2021.10.15

私の読書論148-本は<読む>もの?<見る>もの?-楽しい読書304号

 ―第304号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★ 2021(令和3)年10月15日号(No.304)
「私の読書論148-本は<読む>もの?<見る>もの?」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年10月15日号(No.304)
「私の読書論148-本は<読む>もの?<見る>もの?」
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 久しぶりに今回の「私の読書論」は、「読書論」を取り上げましょう。

 「読書論」こと、「本の読み方」についてです。

 榊原英資(さかきばら・えいすけ)さんの『見る読書』を読みながら、
 本の読み方について考えてみましょう。

 

*参照:
榊原英資『見る読書』KKベストセラーズ ベスト新書 2018/7/7

 

Kindle版

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  ◆ <見る>だけなら何冊でも手を出せる ◆
  私の読書論148-本は<読む>もの?<見る>もの?
   ―― もっとも正しい本の読み方=とにかく全部読む ――
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 ●本を「見る」とは「読む」こと

 《藤原俊成の見解――「源氏見ざる歌詠みは遺恨のことなり」(略)
  「源氏見ざる」の「見る」は「読む」。
  ただし人まえで声にだしてよむのではなく、
  声にださず、ひとりで目で読む(黙読)という含みがある。》

    津野海太郎(つの・かいたろう)『読書と日本人』岩波新書
     2016/10/21 p.36

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(以下略)

 ●「よんだ」と「みた」

梅棹忠夫『知的生産の技術』岩波新書 1969/7/21

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の中で、梅棹さんは「6 読書」の章で、こう書いています。

 《はじめからおわりまでよんだ本についてだけ、
  わたしは「よんだ」という語をつかうことを自分にゆるすのである。
  一部分だけよんだ場合には、「よんだ」とはいわない。
  そういうときには、わたしはその本を「みた」ということにしている。
  そして、あたりまえのことだが、「みた」だけの本については、
  批評をつつしむ。》p.102

 

梅棹さんは、読書法として、

 《まず、本というものは、はじめからおわりまでよむものである。
  (略)とにかくよみだしたら最後までよむというのは、
  うまい読書法の一つである。》pp.100-101
 
といい、

 《読者というものは、本をよむにあたっては、
  著者が何をいおうとしているのかを
  理解しようとつとめなければならない。
  つまり、著者の身になってよむのである。
  その第一歩が、「はじめからおわりまでよむ」
  というよみかたであると、わたしはかんがえる。》p.101

 

娯楽としての読書は別にして、

 《著者の思想を正確に理解するというのは、
  読書の最大目的の一つであろう。》

といい、

 《内容の正確な理解のためには、
  とにかく全部よむことが必要である。》p.101

そして、

 《半分よんだだけとか、ひろいよみとかは、本のよみかたとしては、
  ひじょうに[へた](傍点)なよみかたである。(略)
  「ななめよみ」で十分理解したという人もあるが、
  あまり信用しないほうがいい。
  すくなくとも、きわめて危険で非能率的なよみかたであろう。》
   pp.101-102

といいます。

梅棹忠夫は、全巻通読(完読)したとき、初めて「よんだ」といい、
「ひろいよみ」や「ななめよみ」という
「部分読み」や「飛ばし読み」は、全編を読んだわけではないので、
単に「みた」と表現する、というわけです。

さて、ここまでを前置きとして理解した上で、次にいきましょう。

 

 ●榊原英資『見る読書』の「見る」という行為

榊原英資さんは『見る読書』の「はじめに」の中で、

 《私は、「本は読まずに見る」という、
  人とはちょっと変わった読書法を、
  自分なりに身につけてきたように思います。》p.7

といいます。

もちろんこれは、小説の読み方ではなく、世界を理解し、
現実の世を生き抜くための情報を得る方便としての、
勉強のための読書法です。
多くの情報を短時間に取得するための取捨選択の読書法、
といえるでしょう。

ですから、

 《それなりに読書を重ねてきた熟年層や高齢層の人たち。
  ビジネスの必要から読書することが多い働き盛りの人たち。
  レポートや卒論を書くために読書を求められる学生たち。
  定年で“第二の人生”を迎え、
  読書で新しい世界を広げようと思う人たち。》p.7

こういう人たちを対象にした著作です。

これなら、「本は見るもの」という表現も容認できるところでしょう。

いかに要領よく情報を摘出し、ものにするか、
というイージーな便宜的な読書法であり、
梅棹さん流の本格的な読書法ではありません。

 

ただただ、《自分の頭や心だけに頼れ、という簡単な方法》だ
といいます。

付箋もノートも不要、面倒なことは何一つない読書法だと。

 

 ●本というものは「見る」ものだ

「第1章「さわり」を読む」に、

 《本は「読む」ものではない。本というものは「見る」ものだ。》
  p.19

と書いています。

もちろん(梅棹さん流の)本格的な読書を否定するものではない、
と明言されています。

その辺はちゃんと理解の上での発言です。

 

簡単に結論を先にいってしまいますと、

 《「見る」にせよ「読む」にせよ、さまざまなジャンルの本、
  それも数多くの本に目を通すことは非常に大事なことだ、
  と私は考えていいます。》p.60

ということになります。

で、数多く目を通すとなりますと、とりあえず今関心のある、
あるいは今読む必要のある事柄についてのみ摂取する、
というやり方(部分読みや拾い読み)が一番効率的だということです。

そこで著者のやり方が説明されます。

 

 ●本のさわり(エッセンス)をつかむ

(以下略)

 ●ある程度の読書経験を積んだ時間のない人向け読書法

 ●知らないことは知らないと答える

 ●読書の土台を作る時期の読書

 ●何年もトータルでは熟読したことになる

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 ★創刊300号への道のり(5 )-2012(平成24)年-

73
2012(平成24)年1月15日号(No.73)-120115-
私の読書論-29-初心者のための読書の仕方を考える(11)
最初の一冊の選び方(8) 本選び(選書)の方法 III 書名~
74
2012(平成24)年1月31日号(No.74)-120131-最良の処世訓『イソップ寓話』
75
2012(平成24)年2月15日号(No.75)-120215-
私の読書論-30-初心者のための読書の仕方を考える(12)
最初の一冊の選び方(9) 本選び(選書)の方法 IV 直接法(1)
76
2012(平成24)年2月29日号(No.76)-120229-
ギリシア悲劇:"ギリシャ悲劇の創造者"アイスキュロス
77
2012(平成24)年3月15日号(No.77)-120315-
私の読書論-31-初心者のための読書の仕方を考える(13)
最初の一冊の選び方(10) 本選び(選書)の方法 IV 直接法(2)書名
78
2012(平成24)年3月31日号(No.78)-120331-ギリシア悲劇:
 "ギリシャ悲劇の代表作"ソポクレス「オイディプス王」
79
2012(平成24)年4月15日号(No.79)-120415-
私の読書論-32-初心者のための読書の仕方を考える(14)
最初の一冊の選び方(11) 本選び(選書)の方法 IV 直接法(3)書名【後編】
80
2012(平成24)年4月30日号(No.80)-120430-ギリシア悲劇:
 エウリピデス「バッコスの信女(バッカイ)」
81
2012(平成24)年5月15日号(No.81)-120515-
私の読書論-33-初心者のための読書の仕方を考える(15)
最初の一冊の選び方(12) 本選び(選書)の方法 IV 直接法(4)著者略歴
82
2012(平成24)年5月31日号(No.82)-120531-
 恋について『饗宴』プラトン
83
2012(平成24)年6月15日号(No.83)-120615-
私の読書論-34- 本選びの方法 直接法(5)目次 
84
2012(平成24)年6月30日号(No.84)-120630-
笑いの原点~ギリシア喜劇:アリストパネス「女の平和」他
85
2012(平成24)年7月15日号(No.85)-120715- 私の読書論-35-
本選びの方法 直接法(6)「まえがき・あとがき・その他」 
86
2012(平成24)年7月31日号(No.86)-120731-  
名著・名作の“一冊”―各社<夏の文庫>フェアから
87
2012(平成24)年8月15日号(No.87)-120815-  
私の読書論-36- 本は買わずに借りて読め!
88
2012(平成24)年8月31日号(No.88)-120831-
2012年岩波文庫フェアから
<名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう>
89
2012(平成24)年9月15日号(No.89)-120915-  
私の読書論-37- 本は買わずに借りて読め!(その2)
90
2012(平成24)年9月30日号(No.09)-120930-  
我々は哲学すべきである:アリストテレス「哲学のすすめ」
91
2012(平成24)年10月15日号(No.91)-121015-  
私の読書論-38- 読書の決まり(その1)
92
2012(平成24)年10月31日号(No.92)-121031-  
魂の不滅~『老年について』キケロ
93
2012(平成24)年11月15日号(No.93)-121115-  
私の読書論-39- 読書の決まり(その2)
94
2012(平成24)年11月30日号(No.94)-121130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』から
95
2012(平成24)年12月15日号(No.95)-121215-  
私の読書論-40- 読書の決まり(その3)
96
2012(平成24)年12月31日号(No.96)-121231-  
愛から生ずる崇高な徳に勝る友情はない~『友情について』キケロ

 ・・・

月末の「古典紹介」編では、
主に古代ギリシア・ローマの作品を紹介しました。

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本誌では、「私の読書論148-本は<読む>もの?<見る>もの?」をお届けしています。

今回は、前半分のみ転載、公開しました。

より多くの本に接したいと思えば、「読む」より「見る」を重視するというやり方もありでしょう。

私が本屋さんで働いていたとき、届いた新刊をどこに並べるかを決めるためにしたことは、まずは、書名を見、著者名を見、どういう内容のものかを見極め、それだけでは分からないときは目次を見、内容を把握するようにしました。
もちろん短時間で次々とこなしてゆくのですから、これもけっこう読書眼の必要な作業といえます。

これは本の内容のエッセンスの理解とは、また次元は異なりますが、内容把握の一つのあり方でもあります。

 ・・・

榊原さん流の本のさわりをつかむという方法は、今号のバックナンバー紹介のコーナーで、「私の読書論」で書いています「本選び(選書)の方法」で、私が紹介しているものと同じです。
本をある程度読んできた人が次に読む本を選ぶときの方法は、共通したものになるということでしょう。

だからというわけではありませんが、後半部分は、非公開にしました。
人様の著作でもありますし、何でもかんでも勝手に紹介するのは、気が引けるものです。
(と、購読者集めへのうまい言い訳のつもり!?)

 ・・・

では、弊誌を面白いと思われた方は、購読のお申し込みを!

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2021.09.30

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(12)特別編-中島敦「山月記」より-楽しい読書303号

 ―第303号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★

2021(令和3)年9月30日号(No.303)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(12)
特別編-中島敦「山月記」より」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年9月30日号(No.303)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(12)
特別編-中島敦「山月記」より」
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 6月以来、久しぶりの
 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」の12回目です。

今回も引き続き、漢代の英傑たちの作品から「李陵と蘇武」を
 紹介する予定でした。
 しかし、資料が整わず、断念。

 今回は特別編として、「李陵と蘇武」編の参考資料として読んだ
 中島敦の小説「李陵」を含む作品集中にあった、
 詩人になり損ねた男のお話「山月記」を紹介してみようと思います。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

◆ 詩人になれなかった男 ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(13)特別編

  中島敦「山月記」より

  ~ 人生失敗の理由=臆病な自尊心と尊大な羞恥心 ~

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今回の参考文献――

◎中島敦「山月記」

210929sangetuki

・『現代日本文学館 李陵 山月記』中島敦 文春文庫 2013/7/10

・中島敦「山月記」青空文庫
https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/623_18353.html

 

 ●「山月記」と著者・中島敦について

「山月記」は、変身譚として有名な短いお話で、
国語の教科書にもよく採用されています。
私も教科書で読んだのが初めでした。

短い中に、職業人としての心構えや、
人生における生きがいとは何か、芸術を究めることの難しさ、
また詩作においても人との切磋琢磨が重要であること、
自信を持つことと尊大であることの違い、自尊心と臆病さ、
などなど人生を考えさせる一編となっています。

著者の中島敦自身、職業人として生きながら、文学の道を進む人でした。
ただ病気持ちで、その転地療養の一環として、南洋庁の官吏として、
南太平洋のパラオに赴任します。
その間に人に託したこの作品は雑誌に掲載され、
中島敦の名を初めて世に知らしめる作品となりました。
一方、病状は回復せず、仕事にも嫌気が差し、帰国。
帰国後、作品が掲載されたことを知り、専業作家となるも、
病気のため33歳でなくなります。

 

 ●「山月記」ストーリー

隴西(ろうせい/地名)の李徴(りちょう)は、博学才穎(さいえい)の青年、
若くして中央政府の官吏登用試験に合格、職に就くが、
宮仕えに甘んじることを潔しとせず、官を退き、
人との交わりをたち、ひたすら詩作に耽ります。

しかし、詩人としての文名は上がらず、
数年後、生活苦から官吏の職に戻るのですが、
その時、同僚たちはすでに出世し、
彼はその下級官吏として働くことになります。
そして一年後、公用で旅に出て、二度と戻ることはありませんでした。

翌年、監察御史、陳郡の袁■(「にんべん+參」、えんさん)という者が、
勅命での嶺南への旅の途中、商於(しょうおう)の地で、
この先の道には人喰い虎が出るので昼まで待てといわれますが、
早朝に発ちます。

袁■ら一行は虎に襲われます。
しかし、虎は一瞬身を翻して、叢(くさむら)に隠れ、
その草むらから「あぶない所だった」と人の声が聞こえてきます。
その声は、袁■の友、李徴でした。
袁■は、李徴の数少ない友人だったのです。

李徴の虎への変身の話が始まります。
話の終わりに、李徴は過去に書きためた詩を書き取ってくれと頼みます。
それらの作品を見た袁■は思うのです――

 《なるほど、作者の素質が第一流に属するものであることは疑いない。
  しかし、このままでは、第一流の作品となるのには、
  どこか(非常に微妙な点において)
  欠けるところがあるのではないか、と。》

210929sangetuki-169p

一方、李徴は自嘲的にいいます。

 《羞(はずか)しいことだが、
  今でも、こんな[あさましい](傍点)身と成り果てた今でも、
  己(おれ)は、
  己の詩集が長安風流人士の机の上に置かれているさまを、
  夢に見ることがあるのだ。岩窟の中に横たわって見る夢にだよ。
  嗤(わら)ってくれ。詩人に成りそこなって虎になった哀れな男を。》

そして、即席の詩を述べる。

 《偶因狂疾成殊類 たまたまきょういしつによりてしゅるいとなり
  災患相仍不可逃 さいかんあいかさなってのがるべからず
  今日爪牙誰敢敵 こんにちのそうがたれかあえててきせん
  当時声跡共相高 とうじのせいせきともにあいたかし 
  我為異物蓬茅下 われいぶつとなるほうぼうのもと
  君已乘■(「車+召」)気勢豪
          きみすでにようにじょうじてきせいごうなり
  此夕溪山対明月 このゆうべけいざんめいげつにたいす
  不成長嘯但成■(「口+「皐」の「白」にかえて「自」)
          ちょうしょうをなさずただこうをなす》

210929sangetuki-170171p

そして、
このような運命になった自分について思い当たるところを語ります。

 《人間であった時、己(おれ)は努めて人との交わりを避けた。
  人々は己を倨傲(きょごう)だ、尊大だといった。
  実は、それがほとんど羞恥心に近いものであることを、
  人々は知らなかった。
  もちろん、かつての郷党の鬼才といわれた自分に、
  自尊心がなかったとは云わない。
  しかし、それは臆病な自尊心とでもいうべきものであった。
  己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、
  求めて詩友と交って切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。
  かといって、また、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。
  ともに、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心とのせいである。
  己(おの)れの珠に非ざることを惧(おそ)れるが故に、
  あえて刻苦して磨こうともせず、
  また、己れの珠なるべきを半ば信ずるがゆえに、
  碌々(ろくろく)として瓦(かわら)に伍することもできなかった。
  己(おれ)は次第に世と離れ、人と遠ざかり、
  憤悶(ふんもん)と慙恚(ざんい)とによって
  ますます己れの内なる臆病な自尊心を飼い[ふとらせる](傍点)
  結果になった。人間は誰でも猛獸使いであり、
  その猛獸に当たるのが、各人の性情だという。
  己の場合、この尊大な羞恥心が猛獸だった。虎だったのだ。
  これが己を損い、妻子を苦しめ、友人を傷つけ、
  果ては、己の外形をかくのごとく、
  内心にふさわしいものに変えてしまったのだ。》

変身の理由は、そういう自分の心の弱さであり、性情のせいだといいます。

 《今思えば、全く、己は、
  己のもっていた僅かばかりの才能を空費してしまったわけだ。
  人生は何事をもなさぬにはあまりに長いが、
  何事かをなすにはあまりに短いなどと口先ばかりの警句を弄しながら、
  事実は、才能の不足を暴露するかも知れないとの卑怯な危惧と、
  刻苦を厭(いと)う怠惰とが己のすべてだったのだ。
  己よりもはるかに乏しい才能でありながら、
  それを專一に磨いたがために、
  堂々たる詩家となった者が幾らでもいるのだ。
  虎と成り果てた今、己は漸くそれに気がついた。
  それを思うと、己は今も胸を灼かれるような悔いを感じる。
  己にはもはや人間としての生活はできない。
  たとえ、今、己が頭の中で、どんな優れた詩を作ったにしたところで、
  どういう手段で発表できよう。
  まして、己の頭は日毎に虎に近づいて行く。どうすればいいのだ。
  己の空費された過去は? 己は堪らなくなる。
  そういう時、己は、向うの山の頂の巖(いわ)に上り、
  空谷(くうこく)に向って吼える。
  この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。
  己は昨夕(ゆうべ)も、あそこで月に向って咆(ほ)えた。
  誰かにこの苦しみが分かってもらえないかと。
  しかし、獣どもは己の声を聞いて、ただ、懼(おそ)れ、ひれ伏すばかり。
  山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、
  哮(たけ)っているとしか考えない。天に躍り地に伏して嘆いても、
  誰一人己の気持を分かってくれる者はない。ちょうど、人間だった頃、
  己の傷つきやすい内心を誰も理解してくれなかったように。
  己の毛皮の濡れたのは、夜露のためばかりではない。》

210929sangetuki-172p

最後に、李徴は、妻子に自分が死んだことを告げ、
妻子の面倒を見てくれと頼むのでした。
さらに、帰るときはここを通るな、
その頃には、自分は人の心を持たぬ虎になっているだろう、と。
そう言いおいて、彼らに再会の気持ちを起こさせぬよう、
変身した姿を山の上にさらすのでした。

 

 ●“芸術家未満”の人の心情

私も作家を目指したことがあります。
私も李徴のように、一人で隠れて穴掘りしていました。

私の気持ちも李徴と同じく若干の自信と、人には負けぬという自尊心、
一方で、所詮は及ばぬのだろうという羞恥心とに襲われて、のものでした。

私も同好の士と切磋琢磨する気持ちを持っていたならば……、
と思わぬでもありません。

まあ、そういう“芸術家未満”の人の心情を描いた名作かもしれません。

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 ● 漢詩の入門書等を読む

★『漢詩入門』一海知義/著 岩波ジュニア新書 1998.6.22

 

★『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
―漢詩の歴史をたどるシリーズ全4巻。第1巻は『詩経』から屈原の
 『楚辞』、漢や三国時代を経て東晋の陶淵明まで。
 俳優・声優の江原正士が専門家の宇野直人を相手に、代表的な詩
 を対話形式でわかりやすく読み解く。

 

★『漢詩入門』入谷仙介/著 日中出版 1979/01
―漢詩の有名作をたどりながら、その歴史と構造を解く漢詩入門。

 ▲マークは、本文で取り上げた本
 ★マークは、筆者のおすすめ本です。本選びの参考にどうぞ。
 (基本的に、筆者が“偶然”手にしたものを取り上げています。)

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 ★創刊300号への道のり(4) 2011(平成23)年(4年目)

50.
2011(平成23)年1月15日号(No.50)-110115-
私の読書論-18-“読書は楽し”を実践しよう!
51.
2011(平成23)年1月31日号(No.51)-110131-
 東洋から西洋へ『茶の本』岡倉天心
52.
2011(平成23)年2月15日号(No.52)-110215-私の読書論-19-
 初心者のための読書の仕方を考える
53.
2011(平成23)年2月28日号(No.53)-110228-
 人知らぬ恨「舞姫」森[鴎おう]外
54.
2011年3月31日号(No.54)-110331-特別編 宮沢賢治の詩「永訣の朝」
55.
2011(平成23)年4月15日号(No.55)-110415-私の読書論-20-
 初心者のための読書の仕方を考える(2)
56.
2011(平成23)年4月30日号(No.56)-110430-簡素で高貴な生活
『ウォールデン 森の生活』H・D・ソロー
57.
2011(平成23)年5月15日号(No.57)-110515-
私の読書論-21-初心者のための読書の仕方を考える(3)
58.
2011(平成23)年5月31日号(No.58)-110531-非暴力抵抗主義
『市民的不服従(市民の反抗)』H・D・ソロー
59.
2011(平成23)年6月15日号(No.59)-110615-
私の読書論-22-初心者のための読書の仕方を考える(4)
 最初の一冊の選び方
60.
2011(平成23)年6月30日号(No.60)-110630-
二つの愛の形『赤と黒』スタンダール
61.
2011(平成23)年7月15日号(No.61)-110715-
私の読書論-23-初心者のための読書の仕方を考える(5)
最初の一冊の選び方(2)若いうちに海外の翻訳ものを読もう!
62.
2011(平成23)年7月31日号(No.62)-110731-
最初の一冊:各社「夏の文庫」フェアから―
63.
2011(平成23)年8月15日号(No.63)-110815-
私の読書論-24-初心者のための読書の仕方を考える(6)
最初の一冊の選び方(3)なぜ翻訳ものの古典なのか?
64.
2011(平成23)年8月31日号(No.64)-110831-《死すべき者》人間
 ~二大英雄叙事詩~ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』
65.
2011(平成23)年9月15日号(No.65)-110915-
私の読書論-25-初心者のための読書の仕方を考える(7)
最初の一冊の選び方(4)文学は古代から現代まで連続している
66.
2011(平成23)年9月30日号(No.66)-110930-《死すべき者》人間~
 <アキレウスの怒り>『イリアス』ホメロス
67.
2011(平成23)年10月15日号(No.67)-111015-
私の読書論-26-初心者のための読書の仕方を考える(8)
最初の一冊の選び方(5) 文学は西洋から日本まで連続している
68.
2011(平成23)年10月31日号(No.68)-111031-《死すべき者》人間~
 夫婦と家族『オデュッセイア』ホメロス
69.
2011(平成23)年11月15日号(No.69)-111115-
私の読書論-27-初心者のための読書の仕方を考える(9)
最初の一冊の選び方(6) 本選び(選書)の方法 I 読書の目的
70.
2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節
『あるクリスマス』カポーティ
71.
2011(平成23)年12月15日号(No.71)-111215-
私の読書論-28-初心者のための読書の仕方を考える(10)
最初の一冊の選び方(7) 本選び(選書)の方法 II 共通事項
72.
2011(平成23)年12月31日号(No.72)-111231-
 本当に大切なこと―2011年を振り返る

 ・・・

この年の前半は、引き続き、明治時代頃の西洋と我が国の名作を、
後半は、古代ギリシアの名作を。
また、3月11日に、東日本大震災が発生。
3月半ばの号をお休みしました。
発行することがいいのかどうか、迷ったからでした。
世間全般に自粛ムードが漂っていました。

一回のお休みののち、月末編から再開、
特別編として宮沢賢治の妹との惜別の詩「永訣の朝」を紹介しました。

月半ばの発行号では、
「初心者のための読書の仕方を考える」のシリーズを始めました。

「読書は楽しい」を実戦してもらいたいがためでした。

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(12) 特別編-中島敦「山月記」より」をお届けしています。

今回は、特別編です。

中島敦の「山月記」は、芸術家になれず人生も失敗に終わった“芸術家未満”の人の心情を描いた名作です。

部分的にカットするのもどうかということで、全編転載です。

 ・・・

では、弊誌を面白いと思われた方は、購読のお申し込みを!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』

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2021.09.15

私の読書論147-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(10)ハヤカワ文庫の50冊(8)拾遺SF編-楽しい読書302号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書
-302号【別冊 編集後記】

2021(令和3)年9月15日号(No.302)
「私の読書論147-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(10)
ハヤカワ文庫の50冊(8)最終回/拾遺・蔵書以外の名作傑作・SF編」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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021(令和3)年9月15日号(No.302)
「私の読書論147-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(10)
ハヤカワ文庫の50冊(8)最終回/拾遺・蔵書以外の名作傑作・SF編」
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 1970(昭和45)年に創刊された早川書房の文庫「ハヤカワ文庫」が
昨年、50周年を迎え、
 15歳からの私の読書生活52年のほぼ全てをカバーしている
 「ハヤカワ文庫」のうち、現在私の手元にある本の中から、
 お気に入りや、心に残る本を紹介してきました。

 今回は、いよいよ本当に最終回、おまけ編のSF編として
 買って読んだけれど、あるいは図書館等で借りて読んだけれど、
 自分の本として残さなかった本の中から、
 これは機会があれば、読んでいただきたいと思う本――
 名作・傑作を紹介してみましょう。

 

 前回までのおさらい――

【1】2020(令和2)年9月15日号(No.278)
「私の読書論135-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(1)」
2020.9.15
私の読書論135-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(1)
-楽しい読書278号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/09/post-93a384.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3df333247f5640e098891d55ddaaccd5
【最初の6冊】
1.SF『征服王コナン』2.NV『ローズマリーの赤ちゃん』
3.NV『女王陛下のユリシーズ号』4.HM『重賞』5.HM『死の接吻』
6.FT『夢の10セント銀貨』

【2】2020(令和2)年10月15日号(No.280)
「私の読書論136-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(2)」
2020.10.15
私の読書論136-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(2)
私のお気に入り7-楽しい読書280号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/10/post-0f243e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/56a232216e800eaf561dd1f4904b2cce
【私のお気に入り7】
(1)ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』
(2)ゼナ・ヘンダースン『果しなき旅路』
(3)ロバート・F・ヤング『ジョナサンと宇宙クジラ』
(4)ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』
(5)シャーリイ・ジャクスン
『野蛮人との生活―スラップスティック式育児法』
(6)クレイグ・ライス『スイート・ホーム殺人事件』
(7)ルイス・ギルバート『フレンズ―ポールとミシェル』

【3】2020(令和2)年11月15日号(No.282)
「私の読書論137-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(3)
【私のお気に入り7】に続くもの ハヤカワ文庫の50冊(1)」
2020.11.15
私の読書論137-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(3)
ハヤカワ文庫の50冊(1)-楽しい読書282号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-3a6f3e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/85364a4c9cf932ced296000daefccee2
◎準【私のお気に入り7】――続編および同一作家の他の名作・佳作
(8)『夢の10セント銀貨』(9)『血は異ならず』(10)『時をとめた少女』
(11)『山荘綺談』(12)『続・フレンズ―ポールとミシェル』
それ以下(忘れ物)
(13)『フレームシフト』(14)『ヴァーチャル・ガール』
(15)『たったひとつの冴えたやりかた』(16)『魔界の紋章』
(17)『異次元を覗く家』(18)『夏への扉』(19)『アルジャーノンに花束を』
(20)『わたしを離さないで』

【4】2020(令和2)年12月15日号(No.284)
「私の読書論138-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(4)
ハヤカワ文庫の50冊(2)SF系の拾遺」
2020.12.15
私の読書論138-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(4)
ハヤカワ文庫の50冊(2)SF系の拾遺-楽しい読書284号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/12/post-6dcf8b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d5d58cdf2b456f12649ebad3b8f8c3d5
SF系の拾遺――シリーズもの三つ
▼C・L・ムーア +(イラスト)松本零士
<ノースウェスト・スミス>シリーズ
(21)『大宇宙の魔女』(22)『異次元の女王』『暗黒界の妖精』
<処女戦士ジレル>シリーズ
(24)『暗黒神のくちづけ―処女戦士ジレル』
▼ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン
  +(イラスト)天野嘉孝(あまの よしたか)
<ホーカ>シリーズ (25)『地球人のお荷物』
(26)『くたばれスネイクス』(27)『がんばれチャーリー』
▼火浦功<みのりちゃん>シリーズ +(イラスト)いしかわ じゅん
(28)『日曜日には宇宙人とお茶を』(29)『大冒険はおべんと持って』
「文庫JA」(30)『S-Fマガジン・セレクション1981』
(31)『美亜へ贈る真珠〔新版〕』
「文庫NV」(33)『時の地図 上・下』

【5】
2021(令和3)年2月15日号(No.288)
「私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)
ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々」
2021.2.15
私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)
ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々-楽しい読書288号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/02/post-5af022.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/bd2863095641ce166963a6aabc7405c8
「文庫NV」――冒険小説 (34)『ナヴァロンの要塞』
セシル・スコット・フォレスター〈海の男ホーンブロワー〉シリーズ
(35)『スペイン要塞を撃滅せよ』
ホラー:アンソロジー (36)『闇の展覧会〔1〕〔2〕』
ホラー:マシスン (37)『地球最後の男』
ホラー・幻想など (38)『地図にない町 ディック幻想短篇集』
サスペンス (39)『堕ちる天使』(40)『GATACA(上)(下)』

【6】
2021(令和3)年3月15日号(No.290)
「私の読書論142-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(6)
ハヤカワ文庫の50冊(4)ミステリ文庫」
2021.3.15
私の読書論142-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(6)ハヤカワ文庫の50冊(4)-楽しい読書290号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/03/post-0574cb.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/5fb379dedfe0c35721ff8cc2b4dbabd4
ミステリ文庫
(41)『アデスタを吹く冷たい風』トマス・フラナガン
(42)『ミステリマガジン700 海外篇
─創刊700号記念アンソロジー』杉江松恋/編
(43)『密室大集合』アメリカ探偵作家クラブ傑作選7
エドワード・D・ホック/編
(44)『ボトムズ』ジョー・R・ランズデール
(45)『ダークライン』
(46)『沈黙のセールスマン』マイクル・Z・リューイン
(47)『謎のクィン氏』アガサ・クリスティー
(48)『クレアが死んでいる』エド・マクベイン
(49)『その雪と血を』ジョー・ネスボ
<左利きミステリ>から――
(50)『カリフォルニア・ガール』T・ジェファーソン・パーカー
アガサ・クリスティー<クリスティー文庫>
(51)『ビッグ4』(52)『オリエント急行の殺人』(53)『死人の鏡』
(54)『ゼロ時間へ』

【7】
2021(令和3)年4月15日号(No.292)
「私の読書論143-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(7)
ハヤカワ文庫の50冊(5) ノンフィクションその他」
2021.4.15
私の読書論143-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(7)ハヤカワ文庫の50冊(5)NF他-楽しい読書292号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/04/post-cde3df.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7a3190d6f5084d5747d6d068bbe27bee
文庫NF
(55)『失われた私』フローラ・リータ・シュライバー
(56)『24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 下』ダニエル・キイス
文庫JA
(57)『SF英雄群像』野田昌宏
(58)『ニュートンとアインシュタイン』石原 藤夫
(59)『SFロボット学入門』石原 藤夫
ブックガイド類
(60)『ミステリ・ハンドブック』早川書房編集部編
ハヤカワ・ミステリ文庫
(61)『冒険・スパイ小説ハンドブック』早川書房編集部/編
ハヤカワ文庫NV
(62)『アガサ・クリスティー百科事典』数藤 康雄/編 ハヤカワ文庫
―クリスティー文庫

【8】
2021(令和3)年6月15日号(No.296)
「私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺・蔵書以外の名作傑作・ミステリ編」
2021.6.15
私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺ミステリ編-楽しい読書296号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/06/post-04b31f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a9e30ce5eb0f87cf109b659f937f17e3
◆エラリイ・クイーン(+1)『災厄の町〔新訳版〕』
(+2)『九尾の猫〔新訳版〕』(+3)『犯罪カレンダー 1月~6月』
◆ジョン・ディクスン・カー(+4)『火刑法廷〔新訳版〕』
(+5)『三つの棺〔新訳版〕』(+6)『ユダの窓』
◆アガサ・クリスティー(+7)『そして誰もいなくなった』
(+8)『ABC殺人事件』(+9)『カーテン』
・本格ミステリ短編集(+10)『九マイルは遠すぎる』
(+11)『ママは何でも知っている』
・本格ミステリ長編(+12)『切断』(+13)『見えないグリーン』
(+14)『ホッグ連続殺人』
◆ピーター・ラヴゼイ(+15)『偽のデュー警部』(+16)『苦い林檎酒』
<ダイヤモンド警視シリーズ>(+17)『最後の刑事』(+18)『単独捜査』
(+19)『バースへの帰還』(+20)『猟犬クラブ』(+21)『最期の声』

【9】
2021(令和3)年7月15日号(No.298)
「私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)
ハヤカワ文庫の50冊(7)拾遺・蔵書以外の名作傑作・
ミステリ編(2)サスペンス他」
2021.7.15
私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)
ハヤカワ文庫の50冊(7)拾遺ミステリ編(2)-楽しい読書298号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/07/post-6f1005.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ac35cb4854a3b92851db545567f9d4a1
●好きなミステリ作家から (+22)『幻の女』(+23)『あなたに似た人』
(+24)『特別料理』(+25)『八百万の死にざま』
◆マイクル・Z・リューイン
(+26)『夜勤刑事』(+27)『刑事の誇り』(+28)『男たちの絆』
●冒険小説から
◆ジャック・ヒギンズ (+29)『脱出航路』(+30)『死にゆく者への祈り』
◆ギャビン・ライアル (+31)『本番台本』(+32)『もっとも危険なゲーム』
(+33)『ちがった空』

 

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  ◆ 「お子ちゃま」読者時代からのお友達 ◆
  私の読書論147-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(10)
   ―― ハヤカワ文庫の50冊(8)最終回/拾遺・
蔵書以外の名作傑作・SF編 ――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「前回までのおさらい」で紹介しました
「ハヤカワ文庫の50冊」62点の作品以外の本を対象に、
お話を進めていく、「拾遺」の第3回目は、SF編です。

今回も思い出すままに取り留めなく紹介していきます。

まずは、好きなSF作家さんの作品を挙げていきましょう。

 

 ●海外SFから――巨匠たち

(+34)『地球の緑の丘』ロバート・A・ハインライン 矢野 徹
ハヤカワ文庫SF―未来史2 1986/7/1
―ハインライン中期の傑作中短篇集、表題作が好き。

 

(+35)『海底牧場』アーサー・C・クラーク 高橋 泰邦/訳
ハヤカワ文庫 SF 225 1977/2/1

 

(+36)『幼年期の終り』アーサー・C・クラーク 福島 正実/訳
ハヤカワ文庫 SF (341) 1979/4/1

 

(+37)『決定版 2001年宇宙の旅』アーサー・C・クラーク 伊藤 典夫/訳
ハヤカワ文庫SF 1993/2/1

 

(+38)『われはロボット〔決定版〕アシモフのロボット傑作集』
アイザック・アシモフ 小尾 芙佐/訳 ハヤカワ文庫 SF 2004/8/6

 

(+39)『ファウンデーション ―銀河帝国興亡史〈1〉』
アイザック・アシモフ 岡部 宏之/訳 ハヤカワ文庫SF 1984/4/1

 

(+40)『宇宙船ビーグル号の冒険』A.E.ヴァン・ヴォクト 浅倉 久志/訳
ハヤカワ文庫 SF 291 1978/5/1

 

(+41)『スラン』A.E.ヴァン・ヴォクト 浅倉 久志/訳 ハヤカワ文庫 SF
234 1977/4/1

 

(+42)『火星年代記』レイ・ブラッドベリ 小笠原 豊樹/訳
ハヤカワ文庫SF 2010/7/10

 

(+43)『華氏451度〔新訳版〕』レイ・ブラッドベリ 伊藤典夫/訳
ハヤカワ文庫SF 2014/4/24

 

 ●海外SFから――

(+44)『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック
浅倉久志/訳 ハヤカワ文庫 SF 1977/3/1
―リドリー・スコット監督の名作映画『ブレードランナー』の原作として
 も有名。詳細の記憶は今ありませんが、とにかく面白かった。

 

(+45)『ノーストリリア』コードウェイナー・スミス 浅倉久志/訳
ハヤカワ文庫SF 2009/9/5
―シリーズ唯一の長篇。

 

(+46)『鼠と竜のゲーム』コードウェイナー・スミス
伊藤 典夫・浅倉 久志/訳 ハヤカワ文庫 SF 471 1982/4/1

 

(+47)『都市』クリフォード・D・シマック 林 克己/訳
ハヤカワ文庫 SF 205 1976/9/1

 

(+48)『中継ステーション〔新訳版〕』クリフォード・D・シマック
山田順子/訳 ハヤカワ文庫 SF 2015/12/18

 

(+49)『人間以上』シオドア・スタージョン 矢野 徹/訳
ハヤカワ文庫 SF 317 1978/10/1

 

 

フレドリック・ブラウンは、創元文庫で読書最初期に
SFとミステリの短編集を次々と読んだものでした。

ハヤカワでは比較的最近に読んだ長編――

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(画像:比較的最近に読んで、大いに共感した長編SF、フレドリック・ブラウン『天の光はすべて星』(田中融二/訳 ハヤカワ文庫 SF 2008/9/5))

(+50)『天の光はすべて星』フレドリック・ブラウン 田中融二/訳
ハヤカワ文庫 SF 2008/9/5
―宇宙開発中断期、老元宇宙飛行士は、新たな探査計画を掲げる
 女性議員候補と組んで、もう一度宇宙を目指すが……。
 《老境に差しかかりつつも夢のために奮闘する男を、
  奇才ブラウンが情感豊かに描く古典的名作》

 

非常にいい作品でしたね。ラストは苦いですけれど。
ブラウンといえば、才人とかアイディア・ストーリーの作家のように
思われがちですが、これはストレートな人間のパッションを描いた物語。
私もこれぐらいの年になりますと、
己の人生に対して色々と思うところがあり、共感できるのです。

 

 ●日本SFから――

(+51)『神狩り』山田 正紀 ハヤカワ文庫JA 2010/4/5

 

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(画像:私の読書初期に作家としてデビューし鮮烈な記憶が残る、山田正紀デビュー作『神狩り』(ハヤカワ文庫JA 1976/1/1))

 

(+52)『弥勒戦争』山田 正紀 ハヤカワ文庫 1976

 

(+53)『氷河民族』山田 正紀 ハヤカワ文庫 JA 75 1976/2/1

 

(+54)『百億の昼と千億の夜』光瀬 龍 ハヤカワ文庫JA 2010/4/5

 

(+55)『石の血脈』半村良 ハヤカワ文庫JA 1974/1/1

 

(+56)『産霊山秘録』半村良 ハヤカワ文庫JA 1975/1/1

 

(+57)『狼の紋章』平井和正 ハヤカワ文庫JA 新版 2018/1/10
―ウルフガイ・シリーズ(全10巻)第1弾。

 

(+58)『復活の日』小松左京 ハヤカワ文庫 JA 33 1974/6/1

 ・・・

SF編、思いつくままに、あれこれと上げてみました。

忘れているものがいくつもありそうですが、
それはまたいつか機会があれば、ということで。

長々と続けてしましましたが、
ハヤカワ文庫50年をめぐる思い出話は、以上で終了です。

長らくお付き合いのほど、ありがとうございました。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ★創刊300号への道のり(3) 2010(平成22)年

30
2010(平成22)年3月15号(No.30)-100315- 私の読書論-9-私のお薦め本
31
2010(平成22)年3月31号(No.31)-100331-
H・G・ウェルズ『タイムマシン』―暗い未来
32
2010(平成22)年4月15号(No.32)-100415- 私の読書論-10-蔵書を並べる効用
33
2010(平成22)年4月30号(No.33)-100430-
ダーウィン『種の起源』―進化理論を確立
34
2010(平成22)年5月15号(No.34)-100515-
私の読書論-11-蔵書を並べ替える効用
35
2010(平成22)年5月31日号(No.35)-100531-
コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』―名探偵の代名詞
36
2010(平成22)年6月15号(No.36)-100615-私の読書論-12-電子書籍と紙の本
37
2010(平成22)年6月30号(No.37)-100630-アラン『幸福論』―幸せとは何か
38
2010(平成22)年7月15号(No.38)-100715-
私の読書論-13-なぜ古典が読めるようになったのか
39
2010(平成22)年7月31号(No.39)-100731-
[私の読書論-14-]夏特・最初に“つまづかない”読書のすすめ方
40
2010(平成22)年8月15日号(No.40)-100815-
夏特・夏の文庫100冊から『ジーキル博士とハイド氏』
41
2010(平成22)年8月31号(No.41)-100831-
モーリス・ルブラン『813』―怪盗アルセーヌ・ルパン
42
2010(平成22)年9月15日号(No.42)-100915-
私の読書論-15-小著の薦め―成功する初心者読書法
[7月31号(No.39)-100731-夏特・最初に“つまづかない”読書のすすめ方]続き
43
2010(平成22)年9月30号(No.43)-100930-
幸田露伴『努力論』―“努力”日本人の好きな言葉
44
2010(平成22)年10月15日号(No.44)-101015-
私の読書論-16-大著の薦め―長編挫折克服法
45
2010(平成22)年10月31日号(No.45)-101031-幸田露伴『五重塔』―職人魂
46
2010(平成22)年11月15日号(No.46)-101115-
私の読書論-17-なぜ本を読むのか?
47
2010(平成22)年11月30日号(No.47)-101130-
文学初心者入門書―文庫版“ちくま文学の森”から
48
2010(平成22)年12月15日号(No.48)-101215-
来年50号以降のリニューアルについて
49
2010(平成22)年12月31日号(No.49)-101231-
大人への階段「たけくらべ」樋口一葉

 ・・・

2009年に引き続き、月末の「古典紹介」編では、
主に海外と国内の<明治期>の作品を交互に紹介しました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論147-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(10) ハヤカワ文庫の50冊(8)最終回/拾遺・蔵書以外の名作傑作・SF編」と題して、
私の読書生活をほぼカバーする「ハヤカワ文庫」創刊以来の50年の刊行作品から、私の思い出の本を紹介する最終回。
今は手元にないけれどかつて持っていた、あるいは図書館等で借りて読んだ本から、印象に残る作品を挙げてみる「拾遺」編のSF版です。

今回は、煩雑になりますので、書名・作家名を羅列するだけに留めました。

ただ、最近読んで印象に残っているブラウンの『天の光はすべて星』の文のみ転載しています。

 

ハヤカワ文庫に限らずですが、私の読書生活50数年の思い出につながるお話が読める本が、創元推理文庫版の『短編ミステリの二百年』という本です。
現在、全6巻中の第5巻まで出ています。

前半がそれぞれの傑作短編集で、後半が、私より四つぐらい年下ながら(かつては海外ミステリ専門誌だった)『ミステリマガジン』(略称「HMM」)の定期購読者として三年ぐらい早かったという編者である小森収さんによる、時代を追ってそれぞれの作家およびその短編作品の評論となっています。

私は1970年の9月号<E・S・ガードナー追悼特大号>からの購読者で、高校二年の夏休みも残り半月ほどの時、本屋さんで見つけたのでした。
それ以来、十年ちょっと定期購読を続けたものでした。
その後、30代になって仕事が忙しくなり、本を置く場所もないこともあり、買うのではなく図書館で借りて暇を見てポツポツ読むようになりました。

そういうわけで70年代のミステリ短編のお話は一番心に来ますね。

このシリーズ、冬には完結するそうで、今年一番の本になりそうです。

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(画像:小森収編『短編ミステリの二百年』1~5巻(創元推理文庫)と『ミステリマガジン』2020年7月ハヤカワ文庫創刊50年特集号)


小森収編『短編ミステリの二百年』1~5巻(創元推理文庫)
2019年10月『短編ミステリの二百年1』

 

2020年3月『短編ミステリの二百年2』

 

2020年8月『短編ミステリの二百年3』

 

2020年12月『短編ミステリの二百年4』

 

2021年6月『短編ミステリの二百年5』

 ・・・

個々のコメント等、詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2021.08.31

新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家-「楽しい読書」第301号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書
-301号【別冊 編集後記】

2021(令和3)年8月31日号(No.301)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2021(令和3)年8月31日号(No.301)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2021から――。

新潮文庫の100冊 2021
https://100satsu.com/

角川文庫 カドフェス2021 | カドブン
https://kadobun.jp/special/kadofes/

集英社文庫 ナツイチ2021
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
(よまにゃチャンネル)
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ 2021テーマ「準古典」+「新顔作家」 ◆
  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)
  「新顔作家」から――集英社文庫
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前号に引き続き、
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から」
の二回目。

2021(令和3)年7月31日号(No.299)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)準古典」

「お茶でっせ」2021.7.31
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)
-「楽しい読書」第299号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/07/post-38536e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/872fb55a4a5a78d989b58cf7878bc188

昨年から読書量が減っていますので、一月ではこなせなくなっています。
前回は、新潮文庫と角川文庫でした。
今回は集英社文庫です。
「新顔作家」の中から行こうと思います。

 

2107223

(画像:新潮文庫の100冊 角川文庫カドフェス 集英社文庫ナツイチ 新潮・角川・集英社三社の夏の文庫フェア・パンフレット)

 

210722

(画像:各パンフレットのそれぞれのページ:走れメロス さぶ 作家の秘められた人生)

 

210722_20210725154701

(画像:それぞれの本の書影:さぶ 作家の秘められた人生 走れメロス(角川文庫版でなく手持ちの文春文庫版))

 

 ●集英社文庫から、ギヨーム・ミュッソ『作家の秘められた人生』

ギヨーム・ミュッソは、フランスのミステリ作家。
それもベストセラー作家だそうです。
2018年に『ブルックリンの少女』で日本初上陸、
2019年の『パリのアパルトマン』に続き、2020年の本書で紹介三作目。

『パリのアパルトマン』は、
昨年の「集英社文庫 ナツイチ2020」に選ばれていました。

それで、ミステリ好きの私としては、
今回この新作を取り上げてみることにしました。

もう一つの理由としては、作家にまつわるお話だということ。

ベストセラー作家の突然の断筆の理由とか、
作家志望の青年が前半の語り手として登場するなかで、
小説を書くうえでの作法であるとか、
作家としての心構え的な話題のやりとりがあり、
私の関心を呼ぶ部分があったことでしょうか。

各章の前に、作家たちの小説作法に関する名言や
人生に関する名言などが引用されています。

なるほどと頷くものもあれば、非常にシニカルなものがあったり、
面白い取り合わせです。

いくつか例を挙げてみれば――

 第1章 作家に求められる第一の資質
 《作家に求められる第一の資質、それは尻の皮が厚いこと。
    ダニー・ラフェリエール》

 第2章 書くことを習得する
 《物書きから見れば、競馬騎手の商売は安定したものだ。
    ジョン・スタインベック》

という皮肉なものや、

 第6章 作家の休暇
 《バカンス中の作家というものは存在しない。作家の人生とは、
  書いているか、そうでなければ、何を書こうか考えているからだ。
    ウジェーヌ・イヨネスコ》

 第11章 夜はかくのごとし
 《「良い小説とは何か?」/
  「読者の愛情と共感を呼び起こすような登場人物を考え出す。
  それから彼らを殺す。それにより読者を傷つけるのだ。
  こうすれば、読者はあなたの小説をいつまでも記憶に留めるだろう」
    ジョン・アーヴィング》

作家としての心構えや
小説作法の真髄のような事柄について書いています。

 

 ●ストーリー

ベストセラー作家フォウルズが突如断筆して、
南仏・地中海の島に隠棲して20年――。

作家志望の青年「ぼく」ラファエルは、島の本屋に店員で住み込み、
一切外部の人とかかわらない生活を続けているフォウルズに
自分の原稿を見てもらおうと出かけていく。

さらに新聞記者マティルドは、ある決意を胸にフォウルズに接近する。

そのとき、浜辺で女性の惨殺死体が見つかり、島は封鎖される──。

マティルドは、ある偶然で手に入れたカメラの画像から、
自分の両親や弟を殺した犯人としてフォウルズに復讐しようとする。

フォウルズの断筆の理由とは、
実は愛する女性を殺されたことに起因すると判明する。

 

 ●作品としては?

真相は、とてもスゴイ内容です。

そして、よく考えられたストーリーです。
ミステリとしては面白いものです。

 

ただ展開としてこれはいいのか、と思うような構成になっています。
この辺はどうなのでしょうか。

面白い内容なので、読んで損はないものです。

とくに、小説を書きたいとか、書いてみようと思う人は、
ぜひ読んでみるべきものです。

しかも一回通して読むだけでなく、
何度も読み返して、構成や展開を確認してみると勉強になるでしょう。

 

 ●小説家志望者に役に立つ助言あれこれ

最後に私が気になった小説家や
小説作法についての名台詞を引用しておきましょう。

p.141
 《「小説というのは感動であって知性ではない。
  しかし感動を生むためには、まず体験をしてなければならない。
  小説の登場人物の感動を具体的に感じてみる必要がある。
  それは主人公から悪役まで、
  きみの作品の登場人物の[全員](原文傍点)に関わる話だ」
  (中略)
  「とにかく、小説を読むときはそれを期待するね、
  [わたしは](原文傍点)」》

p.142
 《「小説家、これはパートタイムの仕事じゃない。
  きみがもし小説家なら、毎日二十四時間ぶっ通しで小説家なんだ。
  けっしてバカンスなど取れない。
  ある考え、ある表現、登場人物の造形を豊かにするような特徴が、
  頭のなかをよぎるのを絶えず警戒し、
  絶えず待ち伏せしていなければならない」》

p.47
 《だれもきみに書くことを[教えられない](原文傍点)。
  それは自分ひとりで習得するものなんだ」》

などなど。

なかなか有効な助言になっているように思います。
改めて、小説家を目指す人は、読むべき一冊でしょう。

 

*集英社文庫 ナツイチ2021 から

『作家の秘められた人生』ギヨーム・ミュッソ/著 吉田 恒雄/訳
集英社文庫 2020/9/18

 

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 ★創刊300号への道のり

2009(平成21)年

13
2009(平成21)年1月号(No.13)-090131-
『失われた世界』英雄的行為としての秘境探検
14
2009(平成21)年2月号(No.14)-090228-
『学問のすゝめ』新時代の国民教科書
15
2009(平成21)年3月号(No.15)-090331-
『地底旅行』ジュール・ヴェルヌ<驚異の旅>
16
2009(平成21)年4月号(No.16)-090430-
私の読書論―その1―読書の三種類
17
2009(平成21)年5月15号(No.17)-090515-
私の読書論―その2―読書の三種類(続)
18
2009(平成21)年5月31日号(No.18)-090531-
『自助論』=『西国立志編』元祖自己啓発書
19
2009(平成21)年6月15日号(No.19)-090615-
私の読書論―その3―読書の三種類(続)
20
2009(平成21)年6月30日号(No.20)-090630-
『怪談』ラフカディオ・ハーン/小泉八雲
21
2009(平成21)年7月15日号(No.21)-090715-
私の読書論―その4―読書の三種類(続)
22
2009(平成21)年7月31日号(No.22)-090731-
『十五少年漂流記』夏の文庫100冊から
23
2009(平成21)年8月15日号(No.23)-090815-
私の読書論―その5―読書のイロハ(1)なぜ読書が必要か
24
2009(平成21)年8月31日号(No.24)-090831-
『武士道』新渡戸稲造・太平洋の橋
25
2009(平成21)年8月15日号(No.25)-090915-
私の読書論―その6―読書のイロハ(2)なぜ読書?
26
2009(平成21)年9月30日号(No.26)-090930-
『白い牙』ジャック・ロンドン―犬と狼と人と

091115号外「ひと月お休みのお詫びと再開へのご挨拶」
27
2009(平成21)年11月30日号(No.27)-091130-
私の読書論-7-<特別編>自分のライブラリーを持とう

28
2009(平成21)年12月15号(No.28)-091215-
私の読書論-8-年齢の数ぐらいのオススメ本を持とう
29
2009(平成21)年12月31号(No.29)-091231-
『代表的日本人』内村鑑三―I for Japan


休まず発行し続けていた印象があったのですが、休んでいましたね。
このころは最初に買ったノートパソコンが故障がちになった頃でした。
8年もったのですが、ダメになりました。

また、二年目から月末だけでなく、月のなかば(15日)に
「私の読書論」を紹介する号を発行することにしました。

古典の名作名著を紹介するだけでなく、
読書習慣のある人を育てたいという気持ちがあり、
従来紹介されてきた読書法や読書術というものでは不十分であり、
間違った部分もあるという不満もあり、
自分なりの方法を紹介したいと思うようになった、というのが理由です。

月末の「古典紹介」編では、
主に海外と国内の<明治期>の作品を交互に紹介しました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家」と題して、前回ふれることができなかった集英社文庫からの一冊を!

今年選んだ私の3冊から前回は、角川文庫『走れメロス』から太宰治「走れメロス」、新潮文庫から山本周五郎『さぶ』を紹介しました。
今回は、集英社文庫ナツイチ2021からギヨーム・ミュッソ『作家の秘められた人生』というフランス・ミステリのベストセラーを。

今回もまたまたまたの大サービスで、全編転載公開しています。

この「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア」シリーズでミステリ、なかでも海外ミステリを取り上げるのは、初めてです。

ミステリといいましても、小説家志望の青年が憧れの小説家を訪問し、小説家としての姿勢や小説作法について対話するというストーリーでもあり、別の意味での読みどころがありました。

「古今東西の古典を中心に読書の面白さを紹介する」という弊誌のテーマからもあまり外れていない作品でした。

 

今年のテーマは、「準古典」と「新顔作家」ということで、「準古典」では、将来古典や名作に昇格しそうな作品を選んでいます。
「新顔作家」については、今後の自分の読者の範囲を拡げることにつながりそうな、自分好みの作家になりそうか、もしくは読んでおくべき作家となりそうな人を探すというものです。

加齢と共に、読書の範囲が狭くなってゆくものです。
好みの作家が亡くなったり、本を出さなくなったり、好みの傾向の作品が手に入りづらくなったりといったことがあります。

例えば、昨今は海外の翻訳物が今は冬の時代となり、今まで出ていたシリーズものの紹介が途切れたり、ある作家の作品が出なくなったりということが起きてきます。

そこで読む本の範囲が狭くなってきたわけで、改めて(自分にとっての)新しい作家を探そうという企画です。

そういう観点からも、まずは面白そうな作品を紹介できたと納得しています。

 ・・・

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2021.08.15

それでもやっぱり本が好き!-「楽しい読書」第300号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書
-300号【別冊 編集後記】

2021(令和3)年8月15日号(No.300)
「創刊300号記念号(放談)それでもやっぱり本が好き!」

 

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(画像:本好き読書好きの人のため、および一人でも多くの人に本好き読書好きになっていただきたいがために2008年1月に創刊した読書メルマガ「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」創刊300号冒頭)

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年8月15日号(No.300)
「創刊300号記念号(放談)それでもやっぱり本が好き!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

数え間違いがなければ、遂に創刊300号到達です。

毎月月末、一冊の古典を紹介するという読書メルマガを
2008年1月31日に創刊しました。

以来、色々あったものの、なんとか300の大台乗せに。

途中から古典の紹介だけでなく、広く読書の楽しみを紹介したいと、
月の半ば15日に、「私の読書論」を発行することにしました。

以後、毎月二本のメルマガを発行し続けて、14年目。

早いもので300号です。

 ・・・

この間変わらずご購読・応援頂きました数十人の読者のみなさまには、
本当に心から感謝、感謝でございます。

新規に加わってくださった方々にも感謝です。

これからもよろしくお願い致します。 

 レフティやすお

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ 創刊300号記念 放談 ◆
  それでもやっぱり本が好き!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●町の本屋さん

 ●町の本屋さんがなくなった理由

 ●町の本屋さんが生き残る道

 ●本屋さんがなくなって困るのは

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ★創刊300号への道のり

2008(平成20)年
1.
2008(平成20)年1月 創刊号(No.1)『論語』―学ぶことは楽しい
2.
2008(平成20)年2月号(No.2)-080229-
大人も楽しい『トム・ソーヤーの冒険』
3.
2008(平成20)年3月号(No.3)-080331-“水”のような生き方『老子』
4.
2008(平成20)年4月号(No.4)-080430-星になった少年『星の王子さま』
5.
2008(平成20)年5月号(No.5)-080531-『三教指帰』空海版青年の主張
6.
2008(平成20)年6月号(No.6)-080630-『宝島』海賊ゴッコの聖典
7.
2008(平成20)年7月号(No.7)-080731-夏特・夏の文庫100冊から
8.
2008(平成20)年8月15日号(No.8)-080815-夏特2・読書感想文を書く
9.
2008(平成20)年8月31日号(No.9)-080831-
『歎異抄』弱きを救う阿弥陀さま
10.
2008(平成20)年9月号(No.10)-080930-
『黄金虫』海賊ゴッコから探偵ゴッコへ
11.
2008(平成20)年12月クリスマス号(No.11)-081206-
『クリスマス・キャロル』善意の季節
--
★ 復活です!★ 勝手ながら筆者の都合で一ヶ月のお休みをいただ
き、誠に申し訳ございませんでした。本日より再出発いたします。
11月号も一週間遅れとなりましたが、予告(『ソクラテスの弁明』)
を変更し、時節柄でもあり、クリスマス号をお送りいたします。
m(_ _)m これからもよろしくお願い致します。(レフティやすお)
--
12.
2008(平成20)年12月号(No.12)-081231-
『ソクラテスの弁明』まとわりつく虻

 

*この年は、夏休みに特別号を出していました。
 
 一年間、毎月出し続けていたつもりだったのですが、
 10月末の発行分を休み、
 11月末分は1週遅れで12月に発行していたのですね。
 一回休んでいたのです。
 号数は「12」になっているので、忘れていました。
 パソコンの不調、7年目で画面のトラブルでしたね、思い出しました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「創刊300号記念号(放談)それでもやっぱり本が好き!」と題して、
300号記念の本にまつわる放談として、本屋について私の思うところを書いています。

今回は、全本文省略です。

本来書こうとしていた内容からかけ離れたものになりました。

本当は、最近は本に関して色々言われることがありますが、私はそれでもやっぱり本が好きです、という文章を書くつもりでした。

でも、コロナ禍以降、巣ごもり需要が増え、本の売り上げも増えているとか。
本の存続に関して否定的でなくなっているようなので、ちょっと書く方向が狂ってしまいました、かな?

私にとっては本は友達で、本屋さんは友達と会える貴重な場なのです。
そういうことを書いてゆこうという気持ちでした。

そういう意味では、本文とあまり外れてはいませんが。
その辺のことをお知りになりたい方は、詳細を本誌でご確認ください。

 ・・・

本文の内容は、本誌で。

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2021.07.31

新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)-「楽しい読書」第299号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書
-299号【別冊 編集後記】

2021(令和3)年7月31日号(No.299)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)準古典」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2021(令和3)年7月31日号(No.299)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)準古典」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2021から――。

新潮文庫の100冊 2021
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角川文庫 カドフェス2021 | カドブン
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集英社文庫 ナツイチ2021
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(画像:新潮文庫の100冊 角川文庫カドフェス 集英社文庫ナツイチ 新潮・角川・集英社三社の夏の文庫フェア・パンフレット)

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 ◆ 2021テーマ「準古典」+「新顔作家」 ◆
  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)
  「準古典」から――新潮文庫『さぶ』、角川文庫『走れメロス』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

昨年から読書量が減っています。
50代から16年続いていた年間100冊超の読書量が
昨年、急減。

一つはコロナ禍に伴う図書館休館があり、
根本的にはやはりコロナ禍によるコロナ不安症といいますか、
精神的に不安定であったという事実があります。

以前から体力的にか精神的にか、読書量が落ちる傾向にありました。
しかし、それでもなんとか100の大台は維持してきたのです。

それが、完全に崩れたのが、昨年3月以降です。
で、それが今年も続いています。

というわけで、今回もかなり苦戦しました。
そこで今回は……。

まあ昨年と似ていますが、今年のテーマとしましては、
「準古典」+「新顔作家」で行こうと思います。

 

 ●準古典作品とは

まず最初は、
過去に一度読んでいる作品を何十年ぶりかに読んでみよう、
という試みです。

候補としましては、
古典というより準古典というべきものを選んでみよう、と思います。

古典はかなり読んできましたから。

 

「準古典」作品について――

私が言う「古典」とは、
 何世代にもわたって読み継がれてきた名作・名著
をいいます。

まずは100年程度読み継がれているものを「古典」と呼びたい
と思います。

昔は「一世代20年」として、
100年で5世代を超えて読み継がれている作品。
今では寿命も伸びていますので、「一世代25年」として、
同じく100年ですが、4世代以上読み継がれている作品、
としておきましょう。

そういう作品に近づける――少なくともその半分の50年ぐらいは
読み継がれている名作・名著を、「準古典」と呼ぶことにします。
単純にいえば、1970年以前といってでしょうか。
(正確に刊行年を調べるというほどではないので、
 その辺は1970年代のものも含むアバウトで行こうと思います。)

 

 ●今年の私の候補作

今回の新潮・角川・集英社3社のパンフレットを
パラパラ見てみますと、
そういう準古典に当たりそうな作品で、
私の興味を惹くものとしてこんな本がありました。

【新潮文庫の100冊 2021】

異邦人(カミュ)/インスマスの影―クトゥルー神話傑作選―
(H・P・ラヴクラフト)/江戸川乱歩名作選(江戸川乱歩)/
金閣寺(三島由紀夫)/新編 銀河鉄道の夜(宮沢賢治)/
蜘蛛の糸・杜子春(芥川龍之介)/黒い雨(井伏鱒二)/
こころ(夏目漱石)/さぶ(山本周五郎)/塩狩峠(三浦綾子)/
シャーロック・ホームズの冒険(コナン・ドイル)/
車輪の下(ヘッセ)/春琴抄(谷崎潤一郎)/砂の女(安部公房)/
沈黙(遠藤周作)/月と六ペンス(サマセット・モーム)/
罪と罰〔上下〕(ドストエフスキー)/人間失格(太宰治)/
ハムレット(ウィリアム・シェイクスピア)/
不思議の国のアリス(ルイス・キャロル)/変身(フランツ・カフカ)/
星の王子さま(サン=テグジュペリ)/妄想銀行(星新一)/
燃えよ剣〔上下〕(司馬遼太郎)/雪国(川端康成)/
檸檬(梶井基次郎)/老人と海(ヘミングウェイ)

【カドフェス】

蜘蛛の糸・地獄変、藪の中・将軍(芥川龍之介)/
D坂の殺人事件(江戸川乱歩)/檸檬(梶井基次郎)/
日本沈没(上下)(小松左京)/不連続殺人事件(坂口安吾)
論語と算盤(渋沢栄一)/走れメロス、人間失格(太宰治)/
時をかける少女(筒井康隆)/文字禍・牛人(中島敦)/
こころ、坊ちゃん(夏目漱石)/気まぐれロボット(星新一)/
葦の浮船(松本清張)/夏子の冒険(三島由紀夫)/
銀河鉄道の夜、宮沢賢治詩集(宮沢賢治)/
ロウソクの科学(ファラデー)

【集英社文庫 ナツイチ2021】

人間失格(太宰治)/坊っちゃん(夏目漱石)/
清兵衛と瓢箪 小僧の神様(志賀直哉)
星の王子さま(サン=テグジュペリ)

 

210722_20210725154701

(画像:それぞれの本の書影:さぶ 作家の秘められた人生 走れメロス(角川文庫版でなく手持ちの文春文庫版))

 

210722

(画像:各パンフレットのそれぞれのページ:走れメロス さぶ 作家の秘められた人生)

 

 ●新潮文庫『さぶ』、角川文庫『走れメロス』

これらのなかから、新潮文庫からは『さぶ』(山本周五郎)を、
角川文庫からは『走れメロス』(太宰治)を読んでみましょう。

『さぶ』は若い頃に一度読んでいます。
何十年ぶりかの再読です。

でもほとんど記憶が残っていませんでした。

冒頭の雨の橋のシーンぐらいですね、記憶にあったのは。

一方『走れメロス』ですが、
こちらは表題作を取り上げようと思います。

この作品は太宰の作品中、若い頃に読んでいた唯一の作品でした。
学校の教科書に掲載されていたのですね。

文章のリズムもいいし、こういうテーマと作品には、
若い頃は特に心打たれるものではないでしょうか。

 

 ●【角川文庫】太宰治「走れメロス」

太宰治という人は私はあまり好きではありません。
人間としての生き方というのでしょうか、
小説家としての作風というのでしょうか、テーマというのでしょうか。
扱っている人物像というのでしょうか。

『人間失格』などは一番嫌いな小説です。

 

若い頃に北杜夫さんの本を読んで、
北さんが、若い頃に“太宰に憑かれて小説を書くようになった”
というような記述を読み、コレは良くないと感じ、
長らく読むのを避けてきました。

50代以降、少しは古典や名作を読んでおくべきだと思い、
読んでみました。やっぱり印象は良くありませんでした。

いくつか読んだなかでは『斜陽』は、
主人公の女性が子を身ごもってなお生きてゆこうというラストが、
希望を感じさせて好感を抱きました。

短編では「ヴィヨンの妻」がよいと思いました。
ラストの

 《「人非人でもいいじゃないの。
   私たちは、生きてさえすればいいのよ」》

という台詞が印象に残って、こういう生きてゆく姿勢、
生き延びる姿勢が私には心強く感じられ、いい印象が残っています。

そんな太宰の作品のなかで異色の作品でもあるのが、
「走れメロス」です。

 ・・・

角川文庫版の言葉を借りますと、

 《妹の婚礼を終えると、メロスはシラクスめざして走りに走った。
  約束の日没までに暴虐の王の下に戻られねば、
  身代りの親友が殺される。
  メロスよ走れ! 命を賭けた友情の美を描く》

そういうお話です。

冒頭の文章です。

 《メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の
  王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。
  (略)けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。》

色々な書き出しの文章を読んできましたが、この文、いいですね。
文章にリズムがあり、読んでいて気持ちいいものがあります。
そして、内容的には、主人公の紹介とお話の方向がはっきり出ています。

感動の一編なのですが、例えばこういうところ。

 

 《「いや、まだ陽は沈まぬ。」メロスは胸の張り裂ける思いで、
  赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。走るより他は無い。
  「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。
  いまはご自分のお命が大事です。
  あの方は、あなたを信じて居りました。
  刑場に引き出されても、平気でいました。
  王様が、さんざんあの方をからかっても、メロスは来ます、
  とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」
 「それだから、走るのだ。信じられているから走るのだ。
  間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。
  私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。
  ついて来い! フィロストラトス。」》

 

 《信じられているから走るのだ。
  間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。
  人の命も問題でないのだ。
  私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。》

「人の信頼に応えるために」走っている、ということなのですが、
《もっと恐ろしく大きいもの》とは、何でしょうか!

 

ラスト――

 《「セリヌンティウス。」メロスは眼に涙を浮べて言った。
  「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。
   私は、途中で一度、悪い夢を見た。
   君が若(も)し私を殴ってくれなかったら、
   私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」
  セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯(うなず)き、
  刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。
  殴ってから優しく微笑(ほほえ)み、
  「メロス、私を殴れ。同じくらい音高く私の頬を殴れ。
   私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと君を疑った。
   生れて、はじめて君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、
   私は君と抱擁できない。」
  メロスは腕に唸(うな)りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。
  「ありがとう、友よ。」二人同時に言い、ひしと抱き合い、
  それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。
  群衆の中からも、歔欷(すすりなき)の声が聞えた。
  暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、
  まじまじと見つめていたが、やがて静かに二人に近づき、
  顔をあからめて、こう言った。
  「おまえらの望みは叶(かな)ったぞ。
   おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
   信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
   どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
   どうか、わしの願いを聞き入れて、
   おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
  どっと群衆の間に、歓声が起った。
  「万歳、王様万歳。」》

 

教科書に載るほどの正当な信実と愛情(友情)の物語で、
それはこのころの太宰の生活の充実が反映しているのではないか、
とされています。

それが私にも好感を持てる作品になっている点なのでしょう。

『人間失格』とか気に入らないと感じた人も
この作品はぜひ読んで頂きたいと思います。

心洗われるといっていいでしょう。

 

【角川文庫】『走れメロス』太宰治 
―表題作他、「富嶽百景」「懶惰の歌留多(らんだのかるた)」
 「八十八夜」「畜犬談(ちくけんだん)」「おしゃれ童子」
 「俗(ぞく)天使」「駈込み訴え」「老(アルト)ハイデルベルヒ」
 「東京八景」、執筆活動の充実ぶりを示す、太宰中期の佳作9篇を収録。

 

*今回は、「角川文庫」の枠で選んでいますが、
 実際のところはこの短編集を手に取っていません。
 まあ、インチキみたいですが。
 作品そのものは読んでいますので、一概にアウトではないと思います。
 (角川さん、ごめんなさい!)

 

 ●【新潮文庫】『さぶ』山本周五郎

これも友情の物語ともいえます。

さぶと栄二、おすえにおのぶといった青年たちの青春群像を描きます。
これも時代物で、こちらは日本の江戸時代の物語です。

出版社の紹介文――

 《戸下町の表具店で働くさぶと栄二。
  男前で器用な栄二と愚鈍だが誠実なさぶは、
  深い友情で結ばれていた。
  ある日、栄二は盗みの罪を着せられる。
  怒りのあまり自暴自棄になり、人足寄場に流れ着く栄二。
  人間すべてに不信感を持つ栄二をさぶは忍耐強く励まし、支える。
  一筋の真実と友情を通じて人間のあるべき姿を描く時代長編。》

得意先の娘たちとも仲が良く、
一人と結婚するのではという噂もたつ栄二。
しかし、彼は得意先の奉公人の娘おすえを嫁にと考えていた。
そんなとき、濡れ衣をきせられ、
怒った栄二は真相を確かめようとするが……。

人足寄場での3年で、いろんな人を見、人生を知る栄二。
一方さぶはひたすら栄二を支える。
そんな二人を見守るおすえと、小料理屋勤めのおのぶ。

さぶと栄二とおのぶの三人は、冒頭の書き出しの段落で登場します。
当時15歳で出会った三人のそれぞれが描かれるエピソード。

「走れメロス」でも書きましたが、この書き出しが
主人公の紹介と物語の行方を暗示しているといえるでしょうか。

 ・・・

タイトルは『さぶ』なのですが、ストーリーそのものは栄二の物語です。
栄二が経験する苦労とそれを克服する日々が描かれ、
その合間にさぶたちが登場します。

栄二を通して世間を人々を、さらにさぶを描く。

人間は一人じゃない、支えてくれる人たちがいる、
という人情を描く物語でもあります。

 《寄場にいるとき、与平にも同じようなことを云われた。
  おまえさんは一人ぼっちじゃあない、
  少なくかぞえてもさぶちゃんやおすえさん、
  おのぶさんという人がいるじゃないか、
  どんな場合にも、人間は一人ぼっちということはないんだよ、
  というような意味のことだ。
  それにしても、世間にたてられ、うやまわれていく者には、
  陰にみなさぶのような人間が付いている、
  というおのぶの言葉は痛かった。》

 

しかし、愚鈍と思われているさぶの誠実さと
その友情(愛情)の底がないかのような深さ、
そこに作者の思いがこめられているのでしょう。

一度は読んで欲しい名作です。

 ・・・

(略)

『さぶ』山本 周五郎 新潮文庫 改版1965/12/28
―葉室麟「山本周五郎と私 人生の問い」、
 奥野政元「解説 受難と再生の物語」を収録。注釈付文字拡大新装版。

 

――次回は、
  「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家」で、
  もう一つの今年のテーマ「新顔作家」から
  集英社文庫のある作品を紹介しましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から」と題して、
今年選んだ私の3冊から角川文庫『走れメロス』から太宰治「走れメロス」、新潮文庫から山本周五郎『さぶ』を紹介。

今回もまたまた大サービスで、全編転載公開しています。

『さぶ』のラストについての私の考察は、ネタばらしにもなりますのでここでは割愛しておきます。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2021.07.15

私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺ミステリ編(2)-楽しい読書298号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書
-298号【別冊 編集後記】

2021(令和3)年7月15日号(No.298)
「私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)
ハヤカワ文庫の50冊(7)拾遺・蔵書以外の名作傑作・
ミステリ編(2)サスペンス他」

 

300号☆彡
 ☆彡
☆彡

弊誌もいよいよ300号に近づいています。

このままで行けば、8月15日(終戦記念日になりますね)に到達です。

記念に何かを考えてみようと思います。

「こんなことをやってみたら」というリクエスト、
もしくはご提案がございましたらお寄せください。

レフティやすお

 ・・・

もう一つお知らせ
といいますか、
報告し忘れていたことを。

以前、杖突き生活中と報告したかと思います。

6月にようやく、また自分の足だけで歩けるようになりました。
約一か月の杖突き生活でした。
(百円ショップの150円商品でしたが、非常に役に立ってくれました。)

ご心配をお掛けしました。
まだまだ回復途上ではありますが、
ご報告まで。

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年7月15日号(No.298)
「私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)
ハヤカワ文庫の50冊(7)拾遺・蔵書以外の名作傑作・
ミステリ編(2)サスペンス他」
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 1970(昭和45)年に創刊された早川書房の文庫「ハヤカワ文庫」が
昨年、50周年を迎え、
 15歳からの私の読書生活52年のほぼ全てをカバーしている
 「ハヤカワ文庫」のうち、現在私の手元にある本の中から、
 お気に入りや、心に残る本を紹介してきました。

 今回も、おまけ編として
 買って読んだけれど、あるいは図書館等で借りて読んだけれど、
 自分の本として残さなかった本の中から、
 これは機会があれば、読んでいただきたいと思う本――
 名作・傑作を紹介してみましょう。

 

 前回までのおさらい――

【1】2020(令和2)年9月15日号(No.278)
「私の読書論135-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(1)」
2020.9.15
私の読書論135-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(1)
-楽しい読書278号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/09/post-93a384.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3df333247f5640e098891d55ddaaccd5
【最初の6冊】
1.SF『征服王コナン』2.NV『ローズマリーの赤ちゃん』
3.NV『女王陛下のユリシーズ号』4.HM『重賞』5.HM『死の接吻』
6.FT『夢の10セント銀貨』

【2】2020(令和2)年10月15日号(No.280)
「私の読書論136-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(2)」
2020.10.15
私の読書論136-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(2)
私のお気に入り7-楽しい読書280号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/10/post-0f243e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/56a232216e800eaf561dd1f4904b2cce
【私のお気に入り7】
(1)ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』
(2)ゼナ・ヘンダースン『果しなき旅路』
(3)ロバート・F・ヤング『ジョナサンと宇宙クジラ』
(4)ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』
(5)シャーリイ・ジャクスン
『野蛮人との生活―スラップスティック式育児法』
(6)クレイグ・ライス『スイート・ホーム殺人事件』
(7)ルイス・ギルバート『フレンズ―ポールとミシェル』

【3】2020(令和2)年11月15日号(No.282)
「私の読書論137-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(3)
【私のお気に入り7】に続くもの ハヤカワ文庫の50冊(1)」
2020.11.15
私の読書論137-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(3)
ハヤカワ文庫の50冊(1)-楽しい読書282号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-3a6f3e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/85364a4c9cf932ced296000daefccee2
◎準【私のお気に入り7】――続編および同一作家の他の名作・佳作
(8)『夢の10セント銀貨』(9)『血は異ならず』(10)『時をとめた少女』
(11)『山荘綺談』(12)『続・フレンズ―ポールとミシェル』
それ以下(忘れ物)
(13)『フレームシフト』(14)『ヴァーチャル・ガール』
(15)『たったひとつの冴えたやりかた』(16)『魔界の紋章』
(17)『異次元を覗く家』(18)『夏への扉』(19)『アルジャーノンに花束を』
(20)『わたしを離さないで』

【4】2020(令和2)年12月15日号(No.284)
「私の読書論138-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(4)
ハヤカワ文庫の50冊(2)SF系の拾遺」
2020.12.15
私の読書論138-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(4)
ハヤカワ文庫の50冊(2)SF系の拾遺-楽しい読書284号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/12/post-6dcf8b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d5d58cdf2b456f12649ebad3b8f8c3d5
SF系の拾遺――シリーズもの三つ
▼C・L・ムーア +(イラスト)松本零士
<ノースウェスト・スミス>シリーズ
(21)『大宇宙の魔女』(22)『異次元の女王』『暗黒界の妖精』
<処女戦士ジレル>シリーズ
(24)『暗黒神のくちづけ―処女戦士ジレル』
▼ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン
  +(イラスト)天野嘉孝(あまの よしたか)
<ホーカ>シリーズ (25)『地球人のお荷物』
(26)『くたばれスネイクス』(27)『がんばれチャーリー』
▼火浦功<みのりちゃん>シリーズ +(イラスト)いしかわ じゅん
(28)『日曜日には宇宙人とお茶を』(29)『大冒険はおべんと持って』
「文庫JA」(30)『S-Fマガジン・セレクション1981』
(31)『美亜へ贈る真珠〔新版〕』
「文庫NV」(33)『時の地図 上・下』

【5】
2021(令和3)年2月15日号(No.288)
「私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)
ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々」
2021.2.15
私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)
ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々-楽しい読書288号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/02/post-5af022.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/bd2863095641ce166963a6aabc7405c8
「文庫NV」――冒険小説 (34)『ナヴァロンの要塞』
セシル・スコット・フォレスター〈海の男ホーンブロワー〉シリーズ
(35)『スペイン要塞を撃滅せよ』
ホラー:アンソロジー (36)『闇の展覧会〔1〕〔2〕』
ホラー:マシスン (37)『地球最後の男』
ホラー・幻想など (38)『地図にない町 ディック幻想短篇集』
サスペンス (39)『堕ちる天使』(40)『GATACA(上)(下)』

【6】
2021(令和3)年3月15日号(No.290)
「私の読書論142-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(6)
ハヤカワ文庫の50冊(4)ミステリ文庫」
2021.3.15
私の読書論142-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(6)ハヤカワ文庫の50冊(4)-楽しい読書290号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/03/post-0574cb.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/5fb379dedfe0c35721ff8cc2b4dbabd4
ミステリ文庫
(41)『アデスタを吹く冷たい風』トマス・フラナガン
(42)『ミステリマガジン700 海外篇
─創刊700号記念アンソロジー』杉江松恋/編
(43)『密室大集合』アメリカ探偵作家クラブ傑作選7
エドワード・D・ホック/編
(44)『ボトムズ』ジョー・R・ランズデール
(45)『ダークライン』
(46)『沈黙のセールスマン』マイクル・Z・リューイン
(47)『謎のクィン氏』アガサ・クリスティー
(48)『クレアが死んでいる』エド・マクベイン
(49)『その雪と血を』ジョー・ネスボ
<左利きミステリ>から――
(50)『カリフォルニア・ガール』T・ジェファーソン・パーカー
アガサ・クリスティー<クリスティー文庫>
(51)『ビッグ4』(52)『オリエント急行の殺人』(53)『死人の鏡』
(54)『ゼロ時間へ』

【7】
2021(令和3)年4月15日号(No.292)
「私の読書論143-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(7)
ハヤカワ文庫の50冊(5) ノンフィクションその他」
2021.4.15
私の読書論143-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(7)ハヤカワ文庫の50冊(5)NF他-楽しい読書292号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/04/post-cde3df.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7a3190d6f5084d5747d6d068bbe27bee
文庫NF
(55)『失われた私』フローラ・リータ・シュライバー
(56)『24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 下』ダニエル・キイス
文庫JA
(57)『SF英雄群像』野田昌宏
(58)『ニュートンとアインシュタイン』石原 藤夫
(59)『SFロボット学入門』石原 藤夫
ブックガイド類
(60)『ミステリ・ハンドブック』早川書房編集部編
ハヤカワ・ミステリ文庫
(61)『冒険・スパイ小説ハンドブック』早川書房編集部/編
ハヤカワ文庫NV
(62)『アガサ・クリスティー百科事典』数藤 康雄/編 ハヤカワ文庫
―クリスティー文庫

【8】
2021(令和3)年6月15日号(No.296)
「私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺・蔵書以外の名作傑作・ミステリ編」
2021.6.15
私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺ミステリ編-楽しい読書296号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/06/post-04b31f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a9e30ce5eb0f87cf109b659f937f17e3
◆エラリイ・クイーン(+1)『災厄の町〔新訳版〕』
(+2)『九尾の猫〔新訳版〕』(+3)『犯罪カレンダー 1月~6月』
◆ジョン・ディクスン・カー(+4)『火刑法廷〔新訳版〕』
(+5)『三つの棺〔新訳版〕』(+6)『ユダの窓』
◆アガサ・クリスティー(+7)『そして誰もいなくなった』
(+8)『ABC殺人事件』(+9)『カーテン』
・本格ミステリ短編集(+10)『九マイルは遠すぎる』
(+11)『ママは何でも知っている』
・本格ミステリ長編(+12)『切断』(+13)『見えないグリーン』
(+14)『ホッグ連続殺人』
◆ピーター・ラヴゼイ(+15)『偽のデュー警部』(+16)『苦い林檎酒』
<ダイヤモンド警視シリーズ>(+17)『最後の刑事』(+18)『単独捜査』
(+19)『バースへの帰還』(+20)『猟犬クラブ』(+21)『最期の声』

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  ◆ 「お子ちゃま」読者時代からのお友達 ◆

  私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)

   ―― ハヤカワ文庫の50冊(7)拾遺・
蔵書以外の名作傑作・ミステリ編(2)サスペンス他 ――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「前回までのおさらい」で紹介しました62点の作品以外の本を対象に、
お話を進めていく、拾遺の第二回目は、
 ミステリ編(2)サスペンス他
です。

今回も思い出すままに取り留めなく紹介していきます。

最近読んだものもありますが、
大半は昔の記憶で書いていますので、
誤り等ございましてもご容赦ください。

今回は、好きなミステリから、サスペンスもの、ハードボイルド、
警察小説、冒険小説などの作品を挙げていきましょう。

 

 

 ●好きなミステリ作家から
――サスペンス、ハードボイルド、警察小説、短編集

戦後紹介された海外作家および作品のなかで、
江戸川乱歩によって一番の名作とされたのが、

(+22)『幻の女〔新訳版〕』ウィリアム・アイリッシュ 黒原 敏行/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2015/12/18
―タイムリミットを設定されたサスペンスもの。原書1942年

 

児童書『チョコレート工場の秘密?』でも有名な<異色作家>?の

(+23)『あなたに似た人〔新訳版〕 I』ロアルド・ダール
田口 俊樹/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2013/5/10
―「異色作家短篇集」系の「奇妙な味」系の短編集第1分冊。原書1953年
I

 

『〔新訳版〕 II』
―《従来日本では単行本未収録だった短篇二作を加えた新訳決定版》

 

長編ミステリも書いていますが、
短編で衝撃的なデビューをはたした作家である、

(+24)『特別料理』スタンリイ・エリン 田中 融二/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2015/5/8
―<異色作家短篇集>の一冊として有名な傑作短編集の文庫化。
 表題作以下「クリスマス・イヴの凶事」「パーティーの夜」
 「決断の時」等、名作揃いの10編。
201558-517zgkhijl

 

以前、年間ベストのフィクション編に選んだことのある
『泥棒はスプーンを数える』(集英社文庫)の、
私の好きな<泥棒探偵バーニイ・ローデンバー>シリーズでも知られる、

 

(+25)『八百万の死にざま』ローレンス・ブロック 田口 俊樹/訳
―タイトル通り様々な死に様を描きつつ読ませる、アル中探偵マット・
 スカダー・シリーズのハードボイルド・ミステリの代表作。原書1983

 

 

その他の作家で、「50冊」の中に選んだ、
<心優しい私立探偵アルバート・サムスン>シリーズの作家、
マイクル・Z・リューインの別のシリーズ作品を紹介しましょう。

◆マイクル・Z・リューイン
(+26)『夜勤刑事』浜野 サトル ハヤカワ・ミステリ文庫 1995/2/1
―<私立探偵アルバート・サムスン>シリーズからスピンオフした、
 都会の夜を守るインディアナポリス市警の辣腕の夜勤刑事リーロイ・
 パウダー登場の警察小説。1976
199521-51satzhpy4l

 

(+27)『刑事の誇り』田口 俊樹/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1995/7/1
―夜勤刑事から“失踪人課”に移動した、偏屈な<リーロイ・パウダー
 警部補>シリーズ2作目。傑作警察捜査小説。1982
199571-hm-165751tliyvcw8l

 

(+28)『男たちの絆』田口 俊樹/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1996/5/1
―父親が消えたと失踪人課に訴えてきた十二歳の少年の事件を追う
 <パウダー警部補>シリーズ第3作。1986
199651-51vdah6nsil

 

この作家は、ミステリ的な工夫もいいですが、
サムスン・シリーズもパウダー警視補のシリーズも、
人間的な優しさのようなものを感じさせて、好きですね。
一度は読んで欲しい作家です。

 

 

 ●冒険小説から――

つぎに、<50冊>に取り上げなかった作家の作品を挙げてゆきましょう。

『鷲は舞い降りた』(ハヤカワ文庫NV 続篇『鷲は飛び立った』)
で有名なジャック・ヒギンズの作品では、
私は宗教がらみのものが好きです。ともに感動の名作だと思います。

◆ジャック・ヒギンズ
(+29)『脱出航路』佐和 誠/訳 ハヤカワ文庫 NV 1982/5/1
―第二次大戦末期、南米から故国ドイツへ向かう帆船を嵐が襲う……。
Nv-283

 

(+30)『死にゆく者への祈り』井坂 清/訳 ハヤカワ文庫 NV266 1982/2/1
―アイルランド独立運動とIRAにまつわるお話。
198221-nv-266-61tjx37pixl

 

『深夜プラス1』 (ハヤカワ文庫NV)で有名なギャビン・ライアルの
航空ものが好きです。

◆ギャビン・ライアル
(+31)『本番台本』菊池 光/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1977/6/1

(+32)『もっとも危険なゲーム』菊池 光/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
1994/1/1

 

(+33)『ちがった空』松谷 健二/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/10/1

記憶が薄れているので、一つもしくは二つを絞れませんでした。

古くは、サン=テグジュペリ(『夜間飛行』『人間の土地』『戦う操縦士』
『星の王子さま』)や
リンドバーグ(ノンフィクション『翼よ、あれがパリの灯だ』)、
『カモメのジョナサン』で有名なリチャード・バック(『イリュージョン』
『二匹は人気作家―フェレット物語』)、
ミステリ作家では、『あなたに似た人』『キス・キス』で知られる、
あるいは『チョコレート工場の秘密』のロアルド・ダール
(『飛行士たちの話』)、ディック・フランシスもそうです。

飛行士作家の作品も含めて、飛行機もの航空ものが好きです。
小学生の時に、初の国産旅客機YS-11が登場し、
子供心にパイロットになりたい、と思ったものでした。

 ・・・

次回は、SF編を。

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本誌では、「私の読書論146-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(9)ハヤカワ文庫の50冊(7)拾遺・蔵書以外の名作傑作・ミステリ編(2)サスペンス他」と題して、
私の読書人生の大半を占めているハヤカワ文庫と歩んだ半世紀の思い出の本を、読んだけれど今は手元にない本から選んで紹介する拾遺編から、「ミステリ編」をの二回目を紹介。

今回もまたまた大サービスで、全編転載公開しています。

現在手元に残してある/残っている本とは、また違った意味で心に残る本たちです。

 ・・・

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2021.06.30

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(11)漢代(3)司馬相如-楽しい読書297号

 ―第295号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★ 2021(令和3)年6月30日号(No.297)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(11)漢代(3)司馬相如」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年6月30日号(No.297)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(11)漢代(3)司馬相如」
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 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」の10回目。

今回も引き続き、漢代の英傑たちの作品から紹介します。

 今回は漢代の英傑、二大文化人の一人・司馬相如の作品から。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 楚調の歌 ◆
 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(11)漢代(3)
  漢代の英傑たち
  ~ 司馬相如 琴歌二首 ~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社
「三、楚調の歌――漢代の英傑たち」より

 

(画像:書影(タイトル部分)『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』(江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20))

 ●漢の武帝全盛時代の二大文化人の一人・司馬相如

(略)

 ●司馬相如「琴歌二首」

「琴歌 二首」

  其一 鳳兮鳳兮  其(そ)の一(いち) 鳳兮(ほうや)鳳兮(ほうや)

 鳳兮鳳兮帰故郷  鳳(ほう)や 鳳(ほう)や
           故郷(こきょう)に帰(かえ)る
 遨遊四海求其鳳  四海(しかい)に遨遊(ごうゆう)して
           其(そ)の鳳(ほう)を求(もと)む
 時未通遇無所将  時(とき) 未(いま)だ通遇(つうぐう)せず
           将(ひき)ゐる所(ところ)無(な)し
 何悟今夕升斯堂  何(なん)ぞ悟(さと)らん 今夕(こんせき)
           斯(こ)の堂(どう)に升(のぼ)り
 有艶淑女在此房  艶(えん)たる淑女(しゅくじょ)有(あ)り
           此(こ)の房(ぼう)に在(あ)らんとは
 室邇人遐毒我腸  室(しつ)邇(ちか)く 人(ひと)遐(ちか)く 
           我(わ)が腸(はらわた)を毒(どく)す
 何縁交頸為鴛鴦  何(なに)に縁(よ)つて 頸(くび)を交(まじ)へて
           鴛鴦(えんおう)と為(な)らんや 

冒頭の三句では、「伴侶がいなくて困っている」と自分の現状を述べ、
後ろの四句では、「伴侶となる人が見つかった」と喜びを述べます。

 私は鳳(おおとり)だ、鳳だぞ。今こそ故郷に帰ってきたのだ。
 今まで広い世の中、
 四方八方をさまよい歩いて伴侶となる雌の鳳を探し求めていたが、
 まだ出会いの時に達せず、連れて来る相手はいなかった。

 思いもよらないことに、今夜この広間に入ったところ、
 うるわしい乙女が部屋におられたのだ。
 二人の距離は近いのに、あなたの存在は遙かに遠く、
 私の胸を焦がし、痛めつける。
 私はどうやってあなたと親しくなり、
 鴛鴦(おしどり)のような仲のよい夫婦になれるのでしょうか。

「鳳凰」は、想像上のおめでたい鳥のことで、「鳳」は雄、「凰」は雌。

 

  其二 皇兮皇兮   其(そ)の二(に) 皇兮(おうや)皇兮(おうや)

 皇兮皇兮従我棲  皇(おう)や 皇(おう)や
           我(われ)に従(したが)って棲()すまん
 得託孳尾永為妃  孳尾(じび)を託(たく)するを得(え)て
           永(なが)く妃(ひ)と為(な)らん
 交情通体心和諧  情(じょう)を交(まじ)へ 体(たい)を通じて
           心(こころ)和諧(わかい)せん
 中夜相従知者誰  中夜(ちゅうや) 相(あ)い従(したが)はん
           知(し)る者(もの)は誰(た)ぞ
 双興倶起翻高飛  双(なら)び興(お)き 倶(とも)に起(た)ちて
           翻(ひるがへ)って高(たか)く飛(と)ばん
 無感我心使予悲  我(わ)が心(こころ)に感(かん)ずる無(な)くんば
           予(われ)をして悲(かな)しましむ

前半三句が直接の愛情告白で、
後半三句は「じゃあどうするか」という具体的な提案です。

 凰よ、凰よ、あなたもおおとりだ。
 私について来て、一緒に暮らそうよ。
 あなたに育児やお産を頼むことができて、
 いつまでも女房どのになって頂くことができたらなあ。
 仲よく共に暮らせば、二人とも心が安らぎ、くつろぐだろう。
 さっそく今日、真夜中に連れ立って行こうよ。
 それに気づく者はだれか、誰も気づきはしないさ。
 夜中に共に目覚め、一緒に出かけて、
 さあ、ひらりと舞い上がって高く飛んで行こう。
 この気持ちに応じてくれないのなら、私を悲しませることになるよ。

「皇」は「凰」と同じで、雌のおおとり。
「孳尾」は、子供をたくさん産んで育てること。

(略)

 ●「白頭吟」伝・卓文君

白頭吟  白頭吟(はくとうぎん) 伝 卓文君(たくぶんくん)

 皚如山上雪  皚(がい)たること
         山上(さんじょう)の雪(ゆき)の如(ごと)く
 皎若雲間月  皎(きょう)たること
         雲間(うんかん)の月(つき)の若(ごと)し
 聞君有両意  聞(き)く 君(きみ) 両意(りょうい)有(あ)りと
 故来相決絶  故(ことさら)に来(きた)りて相(あひ)決絶(けつぜつ)す

 今日斗酒会  今日(こんにち) 斗酒(としゅ)の会(かい)
 明旦溝水頭  明旦(めいたん) 溝水(こうすい)の頭(ほとり)
 躞蹀()御溝上  御溝(ぎょこう)の上に躞蹀(しょうちょう)すれば
 溝水東西流  溝水(こうすい) 東西(とうざい)に流(なが)る

 淒淒復淒淒  淒淒(せいせい) 復(ま)た淒淒(せいせい)
 嫁娶不須啼  嫁娶(かしゅ)に啼(な)くを須(もち)ひず
 願得一心人  願(ねが)はくは一心(いっしん)の人(ひと)を得(え)て
 白頭不相離  白頭(はくとう)まで相(あひ)離(はな)れざらん

 竹竿何嫋嫋  竹竿(ちくかん) 何(なん)ぞ嫋嫋(じょうじょう)たる
 魚尾何簁簁()  魚尾(ぎょび) 何(なん)ぞ簁簁(しし)たる
 男兒重意気  男兒(だんじ) 意気(いき)を重(おも)んず
 何用銭刀為  何(なん)ぞ銭刀(せんとう)を用(もち)ふるを為(な)さん

 

四句ごとの段落で、
第一段は「自分は強い決意をもってここにきた」とはっきり伝えます。

 私の潔白なこと、あの山の頂の雪のように真っ白です。
 私の心が澄み切っていること、雲間から射す月の光のようです。
 最近聞いたところでは、あなたは浮気心を起こされたそうですね。
 そこで私は思いきって、お別れしに参りました。
 
「両意」は、二つの心、私と別の女性、その両方を愛する心、浮気心。

第二段は、別れの面会の場面で、
お酒を飲みながら話し合い、外を散歩した。

 今日ここで別れの杯を交わし、
 明日の朝、お堀の側でお別れしましょう。
 お堀の側をとぼとぼと歩いておりますと、
 その水は東と西に分かれて流れて行きます。

第三段は、自分の心を、未練があるようにほのめかす。

 私は寒さが身にしみます。
 いま私たちが二人で歩いているのが
 嫁入りや嫁迎えにかかわることならば、
 私は泣いたりする必要はないのですが。
 それにつけても誠実なお方を伴侶にして、
 白髪になるまでご一緒したいものです。

最後の第四段は、相如に対するからかいと戒めです。

 竹の釣竿は魚に引っ張られて、
 まあなんとしなしなとしなっていることでしょう。
 釣り上げられた魚の尻尾は、
 なんとまあびくびくと跳びはねていることでしょう。
 男性というものは心と心の通い合いこそを重んじるものでしょう。
 どうしてお金なんかを使って事を有利に運ぼうとするのですか。

 

ここでは『詩経』の影響が見られるといいます。
『詩経』で、魚を釣るといえば、男性が女性の愛情を求めるたとえで、
それを利用して「あなたはその魚に振り回されてしなっている」と
滑稽味のある表現です。

最後に、「金を積んで女性を引きようせようなんて、
あなたはなさいませんよね」とダメを押し、釘を刺している、
と解説されています。

(略)

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 ● 漢詩の入門書等を読む

★『漢詩入門』一海知義/著 岩波ジュニア新書 1998.6.22

 

▲★『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
―漢詩の歴史をたどるシリーズ全4巻。第1巻は『詩経』から屈原の
 『楚辞』、漢や三国時代を経て東晋の陶淵明まで。
 俳優・声優の江原正士が専門家の宇野直人を相手に、代表的な詩
 を対話形式でわかりやすく読み解く。

 

★『漢詩入門』入谷仙介/著 日中出版 1979/01
―漢詩の有名作をたどりながら、その歴史と構造を解く漢詩入門。

 

 ▲マークは、本文で取り上げた本
 ★マークは、筆者のおすすめ本です。本選びの参考にどうぞ。
 (基本的に、筆者が“偶然”手にしたものを取り上げています。)

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(11)漢代(3)司馬相如」をお届けしています。

今回は、男女の恋歌の紹介です。
詩の部分のみ紹介しています。

それ以外の解説等は本誌をご覧ください。

 ・・・

では、詳細は本誌で!

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2021.06.15

私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺ミステリ編(1)-楽しい読書296号

2021(令和3)年6月15日号(No.296)
「私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺・蔵書以外の名作傑作・
 ミステリ編(1)本格ミステリ」


 


300号☆彡
 ☆彡
☆彡


弊誌もいよいよ300号に近づいています。


このままで行けば、8月15日(終戦記念日になりますね)に到達です。


記念に何かを考えてみようと思います。


「こんなことをやってみたら」というリクエスト、
もしくはご提案がございましたらお寄せください。


レフティやすお


 


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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年6月15日号(No.296)
「私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺・蔵書以外の名作傑作・
 ミステリ編(1)本格ミステリ」
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 1970(昭和45)年に創刊された早川書房の文庫「ハヤカワ文庫」が
昨年、50周年を迎え、
 15歳からの私の読書生活52年のほぼ全てをカバーしている
 「ハヤカワ文庫」のうち、現在私の手元にある本の中から、
 お気に入りや、心に残る本を紹介してきました。


 今回からは、いよいよ最終回シリーズ? で、おまけ編として
 買って読んだけれど、あるいは図書館等で借りて読んだけれど、
 自分の所蔵本として残さなかった本の中から、
 これは機会があれば、読んでいただきたいなあと思う本――
 名作・傑作を紹介してみましょう。


 


 前回までのおさらい――


【1】2020(令和2)年9月15日号(No.278)
「私の読書論135-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(1)」
2020.9.15
私の読書論135-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(1)
-楽しい読書278号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/09/post-93a384.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3df333247f5640e098891d55ddaaccd5
【最初の6冊】
1.SF『征服王コナン』2.NV『ローズマリーの赤ちゃん』
3.NV『女王陛下のユリシーズ号』4.HM『重賞』5.HM『死の接吻』
6.FT『夢の10セント銀貨』


【2】2020(令和2)年10月15日号(No.280)
「私の読書論136-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(2)」
2020.10.15
私の読書論136-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(2)
私のお気に入り7-楽しい読書280号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/10/post-0f243e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/56a232216e800eaf561dd1f4904b2cce
【私のお気に入り7】
(1)ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』
(2)ゼナ・ヘンダースン『果しなき旅路』
(3)ロバート・F・ヤング『ジョナサンと宇宙クジラ』
(4)ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』
(5)シャーリイ・ジャクスン
『野蛮人との生活―スラップスティック式育児法』
(6)クレイグ・ライス『スイート・ホーム殺人事件』
(7)ルイス・ギルバート『フレンズ―ポールとミシェル』


【3】2020(令和2)年11月15日号(No.282)
「私の読書論137-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(3)
【私のお気に入り7】に続くもの ハヤカワ文庫の50冊(1)」
2020.11.15
私の読書論137-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(3)
ハヤカワ文庫の50冊(1)-楽しい読書282号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-3a6f3e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/85364a4c9cf932ced296000daefccee2
◎準【私のお気に入り7】――続編および同一作家の他の名作・佳作
(8)『夢の10セント銀貨』(9)『血は異ならず』(10)『時をとめた少女』
(11)『山荘綺談』(12)『続・フレンズ―ポールとミシェル』
それ以下(忘れ物)
(13)『フレームシフト』(14)『ヴァーチャル・ガール』
(15)『たったひとつの冴えたやりかた』(16)『魔界の紋章』
(17)『異次元を覗く家』(18)『夏への扉』(19)『アルジャーノンに花束を』
(20)『わたしを離さないで』


【4】2020(令和2)年12月15日号(No.284)
「私の読書論138-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(4)
ハヤカワ文庫の50冊(2)SF系の拾遺」
2020.12.15
私の読書論138-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(4)
ハヤカワ文庫の50冊(2)SF系の拾遺-楽しい読書284号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/12/post-6dcf8b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d5d58cdf2b456f12649ebad3b8f8c3d5
SF系の拾遺――シリーズもの三つ
▼C・L・ムーア +(イラスト)松本零士
<ノースウェスト・スミス>シリーズ
(21)『大宇宙の魔女』(22)『異次元の女王』『暗黒界の妖精』
<処女戦士ジレル>シリーズ
(24)『暗黒神のくちづけ―処女戦士ジレル』
▼ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン
  +(イラスト)天野嘉孝(あまの よしたか)
<ホーカ>シリーズ (25)『地球人のお荷物』
(26)『くたばれスネイクス』(27)『がんばれチャーリー』
▼火浦功<みのりちゃん>シリーズ +(イラスト)いしかわ じゅん
(28)『日曜日には宇宙人とお茶を』(29)『大冒険はおべんと持って』
「文庫JA」(30)『S-Fマガジン・セレクション1981』
(31)『美亜へ贈る真珠〔新版〕』
「文庫NV」(33)『時の地図 上・下』


【5】
2021(令和3)年2月15日号(No.288)
「私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)
ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々」
2021.2.15
私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)
ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々-楽しい読書288号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/02/post-5af022.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/bd2863095641ce166963a6aabc7405c8
「文庫NV」――冒険小説 (34)『ナヴァロンの要塞』
セシル・スコット・フォレスター〈海の男ホーンブロワー〉シリーズ
(35)『スペイン要塞を撃滅せよ』
ホラー:アンソロジー (36)『闇の展覧会〔1〕〔2〕』
ホラー:マシスン (37)『地球最後の男』
ホラー・幻想など (38)『地図にない町 ディック幻想短篇集』
サスペンス (39)『堕ちる天使』(40)『GATACA(上)(下)』


【6】
2021(令和3)年3月15日号(No.290)
「私の読書論142-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(6)
ハヤカワ文庫の50冊(4)ミステリ文庫」
2021.3.15
私の読書論142-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(6)
ハヤカワ文庫の50冊(4)-楽しい読書290号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/03/post-0574cb.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/5fb379dedfe0c35721ff8cc2b4dbabd4
ミステリ文庫
(41)『アデスタを吹く冷たい風』トマス・フラナガン
(42)『ミステリマガジン700 海外篇
─創刊700号記念アンソロジー』杉江松恋/編
(43)『密室大集合』アメリカ探偵作家クラブ傑作選7
エドワード・D・ホック/編
(44)『ボトムズ』ジョー・R・ランズデール
(45)『ダークライン』
(46)『沈黙のセールスマン』マイクル・Z・リューイン
(47)『謎のクィン氏』アガサ・クリスティー
(48)『クレアが死んでいる』エド・マクベイン
(49)『その雪と血を』ジョー・ネスボ
<左利きミステリ>から――
(50)『カリフォルニア・ガール』T・ジェファーソン・パーカー
アガサ・クリスティー<クリスティー文庫>
(51)『ビッグ4』(52)『オリエント急行の殺人』(53)『死人の鏡』
(54)『ゼロ時間へ』


【7】
2021(令和3)年4月15日号(No.292)
「私の読書論143-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(7)
ハヤカワ文庫の50冊(5) ノンフィクションその他」
2021.4.15
私の読書論143-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(7)
ハヤカワ文庫の50冊(5)NF他-楽しい読書292号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/04/post-cde3df.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7a3190d6f5084d5747d6d068bbe27bee
文庫NF
(55)『失われた私』フローラ・リータ・シュライバー
(56)『24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 下』ダニエル・キイス
文庫JA
(57)『SF英雄群像』野田昌宏
(58)『ニュートンとアインシュタイン』石原 藤夫
(59)『SFロボット学入門』石原 藤夫
ブックガイド類
(60)『ミステリ・ハンドブック』早川書房編集部編
ハヤカワ・ミステリ文庫
(61)『冒険・スパイ小説ハンドブック』早川書房編集部/編
ハヤカワ文庫NV
(62)『アガサ・クリスティー百科事典』数藤 康雄/編 ハヤカワ文庫
―クリスティー文庫


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ◆ 「お子ちゃま」読者時代からのお友達 ◆
  私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8)
   ―― ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺・
蔵書以外の名作傑作・ミステリ編(1)本格ミステリ ――
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「前回までのおさらい」で紹介しました62点の作品以外の本を対象に、
お話を進めていこうと思います。


思い出すままに取り留めなく紹介していきます。


最近読んだものもありますが、
大半は昔の記憶で書いていますので、
誤り等ございましてもご容赦ください。


まずは、好きなミステリから、本格ミステリ、本格謎解きもの
の作品を挙げていきましょう。


 


 ●好きなミステリ作家から――黄金時代の巨匠


私の好きな作家としては、海外ミステリでは、
イギリスのクリスティー、ディック・フランシス、
アメリカのエド・マクベイン、マイクル・Z・リューイン、
ローレンス・ブロックなど。
これらの初期作品などは、みなポケミス。


よく読んでいる作家としては、海外では、
ホームズやチャレンジャー教授他のドイル、ルパンのルブラン、
クイーンやカーなどの本格ミステリの初期作品は他社文庫。
チェスタトンはみな創元でしたね。


 


まずは本格ミステリ黄金時代の巨匠から――
クイーンやカーの中・後期以降の作品などは、
ミステリ文庫で最近読みました。


 


論理派の巨匠として知られるクイーン――


◆エラリイ・クイーン
(+1)『災厄の町〔新訳版〕』越前 敏弥/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2014/12/5
―日本でも映画化されたライツヴィルもの、クイーン中期の名作。


 


(+2)『九尾の猫〔新訳版〕』越前 敏弥/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2015/8/21
―ニューヨークを恐怖に陥れる連続絞殺魔〈猫〉事件、犯人との知恵比べ。


 


(+3)『犯罪カレンダー 1月~6月』宇野 利泰/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2002/8/1
―<左利きミステリ>(4月、6月)を含む、1月から12月までのミステリ
 歳時記短編集の前半6篇。


 


『犯罪カレンダー 7月~12月』宇野 利泰/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2002/8/1


 


クイーンと言えば、『十日間の不思議』も新訳本が出ましたね。
中期以降の最高傑作との呼び声も高い、ライツヴィルものの作品です。


『十日間の不思議〔新訳版〕』越前 敏弥/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2021/2/17


 


密室の巨匠としてのディクスン・カー――


◆ジョン・ディクスン・カー
(+4)『火刑法廷〔新訳版〕』加賀山 卓朗/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2011/8/25
―地下霊廟が登場するなど、カーらしい怪奇ムードに溢れる名作


 


(+5)『三つの棺〔新訳版〕』加賀山 卓朗/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2014/7/10
―有名な密室講義をふくむ、密室殺人ものの名作。


 


(+6)『ユダの窓』砧 一郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1978/3/1
―カーター・ディクスン名義。
 「ユダの窓」は油断の窓といわれる密室ものの名作。


 


アガサ・クリスティーの名作から挙げるとすれば、
<50冊>の中では、<左利きミステリ>関係を紹介しましたので、
それ以外の名作を挙げますと、やはり孤島もののアレと、
ポアロとヘイスティングズのコンビが活躍する作品が好きですね。


◆アガサ・クリスティー
(+7)『そして誰もいなくなった』青木久惠/訳 ハヤカワ文庫
―クリスティー文庫 2010/11/10
―孤島に集められた10人が歌詞に合わせて殺されていく孤島ものの名作。


 


(+8)『ABC殺人事件』堀内 静子/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫
2003/11/11
―ABC順にその地名でその人名の人物が殺される連続殺人もの。


 


(+9)『カーテン』田口 俊樹/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫
2011/10/7
―最初の事件の舞台スタイルズ荘でのポアロ最後の事件。


 


『ABC殺人事件』と『カーテン』は、つい最近再読しました。
やっぱり良いですね。
<ポアロ最後の事件>である後者は、最も油の乗り切っていたといわれる
1930年代にあらかじめ書き残していたと言われる作品です。
初めて読んだときはまだ20代できちんと読み切れていなかったようで、
今回は「名作だな」と感心しました。


 


 ●それ以後の本格ミステリと本格ミステリ短編集


本格ミステリの短編集から――


(+10)『九マイルは遠すぎる』ハリイ・ケメルマン
永井 淳・深町 眞理子/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/7/1
―安楽椅子探偵もののニッキィ・ウェルト教授シリーズ短編集。原書1967
 表題作は1946年に“EQMM”コンテストに発表され処女作特別賞を受賞。
 以降60年代までにポツポツと紹介された作品を集めたもの。
 のちにユダヤの神父を主人公とする長編シリーズを発表。


 


(+11)『ママは何でも知っている』ジェイムズ・ヤッフェ 小尾 芙佐/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2015/6/4
―刑事の息子の語る難事件を見事に解決するママのシリーズ。
 『九マイル―』同様、安楽椅子探偵ものの人気シリーズ短編集。
 のちに長編も発表されました。


 


次は長編――


このミステリのジャンルは本格ミステリで良いのでしょうか。
ずっと昔の記憶で書いていますので、
ちょっとよくわかりませんが。


異色の警察小説家もしれません。
なにしろ史上最低の警部と呼ばれる刑事さんの物語ですから。


(+12)『切断』ジョイス・ポーター 小倉多加志/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/8/1
―最低最悪のスコットランドヤードのドーヴァー警視を主人公とする
 ユーモアミステリ・シリーズの最高傑作。 原書1967


 


ドーヴァー・シリーズは、当初『ドーヴァー1』というように、
ナンバーでしめされていました。
この『ドーヴァー4・切断』から単語の表題がつくになりました。


 


(+13)『見えないグリーン』ジョン・スラデック 真野 明裕/訳
―トイレという密室での殺人他、素人探偵会の事件。
 有栖川有栖の『密室大図鑑』でも紹介されている名作。


SF作家による本格推理もの挑戦で、
名探偵サッカレイ・フィンが登場する2作の長篇『黒い霊気』(74年)
と本書『見えないグリーン』(77年)を残しました。


 


(+14)『ホッグ連続殺人』ウィリアム・L・デアンドリア 真崎 義博/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2005/1/1 
―連続殺人ものの名作。原書1979


記憶は遠いかなたですが、当時評判になったこの作家初期の傑作。


 


 ●70年代以降で一番好きな本格ミステリ作家ピーター・ラヴゼイ


本格ミステリ系では、イギリスの時代物のミステリでデヴューした作家
ピーター・ラヴゼイ。
時代物のデヴュー作『死の競歩』から読んでいる作家ですが、
のちに化けた一人でしょうか。


また、現代もののダイヤモンド警視シリーズがまたよかった。
途中で紹介が途切れてしまったようですが……。


 


◆ピーター・ラヴゼイ
(+15)『偽のデュー警部』中村 保男/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1983/10/26
―1920年代の豪華客船で、名警部デューに間違えられた男の話。


 


(+16)『苦い林檎酒』苦い林檎酒 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 91‐4)) 文庫 – 1987/9/1
ピーター・ラヴゼイ (著), 山本 やよい (翻訳)
―戦争中の疎開先での事件をめぐり、父の無実を晴らそうとする娘。
 “苦い”思い出の事件。


 


<ダイヤモンド警視シリーズ>
(+17)『最後の刑事』山本 やよい/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1996/11/1
―古都バースの頑固な旧式の“最後の刑事”ピーター・ダイヤモンド警視の
 新シリーズ第1作。ダイヤモンド警視が辞職を強いられるというデヴュー。


 


第2作以降も面白く、警備員に再就職した第2作『単独捜査』、
復職する第3作『バースへの帰還』、ミステリ愛好会の事件『猟犬クラブ』、
愛妻が殺される『最期の声』など名作傑作揃いで楽しめました。
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(+18)『単独捜査』山本 やよい/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1999/8/1
―辞職したダイヤモンド、デパートの警備員なるもまた失職。
 日本人の少女をめぐり日本に飛ぶ。第二弾。


 


199981-51o4s6hdgsl


 


(+19)『バースへの帰還』山本 やよい/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
2000/5/1
―かつて逮捕した囚人が逃亡、誘拐事件を起こしその調査を命じられる。
 英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞、シリーズ会心作。


 


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(+20)『猟犬クラブ』山本 やよい/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2001/6/1
―ミステリ愛好会「猟犬クラブ」会員相手の密室殺人事件。
 前作『バースへの帰還』につづき、二年連続でシルヴァー・ダガー賞
 受賞のシリーズ屈指の傑作。


 


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(+21)『最期の声』山本 やよい/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2007/1/1
―愛妻ステファニー殺害現場に急行した警視が独力で挑む衝撃作。


 


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あと何冊か翻訳が出ていたかと思いますが、それは記憶の外か未読。


そして、その後は邦訳はないように思います。


やっぱりダイアモンド警視の奥さんを殺してしまったのは、
ちょっと早まったかなあ、という気がしますが。


こういう背景を読むのが、
シリーズものの楽しみの一つでもあります。
特にこのシリーズは、警視の“人間味”が売りでもあると思いますので。
残念です。


(画像:ピーター・ラヴゼイの<ダイヤモンド警視>シリーズ『最後の刑事』『単独捜査』『バースへの帰還』『猟犬クラブ』『最期の声』書影)


 ・・・


今回はこのへんで。


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本誌では、「私の読書論145-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(8) ハヤカワ文庫の50冊(6)拾遺・蔵書以外の名作傑作・ミステリ編(1)本格ミステリ」と題して、
私の読書人生の大半を占めているハヤカワ文庫と歩んだ半世紀の思い出の本を、読んだけれど今は手元にない本から選んで紹介する拾遺編から、まずは「本格ミステリ編」を紹介。


今回も、全編転載公開しています。


現在手元に残してある/残っている本とは、また違った意味で心に残る本たちです。


 ・・・


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2021.05.31

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝-楽しい読書295号

 ―第295号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★ 2021(令和3)年5月31日号(No.295)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年5月31日号(No.295)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝」
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 「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」の10回目。

今回も引き続き、漢代の英傑たちの作品から紹介します。

 まずは漢の武帝の作品から。

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◆ 楚調の歌 ◆
 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)
  漢代の英傑たち
  ~ 漢の武帝 「秋風辞」 ~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社
「三、楚調の歌――漢代の英傑たち」より

 

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(画像:書影(タイトル部分)『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』(江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20))
Wikipedia

(画像:武帝 (漢)(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』))

 

 ●武帝「秋風辞」

前漢の半ば、紀元前100年前後、
このころから中国の歴史に英雄豪傑が数多く現れ、
色々なエピソードとそれにまつわる詩が登場するといいます。

武帝(紀元前156~前87)の全盛時代、
文化政策の推進で文化人が優遇され、色々な人材が登用されました。

そのうちの二大文化人が、司馬遷と司馬相如でした。

まずはその武帝の詩から。
(『文選(もんぜん)』巻45、『古文真宝』などに収録。)

 

「秋風辞」秋風の辞 高祖武帝

 上行幸河東、祠后土。顧視帝京欣然。中流与群臣飲燕、上歡甚。
 乃自作秋風辞。曰、

 上(しょう) 河東(かとう)に行幸(ぎょうこう)し、
 后土(こうど)を祠(まつ)る。
 帝京(ていけい)を顧視(こし)して欣然(きんぜん)たり。
 中流(ちゅうりゅう)に群臣(ぐんしん)と飲燕(いんえん)し、
 上(しょう) 歓(よろこ)ぶこと甚(はなはだ)し。
 乃(すなわ)ち自(みづか)ら「秋風の辞」を作(つく)る。曰(いわ)く、

 

 秋風起兮白雲飛  秋風(しゅうふう)起(おこ)って
          白雲(はくうん)飛(と)ぶ
 草木黄落兮雁南帰 草木(そうもく)黄落(こうらく)して
          雁(がん)南(みなみ)に帰(かへ)る
 蘭有秀兮菊有芳  蘭(らん)に秀(はな)有(あ)り
          菊(きく)に芳(かんば)しき有(あ)り
 携佳人兮不能忘  佳人(かじん)を携(たづさ)えて
          忘(わす)るる能(あた)はず
 泛楼舡兮済汾河  楼舡(ろうこう)を泛(うか)べて
          汾河(ふんが)を済(わた)り
 橫中流兮揚素波  中流(ちゅうりゅう)に橫(よこたは)つて
          素波(そは)を揚(あ)ぐ
 簫鼓鳴兮發棹歌  簫鼓(しょうこ)鳴(な)つて
          棹歌(とうか)発(はつ)す
 歓楽極兮哀情多  歓楽(かんらく)極(きわ)まつて
          哀情(あいじょう)多(おほ)し
 少壮幾時兮奈老何 少壮(しょうそう)幾時(いくとき)ぞ
          老(お)いを奈何(いかん)せん

 (『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
   「三、楚調の歌――漢代の英傑たち」より )

 

 ●宇野直人さんの解説から

第一段 最初の三句――季節感の描写

 秋風が吹き起こり、白い雲が飛んでいる。
 草や木は黄ばみ落ちて、渡り鳥の雁は南に帰る季節になった。
 蘭は愛らしい花を咲かせ、菊は馥郁たる香りを放っている。

秋の悲しさを歌い、動植物が出てくるところは、
宋玉の影響で、武帝は宋玉を意識していた、

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』宇野直人さんの解説。

第二段 次の四句――今の自分の状況を描写

 今祀ってきた美しい女神のことが忘れられない。
 こうして屋形舟を浮かべて汾河を渡り、
 流れを横切りながら白波をかきたてている。
 舟の上では縦笛や鼓が華やかに鳴り、舟歌が威勢よく湧き起こる。

ああなんという楽しいひとときだろう、
武帝が地の女神を祀ったときのものなので、
「佳人」は女神ととっていい、と宇野直人さん。

 

第三段 最後の二句――そこから触発された感情を描写

 喜びや楽しみが極まり尽きると、
 かえって物悲しい気分が広がって来る。
 私のこの若い元気のよい時はいったいいつまで続くのか。
 しのびよる老年にどう対処したらよいのだろうなあ。

 

従来楚調の歌といえば、屈原の君王から受け入れられぬという、
鬱積した悲憤慷慨が基調にあったものですが、
ここでは、誰にでもあるような人生への歎きになっています。

積極策で漢帝国の版図を広げ、全盛期を築いた帝王といえども
どうしようもないのが、寿命や健康という問題です。
ある意味ではてっぺんを取ったものにしか言えない歎きかもしれません。

 

 ●ネットから

漢武帝:秋風辞 - 漢詩と中国文化 - 東京を描く
https://chinese.hix05.com/Han/han04.butei.html

の作者:壺齋散人(引地博信)さんは、
こんな説をとなえておられます。

 《それにしても、皇帝の歌にしては余りにも人間臭く響くのは、
  この歌を流れている老荘思想のためだと思われる。
  漢は歴代儒教を重んじ老荘思想を排してきたが、
  武帝はこの思想に親和性を感じていた節がある。》

 

また、

秋風の辞 - 沈思翰藻(2017年9月24日) 
http://chugokubungaku.hatenablog.com/entry/2017/09/24/202200

によりますと、
(前言にもありますように、)
 
 《この詩は汾河において祖先をまつる祭祀を行い、
  そこで群臣と宴会を催したときの作とされています。

  当時は漢の国威が最高潮に達したときであり、
  その満ち足りた思いを詠い上げますが、
  さらには迫り来る老いを悲しむものとなっています。
  武帝は晩年に老いて死ぬことを恐れ、
  不老不死の仙術を求めていたと言います。

  この詩における秋風はもの悲しさを感じさせるものであますが、
  以降この秋風のイメージが継承されるようになります。》

  (原文のママ)

 

とあります。

てっぺんに立ったものには、
てっぺんに立ったものなりの悩みというものがあるようです。

人間の欲望の深さというものでしょうか。

 ・・・

では、今回はこのへんで。

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 ● 漢詩の入門書等を読む

★『漢詩入門』一海知義/著 岩波ジュニア新書 1998.6.22

 

▲★『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
―漢詩の歴史をたどるシリーズ全4巻。第1巻は『詩経』から屈原の
 『楚辞』、漢や三国時代を経て東晋の陶淵明まで。
 俳優・声優の江原正士が専門家の宇野直人を相手に、代表的な詩
 を対話形式でわかりやすく読み解く。

 

★『漢詩入門』入谷仙介/著 日中出版 1979/01
―漢詩の有名作をたどりながら、その歴史と構造を解く漢詩入門。

 ▲マークは、本文で取り上げた本
 ★マークは、筆者のおすすめ本です。本選びの参考にどうぞ。
 (基本的に、筆者が“偶然”手にしたものを取り上げています。)

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(10)漢代(2)武帝」をお届けしています。

新型コロナ感染拡大という緊急事態宣言発令中ということもあり、図書館がお休みで、思うようにお勉強が進んでいません。

そこで、というのもなんですけれど、今回は大サービスで全編転載です。

この機会に弊誌のご購読を!
よろしくお願いいたします。

 ・・・

では、詳細は本誌で!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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