2023.09.23

大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(PHP新書)買いました

以前紹介しました↓

2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』9月16日発売 (「新生活」版)

 

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16

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を買ってきました。
わがまちでは、19日に本屋さんに並んでいました。

またペラペラとみただけですので、
本格的な紹介はまたいずれということで、今回は、第一印象とでもいますか、「まえがき」「目次」他、全体をパラパラッとのぞいてみた印象をいくつか書いておきましょう。

 

 ●タイトルについて

まずは、タイトルですね。
かなり工夫の跡が見られます。

著者の大路さんから以前どこかでお聞きしたと思うのですが、前著のタイトルに「左利き」という言葉を入れなかったのは失敗だった、というのです。

前著――
『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館 1998/10/1

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確かに「左利き」のキーワードでの検索ではなかなか引っかかりにくいですよね。

「左利き」に何らかの意味で興味を持っている人であっても、そのストレートなキーワードでの検索では届きにくくなります。

今回はズバリ「左利き」入っているので、その点はクリアしています。

 

次に「言い分」という表現。

これは工夫でしょうね。
私なら素直に「主張」としますね。

「言い分」の意味を調べますと、ネットの「コトバンク」(精選版 日本国語大辞典)では、

① 主張したい事柄。言うべき箇条。また、不満で、言いたい事柄。不平。言い条。

というふうに、ズバリ「主張」という意味もありますが、「不満」とか「不平」といった意味合いもあります。

もちろん、左利きの立場から「不満」や「不平」を主張することもあります。
特に現状の社会の在り方が「右利き社会」(右利きが優先される社会/右利きに偏重した社会)といわれるなかでは、こういう主張も多いとは思います。

ただ、それをタイトルに付けるかと問われると、私は回避したいという気持ちになります。
「売り言葉に買い言葉」ではありませんが、人によっては「不満」「不平」と受け取って嫌な感じを受ける、ということもありそうです。
ケンカはしたくないので、私は避けたいと思いますね。

「少しぐらい強くいわないと無視されますよ」という考えもあるかもしれません。

「まえがき」のおしまいの方にこうあります。

「左利きであることの不便さを訴える若年層が存在するいっぽうで、意外にもソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)の観点から左利きに関心を示す右利きが増えている」という現実でした。/そう、今まさに「右利き社会」のなかで「左利きの言い分」を分かち合い、右利きと左利きが共感し合いつつ、左利きにやさしい社会へと向かう千載一遇のチャンス到来です。》p.5

今が「左利きの言い分」――たぶんに「不満」「不平」を含む――を届けるチャンスだ、というのです。

それは「あり」だと思います。

 

 ●内容の概要

さて内容についてですが、まず「目次」を掲げておきましょう。

まえがき
序章 左利きはどのくらい存在し、なぜ生まれたのか
第一章 左利きの苦労
第二章 世界の宗教は左利きをどう捉えたか
第三章 日本における左利きの歴史
第四章 左利きの脳と身体はすぐれているのか
第五章 左利きの才人、偉人たち
第六章 「右利き社会」から「左利きにやさしい社会」づくり
主要参考文献
左利きのためのサポートファイル

*各章末に【注釈】が付されています。

 

内容は、まず「序章」では、左利きの割合、左利きの定義、左利きの成因、利き手の決まる時期、といった左利き/利き手の科学について。
第一章からは、左利きの前著も踏まえて、左利きの歴史。
左利きの苦難の歴史が綴られている、というところです。

正直この部分を読んでいると、私はちょっと平静ではいられなくなります。
この本を読むのは、つらいところがあります。

著者は私より13年後の生まれで(この本には生年が書かれていませんが、前著には「1967年生まれ」とありました。ちなみに筆者・私は1954年生まれ、昭和30年代に幼少期を過ごしました)、著者には「歴史」になっているような事項でも、私には頭では歴史になっていても、心はまだ「生(なま)」の感覚が残っている部分もあり、かなり厳しい思い出につながるものもあるのです。

第四章・五章は、左利きの脳の話と、左利きの偉人/才人、有名人のお話。

第六章は、いよいよ左利きの現状から未来へのアプローチです。
まずは「右利き社会」の現実に気づき、左利きの生活向上のために「(左手)左利き用品」や「(左右)ユニバーサルデザイン」製品の普及について、左利きを取り巻く新たな「サイレントストレス」について、左利きの人への言葉、左利きの子の育児について、左手書字について、右利きの人との友愛精神と未来作りについて、といった私が一番気になる部分が語られます。

 

 ●全編を通して感じたこと

先に左利きの苦難の歴史のくだりを読むのが、つらいと書きました。

それだけでなく、全編パラパラッと目を通した程度ですが、そうして読んでいるだけでも、ちょっと腹が立つといいますか、憤りを感じるといいますか、気持ちがいらだってくるのです。

これは、大路さんの考え方や書き方のせいというのではなく、要するに「この社会が間違っている」という事実に、です。
さらにいえば、その現状に甘んじている人が多すぎる、という現実に対する苛立ちですね。

若い人で左利きの不便を訴える人が増えているし、右利きの人で共感してくれる人も増えているそうですが、もっと強力に「社会を変える」という行動に進んでくれる人が増えてほしいものです。

変えようとしなければ、社会は変わりません。

昔どこかの国の左利きの大統領候補で「チェンジ」といって当選した人がいました。

まさに、必要なのは「チェンジ」です。
そして「チェンジ」に向かって「チャレンジ」することが大事です。

もちろん、暴力や武力で変えるというのではなく、言論と“政治”的な行動を通して、ですが。

 

 ●巻末の「主要参考文献」と章末の「注釈」を読む楽しみ

この本に限らず、私がこれらのリアル系の本(論文や硬派のエッセイ系の文章やドキュメント、ノンフィクションなど)を読むときに一番楽しみにしているのが、巻末の「主要参考文献」の類いを見ることです。
この本では章末に「注釈」がついていて、これも楽しみです。

どういう文献やデータを根拠として書かれているのか、とか、さらなるこちらの興味を誘うような文献等の情報源を知ることができます。
今後こういう事柄に関してはどのような本を読んでみればいいのか、と大いに参考になるからです。

前著の「主要参考文献」とかぶっている部分があるのは当然ですが、25年の間にどういう本や情報を採取し読み込まれたのかなど、私自身の手持ちのデータと照らし合わせながら見てみるのは勉強になります。

 

 ●「左利きのためのサポートファイル」にわがメルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」が!

最後に、前著同様、巻末に左利きの関連情報「左利きのためのサポートファイル」が掲載されています。
「左利き教材メソッド」(書道・手縫い・ギター)、「左利き専用品」(通販・リアルの販売店)「左利き友愛団体」(日本左利き協会他)、「左利きのためのメールマガジン」(わが左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkiii』)。

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ここに掲載していただけて、嬉しく思います。

*追記: 日本左利き協会のサイトの「左利き便利帳」に、わが左利きメルマガ&このブログが紹介されました。
左利き便利帳005:左利きライフ研究家・レフティやすおさんのメルマガとブログ

 

反面、ネットの時代にもかかわらず、大路さんの御眼鏡に適うこの手の総合的な<左利きサイト>等の紹介がないのは、やはり寂しいと感じます。
25年前にはあった、あるいはその後生まれて長年頑張っていた、そういう左利きサイトというものがありました。

今は、鉄板級のそういうオススメサイトがないというのは、非常に残念なことです。

出でよ、新人左利き研究家&活動家!

 

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2023.09.16

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii創刊18周年記念号-第649号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第649号(No.649) 2023/9/16
「創刊18周年記念号――明日のために」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第649号(No.649) 2023/9/16
「創刊18周年記念号――明日のために」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今月は、2005.9.28の創刊号以来、18年周年となります。

 

20239hikkiimagmag

 

 当初は、軽い気持ちで週刊としました。
 実際書き始めると、なかなか大変で、徐々に手抜きとなり、
 月4回、そして現状の月2回となりました。
 さらに8月は、猛暑を理由に、合併号で月一回なんてことにも……。 

 そういうわけで、週刊とうたいながら、18周年で649号なのです。

 

 18年といいますと、今では成人年齢となります。
 始めたころに生まれたお子さんも今では大人ということです。

 このようなメルマガでも、左利きの子の育児のアドバイスの
 何かしらの足しにしてくださった方がいたとしますと、
 もうそのお子さんは、二十歳を過ぎていることでしょう。

 どのように育っていることでしょうか。

 幸か不幸か、たいしたことはできていないので、
 マイナスにはなっていないことでしょう。

 そして、少しでもお役に立っていたのなら、幸いです。

 ということもあり、
 今回は、暑さの手抜き? で、記念放談とします。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

  創刊18周年記念号――明日のために

  「汗で書く」―「汗をかく」ぐらいの気持ちで書き続けたい

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●初心忘るべからず

創刊号の編集後記にこう書きました。

 

 《=●レフティやすおの編集後記●=======

 色々迷った末の出発です。これからも多少の変更があるでしょう。
 しかし左利きの人のお役に立ちたいという思いは変わりません。
 左利きの人の力になりたい、そして幼い頃の自分のように左利きで
 嫌な思いをする人がいなくなるように、そう願って左利きの活動を
 続けています。
 これからもよろしくお付き合いのほどを!》

 

あれから18年が過ぎてしまいました。
今も変わらぬ思いは、

 左利きの子供たちに自分と同じ嫌な思いをして欲しくない

ということです。

そのために何かできることはないか、と始めたのがこのメルマガです。

ブログは2003年12月25日、
ホームページは2004年1月1日に始めていました。

それだけでは何かしら満足できず、もっと能動的なイメージの活動を、
と思って始めたのです。

 ・・・

「初心忘るべからず」の初出は、
世阿弥の「花鏡(かきょう)」(1424年)だそうです。

習い始めのころの謙虚で真剣な気持ちを忘れてはならない、の意。
(出典 小学館 デジタル大辞泉)

から、

「何かを始めた最初のころの気持ちを忘れてはいけない、
 という戒めのことば」

となったといいます。

始めたときの思いを今も胸に秘めて、メルマガを続けていきます。

 

 

 ●当時を振り返って

当時、左利きメルマガを出している人がいたのです。

記憶で書いてしまいますが、なんとなく気が合う感じがして、
思いつくネタをいくつか提供しました。

まぐまぐの先輩でもあり「左利きメルマガ」の先輩でもある
渡瀬謙さんの発行する『レフティサーブ』がそれでした。

(のちに、
 『左利きの人々』(渡瀬 けん:名義 中経の文庫)

 にまとめられた。)

 

メルマガという、こういうやり方もあるのだ、と思い、
ちょっと相談したうえで始めました。

創刊号を書いて「まぐまぐ!」に送り審査の上、発行にこぎ着けました。
渡瀬さんに報告をすると、早速メルマガで紹介していただき、
一気に68部でスタートできました。

 

その後、教師生活23年、現・教育評論家の親野智可等さんの
家庭教育メルマガ『親力で決まる子供の将来』
https://www.mag2.com/m/0000119482?l=iib0008fb8
(「左利きを直す必要はない」という文章を書いておられるのを知り、
 連絡をし、左利き対応の100ます計算というのを実践されている先生が
 いることをお知らせしたり、時折お便りをしていました。)
でも紹介していただき、
またまた一気に300あまりまで伸ばすことができました。

その後は、私の力が及ばず、発行部数は減る一方です。

卒業される読者も多く、現在は200ちょいになっています。
左利きのお子さまを持つ親御さんの場合、
お子様がある程度大きくなられますと、自然と卒業されていくようです。

それはちょっと悲しいことなのですが、
当面の問題が解消されれば、人はそうなってしまうものなのですね。

喉ものと過ぎれば熱さを忘れる、とも申します。

本音を言いますと、親御さんたちにはいつまでも読者のままで、
左利きの子(および人)の味方でいて欲しいのですけれど……。

 

 ●大路直哉さんの新刊『左利きの言い分』にこのメルマガも…

基本、読者を想定して書いているつもりですけれど、
どうしてもその時その時の自分自身の思いが先行して、
読者の方々の意識からずれることも多々あるのかもしれません。

反響を待ちながらも、なかなかいただけなくて、
その辺は私の悪い癖が出てしまっているせいかもしれませんね。

お便りをいただけたら嬉しくて、許可も得ずに書いてしまったり……。
反省していますが、遅かりし、かも……。

 

もう一度初心に戻って、
気を入れてやっていこうと思います。

そういうモチベーションを上げるいい機会になりそうな、
ニュースがあります。

9月16日今日ですが、大路直哉さんの左利きの本が発売されます。
この本の巻末情報欄に、
このメルマガのことも載せていただくことになっています。

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉
PHP新書

 

『見えざる左手』(三五館)、共著『左ききでいこう!』
(フェリシモ出版)につづく、著者三冊目の左利き本。
最初の社会学的アプローチの『見えざる左手』からは、ちょうど25年。

Amazonの情報によりますと、
左利きの人たちが経験してきた、歴史的な出来事やその背景も含めて、
左利きについての世間的な話題をまとめた、
最新版の左利き入門書(応援本)となっているように思います。

楽しみな一冊です。

 

 ●ネット活動20年の変化

このメルマガは18年ですが、ネット活動は20年になります。

この20年の変化を思い起こしてみますと、
ネット環境が電話回線から光になったということは大きかった変化です。
オフラインで、とかでなく、そのままネットサーフィンというんですか、
検索などできるのは、大きな変化です。

そして、当初はパソコン向けでよかったのが、
今ではスマホ向けを考えなければならなくなっている、ということ。

私のネット活動は、今はまだパソコン向けというレベルですね。
スマホ対応しないと、取り残されていくのでしょう。
このメルマガも、部数を伸ばすことはむずかしいでしょうね。

 

 ●20年間でいちばんうれしかったこと――教科書に左手書字例

ここで左利きを取り巻く環境の変化について見ておきましょう。

20年で変わったといえば変わっています。
左利きを否定されることが少なくなったのは事実でしょう。

ネット活動を始めたころは、例えば箸使いについていいますと、
左手で箸を持つことは日本の食事作法として認められない、
という意見が強く残っていました。

左手用の躾箸(練習箸)を作っていないメーカーさんがありました。
日本の作法として認められません、という意見です。

裏を取るように、作法・エチケットの本で、
悪い箸使いの一例として「左箸」を上げている人がいました。

今ではそういう例を見つけるのはむずかしくなっています。
実際には(本心は)どうかわかりませんが、
表向きはなくなってきています。

駅の自動改札も挿入式からタッチ式になっている部分もあるようです。
最新型では生体認証装置付きも出てきているようで、
少しは改善されてきているのかもしれません。

 

一番嬉しかった変化は、2020年に、このメルマガで長年訴え続けてきた
「小学書写教科書に左手書字例を!」
を実現させた教科書が誕生したことでした。

東京書籍の令和2年度用の小学校教科書「新しい書写」がそれでした。

https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou_current/shosha/
--
特色 3 書くことが楽しくなる教科書
全ての子供に「分かった!」「できた!」の喜びを。
 特別支援教育への配慮
 色覚多様性への配慮
 左利きへの配慮
--
https://ten.tokyo-shoseki.co.jp/text/shou_current/shosha/data/shosha_m_pamph_04.pdf
PDFファイル

230909-tousho-shosha-kyoukasho

あたらしいしょしゃ 1 [令和2年度]
(小学校国語科書写用 文部科学省検定済教科書)‎ 東京書籍 2019/3/1

200204-tousho-atarasiishosha-shosha_1

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2020.2.9
左利きへの配慮がなされた東京書籍・小学校教科書
「新しい書写 2年度用」
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/02/post-0fbe38.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/dd08c16d81a211f5c60266bf57191f20

 

 ●10年ごとに一区切り

10年ぐらいの間隔で、
左利きの本があれこれと出版されることがあるようです。

理由として考えられることは、世代交代が進むということでしょうか。
十年一昔といいますように、十年もたちますと小学生も成人となり、
その親の世代は人生の次のステージへと進み、
かわって新しい世代が子を持つ親となります。

左利きや利き手についての知見は、学校の教科書には含まれず、
その知識や経験は、一世代毎に個人的に学ばれては失われて行き、
次の世代がまた新たに個人的に学び直すことになります。

そういう状況のなかで、
左利きや利き手に関する知識を本に求める人々が現れ、
そのニーズに応えるように、
こういう現象が起きるのではないか、と思われます。

以下に、ここ20年ほど、主だった左利き本の年表をまとめてみました。

 

2000年前後――

(1998 平成10)
10/『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提案』大路直哉 三五館
(1999 平成11)5/
『おいしい左きき』造事務所編著 イーハトーブ出版
(2000 平成12)
7/『左ききでいこう!―愛すべき二一世紀の個性のために―』
 フェリシモ左利き友の会、大路直哉 フェリシモ出版
(2001 平成13)
2/『あなたは完全な右(左)利き? それとも○○利き?』鮫島良文
 文芸社
(2002 平成14)
6/『左利きで行こう! 目からウロコの左利きツアー』
 リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー
 丸橋良雄、尾島真奈美訳 北星堂書店

 

2010年前後――

(2005 平成17)
12/1『左ききのたみやさん。―哀愁ただよう左きき爆笑エッセイ』
たみやともか 宝島社 
(2006 平成18)
7/『「左利き」は天才? 利き手をめぐる脳と進化の謎』
デイヴィッド・ウォルマン/著 梶山あゆみ/訳 日本経済新聞社
10/『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス∥著
講談社ブルーバックス 
(2008 平成20)
7/20『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN選書
12/6『左ききのトリセツ』貫吉達郎 グラフ社
(2009 平成21)
1/1『左利きの人々 悲しくも笑える』渡瀬 けん/著 中経の文庫
1/16『モノ・マガジン』2009年2月2日号「特集・左利きグッズ大図鑑」
ワールドフォトプレス
5/『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』
ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍
6/『神々の左手―世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト著
 スタジオタッククリエイティブ
8/31『左利きギターコード1008 -これは便利!左利きギタリスト御用達-』
中央アート
(2010 平成22)
3/5『選ばれし民 左利き』インフォレスト
(2014 平成26)
12/18『ぼくは左きき 本当の自分であるために』度会金孝
(わたらいかねたか)/著 日本機関紙出版センター

 

2020年前後――

(2017 平成29)
2/7『左利きあるある 右利きないない』左 来人/著 小山 健/イラスト
ポプラ社
(2018 平成30)
8/31『左利きの本【左利き専用メジャー&定規つき】』宝島社e-MOOK 
10/18『左利き専用 綺麗な字が書けるペン字ドリル』岡田崇花/著
ブティック社・ブティックムック
(2020 令和2)
7/23『左利き用 誰でも一瞬で字がうまくなる大人のペン字練習帳』
萩原 季実子/著 アスコム
(2021 令和3)
3/14『左利きギター専用! ギターコードブック』
ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
9/29『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き
「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社
10/7『ヒミツのひだりききクラブ (レアキッズのための絵本)』
キリーロバ・ナージャ/著 古谷萌, 五十嵐淳子/イラスト 文響社
(2022 令和4)
1/10『左利き用100ページのギター弾き語りノート&204パターンの
 ギターコードブック』楽譜乃音/著 Independently published
5/16『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫
7/29『眠れなくなるほど面白い 図解 左利きの話』八田武志/監修
日本文芸社
(2023 令和5)
7/19『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』佐野 純子/著
日東書院本社

★新刊★
9/16『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著
PHP新書

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』
9月16日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-64dede.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7baf11f00484a6f32b9d06781490e8bf 

★新刊★
10/24『左利きさんのためのはじめての棒針編み』佐野 純子/著
日東書院本社

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.11
佐野純子さんの左利き編み物本の第二弾
『左利きさんのためのはじめての棒針編み』10月24日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-e43f26.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a8d6067ceae1b5d06f69e2e65d3c82ba 

 

最近の傾向として、実用書も色々と出版されるようになってきました。
これは、啓蒙書の類いの時代からより実践的な実用書の時代への変化で、
左利きが世間で一般化してきた反映と言えるかもしれません。
よい傾向です。

 

 ●最後に――明日のために、今書くこと

このメルマガは先にも書きましたように、今も陸続と生まれてくる
左利きの子供たちが健やかに育つことができる環境を整備する
その一助となることを願って書き続けています。

あと何年書き続けることができるのかわかりませんが、
最期の時が来るまで、その時その時精一杯できることを、
と考えています。

ニーチェは、血をもって書け、といっています。

 《およそ書かれたもののなかで、私が愛するのは、
  血をもって書かれたものだけだ。血をもって書け。
  そうすれば君は、
  血こそ精神だということが身に沁みて分かるだろう。》
  『ツァラトゥストラはこう言った』フリードリヒ・ニーチェ
    森一郎訳 講談社学術文庫 2023/6/12
   「第一部 ツァラトゥストラは語る」<読むことと書くこと>p.66

「血でもって書く」とまでは行かないかもしれませんが、
「汗で書く」―「汗をかく」ぐらいなら私にもできそうです。

それぐらいの意気込みで無理せず続けていきたいと思っています。

では、これからもよろしくお願いいたします。

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本誌では、「創刊18周年記念号――明日のために」と題して、今回も全紹介です。

メルマガ18年で649号に達しました。
当初は文字通り週刊でしたが、さすがにしんどくなり、今では月二回発行になりました。
昔は総発行部数を表示するものがありましたよね。
今月は何部、一年で何部に達したとか。
単純に今の発行部数に649をかけると、約130000部になります。
それでどうだ、ということですが。

延べ13万人の人が読んでいる可能性がある、ということですね。
精読者数は1%として1300人、10%なら13000人です。
それでどうだ、ということですが。

これからも最期の日が来るまで頑張ってみようと思います。
これからもよろしくね。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈左利きメルマガ〉カテゴリ

 

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2023.09.15

私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】


2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」


 


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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年9月15日号(No.350)
「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本」
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 さて今回は、本と書店の世界といいますか、業界について、
 「元本屋の兄ちゃん」として、本好き・読書好きの人間として、
 私なりに考えていることを書いてみようと思います。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 - 消えゆく書店と紙の本 -


  ~ 紙の本と書店の減少にショック! ~


   それでも本屋さんは生き残る?
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ●朝日新聞の記事「本屋ない市町村、全国で26%~」


朝日新聞の記事によりますと、
出版文化産業振興財団(JPIC)による調査では、
書店のない市町村が全国で26%にも上るそうです。


*参照:朝日新聞デジタル記事
本屋ない市町村、全国で26% 業界はネット書店規制を要望、懸念も
宮田裕介2023年3月31日 19時00分
https://www.asahi.com/articles/ASR3056M2R30ULEI004.html


2023331-s


(画像:朝日新聞デジタル記事より「書店ゼロ」の自治体の数と割合)


 


 《調査によると、書店がないのは全国1741市区町村のうち456市町村。
  都道府県別で書店がない市区町村の割合は、
  沖縄が56・1%と最も高く、長野の51・9%、奈良の51・3%と続いた。
  4割を超えたのは、福島(47・5%)、熊本(44・4%)、
  高知(44・1%)、北海道(42・5%)。
  一方、広島、香川の両県は全市町村に書店があった。》


調査対象は《大手取次会社を経由して販売契約している新刊書店の数》。


 《「独立系書店」などと呼ばれる大手取次を利用していない書店、
  ブックカフェ、ネット書店、古書店などは数に含まれていない》。


調査方法が違うという、取次・トーハンの2017年の調査では、22・2%。


 《市区町村別ごとでみると、
  書店がない市は792市のうち17(2%)だったのに対し、
  町は743町のうち277(37%)、村は183村のうち162(89%)だった。
  東京23区は全てにあった。
  書店がない市町村がどこかは明らかにしていない。》


書店経営が厳しい背景の要因として、
(1)人口減少や雑誌の売り上げの急減
(2)ネット書店で本を買う人の増加
など様々な要因がある、といいます。


 《日本書店商業組合連合会の加盟店などの書店業界は、
  自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」
  に支援を要望。
  今春までに提言書をとりまとめ、具体的な支援の検討を始める。》


具体策は、(A)アマゾンなどのネット書店との競争環境の整備


 《本は、定価販売の根拠となる「再販制度」があるが、
  ネット書店では、送料無料やポイント還元で
  「実質的に値引きが行われている」とし、
  一定の制限やルールを設けることを検討する、とした》


ほかに検討材料としては、


(B)公立図書館で同じ本をたくさん仕入れないようルールを定める
(C)出版物への軽減税率の適用
(D)読書推進を目的としたクーポン券の配布


ネット書店や図書館への規制は、


 《読者の利益を損なうことにつながりかねず、批判も多い。
  また、特定の政党の議連に要望していることについて、
  政治との距離の取り方への疑問の声もある。》


といいます。


私には、自民党の議員連盟に要望している点を問題視しているのは、
いかにも朝日新聞的な感じがします。


 


 ●再販制度――定価販売による価格保証


以前から私が主張していることは、本の流通において、
取次経由の在り方を再考するということ。
卸業そのものは、他の業界にもあり、それ自体は問題ではありません。


問題は、再販制度です。
私の主張は、再販制度を廃止して、書店の自由仕入れ・自由販売にする、
というのが一つ。


 


再販制度のよいところの一つは、
素人でも資金力があれば開業できること。


地方の資金力のない小さな店でも、販売価格を保証されているので、
ある程度売れれば(!)経営的には一定の利潤を上げられる。
(実際には非常に苦しいのですが、パパママストア的な、配達中心に、
 学生や子供さん高齢者向けに、地元密着でやれば、できなくはない?)


一人の人間の得意ジャンルなどしれたものです。
書店というのは、非常に広いジャンルの商品を扱います。
大規模な書店ならある程度人を集めて、
それぞれの得意ジャンルを担当させればいいのですが、
個人レベルのお店ではそれはできません。
勉強にも限界があります。
ある程度取次に頼るのもありでしょう。


他の商品でもそうですからね。
生鮮食品でも、卸の専門家に仕入れを任せている、
という料理店もあるでしょう。
同じことです。
ある程度の目利きができる必要はあるでしょうが。


話がずれました。
再販制度です。


やはり店側が責任をもって発注して販売する必要があります。
今は返品可能で、山かけで発注して、
大量に売れ残っても返品すればいいや、で済ますこともあるのです。
返品もお金がかかりますけれど、買取よりずっといいですから。


価格も含めて、責任を持ってその商品を売ることが大事です。
自由販売だから売れ残ったら、値引きすればいいや、でもないのです。
そんなことをすれば、儲けが減ってしまいますから、ね。


 


 ●書店経営が厳しい背景の要因―雑誌の売り上げの急減


話を朝日新聞の記事に戻します。


書店経営が厳しい背景の要因として、
 (1)人口減少や雑誌の売り上げの急減
 (2)ネット書店で本を買う人の増加
を挙げていました。


(1)の「人口減少」は、これはどの業界も直面している問題です。
これに対する絶対的な答えはありません。


市場を海外に求める、というわけにもいきません。
客を地元だけでなく、ネットを使って広く世界に求める、
というやり方は可能ではありますけれど。


 


「雑誌の売り上げの急減」には、二つの要因があります。


雑誌そのものに魅力がなくなった、というわけではないと思います。


一つは、コンビニに客を取られている。
もう一つは、雑誌そのものが紙から電子版に切り替えられている。


コンビニの問題は、
私が本屋さんで働いていた30数年前に始まったものです。


 


雑誌の売り上げは、書店売り上げの半分程度といわれていました。
私のいた店は40%程度でこれを上げなければ売上は上がらない、
といわれていたものでした。


私が働いていたころに取った対策は、雑誌の完売賞を狙うというもの。


入荷数と返品数をしっかり把握して、適切配本になるように調整して、
出版社が完売賞を出している時には、きっちりとこれを獲得する。
もらえる賞品といえば、雑誌のロゴ入りのちょっとした物でしたが、
それよりも、
次回から入荷数を増やしてもらえるようになる利点がありました。


結果として取次からの適切な配本を確保でき、
売り損じや返品過多などの不利益を減らすことができました。


 


 ●ネット書店で本を買う人の増加


これは確かに大きな要因でしょう。
ただ、ネット書店といっても、二つの面があります。
紙の本の場合と電子版の場合と、です。


 


紙の本の場合は、
Amazonのように送料無料とかポイントがもらえるとかのサービスは、
一般書店にとっては、ちょっと公平な競争という点では問題ありか、
と思われます。


書店でも無料の配達をやってはいますが、ポイント制は一種の割引で、
定価販売の書店とは違って、一種違反ともいえそうです。


 


電子版の場合は、
特に雑誌は、若い人の間で非常に進んでいるように思います。


スマホでその場で見られる、という便利さがあります。


一般書籍の場合は、逆に高齢者で愛好者が見受けられます。


文字の大きさを端末で変えられるので老眼でも好都合だ、
という考えの人が多いようです。


また、物が増えない、という収蔵場所の問題もクリアできるので。


 


紙の本の場合、本屋の消滅がネットへの購買の移行に拍車をかけ、
リアル書店の減少が先かネット書店での購入増加が先か、
というレベルになってきているようです。


ネット書店とリアル書店の違いは、品揃えの差ということになりますか。


ネット書店の場合は、店舗がいらないので、
その分倉庫に割り当てできます。
単なる倉庫なので、単位面積当たりの収容力に差が出ますし、
そもそも立地条件が異なりますので、経費が違ってきます。


そういう意味では
ロングテールといわれる商品を確実に利益にできるという面があります。


リアル書店では、どうしてもそういう面では、
置くべき本を恣意的に選択するしかないので、
売り方との兼ね合いで勝負するしかないのです。


店員さんが何を推すかで決まるというように。


買う人の立場でいえば、「特定の本を買う」という場合には、
圧倒的にネット書店が有利でしょう。
選んでポチ! ですみますから。


 


 ●リアル書店での「偶然の出会い」


それに対して、リアル書店が優るのは、未知への誘いとでもいいますか、
お客様の漠とした欲求に対して、実際の「もの」でアピールする、
という力があります。


「思いがけない出会い」とかいわれるものですね。


こんな本があったのか、という意外性といいますか。
今まで存在は知ってはいたけれど、
手にすることはなかったといった本に、偶然出会ってしまう瞬間、
というものがあります。


これはやはりネットよりもリアルが勝っているように思います。


 


ネットでも過去の履歴に基づいた紹介がありますが、
過去の履歴は所詮は過去の履歴で、
現在の興味を反映するものとは限りません。


また、新刊のチェックまでは進んでいません。
目新しい出会い、というのは、なかなかむずかしいように思います。


 


 ●リアル書店の生き残りについて――「コンビニ+本屋」


朝日新聞の関連記事では、Amazonを不便にすればとか、
「コンビニ+本屋」の例とかが出ています。


「コンビニ+本屋」の例を考えてみましょう。


昔私の通勤途上にそういう例がありました。
私自身何度か本を買いました。
当時は仕事が忙しく、
休みの日でもわざわざ本屋さんに出かける余裕がありませんでした。
そんなときは非常に便利に思いました。


通勤の帰りにのぞくことが多かったのですが、
時に出勤時に週刊誌などを買うこともありました。


本好きの私には、ふつうのコンビニでは満足できなかったので、
それはそれでよかったのですが、
しかし、本屋の仕事というのは、コンビニの延長ではなく、
やはり別物の仕事でしょう。
きちんとした品揃えをしようとしますと、専任の店員が必要です。


やはり商品の選定というのは、目利きがいないとむずかしいものです。
店の持つ販売力をしっかり把握して、
どういう商品をどの程度、といった発注の問題ですね。


それと現状では取次からの送品にたいしてどう対処するか、
という問題もあります。


正直、店に合わない商品でも大量に送ってくる場合があります。
その返品なども大切な作業です。


 


 ●ベストセラーではなく、ロングセラーを!


従来は、売れ筋と呼ばれる商品をいかに確保するか、
が一つのポイントでした。


しかし、地方の小さな書店に本がまわってくるころには、
売れていた本もそれほどではなくなっています。


結局大切なのは、お店のお客様に合った商品をどの程度確保できるか、
ということになります。


それと、こういう商品を売りたいという店員側の思い、これも大事です。


公刊されているような本には、それなりの魅力があるものです。
その点をきっちりアピールできれば、当然売れるはずです。


一般商店でも同じですが、売上の落ちてきた店がよくやる失敗に、
店に置く商品を売れる商品のみに絞る、という方法があります。


一見筋が通っているようですが、これがたいてい失敗します。
なぜか、というと、
売れる商品というのは、基本どこの店でも売れている商品です。


どこでも買える商品と言い換えてもいいかもしれません。


それだけに限ってしまうと、店としての魅力が半減してしまいます。


多くのお客様は、この店でこれを、あの店であれを、
と基本的な商品に関しては、買う店を決めているものです。


たまにしか売れない商品が実はあなたのお店の魅力の一つになっている、
というケースが結構あるものです。


一見ムダに見える商品を置くことで、
お客様に選択肢を与えることができます。


そういうお客様の傾向をきっちり抑えて、品揃えをする必要があります。


 


そして、今○○が流行っていると、
一時的なベストセラーを追いかけるのではなく、
継続的に売れる、ロングセラー、定番商品をしっかり確保する、
これが一番大事で、それがお店の販売の基礎となるものです。


 


 ●本屋はそのまちの文化のバロメーター


一番大事なことは、本屋さんというのは、
その町の文化を代表する存在の一つだ、ということです。


もちろん文化施設としては、
公立や私立の図書館とか美術館とか博物館などもあります。
あるいは学校――小・中・高校、大学、専門学校などの教育施設などが
あります。


しかし、最も身近な文化施設として、私が思うところは、
やはり町の本屋さんなのです。
これは私の経験からの意見です。


本屋さんに出入りするようになり、私の世界が広がったのです。
今の私につながるような変化を生みました。


それが文化というものでしょう。


本の世界には、文字通り世界のすべてが包含されています。
未知なる世界への入口になるのです。


日常的な生活だけでは、絶対ふれ得ないような世界の広さです。


それが本屋さんというものだと私は思っています。


もちろん、昔でいえば映画やラジオやテレビもそういうものでした。
しかし、それらは自分の手元に置いておくことができにくいものでした。


紙の本なら、それが可能でした。


広い世界へつながる入口――それが本屋さんであり、
文化へ続く道だったのです。


 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


本誌では、「私の読書論174-消えゆく書店と紙の本-楽しい読書350号」と題して、今回も全文転載紹介です。


今回は、「元本屋の兄ちゃん」としては、いいテーマを見つけたというところなのですが、しっかり考える時間がなく、中途半端な結果になりました。


また、次の機会に考え直して書いて見ようかと思います。


一言、私の従来からの意見と書いておきますと――
(1)再版制度をやめ、書店の自由販売にする
(2)本の価格を引き上げ、その分を書店や著者、出版社、取次などに配分する
これで、紙の本を残せるか、地方の町の書店が生き延びられるか、は不明です。
それでも、いくつかの可能性は残されているのではないか、と考えています。


結局、書店というものはだれでも経営できる業種ではなく、専門家の手による専門店だという気がします。


都市部の大型店が家賃が払えず退店するとかいう話も聞いています。
書店自身がもうオワコンなのかもしれません。


それでも私はまだまだ、と信じたいのですけれど……。


 ・・・


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2023.09.06

「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』9月16日発売

以前、大路直哉さんから9月中旬に出るとお聞きしていた、左利きの本の情報が判明しました。

 

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16

 

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Amazonより

--
「自動改札機を通過するとき、腕をクロスさせなければならない」「ハサミや定規、スープをすくうレードルが扱いにくい」など、左利きならではの不便は多々存在する。さらに、かつては左利きだと結婚に差し障りが生じたことすらあったという。中国の古典『礼記』に「食事をする手は右手」と記されているため、日本では長らく左手で箸を持つのは不作法と見なされ、左手で箸を持つ女性は「親の躾がなってない」と判断されることがあったのだ。本書では左利きの苦難の歴史と現状を解説し、左利きが暮らしやすい社会を生むための取り組みも紹介。坂本龍一や石原慎太郎など左利きの著名人のエピソードも語る。

 

●人類における左利きの割合――世界と日本
●なぜ左利きが誕生するのか?
●「左利きは九年寿命が短い」説
●儒教の教え――「食事をする手は右手」
●日本神道の教え――「左は右よりも尊い」
●左利きだとお嫁にいけない?!
●「左利きは右脳型」説は本当?
●左利きの才人、偉人たち
●左利きへの共感を示した米津玄師

 

著者について
「日本左利き協会」発起人。大阪府高槻市生まれ。滋賀県大津市育ち。左利き。早稲田大学卒業後、英国滞在中に左利き専門店との出会いがきっかけで利き手への探究心が開花。帰国後、出版関連業などに携わりつつ、左利きの関連記事や文献の発掘にいそしみ左利きに関する著作を出版。左利きにとって役立つ情報発信や総合学習への協力など、左利きと右利きが共感し合えるコミュニティづくりに取り組んでいる。
著書に『見えざる左手』(三五館)、『左ききでいこう!』(フェリシモ出版)などがある。
--

 

上の「著者について」にもありますように、「日本左利き協会」発起人で、左利きサイト「クラブレフティ」の活動や、
国立国会図書館関西館で開催される資料展示「左手をご覧ください!―左利きというまなざしで、見えてくる風景―」

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「第1章 左利きをめぐる歴史」で、『神々の左手』エド・ライト/著 ricorico/訳 (スタジオタッククリエイティブ, 2009.6)などの本とともに掲げられている著書

 

『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館 1998/10

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の著者、大路直哉さんの新しい左利き本です。

 

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.08.25
左利き資料展示「左手をご覧ください!」国立国会図書館関西館で開催 (「新生活」版)

 

大路さんの左利きの本としては他に、当時通販で「左利きカタログ」を出していた「フェリシモ左きき友の会」との共著

 

『左ききでいこう!!―愛すべき21世紀の個性のために』大路直哉・フェリシモ左きき友の会/編著 フェリシモ出版 2000/6/1

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があります。

 

このような実績のある著者による、最初の研究書『見えざる左手』から25年ぶりの左利き本です。
大いに期待されます。

 

目次からの勝手な判断ですが、本書の主な内容は、左利きに関して世間一般で主な話題となっている事柄を中心に、旧著の一部をカットしてアップデートした、左利き入門書の体裁になっているように感じました。

 

通常の新書はせいぜい200ページ少々ですが、本書は280ページとボリュームもあり、手に取るのが楽しみな一冊です。

 

私の左利きメルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』も巻末に紹介していただいているそうです。
それを確認するのも楽しみです。(大路さん、ありがとう!)

 

 

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2023.09.02

楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 7月以来の「楽器における左利きの世界」です。
 前回は「『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
 と題して、左利きの人の音楽的才能について、調べてみました。

 今回は、再び<左用ピアノ>への第一歩として、
 鍵盤ハーモニカについて勉強してみようと思います。

 <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクトとして
 やっていけたら、と思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(1)
-コロナ禍で吹奏楽器は…… -
  『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)

私のまちの図書館で、ふさわしい本を見つけました。

 

『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)春秋社 2023/4/19

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長くなりますが、奥付にある著者紹介文を転載します。

南川朱生(ピアノニマス)Minamikawa Akeo (Pianonymous)

1987年生、東京都在住、元IT企業の銀座OL。
日本を代表する鍵盤ハーモニカ奏者・研究家。
世界にも類を見ない、鍵盤ハーモニカの独奏というスタイルで、
多彩なパフォーマンスを行う。
所属カルテット「Tokyo Melodica Orchestra」は
米国を中心にYouTube動画が37万再生を記録し、
英国の世界的ラジオ番組classic fmに取り上げられる。
研究事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」のCEOとして、
大学をはじめとする各所でアカデミックな講習やセミナーを多数実施し、
コロナ禍で開発したリモート学習教材類は
経済産業省サイトに採択・掲載される。
東京都認定パフォーマー「ヘブンアーティスト」資格保有。
これまでにCDを11作品リリースし、
参加アルバムはiTunesインスト部門第2位を記録。
楽器の発展と改善に向け多方面で精力的に活動している。
趣味は日本酒とテコンドー。

経歴だけでもすごいですが、この本の内容がまたスゴい!
まだ目次を見たぐらいですが、
鍵盤ハーモニカのことがすべてわかる本といってよいかと思います。

出版社の紹介文も一部転載しましょう。

《鍵盤ハーモニカに人生を捧げたプロ奏者による、長年の研究の集大成。
 鍵盤ハーモニカの製造の歴史や教育現場での受容、内部構造の秘密、
 そして〈誕生〉の瞬間など、様々なシーンを豊富な資料とともに巡る。
 楽器愛に満ちた、読んで、見て、楽しい究極の一冊。〔口絵2〕

 誰もが知ってる楽器の、誰も知らなかった世界!
 たったひとりの楽器に取り憑かれた人によって、
 その魅力は膨れ上がる!
 ――トクマルシューゴ(ミュージシャン)》

この本を読みながら、
まずは鍵盤ハーモニカについての知識を補充していこうと思います。

そして、<左(利き)用鍵盤ハーモニカ>の可能性を考えてみる予定です。

 

 ●序章から――鍵盤ハーモニカって何楽器?

今回はまず「序章」を簡単にみてみましょう。

<鍵盤ハーモニカは何楽器?>とあります。

鍵盤ハーモニカといってもご存じない方もいらっしゃるでしょう。
私のような世代は、使ったことのない人が大半でしょう。
お子さんがいらっしゃる方は、子供が使っていたよ、
ということはあるでしょうけれど。

本書の第一章の冒頭に、
《大人の方に「小学校で鍵盤ハーモニカを吹いたことがありますか?」
 と問うと》
三十代の人は、《大方「あるある? 懐かしいねぇ」》と答え、
六十代の人は、《ないなぁ、娘と息子はやってたけどねぇ》、
四十代から五十代の人は、「ある派」と「ない派」に分かれるそうです。
「ない派」の人に、小学校では何を演奏していたのですか、と問うと、
「ハーモニカ」と「たて笛」だそうです。

商品名でいいますと、
「ピアニカ」や「メロディオン」という名で出ています。

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(画像:国産の鍵盤ハーモニカの代表の一つ、YAMAHA(ヤマハ) ピアニカ P-32E)

 

それなら聞いたことがある、という年配の方もいらっしゃるでしょう。

では、この楽器は「何楽器」に分類されるでしょうか、
というのが最初の話題です。

 《問題:次の楽器は何楽器に属するか答えましょう。》
   ヴァイオリン (  )楽器
   小太鼓    (  )楽器
   トランペット (  )楽器
   フルート   (  )楽器
   鍵盤ハーモニカ(  )楽器

分類条件は、様々ですので、「学校の教科書」で正解とされる回答は、

それぞれ、弦楽器(擦弦楽器)、打楽器、金管楽器、
フルートが引っかけで、金属だけど木管楽器。

で、この鍵盤ハーモニカは? といいますと、

 《ここでは「鍵盤ハーモニカは○○楽器である」
  と片付けてしまうことはせず、
  この楽器の特徴をいくつか洗い出しながら、
  鍵盤ハーモニカの「複数にまたがる定義」、
  通称「ジェネリックな鍵盤ハーモニカの定義(generic melodica)」
を一緒におっていきたいと思います。》

となっています。

「鍵盤ハーモニカ」というぐらいですから、
鍵盤がついているので「鍵盤楽器」という答えも考えられます。

しかし、この楽器の誕生当初は、
鍵盤の代わりにボタンやレバーがついたものもあったそうです。

それでも一応、「ジェネリックな」鍵盤ハーモニカの定義として、
読者がパッと見てピンとくるデザインを優先し、
いったん「鍵盤楽器」としておきましょう、といいます。

次に、この鍵盤を押し下げ、どうすると音が出るかといいますと、
口で息を「吹く」ことで音が出ます。
ハーモニカのように、吸って音を出す場合もあるらしいので、
必ずしも「吹く」とは限らないようですが、
基本的には「吹く」ことで音を出す楽器ということで、
「吹奏楽器」としたい、と著者はいいます。

 

 ●いかにして教育現場に浸透したか

本書は、「第I部 国内歴史篇」が、鍵盤ハーモニカが教育現場で、
一人一台必携の楽器となるまでの歴史を探っています。

戦後、当初はハーモニカが小学生の楽器として普及したわけですが、
音を出すとき、息を吹いたり吸ったりする発音方法があるなど、
むずかしいということで、徐々に現場から消えてゆくことになりました。

輸入品を参考に、国内メーカーが次々と参入します。

音楽の器楽教育を進めるという一種の「国策」もあり、
国内メーカーの努力(開発および営業)もあり、
ピアノが弾ける音楽大学卒の先生にも扱えること、
鍵盤を押すことで決まった音が出せる
(実際には、様々な発音の技法があるらしいのですが)ので、
子供にも簡単ということで、
鍵盤ハーモニカが採用されることになった、ということです。

 

 ●フリーリードを震わせる吹奏楽器

「第II部 内部構造篇」では、
内部の構造、音の出る仕組みを解明します。

<第五章 鍵盤ハーモニカの叫び>によりますと――

結論だけ書きますと、楽器の内部には、それぞれの音に対応する、
フリーリードという金属製の細長い板が鍵盤の数だけ並んでいます。

息を吹きこみますと楽器内全体に空気がたまります。

鍵盤を押しますと、
押された鍵盤に対応する金属板の部屋のバルブだけが開き、
空気が外へ排出されます。
この空気の流れが、個別の金属板を震わせ、その音が鳴ります。

(私の理解が正しければ)こういう仕組みになっています。

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(画像:144-145p 発音メカニズムについて――別冊編集後記を参照)

 

 ●「ホーナー社製ボタン式メロディカ」はかわいい

「第III部 海外歴史篇」は、ヨーロッパでの開発の歴史です。

一部で、鍵盤ハーモニカは日本が発祥という説があるそうです。
笙のような楽器がその源とされています。

実際は、世界同時発生的に、
色々なものがあちこちで作られてきたようです。
そのヨーロッパでの歴史を解説しています。
いかにも今ある鍵盤ハーモニカらしいものが誕生したのは、
19世紀頃のようです。

詳細は、本書をお読みいただくのが一番ですね。

 ・・・

本書で見てきた鍵盤ハーモニカで、私が気に入ったのは、
p.38やp.44、p.57の「ホーナー社製ボタン式メロディカ」ですね。
形状も両手を使うところも、かわいいです。

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(画像:p.44「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

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(画像:p.57上・中 鈴木楽器製ボタン式「メロディオン(ソプラノ)」
 下「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

このボタン式メロディカに「非常によく似た」ルックスの楽器が
日本のみならず世界中で作られた、といいます。

それだけ魅力的なデザインだった、ということのようで、
のちにホーナー社の広告に
「類似品にご注意」という文言が出るようになったそうです。

詳細はこちらのページ(pp.184-188)

「鍵ハモの楽堂――ボタン式メロディカ、クローズアップ!」

両手で演奏するタイプのようで、白鍵に当たるボタンが右手、
黒鍵に当たるボタンが左手で演奏するようになっています。
キーの配列も演奏自体も基本右手が主体ですが、
少しは左手も使うので、
左利きの人もちょっとぐらいは演奏した気になれるかもしれません。

あくまでも私の追求する理想とする形は、左右反転形の左手用です。

 

 ●<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ

最後に、本書を一読して気になったのが、
「第三章」の<エピローグ>にあった、

コロナ禍で、学校の教育現場では口を直接楽器に触れることや、
飛沫の飛散という、衛生面から使用が制約されている、という点です。

今年の5月以降、規制が解除されてきたものの、現場ではどうなのか、
ちょっと気になります。

さらに、近年は少子化でメーカーの販売数が減っているとか、
今後もかわらず、教育現場で一人一台の楽器として利用されていくのか、
非常に気になります。

コロナ禍でタブレット端末が一人一台携帯されるようになりますと、
画面でキーボードを出して演奏する、
なんて形にならないとも限りません。

そうなると、私の考えていた
<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ、
というプロジェクトが空中分解しかねません。

さて、どうなるのでしょうか。

 ・・・

もちろん、電子キーボードの方が断然開発しやすいとは思うのです。
しかし、現状において、物としての鍵盤ハーモニカの左用を実現して、
ピアノの左用へとつなげてこそ、意義があるという気がします。

なんとかメーカーさんにお願いして実現させたいものです。

要はお金の問題だという意見もあるのです。
でもそれをいいますと左用のお道具の類いの問題は
みなそれに集約してしまいます。

そうではなくて、あくまでも多様性の実現という観点から、
左利き用の楽器を他の左利き用のグッズの類いと同じように、
普及させていきたいと思い、この問題を考えていきたいのです。

 ・・・

次回は、過去のメルマガで、この鍵盤ハーモニカをどう扱ってきたのか、
その辺を振り返ってみたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(15)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」と題して、今回も全紹介です。

今や小学校の教育現場で一般化している楽器、鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。

私自身は、このピアノへつながる第一歩の楽器とされる鍵盤ハーモニカで、左用を採用させて、次にピアノへと進めてゆこうというのが、一つの左用楽器普及への道だと考えているのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2023.08.31

<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・東野圭吾『白夜行』-楽しい読書349号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年8月31日号(No.349)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・
 東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年8月31日号(No.349)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・
 東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」
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 一回遅れてしまいましたが、
 「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から」の三回目
 「集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。」
 からの一冊を紹介します。

 先号でも書きましたように、

 大阪も連日35度を超え、時に37度、38度といった猛暑の日々、
 予定していた、東野圭吾『白夜行』が読み切れず――
 文庫本860ページ、十年ほど前に一度読んでいるので大丈夫、
 と軽く見ていたのですが、メモ取りしながら読むと……。

 時間切れとなり、予定を変更することになってしまいました。

 
新潮文庫の100冊 2023
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏推し2023
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2023 | 集英社文庫
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

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 ◆ 2023年テーマ:青春の思い出も背景に散りばめられた一冊 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)

  集英社文庫・東野圭吾『白夜行』-昼と夜または光と闇、明と暗-

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 ●集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。

どんな作品が選ばれているのかといいますと――

★映像化する本よまにゃ(3) [既読作品]0

★ワクワクな本よまにゃ(18)0

★ハラハラな本よまにゃ(19)人間失格 白夜行

★ドキドキな本よまにゃ(15)0

★フムフムな本よまにゃ(26)23分間の奇跡 舞姫 星の王子さま
                夢十夜・草枕    

全81冊中、既読作品は、6冊だけ。
海外作品や古典的名作が選ばれていない
ということも理由ではありますが、ただただ、私自身、
最近の日本の作家の作品をほとんど読んでいない、ということですね。

新たな作家さんと出会ういい機会なはずなのですが、
今年は、子供の頃や思い出をテーマに選んだ感じですので、
少ない既読作品の中から、最も最近の作品である、
東野圭吾さんの『白夜行』を取り上げます。

 

・東野圭吾『白夜行』集英社文庫 2002/5/25

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 ●東野圭吾『白夜行』

前回の角川文庫は、「わが青春の思い出の一冊」として、
筒井康隆『時をかける少女』を紹介しました。

今回は、わが青春の日々の思い出を背景に散りばめた、
といいますか、
私の青春時代の1970年代辺りから90年代辺りまでの
約20年を背景にしたクライム・ストーリーです。

巻末解説の馳星周さんによれば、ノワールとのこと。
ノワールというのは、私の思うところでは、
暗黒界、闇の世界の住人たちによるクライム・ストーリー
というところでしょうか。

11歳の小学生時代から30歳まで19年にわたり
太陽の光の下を歩いたことのないという、少年と少女の日々の物語。

19年の歴史を綴るわけですから、
やっぱり文庫本で860ページは必然だったのでしょうね。

読み応え十分で、あっという間に読み終えられる名作です。
(こういうと、ちょっと矛盾を感じるかもしれませんね。
 でも、年のせいなのか、集中力がないのですね。)

 

 ●始まりは19年前、主人公たちは小学5年生

冒頭、いきなり「近鉄布施駅」が登場します。
私の家の最寄り駅でもあります。
小説では、駅を出ると西に行くのですが、私の家は東です。

西へ行きますと、わが故郷・東大阪市ではなく、大阪市になります。
東野圭吾さんは大阪市出身ですので、いってみれば、
故郷を描くということになるのでしょうか。

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「第一章」
「事件」の舞台も、わが故郷に近い場所で、
描かれる時代も、わが青春の日々の1970年代のようです。
《三月に熊本水俣病の判決がいい渡され、新潟水俣病、四日市大気汚染、
 イタイイタイ病と合わせた四大公害裁判が結審した》とありますので、
これは昭和48年(1973)のこととわかります。

公園近くの、今では子供の秘密の遊び場となっている、
工事途中で廃ビルになった建物で、近所の質屋の主人・桐原洋介が
細身の刃物で刺し殺される事件が起きます。

これが発端。

担当刑事の笹垣らが、捜査に当たります。
質屋の主人には妻・弥生子と一人の小学5年生の息子・亮司がいて、
店には店長の松浦がいた。

桐原は当日、銀行で100万円をおろしたのち、手土産にプリンを買って、
店の常連客の一人、小学5年生ながら美人の雪穂という娘を持つ、
シングルマザー・西本文代の元を訪れていた……。

結局、事件は迷宮入りとなり、
容疑者とも目された西本文代はガス中毒事故で死亡。
発見者は娘の雪穂と部屋の鍵を開けた不動産屋。

 

「第二章」
雪穂は、母の死後、
父方のお花やお茶の先生をしている親戚の上品な婦人の養女となり、
今や私立女子校の中学三年生となっていた。
他校の男子生徒から盗撮されるほどの美人の人気者であった。
テニス部の美少女が襲われ、偶然発見したのは、雪穂と友人の江利子。
一方、桐原の息子・亮司は地元の荒れた公立大江中学校の生徒であった。
ここの生徒が雪穂の盗撮をしていたのだった。

 

 ●ストーリーの時代背景

こういう風にストーリーを追っていると、
いくらスペースがあっても追いつきませんので、
物語の背景などについて書いてみましょう。

冒頭の四大公害裁判の結審に現れているような、
その時代を示す社会的出来事の記述が各所で登場します。

何しろ19年の流れを持つ小説ですので、
その時代時代の背景がストーリーにも適宜織り込まれることで、
臨場感といいますか、時代感覚が明らかになります。

また、主人公たちの成長が、特に亮司の生業が
ちょうどパソコンやゲームの普及や発展の歴史と相まっていて、
インベーダーゲームや、ワープロ、PCなどの固有名詞が
時代背景を現実的にみせています。

私のようにそれなりに、
この時代を青春時代のひとときとして過ごしてきたものには、
とても郷愁の湧くものがあります。

松田聖子の聖子ちゃんカットなんていうのも出てきましたね。

 

 ●昼・光・明の雪穂と夜・闇・暗の亮司

雪穂は、お花やお茶の先生をしているという、
上品なご婦人の養女となり、家庭教師を付けてもらったり、
私立のお嬢さま学校に進学、中学高校大学と進んでゆきます。

そして、大学のソシアルダンス部に入部、
合同練習相手の永明大学の大企業の御曹司のエリート男性と知り合う。
結婚後も貪欲に自分の夢の実現に向けて努力を続け、
自分の資産で遂にアパレルの店を持ち、離婚後も事業を拡大、
経営者として成功を収める。

というように、
雪穂は光、昼日中花咲く明るい世界を歩んでいるように見えます。

 

一方、亮司は、荒れた地元の公立の中学に進学し、
危ない世界にも足を踏み込んでゆきます。

1985年(事件から12年後)の年末12月31日、
当時一緒にやっていたパソコンやゲームの店『MUGEN』の閉店後、
同僚の従業員の友彦や弘恵が来年の抱負を話すとき、

 《亮司の答えは、「昼間に歩きたい」というものだった。/
  小学生みたい、といって弘恵は桐原の回答を笑った。
  「桐原さん、そんなに不規則な生活をしてるの?」/
  「俺の人生は、白夜の中を歩いてるようなもんやからな」》p.436

ともらすように、亮司は日の当たらぬ闇、暗い世界の住人のようです。

「俺の人生は、白夜の中を歩いてるようなもんやからな」――
まさにこれがタイトルになっているのですね。

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 ●雪穂の場合

しかし、そんな雪穂も、物語の終わりの方で、こう言います。

 《「(略)人生にも昼と夜がある。(略)人によっては、
  太陽がいっぱいの中を生き続けられる人がいる。
  ずっと真っ暗な深夜を生きていかなきゃならない人もいる。
  で、人は何を怖がるかというと、それまで出ていた太陽が
  沈んでしまうこと。自分が浴びている光が消えることを、
  すごく恐れてしまうわけ。(略)」》

 《「あたしはね」と雪穂は続けた。
  「太陽の下を生きたことなんかないの」/
  「まさか」(略)「社長こそ、太陽がいっぱいじゃないですか」/
  だが雪穂は首を振った。
  その目には真摯な思いが込められていたので、夏美も笑いを消した。
  「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。
  でも暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから。
  太陽ほど明るくはないけれど、あたしには十分だった。
  あたしはその光によって、夜を昼と思って生きてくることが
  できたの。わかるわね。あたしには最初から太陽なんかなかった。
  だから失う恐怖もないの」/
  「その太陽に代わるものって何ですか」/
  「さあ、何かしらね。夏美ちゃんも、
   いつかわかる時が来るかもしれない」》p.826

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「太陽の下を生きたことなんかないの」
「あたしの上には太陽なんかなかった。いつも夜。」といい、
それでも「暗くはなかった。太陽に代わるものがあったから」と。
太陽に代わるものが何かはわかりませんが、
「その光によって、夜を昼と思って生きてくることができたの」
といいます。
さらに、
「あたしには最初から太陽なんかなかった。だから失う恐怖もないの」
という。

こういう振り切った生き方をすることになる原因とは何だったのか、
そして、
そんな自分に力をくれた太陽に代わるものとは何だったのでしょうか。

いよいよラストでは、謎解かれる部分もあれば、
何だったのか明らかにされない部分もあり、
深い内容の物語です。

 

 ●現実に負けないで戦う者同士?

全編、主人公を視点にするのではなく、周辺の人物を視点に、
主人公たちの行動を垣間見せてゆくという技法を取っています。

この手法が時に謎を深めながら、時に謎解きをほのめかせながら、
読者を引っ張ってゆく力になっています。

最終的に、雪穂と亮司の関係はどうだったのでしょうか。
明らかにされているのは、小学生時代、図書館で二人は会っていた、
同じ本を読んでいたということ、ぐらいです。

二人の関係は、
昼と夜または光と闇、明と暗の補完しあう関係だったのでしょうか。

あるいは、闇の中を光を求めて、互いに手に手を取り合い、
助け合って歩む者同士、という関係だったのでしょうか。

それとも全く違う形の何かであったのでしょうか。

作者は何も書いていませんので、私たち読者にはわかりません。
ただ自分なりに想像するだけです。

ラストを思いますと、なんらかの形で、ほのかな希望を胸に、
反骨精神でもって、現実の社会の重さに負けないように、
歯を食いしばって上を目指す者同士だったように思います。

そして、その戦いはまだ終わってはいないようです。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(3)集英社文庫・東野圭吾『白夜行』青春の思い出も背景に散りばめられた一冊」と題して、今回も全文転載紹介です。

わが青春時代の思い出が色々と時代背景の説明として登場する一編です。
冒頭、わが故郷である東大阪市一の繁華街を持つ近鉄布施駅が登場します。
1973年から始まる19年間の物語で、主人公の一人の少年~青年は、パソコンやゲームの世界を背景に生きていくので、インベーダー・ゲームやスーパーマリオ、ワープロやPCなどの固有名詞が出てきます。
松田聖子の聖子ちゃんカットや、ソノレゾレノ時代を代表する歌手の名なども次々と出てきます。
オイル・ショックの時のトイレット・ペーパー騒動なども背景の話として登場します。

ストーリーそのものではないのですが、こういう時代を思い返す読み方も楽しいものです。

映画やドラマにもなったようですが、私は見ていないので、本文中でもふれていません。
見ていたら、また別の楽しみもあるのでしょうね。
あの役はこの俳優さんじゃないよとか、この俳優さんがよかったとか。
「見てから読むか、読んでから見るか」みたいな……。

 ・・・

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2023.08.25

左利き資料展示「左手をご覧ください!」国立国会図書館関西館で開催

8月23日の産経新聞夕刊の「山上直子の 犬も歩けば」というコーナーの国立国会図書館の記事中に、<関西館「左手をご覧ください!」展 来月21日から>というニュースが掲載されていました。

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(画像:産経新聞 8月23日夕刊の記事「山上直子の 犬も歩けば」)

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(画像:産経新聞 8月23日夕刊の記事<関西館「左手をご覧ください!」展 来月21日から>)

内容は――

「左利き」という身近な個性について、そして利き手に関わらず誰もが暮らしやすい社会について、この機会に考えてみませんか? 左利きに関する本や雑誌など約70点を、歴史、科学、社会等の切り口から紹介します。》(国立国会図書館 関西館サイトから)

 

日時は、9月21日(木)~10月7日(火)9時半~18時(日・祝 休館)。

関連講演「左利きの科学と社会 ~多様性と共生について考える~」が、9月22日(金)14時30分~15時45分、山下光氏(関西福祉科学大学教育学部教育学科長・教授)を招き、「けいはんな学研都市7大学連携 市民公開講座2023」において開催されます。

講師から――世界の人口の約10%が左手利きです。なぜ左手利きは少数派なのでしょうか? 右手利きの人と左手利きの人の脳には違いがあるのでしょうか? 右手利き社会で生活する左手利きの人にはどのような不便があるのでしょうか? 左手利きについての様々な疑問を通して、「多様性」と「共生社会」について考えます。また、最近話題になっている左右識別困難(左右盲)についてもお話ししたいと思います。》(国立国会図書館 関西館サイトから)

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(画像:「左手をご覧ください!」展関連講演「左利きの科学と社会」山下 光 /国立国会図書館 関西館サイトから)

*参照:
第31回 関西館資料展示「左手をご覧ください!-左利きというまなざしで、見えてくる風景-」(NDL) 講演会「左利きの科学と社会 ~多様性と共生について考える~」(NDL)

 

サイトから展示の一部の内容を紹介しておきましょう。

第1章 左利きをめぐる歴史
神々の左手 : 世界を変えた左利きたちの歴史 / エド・ライト 著 , ricorico [訳]. スタジオタッククリエイティブ, 2009.6 【GK11-J64】
見えざる左手 : ものいわぬ社会制度への提言 / 大路直哉 著. 三五館, 1998.10【SC71-G177】
第2章 利きとはなにか
左対右きき手大研究 / 八田武志 著. 化学同人,2008.7 【SC71-J47】
左きき学 : その脳と心のメカニズム / ジーニー・ヘロン 編集, 近藤喜代太郎, 杉下守弘 監訳. 西村書店, 1983.6【SC71-304】
第3章 左利きをめぐる現在
ユニバーサルデザイン事例集100 / 日経デザイン 編. 日経BP社, 2004.10 【DH415-H44】
》(国立国会図書館 関西館サイトから)

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(画像:『世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト、『見えざる左手 ものいわぬ社会制度への提言』大路直哉、『左対右きき手大研究』八田武志)

『神々の左手―世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト スタジオタッククリエイティブ 2009/06

『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館 1998/10

『左対右 きき手大研究』八田 武志 DOJIN文庫 2022/5/16

 

左利きに関してこのような企画展示をしてもらえるのは、嬉しい限りです。

左利きについて、利き手について、ご興味をお持ちの方、多様性についてお考えの方は、機会を作ってぜひご観覧いただけますよう、お願い致します。

 

左利きの人にとって不便でない社会というのは、必ずしも左利きの人だけの利益につながるものではない、と私は確信しています。
それはまさに、誰にも暮らしやすい社会になると思っています。

例えば、こんな理由があります。

右利きの人の場合、右手を使えなくなりますと、世の中は非常に生活しづらいものになるからです。
なぜなら、世の中の多くが右手で使いやすい道具や機械やシステムにできあがっているからです。
右手用の道具は選び放題ですが、左手用の道具は限られています。
それだけでも右手を使えなくなり左手を使わなければならなくなった人には、生活しづらいものになるのは火を見るよりも明らかです。

「そんなことは滅多に起きない」という人もいるかもしれません。
でもないともいえません。
私の父も自転車事故で左側頭部を打ち、脳挫傷で右半身不随のようになりました。
(参照:2023.8.10
自転車用ヘルメット買いました!Shinmax自転車ヘルメット57-62cmAFモデル (新生活版)

それが人生というものです。

どうか、一度じっくり観覧してこの問題を考えてみてほしいものです。
いえ、遊び半分でいいので、一度展示を見てほしいものです。
きっと何か心に響くものがあると思います。

私は、このイベントの回し者ではありませんが、ぜひお願いしたします。

 

 ●右利き左利きの問題における<多様性>

最後に、余談ですが――

どんな人がこの企画を話題にしているかしらと検索してみますと、いつも左と右について考えてきたガボちゃんのブログ記事ぐらいでした。

検索して…

文中、一点気になりましたので書いておきます。

何で右利きor左利きで多様になるんでしょうか?/
動作は右か左かの2種類だけで、
多様ではありません。
また左利きの不便はそこに存在しますが、
左利きがすべて左動作とは限らず
右利きがすべて右動作とも言えません。

なるほど、動作は右か左かの違いにすぎない、というのは事実です。

しかし、実際は<右利きの人>or<左利きの人>でないように――(私が呼ぶところの)<中間の人>もいるのです。
また、右利きであれ左利きであれ、それぞれに「右利きであっても右使いとは限らない」という現実があり、逆もまたありで、「手は右利きでも○○は左利き」という現象もあります。

それ故に右利き・左利きの問題もまた、人間としての<多様性>の問題なのだ、と考えています。

 

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2023.08.15

私の読書論173-友人・渡瀬謙の新刊・静かな人のための『静かな営業』を読んでみた-楽しい読書348号

『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』【別冊 編集後記】

2023(令和5)年8月15日号(No.348)
「私の読書論173-友人・渡瀬謙の新刊・
 静かな人のための『静かな営業』を読んでみた」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年8月15日号(No.348)
「私の読書論173-友人・渡瀬謙の新刊・
 静かな人のための『静かな営業』を読んでみた」
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 本来ですと、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から」の
 三回目「集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。」
 からの一冊を紹介する予定でしたが、
 大阪も連日35度を超え、時に37度、38度といった猛暑の日々、
 予定していた、東野圭吾『白夜行』が読み切れず――
 文庫本860ページ、十年ほど前に一度読んでいるので大丈夫、
 と軽く見ていたのですが、メモ取りしながら読むと……。
 で、時間切れとなり、予定を変更することにしました。

 今月初めに本を贈っていただいていた、
 友人で左利き仲間の渡瀬謙さんの新刊を取り上げます。

 彼の著作を取り上げるのは、6月に一度ありました。

2023(令和5)年6月15日号(No.344)
「私の読書論171-渡瀬謙のビジネス書の新刊
『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』から」
2023.6.15
私の読書論171-渡瀬謙『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』から-楽しい読書344号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/06/post-929a0f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/59ae185f3daf8eebaec62cad6639e4f4

*渡瀬謙『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』
日本実業出版社 2023/5/26

 

 今回は正味営業の本をその面から読みますが、
 そこは私流の読書論ですので、
 前回同様、単なる営業本の紹介とは限りません。

 では――。

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 - 「静かな人」の生き方とは、自己アピールとは -

  ~ 営業のノウハウを処世術として人生に活かす(2) ~

  渡瀬謙『静かな営業
  「穏やかな人」「控えめな人」こそ選ばれる30の戦略』
(PHP研究所 2023/7/20)から

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●本書『静かな営業』について

渡瀬謙『静かな営業 「穏やかな人」「控えめな人」こそ選ばれる
 30の戦略』PHP研究所 2023/7/20

 

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(画像:献本いただいた書状と共に)

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(画像:帯を外した本書『静かな営業』)

出版社の紹介文――

《「内向的な人」「無口な人」「控えめな人」でも売れる
 ではなく
 「内向的な人」「無口な人」「控えめな人」
 だからこそ、売れる!
 悩める2000人以上の営業パーソンを救ってきた、
 常識を覆すメソッドを紹介!》

<目次>
第1章 時代は「静かな売り手」を求めている
第2章 「相手がイヤがること」など、何もしなくていい
第3章 「自分の弱点」を活かす工夫をすればいい
第4章 「繊細な人」が最小のコミュニケーションで
     最大の効果を出す方法
第5章 生真面目すぎるあなただから、信頼される
第6章 「静かに売る」ことだけを考えれば、売れる
(コラム)

 

 ●タイトル『静かな営業』に納得!

まず初めに、この本のことを知ったのは、渡瀬さんのメルマガでした。

まず『静かな営業』というタイトルに納得しました。

なるほどなあ、という感じでした。

以前から渡瀬さんは、従来の「元気な」「明るい」
「ハイテンション」な営業に疑問を抱いておられました。

そういう方法は、高度経済成長時代の営業手法で、
現代では嫌われる最たるものだ、と。

では現代において実績を上げているのは、どういうものかといいますと、
意外なことに、
内向型で無口で口下手で、気の弱い押しの弱い営業パーソンが
売上を出すのだ、と。

それは、内向型の人の控えめな売り方が好意を持たれるからだ。
なぜそれが有効かというと、
相手のことを思い、相手にフォーカスした相手本位の対応だから。

要は、売ることよりも、相手の信頼を得ることを重視した、
対等のWINWINの関係を築こうとする姿勢が好感されるからだ、と。

で、こういう押しつけにならない、うるさすぎない営業を、
そのものズバリと「静かな営業」と呼んだわけです。

従来は、(この本の前著ともいうべきPHP研究所の著作では)
『しゃべらない営業』とされていました。

営業の方法の基本は全く変わりません。
一部、時代に合わせて変更されている程度(例:ファックス→メール)。
呼び名が変わっただけ。
よりスマートな名前になっただけですね。

内向的な「静かな人」による、落ち着いた「静かな営業」。

とても気に入りました。

この本は、そういう「静かな人」たちのための、
営業のマインド的なものを教える本です。

 

 ●タイトルを付ける難しさ

渡瀬さんの個人メルマガ

2023/07/27「サイレントセールスのススメ」
[959号]新刊『静かな営業』の裏解説

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渡瀬 謙の独自配信メルマガ
◆無料メルマガ「サイレントセールスのすすめ」
 https://i-magazine.jp/bm/p/f/tf.php?id=watasemail
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に掲載されていた、この「裏解説」にあったのですが――

「内向型」という言葉を使ったタイトルゆえに、
手に取りにくいと感じる読者がいた、というお話です。

ご自分の本は、ネットでよく売れている、といい、
その理由の一つが、この「内向型」という言葉にあるのではないか、
という疑問。

 

これは理解できます。

私自身は左利きで、「左利き用」と銘打たれた商品を手に取るとき、
ちょっと躊躇します。

レジに持っていくときに、何かしら恥ずかしさがあります。
昔は左利きといえば、○○のように考えられていたものでした。
そこで、自ら左利きとカミングアウトするのははばかられるものでした。

商品を手に取り、レジに運ぶというのは、
その言葉(およびそれ自体)にコンプレックスのある人には、
ちょっとキツいものがあります。

私は今でも正直考えてしまって、
手を出さないまま終わるケースがあります。

左利きの本をネットで購入したりするのは、
単に近くの本屋さんに置いていないから、だけではありません。

 

私の「左利き」コンプレックス同様に、
「内向型」等の言葉も、どちらかといえばマイナスイメージの言葉で、
それがネックになり、読んでみたいのに手に取れない、
というもどかしさを感じる人がいてもおかしくはありません。

そういう意味で、「静かな人」向けの「静かな営業」という発想は、
マイナスのイメージが払拭されていて、
正当に評価できる機会を与えるものとなっているでしょう。

 

 ●自己アピールとしての営業行動

この本は営業の本ですけれど、
営業といっても、「相手との信頼関係を築け」という内容で、
そのための自己アピールの方法を解説している本でもあります。

 

営業という行為は、商品を売るときに行うものだけではない、でしょう。
自分をアピールするというのも、営業の一つと考えられます。

生きてゆく上で、自分を知ってもらうということは重要です。

リタイア組であっても、新たな人間関係を築く必要が出てきます。

逆に言えば、リタイア組こそ、
自分を「売ってゆく」必要があるかもしれません。

リタイア組となりますと、
どうしても友人知人との交際範囲がどんどん縮小してゆきます。
自然と縁が切れる人、亡くなる人もでてきます。

そんななか、一人寂しく孤立してしまうこともあるかもしれません。

一方で、スマホにしろ、マイナンバーカードもそうですが、
次々とIT関係など、色々わかりにくいことがでてきます。

ちょっと人に聞けばわかることでも、
聞く相手がいないというケースも出てきます。

自分の便利のために他人を利用するというのではないのですが、
何事であれ、ちょっと話を聞いてもらえる人がいるのは、
助かるものです。

若い人と話せば、若いエキスを吸収できるものです。
肉体は若返らないけれど、心は若返ります。
元気がもらえます。

賢いお年寄りと近づきになれば、いろんな経験を教えてもらえます。

年をとるということは、
日々未知の領域に足を踏み込むことでもあります。
先を行く経験者の知恵は役に立ちます。 

老後も長くなってきた昨今ですので、積極的といわなくても、
少しは自分をアピールして、交友範囲を拡大するように心掛ける方が、
楽しい時間を過ごせます。

 

 ●自己紹介は特徴をより具体的に

人間関係というものは、実は単純なもので、
ほんのちょっとした挨拶や声かけから始まるものです。

そういう自己アピールの仕方なども、この本には書いてあります。

コラムにある自己紹介の仕方がそうです。
「相手から声をかけてもらえる「自己紹介」のコツ」p.70

ここに書かれている営業の場面に限らず、
人生では自己紹介の場面というものがあるものです。

そんなときに知っていて役立つ知恵かもしれません。

それは、より具体的に自己の特徴をアピールするということ。

『孫子』の兵法に「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
といいますように、相手はもちろんですが、己についてよく知ることが、
そして、それを正しくアピールできれば、友達も自ずと増えてきます。

 

私は「左利きライフ研究家」を自称していますが、
これも渡瀬さんの本にあった知恵を拝借して考案したものです。

渡瀬さんは「サイレントセールストレーナー」と名のっておられます。
これは、そのまま「静かな営業トレーナー」ということになります。

「名は体を表す」などというように、
単なる「営業コンサル」というのではなく、
「無口で口下手、話し下手の営業さん向けのコンサルですよ」
というアピールですね。

もしあなたが内向型のそういう「静かな人」なら、
単なる「営業コンサル」よりも、どうせなら、
こういう「静かな人」向け専門の営業コンサルに教えを乞うほうが
有効ではないか、という気になるのではないでしょうか。

 

 ●営業ノウハウを生き方に活かす

本書で紹介された営業ノウハウを実際に、
リタイア組も含めた私たちの生き方に活かすことができます。

例えば、《自分のエリアで勝負する》というもの。

サッカーの試合でも、アウェーで戦うよりホームで戦う方が有利、
といわれます。

自分にとって居心地の悪い場所では、精神的に落ち着かず、
実力が発揮できないものです。

常に自分の得意エリアで戦うように心掛ければ、
まさに百戦危うからずですよね。

 

生きていますと、何かしら、壁にぶつかるときがあります。
その時に、壁を乗り越えようとせず、避けて通る、という方法もある、
と渡瀬さんは説きます。

壁は乗り越えなくちゃ、
というふうに思い込んでいる人も少なくないでしょう。

でも、嫌なことから逃げるという手もあるのだ、とよく言われますよね。
そういうものです。

 

 ●個性を武器にする――自然体で生きる

もう一つは、自然体の自分のままで接する、ということ。
弱点を含めて素のままの自分で、
自分を飾らないで人と接するということ。

誰もが何かしら苦手をすることやコンプレックスを抱いているもの。

そういうコンプレックスや苦手なものも、
実は他人と比較したときに感じるもので、
比較しなければ、自分の持つ一つの特徴にすぎない――
優劣ではなく違いだ、言い換えれば個性だ、と渡瀬さんはいいます。

その個性はかならず武器になる、とも。
無口なのに営業をやってるなど、ギャップが生まれるからだ、と。
そのギャップが他人様にアピールできる要素となる。

 

このように、自分の性格を個性としてそのまま出す生き方――
その方が楽ですよね。
毎日演技して生きているのは大変です。

役者が天職といえる人がいたとしても、
そんな人でもホントのところはどうなんでしょうか。
無理せず生きていく方がいいですよね、絶対。

 

 ●最後に一言だけ

こういう風に見てきますと、やっぱり、一つの生き方論的、
処世術的な要素が感じられる営業の本といえるのではないでしょうか。

もしあなたが「静かな人」なら、
一度手に取っても損はないと思います。

 ・・・

書かない方が、渡瀬さんは喜ぶかもしれませんが
(けなされるのは嫌だ、という人なので。私もそうですよ!)、
やっぱり気がついてしまった限りは書いておく方が、
結果的に良心的ではないか、と思いました。

渡瀬さんも本の中で、どんな商品にも「悪い点」はある、といい、
《マイナス情報こそ先に伝えてしまいましょう》p.162 
と書いておられます。

 

先のメルマガの「裏解説」に書かれていたことですが、
タイトルを付けるときに影響を受けた本として、

『「静かな人」の戦略書
 ──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』
 ジル・チャン/著 神崎 朗子/訳 ダイヤモンド社 2022/6/29

というベストセラーを挙げておられます。

私も内向型の「静かな人」の部類なので気になり、本屋さんで見ました。

すると、装丁も黒に四角い白地の枠で書名が入っている感じで、
一見、『静かな営業』と似通って見えます。

「静かな人」という言葉は、
この本『「静かな人」の戦術書』のオリジナルではありません。

調べた範囲では、例えば『静かな人ほど成功する』
(ウェイン・W・ダイアー/著 幸福の科学出版 2007/2/26)
がありました。

しかも、「静かな営業」という言葉は、
そこからさらに一歩進んでいます。
この書名は、オリジナルといっていいでしょう。

そういう意味では、最初に知らずにタイトルや装丁を褒めたわけですが、
この装丁の相似はちょっと残念な気がしました。

 ・・・

さて、台風も近づいています。
時間に追われてかなりドタバタとした紹介になってしまいました。

かなりメモ取りもしていたのですが、活かせないままです。

一応、テーマやその展開など意識して書いているつもりなのですが、
思うようにはできていません。
ご勘弁ください。

 

最後の最後に、著者の裏解説から一言――

 《長い人生を考えたときに、
  何を優先して頑張るべきかを考えるきっかけにしてほしいのだ。》

――そういう本です。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論173-友人・渡瀬謙の新刊・静かな人のための『静かな営業』を読んでみた」と題して、今回も全文転載紹介です。

時間に追われつつ書いたものですが、少しは何かの足しになっていれば、幸いです。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2023.08.12

8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文-週刊ヒッキイ第647号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第647号(No.647) 2023/8/12
「8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第647号(No.647) 2023/8/12
「8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今年も、暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
 今年はまた一段と暑い夏となっています。
 大阪でも連日35度以上、37度、38度という日もあります。

 で、昨年同様、今年の八月も勝手ながら、合併号として、
 第二土曜日(12日、<国際左利きの日>の前日)にお届けします。

 ・・・

 8月13日<国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY>を前に、
 この記念日について、および
 この日に対するマスメディアの報道への注文(?)を
 書いておきましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ 始まりは1976年アメリカ ◆

 8月13日は「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」

-メディアに注文-
  左利き問題への本質的な取り組みを根底に置いて欲しい

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」について

昨年も書いたことなのですが、
8月13日は「国際左利きの日 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」です。

毎年この日に関しては、ブログ等で書いていますように、
日本語版 Wikipedia「左利きの日」等で紹介されている、

《1992年8月13日、イギリスにある「Left-Handers Club」により制定》

という、“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説は、
あくまでもこの会の「主張」であって、真実ではありません。

正しくは、1976年アメリカで始まった、が正解です。

英語の「International Lefthanders Day」
「International Lefthander's Day」等で検索しますと現れます、
英語版のWikipediaやその他の左利き系サイトには、

(私の英語読解力に誤りなければ)
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカに開店した
左利き用品店のオーナー、ご自身左利きである、
ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、
開店一周年を機に左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を
「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という
記念日に制定したのです。

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた)

 

イギリスの「Left-Handers Club」は、
イギリスの左利き用品専門店「Anything Left-Handed」の顧客を
もとにした左利きの人の会です。
「Anything Left-Handed」は、2018年に開店50周年を迎えたという、
1968年創業の老舗ですが、
当初は右利きの人が始めた隙間狙いの業態でした。
その後、左利きの人がオーナーとなり現在に至るのでした。
ロンドンという大都会での営業ということで、
特に宣伝に知恵を絞らなくても、世界中からお客さんが集まり、
結構経営的には、そこそこだったのでしょうね。

 

一方、州都とはいえ、アメリカの田舎での営業ということで、
1975年に開業した後発のお店であるキャンベルさんの左利き用品店は、
色々な工夫と宣伝が必要だったのかもしれません。

そこで、こういうイベントを考案されたのでしょうか。

イギリスの方は、キャンベルさんちが一足先に始めた
この記念日にあとからのっかったという形でしょうか。
(ほんとうのところは存じませんが……。)

 

 ●<国際左利きの日>の日本での報道について

さて、この8月13日の<国際左利きの日>ですが、
当日、テレビのニュース番組やネットのSNS等で、
「今日は何の日?」的に紹介、取り扱われることがよくあります。

そんな今までに見たテレビや雑誌、ネットの報道や投稿等について、
私の思うところを書いてみます。

 ・・・

先ほども書きましたように、
この日のテレビ番組やネットの投稿などでよくあるのは、
「今日は何の日?」的なニュースです。
それらではもっぱら次のような扱いが為されてきました。

まずはこの記念日について、

(1)「8月13日は<国際左利きの日>ですといい、
左利き用品の普及や生活向上を考える記念日で、先に書きました、
“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説を紹介する。

次に、左利きの人の日常生活での不便について、

(2)左利きの人の日常の不便の具体的な例として、
左利きの人は右手用のハサミの扱いで困るとか、
自動改札機が使いにくいとか、ファミレスのお玉が使いにくい等――
左利きの人の証言を流す。

という形が多いのですね。

(2)に関しましては、もちろん間違いではないのですが、
そもそもなぜ子おような現象が起きるのか、
どのような理由でこれらの左利きの人の不便が生まれるのか、
という根本の考察が見られません。

現象面のみが取り上げられるだけで、
それでは根本的な解決にはつながりません。

ただ単に記念日を取り上げただけの、
「気遣いましたよ」というポーズだけの発信です。

 

 ●「左利きの日」についてのメディア・発信者への注文

ここで、私からの注文です。

(あ)“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説をやめ、
 “1976年アメリカのキャンベル”説の正しい情報に差し替える。

(い)左利き用品の紹介の前に、なぜそのようなものが必要か、
 を「利き手の違い」という本質から解説する。
  
(う)現状の社会は、右利き優先/偏重の社会――「右利き社会」だ、
 という事実を示し、右利きの人は多数派ゆえに「恵まれた存在」だ、
 という認識を明らかにする。

 

 ●誤りを正したいという願い

(あ)“1992年イギリス・レフトハンダーズクラブ”説をやめ、
 “1976年アメリカのキャンベル”説の正しい情報に差し替える。

冒頭に書きましたように、
日本語版 Wikipedia「左利きの日」等で紹介されている
「1992年イギリス制定」説を鵜呑みにしたかのような、
情報を垂れ流している人たちがいる、というのが
いつも気になっているのです。

とにかく、この日本での「1992年イギリス制定」説はなんとかしたい、
という願いです。
それは何も、イギリスの左利きの会の人がマネした、とかパクったとか、
非難するというのではなく、もっと単純に
「もっと長い歴史があるのですよ」と強調したいということです。

左利きの人たちは、
「もっと昔から不便を解消しようと努力してきたのだ」
という事実を明らかにしてほしいのです。

日本語版 Wikipediaをチェックする係の人もいるらしいのですけれど、
どこにいえばいいのかわかりません。

 

 ●利き手の違いという本質論を

(い)左利き用品の紹介の前に、なぜそのようなものが必要か、
 を「利き手の違い」という本質から解説する。

テレビ番組の「左利きの日」のトピックとして、
左利きの不便について、右利き用の道具を左手で使ったり、
左利きの人のインタヴューを交えたりした動画を流す場合もあります。

左利きの不便について、現象面として確かにそのとおりなのですが、
そもそもなぜそういう状況になっているのか、
という本質について考えて欲しいのです。

 

前号

第646号(No.646) 2023/7/15
「週刊ヒッキイhikkii×楽しい読書コラボ企画:
 新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(1)新潮文庫
 左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ
 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』」
2023.7.15
左利きライフ研究家が読む――ブレイディみかこ『ぼくはイエローで…』
-週刊ヒッキイ第646号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/07/post-e456f6.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/bef4ad5a52cfa242388eb430fbc39b3f

 

で、ブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』のなかの、
エンパシーについて「自分で誰か人の靴を履いてみること」
という場面があります。

それに対して左利きの問題は、
「靴の左右を入れ替えて履く」ようなものだ、と書きました。

「右利き優先/偏重社会」で生きてゆく左利きの生活は、
左右の靴を入れ替えて履くような違和感があるものだ、という意味です。

以前、音楽に関しての号では、『マンウォッチング』にあった、
指組の例を挙げました。

第627号(No.627) 2022/10/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(6)左利きは楽器演奏に不利か?」
2022.10.1
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)
楽器における左利きの世界(6)不利な楽器-週刊ヒッキイ第627号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/10/post-6d2221.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7142edd7f782a8478966aa6006f16d06

 

指組も人により、決まった組み方があり、右手の親指が上になる人、
逆に左手の親指が上になる人がいます。
それを逆に組むと何かしら違和感があり、しっくりきません。
それが利き手の違いに似たようなものだ、と説明しました。
 

『マンウォッチング(上)』デズモンド・モリス 藤田統/訳
 小学館ライブラリー13 1991/11/1
「動作」p.20の指組イラスト

220930manwatching-yubigumi 220930manwatching-yubigumi-2

 

 

昔、左利きの不便について右利きの人に話した際に言われたことは、
「(左利き用の道具がなくて不便だというけれど、
 右手があるのだから、右手用を)右手で使えば済む問題」と。

「利き手・利き側とはなにか」という本質を知解していない発言です。

右利きの人に「どうして右手を使うのですか」と問いかけたとき、
こう答える人がいました。
「右手を使うように教えられたから」と。

例えば箸を使うとか字を書くとかの場合は、
そういうこともあるかもしれません。

実際に、字を書くのは右だけれど、箸は左という左利きの人がいます。
箸を使うというのは食事の際の行動で、早い段階から利用するものです。
一方、字を書くのは小学校に入る前、4、5歳ぐらいからでしょうか。

しかし、そもそも右利きの人の場合は、教えられなくても、
まず右手でものをつかむという行動に出ます。
左利きの子は、自然と左手が出ます。

教える教えないという段階よりも前に、そういう動作をするものです。

そういう利き手・利き側の性質をまずはしっかり理解できるように、
解説してほしいものです。

その上で、「右利き優先/偏重社会」で生きている
左利きの人の不便を伝えて欲しいのです。

 

 ●現状は「右利き優先/偏重社会」という「右利き天国」

(う)現状の社会は、右利き優先/偏重の社会――「右利き社会」だ、
 という事実を示し、右利きの人は多数派ゆえに「恵まれた存在」だ、
 という認識を明らかにする。

「左利きの不便」を裏から見れば、それは「右利きの便利」そのもので、
社会のあらゆる場面で、右利きを想定した状況が作られているのだ、
という事実をしっかり示し、右利きの人がいかに廻られた存在であるか、
ということを明確に示して、理解してほしいものです。

人は、自分が恵まれていると自覚したとき、余裕を持てたとき、
初めて人に「施す」という気持ちになるものです。

恵まれているからこそ、その一部でも人に分けてあげたい、
人と分かち合いたい、と思うものなのです。

右利きの恵まれた現状を知ることで、
他の立場の人への思いが生まれてくるものなのです。

 

今、右利きの人たちの多くは、自分たちの置かれている状況を、
「ふつう」と捉えているのではないでしょうか。

実は、それは「ふつう」ではなく、
主流派の、多数派の、優遇された立場なのだということを、
しっかり自覚して欲しいものです。

そういう報道をメディアの人たちには、心掛けて欲しい、
と私は思います。

 

 ●最後に――左利きの人のための実用書をもっと出版して欲しい

この手のニュースなどでは、
左利き用品のあれこれが紹介されるケースもあります。
それはいいのですけれど、たいていはありきたりなもので、
そんなの知ってるよ、というものも結構あります。

反面、左利きの本の紹介などはほとんど見られません。
その点をいつも残念に思ってきました。

ネットで、YouTubeなどの動画で、
なんでも勉強できる時代ではありますが、
いつでも手元に置いて参照できる紙の本の力は、
まだまだ捨てきれないものがあります。

 

昔から、左利きや利き手・利き側に関する科学的な研究本は
色々と出版されています。
とはいえ、最新の本といえるものがほとんどない状況です。

(2022年)
『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫 2022/5/16
――日本の利き手研究の第一人者による、2008年発行のDOJIN選書版の
 増補文庫版

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(2021年)
『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き
「選ばれた才能」を120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社
2021/9/29
――左利き・利き側の科学解説書というより、<左利きの脳内科医>に
 よる“左利き応援本”というのが本当のところでしょうか。

211006sugoihidarikiki

 

ただ最近では、ポツポツとではありますが、
左利き用の実用書の類いが出るようになっています。

左利き用のペン字練習帳とか、ギターのコード・ブックとか。

こういう本の方が、まさに実用性が高く、
科学的な解説書より需要があって、便利なものかもしれません。

 

(2021年)
『左利きギター専用! ギターコードブック』
ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス 2021/3/14

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(2020年)
『左利き用 誰でも一瞬で字がうまくなる大人のペン字練習帳』
萩原 季実子/著 アスコム 2020/7/23

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今年7月には、編み物の本が出ました。

編み物というのも、左利きの人にはむずかしいところがあるようです。

両手に針を持って編むものもあるでしょうけれど、
片手に針を持ってするという編み方もあるようです。

その場合、右手に針を持ってどうするこうする――
という教え方が基本になっているため、
左利きの人は二の足を踏むことも多いようです。

そういう人に朗報ですね。

(2023年)
『左利きさんのためのはじめてのかぎ針編み』佐野 純子/著
日東書院本社 2023/7/19

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《手芸好きの左利きさん必携の一冊ができました!
 【左利き専用】かぎ針編み入門書
 編み物を諦めていた左利きの担当編集者が、
 どうしても編めるようになりたくて作った一冊》

 

著者は、《右利きの母から初めて編み物を習》ったという、
文部省認定毛糸編物技能認定1級で、人形作家、左利きの佐野純子さん。

 ・・・

今後ともこういう左利きの人のための実用書が、
様々ジャンルにおいて出版されることを期待します。

 ・・・

毎年書いてきました過去の
<8月13日国際左利きの日>に関するブログ記事は、
以下↓のカテゴリからご覧になれます。

*『レフティやすおのお茶でっせ』〈8月13日国際左利きの日〉カテゴリ 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「8月13日<国際左利きの日>を前に~メディアに注文」と題して、今回も全紹介です。

<国際左利きの日>を前に、この記念日をニュース等で取り上げてくださるテレビ番組や、メディア、SNS等で個人的に発信してくださる人たちには、感謝の気持ちを表明しておきましょう。

しかし、これらのせっかくの好意に、どうしても素直になれない自分がいます。

それはなぜかと考えますと、やはり本当のところ、どうも当事者である私の心に響かない部分がある、ということです。

正確な事実が反映されていなかったり、現象面を撫でるだけで、本質に踏み込まない報道になっているからではないか、と思います。

そこで、今回こういう注文を書いてみました。

ご理解いただけると嬉しいのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2023.07.31

<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』-楽しい読書347号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年7月31日号(No.347)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・
筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年7月31日号(No.347)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・
筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2023から――。

 昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 第二回は、角川文庫から筒井康隆『時をかける少女』を取り上げます。

 

新潮文庫の100冊 2023
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏推し2023
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2023 | 集英社文庫
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

230710natunobunnko

(画像:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023小冊子3点)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ 2023年テーマ:わが青春の思い出の一冊 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)
  角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●角川文庫 カドブン夏推し2023

カドブン夏推し2023/しらない世界とつながる!
13点 既読:0

カドブン夏推し2023/驚きの謎とつながる!
15点 既読:0

カドブン夏推し2023/語りつがれる想いとつながる!
22点 既読:D坂の殺人事件、蜘蛛の糸・地獄変、海と毒薬、檸檬、
      吾輩は猫である、坊っちゃん、こころ、走れメロス、
      少女地獄、注文の多い料理店、銀河鉄道の夜、馬鹿一、
      羅生門・鼻・芋粥、人間失格、
      ビギナーズ・クラシックス源氏物語(15点)

カドブン夏推し2023/心揺さぶるラストへつながる!
20点 既読:0

カドブン夏推し2023/大人も子どももみんながつながる!
25点 既読:アルケミスト、時をかける少女(2点)

五つのジャンルで95点の中から選べます。

既読といっても、角川文庫版ばかりではなく、
他社版も含めてのもので、近代の日本文学の名作ぐらいですね。
短編集に関しては、内容はそれぞれですので、表題作に関して、
というところです。

最近の作家やその作品は、私にとって、
結構知らない、読んだことのない作家・作品ばかり、
ほとんど手つかず状態です。
そこから選ぶのは非常にむずかしい。

というわけで、未読の作家・作品を選ぶのがいいのでしょうけれど、
新潮文庫では新顔作家を取り上げましたので、
今回は、思い出の作品ということで、既読の本の中から選びましょう。

 

 ●大人も子どももみんながつながる!―『時をかける少女』筒井 康隆

そんな中から選んだのは、
<大人も子どももみんながつながる!>25点中から

 ↓

『時をかける少女』筒井 康隆 角川文庫 新装版 2006/5/25

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(画像:筒井康隆『時をかける少女』と「角川文庫 カドブン夏推し2023」フェア小冊子)
(画像:筒井康隆『時をかける少女』と「角川文庫 カドブン夏推し2023」フェア小冊子の該当ページ)
 

思い出の一冊です。

ある意味で、古典中の古典ともいうべき一冊ですね。

1960年代のジュブナイルSFの名作で、
1970年代から、初々しいヒロインによる青春ドラマとして、
度々テレビ・ドラマに映画にアニメに、
と映像化され続けてきた作品です。

中学時代からSF作品には触れていましたが、
この作品もそういう中学生向けのジュブナイルSFでした
(原作は、学年別学習雑誌、学習研究社『中学3年コース』
 1965年11月号~『高校一年コース』1966年5月号連載)。

 ・・・

映像化作品については、本書の巻末の江藤茂博さんの解説
(「時をかける少女」の文彩(フィギュール))で紹介されています。

まずは、それら映像作品について書いておきましょう。

 

 ●「NHK少年ドラマシリーズ」第一作『タイム・トラベラー』

私が最初に見たのは、1972年1月1日~2月5日(6回)放送
「NHK少年ドラマシリーズ」の一作、『タイム・トラベラー』
(脚本:石山透 主演:島田淳子=浅野真弓)でした。

放送は、私が高校の三年生のお正月からですね。
毎回楽しみに見ていました。

この時間帯(夕方6時代)は昔から子供向け番組が放送されていました。
『ひょっこりひょうたん島』など人形劇が有名でしたが、
それまでの時間帯にドラマが放送されました。

好評で続編『続 タイム・トラベラー』
(昭和47年11月4日~12月2日/5回)も作られました。

『タイム・トラベラー』は、全6話。
原作よりも多くの登場人物を配置し、精神科のお医者さんらも登場、
早い段階でネタ――自分で発明した薬品で、
27世紀の未来からタイム・リープ(時間跳躍)してきた、
ケン・ソゴルが未来へ帰るための秘薬の実験の事故で、
中学三年生のヒロイン芳山和子がタイム・トラベラーとなった――
を割り、ヒロインと未来人の男性のタイム・トラベルの冒険を
科学者が解明しようとしたり、複雑なストーリーに仕立てています。
最終的な結末――過去や未来は変えられない――は同じなのですけれど。

 

今回、何十年ぶりかでシナリオを読んでみますと、
こういう内容だったか、と記憶のなさにびっくり。
印象が変わってきました。

原作は、文庫本100ページぐらいのが中編で、
割とストレートにストーリーが進みます。

連続ドラマということで、膨らませた部分があるということですね。

当時の男の子はタイム・トラベルのSFの部分とその冒険に、
女の子はヒロインの異常な事態による不安と「彼」との冒険に
心ときめかしたのでしょう。

 ・・・

「NHK少年ドラマシリーズ」では、もう一作、
筒井康隆の作品を原作とする名作がありました。

多岐川裕美主演で、テレパス(精神感応者)の七瀬と、
その仲間となる超能力者たちの冒険物語『七瀬ふたたび』です。
これは、人の心が読めるテレパスの飛田七瀬のシリーズ全三作の第二作。

私の選ぶ「NHK少年ドラマシリーズ」のベスト3の一つです。
(残りの一つは、新田次郎原作の『つぶやき岩の秘密』――
 石川セリが歌った主題歌「遠い海の記憶」が印象的でした。)

*参照:
・『タイム・トラベラー』石山透 大和書房 1984/2/1

――1972年、NHKドラマ『タイム・トラベラー』全6話、と
 続編『続・タイム・トラベラー 』全5話のシナリオ集。巻末に
 「NHK少年ドラマシリーズ放送作品リスト」、主題歌楽譜を収録。

・『タイム・トラベラー』石山 透 復刊ドットコム 新装版 2016/12/13

・雑誌『東京おとなクラブ 5号』(1985年6月1日)
 <タイムトラベラーと少年ドラマシリーズ>特集・号
――「NHK少年ドラマシリーズ」のリストと解説や、
 第一作『タイム・トラベラー』制作者のインタビューなど。

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(画像:角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』(2006年新装版)と
「NHK少年ドラマシリーズ」シナリオ集『タイム・トラベラー』石山透・著(大和書房 1984/2/1)と
『カドカワ フィルム ストーリー 時をかける少女』原田知世主演 大林宣彦監督作品 角川文庫 ‎1984/11/1と
雑誌『東京おとなクラブ』5号(「NHK少年ドラマシリーズ」特集から『タイム・トラベラー』の一シーン写真)

・『七瀬ふたたび』筒井 康隆 新潮文庫 改版 1978/12/22
――テレパス(精神感応者)飛田七瀬シリーズ全三作の第二作の長編。
 第一作・連作短編集『家族八景』第三作・長編『エディプスの恋人』。

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(画像:筒井康隆『時をかける少女』と
テレパス(精神感応者)飛田七瀬シリーズ全三作の第二作の長編『七瀬ふたたび』(筒井 康隆 新潮文庫 改版 1978/12/22) 第一作・連作短編集『家族八景』 第三作・長編『エディプスの恋人』)

 ●大林宣彦監督、原田知世主演『時をかける少女』

二度目の映像化が、1983年7月公開の角川映画による
大林宣彦監督、原田知世主演『時をかける少女』でした。

連続ドラマと違い、一気に見せる映画ですので、
ストーリーも比較的ストレートに進行します。

主人公・芳山和子は高校生となり、
舞台も尾道と限定され、また違った雰囲気のお話になっています。

私はラストの薬学教室へ向かう場面で、
タイム・トラベルに関する記憶を奪われた、
大人になった芳山和子が“再来”したケン・ソゴルと出くわし、
何かを感じる和子の様子が印象的でした。

・『カドカワ フィルム ストーリー 時をかける少女』筒井康隆原作
大林宣彦監督作品 角川文庫 昭和59年 ‎1984/11/1

 

 ●その他の映像化作品

その他の映像化作品については、見ていません。

内田有紀主演のフジテレビ系の連続テレビ・ドラマがありました。
それは知っています。

また、この文庫本の新装版のカバーになっている、
劇場版アニメのことも知ってはいます。

懐かしさを感じたものの、改めてみるということはありませんでしたね。

私の場合、先の二作のイメージが強烈に残っていて、
他の作品を受け入れるのは、ちょっと……という気持ちだった、
ということでしょうか。

 

 ●『時をかける少女』の切なさと希望

改めて原作の『時をかける少女』にもどりましょう。

この作品の急所といいますか、象徴的存在がラベンダーの香りです。

文中にもありますように、香水に使われたりして、
よく知られた香りなのでしょうけれど、
私が思い浮かべるのは、北海道のラベンダー畑ですね。

ドラマ『タイム・トラベラー』では、実際にケン・ソゴルが北海道へ、
ラベンダーを探しに行きます。

このラベンダーの香りというのが、
この作品を非常にロマンチックなものにしています。

お花と少女と、幼い頃からの同級生だったはずの男の子――
その彼との別れとともに、共に過ごしたはずのその記憶すら失われる、
という切ない初恋の物語。

《ただ、ラベンダーのにおいが、やわらかく和子のからだをとりまく時、
 かの女はいつもこう思うのだ。/
 ――いつか、だれかすばらしい人物が、
 わたしの前にあらわれるような気がする。
 その人は、わたしを知っている。
 そしてわたしも、その人を知っているのだ……。/
 どんな人なのか、いつあらわれるのか、それは知らない。
 でも、きっと会えるのだ。そのすばらしい人に……
 いつか……どこかで……。》p.115

 

切なくも優しい物語です。

多くの人は映像化作品でストーリーはご存知だったろうと思います。
しかし、実際に読んでみるのとではまた違うでしょう。

小説の方が、もっと心優しいお話、という感じがするのは、
私だけでしょうか。

他の筒井康隆さんの小説をほとんど読んでいませんので、
よくわかりませんが、筒井さんのものとしては、
本当にストレートな小説なのかもしれません。
ジュブナイルならでは、かもしれませんけれど。

若い人も老いたる人も、一度は読んでいただきたいものです。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」と題して、今回も全文転載紹介です。

青春時代の思い出の一冊でもあり、私より下の世代の方にも映像化作品でおなじみの一作ではないでしょうか。
それぞれの世代毎に作品は違っているでしょうけれど、それぞれの思い出をお持ちのことと思います。
しばしの間、思い出に浸るのもよいかと思います。

 ・・・

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