一行の冒険の旅と、シパーヒーの反乱(セポイの反乱)の指導者の一人インド人の太守ナーナー・サーヒブの反乱軍再編と復讐の物語。

カルカッタからボンベイをめざす旅は、『八十日間世界一周』でのインド編での旅の逆のパターンとなります。

訳注によりますと史実とは異なるようですが、マンロー大佐は、反乱を指揮していたナーナー・ハーヒブの妻(ラーニ(王妃))を戦闘の末、殺したとし、一方、ナーナー・ハーヒブは、マンロー大佐の妻と母親を含む王立軍の家族を惨殺したとし、それぞれが復讐心を抱く関係に設定しています。

この1857年に始まる反乱から10年後、マンロー大佐を慰安しようと友人たちが計画した冒険の旅は、象を模した蒸気機関のロボット〈鋼鉄の巨象〉がパゴダを模した二両の客車を牽引する〈蒸気で動く家〉で、日常的な生活空間とともにインドの平原を横断しようというもの――早い話がキャンピングカーによる移動です。
この凝った作りの〈蒸気で動く家〉は、ブータンのラージャがインド横断鉄道会社の鉄道技師バンクスにきまぐれで製作を依頼したが、亡くなり、彼がマンロー大佐のお金で買い取ったものだったのです。

ホッド大尉は喜びを抑えられず、/「移動する家だ!」と叫んだ。「車にもなれば、蒸気船にもなる! あとは翼さえあれば、飛行装置に変換して空も飛べるぞ!」/「いつかはそうなるよ、ホッド君」大真面目に技師が答えた。/「わかってるさ、バンクスよ」と大尉も同じくらい真剣に答えた。「どんなことだって、できるようになる! だがどうしようもないのは、そういうものすごい発明を見たくても、二百年後に生き返れるわけじゃないってことだ! 人生は毎日が楽しいわけじゃないが、俺は単に好奇心好奇心を満たすためだけに一〇世紀生きたっていい!」

途中、ヒマラヤの高山タウラギリのふもとまで行き、虎狩り他の狩猟をしたり、マンロー大佐の慰安と仲間たちの保養をする予定です。

ところが、大佐は途中で思い出の戦闘の地をたどり、逃亡中のナーナー・ハーヒブの行方を探り、妻や母親の復讐を秘かに期待していたのでした。
一方、逃亡中のナーナー・ハーヒブも、大佐に妻とインド独立戦争(植民地支配者のイギリス側から見れば反乱)の犠牲者たちの復讐をする機会を狙っていました。

この二つの話が交錯するのが、ラストのエピソードですが、そこに至るまでの道中の冒険もまた、資料と想像力を駆使したヴェルヌ小説のお楽しみでもあります。

 ・・・

難しい作品分析は、「解説」や「訳者あとがき」の先生方にお任せするとして、ミッシェル・セールの『青春 ジュール・ヴェルヌ論』やフランスのヴェルヌの遊園地の象等で、名のみ知られていた作品がこうして翻訳されたことは非常にうれしいことでした。

蒸気で動く巨象が牽引するパゴダを模した客車の車列という、乗り物の面白さと、それによる異境の地を旅する冒険、そして復讐譚……。

100枚を超える原著挿絵も、古き良き時代の冒険物語を演出してくれて、正に私の心のなかにあるヴェルヌの世界そのもの、といっていいものです。

楽しめる一冊でした。

 
 ●作品の背景について

現代の感覚から言えば、植民地支配と反乱という構図は、帝国主義そのものという感じで、それを擁護するかのような小説かもしれません。
しかし、フランス人の記述者をたて、反乱軍に対する見せしめのための凄惨な処刑も紹介し、イギリス王立軍のやり方を支持する書き方はしていません。

一方で、太平楽に虎退治や見世物のための猛獣狩りと狩猟に明け暮れる支配者側のヨーロッパ人たちの姿を描き、どちらにも与することのできそうな内容です。

こういうふうな植民地主義、帝国主義批判という立場からの見方をするのが現代的な感覚なのかもしれませんけれど、やはりそれは少し違うような気がします。

ヴェルヌは『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』(1889)では、カナダ人の独立戦争をフランス系カナダ人の側から描いてもいました。
『海底二万海里』のネモ船長は、インド独立運動の中心人物だったとされていました。

帝国主義や植民地政策の在り方の是非など、当時の一般市民レベルでどの程度の情報や知識が共有されていたのかも、私にはわかりません。
ヴェルヌの含めて、当時の作家たちもどの程度の認識を持っていたのでしょうか。

まあ、その辺の事情は分かりかねますが、作家といえどもその時代に生きているかぎり、時代の思想の影響を免れることはできません。

それらのことは頭の片隅におく程度にして、私たちは素直にストーリーを楽しんでいいのではないでしょうか。

 

 ●解説のヴェルヌ作品の題名について

石橋さんの「解説」では、ヴェルヌの諸作品の題名が、原著の訳題になっています。
これは、石橋さんの頭の中では原題で整理されているのでしょう。
でも、読者のために日本語訳の題名で紹介されているのでしょう。

邦訳のある作品――特に日本で従来から一般化している邦題を併記してもらうほうが、新たに既刊のヴェルヌ作品を読みたいと思う人には親切な気もします。
(「訳者あとがき」の荒原さんは、従来の訳題併記。)

 

 ●『マチアス・サンドルフ』(旧訳『アドリア海の復讐』)新訳のこと

「解説」中で、『マチアス・サンドルフ』(旧訳『アドリア海の復讐』集英社ヴェルヌ全集/集英社文庫ヴェルヌ・コレクション)が、『シャーンドル・マーチャーシュ』の題名で、本書の訳者の一人でもある三枝大修さんによる新訳として、新井書院から刊行予定とあります。

この作品は、ヴェルヌ版『モンテ・クリスト伯』とも呼ばれる作品です。
新井書院は、一巻本『モンテ=クリスト伯爵』(オペラオムニア叢書)を出版している版元なのですね。

私の好きなヴェルヌ作品の一つでもあり、これも楽しみです。

 

*** 初心者向け私のおすすめヴェルヌ作品(現行本から)*** 『八十日間世界一周』岩波文庫(原書挿絵多数入り)
『地底旅行』岩波文庫(原書挿絵多数入り)(原題:『地球の中心への旅』)
『海底二万里』新潮文庫(原書挿絵全数葉入り)
『二年間の休暇』/『十五少年漂流記』集英社文庫ヴェルヌ・コレクション、創元SF文庫(原著挿絵数葉入り)
『神秘の島』/『ミステリアス・アイランド』集英社文庫ヴェルヌ・コレクション(ネモ船長の最期)

*** 私のヴェルヌ作品お気に入りベスト5 *** 1 『アドリア海の復讐』(集英社コンパクトブックス・ヴェルヌ全集版はなくしたけど、集英社文庫ヴェルヌ・コレクション版を持っています! ヴェルヌ版『モンテクリスト伯』。)
2 『地底旅行』(最初にふれたヴェルヌ作品、巨大きのこの森を歩む一行の挿絵が記憶に焼きついている!)
3 『悪魔の発明』創元SF文庫(原題:『国旗に向かって』。昔、角川文庫版で読んだ。ミサイル兵器を使用するマッド・サイエンティストもの。)
4 『気球に乗って五週間』集英社文庫ヴェルヌ・コレクション(記念すべき〈驚異の旅〉処女長編。)
5 『二〇世紀のパリ』集英社(幻だった初期作品。ヴェルヌの原典を知る意味でも重要かつ興味深い。)

 

*【ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション】:
『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』石橋正孝/訳 インスクリプト 2017/1/20
―「ガン・クラブ三部作」(旧訳題名『月世界旅行』『月世界探検』(『月世界へ行く』創元SF文庫)『地軸変更計画』創元SF文庫)の世界初の合本。砲弾による月探検二部作とその後のプロジェクト。

 

 

〈全巻構成〉
第I巻(第4回配本)ハテラス船長の航海と冒険 荒原邦博・荒原由紀子訳(18年春刊) 予価:5,500円 [新訳]
第II巻(第1回配本)地球から月へ 月を回って 上も下もなく 石橋正孝訳(17年1月刊) 特大巻:5,800円 [完訳 世界初の合本]
第III巻(第5回配本)エクトール・セルヴァダック 石橋正孝訳(18年秋刊) 予価:5,000円 [本邦初の完訳]
第IV巻(第2回配本)蒸気で動く家 荒原邦博・三枝大修訳(17年5月刊) 予価:5,500円 [本邦初の完訳]
第V巻(第3回配本)カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 新島進訳(17年11月刊) 予価4200円 [新訳、本邦初訳]

 

*【ヴェルヌのその他の〈驚異の旅〉】
ジュール・ヴェルヌ『名を捨てた家族: 1837 ― 38 年 ケベックの叛乱』大矢タカヤス訳 彩流社 2016.10

 

ジュール・ヴェルヌ『海底二万海里』[上下]新潮文庫

*【ヴェルヌ関連参考書】:
『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝訳 水声社 (2014/05)
―本邦初のヴェルヌの評伝。力作です。ヴェルヌの伝記のなかで最も信頼に足ると言われるものです。
 当時の社会状況を知っていれば、また彼の作品をより多く読んでいれば、楽しさも増します。

 

 

『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル』石橋正孝 左右社 (2013/3/25)
―これも力作。元は学術論文ということで、ちょっと読みづらく感じたり、ヴェルヌの原稿をまな板に載せているため、それらを(邦訳がない、もしくは手に入りにくいため)未読の人には分かりにくかったりします。
 小説家ヴェルヌと編集者エッツェル、二人のジュールのあいだを巡る出版の秘密をめぐる“冒険”です。

 

 

『ジュール・ヴェルヌの世紀―科学・冒険・“驚異の旅”』東洋書林 (2009/03)
―これは見て楽しい本です。図版で見るヴェルヌの世界といってもいいかもしれません。

 

 

『文明の帝国 ジュール・ヴェルヌとフランス帝国主義文化』杉本淑彦 山川出版社(1995)
―ヴェルヌの小説の表現を通して当時のフランス帝国主義を考えるという論文。原書からの挿絵も多数収録。
 巻末100ページを費やし、ヴェルヌの〈驚異の旅〉シリーズ全作品及び初期作品のあらすじを紹介。
 本書『名を捨てた家族』の解説でも触れられています。

 

 

『水声通信 no.27(2008年11/12月号) 特集 ジュール・ヴェルヌ』水声社 2009/1/6
―1977年『ユリイカ』以来の雑誌特集。本邦初訳短編「ごごおっ・ざざあっ」、ル・クレジオ他エッセイ、年譜、《驚異の旅》書誌、主要研究書誌。

 

 

『青春 ジュール・ヴェルヌ論』ミッシェル・セール 豊田彰/訳 法政大学出版局 1993/03
―昔に読んだ本。

 

 

 

*『お茶でっせ』記事:
【ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクションの過去の記事】
・2017.4.7 『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』を読む ・2017.1.23 『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売 【文遊社版<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売 ・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む ・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版 【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む ・2016.10.8 待望のヴェルヌ新刊『名を捨てた家族1837-38年ケベックの叛乱』 ・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売 ・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売 ・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』 ・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増! ・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫 ・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

 

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2017.06.23

ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』7月31日発売予定

当初5月末発売という予定より刊行が遅れている【ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション】のIV巻『蒸気で動く家』でしたが、やっと発売予定日が決まったようです。

 

INSCRIPT『蒸気で動く家』のサイト

ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション 第IV巻(第2回配本)
蒸気で動く家 ─北インド横断の旅─

荒原邦博・三枝大修訳[完訳]

2017年7月31日書店発売予定 
定価:5,200円+税
A5判丸背上製 かがり綴カバー装
本文9ポ二段組 508頁
挿画:107葉
ISBN978-4-900997-71-4
装幀:間村俊一
カバー装画:堀江栞
挿画:レオン・ベネット

 

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(画像:出版社サイトより)

本邦初の完訳紹介というこの作品は、いくつもの評論等で名のみ有名でした。
今回のコレクションの中でも目玉の一つと期待していた作品だけに、発売日が待たれます。

ヴェルヌ作品では、楽しみの一つである原書の挿絵も107枚収録ということで、大いに楽しめる一冊になりそうです。

サイト紹介文より――

ヴェルヌのテクストは、「蒸気で動く家」(スチーム・ハウス)という機械を物語の明示的な動因としながらも、その乗り物が「ヒマラヤ」で停車し、蒸気機関の推進力が一時的に断たれて単なる「ハウス」と化すと、今度は「ヒマラヤ」そのものを文学機械として顕在化させる。そして、『蒸気で動く家』という作品は、一見すると『八十日間世界一周』におけるインド横断の発展であるように見えながら、実際に生じているのはその逆の事態なのだ。『蒸気で動く家』という「機械」が、それまでの〈驚異の旅〉連作を引き受け直し、「ヒマラヤ」との「組み合わせ」によって全体の意味づけを変質させ、またそのことによって〈驚異の旅〉というプログラムがプログラムであったことをも事後的に証明する──すなわちシリーズの延命を可能にするのである。この操作の中にこそ小説家としてのヴェルヌの天才があり、『蒸気で動く家』はよく知られたヴェルヌ作品とは似ても似つかないものでありながら、紛れもない傑作としてつねに新たな読者の前に開かれているのである。(「訳者あとがき」より)

 

【追記】

その後も発売が遅れていましたが、ようやく8月21日に発売されたようです。
Amazonにも書影を添えて出ています。

『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション IV 蒸気で動く家』
荒原邦博・三枝大修/訳 インスクリプト(2017/8/21)

2017.8.29(確認)

 

*『おちゃでっせ』記事:
2017.11.21
ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション第2回配本『蒸気で動く家』を読む

 

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2017.04.07

『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』を読む

2017.1.23
『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

で紹介しました、この本を読みました。

 

第1回配本『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』石橋正孝訳・1月20日刊行

 

 

 

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(画像:本書他、既訳本3点)

 

完訳ガンクラブ三部作世界初の合本。/石橋正孝訳・解説 月面に向けて打ち上げられた砲弾列車。巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガンクラブ三部作、世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻として刊行!

 

地球から月へ ──九七時間二〇分の直行路──
 初出:〈ジュルナル・デ・デバ〉紙、1865年9月14日から10月14日まで連載、同年エッツェル社より単行本刊行
 挿絵:アンリ・ド・モントー、ジョルジュ・ルー(多色刷、1897年版に追加)
月を回って
 初出:〈ジュルナル・デ・デバ〉紙、1869年11月4日から12月8日まで連載、翌年1月エッツェル社より単行本刊行
 挿絵:エミール・バイヤール、アルフォンス・ド・ヌヴィル
上も下もなく 
 1889年11月書き下ろし、エッツェル社より単行本刊行
 挿絵:ジョルジュ・ルー
 補遺「ごく少数の人だけが知ればよいこと」A・パドゥロー(椎名建仁訳)
訳注/解説「〈驚異の旅〉の成立とガン・クラブ三部作」石橋正孝

新完訳の世界初の三部作合本の特大巻です。

巻末解説も〈驚異の旅〉コレクションの第一回配本らしく、このシリーズについての解説を兼ねています。
今後の配本を楽しむためにも、初めに読んでおいたほうがいいでしょう。

 

 ●月世界旅行二部作『地球から月へ』『月を回って』

作品については、もうかなり以前に読んで以来ということで、初めてではないにしても、実質初めてに近く楽しめました。

ただ以前読んだ当時は、特に『月を回って』に関しては、最初に読んだのが高校生ぐらいで、既にアポロ計画もまっ最中で、宇宙に対する知識もこの小説の時代とは比較にならないわけで、ちょっとバカにしてしまった記憶があります。
たとえば、発射時、大気圏をあっという間に通り過ぎるので摩擦熱などは問題にならないとか、宇宙空間で窓を開けて不要になったものを外に捨てる時も素早くすればいいとか、太陽に照らされたときの熱や逆に影に入ったときの冷却の具合など、ホントに大丈夫? という感じ。

 

でも今回読みますと、当時の最新の情報を詰め込んで、その上でイマジネーションの限りを尽くしていて、好感を持てます。

砲弾飛翔体は、当時の科学技術の最先端であるアルミニウムを使っているとか。
様々な情報を網羅するところは、いつものヴェルヌの十八番(オハコ)とするところですけれど。

飛翔体の大きさは、地上から望遠鏡で確認できる大きさという設定だったのですね。
そこで、あの大きさの砲になるわけです。

 

第一部『地球から月へ』の部分は、ミラー『詳注版 月世界旅行』を片手に読んだので、その辺の事情もわかり楽しめました。

第二部『月を回って』は、昔読んだ時も感じたのですけれど、「講釈師見てきたような嘘をつき」じゃないですけれど、よくこれほどに鮮やかに描けるものだ、と感心しました。
先にも書きましたように、当時の情報を巧みに織り込みながら、見事に想像力の翼を広げています。

フロリダから打ち上げ、太平洋上に帰還するというルートや、メンバーが三人だったり、共通する部分が幾つもあり、似せたのかそれともそれが当然の帰結だったのか、予言していたことになります。

 

ヴェルヌの小説といえば、科学情報を生かして、ひたすら冒険や探検に終始する男たちを描いた物語というイメージです。

しかし今回は、政治的社会的な風刺家としての面も具えているのだと改めて感じました。
南北戦争後のアメリカで、火砲の平和利用としてこの月世界旅行というプロジェクトを立案し、さらにアメリカの再統一を計ったり、世界的にも注目させたり、というところですね。

ミラー氏も書いているように、そういう面が読み取れました。

 

フランス人のアルダンが登場して、(地上から望遠鏡による)無人探査から有人探査になるのですが、その辺の事情がストーリーを盛り上げます。
ヴェルヌならではの想像力の世界になります。

 

 ●『上も下もなく』

第三部『上も下もなく』は、ガン・クラブのメンバーは共通ですが、事件としてはまったく別個の物語です。

『地球から月へ』の第19章「ミーティング」のラスト(p.146)で、J=T・マストン「われわれの努力を結集しよう、機械を発明し、地軸を立て直そう!」というシーンが出てきます。
この提案を小説化したものがこの作品です。

ミラー『詳注版 月世界旅行』p.396の注(21)によりますと、

この最後の三パラグラフをもとに、ヴェルヌは四半世紀後一冊の小説を書いている。1888年に鉱山技師アルシッド・バドゥローなる人物が、実に四カ月がかりで、「地球地軸を修正」しようとするマストンの計画の技術的青写真を練り上げた。

とあります。

 

前半は、北極探検の歴史の講義といった内容で、いつも通りのヴェルヌ調といったところで人名や地名が羅列されます。

で、この当時北緯84度を超えることができなかったこの北方の地(そう、陸地があるという推定しているのです――その根拠は、グリーンランドは北へ行くほどその標高が高くなり、その状態が北極点に近いところまで続いていそうだったから)には様々な地下資源が眠っている――特に当時の最重要資源であった石炭が――と考えられていました。

この地をアメリカの「北極実用化協会」がセリで購入するというのです。
この北極を開発しよう、という計画です。

行けもしない土地をどう活用するというのか?

ここで、例のガン・クラブの面々が登場します。
行けないのなら、来てもらおうというのですけれど……。

 

今回も、月世界旅行同様、奇想小説という感じです。
ワン・アイデアで勝負する空想小説です。

それを一本の長編小説に仕立てるところが、ヴェルヌの持つ科学情報と想像力です。

 

既訳本から11年ぶりぐらいの“再読”でした。
楽しめました。

挿絵が豊富で楽しめます。

挿絵は本書全体で128葉だそうで、今まで知らなかった絵が多く、楽しめました。

なかでも『上も下もなく』のヒロイン、エヴァンジェリーナ・スコービット夫人など。

 

本書には、先に紹介しましたアルシッド・バドゥローの手になる「補遺」が掲載されていて、数学的な根拠が示されています。
(私には理解不能と思われ、読もうという気にもなりませんでしたが。)

 

 ●石橋正孝さんの解説「〈驚異の旅〉の成立とガン・クラブ三部作」

〈驚異の旅〉の成立については、以前、石橋さんの『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』を読み、大体のところは知っていました。
今回改めて『二十世紀のパリ』の意味を再認識しました。

この作品が出たとき、非常に意外に感じました。
従来言われていたことは、当初は科学技術の進歩に対して前向きに肯定的に評価していたものが、後年、様々な不幸に接し、ペシミズムに傾いて行き、それが作品にも反映されるようになった、というものでした。

ところが『二十世紀のパリ』では、それまでとはまったく違う、遠未来の悲惨な状況が描かれているのでした。

しかし、今回の解説で、この〈驚異の旅〉に変換される過程を示され、そういうことかという気になりました。
私には詳しくは説明できないので、「解説」をお読みいただくしかないのですけれど。

こうなりますと、集英社さんには、ぜひ『二十世紀のパリ』を復刊していただきたいものです。
これを読まないと、ヴェルヌ及びその作品を理解できませんからね。

 

 ●ハードカヴァーのきれいな本

私のなかでヴェルヌの本といいますと、集英社コンパクト・ブックス版〈ヴェルヌ全集〉といい、角川・創元の文庫本といい、ペーパーバックのイメージがありました。
文遊社の復刻本にしても、きれいな本ではありましたが、ソフトカヴァーでした。

一部の児童書を除いて、ハードカヴァー本は少ないイメージでした。

でも、先の『名を捨てた家族』や新潮社の新しい『十五少年漂流記』(この本の挿絵が新たに描かれた日本オリジナル版だったのは、ちょっと残念な気します。原書版が既にいくつか紹介されているにしても。表紙は日本オリジナルで、本文挿絵が原書版というやり方がベストだと思っています。)といい、ハードカヴァー本になっています。

この選集は全巻で挿絵を全点収録するのかどうかまだわかりませんが、ハードカヴァーのきれいな本になるようで、この点を評価したいものです。

価格も高いけれど、それなりにプラスアルファが感じられるものになっています。
次回の配本も期待したいものです。

なにしろ、噂に高い『蒸気で動く家』の本邦初紹介ですから。

 

【既訳】
地球から月へ──九七時間二〇分の直行路──  鈴木力衛訳『月世界旅行』集英社コンパクトブックス〈ヴェルヌ全集〉9 1968
 高山宏訳 W.J.ミラー・注 『詳注版 月世界旅行 1・2』東京図書 1981
同『詳注版 月世界旅行』ちくま文庫 1999

 

 

月を回って  高木進訳『月世界探検』集英社コンパクトブックス〈ヴェルヌ全集〉15 1968
 江口清訳『月世界へ行く』創元SF文庫 (新装版) 2005

 

 

上も下もなく  榊原晃三訳『地軸変更計画』ジャストシステム 1996
 同 創元SF文庫 2005

 

 

 

*「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」全5巻

 

インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション

このシリーズは、《21世紀ヴェルヌ研究の世界的権威、石橋正孝によるヴェルヌ原文の校訂、最終ヴァージョンを確定した上での底本・定本化と全巻解説》という、A5版二段組み平均500ページ超の大部な“ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉”の傑作選です。

〈全巻構成〉
第I巻(第4回配本)ハテラス船長の航海と冒険 荒原邦博・荒原由紀子訳(18年春刊) 予価:5,500円 [新訳]
第II巻(第1回配本)地球から月へ 月を回って 上も下もなく 石橋正孝訳(17年1月刊) 特大巻:5,800円 [完訳 世界初の合本]
第III巻(第5回配本)エクトール・セルヴァダック 石橋正孝訳(18年秋刊) 予価:5,000円 [本邦初の完訳]
第IV巻(第2回配本)蒸気で動く家 荒原邦博・三枝大修訳(17年5月刊) 予価:5,500円 [本邦初の完訳]
第V巻(第3回配本)カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 新島進訳(17年11月刊) 予価4200円 [新訳、本邦初訳]

 

*参考:ジュール・ヴェルヌ『二十世紀のパリ』榊原晃三/訳 集英社 1995/3
―執筆時から100年後の1963年のパリを描いたディストピア小説。ヴェルヌの死後金庫から発見されたと言われる。死後およそ90年ほどを経て公刊された。

 

 

石橋正孝『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険 ジュール・ヴェルヌとピエール=ジュール・エッツェル(流動する人文学)』左右社 2013/3/25
―この本については読後の文章を書いていませんが、一度読んでいます。学術論文を基に本にしたもので、そういう意味で難しいところがあります。
 原語がわからない、例に挙げられている作品を知らない、といったハンディキャップがあって、一般の人には理解が難しいのです。
 それでも読んでみると、当時の出版状況や〈驚異の旅〉叢書の出版事情、作家ヴェルヌについて新たに知ることができる部分が多々あります。一読の価値ありです。

 

 

『ジュール・ヴェルヌ伝』フォルカー・デース 石橋正孝/訳 水声社 2014/5
―本邦初のヴェルヌの本格的な伝記・評伝。従来知られていたヴェルヌ像とはかなり違ったものとなっているようです。
 実は途中までしか読んでいません。背景となるフランスやヨーロッパの歴史、ならびにヴェルヌ作品についてある程度知っていないと理解しがたい部分があるように感じました。

 

 

 

上記二冊でもそうですが、ミッシェル・セール『青春 ジュール・ヴェルヌ論』(豊田彰訳 法政大学出版局 1993/3)を読んだ時もそうでした、(本邦未紹介や訳本が入手困難等で)知らないヴェルヌ作品について云々されても、「ああ、そうですか」としか言えなくて、さびしいものがあります。

このたびの〈驚異の旅〉コレクションがきっかけとなり、さらなるヴェルヌ作品の紹介が進むことを願ってやみません。

 

*『お茶でっせ』記事: 【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売 ・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む ・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版 【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む ・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売 ・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売 ・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』 ・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増! ・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫 ・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

 

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2017.03.06

ロバート・F・ヤング『時をとめた少女』を買う

以前、発売予定を紹介しました記事↓に書いた
2月23日に発売されたロバート・F・ヤングの短篇集『時をとめた少女』を、25日買ってきました。

2017.2.8
ロバート・F・ヤング新短篇集『時をとめた少女』2月23日発売

Rfyoung


4冊すべて、日本オリジナル短篇集です。

【ロバート・F・ヤング 日本オリジナル短編集】
『ジョナサンと宇宙クジラ』伊藤典夫編訳(ハヤカワ文庫SF/1977→新装版2006/10)
全10編


『ピーナツバター作戦』桐山芳男編(青心社/1983→新装版2006/12)
全5編


『たんぽぽ娘』伊藤典夫編(河出書房新社《奇想コレクション》/2013→河出文庫2015/1/7)
全13編


*参考:2013.05.27
たんぽぽ娘 (奇想コレクション)ロバート・F・ヤングを買う


先の『たんぽぽ娘』が長年待たれた傑作選だとすれば、今回の短篇集は落ち穂拾いといった感じでしょうか。


『時をとめた少女』シライシユウコ/イラスト 小尾芙佐・深町眞理子・岡部宏之・山田順子/訳 ハヤカワ文庫SF 2017/2/23
全7編


〔収録作品〕
わが愛はひとつ One Love Have I 深町真理子訳 [SFマガジン 1971年10月号
妖精の棲む樹 To Fell a Tree 深町真理子訳 [SFマガジン 1972年7月号
時をとめた少女 The Girl Who Made Time Stop 小尾芙佐訳 [SFマガジン 1972年6月号
 『見えない友だち34人+1』集英社/コバルト・シリーズ(1980/09/15)
花崗岩の女神 Goddess in Granite 岡部宏之訳 [SFマガジン 1969年9月号
真鍮の都 The City of Brass 山田順子訳 [SFマガジン 1986年6月号》
[長編化作品『宰相の二番目の娘』(山田順子訳 創元SF文庫)の原短編
赤い小さな学校 Little Red Schoolhouse 小尾芙佐訳 ★本邦初訳
約束の惑星 Promised Planet 山田順子訳 ★本邦初訳
解説/牧眞司


内容については、未読ですので、何も言えません。
またいずれ書いてみます。


*参考:
【ロバート・F・ヤング 長編化作品】
『時が新しかったころ』中村 融/訳 (創元SF文庫)2014/3/22
―原題"Eridhan"(1983) 「時が新しかったころ」"When Time Was Young"を書きのばしたもの


『宰相の二番目の娘』山田 順子/訳 (創元SF文庫)2014/10/31
―原題"Vizier's Second Daughter"(1985) 中編「真鍮の都」"The City of Brass"を書きのばしたもの

二冊ともいかにもヤングらしい作品になっています。
新たなアイデアを加えて、ストーリーにも変化を持たせ、でも、ヤングらしさは変わらず、より楽しめる作品になっていました。
松尾たいこさんのカバー絵もかわいらしくて、ヤング作品らしさを出しています。


【主なヤング作品収録アンソロジー】
『たんぽぽ娘―海外ロマンチックSF傑作選2』風見潤/編(集英社文庫―コバルトシリーズ 1980/2/15)

―「たんぽぽ娘」(伊藤典夫訳)収録


『見えない友だち34人+1―海外ロマンチックSF傑作選3』風見潤/編(集英社文庫―コバルトシリーズ 1980/9/15)

―「時を止めた少女」収録


『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』中村融/編(創元SF文庫/2009)
―「時が新しかったころ」収録


『時を生きる種族 ファンタスティック時間SF傑作選』 (創元SF文庫)2013/7/20
―「真鍮の都」収録

他。

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2017.02.08

ロバート・F・ヤング新短篇集『時をとめた少女』2月23日発売

映画『君の名は』等の人気に乗ろうと言うのか、手持ちの時間SFの類の作品集を次々企画に乗せているようです。

昨年末には、梶尾真治新版短篇集『美亜へ贈る真珠〔新版〕』が《12月緊急刊行決定!》されました。

『美亜へ贈る真珠〔新版〕』梶尾真治/著 (ハヤカワ文庫JA)2016/12/20


今度は、ヤングの新短篇集『時をとめた少女』が登場します。

『時をとめた少女』ロバート・F・ヤング/著 (ハヤカワ文庫SF)2017/2/23
小尾 芙佐、深町 眞理子、山田 順子、岡部 宏之/訳

たぶん、以前『SFマガジン』に掲載されたもの――たとえば、ヤング特集号(S-Fマガジン 1972年06月号 (通巻160号)
)とか――を編集したものでしょう。
(多くの訳者名が出ているからです。)

ヤングは、〈ボーイ・ミーツ・ガール時間SF!〉とどこかの本の惹句にありましたが、まさにそう呼ぶのがふさわしい一連の小説群が日本では受けています。

三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~』(メディアワークス文庫 2012/6/21)でとりあげられ、人気が再燃したようです。


その後、ながらく出版予定のみ掲げられていた傑作選とも言うべき短篇集『たんぽぽ娘』が出版されました。

さらに、短篇を長編に書き改めたものが2作出版されました。


『ビブリア―』で気になった人たちというのは、あの一作だけで、残念ながら他の作品には興味を抱かなかったようで、私のようなオールド・ファンが期待したほど評判にはなりませんでした。

それでも、今回こういう形で新たな短篇集が出版されるというのは、やれやれ(一安心)、という思いです。

楽しみです。


【ロバート・F・ヤング短篇集】
『たんぽぽ娘』伊藤典夫/編訳 (河出文庫)2015/1/7


『ジョナサンと宇宙クジラ』伊藤典夫/編訳 (ハヤカワ文庫SF)2006/10


『ピーナツバター作戦』桐山 芳男/訳 (青心社Seishinsha SF Series)2006/12  


【ロバート・F・ヤング長篇化作品】
『時が新しかったころ』中村 融/訳 (創元SF文庫)2014/3/22


『宰相の二番目の娘』山田 順子/訳 (創元SF文庫)2014/10/31


(他にも、ヤングの短篇が収録されているアンソロジーがいくつかあります。)

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2017.01.23

『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』1月20日発売

先の記事↓で少し触れました、「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」及び、第1回配本、第II巻『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』について書いてみます。

 

2017.01.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む

 

「ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション」全5巻の刊行が始まりました。

インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション

第1回配本『地球から月へ 月を回って 上も下もなく(完訳ガンクラブ三部作)』石橋正孝訳・1月20日刊行

 

 

 

完訳ガンクラブ三部作世界初の合本。/石橋正孝訳・解説 月面に向けて打ち上げられた砲弾列車。巨大な大砲に取り憑かれた愛すべき紳士たちが活躍するガンクラブ三部作、世界初訳の補遺、挿画128葉を収録した特大巻として刊行!

このシリーズは、《21世紀ヴェルヌ研究の世界的権威、石橋正孝によるヴェルヌ原文の校訂、最終ヴァージョンを確定した上での底本・定本化と全巻解説》という、A5版二段組み平均500ページ超の大部な“ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉”の傑作選です。

〈全巻構成〉
第I巻(第4回配本)ハテラス船長の航海と冒険 荒原邦博・荒原由紀子訳(18年春刊) 予価:5,500円 [新訳]
第II巻(第1回配本)地球から月へ 月を回って 上も下もなく 石橋正孝訳(17年1月刊) 特大巻:5,800円 [完訳 世界初の合本]
第III巻(第5回配本)エクトール・セルヴァダック 石橋正孝訳(18年秋刊) 予価:5,000円 [本邦初の完訳]
第IV巻(第2回配本)蒸気で動く家 荒原邦博・三枝大修訳(17年5月刊) 予価:5,500円 [本邦初の完訳]
第V巻(第3回配本)カルパチアの城 ヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密 新島進訳(17年11月刊) 予価4200円 [新訳、本邦初訳]

新訳(Iハテラス船長の航海と冒険、II地球から月へ、月を回って、上も下もなく、Vカルパチアの城)、初完訳(IIIエクトール・セルヴァダック(『彗星飛行』ジュニア版)、IV蒸気で動く家)、本邦初訳(Vヴィルヘルム・シュトーリッツの秘密)という内容。
ほぼ初訳が後ろの三作。

私が今一番読みたいのは、「蒸気で動く家」です。
次に、宇宙ものらしい「エクトール・セルヴァダック」。

挿絵も豊富ということなので、その点も楽しみなコレクションです。

ただ、もう少し低価格になれば、ということと、もういくつか追加を期待したい、というところです。

今までに紹介された作品数は、〈驚異の旅〉全体の三分の二ぐらいではないでしょうか。
まだまだおもしろい作品があるのではないか、という気がするのですけれど。

ヴェルヌの作品ならなんでもいい、というつもりはありませんけれど、知らない作家の○○程度のできの作品よりは、という気持ちです。

 ・・・

第一回配本の『ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション II 地球から月へ 月を回って 上も下もなく』の三作は、砲弾による月探検二部作とその後のプロジェクト。
旧訳題名『月世界旅行』集英社コンパクトブックス ヴェルヌ全集、『月世界探検』ヴェルヌ全集(『月世界へ行く』創元SF文庫)、『地軸変更計画』創元SF文庫 の新完訳の世界初の合本の特大巻だそうです。

正直迷ってしまいますね。

第一回なので、既訳のものよりは、という感じでいます。
本邦初訳から始まるほうが嬉しさは倍増する、と思えるのですが。

まあ、文句ばっかりではいけません。
素直に喜びましょう。

手に取るのが楽しみです。

そして、これからも企画が継続することを祈りましょう!

 

*『お茶でっせ』記事:
【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売 ・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む ・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版 【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2017.1.22 ヴェルヌ『名を捨てた家族 1837-38年ケベックの叛乱』を読む ・2016.7.25 角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売 ・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売 ・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』 ・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増! ・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫 ・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

 

 

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2016.07.25

角川文庫から新訳ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(上下)7月23日発売

以前から情報は入手していましたが、発売されましたので書いておきます。

私の大好きな作家のひとりヴェルヌの『海底二万里』の新訳が角川文庫から出ました。


『海底二万里 (上・下)』ジュール・ヴェルヌ/著 redjuice/イラスト 渋谷 豊/訳 角川文庫 2016/7/23


従来角川文庫からは花輪莞爾氏の訳本が出ていました。
(当初は一巻本、のちに上下二巻本に)
原書挿絵が何枚入ったもの―昔の印刷なので、解像度が悪かった―で、私が若い頃に読んだものでした。

少なくとも40年はたっているはずで、新訳版の登場もやむを得ないところです。

巻末の渋谷豊氏の訳者あとがきにも、古典の名作の叢書シリーズに入ったことが書かれていましたように、本国フランスでも評価されている作品であり、老舗文庫の一冊として収録されていて当然というものです。

原書挿絵は今回は入っていません。
この辺はちょっとさびしい印象があります。


しかし、映画化なり何なりの理由があるのでしょうけれど、ヴェルヌと言えば、『地底旅行』『海底二万里』『八十日間世界一周』というのはいかがでしょうか。
日本ではこれら三大名作にプラス『十五少年漂流記(二年間の休暇)』がありますが。

私自身、この作品は、先に上げた角川文庫版、集英社文庫〈ジュール・ヴェルヌ・コレクション〉版、岩波文庫版二巻本、新潮文庫版二巻本の4種持っています。

Jvkaiteinimanri

Kaiteinimanri

(今まで出た中では、原著挿絵をすべて収録している点では、岩波文庫・新潮文庫版がいい。
集英社と角川の新訳版は、挿絵ゼロ。訳注の充実ぶりでは、新潮文庫版。)

いかに名作でも、そんなに数はいりません。
(誰も買うてなんてゆうてへんて? ホンマや!)

上記の三大名作+ワンの他にもこれらほどの名作ではないけれど、現代でも十分読むに堪える作品があります。

角川文庫さんで言えば、昔出していた『悪魔の発明』(他社からも出ていますが、併載の「氷海越冬譚」は〈驚異の旅〉以前の冒険ものの傑作中編でした。)や、『地の果ての燈台』(これは優れた冒険小説です。再刊して欲しい一番手かも。)といった作品を再刊して欲しいですね。
Tinohatenotoudai


ヴェルヌの大ファンとしましては、いい加減ヴェルヌのこれら名作以外の作品を発掘出版していただきたいものです。

文遊社さんの復刊シリーズも楽しかったので、復刊でもいいんです。

出版社各社さま、よろしくお願い致します。


*『お茶でっせ』【ジュール・ヴェルヌ】の記事:

【文遊社<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2014.7.19 文遊社ジュール・ヴェルヌ復刊第四弾『緑の光線』7月30日発売
・2014.1.13 文遊社ヴェルヌ復刊シリーズ第3弾『黒いダイヤモンド』年末に発売 
・2013.10.17 ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
・2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版

【その他の<ヴェルヌ>の過去の記事】:
・2015.8.10 ジュール・ヴェルヌ『十五少年漂流記』椎名誠、渡辺葉・父娘共訳31日発売
・2013.6.2 ジュール・ヴェルヌの本2点『〈驚異の旅〉または出版をめぐる冒険』『永遠のアダム』
・2012.10.25 テレビの威力か?HPジュール・ヴェルヌ・コレクションにアクセス急増!
・2007.8.24 ジュール・ヴェルヌ『海底二万里(上)』岩波文庫
・2004.10.18 偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
・2004.7.2 復刊された『グラント船長の子供たち』

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