2024.11.02

週刊ヒッキイ第674号-告知-楽器における左利きの世界(26)まつのじん(1)

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】改め【最新号・告知】

第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」

 

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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」
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 今回は、昔拾い集めていた左利きと音楽のウェブ情報から、
 左利きのヴァイオリニスト・まつのじん さんのサイト

241102-matunojin-1s

(画像:まつのじんさんの“横顔”――写真は正面ですが) 

 

 <まつのじんWebsite> 平和ねがいて 弦なりやまず
http://mjin.m1001.coreserver.jp/

 の中のレフティのページ

 「左ききは、アカン⁉️ WHO is LEFTY¿」(2019年8月13日)
http://mjin.m1001.coreserver.jp/%e3%83%92%e3%83%80%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88/

 から、色々と考えてみたいと思います。

 まずはその一回目として、「まつのじん」さんについて知る意味で、
 「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日
 を取り上げ、紹介します。

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 左利きと楽器演奏について考える

   左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さん(1)
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 ●左利きのヴァイオリニスト「まつのじん」さんについて

まつのじんのエッセイ&書評 Essays(Japanese)
「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日
http://mjin.m1001.coreserver.jp/2019/07/27/%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e5%b7%a6%e5%8f%b3%e8%80%83/

 

 ●「左(手)利き」=「強度の左利き」

 ●「不便益」という考え方

*参照:
『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.20
大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』
(PHP新書)買いました
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-78206b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/740dbc4d5bdd790556aaaefed4dba6d4

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著
PHP新書 2023/9/16
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 ●日本は漢字文化の影響で書き方が二通りある

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2004.2.17
『横書き登場』屋内池誠
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2004/02/post_5.html

『横書き登場―日本語表記の近代』屋内池誠 岩波新書 新赤版 863
2003/11/20
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 ●左利きの「矯正」(=右使いへの転換)行為について

 ●「ヴァイオリン弾きのゴーシュ」として

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2024.7.3
新しい左利き本『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
発売される
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/07/post-e66fa0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ac7d7db2ecd5202dfc09793ee5d2d96e

『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』ピエール=
ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27
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最新号の告知でした。
冒頭と見出し(と参照記事と文献資料)の紹介です。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2024.10.05

楽器における左利きの世界(25)左利き用楽器の可能性は?-週刊ヒッキイ第672号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

第672号(Vol.20 no.17/No.672) 2024/10/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(25)
 なぜ左利き用楽器はギターぐらいなのか?」

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第672号(Vol.20 no.17/No.672) 2024/10/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(25)
 なぜ左利き用楽器はギターぐらいなのか?」
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 このシリーズ「楽器における左利きの世界」も25回目になります。
 早いものです。
 目標は高く、ということでやって来ましたが、
 まったく近づいている感じがありません。

 どこを糸口にすればいいのかわからないままに、続けてきました。
 まあ、そのうち何かぼんやりとでも光が見えてくればいいなあ、
 というところです。

 で今回は、どうして左利き用の楽器があるのはギターぐらいなのか、
 ということで……。

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 左利きと楽器演奏について考える

   なぜ左利き用楽器はギターぐらいなのか?
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 ●左利き用楽器はギターぐらい?

前回までは、ヴァイオリンについて左弾き用がないのはなぜか、
について考えてきました。

結論として、ヨーロッパ社会は左利きを認めない社会であり、
楽器の演奏においても左利きは否定されてきたため、
左利き用の楽器は存在しなかった、ということになります。

 

『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27
『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』(Amazonで見る)

240627-hidarikiki-no-rekisi

という本によりますと――

ヨーロッパ社会においても、
昔は左利きに対して特別な意識はありませんでした。
ごく自然に右手も左手も使う、右手を使う人も左手を使う人もいる、
という状況でした。

社会の進歩発展の過程で、様々な道具が用いられるようになるとともに、
上流社会を中心に食事の際にフォークを右手で使う、
書字に際しても右手を用いる、といった右利きを想定した規範が生まれ、
学校制度の普及とともに、中流以下の階層にも広まってゆきました。
それとともに、左利きが否定され、反社会的な存在、
悪者扱いとされるようになりました。

 

ヨーロッパの芸術音楽の世界は、
上流社会で親しまれ発展したものでした。
その社会は右利きを規範とする社会で、
左利きは社会的に認められない存在だったので、
楽器の演奏においても、左弾きなどは邪道であり、
社会的に認められなかったわけです。

そういう上流社会の芸術音楽が、
しだいに中流以下の階層にも影響を及ぼし、
それまでは存在していたであろう一般庶民のあいだでも、
左利きの演奏が否定されるようになってゆき、
楽器類も右利きのみになっていった、と考えられます。

現在、左利き用の楽器として知られているものといいますと、
ギターの類いぐらいですね。

左利き用ギターの販売で有名な
「谷口楽器」https://taniguchi-gakki.jp/
には、
<レフティギター/ベース、アコーディオン、ハーモニカ専門店>
とあります。
もちろん鍵盤ハーモニカも取り扱い品目に入っています。

この企画では鍵盤ハーモニカについても書いてきました。
まさにこの企画にはピッタリなお店だといえそうです。

人見知りを捨てて、改めて連絡を取り、助言をいただくべきでしょうね。

241005tanigutigakki-lefty-guitar

(画像:谷口楽器のサイトより、レフティギターのタイトル・バナー) 

 

 ●左利き演奏が許される楽器の条件

今回は、先に書きました<なぜ左利き用楽器はギターぐらいなのか?>
について考えてみましょう。

 

簡単に結論を書いてしまいますと――

前回も書きましたように、

--
左利きが否定される社会にあって、
「左利きですから左弾きで」
などという発言は認められるはずがありません。

「左利きは悪」だったのです。
左利きは直すべき悪習、悪癖だったのです!

ヴァイオリンの生まれたヨーロッパに於いても、です。

ヨーロッパ社会での
ヴァイオリン演奏で右弾きしか認められなかったのは、
ヨーロッパ社会では、古くから左利きは否定されていたから、です。
--

ヨーロッパのオーケストラのような芸術音楽においては、
左利きですから左利き演奏で、という考えは認められなかったわけです。

オーケストラなどで演奏される楽器はみな、
右利き演奏しか認められなかった、というのが本当のところでしょう。

もし左利き演奏が許される楽器があるとすれば、

 (1)オーケストラでは利用されない楽器

で、かつ

 (2)構造的に左右対称形であること

これが条件と考えられます。

 

 ●オーケストラで使われる楽器

この条件を満たす楽器にどういうものがあるのか。

私は音楽の知識がほぼゼロなので、
オーケストラで使われる楽器にどんなものがあるのか、
改めて調べてみましょう。

 

【オーケストラで使われる楽器は何?】楽器の特徴とステージ上の配置
2024年9月14日 ガクオンBlog 特集記事
https://blog.gakuon.jp/orchestra-instrument/#st-toc-h-3

によりますと――

・弦楽器
高い順から、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

・木管楽器
フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット

・金管楽器
ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ

・打楽器
ティンパニ、シロフォン・マリンバ、スネアドラム

・編入楽器
《演奏する曲目によって、必要な時のみ登場する楽器》
《その楽器にしか出せない音色や特徴がある》
サクソフォン、ハープ、ピアノ

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(画像:オーケストラの楽器とその配置――ネット記事「【オーケストラで使われる楽器は何?】楽器の特徴とステージ上の配置/2024年9月14日 ガクオンBlog 特集記事」より) 

 

これらの楽器は、やはり左利き用を期待するのは、難しいようです。
現状ではそもそもの発想の中に左利き用の楽器というものがありません。

そのなかで打楽器は、両手にバチを持って叩くので、
利き手の違いはあまり気にならないように思われます。
実際はどうか存じませんが、これは左利き用といいますか、
左利きにもチャンス(?)がある楽器なのかも知れません。

木管楽器は、このシリーズの初期に紹介しました、
フルートを吹く少年の絵にもありましたように、
昔は木管でどっち構えでも吹けるものだったようです。
今ではそうともいえないようですけれど。

 

 ●左利き用が期待できる楽器

というわけで、左利き用が期待できる楽器は、
オーケストラ的な芸術音楽のメインになる楽器ではなく、
民族楽器的なものになってきそうです。
一般庶民が気軽に手にして、日々の生活の中で演奏するような楽器。

ギターがそういう楽器なのかどうかは、
私は楽器にくわしくありませんので、よくわかりません。

雰囲気的にはそんな感じがします。

まあ、その辺は改めて調べ直すとして、
先に挙げました条件から、その(2)構造的に左右対称形であること
という点では、ギターは満たしているように思います。

ヴァイオリンのように複雑な構造を持たず、
わりにフラットな作りになっているように見受けられます。

単純に弦を張り替えれば、左用になる、ような。

作りやすい、可能性のある楽器――それがギターであり、
一般に広く親しまれている楽器でもあり、そういう点からも、
左利き用が生まれる余地のある楽器だったのかも知れません。

 ・・・

今回は簡単ですが、この辺で。

次回からは、また個別に色々な楽器について、
その左利き用の可能性を調べていこうか、と思います。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(25)なぜ左利き用楽器はギターぐらいなのか?」と題して、今回も全紹介です。

今回は、正直どうしようかという迷いの中で書いてきました。
本来なら、一直線に左利き用の楽器作りのためにがむしゃらに突き進む、
という方法が一番なのですが、
具体的にどこからスタートするのがいいのか、わかりません。

もちろんメーカーさんに問い合わせるのが一番でしょう。

でも、もう一つよくわからない、というのが本当のところです。
もうちょっと色々調べて、具体的な話を進められるだけの知識を
身につけておく必要があるように感じています。

――というところでしょうか。

 ・・・

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2024.09.07

楽器における左利きの世界(24)左利きは左弾きヴァイオリンで(3)-週刊ヒッキイ第670号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

第670号(Vol.20 no.15/No.670) 2024/9/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(24)左利きは左弾きヴァイオリンで(3)」

 

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第670号(Vol.20 no.15/No.670) 2024/9/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(24)左利きは左弾きヴァイオリンで(3)」
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 前号は、「左利きでもヴァイオリンは右弾きで」という
 左利きヴァイオリニストの意見に
 「なぜ左利きは左弾きヴァイオリンでなければいけないのか」
 その理由を述べ、反論する第2回目でした。

 今回はその続きといいますか、最終的な結論――
 根本的な理由に基づく反論です。

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 左利きとヴァイオリン演奏について考える

   なぜ左利きは左弾きヴァイオリンでなければいけないのか(3)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●左利きでも右弾きを薦める人たちの理由(再々載)

ネットで調べた「左利きとヴァイオリン演奏」についての発言で、
左利きのヴァイオリニストの人も含めて、ほぼ全員が
「左利きの人でもヴァイオリンは右弾きで」と発言されていました。

今回も改めて、それらのご意見――
「左利きでも右弾きを薦める人たちの理由」
についてまとめたものを書いておきましょう。

 ・・・

【左利きでも右利き用で右弾きを薦める理由】

1.左利き用のヴァイオリンは右用とは構造が違い、手に入りにくい
→ 道具がないので、手に入るもので我慢しましょう!?

2.右手も左手も重要で、利き手の有利不利は関係ない
→ 右手も左手もどちらでも、慣れたら一緒!?

3.ヴァイオリンは集団で演奏することが多く、左弾きは立ち位置が難しい
→ 左弾きでは隣の右弾きの人と弓が当たる、
  弓の動きが逆で一人目立つ、ので困る!?

4.利き手も定かではない、小さい頃から習う人が多いので、
 利き手は関係ない
→ 利き手も小さい頃からなら換えられるという人もいるじゃないか!?

 

 ●「左利きでも右弾き」に対するそもそもの理由

最後に、総合的な反論です。
といいますか、左弾きが認められない理由ですね。

これを説明しておきましょう。

以前少し書いていますが、簡単に言えば、左利き差別といいますか、
左利き否定の思想によるものです。

 ・・・

前回、前々回とそれぞれの反論を書いてきました。
それぞれ理屈は合っていると思います。

ただ「そもそもの理由」というものがあったのですね。

そして、実はそれ自体が大いなる誤りなのだ、という事実が、
実は最も重要なポイントなのです。

「左利きでも右弾き」を推奨するそもそもの理由とは?

それは、左利きそのものが否定されるべき事だった、という事実です。

左利きが否定される社会にあって、
「左利きですから左弾きで」
などという発言は認められるはずがありません。

「左利きは悪」だったのです。
左利きは直すべき悪習、悪癖だったのです!

ヴァイオリンの生まれたヨーロッパに於いても、です。

ヨーロッパ社会での
ヴァイオリン演奏で右弾きしか認められなかったのは、
ヨーロッパ社会では、古くから左利きは否定されていたから、です。

 

 ●十六世紀のヨーロッパ社会

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.4.6
楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈『日本のヴァイオリン史』から
-週刊ヒッキイ第661号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/04/post-4c5b1e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a8bf813a7ec9e953053fb9ef3067c3df

でも紹介しましたように、

梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
(青弓社 2022/9/26)
『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』(Amazonで見る)

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によりますと、

 《ヴァイオリンの起源については諸説あるが、
  イタリアでヴァイオリンの原形が十六世紀に生み出されたというのが
  定説になっている。》「はじめに」p.21

また、

 《...一五〇〇年頃前後にはヴァイオリンの原型[傍点]が世に現れ、
  現在の形のヴァイオリンが誕生したのは
  十六世紀中頃と考えていい。》p.26

ともあります。

「十六世紀に生み出された」ヴァイオリンですが、
この十六世紀という時代は、
「左利きに対する抑圧が始まった」時期でもあったのです。

第667号の別冊編集後記で書いていますように、

第667号(Vol.20 no.12/No.667) 2024/7/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(22)左利きは左弾きヴァイオリンで(1)」
【別冊編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.7.6
楽器における左利きの世界(22)左利きは左弾きヴァイオリンで(1)
-週刊ヒッキイ第667号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/07/post-a004b0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/eea54c1ed831c5f0b442fed411b5fd99

6月末に出版されました左利きの本の新刊、
ヨーロッパ(主にフランス)での左利き差別(と賞賛)の歴史を描いた
左利きの著者と訳者による左利き本

『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27
『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』(Amazonで見る)

240627-hidarikiki-no-rekisi

この本は、
左利きでもヴァイオリンを右弾きすることが当然とされる根拠の一つ
といいますか、
そもそもの最大原因は、「左利きを認めない社会であった」
ということを証明する本、といっていいものです。

「第二部/第8章 虐げられた左利き」に、

 《左利きに対する抑圧が近代に始まったのは、ほぼ確かなようである。
  日常生活のおもな行動に左手を用いることがタブーとなったのは、
  十六世紀後半からである。》p.110

とあります。続けて、

 《やがてこのタブーは、より広い社会階層にも少しずつ適用され、
  ほとんどすべての人に共通した礼儀作法の規則と化していった。
  こうして左利きは、罰せられるべき違反者となったのである。》
pp.110-111

というのです。

こういう社会情勢の中で、
ヴァイオリンの演奏に於いて、左手で弓を持ち、左弾きする
というような行為が許される訳がありません。

なにしろ、このヴァイオリンという楽器は、
西洋の芸術音楽で中心的な役割を果たしている楽器でもあるのですから。

左利き自体が否定される状況で、主に上流階級で演奏される
芸術音楽の主役であるヴァイオリンを習う時に、
左利きですから左弾きで、という要望が認められるはずがありません。

そもそも日常生活でも左手使いが認められないのですから、
楽器の演奏が認められるとは考えられません。

もちろん、一般庶民の趣味的な演奏なら別でしょうが、
学校であったり、教会であったりといった場では不可能でしょう。

 

 ●公教育による右利きの規範化

これらについては、

第665号(Vol.20 no.10/No.665) 2024/6/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.6.1
楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から-週刊ヒッキイ第665号
23:45 2024/05/29
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/06/post-ba1399.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/7b6f52c7e9db04cfc74b96d89909df32

でも、

--
ヨーロッパでも、日本と同じように左利きは差別されてきました。
認められるようになったのは、日本と同じように第二次大戦後のこと。

昔から左利きの子供たちは、親や学校の先生など大人たちから
「矯正」の名の下に、字を書く等の“人間的”な行為に関しては、
右使いに転換させられてきたのです。
--

と書いています。

『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』の
「第二部/第7章 不寛容のはじまり」には、

 《学校はつねに左利きに対抗するためのもっとも有効な手段の
  ひとつであった。というのも学校は、利き手のいかんにかかわらず、
  右手で書くことを子供たちに義務づけていたからである。
  こうして何世紀にもわたり、文盲――
  これはとくに農村社会に見られ、下層階級に特徴的な弊害である
  ――は、いわば左利きのもっとも安全な隠れ所となっていた。》
 p.106

といい、十八世紀の証言によりますと、
田舎には左利きの農民が何人もいて、それは、教育の乱用によって、
生まれつきの性質が歪められていなかったからだ、と。

 《ところが、十九世紀を通して公教育が大幅に進展すると、
  やがてあらゆる改装の人々が、
  学校の文明化と徹底した規範化の動きに巻き込まれることになる。
  一八八二年、フランスで初等教育が義務化されると、
  すべての左利きの子供たちが、社会階層や家柄にかかわりなく、
  いっさい例外なしに右利きの支配下に置かれ、平等という
  名のもとに、生まれつきの性行を放棄するように命じられる。
  当時のある証言は、
  こうした「右利きの規範化」を国民に推し進めるうえで、
  公教育が果たした重要な役割を明らかにしている。》p.107

といいます。

 《したがって十九世紀後半には、公教育の大衆化によって
  右利きが圧倒的な覇権を握る。》p.107

 《一世紀も経たないうちに、(略)一九一九年に、
  左利きが生まれつきの性質を運よくそのまま保ち続けることは
  「きわめて珍しい例外」だと、述べている。その間に、
  ブルジョワ的道徳観の支配や初等教育の強制力が、
  左利きを制圧してしまったのである。》p.109

とあります。

 

 ●刷り込まれた規範

こういう社会に於いて、単なるお遊びや下層階級の慰みとしての
楽器演奏なら左弾きも許されたかも知れません。

しかし、上流階級のたしなみや教育の一巻としての、
あるいは中流以下においても、同様な意味での器楽演奏となりますと、
左利きだからといっても左弾きが許されることはなかったでしょう。

ゆえに、ヴァイオリンの左弾きは、
こういうふうに左利きが差別される状況下では、
あり得ないことだったでしょう。

その規範が現代でも生き残っているのではないでしょうか。
すくなくとも、クラシックの音楽を勉強してきたような人たちには、
「右弾きが正しい演奏法である」と刷り込まれているのでしょう。

 

 ●左利きの権利として、左利きに対応した楽器を!

第二次大戦後、すでに80年が過ぎようとしています。

アメリカでは、1920年代に左利きの右利きへの強制的な「転換」は、
多くの弊害があるという研究が発表され、徐々に改善されてきた、
といいます。

ヨーロッパ社会は、もう少し閉鎖的で新しい考えがなかなか浸透せず、
アメリカの影響を強く受けるようになる戦後になって
ようやくその方向に進み出した、という状況だったようです。

その辺はまたいずれ検討してみたいと思います。

 

とにかく、現代においては左利きは生来の一つの性質であり、
否定されるものではないという考えが、確定しています。

左利きの権利として、左利きに対応した道具類の必要性は
認められてきています。

音楽の世界においても、楽器においても、
一日も早くこの常識が通用する世界に変わって欲しいものです。

ギター類だけでなく、その他のあらゆる楽器において、
左利き対応の楽器が製作販売され、
初心者に左弾きを教育できる世界になってほしいものです。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(24)左利きは左弾きヴァイオリンで(3)」と題して、今回も全紹介です。

現代においてもヴァイオリンの左弾きが薦められていないのは、要するに、他の左利きの場合と同じで、単純に昔から「左利きが否定され、抑圧されてきた」というだけの話です。

しかし、今はもうそういう時代ではないのです。
素直に左利きの人の思いを受け止めて、左用を準備する社会になってほしいものです。

難しい話ではなく、意識の変革だけの問題です。

古くさい常識は捨てて、新しい時代にふさわしい考え方を持つようにしたいものです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2024.08.03

楽器における左利きの世界(23)左利きは左弾きヴァイオリンで(2)-週刊ヒッキイ第669号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

第669号(Vol.20 no.14/No.669) 2024/8/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(23)左利きは左弾きヴァイオリンで(2)」

 

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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第669号(Vol.20 no.14/No.669) 2024/8/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(23)左利きは左弾きヴァイオリンで(2)」
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 前々号では、「左利きでもヴァイオリンは右弾きで」という
 左利きヴァイオリニストの意見を紹介しました。
 前回は、
 「なぜ左利きは左弾きヴァイオリンでなければいけないのか」
 その理由を述べ、反論する第一回目でした。

 今回はその続きです。

 

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 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きとヴァイオリン演奏について考える

   なぜ左利きは左弾きヴァイオリンでなければいけないのか(2)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●左利きでも右弾きを薦める人たちの理由

ネットで調べた「左利きとヴァイオリン演奏」についての発言で、
左利きのヴァイオリニストの人も含めて、ほぼ全員が
「左利きの人でもヴァイオリンは右弾きで」と発言されていました。

改めて、それらのご意見――「左利きでも右弾きを薦める人たちの理由」
についてまとめたものを書いておきましょう。

 ・・・

【左利きでも右利き用で右弾きを薦める理由】

1.左利き用のヴァイオリンは右用とは構造が違い、手に入りにくい
→ 道具がないので、手に入るもので我慢しましょう!?

2.右手も左手も重要で、利き手の有利不利は関係ない
→ 右手も左手もどちらでも、慣れたら一緒!?

3.ヴァイオリンは集団で演奏することが多く、左弾きは立ち位置が難しい
→ 左弾きでは隣の右弾きの人と弓が当たる、
  弓の動きが逆で一人目立つ、ので困る!?

4.利き手も定かではない、小さい頃から習う人が多いので、
 利き手は関係ない
→ 利き手も小さい頃からなら換えられるという人もいるじゃないか!?

 

前回は、これらの理由のうち、「1.」と「2.」について反論しました。
今回は、「3.」と「4.」についての反論と、
知られていないかも知れない利き手と足の身体的適性に関する反論、
根本的な反論について書いてみます。

では、次にそれぞれの意見に反論してゆくことにしましょう。

 

 ●理由3.への反論=十分な間隔を取ればいい

理由3.ヴァイオリンは集団で演奏することが多く、
   左弾きは立ち位置が難しい
→ 左弾きでは隣の右弾きの人と弓が当たる、
  弓の動きが逆で一人目立つ、ので困る!?

 

『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳
 TBS出版会(発売・産学社)1973
には、ヴァイオリンに関する記述があり、

「十九 音楽におけるきき手」p.223に、

 《四重奏団なら、右ききの団員に混じって役割を果たすことができる
  であろう。(略)
  視的感覚からいうと調和の取れた姿に見えるというのである。》

右弾きのヴァイオリニストと左弾きのヴァイオリニストがちょうど、
鳥や蝶々が翼を左右に開くように配置されれば、
その左右対称形を「美しい」と感じる人もいるのではないでしょうか。

ヴァイオリニストたちの集団の中に一人だけ逆弾きの人が混じるから、
悪目立ちするのであって、右弾きヴァイオリニストの並びの端に、
左弾きヴァイオリニストが対面するかのように立てば、
違和感は少なくなるのではないでしょうか。

あるいは、同数の左右のヴァイオリニストがいれば、もっと象徴的です。

 

また「隣の人と弓や腕が当たる」という問題は、
私たち左利きの人のあいだでは昔からいわれてきた問題の一つ、
右手箸と左手箸の問題を想起させます。

食事の際、左手箸の人が混じると、
隣の人(多くは右利きで右手箸)と肘がぶつかるので嫌がられる、
という問題です。

狭い店やカウンターに並んで食事するような場面では、
よく問題となります。

左利きの人たちのあいだでは、こういう事態に陥らないように、
事前に隣の人と肘がぶつかることのない、「左端」の席を確保する、
という人が少なくありません。

しかし、これはあくまでも便宜的なことです。

本来は、「十分な間隔を取ればいい」だけの話ですよね。

楽器演奏の場合、ステージの広さの問題があるかも知れませんが、
よほどの大人数や変則的に狭い舞台で演奏する、
といったケースでない限り、ある程度の余裕はあると思います。

十分な間隔を取るようにすれば解消できる問題でしょう。

また、譜面を共有する際に困るといった意見もありました。
これもそういう演奏家がいると分かれば、「お互いに工夫しあう」、
というのが「人間的な対応」という礼儀作法ではないでしょうか。

 

*参考文献:
・左利きイギリス人の左利き研究家の著作
『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳
 TBS出版会(発売・産学社)1973

240601hidarikiki-no-hon

 

 ●理由4.への反論=幼児には利き手がある、胎児にも!?

理由4.利き手も定かではない、小さい頃から習う人が多いので、
 利き手は関係ない
→ 利き手も小さい頃からなら換えられるという人もいるじゃないか!?

 

確かに小さい子供の場合、手の神経もまだ未発達で、
利き手も定かではない、と思われるかもしれません。

しかし、日本における左利きの科学研究の第一人者・八田武志さんの
『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022)
「第7章 きき手はいつ現れ、いつ決まるのか」によりますと、

胎児にも利き手があるという研究者もいるようですが、
まだ胎児の利き手に関しては、信頼できる証拠はない、といいます。

しかし、乳幼児には何らかの利き手がある、と考えられているようです。

 《(略)発達初期に左右機能はないとは考えず、
  若干の左右差の存在を想定する。
  しかし、成熟、つまり生物学的な要因だけでなく、
  それらに加えて個人の環境との関わり方を重視する。》

すなわち

 《(略)ミッチェルらの考えに基づけば、
  (1)7ヶ月の月齢でも把握動作や操作動作に使用手の偏りがあること、
  (2)7ヶ月の時点で見られた手の偏好的な使用は発達につれて
  不変ではなく、強められることになる。(略)》

幼少時すでに利き手という偏りが存在すること、
そして、それらは成長とともに徐々に強められていくのだ、
ということのようです。

おとなが勝手に「利き手はない」と決め付けているだけで、
子供にも利き手という、使用する手の偏りがある、ということです。

 ・・・

育児の本によりますと、古い本ではありますが、
小児科医・松田道夫『定本育児の百科 中 5カ月から1歳6カ月まで』
(岩波文庫 2008/1/16)
「10カ月から11カ月まで/かわったこと:302 左きき」には、

 《人間の右きき、左ききは、うまれつきにきまっているもので、
  左手をよけいに使わせたから左ききになるというものではない。
  この月齢の子が左ききらしいというので、
  左手を使わせないようにすることには、賛成しかねる。
  左手がきき手であろうが、右手がきき手であろうが、
  その所有者の自由である。(略)》p.397

とあります。

おとなであろうと子供であろうと、自分の手は自分のものであり、
自分の思うように使っていいのです。

右手であろうと左手であろうと、
自分の使いよい方の手(利き手)を使っていいのです。

正論だと思います。

 ・・・

「利き手」という性質を考えるとき、大切なポイントは、
「無意識に使う手はどちらか?」というところです。

意識的に使うケースとはどういうときかといいますと、
要するに「教えられて使う」場合などはまさにそうです。

左利きの人でも、食事の際の箸やスプーンなどは左で、
字を書くのは右、という人がいます。

字を書くのは、ある程度の年齢からですが、
食事を取るのは生まれたときからです。

そこでまずは自然な利き手が先行して、食事の関係は左で、
教えられた字を書く行為は右、となるのでしょう。

箸などは右で字は左といった、逆の人はいないようです。
少なくとも私が今までに出会った人の中にはいませんでしたね。

 ・・・

そういった教えられた行為のケースではなく、
知らず知らずに使っているどちらか一方の手が、
「利き手」と考えられるのです。

本来は、その子の利き手・非利き手に応じた道具を使うのが、
一番良いのです。

それが、その子の能力を最大限に発揮させる方法だからです。

道具がなければ作ってもらう、それが最適解です。

楽器の演奏でも、当然同じことです。

 ・・・

小さい子供を相手にする場合、おとなが右手でやって見せたり、
まわりに右手使いの子供しかいない状況であったり、
そういう環境では、左利きの子でも、
右手使いになってしまうケースが多々あります。

例としましては、元プロ・テニスプレーヤーの伊達公子さんは、
左利きですが右手打ちのプレーヤーでした。

テニスを始めたときにまわりの子供たちが、
みな右手にラケットを持っていたので、
そのまま自分も右手にラケットを持つようになった、と聞いています。

特に日本の子供は、空気を読む、といいますか、
まわりのおとなのようすをよく見ていて、
それに従う、おとなの期待に応えようとする傾向が強い、といいます。

楽器の演奏においても同じことがいえます。
小さい頃からそういう環境におかれますと、
知らず知らずにおとなの教えるままに従う、ということになります。

以前書きました坂本龍一さんの場合も、
幼稚園時代にピアノに触れる機会があった、といいます。

一応これぐらいの年齢なら、彼が左利きだという事実は、
まわりのおとなにも分かっていただろうとは思いますが、
だからといって現状では、ピアノは右利き用しかないので、
当然のごとく、右弾きになったのでしょう。

ヴァイオリンの場合も、現状では基本的には左用の楽器がない、
という状況でしょうから、
よほどのことがない限り、右弾きにならざるを得ない、といえましょう。

左利きの子供の能力と利き手を使うという権利を守って、
その能力を活かすように指導する、という意識がない環境では、
左利きの子供の左弾きは実現しないことになります。

これは、
本人にとってはもちろん、あえて言えば日本の音楽界にとっても、
あたら才能を埋もれさせることになりかねないわけで、
非常にもったいないことであり、残念至極です。

 

*参考文献:
『左対右 きき手大研究』八田武志 DOJIN文庫 2022
(Amazonで見る)

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『定本育児の百科 中 5カ月から1歳6カ月まで』松田道夫 岩波文庫
2008/1/16
(Amazonで見る)

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 ●利き手と軸足の関係

これは私が思いついたことなのですが、
楽器の演奏――特にヴァイオリンの場合では、
「演奏の際の利き手と軸足の関係」という問題があるのでは
ないでしょうか。

案外気付かない人もいるかと思いますので、説明しておきます。

実は、

 左手でヴァイオリン本体を保持するということが、
 右利きの人には重要なポイントになる

と思うのです。

これは、
「利き手」と「利き足/軸足」の関係が重要になってくるからです。

利き手と利き足には相関関係がある、といわれています。

先に挙げた、八田武志『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022)の
「第3章 きき手の諸相」<きき足ときき手――大規模メタ分析>
によりますと、

14万5135人を対象にした調査で、
利き足を「右か左か」の選択肢での分類で、左足利きは12.1%。
「右、左、両方」の三選択肢による分類で、「左、両方の足」を
「非右足利き」と定義した場合は、23.7%。

左手利きの人の60.1%が、左足利き。
右手利きの人の3.2%が、左足利き。

左手利きの割合を一般にいわれている10%程度としますと、
利き手と利き足が一致しない人は、三人に一人ぐらい。

ところが、右手利きの人は、ほとんどが右足利きだ、というのです。
右手でボールを投げる人は、ほとんど右足でボールを蹴る、と。

右足利きの場合、ボールを蹴るシーンを思い浮かべてもらえれば
わかりやすいと思いますが、
右足はボールを蹴る「利き足」=「作用足」で、
反対の左足は体重を支える「軸足」です。

同書の<きき手と軸足の関係は?>には、

 《右手ききの人は左足に重心をかけ、身体運動の軸にしている》p.81

とあります。

 

 ●ヴァイオリンの演奏と軸足の関係

同書p.78には、自転車に乗るとき、
多くの右利きの人たちは左側から乗る、というように、

 《日常生活ではきき足よりも、
  むしろ軸足の役割を重要視する場合がある》

といいます。

ヴァイオリンの演奏も、右弾きの場合は、
左手でヴァイオリン本体を持ち、弦を押さえる等の作業をこなし、
右手に弓を持ち、これを動かします。

左足に重心をかけて体重を支えていれば、
右手に持つ弓を最大限に動かすことができます。

左手に持つヴァイオリン本体は、安定した左の軸足の側にあり、
左手指のポジショニングもしっかり取れます。

右手・右腕をどれほど大きく動かしても、
体重は左足でしっかり支えられているので、演奏が安定します。

右利きの人は多くは左足が軸足ですので、これは難しくありません。

弓は軽いので、重心をかける足の側で持つ必要はありません。
それよりも右手・右腕を自由に動かせるかどうかの方が重要です。

重心のある側と反対の手に弓を持つと、重心のぶれが少なく、
大きな動作も可能になります。

 

これが逆ですと、どうなるでしょうか。

左利きの人では通常、多くの人が右足が軸足となり、体重を支えます。

このとき、右手に弓を持ち大きく動かそうとしますと、
重心の位置がぶれ、その身体を支えるのは非常に不安定になります。

弓を右に大きく弾こうと腕を大きく引くと、身体も同じように振れます。
逆に弓を左に押していけば、右足の重心も左に傾き、
左手に持つヴァイオリン本体も不安定になります。

身体が不安定ですと、安定した演奏も難しいでしょう。

 ・・・

右手利きの人の場合、軸足は左足ですので、
ヴァイオリン本体を持つ側に当たります。
大きく右手・右腕を動かしても、ふらつくことはありません。

ヴァイオリン本体を持つ左手は、重心のある左足の側にあり、
安定した演奏が期待できます。

重心という点でも、右利きの人には、右弾きが都合が良いのです。

逆に、

 左弾きのヴァイオリニストは、右足が軸足の人が都合がいい

と考えられます。

しかし左利きの人の中にも、三人に一人ぐらいは右足利きの人がいる、
といいますので、そういう人では重心という観点からいいますと、
左利きでも右弾きに向いているのかも知れません。

左利きの人でも名演奏家がいるというのは、本人の努力だけではなく、
そういう肉体的な適性がプラスに働いている、
という可能性も考えられます。

 

 ●左利きには基本、左弾きを勧めよう!

左利きの人の場合、右利きの人ほど一様ではありません。

その点が左利きの難しいところで、

 左利き=右利きの反対

と単純に割り切れない点です。

おおむね、左利き=右利きの反対 なのですが、
必ずしもそうではない、という非常にややこしい関係にあります。

成因が関係しているというのがポイントではないか、
と私は考えています。

遺伝性の左利きではなく、病理的左利きといわれる人の場合です。

本来は右利きなのだけれど、何らかの妨げがあって
現象として左利きになっている、というようなケースです。

その場合、単純な右利きの反対として左利きというのでなく、
複雑な経路を経て、左利きになっていると思われます。
そこで、対応がむずかしくなってくるのではないでしょうか。

本当のところは分かりませんけれど。

 ・・・

とにかく、現実のレベルで、現象として現れる左利きには、
様々なケースがあります。

単純には言い切れませんが、楽器の演奏でも、
左利きの人では、やはり左弾きが
本人の能力を最大限に引き出すことができる演奏法ではないか、
と考えられます。

過去の歴史的背景は別にして、これからは
左利きの人が素直に左弾きできる環境を整えてゆくべきだろう、
と考えます。

 ――次回は、「左利きの人でもヴァイオリンでは右弾きを!」
 という意見への反論として、根本的な理由として、
 ヨーロッパ社会での左利き差別に関して考えてみたいと思います。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(23)左利きは左弾きヴァイオリンで(2)」と題して、今回も全紹介です。

左利きの人の楽器演奏――ヴァイオリンの左弾きについて書いてきています。

「左利きの人は左利きのままで」が当たり前になって来ている時代ではありますが、遅れている分野の一つが音楽、楽器の演奏の分野でしょう。

ヴァイオリンは西洋音楽においては、ピアノと並んで楽器の王様的な存在です。
この牙城を落とせば、勝利に大きく近づくのではないかと思います。

前にも言いましたように、最終的には、ピアノまでいければと考えています。
どうなるでしょうか?

 ・・・

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2024.07.06

楽器における左利きの世界(22)左利きは左弾きヴァイオリンで(1)-週刊ヒッキイ第667号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

第667号(Vol.20 no.12/No.667) 2024/7/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(22)左利きは左弾きヴァイオリンで」

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◎左利きニュース◎

6月末に左利きの歴史本が出ました。

『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27
『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』(Amazonで見る)

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フランス人の著者も、訳者さんも左利きだそうです。
「訳者あとがき」には、
日本で出版された左利き本についても簡単に紹介されています。

日本だけではなく、
諸外国――特に西洋諸国でも左利きが迫害されていた、
という歴史をご存じない人も多いのではないか、という気がします。

改めて、こういう左利きの歴史についても知ってほしいものです。

日本でも左利きに関して、
「迫害」という表現が許される時代になったのかな、
という気がしています。

昔は、私が「左利きの問題」などと周囲の右利きの人たちに訴えても、
「右手を使えば済む問題」と軽くあしらわれたものでしたから。

*参照:
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.7.3
新しい左利き本『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
発売される
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/07/post-e66fa0.html

 

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 楽器における左利きの世界(22)左利きは左弾きヴァイオリンで(1)」
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 前号では、「左利きでもヴァイオリンは右弾きで」という
 左利きヴァイオリニストの意見を紹介しました。
 今回は、
 「なぜ左利きは左弾きヴァイオリンでなければいけないのか」
 その理由を述べ、反論していこう、と思います。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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 左利きとヴァイオリン演奏について考える

   なぜ左利きは左弾きヴァイオリンでなければいけないのか(1)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●左利きでも右弾きを薦める人たちの理由

前回は「左利きとヴァイオリン演奏」についての発言のあれこれを
見てきました。

左利きのヴァイオリニストの人も含めて、ほぼ全員が
「左利きの人でもヴァイオリンは右弾きで」と発言されていました。

今回は、それぞれのご意見に対して、
私なりの見地からおのおの反論してみよう、と思います。

まずは前回まとめた右弾きを薦める理由についてあげておきましょう。

 ・・・

【左利きでも右利き用で右弾きを薦める理由】

1.左利き用のヴァイオリンは右用とは構造が違い、手に入りにくい
→ 道具がないので、手に入るもので我慢しましょう!?

2.右手も左手も重要で、利き手の有利不利は関係ない
→ 右手も左手もどちらでも、慣れたら一緒!?

3.ヴァイオリンは集団で演奏することが多く、左弾きは立ち位置が難しい
→ 左弾きでは隣の右弾きの人と弓が当たる、
  弓の動きが逆で一人目立つ、ので困る!?

4.利き手も定かではない、小さい頃から習う人が多いので、
 利き手は関係ない
→ 利き手も小さい頃からなら換えられるという人もいるじゃないか!?

 

では、次にそれぞれの意見に反論してゆくことにしましょう。

 

 ●理由1.への反論=なければ作ればいいだけ

理由1.左利き用のヴァイオリンは右用とは構造が違い、手に入りにくい
→ 道具がないので、手に入るもので我慢しましょう!?

 

道具がないというのなら、単純に作ればいいのです。

それが人類の歴史でした。
より便利な生活のために人は色んな道具を作ってきました。

ない、というのなら、作ればいい。
他の左利き用の道具もそうでした。

そういう歴史を私たちは築いてきたのです。

現実に全くないわけではありません。
一部には存在します。

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「左用の名器はない」という意見に対しては、
「今はなくても、将来の名器につながるものを作ればいい」
といいましょう。

 

昔左用(左利き用)のハサミというのは、特注品しかありませんでした。
一部の専門家の人がどうしても必要で、特注で作ってもらっていました。

しかし、そのうち「左用も必要ではないか」と考える人たちが増え、
特に子供用の左用ハサミは必要ではないかと考えるメーカーの人たちが、
これを開発し販売しようと活動し、実用化しました。

今では子供用ハサミにおいては、右用と左用が同一価格で併存するのが、
当たり前のこととなりました。
右用と左用を利き手によって選択する時代となっているのです。

 

 ●理由2.への反論=利き手と非利き手は役割が違う

理由2.右手も左手も重要で、利き手の有利不利は関係ない
→ 右手も左手もどちらでも、慣れたら一緒!?

 

利き手と非利き手では役割に違いがあります。

『手と脳 増補新装版』久保田競 紀伊国屋書店 2010/12/24
によりますと、

「第7章 利き手と脳」<言語脳と空間認知脳>

p.187《右脳の方が空間関係の認知に優れているだけでなく、
    認知された情報に基づいて手で処理する機能も、
    右脳の方が優れている》

といいます。
右利きの人は右脳-左手で、左利きの人ではその逆が。

ゆえに、利き手でない方の手(非利き手)の方が、
空間情報の処理に優れているのですから、
右弾きヴァイオリンでは、音程や音の調節をするといった、
弦を押さえる「位置」に関する動きに対しては、
「非利き手である左手」を用いる方が有利、と考えられます。

実際に右利きの人では左手で行っています。

 ・・・

左用のヴァイオリンの多くが、
左手の指が使えなくなった人のために作られた、といわれています。

左手の指が使えなくなった人が弓を持ち替えるというのは、
そういう理由からでしょう。

そういう意味で「左手が重要」という考えが生まれてくるのでしょう。

前回、ルドルフ・コーリッシュさんが、

《左手を負傷したため、止むをえず、右手でヴァイオリンを支え、
 左手で弦を動かさなければならなかった。》p.223
『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳
 TBS出版会(発売・産学社)1973――「十九 音楽における左きき」
『左ききの本』(Amazonで見る)

というのも、そういうところでしょう。

以前、同様の理由から左弾きに変えたチェリストの話もありました。

 ・・・

しかし、弦を押さえる手は、基本は非利き手の役割です。
一方、弓を動かす手は、利き手の役割です。

 

 ●右手の役割と左手の役割

もう一度ヴァイオリンにおける右手と左手の役割を見ておきましょう。

 

【右手】の役割
[音を出す]要素
・ボウイング:弓を持って、上げ下げして、弦を弾く
・ピッチカート:弓を使わず指で弦を弾く

【左手】の役割
1.[音の調整]要素
・フィンガリング:指使い、運指(音程を作る)
・ポジションチェンジ
・ビブラート
2.ヴァイオリン本体の支持

これぐらいで間違いはないでしょう。

 

右手と左手、「利き手と非利き手の使い分け」という問題があります。

脳科学者・久保田競さんの『手と脳 増補新装版』
「第7章 利き手と脳」<手を使いわけよう>によりますと、

 《手を使うときには、右と左の特徴を使いわけるほうがいい。》p.197

 《利き手は言語を媒介する機能、言葉で考えたことを実現する機能、
  単純につかむ、つまむ、にぎることから書くことまでの機能に
  使われるべきで、非-利き手は手探り、空間認知、さらにそれを
  手がかりとして実現する機能に使われればよいのである。
  われわれの脳は左右に特殊化されているので、
  それに都合のよいように手を使わなければならない。》p.198

非利き手は《手探り、空間認知、それを手がかりとして実現する機能》と
あり、これはズバリ弦を押さえる手といっていいでしょう。

一方、利き手は《単純につかむ、つまむ、にぎること》=弓を持つ、
《言葉で考えたことを実現する機能》=どのような演奏をするか、
に使うべきだといいます。
これは、まさに弓を持つ手にふさわしい役割でしょう。

 《日本の古典楽器の琴、鼓、三味線などは片手で操作できない楽器で
  ある。利き手で弦をはねるが、非-利き手で音色と音域の調子を
  微妙に変え、調節をつづけねばならず、これをマスターするのは、
  言葉を司る利き手の側ではむずかしく、感覚を司る非-利き手の側に
  おぼえこませなければならない。
  このような楽器の練習に左右の手を使い分けることは、
  専門家にならなくても手の訓練として重要なことである。》pp.198-199

とあります。

手の訓練云々は別にして、演奏に関していいますと、
やはり利き手と非利き手の役割の認識が重要です。

右利きの人にとっての最適な方法=右手に弓、左手にヴァイオリン本体、
は裏返しますと、左利きの人にとっての最悪の選択といえるでしょう。

 

*参考文献:
『手と脳―脳の働きを高める手』久保田競 紀伊国屋書店 1982(昭和57)4/30
――利き手(作用の手)と非利き手(感覚の手)の役割の違いなど。
『手と脳―脳の働きを高める手』(Amazonで見る)

『手と脳 増補新装版』久保田競 紀伊国屋書店 2010/12/24
――《【旧版との違い】脳科学の新たな成果をアップデートするとともに、
読みやすいレイアウトに。/第2章、9章は全面的に書き下ろし》
『手と脳 増補新装版』(Amazonで見る)

 

240706-te-to-nou

 

 ●身体に合った道具を!

身体に合った道具に関してもう少し書いてみます。

私にはこういう経験があります。
私は中学生の時から父の買ってきたカメラを使い、
大人になってからも「写るんです」のようなカメラを使ってきました。

また、ソニーの8ミリビデオも使っていました。
これも右手で保持して、カメラのズームや録画などの操作も
みな右手一本で行うものでした。

それらを使っていても、なかなか慣れるということはなく、
常になにかしら違和感を抱いていました。

「隔靴掻痒」という言葉があるように、
まさに靴の上から足をかくような、
「はがゆくもどかしいこと」「思うようにいかず、じれったいこと」
「物事の核心や急所に触れず、もどかしいこと」という状況です。

あるいは、ガラス越しにものを見るというか、
夾雑物越しにものに触るときのような、
しっくりこないものがありました。

ところが、
左手用カメラ「京セラ・サムライ左手用廉価版 SAMURAI Z2-L」
を買いに行ったとき、初めて触ったのに、
まるでずっと昔から使ってきたかのような、
身体にフィットする操作感がありました。

これだ! と思いました。

あのときの感動は、初めて近視の眼鏡をかけた時の感動と同じように、
忘れられないものがあります。

 

このカメラは、左手でカメラ本体を握るように保持し
(落とさないように指にかけるストラップが付いています)、
左手の人差し指で、ズーム・レバーの操作や、
シャッター・ボタンを押す操作をします。

自分の好みの構図とシャッター・チャンスを
利き手である左手で操作できるのです。

まさに“自分のために作られたのか!”という印象でした。

毎度お話ししていますように、
これがきっかけとなり、左利きは左利き用の道具を! という、
私の左利き活動が始まったのです。

 

*参照:京セラ・サムライ左手用廉価版 SAMURAI Z2-L
『レフティやすおのお茶でっせ』
・2004.8.5
今は昔 世界初左手用カメラ、京セラ サムライSAMURAI Z2-L
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2004/08/__samurai_z2l.html
・2020.3.7
2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年(2)
その後の30年(1)左手用カメラ-週刊ヒッキイ第566号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/03/post-fe5897.html

200826kyousera-samurai-z2l

1

二本目の「その後の30年(1)左手用カメラ」にも書いていますように、

 《「慣れたら一緒」なんて嘘です。
  利き手に合わない道具を使うのは、
  靴を左右入れ替えて履くようなものです。》

まあ、靴の左右を入れ替えても「慣れたら一緒」
と言い張る人はいるんでしょうけれど……ね。

 

 ●<利き手は心につながっている>

このカメラの経験から、
私は利き手にあった道具を使うことを推薦するのです。

私の持論は<利き手は心につながっている>です。
《利き手では、反復練習で身につく作業より、心の作業を!》です。

ヴァイオリンの演奏でいえば、音を発する弓を持つ手こそ主役であり、
心の発現だからです。

音の調整は二義的なことです。
運指が巧みでも、肝心の音を出さないければ、音楽にはなりません。

カメラでいえば、まずはシャッターを押すこと。
ピントの調整ができるだけでは写真にはなりません。
写真を撮れるのは、シャッターを押したときだけです。

 ・・・

以上、ここでいったん区切ります。

次回また、理由3.と4.を取り上げ、
さらにもう一点つけ加えておきたい事柄について説明しましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から」と題して、今回も全紹介です。

本来ですと、四つの理由をすべて書くつもりでしたが、思いのほか長くなってしまったので、二階に分割することにしました。

また、冒頭欄外に左利きニュース(左利きの著者と訳者による左利き本『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社)を入れています。

実は、この本はヨーロッパ社会でのは左利き迫害の歴史を語るもので、左利きでもヴァイオリンを右弾きすることが当然とされる根拠の一つといいますか、そもそもの最大原因でもある左利きを認めない社会であったことを証明する本、といっていいものです。

ヴァイオリンを左弾きしている例として語られるケースの多くがアメリカでのカントリー・ミュージックの演者であり、ヨーロッパでのオーケストラや正規の楽団などではその例がないという事実は、要するにこのヨーロッパ社会での左利きの認知度によるものだ、ということなのです。

左利きの存在を邪悪視する社会において、その上流社会の趣味である音楽演奏の場で、左弾きの演奏家が認められるはずがありませんからね。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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2024.06.01

楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から-週刊ヒッキイ第665号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

第665号(Vol.20 no.10/No.665) 2024/6/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から」

 

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第665号(Vol.20 no.10/No.665) 2024/6/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回は、YouTubeヴァイオリン動画

 左利き用バイオリン?! なぜみんな左手でバイオリンを持つのか。
https://youtu.be/1AmkzYXwHuY?si=0GR1mBoVlDkQkwbN
(2022/03/26「達ちゃんねる」13分27秒)

 を紹介しながら、左利きとヴァイオリン演奏について考えてみました。

 今回も、もう一つのYouTubeの動画を紹介しながら、
 左利きとヴァイオリン演奏について考えていこう、
 という予定でしたが、
 ネットで見つけた左利きヴァイオリニストさんの発言を紹介し、
 なぜ左利きでも右用ヴァイオリンで右弾きしなければならないのか、
 という点を見ておきましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きとヴァイオリン演奏について考える

   ネットの左利きヴァイオリニストの発言から

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●ヴァイオリンYouTube動画(その2)

今回の動画はこれです↓

解説! 左利き用のバイオリンについて!
全盲のバイオリニスト穴澤雄介が教えます
【左利きの生徒さんを教えた経験談も】
https://youtu.be/d-xrKPRvgEo?si=bR30My4xtn6Rat3S
4:33

2022/09/29 全盲のユーチューバー、音楽家、講演家、
穴澤雄介チャンネル
--
ヴァイオリンやヴィオラに、
果たして左利きのための楽器は存在するのでしょうか?
左利きだけどバイオリンをやってみたい、
そう思っている方へ安心のアドバイス!!
--

というのですけれど……。

結論から書いてしまいますと、
ごくごく常識的?な発言ばかりで、参考にはなりません。

ごくごく簡単にまとめますと――

 《左利き用のヴァイオリンはありません。昔はあったらしいですが。》

 《大勢が並んで演奏することが多いので、
  ひとりだけ左弾きだと、弓がぶつかる、見た目がよくない》

 《左手で弦を押さえるのも、難しいから、左利きが不利とも言えない。》

 《楽器をやっていると、両利きのようになる、
  私も左の方が握力が強い》

――といったところです。
いつも聞かされる台詞といったところですね。

 

 ●「ツルノリヒロの生活と推理」から

次に、ネットで見つけた左利きヴァイオリンについての記事から
二、三紹介してみましょう。

 

【ネット記事から(その1)】

ツルノリヒロの生活と推理
アーティスト、ツルノリヒロの気ままな発信基地。

左利き用バイオリン
2012-04-20 20:36:54 | 思いつくままに
https://blog.goo.ne.jp/tsuru-norihiro/e/fcce99fe4f40cbbc34fe6a3425f321cc

ここでも簡単に気になる部分を紹介しておきましょう。

 《チャップリンは左利きで、チェロもバイオリンも、
  特注の楽器を弾いていたらしい。》

――有名人なので、その可能性はありそうですね。

 《今は、左利きの方でも右利きの構えに、
  早くからならされて弾く方が多いので、普通の楽器で良いのだが、》

――小さい頃からやってるから……というやつですね。
「結論」になるのですが、
ヨーロッパでも、日本と同じように左利きは差別されてきました。
認められるようになったのは、日本と同じように第二次大戦後のこと。

昔から左利きの子供たちは、親や学校の先生など大人たちから
「矯正」の名の下に、字を書く等の“人間的”な行為に関しては、
右使いに転換させられてきたのです。

*参考文献:欧米における左利き差別について
・左利きイギリス人の左利き研究家の著作
『左ききの本』 マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会(発売・産学社)1973
(原著 THE LEFT-HANDED BOOk -An Investigation Into The Sinister
History Of Left-handedness- 1966) ――「序論」他

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『右きき世界と左きき人間』 マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会(発売・産学社)1972
(原著 Left-handed Man in a Right-handed World, 1970) ――著者の
 主宰する左利きの会会員の便り「第五章 左ききの試練と苦難」他

240601migikiki-hidarikiki

・左利きアメリカ人の左利きの著作
『左利きの本――右利き社会への挑戦状』 ジェームス・ブリス、ジョセフ・モレラ 草壁焔太訳(講談社)1980.12
(原著 The Left-handaers' Handbook) ――「第I部 外国編」

160909-344_20200703154201

・左利きのドイツのノーベル賞作家ギュンター・グラスの短編小説
「左ぎっちょクラブ」(1958、『僕の緑の芝生』飯吉光夫訳 小沢書店
 1993/10/1 収録) 
『僕の緑の芝生』 ――左利きの青年たちが所属する“出来もしない”のに右手使いに転換
(「矯正」)することを目的としたクラブでの出来事を描く

240601hidarigicho

 

ヨーロッパのクラシック音楽も、
伝統のある歴史のあるもので、演奏もその教育法も
昔から一つの形ができあがっていたのでしょう。

当然のごとく楽器演奏もまた、左利きの子供たちは、
右使いに「矯正」されてきた、というだけのことです。

 

 《利き腕を重視して演奏するには、
  バイオリンもチェロも、ボディーの中は左右対称ではないため、
  左利き用の楽器を使わなければならない。》
 《バイオリンとか、チェロは、作られてからすぐ、よりは、
  何十年も時を経て、
  初めてその楽器の持つ音が鳴るようになる。》
 《やはり特注して作ってもらう、と言う事になるのだろう。
  そうなると、なかなかいい音は望めないのだろう、
  だから、左利きでも右利きに矯正され、
  演奏する事になるのかもしれない。》

――この辺のところは、なかなか納得させられます。

楽器の音が練れてくるまでに時間がかかるので、
左利き用の歴史のある名器を見つけるのは難しい。

だから、「名器を演奏したいのなら、左利きの人でも右弾きで!」
という発言には、一理あるなあ、と感心します。

ただ、“名器を育てる”という行き方もあるはずですよね。

 

 《そういえば昔、
  スイスロマンド管弦楽団のバイオリンに、
  一人だけ左利き用で演奏している楽団員がいたが、
  テレビで見ていて、一人だけみんなと逆に構えているのが目立って、
  とても不思議な気がした事がある。》

――これは、目立ちたい人には魅力的でしょう。
逆に、目立ちたくない人には困ったことでなります。
左利きの人は「人前で目立ちたくない」という控えめな人も多いので、
これは困った事態ですね。

 

 ●「左利き?のヴァイオリニスト」から

【ネット記事から(その2)】

2017-02-21 23:57:46
左利き?のヴァイオリニスト
https://ameblo.jp/atsukosahara/entry-12248820146.html

佐原敦子(ヴァイオリニスト)さんのブログです。

《ウィーンの素晴らしいヴァイオリニスト、
 ルドルフ・コーリッシュ(1896~1978)》のことを書いておられます。

コーリッシュのYouTube動画

Kolisch String Quartet - Mozart:
https://youtu.be/ILCu3kMHHJc


 《コーリッシュは、一番右側の方です。
  たいてい、1stヴァイオリンは、一番左側ですが、
  弓があたらないように、/右側にいらっしゃいますね。

  私は、このように弾かれている方には
  お会いしたことがありませんが、
  一度、テレビでヨーロッパのオーケストラの中で弾かれている姿を
  観たことがあります。

  反対でも弾けるようになるには、
  顎当てや弦も反対に張ったヴァイオリンがないと練習できません。
  私はウィリアム一台しか持っていないので、上達は難しそうです。》

――とのこと。
左利き左弾きのコーリッシュさんは、他の人と弓があたらないように、
(向かって)「右側」にいると。

左利きの人ならこういうことはよく理解できるでしょう。
私たち日本人の左利きの人たちも、
食事の時には、他の人と肘が当たらないように、「左端」に座ります。

次に、「反対でも弾けるようになるには」反対のヴァイオリンが必要で、
二台目がいるとのこと。

プロでも道具がないとどうにもならない、ということなんですね。

*参照:ルドルフ・コーリッシュ
『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳
 TBS出版会(発売・産学社)1973――「十九 音楽における左きき」
に、「ルドルフ・コリシュ」として記述があり、

 《左手を負傷したため、止むをえず、右手でヴァイオリンを支え、
 左手で弦を動かさなければならなかった。》p.223

それでも四重奏団を結成、1939年の解散まで好評を博した、とあります。

また、これは次回に解説しますが、
四重奏団は、左弾きが入っても位置的、視覚的に美学上有利である、
とも書かれていました。

ちなみに、チャップリンに関しても記述がありました。
これもいずれ紹介しようと思います。 

 

 ●左利き用のヴァイオリンって、そうだったの?

2023年11月2日 2024年1月15日
ヴァイオリンは左利きでも弾ける?左利きのプロ奏者や経験談を紹介
https://moka-violin.com/violin-lefthanded/

によりますと、左利き用のヴァイオリンは、

 《左利き用というより、
  事故や障害などで左手のコントロールが困難な方向けのようです。》

といいます。

まあ、そういうこともあるかと思いますが、
実際に存在するのは事実のようですし、
どのような理由にしろ、存在するということが大事なわけです。

もし、だれもが右用と左用のどちらも試せる状況があって、
どちらでも教えてくれる先生がいるとすれば、
実際に試して自分にとって弾きやすい方を選べるわけで、
それは最高のチョイスになるでしょう。

 

 ●手の役割と足の役割

ここで、ネット情報から「ヴァイオリンは左右どちらの手も難しい」
(だから、利き手は関係ない)という発言が多いので、
ヴァイオリンにおける両手の役割・仕事をチェックしておきましょう。

【右手】
・ボウイング:弓の上げ下げ
・ピッチカート:弓を使わず指で弦を弾く

【左手】
・フィンガリング:指使い、運指(音程を作る)
・ポジションチェンジ
・ビブラート

詳しい内容については私には理解できていませんが、
何かしらイメージは着くだろうと思います。

もうひとつ、左手の役割としましては、「本体を持つ・支持する」
ということも大きな要素でしょう。

この点も後ほど、検討してみようと思います。

 

 ●左利きでも不利ではない――「慣れれば一緒」の思想?

結局、右利きのヴァイオリニストのかたも、
左利きのヴァイオリニストのかたも、結論とされているのは――

 ヴァイオリンを弾くとき、右手と左手は役割が異なり、
 それぞれに特殊な動きがあり、どちらも同じくらい重要である。
 そのため、利き手による有利不利はない。

というものです。

先に紹介しました

「ヴァイオリンは左利きでも弾ける?左利きのプロ奏者や経験談を紹介」

には、こうあります。

 《右手の役割は弓を持って弦をこすり、
  音に強弱をつけて音色を表現することです。

  一方左手の主な役割は音程を作ることで、
  正確な位置に素早くしっかりと弦を押さえる必要があります。

  ヴァイオリンを弾くときは右手も左手も同じくらい重要なので、
  左利きだからといって不利になることはありません。》

しかし、これは多くの楽器でも同じようにいう人がいます。

また、他の両手を使う道具や機械、例えばカメラでも、
同じようにいわれています。

一眼の高級カメラの場合は、
右手は、カメラ本体を保持し、構図を決め、
ここぞという瞬間にシャッター・ボタンを押す。
左手は、レンズを支えながら被写体のピントを決める、
といった操作を行います。

そして、実際に使っている左利きの人がいうのは、
(右利き用でも)「慣れれば一緒」です。

しかし、これらのものはみな、両手を使っているといっても、
実は、右手が主役で左手は補助です。

その点も後ほど解説します。

 

 ●有名な左利きでも右弾きのヴァイオリニストさん

上のサイト記事でも、最後は、日常生活では左利きでも
ヴァイオリンの演奏は右利き用のヴァイオリンで右弾きで有名になった
ヴァイオリニストを紹介しています。

一人目は、古澤巌さん。

 《古澤巌さんは1959年東京都生まれのヴァイオリニストで、
  桐朋学園大学とカーティス音楽院(アメリカペンシルバニア州)を
  卒業しています。/
  3歳の時に保育園の先生から左利きだから習い事をさせた方がいい
  と言われ、ヴァイオリンを始めたそうです。/
  最初は苦労したようですが、努力の甲斐あってか古澤巌さんは
  数々のコンクールで1位を受賞しています。/
  また実力を認められ、ストラディバリウスの名器
  「サン・ロレンツォ」を生涯貸与されています。》

 

二人目は、千住真理子さん。

 《千住真理子さんは1962年東京都生まれで、慶應義塾大学を卒業して
  から国内外で広く活躍されています。/
  2歳半でヴァイオリンを始めて12歳でNHK交響楽団と共演しデビュー、
  パガニーニ国際コンクールに最年少で入賞などを果たしています。/
  華々しい経歴を持っていますが、幼少期にヴァイオリンの先生から
  「左利きはヴァイオリニストになれない」
  と言われたことがあるそうです。/
  しかし今や世界で活躍する演奏家として名を馳せているので、
  左利きを理由に諦めなくていいのだと勇気づけられますね。》

とのこと。

古澤巌さんは、《最初は苦労したようですが、努力の甲斐あってか》
著名な名演奏家になれたようです。

千住真理子さんも、《「左利きはヴァイオリニストになれない」
と言われた》にもかかわらず、成功されたようです。

とは言えこれは、「左利きでも右弾きに成功する人もいる」
というだけのことです。

 

 ●人はそれぞれ偏りの度合いが違う

別に「左利きでも右弾き」を否定する必要は無いのですが、
人にはそれぞれ個性があり、利き手の偏りの度合いも異なります。

以前、<左利きプチ・アンケート>で各種利き手テストを紹介しました。

その結果を大雑把にいえば、利き手に関しては、

多くの片手作業で右手を使う「強い右利き」以外にも、
その裏返しの、多くの片手作業で左手を使う「強い左利き」がいて、
いくつかの項目で左手を使う「弱い右利き」から
その逆のいくつかの項目で右手を使う「弱い左利き」までの、
私が「中間の人」と呼ぶ人たちがいます。

また、利き手以外にも利き足や利き目といった、
左右対称に存在する器官における使用の偏りがあります。

利き手では約90%の人が右手利きといわれますが、
利き足や利き目では右利きが60~70%といわれています。

手の利きと足や目の利き側との相関関係は、60~70%といわれています。
右手利きの人の60~70%は右足利きだ、ということです。

これらの身体全体の偏りを考慮しますと、
右手利きという人でも、左足利きや左目利きの人もいるので、
「中間の人」はかなり存在すると思われます。

そういう人では、右使いに馴染める人――
ヴァイオリンの右弾きに慣れやすい人も当然いるでしょう。

しかし、私のように強度の左利きの場合には、右使いには慣れにくく、
そういう強い左利きの人の場合、
ヴァイオリンの右弾きに関しても慣れるのは難しいと考えられます。

 

 ●左利きでも右利き用で右弾きを、という理由

色々見てきましたが、総じて言えることは――

1.左利き用のヴァイオリンは右用とは構造が違い、手に入りにくい
→ 道具がないので、手に入るもので我慢しましょう!?

2.右手も左手も重要で、利き手の有利不利は関係ない
→ 右手も左手もどちらでも、慣れたら一緒!?

3.ヴァイオリンは集団で演奏することが多く、左弾きは立ち位置が難しい
→ 左弾きでは隣の右弾きの人と弓が当たる、
  弓の動きが逆で一人目立つ、ので困る!?

4.利き手も定かではない、小さい頃から習う人が多いので、
 利き手は関係ない
→ 利き手も小さい頃からなら換えられるという人もいるじゃないか!?

以上、これぐらいの理由でしょう。

では、次回からそれぞれの意見に反論してゆくことにしましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(21)左利きヴァイオリニストの発言から」と題して、今回も全紹介です。

今回は、「左利きでも右利き用のヴァイオリンで右弾きするのがよい」といったヴァイオリニストたちのご意見を紹介し、その理由とされる事柄をまとめてみました。
次回は、これらの理由に関して私なりの反論を書いてみる予定です。

従来から、左利き幼児の右使いへの転換行為(「矯正」と、正しいことであるかのように、きれい事のような表現がされてきました)がなされていたものですが、それらに反発し、反論してきた日々のことを思い出してしまいます。
まったく同じ状況といっても過言ではありません。

やはり音楽、器楽演奏の世界は遅れているようです。
なんとかしなければなりませんねえ。

 ・・・

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2024.05.04

楽器における左利きの世界(20)YouTubeヴァイオリン動画から(1)-週刊ヒッキイ第663号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

第663号(Vol.20 no.8/No.663) 2024/5/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(20)YouTubeヴァイオリン動画から(1)」

 

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第663号(Vol.20 no.8/No.663) 2024/5/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(20)YouTubeヴァイオリン動画から(1)」
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 前回は、

 梶野絵奈『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
 (青弓社 2022/9/26)
(Amazonで見る)

 より、ヴァイオリンの歴史を少し学びました。

 ヴァイオリンは、16世紀北イタリアでその原型となる楽器が生まれ、
 のちに、西洋の芸術音楽で中心的な役割を果たしました。
 
 大きくて重いピアノと違い、軽便で広く一般に親しまれてきた、
 といいます。 

 そして、昔のヴァイオリンには、顎当てに見られるような、
 明らかな左右差は見られず、ほぼ左右対称の形状であったのでは、
 と思われました。

 さて、今回は、左利きとヴァイオリンについて、
 YouTubeの動画を紹介しながら考えていこう、と思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
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 YouTubeヴァイオリン動画から 左利きとヴァイオリンについて考える

 (その1)「左利き用バイオリン?!
        なぜみんな左手でバイオリンを持つのか。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●ヴァイオリンYouTube動画

ヴァイオリンは「擦弦楽器」と呼ばれ、
弓や棒などで文字通り「弦を擦って鳴らす」楽器ということで、

 《ヴァイオリンはそもそも弾くのが難しい。》
  (梶野絵奈『日本のヴァイオリン史』p.160)

といいます。
そういう楽器ではありますが、YouTubeを見ますと、
いくつものヴァイオリン演奏に関する動画が見られます。

その中から左利きとヴァイオリンについての動画を紹介しましょう。
今回は、長島達也さんの「達ちゃんねる」動画を。

 

 ●「左利き用バイオリン?!~」から

まずはズバリなタイトルが付いていたこの動画から――

(その1)
左利き用バイオリン?! なぜみんな左手でバイオリンを持つのか。
https://youtu.be/1AmkzYXwHuY?si=0GR1mBoVlDkQkwbN

 

2022/03/26「達ちゃんねる」13分27秒

《欧米を拠点に活躍するピアニスト・指揮者》という、
長島達也さんのYouTube動画です。

略歴を見ますと、演奏者としてだけでなく大学でも教えている他、
海外国内でのコンクールで審査員も務めているという方です。

実演だけでなく理論的にも、左利き用楽器とその演奏に関して、
様々な助言を“期待できる”人材といえそうです。

「なぜみんな左手でバイオリンを持つのか?」
という視聴者からの質問に答える動画です。

 

結論は――大きな理由が二つある、と言います。

以下、正確な文字おこしではなく、私の要約で紹介します。

 

◆一番大きな理由――両手の役割の問題

  たとえば、ピアノではほとんどの人が右利きになります。
  なぜなら、それだけ右手がたくさん使われるから。

  大人になると話が別だと思うのですが、
  子供の頃からやっていれば、左利きであろうが右利きであろうが
  全然違和感なく、それができます。

例として、ナダルというテニスプレーヤーの話をします。

本来右利きのナダルに、コーチが左利きの方が得だと、
小さいときから左利きのプレーを教えた。
その結果、今までも左利きのプレーヤーとして活躍している、と。

 

  ピアノであれヴァイオリンであれ、
  小さい時からやっていれば関係ないと思うんですね。

それを言いますと、「右へ倣え」でなくても、
「左へ倣え」でもいいはずですが……。

 

  それだけじゃなくて、
  (弦を弾くのと、弦を押さえるのと)それぞれに
  ヴァイオリンの難しさがあるので、
  自分の利き手がどっちをやればいいのか、ということは、
  (左手で弓を持たないことと)関係があると思う。
  難しさはそれぞれあるので。
  
  わざわざ左利きだからといって(左構えにして)
  右手でヴァイオリンを持つ人が少ない、という一つの理由。 

 

◆二番目の理由――右用と左用の楽器の構造の違いの問題

  一見こっちに持ち持ち替えるだけと思われるかも知れませんが、
  (ヴァイオリンを持ち替えるには)もっと色々な問題が出てきます。
  弦の並びを換えなければいけない、
  ペグという弦を調律をするところも真逆にしなければならない、
  またブリッジという部分も左右で高さが違うので、
  これも逆さにすれば、まったく違った音になってしまう。
  顎にフィットさせないといけない。
  ヴァイオリンのなかみにも違いがある。
  
内部の構造的にも、「バスバー」「サウンドポスト」等位置が異なる、
といいます。

  すべて特注で作ってもらわなければならないということが
  すごく大きな問題となってきます。

特注となりますと価格も高くなり、不利であるといいます。

この価格の問題も、昔から左利き用品についていわれ続けてきたこと、
もしくは、現在も言われていることです。

 

◆その他の理由――クラシックで言う「正しい持ち方」の問題

  右手で弓を持って左手でヴァイオリンをもつ、というのが、
  一般的なヴァイオリンのやりかたなんだけれど、
  逆にヴァイオリンをもってはいけない、ということはない。

  子供の頃からやるのなら、左手で弓を扱おうと右手で扱おうと、
  左手でヴァイオリンを持って弦のピッチをやろうと、
  おのおのの難しさがあるから、
  右でやろうが左でやろうがあまり関係ない、ということになるので、
  みんなここ(左手で持つ構え)になってしまいます。

いってみれば両手を使うから、それぞれの役割の難しさがあるので、
どちらがどちらとは言い切れない、ということなのでしょう。
ただ、この点は後ほど大いに語るつもりですが、
これは、やはりさほど重要なポイントとは言い切れないと思います。

 

  左でヴァイオリンを持つ人を何回か見たことがありますが、
  クラシックでは生では見たことがない、
  アメリカのカントリー・ミュージックなんかで
  左でやっている人はみるんだけれど、
  その人たちってこんな感じで弾くんで(中央に構えるような仕草)、
  クラシックで言う正しい持ち方とは全然違うので、
  果して右手と左手を換えるのが役立つのかというのも、
  また変わってくるのかな、と思います。

 

◆クラシックにおける理由――立ち位置の問題

  なぜクラシックの人たちのほとんどが右でやるのかというと、
  オーケストラで演奏するとき困ってしまいます。

  一人だけ左だと弓を持つ手と弓を普通に持っている人と
  肘が当たったり、弓が当たったりする。
  譜めくりの問題も出てくる。ヴァイオリンの場合、
  スタンドパートナーという二人で譜面をシェアするので。
  
  もし左の人がいれば、その左の人は一人だけ後ろに立たされて
  演奏することになるかも知れない。

並ぶ位置の問題ですね。

しかし、これも昔から言われていることですが、
隣の人とひじがあたる、という左手箸の問題と同じですね。

これも間隔の取り方の問題でしょう。

 

  また、ヴァイオリンはホールに向かって左側に出る。
  なぜかというと、ヴァイオリンは右の方に向いて構えるので、
  音もそちらの方にいく。
  左側に立つことで、客席に向けて音を届けることができる。

  構えが違うと、右と左では音の出る方向も違ってくるのではないか。
  そうすると、室内楽の時、
  演奏時の立ち位置の配置も換えなければけないのかな、と。 

これも、以前書きましたが、
「左右対称に展開する」という配置もあっていいと思います。

 

 ●右手でヴァイオリンをもって、左手で弓を弾く人

最後に、歴史的に見て、左で弾く人の話が出てきます。

最初に、喜劇王のチャップリンのはなし。

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(画像:長島達也さんのYouTube動画「達ちゃんねる」より「左利き用バイオリン?! なぜみんな左手でバイオリンを持つのか。」のチャップリンについてのくだりから) 

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(画像:ネットから拾った、チャップリンの左利きヴァイオリン演奏) 

 

次に、19世紀のバイオリン・ヴィルトゥオーゾ、ニコロ・パガニーニ。
一時期左で弦を押さえられなくなったので、左手で弾いたとか。

リチャード・バース(1850-1923)パーヴォ・ベルグルンド(1929-2012)
ルドルフ・コーリッシュ(1896-1978)などの名が上げられています。

有名な人が何人かいらっしゃるようです。
それぞれに理由があってのことでしょうけれど、
その辺も調べてみるとおもしろいかも知れません。

私の思うには、一つは本来右利きであったが、
ケガ等で右手もしくは左手が、
それぞれの分担すべき役割を果たせなくなったときに、
両手の役割を入れ替えることで演奏が可能になったケース。

もう一つは、元々左利き、それも強い左利きの傾向を持っていて、
どうしても右手で弾く形が自分に合わなかったケース、です。

どちらにしろ、
「有名な人なら許される」ということではないでしょうか。

大事なことは、まずは有名になること?

――以上、動画の内容紹介でした。

 

 ●「両手を使うから、利き手は関係ない」の誤り

まずは全体を見ての感想です。

一言でいえば「洗脳されている」といいますか、
「固定観念」に毒されているといいますか、
多数派の「右へ倣え」思想がそのまま生きている、
というところでしょう。

今存在するプロの音楽家のほとんどの人は、
物心つく前、利き手も定かではない頃から楽器に親しんでおり、
おとなの教えるままの演奏法を無事に身につけられた人たちです。

現状の世界観にどっぷりとはまってしまっています。

「利き手が違えば異なった演奏法もあり」
という考えには素直には馴染めないでしょう。

 

かつて先人が、そして今も私たちが戦ってきた、
左利きへの偏見や誤解をそのまま踏襲している、という感じです。

「利き手/利き側」という物の本質が良くおわかりでない、
という感じがします。

 ・・・

いつも言うことですが、
「両手を使うから、利き手は関係ない」という言葉の無意味さ。

本当に「両手を使うから、利き手は関係ない」というのなら、
どうして右用と左用が「50対50」で存在しないのか?
あるいは、過去においても存在していなかったのか?

高度な分業体制で、楽器の製造が機械化された結果、
現代では「右用一辺倒になった」というのなら、
過去に置いて「50対50」の時代があったとしてもおかしくはないのに、
手作りの時代からすでに右用が多数派であったというのが事実です。

圧倒的に右用ばかりという現実が、
「両手を使うから利き手は関係ない」という考え方が間違っている、
という事実を証明している、と私は考えます。

 

 ●両手の役割

楽器演奏で「両手を使う」といっても、
それぞれの手の役割の内容が異なります。

通常の右利きヴァイオリンならば、
右手は、弓を持ち、弦をこすって音を鳴らす。
左手は、ヴァイオリンを持ち、弦を押さえて音のピッチを変える。

右手の役割は音を出すこと――楽器の第一義です。
左手は音を変えること――楽器の第二義です。

そもそも音を出さなければ、楽器の存在意義はありません。

大事名のことは、まずは音を出すことです。
その音を出すのが、右手に持つ弓です。

どちらの手が大事かは誰にも分かることでしょう。

 

 ●両手の使い分け

昔の本(1998年発行、久保田競『脳を探検する』講談社)
(Amazonで見る)

の情報なので、現代での考え方がどうなのかはわかりませんが、
こんな情報があります。

第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」
2023.2.4
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)
楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手-週刊ヒッキイ第635号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/02/post-c8e73c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/431a52b05a1016b1f10cbf13ce2a994f

↑でも書いていますが、

「両手を使うことで脳を鍛えよう」という提案で、

 「利き手は利き手らしく、
  そうでない手は、そうでない手のように左右どちらも使いなさい」

というものです。

 《脳に左右で分業があるのですから、
  手の使い方も脳の分業と直結した使い方をしなければならない
  ――両手をそのように使い分けねばならないのです。》

 《手には運動器官としての役割と感覚器官としての役割がある》

というのです。

 

第315号(No.315) 2012/6/2「レフティ・グッズ・プロジェクト
<左手・左利き用品を考える>第5回」

より、その文章をまとめますと――

--
利き手は主役として器用さを、
非利き手は感覚器としての機能を生かせ

【両手を使い分ける】:両手にはそれぞれ役割がある
・利き手 =作用(運動器官)
・非利き手=感覚(感覚器官)

例えば、点字を読むのは、利き手より非利き手
(右利きなら、右手より左手)
を使う方が読むスピードも正確さも優れている、といいます。

また、大工さんは右手でカンナをかけ、
左手でその削った面をさわって確かめる、という動作をします。

紙切りでもそうで、主役の右手でハサミをチョキチョキし、
感覚器である左手で巧みに紙を送ります。

野菜を細かく切るときも、
右手は包丁を持ち、刃を適切な角度で保ち、
切るという動作を担当し、
左手は単に野菜を押さえるのではなく、
切る際の包丁を下ろす間隔を誘導しています。

ハサミで言えば、
利き手では、正しい位置に正確な角度で刃を当てチョキチョキする、
非利き手は、刃の当たる正確な切る位置にしっかりと紙をあてがう、
という役割分担です。
--

ヴァイオリンならば、利き手で弓を持ち、音を出す。
非利き手では楽器を安定させ、正確に弦を押さえ、正確に音を決める。

利き手と非利き手がそれぞれの役割を十全に発揮したとき、
優れたパフォーマンスが完成する、わけです。

 

 ●右用と左用の楽器の問題――楽器がない

この問題は、昔から左利き用品に関して言われていたこと
そのものです。

左用の楽器がないのは、右利きという多数派による
制度化された歴史的な背景があるからでしょう。

西洋におけるクラシック音楽というものは、
基本的に上流社会の産物だったということでしょう。

そういう社会では、建前という形式主義に陥りがちです。
教育制度なども、そういう考えの基になされます。

西洋の社会でもかつては左利きは否定されていました。
当然、右利きの演奏法が定式化されます。

それができない人は落伍者となるしかありませんでした。

しかし、現代は違います。

現代では人権が認められており、当人が求めるならば、
誰もが公平に自由を満喫することが許されています。

左用の楽器も特注でなくても、一部では存在しています。
その気があれば、可能性は残ります。

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(画像:「左利きバイオリン」GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ Soil III [GCV-VN-800EL-SOI] ネットより無断借用) 

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(画像:「左利きバイオリン」Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック ネットより無断借用) 

 

 ●人間の作ったものは変えられる

通常、人間の作ったものは、人間が変えることができます。

それに対して、
神様(あるいは「天」でも「創造者」でも「大自然」でも)の
作ったものは、人間が勝手に変えることができません。

楽器は人間が作ったものですから、自由に変えることができます。

一方、その人の利き手/利き側というものは、
神様が作ったものなので、人間が勝手に変えることはできません。

「小さい頃なら、右利きであれ左利きであれ、慣れる」
というのですが、利き手をそのまま活かすのが、
その人の持つ能力を最大に発揮する本来の道であるはずです。

 

 ●おとなの場合――趣味の楽器演奏のために

百歩、いや一万歩ぐらい譲って、「利き手も定かでない幼児」の場合は、
それでもいいとしましても、
おとなの場合は、また話が違ってきますよね。

上の動画でも長島達也さんが《大人になると話が別だと思うのですが》
と発言されていました。

音楽というのは、「音を楽しむ」と書きます。

職業的な音楽家は、利き手も定かでない時期から訓練するので、
右利き用一本でも、それはそれでいいかもしれません。

しかし、おとなの場合、趣味として音楽を楽しみたい人にとっては、
どうでしょうか。

強度の左利きの私の持論は、
「利き手は心につながっている」というものです。

音楽もまた、心の表現です。
技術さえあればいい、というものではないはず。

豊かな心の表現としての音楽は、
心につながる利き手を主体とした演奏から生まれる
のではないでしょうか。

 

左利きの人や右利きではない人のために、利き手を活かす演奏法を、
プロの音楽家のみなさまにも真剣に考えていただきたいものです。

それが音楽をさらに広め、プロのご自身の職業的にも
活躍の場を広げることにつながるでしょう。

プロの人たちも左利きの人たちのために、
他人事のように考えるのではなく、多様性の一環として、
左利き用の楽器の普及を手助けしてほしいものです。

 ・・・

次回は、もう一つYouTubeの動画を紹介しようか、と考えています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(20)YouTubeヴァイオリン動画から(1)」と題して、今回も全紹介です。

以前、弊誌で「日本左利き協会」の大路直哉さんの著書『左利きの言い分』の坂本龍一さんの章について書いたことがありました。

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16
(Amazonで見る)

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第654号(No.654) 2023/12/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(17)
 大路直哉著『左利きの言い分』の音楽家たちについて」
【別冊 編集後記】2023.12.2
楽器における左利きの世界(17)『左利きの言い分』の音楽家-週刊ヒッキイ第654号 (「新生活」版)

そのときにも書いたことですが、坂本さんも小さい頃からピアノに親しみ、ピアノが右利き用と気付かないまま(?)、不満を持ちつつ、演奏されていたようです。

 《主役は右手ばかり。左手はいつも脇役に追いやられていた。
  僕は左利きだから、これが納得できなかった。
  「差別じゃないか」とか言ってね。かなり生意気な子どもでした》

どうしても小さい頃からその世界にどっぷり使ってしまっていると、(右利き用が当たり前という)その考えからなかなか抜け出せないものです。

私のように、大人になってから楽器に取り組んでみようと思った人には、利き手の違いが大きな問題だということがよく分かります。

長年左利きライフ研究家として活動してきた私から見れば、ごくごく初歩の事案なのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.04.06

楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈『日本のヴァイオリン史』から-週刊ヒッキイ第661号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前号では、<左利き用楽器>製作プロジェクトの一環として、
 イギリスの利き手・左利き研究の権威、マクマナスさんの著書の邦訳
 クリス・マクマナス『非対称の起源』 (講談社ブルーバックス)
 から、左利きと音楽家についての文章を紹介しました。

 今回は、引き続き、同様の趣旨で、図書館で見つけた本――

 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
 (青弓社 2022/9/26)
 から、ヴァイオリンの歴史を少し勉強してみます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

  梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』から ヴァイオリンの歴史
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

*参照:

梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
(青弓社 2022/9/26)
(Amazonで見る)

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 ●初期のヴァイオリンには左右差がない?

まず最初に感じたことは、この点でした。

現代のヴァイオリンには、
正面から見て向かって左の下部に「顎当て」があり、
左右性が見て取れます。

ところが、この本の写真を見ていますと、初期のヴァイオリンには、
これがなく明らかな左右差が見られませんでした。

弦を張り替えれば、どちらで弾くこともできるように思えます。

前回のマクマナスさんの本『非対称の起源』のなかでも、
「両手利き」の楽器も少なくないとして、

 《ギターの弦の順序を逆に張りかえれば、
  左利きの奏者も弾くことができるのは、ポール・マッカートニーや
  ジミー・ヘンドリックスなどのミュージシャンを見れば明らかだ。
  ヴァイオリンやチェロ、コントラバスも、映画『ライムライト』の
  チャップリンが弾いたヴァイオリンのように、
  左利き用に弦を張り替えることはできる。》p.391

クリス・マクマナス『非対称の起源―偶然か、必然か』
大貫 昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006/10/21
http://www.amazon.co.jp/dp/4062575329/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
https://amzn.to/3wnyyVS

と記述されていました。
(実際には内部の構造に差があるのかも知れませんけれど。)

この本の中にはいくつかのヴァイオリンを手にした画像があります。
しかし、みな右弾きスタイルでした。

ヴァイオリンという楽器は、演奏がむずかしいといいます。
この本の著者も、「あとがき」のなかで、

 《ヴァイオリンはそもそも弾くのが難しい。
  三十代くらいまでは、このようなむずかしい楽器を
  どうしてこんな一生懸命に弾いているのだろうかという
  疑問が脳裏をよぎることもしばしばだった。》p.160

というほど。
確かに初めてヴァイオリンを弾く人の演奏は、
「キーコキーコ」という擬音で表現されますからね。

そういう楽器ですから、この楽器を弾く人はそれなりにエリートで、
「選ばれた人」だったのでしょう。
「右使いができる人」で、左手も器用な人というところでしょうか。

 

ちなみに、
ヴァイオリンは「擦弦楽器」と呼ぶようで、
弓や棒などで文字通り「弦を擦って鳴らす」楽器ということのようです。

こすって弾くというのは、いかにもむずかしそうですよね。

ほかの弦楽器には、下の二種類があるようです。

「撥弦(はつげん)楽器」――何らかの方法で弦を弾いて音をだす楽器で、
  抱えて演奏するギターなど、置いて演奏する琴など
「打弦楽器」――弦をたたくことで音を出す楽器で、ピアノなど

 

●ヴァイオリンとはどういう楽器?

本書の概要を伝える「はじめに」の冒頭に、
「ヴァイオリン」の紹介があります。

 《ヴァイオリンは、十六世紀に北イタリアでその原型となる楽器が
  生み出されて以来、西洋の芸術音楽で中心的な役割を果たした...》

また、フィドル(英語―「ヴァイオリン」はイタリア語から派生した言葉)
と呼ばれて、アイリッシュ音楽やアメリカのカントリー音楽等、

 《多くの民族の人々に好まれて演奏され続けている。》

そして、

 《クラシック音楽に用いられるほかの弦楽器や管楽器と比べて
  守備範囲が広く...「楽器の女王」の異名を取る...》

さらに、

 《大きくて重いピアノとは違い、軽便で、低価格の楽器もあるため、
  ...場所をかまわず演奏されてきた歴史もある...》

といい、

 《人々の社会的ヒエラルキーをも超えた多様な文化と社会のなかに
  過去にも現在にも存在している。》

とあります。

 

日本でヴァイオリンが本格的に普及しはじめたのは、明治維新後で、
明治期のヴァイオリン演奏の担い手は、上は西洋音楽の学び手から、
ヴァイオリン演歌師、女学生や若き日本男児まで、

 《...ジェンダーもジェネレーションも超えて、
  時間の経過とともに人々の生活に取り込まれていった。》

と。

 《...今日の日本で、ヴァイオリンはクラシック音楽を演奏するための
  「楽器」という印象が強く、それ以外は邪道という感覚は広く
  共有されているだろう。...》

といいます。

こういう感覚が強くあれば、どうしても
「ヴァイオリンを左手で弾こう」という試みは、
あまり歓迎されえないのでは、という気がします。

しかし、

 《ヴァイオリンは演奏技術の習得が最も難しい
  といわれているにもかかわらず...》

高度経済成長期頃から、世界的な舞台で活躍するヴァイオリニストや、
名器ストラディヴァリウスを所有する個人や団体も増え、
アマチュア演奏家の人口も多く、趣味として楽しむ人もいる、といい、

 《ヴァイオリンを愛する人々の層の厚さに思いを馳せると、この楽器が
  いかに深く日本に根ざしているかを改めて認識させられる。》

 

このように日本でも、世界中でもヴァイオリンが、
民衆の音楽を担う軽便な楽器として存在してきた、
という事実を知りますと、
もっと自由に演奏者の「利き手に合わせた楽器」としての
「左用ヴァイオリン」も登場して良いのでは、という気持ちになります。

 

●ヴァイオリンの歴史――起源

ちょっと結論を先走ってしまいましたが、
本書からヴァイオリンという楽器の歴史についてみておきましょう。

 《ヴァイオリンの起源については諸説あるが、
  イタリアでヴァイオリンの原形が十六世紀に生み出されたというのが
  定説になっている。》「はじめに」p.21

これは不思議なことに、
日本に残っているヴァイオリン関連資料の最古のものと、
ほぼ同時期だといいます。

さて、ヴァイオリンの起源ですが、未だに解明されていないことが多く、
学者も決定的な言及を避けているそうです。

ただ、「原型」があって「完成」された、と説明されるといいます。

弓を用いる楽器は900年頃から彫刻や絵画に現れるが、
文字資料に残された名称に一貫性がなく、
異なる楽器に同じ名称が用いられている場合もあり、混乱しやすい。

 《明らかにされているのは、ヴァイオリン(その原型も含めて)が
  誕生したのは十六世紀前半で、
  北イタリアで進化したということである。》p.24

指揮者が原型と読んでいるものの例として、
1535年、ガウデンツィオ・フェッラーラ(Gaudenzio Ferrari)が
描いたサロンノ大聖堂(Saronno Cathedral)の天井のフレスコ画に
ある楽器、がそれだといいます(カラー口絵の図1)。
ただ、背面しか見えず、三弦で胴体にくびれがあることが確認できる。

 《ヴァイオリン属の楽器はすべて二五年から五〇年にかけて
  生み出された。ヴァイオリンはそのなかの一つである。
  ヴァイオリンを創案した人物は不明で、
  『ニューグローヴ世界音楽事典』で示された
  「一人の人物が成し遂げたことではないだろう」という見解に
  異論は唱えない。》p.25

とし、

 《...ヴァイオリンは、いうならばヨーロッパの擦弦楽器の
  長い歴史の末に生み出された、擦弦楽器の集大成なのである。》p.25

そのように作成された楽器はほかにもあったはずだが、

 《ヴァイオリンが最も成功した例だったのは歴史が証明している。》p.26

と。

 《...一五〇〇年頃前後にはヴァイオリンの原型[傍点]が世に現れ、
  現在の形のヴァイオリンが誕生したのは十六世紀中頃と考えていい。》
   p.26

現存する最古のヴァイオリンは、メトロポリタン美術館所蔵の
イタリアの製作家アンドレア・アマティ(Andrea Amati)の
1560年頃の作とされている。

(p.27に写真が掲載されている)
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A・アマテイの孫ニコロ・アマティ、
その弟子のアントニオ・ストラディバリ、
A・アマテイの弟子のアンドレア・グァルネリを祖父に持つ
バルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリ、
通称グァルネリ・デル・ジェスといった名匠たちが次々と現れ、
彼らの製作した楽器が今日も頂点とされている、といいます。

 

以下色々と、他の古い楽器のことなどが語られています。
私にはよくわかりませんので、割愛します。

日本での歴史も語られてゆきますが、それもここではふれません。

 

 ●左利き用バイオリンについて

とにかく私の結論としましては、先ほども書きましたように、
西洋音楽に置いてポピュラーな楽器だということで、
それならギターのように、もっと使い手の利き手に沿った楽器――
左利き用の「左用ヴァイオリン」が現れてもいいのではないか、
ということです。

 

「左利き用バイオリン」で検索しますと、ネット上には、
SOLDOUTとなってはいますが、

「ストラディバリモデル」という
「GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ [GCV-VN-800EL]」
https://kreislermusic.ocnk.net/product/1334

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(画像:「左利きバイオリン」GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ Soil III [GCV-VN-800EL-SOI] ネットより無断借用)

「Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック」
https://www.autumnvalley.net/product/1708

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(画像:「左利きバイオリン」Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック ネットより無断借用)

 

といったものがでています。
必ずしも「存在しない」わけではありません。

 

次回、また取り上げますが、
ネットでは「左利き用バイオリン」に関するYouTubeの動画も
いくつかあるようです。

で、それらの発言を聞いていますと、
「なぜ左手でヴァイオリンを持ち、右手で弓を弾くのか」について、
「なぜ右手で箸を持つのか」「なぜ右手で字を書くのか」
といった疑問への、
昔よく聞かれた回答と同様の“あやまった見解”が認められます。

これらについては、次回改めて……。

 

 ●木琴を反対側から弾くと「左用」?

本書に「木琴」が登場しています。
北斎の絵も掲載されています。

240406mokkin-hokusai

 

思えば「木琴」も一種の鍵盤楽器といえそうですし、
この楽器は、逆方向、向こう側から弾けば、
左側が高音部で右側が低音部となり、「左用」になりそうな気がします。

 

[通常(右用)]
左側(低音部) → (高音部)右側
--------------------------------
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド
--------------------------------
(右腕の自然な動き)→(右へ引いていく)

 

[逆から(左用?)]
左側(高音部) ← (低音部)右側
--------------------------------
ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド
--------------------------------
(左腕の自然な動き)←(左へ引いていく)

 

実際にはどうなのでしょうか。
また、もしそうだとして、そういう演奏の仕方はあるのでしょうか。

両手で弾く(叩く)ので、利き手の違いは関係ない、といわれそうです。

でも、本当にそうでしょうか。
逆弾きもあり、な気がしますが。

演奏法がよくわからないので、これ以上語ることはできません。

今思いついたのですが、私が持っているようなミニ電子キーボードなら、
反対側からキーを押すぐらいならできるので、
逆弾きもできそうな気もします。
試してみようかと思います。

 ・・・

今回はこの辺で。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」と題して、今回も全紹介です。

今回は改めてヴァイオリンについてのお勉強です。
実際に3歳の頃からヴァイオリンを演奏されている方のお言葉なので、これは間違いないでしょう。

演奏が難しいとされる楽器だというのことが改めて分かりました。
それゆえに、やはり演奏者の「利き手に応じた演奏ができる楽器」が必要なのではないでしょうか。

 

また、木琴についても少し書いています。
こういう楽器もあるのですよね。

『ウィキペディア(Wikipedia)』によりますと、「鍵盤打楽器」といった呼び名もあるようです。
文字通りという感じです。
これを逆方向から弾く(叩く)ことで、「左用」になるのかどうか、くわしいかたにお聞きしたいものです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2024.03.02

楽器における左利きの世界(18)マクマナス著『非対称の起源』から-週刊ヒッキイ第659号

(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第659号(Vol.20 No.4) 2024/3/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(18)
 マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について」

 

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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第659号(Vol.20 No.4) 2024/3/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(18)
 マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について」
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 前号では、<左利き用楽器>製作プロジェクトを紹介しました。
 こちらについては、また後ほどふれるとして、
 今回は、昨年12月以来の、<楽器における左利きの世界>です。

 イギリスの利き手・左利き研究の権威、マクマナスさんの著書の邦訳
 クリス・マクマナス『非対称の起源』 (講談社ブルーバックス)
 から、左利きと音楽家についての文章を紹介しましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

  マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

*参照:
クリス・マクマナス『非対称の起源―偶然か、必然か』大貫 昌子/訳
講談社ブルーバックス 2006/10/21
(Amazonで見る) ――左利き研究20年のイギリス人科学者による、左利き・利き手の研究を
中心に、左右に関する話題を含めた科学研究書の訳書。「利き手と社会」
「左利きの苦悩」といった章を含み、左利きには興味深い本。イギリス・
スコットランドの「左利き」についての方言集など一部省略されている。
原著:RIGHTHAND LEFTHAND (c)2002
200215kagamino-2

 

 ●「第4章 利き手と社会」

本書『非対称の起源―偶然か、必然か』の第4章「利きと社会」には、
《相互作用の世界のなかの側方性》について書かれています。

これは、例えばみなが一列になって鎌を手に草刈りをするようすを
一例としてあげています。
全員が右利きで右手に鎌(西洋の草刈り鎌は大きくて1メートルぐらい
ある)を構えて一斉に草を刈るとき、
そのなかに一人でも左利きの人がいて逆方向に鎌を振るようでは、
横にいる人がケガをする可能性がある、というのです。

全員が同じ動作で同じ方向に振れば問題は起きにくい、と。
これが「側方化した作業」ということばの意味です。

 《二人の人が側方化した作業をいっしょにしようとするとき、
  一人がすることは必然的に他方の作業に影響する。
  したがって社会はそのような場合のため、法律であれ、
  規約あるいはエチケットであれ、
  とにかく何らかのルールを作る必要がある。》p.362

そのようなルールやエチケットの例として、握手や
テーブル上でのナイフとフォークの位置を上げています。

これらは
 《左利きにとっては多少不自由かもしれないが、
  その不便さは些細なものだから文句を言う人はいない。》p.362
という。

ここはちょっと同意しかねますが、話の展開上、一旦置いておきます。

もっと複雑な相互作用の時にはどうなるであろうか、
この章で考えてみよう、というわけです。

 

 ●競争ではなく、協力が必要なケースでは?

競争の場合、左利きは時に有利になることがある、といいます。
それに対して、競争ではなく互いの協力が必要な状況では、
左利きにとってはどうだろうか?

最初の例は、何人かが一つのチームとなって行う外科手術の場合、
指示することなく
他の外科医の動きを見てサポートする態勢が整っている必要がある。
そこで、右利きと左利きが混じっていると問題だろう、といいます。

実際に調査した例は一つしかないが、
その聖マリア病院付属医学校の学生の調査では、
医師67人中左利きは12%であるが、
外科医36人中左利きは一人もいなかった。
統計的にはあり得ない結果だが、
外科医に左利きが少ない可能性は考えられる、とあります。

次にあげられている例が今回紹介しようという、オーケストラの場合。

 

 ●「右利き」での演奏

<オーケストラも右利きが多い>という段落を紹介しましょう。

オーケストラのヴァイオリン、チェロなどの弦楽器の弓は
1メートルぐらいあり、これらがぶつかり合うことを考えると、

 《オーケストラの弦楽器が必ずと言っていいぐらい、
  「右利き」で演奏されるのも当然のことだ。》p.391

といい、さらに

 《楽器の中には必ず「右利き」で演奏しなければならないものもある。》

と。

 《ピアノは良い例で、高音のキーは右側の端、
  低音は左側の端と決まっている。》p.391

これは、このシリーズで私がいつも言ってきたことでもあります。

 

 ●「両手利き」の楽器や逆弾きの奏者

次に「両手利き」の楽器も少なくないと、ギターの例をあげています。

 《ギターの弦の順序を逆に張りかえれば、
  左利きの奏者も弾くことができるのは、ポール・マッカートニーや
  ジミー・ヘンドリックスなどのミュージシャンを見れば明らかだ。
  ヴァイオリンやチェロ、コントラバスも、映画『ライムライト』の
  チャップリンが弾いたヴァイオリンのように、
  左利き用に弦を張り替えることはできる。》p.391

これはちょっと違う点もなきにしもあらずですが、
やってやれないことはない、という次元ですね。

さらに、時には左利きの奏者が、右利き用に張った弦を
そのまま「逆に」(左利きで)演奏する例があるといいます。

 《独学でニューオーリンズのジャズベース奏者になった
  シャーウッド・マンジャパーネは、
  ジャズ史研究家ディック・アレンによると、
  「ただ耳で聞いたままを、自己流に弾いている」のだ。
  「何しろ左手だから、まるであべこべに弾いているみたいに見える。
  彼は弦を張り替えずに、そのまま弾くことを覚えただけのことだ」。》
p.391

右利き用が一般化、あるいは標準化して普及している場合、
左利きの人がこういう弾き方をすることは当然起こりうること、
と考えられます。

そうするしか思いつかないのですから。

私のような左利きの年配者たちが右手用のハサミを、
それが右手用(右利き用)と知らないまま、
左手で使っていたのと同じことでしょう。

 

 ●オーケストラ奏者の13%が左利き

著者は、ヴァイオリン独奏者で左利きの弾き方をする人がいるとしても、
現代のオーケストラで左利きの演奏者は見たことがない、といいます。

 《してみると、彼らの大多数、あるいはひょっとすると全部が
  右利きなのだろうか? ほかにも右手と左手とが異なったことを
  するようデザインされているオーケストラ用楽器は数多いが、
  その奏者たちも右利きなのだろうか?》

実はそうではない、といいます。

英国の17のプロのオーケストラを調べた結果は、
《自分の選んだ楽器の種類に関係なく》13パーセント近くが左利きで、
《これは一般の人口よりやや多め》だといいます。

右利き用の楽器しかないので、
左利きの人でも、しょうことなしにそれに慣れた人が生き残ったのか。

右利き用の楽器といえども、左手も何らかの形で使う必要があるので、
両手がある程度使える人が生き残ったのか。

 《左利きだからと言って、必ずしもプロレベルのオーケストラで、
  右利き用の楽器を奏でる妨げになるとは限らないようだ。》p.392

とも書いています。
しかし、妨げにはならないかもしれませんが、
それで左利きの奏者自身に不満がない、とはいえないでしょう。

 

 《社会の中で他人と協力していく必要上、
  左利きのヴァイオリン奏者は「右利き」の弾き方をし、
  食事のときには右利きの人と同じように、
  フォークとナイフを使っているのにちがいない。》p.392

という結論でこの段落の文章を締めています。

 

 ●「右へ倣(なら)え」するということ

他人と協力してゆく上で、少数派が多数派に合わせるということが
必要なケースはあると思います。

交通ルールとしての「車は左側通行」というように。

しかし、これも日本やイギリスのような一部の島国ぐらいの決まりで、
欧米の大陸では逆の「右側通行」になっています。

本書の本章でもそれを取り上げていますが、
これは「偶発性」のものだと結論しています。

何かしら根拠があってというのではなく、偶然の結果としてそうなった、
というもののようです。

 

「右へ倣え」ということの是非というものも考えてみるべきではないか、
と思います。

何事も多数派に合わせなければならない、というものではないはずです。

左利きの人は多く、自分の利き手である「左利き」を
アイデンティティとして感じているものです。

これは右利きの人ではまず見られないことです。

多くの人に聞いたことがあります。
私が聞いたかぎりでは、右利きの人にとって「自分は右利きだ」
という自覚は、ほぼありませんでした。

ところが左利きの人では「自分は左利きだ」という事実が、
自分を表すアイデンティティの一つになっているものです。

そういう意識を持つ人にとって、
何でもかんでも「右へ倣え」というのは、非常に抵抗があります。

例えば、こういう風に考えてみてはどうでしょうか。

オーケストラで、
ヴァイオリン奏者の腕が一斉に右に左に流れるのを見て、
「美しい」と感じる人がいるとしても、
では、その中の一人が逆の動きをしていれば、確かに目立つでしょうし、
なかにはそれを、ひとつの汚点や玉に瑕(きず)のように感じる人も
いるかもしれません。

しかし、左利き奏者と右利き奏者を左右に配置すれば、
鳥が翼を広げるように、左右に大きく展開する場面が生まれ、
視覚的に一つのダイナミズムを生む演奏につながるかもしれません。

ただ単に一列に並んで、一斉に右に左にと動くだけの演奏とは違い、
新たな視覚的表現となる可能性もあるのではないでしょうか。

それによって、今までは右利き動作に馴染めずに
音楽家としての限界を感じていたような左利きの人にも、
新たな職業選択の機会を与えることが可能になると思います。

101120gcv800el-soil-ii-97ff5686b8

(画像:「左利きバイオリン」GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ Soil III [GCV-VN-800EL-SOI] ネットより無断借用) 

 ・・・

さて、今回はこの辺で。

 

 ▼「左鍵ハモ計画」

最後に、<左利き用楽器>製作プロジェクトについて――

「左利き用鍵盤ハーモニカ」製作プロジェクト =「左鍵ハモ計画」
についてあちこちメールを出してみようと考えていましたが、
1月下旬からパソコンの調子が今ひとつで、ネットにつながるのに、
時間がかかり、クルクル状態で、思うように、調べることもできません。

保存したファイルも同様で、どうも不調です。

もうしばらく時間がほしいなあ、と思います。

どなたか「我こそは」という人が現れると良いのですけれど……。
(甘い!甘い!)

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(18)マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について」と題して、今回も全紹介です。

今回は、マクマナス著『非対称の起源』の音楽関係を取り上げたのですが、この本、部分的に納得のいかない部分がよく出て来るのです。
イギリスの利き手研究の権威だそうで、納得できる話は多いのですが、そのなかでもう一つピンとこないところが出て来るのですね。
単に私の勉強不足もあるのでしょう。

反面、左利きというのは、自分のなかで非常に大きな要素なので、私の場合は自分の実感や体感に基づく考えなわけです。
そこにどうも合わない部分が出て来るわけです。

具体的には、追々お話しする機会があるかと思います。
ではまた。

 ・・・

「左鍵ハモ計画」なんですが、これは大切なことなのですが、どうも突っ込んでいけない自分がいます。
体力不足というところでしょうか。

ここ何年か、ほとんど人と関わるようなことをしなくなりました。
どうしても、色々と考え方の違いや何やかやが出てきます。
それが面倒くさい、という感じですね。

元々一人でコツコツやってきた人間で、社交的な人間ではないので人と関わるのが苦手です。

若い人で精力的な人が現れないかなあ、というのが希望的観測なんですけれど……。

 ・・・

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2024.02.10

2月10日<左利きグッズの日>記念2月合併号―<左利き用楽器>製作プロジェクト-週刊ヒッキイ第658号

(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第658号(Vol.20 No.3) 2024/2/10
「2月10日<左利きグッズの日>記念2月合併号――
<左利き用楽器>製作プロジェクトについて考える」

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第658号(Vol.20 No.3) 2024/2/10
「2月10日<左利きグッズの日>記念2月合併号――
<左利き用楽器>製作プロジェクトについて考える」
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 本日2月10日は、<左利きグッズの日>です。

 由来について先の<号外>でも書いていますので、
 省略させていただくとして、

 今回は、もう一昨年になりますか、
 「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
  楽器における左利きの世界」
 で、左利き用の楽器について考えてきました。

 「左利きの人は、自分の身体に合った左利きの道具を!」
 というのが私の持論であり、「心の必需品」である楽器もまた同じで、
 「左利きの人は左利き用の楽器を演奏すべきだ!」と考えています。

 そこで、<左利き用楽器>製作プロジェクト
 というものを考えて見たいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ めざせ!実現!!<左利き用楽器>製作プロジェクト ◆

  (1)プロジェクトA<左利き用鍵盤ハーモニカ>
  (2)プロジェクトB<左利き用電子キーボード>
  (3)プロジェクトC<左利き用ピアノ>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●<めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト

なんと言いましても、
左利きの人の生活向上のためにあるのが、この記念日です。

以前書きましたように、
左利きに関する社会のものの見方・考え方が改善されるだけでは、
左利きの人の生活向上にはつながりません。

生活の質を高めるには、左利きの人の身体に合った道具や機械、
システムなどが整わなければ、生活の向上は期待できません。

左利き用品の普及の度合いが、左利きの人の幸福の度合いだといっても
過言ではありません。

生活必需品に関しては、かなり改善されてきました。
しかし、心の必需品ともいうべき、嗜好品に関してはどうでしょうか。
例えば楽器などは、プロの人は別として、
一般に人にとっても「心の必需品」ではないでしょうか。

そこで、この左利き用楽器の問題を取り上げる必要があるのです。

 ・・・

以前、<めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト
という題目を唱えたことがありました。

これは一応、最終目標として掲げたものでした。
あらゆる楽器の中で、
ピアノという楽器が一番の頂点にあるような気がしたからです。

私の子供の頃、学校でも必ず置いてあったのは、ピアノに限らず、
オルガン等の鍵盤楽器でしたから。

 

で、今回話題に取り上げるのは、三つのプロジェクトです。

(1)プロジェクトA<左利き用鍵盤ハーモニカ>
(2)プロジェクトB<左利き用電子キーボード>
(3)プロジェクトC<左利き用ピアノ>

 

実現の難易度でいうのではありませんが、
実現した場合、当面の利用者への利益の還元という観点からいいますと、
この順になりそうな気がするからです。

鍵盤ハーモニカは、
今でも一番子供さんが利用することが多いように思います。
学校で義務的に、一律に演奏する機会があるようです。

そうしますと、これはやはり一番先に取り組まなければならない、
と考えられます。

電子キーボードは、
基本的に配線の問題ではないか(?)という気がするので、
実現の可能性も高いのでは、と思っています。

三つの中で一番難易度が高いと思われるのが、ピアノです。
しかしこれも、左利きピアニストのクリストファー・シード
(Christopher Seed)さんは、左利き用ピアノを作り演奏している、
という実例があります。

Lefthandpiano

(画像:左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏しているクリストファー・シード(Christopher Seed)さんの左利き用ピアノ(左の茶色)と通常の右利き用ピアノ(右の黒色))

220401christopher-seed-the-left-handed-p

 

お金があれば、そして作って欲しいという熱意があれば、
実現するものなのだと思います。

 

 ●クラウドファンディング

そこで、この「お金と熱意による夢の実現」にふさわしい手段として、
クラウドファンディングというものがあるようです。

クラウドファンディングについての詳しい話は置いておきますが、
色々な実現例があるようです。

左利き用楽器実現の可能性もあると信じます。

左利きに関しての実例として私が知っているのは、何年か前に
「左ききの道具店」さんが行った「左利き用手帳」の例がありました。

製作に協力してくださるメーカーさんがあってのこと、
だったと記憶しています。

こういう熱意を持つ企画者と協力者がいれば、
クラウドファンディングも成功するのではないか、と思われます。

私はかつては少しは活動家の真似をしていたものですが、
今は100%「うどん屋の釜」=「ゆう(言うと湯をかけた)だけ」
状態です。
どなたか若い方――若くなくてもいいですが、実務のできる方で、
ぜひチャレンジしていただきたいものです。

 

 ●(1)プロジェクトA<左利き用鍵盤ハーモニカ>

まず手始めは、

(1)プロジェクトA<左利き用鍵盤ハーモニカ>
――略称「左鍵ハモ」計画

ですね。

以下のメルマガで、
「左鍵ハモ」についての過去のメルマガ記事を振りかえっています。

 

第652号(No.652) 2023/11/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(16)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」
2023.11.4
[左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)]
楽器における左利きの世界(16)鍵盤ハーモニカの世界(2)
-週刊ヒッキイ第652号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/11/post-4f8030.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/5abfe073615fa9926465d8b75bf9f3e8

 

そのうちから、

第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・後編
 ●鍵盤ハーモニカと左利き
--
事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」
http://www.pianonymous.com/entry/2014/08/19/%E5%B7%A6%E5%88%A9%E3%81%8D%E7%94%A8%E3%81%AE%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
■対策1:ホースを延長して、反対側まで伸ばす。
■対策2:右手を鍛えるための試練とおもって頑張る
■対策3:もういっそのこと私と同じスタイルで弾こうよ!
 《…以上、あまり解決に導けなくて申し訳ない。》
 《※追記 2014/09/04
  左利き用の鍵盤ハーモニカについて
  スズキ楽器製作所へ直接問い合わせを行った。
  結論からいうと、
  現状どのメーカーも製造は一切していないようだ。
  というのも左利き用のパーツを製造するには
  倍以上のコストがかかり、
  作りたくてもどこも作れない状況とのこと。
  うちのサイトにきてくれた左利きの皆様、
  有力な情報が提供できずすみません。》
 ●相談サイトでは……
 ●「ちょっと」だからこそ簡単!?
--
身体に服を合わせるのが、普通の考え方です。
服に身体を合わせるなんて、あり得ない! のでは?
手や腕は、右と左の二つしかありません。
単純に考えれば、
右用があれば、左用があっていいのではないでしょうか。
作っても二つだけです。
利用者全体の総数が違う、というかもしれませんが、
だからといって、多数決で決める必要はありません。
洋服のサイズを多数決で決められても困るでしょう。
...
結局は、心がけの問題ではないでしょうか。

発想の問題。

一人でも多くの人に音楽を楽しんでもらいたい、
と考えるかどうか。

心の優しさ、思いやりの問題とも言えそうです。
--
 ●左右平等の思想で……
--
右利きが多数派だから「右へならえ」せよ、
ではなくて、
左右平等で考えてほしいものです。

人は、みんなやっぱり人なのです。
心もあれば、それぞれに痛みも感じるのです。

「自分だけがしあわせであれば良い」
なんて、誰も思いませんよね。

「みんながしあわせになれる」
そういう社会にかえてゆきましょう

まずは楽器から、始めてみませんか?
--

と私は書いています。

ここで提案されている左利きの場合の演奏法は、
テーブルに置いて、チューブでつないだ吹口を使う方法でした。

これでは「本来あるべき姿の左手による鍵盤操作」の問題を
クリアーできません。

 

で、上のサイトの追記(色文字の部分)を、改めてコピーしておきます。

--
※追記 2014/09/04

左利き用の鍵盤ハーモニカについてスズキ楽器製作所へ
直接問い合わせを行った。
結論からいうと、現状どのメーカーも製造は一切していないようだ。
というのも左利き用のパーツを製造するには倍以上のコストがかかり、
作りたくてもどこも作れない状況とのこと。
うちのサイトにきてくれた左利きの皆様、
有力な情報が提供できずすみません。

ちなみにスズキさんでは、身体にハンディのある子どもたちのために
メロディオンやリコーダーを手作りし、無償で提供する
という取り組みをされているなど、右手にハンディがある人に対しては、
協力的なスタンスである。(※学校や施設が直接申請をするフローで、
一般への特注等は行っていない)

いずれにせよ、手間と時間がかかることなので、
やはり左利きの小学生は私と同じ弾き方をしよう!という結論にいたる。

※さらに追記 2016/6/8

スズキさんで左利き用の製品をみた、という方から情報を得た。
しかし…それはただ単に歌口が逆についているモノだったそうだ。
--

 

改めて読んでみますと、
《スズキさんでは、身体にハンディのある子どもたちのために
 メロディオンやリコーダーを手作りし、無償で提供する
 という取り組みをされている》
といいます。

左利きは、現状では<身体にハンディのある>といっていいのではないか
という気がしますけれど、どうでしょうか。

少なくとも、この時期よりは、左利きに限らず、
マイノリティーへの理解が進んでいる、と考えられます。

今なら熱意を持って協力を依頼すれば、実現の可能性は
少しは上がっているような気がします。

 

 ●「左鍵ハモ」計画への道

問題は、やはり「鍵盤を左右反転させる」という発想を
受け入れてもらえるのかどうか、にかかっているかと思われます。

しかし、このサイトの南川朱生さんには、

2015-03-07
両手弾き用の鍵盤ハーモニカを考案してみた
https://www.pianonymous.com/entry/2015/03/07/%E4%B8%A1%E6%89%8B%E5%BC%BE%E3%81%8D%E7%94%A8%E3%81%AE%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%82%92%E8%80%83%E6%A1%88%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%9F

20150307

(画像:南川朱生さんの考案する両手弾き鍵盤ハーモニカの画像-無断拝借)

 

という記事もあります。
この両弾き用の左側だけでいいのですから、可能性はあると思われます。

《もし自分が大金持ちになり、各メーカーに依頼して
 特注鍵盤ハーモニカを制作できるのであれば、
 下図のような商品を作りたいと思っている。》

とあります。

続けて《一般的な需要は微塵も感じられないが、》とありますが、
左用ができれば、こちらの可能性も広がるという点では、
協力してもらえるかもしれません。

希望的観測に過ぎませんが。

 

▼「左鍵ハモ」計画への道――

・左利き用品を扱っているお店の人に計画への協力を依頼する

・鍵ハモのプロ、南川朱生さんにお話を聞いてもらう

・現時点で鍵ハモを製作しているメーカーをチェックして、
 製作を打診してみる

この辺からスタートすることになりそうです。

その後の段階としましては、

1.メーカーさんに試作品を作ってもらう――3Dプリンターが登場して
比較的簡単に試作できるようになったといいます。

2.できた試作品を南川さんのようなプロ、一般の左利きの大人、
左利きの子供さん、小学校の音楽科の先生らに試演してもらう。

3.試演の結果が良ければ量産の方法を考える。

この試作の段階でのクラウドファンディングでは、
支援者への見返りは期待できません。

次の量産の段階のクラウドファンディングでやっと見返りとして
製品の購買が可能になる、というところでしょうか。

こういう二段構えのクラウドファンディングが考えられそうです。

 ・・・

「左鍵ハモ」計画に興味を持たれた方で、
クラウドファンディングに挑戦してみてもいいのでは、
とお考えの方は申し出ていただけると幸いです。

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本誌では、「2月10日<左利きグッズの日>記念2月合併号――<左利き用楽器>製作プロジェクトについて考える」と題して、今回も全紹介です。

左利き用品の普及が、「左右平等社会の指標となる」と考えています。
これは、次のような言葉を受けての考えです。

1970年代「左利き友の会」を主宰された
左利き解放運動の活動家でもあった、精神科医の箱崎総一先生の著書
『左利きの秘密』(立風書房マンボウブックス 1979)にある言葉です。

 《左利きに対する偏見と差別が真になくなるのは、
  左利きの人たちがなんら苦痛を強いられることなく
  生活していけるときである。
  それをはかる物指しは、結局、
  左利きのための道具・器具の普及度である、と私は考える。》

さらに続けて、

 《たとえ人々の頭の中から
  左利きに対するあやまった考えがなくなったとしても、
  それだけでは左右同権の社会とはいえないのだ。
  左利きの人たちが
  右利きのための道具や器具に囲まれて暮らしているかぎり、
  真の解放はありえないのだ。/
  こうしたことを考えるとき、わが日本の左利きにとって
  まだけわしい前途が横たわっているといわねばならない。》

左利きの人も、右利きの人と同じように生活できる社会の実現――。

左利きの人の生活向上があってこそ、左利きの人の解放につながるのだ、と。

左利き用品は、近年生活必需品的な道具類に関しましては、かなり普及してきました。
ハサミや包丁のような刃物類、右端からメモリが始まる左利き用の定規など、です。

しかし、嗜好品的な楽器やカメラなどは、まだまだ左利きの人のためのそれらが実現していません。

特に楽器は、心の必需品ともいうべきものだと思うのですが、どうでしょうか。

<左利き用楽器>の普及が、これからの時代に期待されます。

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