2023.09.02

楽器における左利きの世界(15)鍵盤ハーモニカの世界(1)-週刊ヒッキイ第648号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」

 

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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第648号(No.648) 2023/9/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(15)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(1)」
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 7月以来の「楽器における左利きの世界」です。
 前回は「『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
 と題して、左利きの人の音楽的才能について、調べてみました。

 今回は、再び<左用ピアノ>への第一歩として、
 鍵盤ハーモニカについて勉強してみようと思います。

 <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクトとして
 やっていけたら、と思います。

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 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(1)
-コロナ禍で吹奏楽器は…… -
  『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)から
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)

私のまちの図書館で、ふさわしい本を見つけました。

 

『鍵盤ハーモニカの本』南川朱生(ピアノニマス)春秋社 2023/4/19

230821kenban

 

長くなりますが、奥付にある著者紹介文を転載します。

南川朱生(ピアノニマス)Minamikawa Akeo (Pianonymous)

1987年生、東京都在住、元IT企業の銀座OL。
日本を代表する鍵盤ハーモニカ奏者・研究家。
世界にも類を見ない、鍵盤ハーモニカの独奏というスタイルで、
多彩なパフォーマンスを行う。
所属カルテット「Tokyo Melodica Orchestra」は
米国を中心にYouTube動画が37万再生を記録し、
英国の世界的ラジオ番組classic fmに取り上げられる。
研究事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」のCEOとして、
大学をはじめとする各所でアカデミックな講習やセミナーを多数実施し、
コロナ禍で開発したリモート学習教材類は
経済産業省サイトに採択・掲載される。
東京都認定パフォーマー「ヘブンアーティスト」資格保有。
これまでにCDを11作品リリースし、
参加アルバムはiTunesインスト部門第2位を記録。
楽器の発展と改善に向け多方面で精力的に活動している。
趣味は日本酒とテコンドー。

経歴だけでもすごいですが、この本の内容がまたスゴい!
まだ目次を見たぐらいですが、
鍵盤ハーモニカのことがすべてわかる本といってよいかと思います。

出版社の紹介文も一部転載しましょう。

《鍵盤ハーモニカに人生を捧げたプロ奏者による、長年の研究の集大成。
 鍵盤ハーモニカの製造の歴史や教育現場での受容、内部構造の秘密、
 そして〈誕生〉の瞬間など、様々なシーンを豊富な資料とともに巡る。
 楽器愛に満ちた、読んで、見て、楽しい究極の一冊。〔口絵2〕

 誰もが知ってる楽器の、誰も知らなかった世界!
 たったひとりの楽器に取り憑かれた人によって、
 その魅力は膨れ上がる!
 ――トクマルシューゴ(ミュージシャン)》

この本を読みながら、
まずは鍵盤ハーモニカについての知識を補充していこうと思います。

そして、<左(利き)用鍵盤ハーモニカ>の可能性を考えてみる予定です。

 

 ●序章から――鍵盤ハーモニカって何楽器?

今回はまず「序章」を簡単にみてみましょう。

<鍵盤ハーモニカは何楽器?>とあります。

鍵盤ハーモニカといってもご存じない方もいらっしゃるでしょう。
私のような世代は、使ったことのない人が大半でしょう。
お子さんがいらっしゃる方は、子供が使っていたよ、
ということはあるでしょうけれど。

本書の第一章の冒頭に、
《大人の方に「小学校で鍵盤ハーモニカを吹いたことがありますか?」
 と問うと》
三十代の人は、《大方「あるある? 懐かしいねぇ」》と答え、
六十代の人は、《ないなぁ、娘と息子はやってたけどねぇ》、
四十代から五十代の人は、「ある派」と「ない派」に分かれるそうです。
「ない派」の人に、小学校では何を演奏していたのですか、と問うと、
「ハーモニカ」と「たて笛」だそうです。

商品名でいいますと、
「ピアニカ」や「メロディオン」という名で出ています。

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(画像:国産の鍵盤ハーモニカの代表の一つ、YAMAHA(ヤマハ) ピアニカ P-32E)

 

それなら聞いたことがある、という年配の方もいらっしゃるでしょう。

では、この楽器は「何楽器」に分類されるでしょうか、
というのが最初の話題です。

 《問題:次の楽器は何楽器に属するか答えましょう。》
   ヴァイオリン (  )楽器
   小太鼓    (  )楽器
   トランペット (  )楽器
   フルート   (  )楽器
   鍵盤ハーモニカ(  )楽器

分類条件は、様々ですので、「学校の教科書」で正解とされる回答は、

それぞれ、弦楽器(擦弦楽器)、打楽器、金管楽器、
フルートが引っかけで、金属だけど木管楽器。

で、この鍵盤ハーモニカは? といいますと、

 《ここでは「鍵盤ハーモニカは○○楽器である」
  と片付けてしまうことはせず、
  この楽器の特徴をいくつか洗い出しながら、
  鍵盤ハーモニカの「複数にまたがる定義」、
  通称「ジェネリックな鍵盤ハーモニカの定義(generic melodica)」
を一緒におっていきたいと思います。》

となっています。

「鍵盤ハーモニカ」というぐらいですから、
鍵盤がついているので「鍵盤楽器」という答えも考えられます。

しかし、この楽器の誕生当初は、
鍵盤の代わりにボタンやレバーがついたものもあったそうです。

それでも一応、「ジェネリックな」鍵盤ハーモニカの定義として、
読者がパッと見てピンとくるデザインを優先し、
いったん「鍵盤楽器」としておきましょう、といいます。

次に、この鍵盤を押し下げ、どうすると音が出るかといいますと、
口で息を「吹く」ことで音が出ます。
ハーモニカのように、吸って音を出す場合もあるらしいので、
必ずしも「吹く」とは限らないようですが、
基本的には「吹く」ことで音を出す楽器ということで、
「吹奏楽器」としたい、と著者はいいます。

 

 ●いかにして教育現場に浸透したか

本書は、「第I部 国内歴史篇」が、鍵盤ハーモニカが教育現場で、
一人一台必携の楽器となるまでの歴史を探っています。

戦後、当初はハーモニカが小学生の楽器として普及したわけですが、
音を出すとき、息を吹いたり吸ったりする発音方法があるなど、
むずかしいということで、徐々に現場から消えてゆくことになりました。

輸入品を参考に、国内メーカーが次々と参入します。

音楽の器楽教育を進めるという一種の「国策」もあり、
国内メーカーの努力(開発および営業)もあり、
ピアノが弾ける音楽大学卒の先生にも扱えること、
鍵盤を押すことで決まった音が出せる
(実際には、様々な発音の技法があるらしいのですが)ので、
子供にも簡単ということで、
鍵盤ハーモニカが採用されることになった、ということです。

 

 ●フリーリードを震わせる吹奏楽器

「第II部 内部構造篇」では、
内部の構造、音の出る仕組みを解明します。

<第五章 鍵盤ハーモニカの叫び>によりますと――

結論だけ書きますと、楽器の内部には、それぞれの音に対応する、
フリーリードという金属製の細長い板が鍵盤の数だけ並んでいます。

息を吹きこみますと楽器内全体に空気がたまります。

鍵盤を押しますと、
押された鍵盤に対応する金属板の部屋のバルブだけが開き、
空気が外へ排出されます。
この空気の流れが、個別の金属板を震わせ、その音が鳴ります。

(私の理解が正しければ)こういう仕組みになっています。

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(画像:144-145p 発音メカニズムについて――別冊編集後記を参照)

 

 ●「ホーナー社製ボタン式メロディカ」はかわいい

「第III部 海外歴史篇」は、ヨーロッパでの開発の歴史です。

一部で、鍵盤ハーモニカは日本が発祥という説があるそうです。
笙のような楽器がその源とされています。

実際は、世界同時発生的に、
色々なものがあちこちで作られてきたようです。
そのヨーロッパでの歴史を解説しています。
いかにも今ある鍵盤ハーモニカらしいものが誕生したのは、
19世紀頃のようです。

詳細は、本書をお読みいただくのが一番ですね。

 ・・・

本書で見てきた鍵盤ハーモニカで、私が気に入ったのは、
p.38やp.44、p.57の「ホーナー社製ボタン式メロディカ」ですね。
形状も両手を使うところも、かわいいです。

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(画像:p.44「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

230830melodica-p57

(画像:p.57上・中 鈴木楽器製ボタン式「メロディオン(ソプラノ)」
 下「ホーナー社製ボタン式メロディカ」)

このボタン式メロディカに「非常によく似た」ルックスの楽器が
日本のみならず世界中で作られた、といいます。

それだけ魅力的なデザインだった、ということのようで、
のちにホーナー社の広告に
「類似品にご注意」という文言が出るようになったそうです。

詳細はこちらのページ(pp.184-188)

「鍵ハモの楽堂――ボタン式メロディカ、クローズアップ!」

両手で演奏するタイプのようで、白鍵に当たるボタンが右手、
黒鍵に当たるボタンが左手で演奏するようになっています。
キーの配列も演奏自体も基本右手が主体ですが、
少しは左手も使うので、
左利きの人もちょっとぐらいは演奏した気になれるかもしれません。

あくまでも私の追求する理想とする形は、左右反転形の左手用です。

 

 ●<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ

最後に、本書を一読して気になったのが、
「第三章」の<エピローグ>にあった、

コロナ禍で、学校の教育現場では口を直接楽器に触れることや、
飛沫の飛散という、衛生面から使用が制約されている、という点です。

今年の5月以降、規制が解除されてきたものの、現場ではどうなのか、
ちょっと気になります。

さらに、近年は少子化でメーカーの販売数が減っているとか、
今後もかわらず、教育現場で一人一台の楽器として利用されていくのか、
非常に気になります。

コロナ禍でタブレット端末が一人一台携帯されるようになりますと、
画面でキーボードを出して演奏する、
なんて形にならないとも限りません。

そうなると、私の考えていた
<左用鍵盤ハーモニカ>から<左用ピアノ>へ、
というプロジェクトが空中分解しかねません。

さて、どうなるのでしょうか。

 ・・・

もちろん、電子キーボードの方が断然開発しやすいとは思うのです。
しかし、現状において、物としての鍵盤ハーモニカの左用を実現して、
ピアノの左用へとつなげてこそ、意義があるという気がします。

なんとかメーカーさんにお願いして実現させたいものです。

要はお金の問題だという意見もあるのです。
でもそれをいいますと左用のお道具の類いの問題は
みなそれに集約してしまいます。

そうではなくて、あくまでも多様性の実現という観点から、
左利き用の楽器を他の左利き用のグッズの類いと同じように、
普及させていきたいと思い、この問題を考えていきたいのです。

 ・・・

次回は、過去のメルマガで、この鍵盤ハーモニカをどう扱ってきたのか、
その辺を振り返ってみたいと思います。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(15)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」と題して、今回も全紹介です。

今や小学校の教育現場で一般化している楽器、鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。

私自身は、このピアノへつながる第一歩の楽器とされる鍵盤ハーモニカで、左用を採用させて、次にピアノへと進めてゆこうというのが、一つの左用楽器普及への道だと考えているのですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2023.07.01

楽器における左利きの世界(14)<音楽の才能と左利き>-週刊ヒッキイ第645号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第645号(No.645) 2023/7/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(14)
 『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」

 

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  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第645号(No.645) 2023/7/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(14)
 『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
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 前回は、最近始めた、初心者・独学者向けのピアノ練習や
 楽譜の読み方など音楽の基礎的なお勉強に関して、
 YouTube『まり先生のかんたんピアノレッスン』や
『初心者の為のキーボード講座』で説明されていました
キーボード演奏における指使いについて、
 右手利き優先の実態を見たと思ったことを書いてみました。

 今回は、前回のおわりに紹介した八田武志さんの著者
 『左対右 きき手大研究』にあった「音楽の才能と左利き」の項目を
 もう少し紹介してみようと思います。

*参照:
八田武志『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022/5/16)

 

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 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (14)

  ◆ <音楽の才能と左利き> ◆

   ~ 八田武志『左対右 きき手大研究』から ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●音楽の才能と左利き

八田武志さんのこの著書の記述によりますと、
「音楽能力には利き手による違いがあり、左利きの人の方が優れている」
といわれてきたそうです。

本格的な利き手の研究は、
左右の大脳を連絡する脳梁という部分を切断した患者を対象に、
それぞれの脳の機能差を見いだしたスペリーらの研究に端を発した、
ラテラリティといわれる研究分野の出現から派生したもの。

このラテラリティの研究は、1970年代は視覚機能が中心だったが、
1980年代に入って聴覚機能に移り、

《言語音は左脳がその処理に優れるが、音の高低の弁別や、
 音と音との間、音の大きさ、各種の音の配分など
 音楽を構成する要素については右脳のほうがその処理に優れることが
 次つぎと明らかにされた。
 「プロソディ(韻律)」と呼ばれる音声言語の周辺的要素も
 右脳のはたらきであることが立証された。》p.36

プロソディというのは、どういう調子で発音されるか、
といったところですね。
たとえば「すみません」ということばでも、
使われる状況で意味が変わってくる場合があります。
それを言葉の調子で異なる意味を持たせ、相手に了解させるわけです。

《いまでは音声言語は左脳だけのはたらきではなく、
 左右の共同によるものと考えるようになっている。》同

 

 ●音楽能力と利き手との関係――否定的データ

《音楽的要素の処理に右脳が優れるといわれるようになると、
 右脳は左手指の運動と関連が深いので、
 左ききは音楽の才能があるはずだという予測が生まれ、
 音楽能力ときき手との関係が話題になった。》p.37

ところが、明確な関係は見いだされなかった、といいます。

バイルーンは、音楽能力を測定するシーショア・テストと
利き手の関係を調べた。

グッドらの、イギリスの小学校7~8歳児897名を対象にした研究で、
ベントレー音楽能力検査を実施――音の高低の記憶、コードの記憶、
リズムの記憶などの音楽的要素と性差、学業成績、利き手などの関係を
検討した。
学業成績との関連は見られたが、
性差や利き手での差異は見られなかった。

 

 ●音楽能力と利き手との関係――肯定的データ

次に、利き手との関係の否定的データではなく、
利き手との関係の肯定的なデータを。

ドイッチは、右利きと左利きの普通の大学生を対象に
音の記憶実験を行い、右利きの正答率より、
左利きのそれの方がわずかではあるが上回った。
別の課題でも、左利きの方が優れていた。

ドイッチは、左利きは音の記憶を左右両脳でできるのに対して、
右利きでは、片側の脳(たぶん右脳)でしか記憶できないため、
このような結果が出たのだろうと説明している。

 

 ●プロの音楽家、音楽大学の学生を対称とした研究

クライストマンの研究については前回紹介しました。

 

《きき手と音楽に関する研究では音の記憶などの要素的な分析よりも
 包括的な能力との関連が問われるようになっている。》p.39

そうで、コッピーズらの研究では、
利き手と初見演奏能力について検討している。

初見演奏能力とは、初めて目にする楽譜を見て実際に演奏する能力や、
初めて聞いた音楽を再生する聴音演奏などをいう。歌唱も同じ。
様々な音楽の要素が総合的に発揮される能力と見なすことができる。

ドイツの音楽大学の学生52名を対象に実験を行い、
初見演奏で右利きは左利きや両手利きより劣ることを明らかにしている。

p.40の1-7図に示すように、
《右ききのピアニストは間違いが多く、
 左利きや両手ききは演奏能力に優れていることを示している。》p.39

ただし、この研究での利き手は、質問紙によるものではなく、
左右の人差し指と中指の30秒間のタッピング数で決定している。
この作業量による利き手と自己申告の利き手は必ずしも一致していなく、
他の研究結果と単純に比較することはできない、といいます。

《ただ、タッピングの作業量を左右手で比較すると、
 左手の巧緻性が優れるピアニストは52名の内45名と多く、
 ピアニストにとって左手の手指運動は鍵となる能力である
 と思われる。》p.40

 

 ●まとめ――左手の手指運動の訓練の難易度が差を生む

以上の結果からいえることとして、

《「小学生を対象としたグッドらの研究では
 きき手による音楽能力の違いは見いだせなかった。にもかかわらず、
 コッピーズらのように成人でその関係を支持するデータは多い。
 これは、左手での手指運動の訓練に困難さを感じる者(右きき)は
 楽器演奏の練習を途中で放棄するのに対して、
 強く感じなかった者が楽器演奏などのくり返し練習が長続きし、
 このような持続力が音楽家などの職業へとつながり、成人の音楽家や
 音大生には右ききが少なくなってしまう」というものである。》p.41

 

 ●親の利き手とその容認度の問題

音楽的能力に付いては、
当人より親の利き手の影響を指摘する報告もある、といいます。

ケラーらの研究は、
音楽専攻生と音楽を特別に学習したことのない学生を対象にしたもので、
当然、音楽専攻生の方が優れた結果を出しているが、

《音楽専攻生は左耳で聴く(右脳にまず入力される)ことを好み、
 非音楽専攻生では右耳で聴く(左脳にまず入力される)ことを好む
 という違いが示され、
 そのほうが反対の耳で聴く場合よりも成績がよかった。
 さらに興味深いのは、音楽専攻生の場合は、
 親に左ききがいる場合といない場合とで違いがあり、
 左ききがいない場合は左耳優位がとりわけ顕著に現れたと考えられる。
 親に左ききがいる場合には遺伝的要素の関与や左手を使うことへの
 養育者周辺の容認度が高いことなどが考えられるからである。
 音楽的能力には、きき手それも親の世代を含めたきき手が影響する
 ということかもしれない。》p.41

 

音楽家になるためには、楽器演奏における両手練習が必要で、
そこには両手の器用さという問題があり、
さらに、
親の利き手とその容認度という問題が見受けられる、
という研究結果が、私には、非常に興味深く感じられました。

確かに楽器演奏では多く両手を使用することになります。
ピアノのような鍵盤楽器では、右手が主導的であっても、
それなりに左手の動きも要求されます。

それに対応できるだけの運動能力を持っているか、
もしくは訓練に抵抗があるかないかの違いが大きな差になってくる、
というのは十分に想像できます。

 

私の経験からもいえることですが、
右利きの人は、その多くが右使いしか選択肢を持っていないものです。
右手だけでなく左手も使えるのだ、使っていいのだ、
という発想を持っていない人が大半なのです。

なにしろ、今の世界はたいていのことが、
(非常停止ボタンのような)重要なことであれ、
(水洗トイレのレバーのような)ちょっとしたことであれ、
何かにつけて右手一本で通用するように仕組まれています。
結果的に右利きの人は右手以外はほとんど使う機会がないまま、
日常生活をエンジョイしていたりします。

一方、左利きの人たちは、その逆で、
重要なことであれ、ちょっとしたことであれ、
右手を使うことを強制されています。
結果的に、右手もある程度は動かせる、両手使いのようになっています。

そういう意味では、右利きの人は「ちょっと不幸な人たち」、
という見方もできるのかもしれません。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(14)『左対右 きき手大研究』から<音楽の才能と左利き>」
と題して、今回も全紹介です。

前回の引き続きとして、日本の左利き研究の第一人者、八田武志さんの著書『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫)から左利きと音楽的才能についての項目を紹介しています。

 ・・・

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2023.06.03

楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い-週刊ヒッキイ第643号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第643号 【別冊 編集後記】

第643号(No.643) 2023/6/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い」

 

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第643号(No.643) 2023/6/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い」
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 前回は、最近始めた、初心者・独学者向けのピアノ練習や
 楽譜の読み方など音楽の基礎的なお勉強に関する
 YouTubeのピアノ演奏の動画鑑賞についての感想として、
 「やっぱり現状のピアノは右利き向けなんだ」と思ったことなど
 ダラダラと書いてみました。

 今回は、その続きになります。

 図書館で見つけた

 『初心者の為のキーボード講座 ゼロから始められるあんしん入門書』
 (自由現代社 2022.8.30)

230602keyboaud-kouza 

 を読んでちょっと試してみたこと、思ったことなど、
 つれづれなるままに書いてみましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (13)
  ◆ キーボード演奏での指使い ◆
   ~ 「ピアノってやっぱり右利き用なんだ!」の巻・続き ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●指使い

『初心者の為のキーボード講座』でもそうでしたが、
前回紹介しました『まり先生のかんたんピアノレッスン』でも、
指使いについて説明されています。

両手の指について、指番号というものが付されていて、
親指から順に小指まで、1番から5番まで。

右手も左手も同じで、親指が1番で小指が5番です。

 

――(左手)――― ―――(右手)――

5|4|3|2|1 1|2|3|4|5 

小|薬|中|人|親 親|人|中|薬|小
指|指|指|差|指 指|差|指|指|指
      指     指

 

 ●「ドレミファソラシド」を弾いてみる――右手

で、「ドレミファソラシド」を弾いてみる場合の指使いというのが、

右手の場合――「真ん中のド」から右側(高音部)へ。

ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド
1・2・3・▼1・2・3・4・5
親・人・中・▼親・人・中・薬・小

▼の時に、親指を中指の下をくぐらせるのだそうです。
そうして、ファ以下を親指以下の指で弾くとなめらかに弾ける、と。

<指くぐり>という技を使います。

 

逆に、「ドシラソファミレド」と上から降りてくるときは、

ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド
5・4・3・2・1・▲3・2・1
小・薬・中・人・親・▲中・薬・小

▲の部分で、<指くぐり>ならぬ<指ごえ>なる技を使うのです。

中指で親指を越えるのですね。
こうして滑らかに演奏するそうです。

230602righthand

(画像:『初心者の為のキーボード講座』「第2章 メロディを弾こう」から<指使い>右手の図)

 

 

 ●「ドレミファソラシド」を弾いてみる――左手

次は、左手の場合――「真ん中のド」より1オクターブ下の「ド」から
上に「真ん中のド」まで。

ド・レ・ミ・ファ・ソ・ ラ・シ・ド
5・4・3・2 ・1・▲3・2・1
小・薬・中・人 ・親・▲中・薬・小

右手の場合とは逆で、「ソ」のあと<指ごえ>で、
「ラ・シ・ド」は、「中・薬・小」と滑らかに続けて弾く。

 

「ドシラソファミレド」と上から降りてくるときは、

ド・シ・ラ・ ソ・ファ・ミ・レ・ド
1・2・3・▼1・2・3・4・5
親・人・中・▼親・人・中・薬・小

「ラ」のあと<指くぐり>で、「ソ・ファ・ミ・レ・ド」と親指から
滑らかに続けて弾きます。

230602lefthand

(画像:『初心者の為のキーボード講座』「第2章 メロディを弾こう」から<指使い>左手の図)

 

「真ん中のド」といいましても、実際には真ん中やや左寄りの「ド」で、
ここからの一オクターブ分の白鍵8つ分が
キーボード全体のほぼ真ん中の位置になっているようです。

そして、この真ん中の一オクターブからの展開が右手で、
ここから一オクターブ下のドからのポジションが、
左手の持ち場となっているのです。

右手と左手では、
「真ん中のド」をはさんで右側と左側に持ち場が分かれる、
ということのようです。

 

 ●大譜表

『初心者の為のキーボード講座』の「第2章 メロディを弾こう」に、
「大譜表」という項目があり、

 《鍵盤楽器は音域が広いため、
  ト音記号(右手)とヘ音記号(左手)が上下二段になった
  大譜表が通常用いられます。
  中央のドから右手は高い音へ、左手は低い音へ白鍵の音を並べると
  下のようになります。
  五線に収まらない高い音や低い音は加線が追加されていきます。》

(ここでは図を示すことができませんので、言葉で書いておきます。)

右手:上段:ト音記号の五線譜の下にある一つ目の加線が「真ん中のド」
左手:下段:ヘ音記号の五線譜の上にある一つ目の加線が「真ん中のド」

230602daifuhyou

(画像:『初心者の為のキーボード講座』「第2章 メロディを弾こう」から<大譜表>の図)

 

 ●鍵盤楽器の音階配置や演奏の指使いについて

今回の「指使い」は、知ってる人は「なんだ、こんなこと!」
という感じでしょうけれど、
私のようにまったくの素人――初心者には、
「なるほど、よく考えたものだ」と関心するばかりの内容でした。

「よく考えたものだ」とはいうものの、これはやはり右利きの人が――
左手よりも右手の方が使いやすい右利きの人が、
考えに考え抜いた上での標準としての、音階の鍵盤配置であったり、
演奏のための指使いであったり――するのですよ、やっぱり! これは。

もし「強度の左利き」の私が考えるなら、
当然音階の配置は、「左手側が高音部」で「右手側が低音部」で、
「真ん中のド」も「やや右寄り」に位置して、
左手がより動かしやすい音階の配置にして、
「メロディは左手で演奏」し、「伴奏は右手が担当」して付いてくる、
というスタイルになるでしょう。

 

 ●音楽の才能と左利き

以前から、音楽能力には利き手による違いがあり、左利きの方が優れる、
といわれているといいます。

八田武志さんの著書『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022)の
「第1章 優れる左きき」に「音楽の才能と左利き」という項目があり、
プロの音楽家や音楽大学の学生を対称とした研究が紹介されています。

この研究では全体としては、左利きの人の割合は高くなかったそうです。
しかし、専門とする楽器との関係で特徴がある、といいます。

 《オルガンやピアノ、ハープなどのように
  左右の手が独立した運動供応を必要とする楽器の専門家には
  両手ききの傾向が強いが、
  ヴァイオリンやフルートなどのように、
  おもに左右の手が統合的な動作をする楽器の専門家は
  両手ききの傾向が弱かった。》pp.38-39

 

左右の手で別々の音を奏でるピアノやハープのような楽器では、
両手がある程度器用に動かせる<両手利き>傾向の人が多い。

一方、
左右の手が別々の動作(弦を押さえる、弦を弾く等)――を通して、
一つの音を演奏する、ギターやヴァイオリンのような楽器では、
両手が器用に使える両手利きの傾向の人は少なく、
一般的な片手利きの傾向の人が多い、というのでしょう。

ということは、
ギターやヴァイオリン、あるいはフルートなどの演奏者は、
片手利き傾向の強い人であればあるほど、
「自分の利き手を活かせる」楽器が必要になる、ということでは?

現実に、ギターでは、多くの左利きの演奏者がいます。
右用の楽器だけではなく、左用の楽器も製作販売されています。

他の楽器でもこれからはもっと多く、
左利き対応の楽器が求められるようになってゆくのではないか、
と思われます。

どうでしょうか。

*参照:
八田武志『左対右 きき手大研究』(DOJIN文庫 2022/5/16)

220518hattatakesi-hidarikiki-2

(画像:八田武志・著『左対右 きき手大研究』の増補文庫版と元版のDOUJIN選書版)

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(13)キーボード演奏での指使い」と題して、今回も全紹介です。

前回の「「ピアノってやっぱり右利き用なんだ!」の巻・続き」として、YouTubeの動画や『初心者の為のキーボード講座 ゼロから始められるあんしん入門書』(自由現代社 2022.8.30)で学んだ、キーボード演奏時の指使いについての紹介と、私なりに考えたことを書いてみました。

「よくできた楽器だ」と思う、反面やっぱり右利き用にこしらえられたものなんだなん、と実感してしまいます。

なんとしても「左右反転楽器」が欲しいものだ、と思ってしまいます。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2023.05.06

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…-週刊ヒッキイ第641号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第641号 【別冊 編集後記】

第641号(No.641) 2023/5/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…」

 

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第641号(No.641) 2023/5/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…」
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 前回は、
 サックス奏者が<左利きの世界>(左右反転世界)に転位する
 広瀬正さんの<左利き小説>『鏡の国のアリス』から、
 サックスと左利きについて書きました。

 今回は、GWのおしまいでもありますので、
 最近始めた、初心者・独学者向けのピアノ練習や
 楽譜の読み方など音楽の基礎的なお勉強に関する
 YouTube動画の鑑賞について、その感想といいますか、
 やっぱり現状のピアノは右利き向けなんだ、
 と思ったことなどについて、ダラダラと書いてみましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (12)

  ◆ ピアノ初心者・独学者向けのYouTube動画から ◆

   ~ 「ピアノってやっぱり右利き用なんだ!」の巻 ~  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『まり先生のかんたんピアノレッスン』のお話

YouTubeの動画を見ていますと、いくつもいくつも、
ピアノ初心者・独学者向けの動画がアップされています。

最近は、そのうちのいくつかを楽しみながら見ています。

私には違いがよくわからないのですが、
ピアノの先生やいろんな肩書きのピアノ演奏家がいらっしゃいます。

そんななかから、最初のころに見た動画の一つに、

 『まり先生のかんたんピアノレッスン』

があります。その中の一本の動画

2020/08/20
【指使い】どんな曲にも応用できる!これをやればOK!
ピアノ 初心者向け 独学 かんたんピアノ講座 レッスン だれでも弾ける
https://youtu.be/397XKsr33D4

2020820ok

(画像:YouTube動画『まり先生のかんたんピアノレッスン』
【指使い】どんな曲にも応用できる!これをやればOK!)

は、指使いについての動画だそうで、あれこれ練習方法の説明があり、
「ハノン39番の練習」というのが出てきまして、
その説明のなかで、「右手だけ、弾いてみましょう」といい、
《右手だけでいいです》との発言がありました。

7'30"ぐらいのところで、
「なぜ右手だけでいいか」
について、こんな内容の説明がありました。

《だいたいメロディを弾くのは右手なので、右手だけでいいと思います。
 クラシックのピアノをしっかり弾いていきたいという方は
 左手も練習してみてください。
 そうではなくて、
 いま流行っている曲とか自分の好きな曲をちょっと弾いてみたいな、
 というぐらいの方は右手だけで十分です。》

 

 ●ピアノにおける「片手」演奏とは「右手」演奏!

《右手だけでいいです》

なぜなら、

《だいたいメロディを弾くのは右手なので》

というわけですね。

 

「初心者は、初めは片手でメロディだけ弾いてみる」
というのが、一つの道のようです。

この「片手で」という場合は、当然のごとく「右手」を指すのですね。

この<楽器における左利きの世界>シリーズの初めの方でも
書きましたように、
ピアノ鍵盤というものは、左から低音部がはじまり、
右へ行くほど音階が上がって行き、右側は高音部になります。

で、人間の腕は、左右で動き方が違い、
右腕は「左から右へ引く」動作が都合がいい。
逆の左腕は、「右から左へ」引く動作が都合よくなっています。

で、音階は、低音か高音に移行する方が、気持ちがいい、伸びやか、
高揚するもののようです。

で、右利きの人は、右腕・右手を動かす方が得意なので、
演奏も右手を中心に設定する方が都合がいいのですね。

 

――ということで、ピアノ演奏において片手演奏とは、
ズバリ右手演奏になるのです!

うーん!

現状のピアノというのは、やっぱり右利き用になっている、
というわけです。

だからこそ、右利き用だけでなく、左利き用も! 
という気持ちになるのです。

 

 ●左手だけのピアニスト、舘野泉

右手をケガして弾けなくなったピアニストさんが、
左手だけのピアニストとなる、というケースがあります。

日本で最初に「左手だけのピアニスト」として有名になられたのが、
舘野泉(たての いずみ)さんではないでしょうか。
館野さんの活躍もあって、
その後何人かの左手ピアニストが誕生していると聞いています。

左手だけのピアノ演奏についてもまた調べておきたいものです。

ちなみに、
その元祖的な左手ピアニストの舘野泉の番組が放送されたようです。

 

鬼が弾く 左手のピアニスト 舘野泉
86歳、新たな音楽への挑戦
https://www.nhk.jp/p/ts/2K86JQXP68/

《59分拡大版
 好評につきBS1で再放送決定!5/4(木・祝)午前6時~です》

(残念ながら放送はすでに終わっていますけれど……。)

 

*参照:
20211114b_14841856

(画像:2021.11.14演奏する左手のピアニスト舘野泉さん=神戸新聞松方ホール(撮影・吉田敦史))

・舘野泉さんの左手演奏のYouTubeの動画
【舘野泉】左手のピアノ/村田昌己 作曲 《時のはざま 》
Izumi Tateno/ Masaki Murata: Interstices of Time
https://youtu.be/I_OEDwzEHuo

・左手のピアニスト・智内威雄(ちない たけお) 公式サイト
https://tchinai.com/

・第89号(No.89) 2007/7/7「<左利きQ&A>(9)鍵盤ハーモニカ」
 ▼左利き講座<左利きQ&A>▼ ..第一土曜日掲載
(9)左利きと音楽・序二段―鍵盤ハーモニカ
  ☆ 左手だけのピアニスト、舘野泉 ☆彡

 

 ●私のミニ・キーボードのこと

さて、実は私、前にも書いたかもしれませんが、
(調べてわかったのですが)平成の元年のGWに買った、
おもちゃのようなミニ・キーボードを持っているのです。

 

Casio-pt280

Casio-pt280-rom-pack-seiko

Casio-pt280-rompack-seiko

Casio-pt280-torisetu

(画像:1989年に買った私のおもちゃミニ・キーボード CASIO PT-280 ミニ鍵盤32鍵(2.5オクターブ)、セットした松田聖子のロム・パックと付属の楽譜集、本体の取扱説明書)

CASIOのPT-280というやつで、ミニ鍵盤32鍵(2.5オクターブ)です。
トリセツの写真を見ていただけばわかりますように、
ミニ鍵盤で32鍵という点がおもちゃっぽいですが、
機能としましては、それなりに結構なものが付いていまして、
弾ける人ならそこそこ楽しめるものだろうと思います。

ミニ鍵盤ということで指が結構窮屈で弾きにくいのですが、
曲のロム・パックを入れ替えるといろんな曲を自動演奏したり、
次に弾く鍵盤を光でナビゲートするというナビゲート演奏もできます。
それで買ってみたのです。

当時松田聖子が好きで、ロム・パックも買い、やってみました。
ピアノはおろか鍵盤など触ったこともなかったので、
もちろん、弾けませんでした。

今回、いろんな動画を見て、
少しは弾けるようになる――ような気がしてきました。
ちょっと楽しみになってきましたね。

こんなふうに教室に行かなくても、実際に演奏を見ながら、
教えてもらえるとはいい時代になったものだと思います。

 ・・・

以上、今回はこの辺で。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(12)ピアノって右利き用…」と題して、今回も全紹介です。

YouTubeの動画を見て、あれこれ勉強しているという話は以前から聞いていました。
自分でも、腰を痛めて、病気をしてから、お医者さんの動画や整体の先生の動画など見るようになりました。
役に立つと思う反面、ほんとうにこれで大丈夫なのかな、とちょっと不安になることもあります。

今回のピアノのお勉強にしましても、人の数だけ動画があり、ちょっとずつやり方――といいますか、教え方といいますか、も違うようです。
自分にあってると思うものを選ぶしかないのでしょうね。

人は違っても言ってることが共通してる場合もあります。

その辺を最大公約数的に捉えて勉強を進めてゆくのがいいのでしょう。

 ・・・

ネットを調べてみると、「左手のピアニスト」と呼ばれる人たちがいることがわかります。

みなさん、基本的に「現状の(構造の)ピアノ」に合わせて努力されているようです。
最初は普通に両手で弾いていた人たちなので、まあ、当然その方がやりよいのでしょう。

これらの人たちは、左手・左腕での「自然な動き」の演奏に対応した「左利き用(反転)ピアノ」のようなものを求める気持ちはお持ちではないのでしょうか。
一度確かめておきたい気がします。

 ・・・

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2023.04.01

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より-週刊ヒッキイ第639号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第639号 【別冊 編集後記】

第639号(No.639) 2023/4/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より」

 

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第639号(No.639) 2023/4/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より」
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 前回は、左利きのチェリストを紹介しました。

 今回は、この世界とは異なり左右が逆転した<左利きの世界>を描く
 広瀬正のSF『鏡の国のアリス』からその主人公を取り上げます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界 (11)
  ◆ 広瀬正『鏡の国のアリス』より ◆
   ~ 左利きの世界におけるサキソフォンの名手 ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●広瀬正『鏡の国のアリス』

1972年に河出書房新社より書き下ろしで出版された。
著者の死(1972年3月9日)後三ヶ月のこと。

その後、

集英社文庫・広瀬正小説全集4巻『鏡の国のアリス』1982/5/1

230331hirose-tadasi-kagaminokunino

として発売されたものを私は持っています。

 

あらすじは、

《青年が銭湯に入っていたら、いつの間にか女湯になっていた!
 美容整形医のもとへ性転換手術の相談にきた青年が語る奇妙な体験…。》

左右対称の設計になっている銭湯の男湯の湯船につかっているうちに、
左右反転した異世界に転位した主人公・木崎浩一は、元の世界では、
左利きのサキソフォン(テナーサックス)奏者でした。

女湯から出てきたということで警察沙汰になりますが、
精神に問題があると思われ、精神科医のもとに――。
その人が、<左利き友の会>主宰者の朝比奈だった。

その世界では、「右利き」とされる人はみな左手を使っていて、
「左利き」とされる人が右手を使っていた。
文字はみな左右反転の鏡文字。

そこで、あれこれありまして、木崎は朝比奈先生の下で、
左利き友の会のお手伝いをするように――。

(この「左利き友の会」は、1970年代に実際に活動していた、
 精神科医・箱崎総一さんが主宰したそれをモデルにしています。)

 

 ●サキソフォン

 《「ラッパじゃないんです。
   サックスは金属製ですが木管楽器なんです」》p.80

 《「サックスという楽器は左右対称じゃないんです。
   だから困るんです」》p.80

 《「サックスは、こういうふうに、右手を下に左手を上にして持って、
   右側に構えるようにできています。指でおさえる鍵(キー)が、
   上のほうは左側に、下のほうは右側についているわけです。
   だから、それが逆になっているサックスは、
   ぼくには演奏できないんです。ぼくは、さっき楽器屋へ行って、
   それをたしかめました。あのサックスを吹けるようになるのには、
   一月練習しないとだめでしょう。だから困るんです」》p.81

これがサックスという楽器です。

木崎さんは左利きなのですが、
元の世界で右利き用のサックスに慣れてしまっているので、
こちらの元の世界の左右反転した
「(元の世界でいう)左利き用」のサックスは演奏できない、
というわけなのですね。

 

 ●「左利き用」テノール・サキソフォン

あるとき木崎は、朝比奈先生から、
アメリカのキングという管楽器の会社が、
日本での販売キャンペーンとして、職人が手慰みに作った
「左利き用」の鏡像のテノール・サキソフォンを使った懸賞を行う、
というので、そこに出場しないか、と訊かれる。

こちらの世界の「左利き用」というのは、
元の世界での「右利き用」に当たるわけで、
木崎が使っていたものと同じ構造なのですから、
彼にとっては得意とするところ。

元の世界での仕事がそのまま役に立つわけです。

 《「きみは、左きき用のサキソフォンなんかないと、
  この前いっていたね」/
  「ええ、ありません。あるはずがないんです。
  サックスというのは……」/
  「わかっている。右手左手平等に使う楽器だからというんだろう。
  非対称の楽器でありながら、左右平等というのは、おもしろいね。
  非対称なのに、その鏡像が存在し得ない。
  まるでパリティ非保存説だね。だが、そこで、そのおもしろさに
  目をつけた人があったとしたら、どうだろう」》p.220

サキソフォン、テナー・サックス、まあ、どう呼ぶかは別にして、
もう一つよくわかりません。

ジャズの演奏は、どこかで見たような記憶はあります。

サックスは、リコーダーと同じで、右手が下側、左手が上側を担当して、
ギターなんかと同じように、どちらかというと右腰側にかけて持ち、
いってみれば、「右構え」で演奏しています。

確かに他の楽器同様、左用があるようにも思えません。

ただ、いつもいいますように、
両手を使うから左右平等かどうかは、大いに疑問です。

 

 ●左ききが売り物のバンド「ザ・サウスポー・キングス」

ストーリーにもどりましょう――。

彼にとって難関は鏡像で記された楽譜でしたが、
特訓を重ね、ついに優勝します。
優勝と賞金の他に、その時に伴奏したアメリカ人二人
(ひとりはドラマーで左利き)という仲間を得、バンドを組み、
新しい世界でバンドマンとしての生活をスタートします。

しかし、一つ悩みがありました。

 《「ザ・サウスポー・キングスは左ききが売り物のバンドなんです。
  そうして、それだけです。人気があるといっても、
  お客さんはぼくの演奏を、音楽を聴きに来るんじゃなくて、
  左ききの楽器が珍しくて、来るんです。
  ステージの横に、ふつうのテナー・サックスを置いて、
  お客さんにそれとくらべさせたりして……まるで見せ物なんです。
  僕はつくづく嫌になりました」》p.252

彼は、性転換して、また例の銭湯の湯船につかり、元の世界に戻ろう
と考え、美容整形の先生を訪れます。

先生はいいます。

身体の大きな人がその恵まれた身体を活用して相撲の力士になるのと
同じだ、と考えたらどうだろうか。

相撲だって、君は見世物のように感じるかもしれないが、
見世物をショー・アップという言葉に代えたらどうだろうか。
プロのエンターテイナーは、ショー・アップしてお客を集めておいて、
しかるのちに、自分のほんとうの芸をみせるものだ。

君に音楽の実力がなければ、見世物に飽きて客は去って行くだろう。
しかし、君にほんとうの実力があれば、左利きの看板を下ろしても、
お客はついてくるだろう、と。

かくして、木崎はこちらの世界でお嫁さんをもらい、
幸せに暮らすのでした……。

(以前のこのシリーズで、左利きの人は左弾きで始めよう
 というギター講師のご意見を紹介しました。

 

第629号(No.629) 2022/11/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見 」
2022.11.5
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見-週刊ヒッキイ第629号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/11/post-044348.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/801461827eaef5ba210c119da48fd743

 

 その時に、左利き演奏の利点として、「見た目にインパクトがある」
 「カッコイイ」といった点が挙げられていました。
 やっぱりここでも、「左利きのサックスが珍しい」
 ということで売りになっている、という記述があります。)

 

 ●ネットでみたサキソフォンのこと

ネットで調べてみました。

音楽経験ゼロでも吹ける!はじめてのアルトサックス講座
https://goodappeal.site/sax/

のなかにサックスの種類が示されています。

230330sax

(画像は、別冊編集後記の方で、勝手に転載しています。
そちらをご覧ください。)

左から「バリトンサックス」「テナーサックス」「アルトサックス」
「ソプラノサックス」と順に大きさが小さくなり、音が高くなります。

テナーサックスは二番目に低い音を出すサックスということになります。

 《大きくなると息がたくさん必要なので吹くのが大変ですね。
  一番小さなソプラノサックスは、音のコントロールが
  少し難しい楽器になります。
  というわけで、初心者の方が一番吹きやすいのは
  アルトサックスなんですね。》

とのこと。

 ・・・

ヤマハの「サクソフォン」サイトでは、
「アルトサクソフォン」「テナーサクソフォン」
「ソプラノサクソフォン」「バリトンサクソフォン」
が順に掲載されています。

結構お高いですね。
これでは、初心者は「左用」なんて、言い出しにくいですね。

 

*参照:
ヤマハ ホーム > 製品情報 > 楽器 > 管楽器・吹奏楽器
サクソフォン
https://jp.yamaha.com/products/musical_instruments/winds/saxophones/index.html
230330yts82zltd22 --
テナーサクソフォン
YTS-82ZLTD22 新製品
希望小売価格: 610,500 円(税込)

2022年11月 発売
YTS-82Zに特別なパーツ・豪華な彫刻などを追加し、
人気のフライトケースを採用した2022年限定商品です。
鳴りと響き、華やかな外観、可搬性の高いケースなど、
細部にまでこだわった特別モデルです。
--

演奏のようすをみますと、やっぱり「右構え」という感じなので、
左利きの人には不自然な格好かな、という気がします。

『鏡の国のアリス』に書かれていましたが、
左右非対称の楽器でありながら、両手を使い、左右平等の楽器だ、
というのですけれど、どうなんでしょうね。

もう少し調べてから、考えてみたいものです。

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 「★600号までの道のり」は、お休みです。
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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より」と題して、今回も全紹介です。

今回は、何を書くか未定のまま日がたってしまい、焦りました。
ふと、この広瀬正さんの『鏡の国のアリアス』で楽器の話があったなあ、と思い出し、本を引っぱり出して、ざっと読み、サキソフォンのくだりを引用、一回分をひねり出しました。

いつも通りやっつけ仕事になっていますが、なんとか間に合いました。
やれやれっ、と!

 ・・・

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2023.03.04

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(10)左利きのチェリスト-週刊ヒッキイ第637号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第637号 【別冊 編集後記】

第637号(No.637) 2023/3/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(10)左利きのチェリスト」

 

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第637号(No.637) 2023/3/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(10)左利きのチェリスト」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回は、利き手と非利き手の役割について考えてみました。

 今回は、ネットから拾った左利きのチェリストを紹介しましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (10)

  ◆ 左利きのチェリスト ◆

   ~ Abner Jairo Ortiz Garcia(「善福寺手帳」より) ~  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●2018年の「左利きのチェリスト」より

以前、左利きのピアニストや、左利き用のフルート、
左利き用のヴァイオリンなどの話を紹介しました。
今回は、左利きのチェリスト、文字通り「左弾き」のチェリスト――
チョロ奏者のお話です。

 ・・・

「善福寺手帳」
https://ze.blog.fc2.com/

2018/ 09/ 02 (Sun)「左利きのチェリスト」
https://ze.blog.fc2.com/blog-entry-3520.html

に、

 メキシコのチェリスト Abner Jairo Ortiz Garcia の演奏で
 バッハの無伴奏チェロ組曲4番クーラント

というYouTubeの動画が紹介されています。
https://youtu.be/I-keglYcpgA

 

230301-201892-abner-jairo-ortiz-garcia-2

 

230301-201892-abner-jairo-ortiz-garciajp

 

《これまでも左手に弓を持つ“左利き”のチェリストは
 何人か動画で見たことがありますが、
 ヨーロッパ以外では初めて見た気がします。》

また、

《途中、鏡に写ったシーンがあって、また彼の姿にカメラが戻ると、
 なんだかとても不思議な感覚がしますね。》

とあります。

右利き演奏のように見える鏡のなかの映像と、
実際に左手で弓を弾く左利き演奏とをみることができます。

鏡の中の姿だけ見ていますと、
素人の私には全く違和感なく、ふつうの「右利き演奏」に見えます。

でも、実際の左利き演奏の部分をみますと、
本来なら左右反転した演奏で、右利き演奏を見慣れた人から見れば、
当然違和感を抱いてもおかしくない映像でしょう。

 

ところが、左利きの私は、
なんとなくホッとするような、自然な演奏姿にみえる、
という気もするのです。

右利き演奏も特に違和感なく、左利き演奏も不思議に違和感なくみれる、
というのは、どういうことなのでしょうか。

私自身、あまりこういう手の楽器演奏を見慣れていない、
ということもひとつの原因かもしれませんけれど。

一方で、検索等でビデオやYouTubeなどの
左利きの芸能人や左利きの人の映像を好んでみている――
左利きの映像を見慣れている、ということもあるかもしれません。

 

 ●2007年の「左利きのチェリスト」より

この方の過去の記事――

2007/09/27「左利きのチェリスト」
http://ze.blog2.fc2.com/blog-entry-425.html

に、《左利きのチェリスト。初めて見ました!》とありました。

残念ながら、YouTubeの動画は削除されているそうです。

《(もちろんチェリストにも一定の割合で「左利き」はいるはずですが、
 弓を左手で持つ「左弾き」のチェリストは
 きわめてめずらしいというか、いないと思ってました。) 》

とありました。

コメント欄に、
「弦を押さえる左手指をケガして左弾きに変えた」
という話がありました。

左弾きの理由のひとつにそういうケースもあるようですね。

左利きの人だけが左弾きをするのではないのですね。

楽器は両手を使うといっても、
このように楽器演奏には、色々な状況があるということで、
そういう意味でも「左用の楽器」というものは必要になるのではないか、
と思います。

右利きの人でも手をケガをすることはあるのですから。
もちろん、左利きの人でも、ね。

もしケガをしても、両方のタイプの楽器があれば、
誰もが困らないわけですから。

左右両タイプを用意するということは、これからの時代、
楽器メーカーさんの義務といってもいいかもしれません。

 ・・・

[追記]に、チャップリンが自己流でバイオリンやチェロを左弾きしていた
とあり、証拠写真が掲載されています。

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(画像:チャップリンの左弾きチェロ――「Oh! That Cello」のジャケット)

 

 ●宮澤賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」(1934年発表)

<まつのじんWEBSITE> 平和ねがいて 弦なりやまず

2019年7月27日
ゴーシュからの左右考
http://mjin.m1001.coreserver.jp/2019/07/27/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%B7%A6%E5%8F%B3%E8%80%83/

に、宮澤賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』について書かれています。

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(画像:宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」冒頭の部分――『もう一度読みたい宮沢賢治』別冊宝島編集部/編 宝島社文庫 2009/4/4 から)

昔若い頃に読んだときは、「ゴーシュ」の意味を知らず、
単に下手なチェロ弾きの若者が苦労して練習する話と思っていました。

ネット活動を始めてから、
「ゴーシュ」がフランス語で「左」を意味すると知り、
へえぇーと思ったことがありました。

今回改めてこの方の記事を読み、

 「セロ弾きのゴーシュ」は、左利きのゴーシュが、
 左利きゆえに、右手弾きがうまく演奏できず苦労した話

という解釈を知りました。

なるほど、ね。

 

賢治自身セロを弾いていたようで、
『新潮文学アルバム 宮沢賢治』のなかに、
東京へ行くときに持っていったというセロの写真と、
セロの本からの賢治自身の書いた写しが紹介されています。
230303kennjisero

上の記事でも、
「セロ弾きのゴーシュ」が賢治自身の経験によるものならば、
賢治も左利きだったのか? という記述があります。

 

*参考文献:
『宮沢賢治 新潮日本文学アルバム〈12〉』新潮社 1984/1/1

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『もう一度読みたい宮沢賢治』別冊宝島編集部/編 宝島社文庫 2009/4/4

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 ・・・

本日はこの辺で。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」と題して、今回も全紹介です。

世界は広く、人の数だけ、それぞれに生き方もあるものです。
調べてみればいらっしゃるものですね、左利きの、左弾きのチェリストさん。

ケガ等で右弾きから左弾きに転向された方もいらっしゃるでしょうけれど、本来の利き手に従って左弾きしている人もいるのでしょう。

私のような強度の偏りのある左利きの場合は、いつもいっていますように「利き手は心につながっている」という信念から、左弾きにこだわっている人もあるのでしょう。

左利きだから左弾きというのは、本来、当然のこと、自然なことなのですが、ね。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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2023.02.09

2月10日は左利きグッズの日―私のファースト左手・左利き用品ことなど

2月10日は左利きグッズの日です。


今でも「日本版〈左利きの日〉レ(0)フ(2)ト(10)の日」という人もいますが、2009年から「左利きグッズの日」と認定されています。


--
左利き(の不便さ、左利きの“差別”待遇の不合理さ)について知ってもらい、左利きの人の生活環境向上のため、左利きグッズ、左手・左利き用品の普及を目指す日です。


... 2009年、左利き用グッズコーナーを始めてから10周年を迎えるという、神奈川県相模原市の「菊屋浦上商事株式会社」が、 『左利きグッズを通じて、使いやすさの喜びと楽しさを多くの人に知って頂く記念日』になれば、との考えで「日本記念日協会」に2月10日を左利きグッズの日として申請し、... 認定されたものです。

●記念日の由来●


社会生活で左利きの人が感じているさまざまな道具の使いづらさ。それを解消するための左利き用グッズの普及を目指し、左利きグッズを扱う神奈川県相模原市の菊屋浦上商事株式会社が制定。日付は2月10日を0210として「0(レ)2(フ)10(ト)」と読み、レフト=左の発想から。

2008.12.28
2月10日は左利きグッズの日、日本記念日協会で認定されるより
--


2015.2.10
2月10日は改称7年目の〈左利きグッズの日〉より


 ・・・


今年の記念日は、私の持っている左利きグッズ、愛用していたファースト左手・左利き用品、今も愛用の左手・左利き用品のことを話しましょう。


まずは画像をご覧ください。
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①は、1990年の年末のボーナスで購入したカメラで、私の生まれて初めてのファースト左利きグッズ――左手・左利き用品でした。


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(画像:私が描いた愛機「京セラSAMURAI Z2-L」)


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(画像:愛機「京セラSAMURAI Z2-L」)


1


(画像:前後左右から映した愛機「京セラSAMURAI Z2-L」)


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(画像:愛機「京セラSAMURAI Z2-L」を左手で持っているところ)


<世界初! 左手用カメラ>として発売された、<京セラ サムライSAMURAI Z-L>の廉価版<Z2-L>。
初めてカメラ屋さんで手にしたとき、その瞬間から身体にジャスト・フィット!
こんなに心地よい快感は生まれて初めの経験でした。


それまでは父親のカメラを借りて使ったり「写ルンです」を使ったりしていたときは、どうしても隔靴掻痒――靴を隔てて痒いところをかく、という感じの、何かしらしっくりこないもどかしさを感じていたものでした。


ところがこれは、まさに自分の感覚でシャッターが切れる――写真が撮れる、という感じでした。


 


今思いますと、左の利き手でカメラを持ち、肘を曲げ、左の利き目でファインダーをのぞくと、左腕の脇もしまり、カメラも安定します。
右手を添えてシャッター・ボタンを押せば、このポジションはバッチリ自分の姿勢にフィットした感じになるのですね。


従来の右手用のカメラですと、右手で持ち、左目にファインダーを合わせますと、当然カメラの位置が身体の中心よりも左に寄ります。
(中には、右目利きに合わせたのか、カメラの向かって右寄りにファインダーがあるものもありました。)
この状態であまり得意でない右手の人差し指でシャッター・ボタンを押すと、持っている右手の脇がどうしても開くようになり、不安定になります。


どうしても、自分の狙った「これ!」という瞬間にシャッターが切れずに、思うような写真が撮れない、という気がするのでした。


 


まさにこれが、自分の身体に合った道具を使った時の素晴らしさを実感した瞬間、といえるでしょう。


生まれて初めて「右利きの人が右利き用品を使う時の感覚」を知ることができた、というところでしょうか。


 


それ以来、この快感を、当時友人知人にいた何人かの左利きの人に知ってもらいたく思い、「左利き通信」を出すことにしました。


そして、ほかの左利きグッズを探すようになりました。


こうして、1991年に見つけたのが、②③のハサミです。


②は、レイメイ藤井の左手用こどもはさみ――たしか、近くの西友の文具売り場を覗いたら、ありました。
(右手用と同一価格――当時は350円ぐらいでしたか――というのが、嬉しい配慮。)
こんな身近にあったんだ、という驚き。


③は、これも近くのホームセンターで見つけた、林刃物株式会社の「ALLEX 事務用はさみ 左手用 S-165 L」。
これには、一つエピソードがあるのですけれど、今回は割愛。
(以前、2020年3月17日にツイッターで書いたことがあります。)


その後タイミング良く、三ヶ月後ぐらいに、『モノマガジン』という雑誌で<左利き特集号>が発売されました。


*『モノマガジン』1991年4月2日号 No.188(ワールドフォトプレス)
「特集/左を制するモノは時代を制す 左利きの商品学」
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(画像:『モノマガジン』1991年4月2日号 No.188の表紙)


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(画像:『モノマガジン』1991年4月2日号 No.188の目次から「特集/左を制するモノは時代を制す 左利きの商品学」)


そこには多くの左手・左利き用品が写真入りで紹介されていました。
もちろん、あの「SAMURAI」も。


さらに、イギリスの左利き用品専門店“Anything Left-Handed”
のことを知り、そこの通販で購入したのが、④と⑤。
④は、この店のオリジナル左利き用定規。
(こちらは、その後日本のメーカーからも色々発売されたので、現在お蔵入り中。)
⑤は、「パーカーPARKER」の左手書き用にペン先がカットされた左利き用の万年筆<PARKER45>。
(これは今も愛用しています。壊れたときのために二本目も用意しています。)
⑥は、東急ハンズで手に入れたスイス・アーミーナイフの(今は亡き)<ウェンガー>のレフトハンデッド・タイプ。
(これは、今も外出時は常時携帯しています。左用の大刃(5.5cm)以下、左用のコーク・スクリューも付いています。)


その後、様々な左手・左利き用品を探しては購入しました。
とはいえ、まあ一般的な文房具類が大半で、調理用品(包丁、缶切り程度)が少しある程度ですね。


残念なことですが、今のところ文具以外の自慢できるようなめずらしい種類の道具は、特にありませんね。


 


今、一番気になるのは、メルマガでも問題にしている「楽器」ですね。


ギターの左用は比較的出回っていますが、それ以外の楽器の左用もぜひ一度は手にしてみたいですね。


今目指しているのは、子供たちが最初の本格的な楽器として接するであろう「鍵盤キーボードの左用」がまず一番の目標でしょうか。


ここをなんとかできれば、その発展系で、「ピアノ」を攻略できそうに思います。
「ピアノ」を落とせれば、あとは一気にあれやこれやの楽器群へと進めていけそうに思います。


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(画像:左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏している
クリストファー・シード(Christopher Seed)さん
Left-Handed Piano)


 


*『レフティやすおのお茶でっせ』過去の2月10日「左利きグッズの日」の記事:
・2008.12.28
2月10日は左利きグッズの日、日本記念日協会で認定される
・2009.2.10
今日2月10日は“左利きグッズの日”
・2011.2.8
左手書字考(1)左手で字を書くこと―再考:週刊ヒッキイhikkii249
・2011.2.9
「左利きグッズの日」記念「第5回<LYグランプリ>2011」読者大賞アンケート
・2012.2.9
2月10日は「左利きグッズの日」ですが…メルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」298号告知
・2012.2.10
2月10日「左利きグッズの日」記念<LYGP>第6回2012:メルマガ「左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii」299号予告
・2013.2.10
今年もまた<左利きグッズの日>でした
・2015.2.10
2月10日は改称7年目の〈左利きグッズの日〉
・2016.2.9
2月10日は左利きグッズの日
・2016.2.10
2月10日は左利きグッズの日―普及の前提
・2017.2.9
2月10日〈左利きグッズの日〉をまえに左来人(Right Hidari)『左利きあるある 右利きないない』を買う読む
・2017.2.10
左手左利き専用グッズ開発「レフティー21プロジェクト」菊屋浦上商事呼びかけ
・2018.2.10
2月10日は「左利きグッズの日」―どこまで進む「左利き」容認―産経新聞投書から
・2019.2.10
2月10日は「左利きグッズの日」―に思うこと
(新生活版)2月10日は「左利きグッズの日」―に思うこと
・2020.2.8
2020年2月10日は令和初の〈左利きグッズの日〉-文末に嬉しい情報あり
(新生活版)2020年2月10日は令和初の〈左利きグッズの日〉-文末に嬉しい情報あり
・2021.2.8
〈日本版左利きの日〉から20年、2月10日は〈左利きグッズの日〉
(新生活版)〈日本版左利きの日〉から20年、2月10日は〈左利きグッズの日〉
・2022.2.9
2月10日〈左利きグッズの日〉を前にTBSテレビ【新・情報7daysニュースキャスター】で左利き情報
(新生活版)2月10日〈左利きグッズの日〉を前にTBSテレビ【新・情報7daysニュースキャスター】で左利き情報

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2月10日左利きグッズの日
 

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2023.02.04

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手-週刊ヒッキイ第635号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第634号 【別冊 編集後記】

第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」

 

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【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第635号(No.635) 2023/2/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回も、ネットの「知恵袋」の中のギター演奏に関するご意見を
 紹介しました。

 今回は、以前から説明しようと考えながらそのままになっていました
 利き手と非利き手の役割について改めて考えて見ましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―

 楽器における左利きの世界 (9)

  ◆ 利き手と非利き手の役割について ◆

   ~ 両手にはそれぞれの役割がある ~  

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●前回までのおさらい

前回私は「利き手と非利き手の役割」について、

 演奏するにあたって、演奏する手/腕にも主役と脇役があり、
 そこに利き手と非利き手の役割がある

と書きました。

また、私の持論として「利き手は心につながっている」と
いい続けてきました。

そして、今年の最初の号の新春放談では、
音楽は心が心に訴えるものであるという意味の言葉を紹介しました。、

 《音楽は心で生まれ、心に届かなければ意味がない。
   セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)》
    『教養としての世界の名言 365』p.386

*参考:
『教養としての世界の名言 365』佐藤 優/監修 宝島SUGOI文庫
2021/11/5

それ故に、心の表現者として利き手を主役に演奏するべきだ、と。

 

第629号(No.629) 2022/11/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見 」
2022.11.5
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(7)ギター講師の意見-週刊ヒッキイ第629号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/11/post-044348.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/801461827eaef5ba210c119da48fd743

 

では、「左利きの生徒さんには左用のギターを勧めます」という
右利きのギター講師さんの意見を紹介しました。

弦をハジき、強弱、タイミング、音色を操作する
「コレはぜーったい利き手でなければなりません」と。

 ・・・

で、戻って前号では、今までは左利き用の楽器がなかったので、
仕方なしに右利き用の楽器を使ってきたけれど、
これからは、正しく利き手にあった楽器を使って演奏するべきだ、
と書きました。

ないのなら作ってしまおう、もしくは作ってもらおう、と。

不都合があるならば、まず当事者が声を上げる。

物事をはじめから知っている人もいれば、
教えてもらって気付く人もいるのだから。

知らない人には教えてあげましょう。
みんなが暮らしやすい世の中に変えてゆくために。

――と、訴えてきました。

 

 ●2月10日は「左利きグッズの日」――楽器も左用を!

来週の2月10日は、「左利きグッズの日」です。

左利き生活を向上させるための道具や機械や何やかや、
左利きの生活環境を改善してゆこうという日であります。

昨今ではかなりの種類の左手・左利きグッズが開発され、
一般にも広く販売されるようになってきました。
嬉しい傾向です。

とはいえ、左利きのための楽器という面では、まだまだ遅れています。

前の段落でも言いましたように、
ないのなら作ればいい、のです。

そして困っている当事者が強く発言していくべきなのです。

左用の楽器を作ってください! と。

みなさん、実際に楽器演奏している人もいない人も、
単なる音楽好きの人もそうでない人も、
ぜひ、ご協力をいただきたいものです。

 

 ●なぜ左用楽器がないのか?

左用の楽器がないのがどうしてなのかを考えてみました。

するとその原因の一つは、
やはり「楽器というものが両手で扱うものだ」
という点にあると思われます。

昔から「両手で使うから利き手は関係ない」という人が多くいます。
楽器のみならず、カメラでも、パソコンでもそうですね。
クルマの運転でもいわれます。

実際は両手を使うといっても、
先のギターの例を見てもわかりますように、
弦を弾く手と弦を押さえる手の違いがあります。

フルートでもどちら向きに構えるかの違いだけ(たぶん)ですが、
そもそもこの身体の構えというものが、
やはり左右差が出る事柄だろうと思えます。

野球の投打でもそうですし、
単に構えが逆になるだけといえば簡単なことのようですが、
実はそれだけで全く異なったものになってしまうのです。

前号で「<左利きプチ・アンケート>第28回 利き足を調べてみよう・
チャップマン利き足テスト」を紹介したときに、

 利き足 =動作をする「作用足」
 非利き足=体重を支える「軸足」

という違いがあると説明しました。

構えには、手だけでなくこの足の違いが出てきます。

そして、利き手と利き足は相関関係があるそうで、
ここに左右差が生まれてきます。

 

そういう左右差の違いがわかる人が
まだまだ少ないのではないでしょうか。

結局、利き手・利き側の違いというものが、
本当のところまだ一般の人には十分理解されていない、
ということなのでしょう。

私たちの努力が足りない、ということです。

 

 ●両手にはそれぞれの役割がある

さて、「両手で使うから利き手は関係ない」
という意見に対する反論を考えてみましょう。

「利き手・利き側」というものがあるという点については、
否定する人は少ないでしょう。

では、それぞれの利き手/腕と
利き手でない方の手/腕の役割の違いについてみておきましょう。

1998年発行という古い本になりますが、
脳科学者で京大霊長類研究所の所長でもあった久保田競さんの著書、
『脳を探検する』(講談社)にこうあります。

230204nouwotankensuru

両手を使うことで脳を鍛えよう、という提案のなかで、
この場合の<両手を使う>とは、

 《右も左も同じように使えるようにという意味ではありません。
  食事のときに左右どちらの手でもお箸が使えるとか、
  どちらの手でも字が書けるということではありません。
  つまり「利き手は利き手らしく、そうでない手は、
  そうでない手のように左右どちらも使いなさい」ということです。
  脳に左右で分業があるのですから、
  手の使い方も脳の分業と直結した使い方をしなければならない
  ――両手をそのように使い分けねばならないのです。
  (略)
  だから、左右どちらの手も同じような動きをする
  という意味での両手使いではなく、右手は右手としての器用さを、
  左手は左手としてのそれを発揮できるような、
  そういう両手使いをすすめます。》pp.216-217

と。

230204nouwotankensuru-ryoutetukai 

「利き手は利き手らしく、そうでない手は、そうでない手のように」
というのです。

そして、手には運動器官としての役割と感覚器官としての役割がある、
といいます。(pp.194-195)

以下、

左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第315号(No.315) 2012/6/2「レフティ・グッズ・プロジェクト
<左手・左利き用品を考える>第5回」

より、一部を加筆修正。

--
利き手は主役として器用さを、
非利き手は感覚器としての機能を生かせ、といわれます。

【両手を使い分ける】:両手にはそれぞれ役割がある。
・利き手 =作用(運動器官)
・非利き手=感覚(感覚器官)

例えば、点字を読むのは、利き手より非利き手
(右利きなら、右手より左手)
を使う方が読むスピードも正確さも優れている、といいます。

また、大工さんは右手でカンナをかけ、
左手でその削った面をさわって確かめる、という動作をします。

紙切りでもそうで、主役の右手でハサミをチョキチョキし、
感覚器である左手で巧みに紙を送ります。

野菜を細かく切るときも、
右手は包丁を持ち、刃を適切な角度で保ち、
切るという動作を担当し、
左手は単に野菜を押さえるのではなく、
切る際の包丁を下ろす間隔を誘導しています。

ハサミで言えば、
利き手では、正しい位置に正確な角度で刃を当てチョキチョキする、
非利き手は、刃の当たる正確な切る位置にしっかりと紙をあてがう、
という役割分担です。
--

*参照:
久保田競『脳を探検する』(講談社 1998)

 ・・・

紙切り芸というのがあります。

*参照:
紙切り(寄席) - YouTube
https://youtu.be/0rBztNaRbe8

鋏と紙が作り出す即興の芸
https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202003/202003_06_jp.html

 

これもハサミを持つ利き手よりも紙を動かす左手の役割が、
重要なのです。
ハサミを持っている方の手はほとんど動かしません。
紙の方をグルグルと動かすのです。

これも感覚器官としての非利き手の役割を活かしているのですね。

ギターだって、いい演奏をしようと思えば、
弦を押さえる非利き手の動きが大事です。

さてさて、そうはいっても、
肝心なのはハサミを持つ、あるいは弦を弾く、
器用な運動器官としての利き手なのは変わりません。

それを補完するのが、感覚器官としての非利き手です。

そして、利き手と非利き手がそれぞれの役割を十全に発揮したとき、
優れたパフォーマンスが完成するのです。

 

 ●演奏は利き手と非利き手の相互作用によって成り立つ

「なぜ左用楽器がないのか?」というと、
それは
「両手で使うから利き手は関係ない」と誤解されているから、
です。

でも本当は両手にはそれぞれの役割があるのだ、ということです。

そして、今現実にある、一般の楽器が両手を使うといいながら、
実は右手を利き手として主体的に演奏するように作られている、
という事実がよく知られていない、ということでしょうか。

知られていないというよりも、理解されていない、
と言い換えるべきでしょう。

楽器を演奏するという行為の実際は、
単に両手、二つの手を使うというのではなく、
利き手と非利き手の相互作用によって成り立っている、ということです。

そして、現在の楽器の多くは、
右手を利き手として使用する人たち向けのものになっているのです。

これらのことを正しく理解してもらえれば、
私の願い――左利き用の楽器の普及も夢ではない、といえるでしょう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「★600号までの道のり」は、お休みです。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(9)利き手と非利き手の役割について」と題して、今回も全紹介です。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2023.01.07

2023年新春左利き放談――左利きと音楽(楽器演奏)-週刊ヒッキイ第633号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第633号 別冊編集後記


第633号(No.633) 2023/1/7
「2023年新春左利き放談――左利きと音楽(楽器演奏)」


 


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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
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  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第633号(No.633) 2023/1/7
「2023年新春左利き放談――左利きと音楽(楽器演奏)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 遅くなりましたが、明けましておめでとう。
 旧年中はお世話になりました。
 本年もまた一年よろしくご精読のほどお願いいたします。


 さて新年早々ですので、軽く放談ということで。


 今年も第一土曜日の発行分では、
 左利きと音楽(楽器演奏)について考えていこうと思います。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ――2023年新春左利き放談――
  左利き楽器演奏:左右平等理想社会の指標として
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ●左利き用楽器の普及度が左利き差別のバロメーター


昨年も、
「左右平等理想社会の指標としての楽器」という放談を書いています。


・第611号(No.611) 2022/1/15
「2022年新春左利き放談2――左右平等理想型社会と楽器」
・2022.1.15
2022年新春左利き放談2―左右平等理想型社会と楽器-週刊ヒッキイ第611号 (「新しい生活」版)


《左右平等社会の指標は楽器》と書きました。


1970年代「左利き友の会」を主宰された
左利き解放運動の活動家でもあった、精神科医の箱崎総一先生の著書


『左利きの秘密』(立風書房マンボウブックス 1979)に

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 《左利きに対する偏見と差別が真になくなるのは、
  左利きの人たちがなんら苦痛を強いられることなく
  生活していけるときである。
  それをはかる物指しは、結局、
  左利きのための道具・器具の普及度である、と私は考える。》


といい、続けてこう説明されています。


 《たとえ人々の頭の中から
  左利きに対するあやまった考えがなくなったとしても、
  それだけでは左右同権の社会とはいえないのだ。
  左利きの人たちが
  右利きのための道具や器具に囲まれて暮らしているかぎり、
  真の解放はありえないのだ。/
  こうしたことを考えるとき、わが日本の左利きにとって
  まだけわしい前途が横たわっているといわねばならない。》


 


「左利きのための道具・器具の普及度」という観点から
楽器について考えてみますと、
左利き用の楽器で普及しているものといえるのは、
ギターの類いのみでしょう。


これはほとんど左利きのための世界にはなっていない、
というのが現実だ、ということです。


他の分野ですは少しずつ改善されているとはいえ、
この分野では、遊びにしろ趣味にしろ全くといっていいほど、
左利き演奏が認められていない状況ですから、
ましてやプロの世界では……。


こういう現実があるという事実にすら気付いていない、
そういう人が多いのではないでしょうか。


まずはここから始めていかなければなりません。


 


 ●心に届く音楽のためにすべきこと


いつも書いていますように、私の持論は、
「利き手は心につながっている」
です。


音楽(楽器演奏)は芸術であり、心の表現です。
それならば、心につながる利き手で演奏すべきでしょう。


実際に、世の右利きの人たちはみなそうしています。
ところが、左利きの人たちの多くは、それができないままです。


こんな名言があります。


 《音楽は心で生まれ、心に届かなければ意味がない。
   セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)》
    『教養としての世界の名言 365』p.386


その通りです。
音楽は心に届かなければ意味がないのです。


心で生まれるためには、心につながっている利き手で演奏し、
音楽に心を込めなければ、相手の心にも届きません。


だからこそ、左利きの人は左手で弦を弾くべきなのです。
左手主体で演奏するべきなのです。


今までは、左利き対応の楽器がなかったので、できませんでした。


 


過去にいい結果が出せなかった人は、考え直しましょう。


自分の技術が下手で演奏が悪かったのではなく、
そもそも自分に合った楽器ではなかった、という可能性について。


自分の身体に合った楽器で再チャレンジしてみましょう。


そんな楽器がない、って?
それじゃあ、作ってもらいましょうよ。


不都合があるならば、まず当事者が声を上げるべきです。


 


物事をはじめから知っている人もいれば、
教えてもらって気付く人もいます。


 


知らない人には教えてあげましょう。
みんなが暮らしやすい世の中に変えてゆくために。 


*参考:
『教養としての世界の名言 365』佐藤 優/監修 宝島SUGOI文庫
2021/11/5


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 「★600号までの道のり」は、お休みです。


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本誌では、「2023年新春左利き放談――左利きと音楽(楽器演奏)」と題して、今回も全紹介です。


一年間毎月、左利きと音楽(楽器演奏)について考えてきました。
色々ネット上で情報を探してみましたが、なかなか思うようなものに出会えませんでした。


情報がないというより、そもそも「左利き(に対応した)演奏」という概念そのものが見いだしにくかった、というべきでしょうか。


楽器を左利きで演奏しようという考えそのものに出会えることが少なかったのです。


他の左手・左利き用品の場合と同じで、道具はみな「右手で使うのが当たり前」的な意識が「常識」としてあります。
これが楽器の世界――演奏の世界においても、厳然として存在するのです。


「右利きの人だから右手で、左利きの人だから左手で」というのが、左利きの私の「常識」なのですが、世間ではそうではないのです。


少しずつ左利きを取り巻く環境はいい方向に変化してきた、というのが昨今の左利きを取り巻く状況でした。
ところが、こと楽器の世界に関しては、ギター等の一部の楽器をのぞきますと、全く無視されてきた、というのが現実です。


(一つの例を挙げておきます。
 「両手・両腕を使うから左右平等じゃないか」と思われているピアノ等の鍵盤楽器では、右手・右腕の動きに対応した音階の配列――右側に行くにつれて高音になる――になっています。
 これは、右腕の動かしやすい方向になっています。右腕は右に引くように動かすのが自然な動きなのです。
 一方、左腕は左側に引くように動かすのが自然な動きです。
 そして、人は、低音から高音への展開には心が高揚し気分がよくなり、逆に高音から低音への展開には心が沈むように感じるものです。
 このように、右利きの人が演奏するのに心地よい構造になっているのです。)

220401christopher-seed-the-left-handed-p
[画像] 左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏している
クリストファー・シード(Christopher Seed)さん
Left-Handed Piano
https://youtu.be/uIgO4LqvU-0

20141119hidarikiki-flute
[画像] 左利き用のフルートって右手すごい疲れそう...(<フルート 吹奏楽垢> 2014.11.19twitter より)
(第622号(No.622) 2022/7/2「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(5)フルート演奏の右左」で紹介)

220405gabochan-keyboard
[画像] 《単段の鍵盤楽器左右平等方法を考えてみました(妄想してみました(^_^;))》
2022年04月05日 妄想楽器?(^_^;)
https://plaza.rakuten.co.jp/gabochan2007/diary/202204050000/
右側――右手・右腕パートは、通常の右利き用の左から右へ音階があがっていく鍵盤。
左側――左手・左腕パートは、それとは正反対の右から左へ音階があがっていく鍵盤。
これを真ん中の低い方の「ド」音をはさんでドッキングしたもの。
(第618号(No.618) 2022/5/7「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(3)左右合体型鍵盤の提案」で紹介)

まあ、改めて今年も、この楽器の世界における左利きの戦いを継続して行くつもりです。
是非とも応援を、よろしくお願いいたします。


 ・・・


弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。


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2022.12.03

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(8)利き手の役割-週刊ヒッキイ第631号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第631号 別冊編集後記

第631号(No.631) 2022/12/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(8)利き手と非利き手の役割 」

 

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第631号(No.631) 2022/12/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(8)利き手と非利き手の役割 」
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 前回は、ネットのサイトにあった、
 ギター講師さんのご意見を紹介しました。 

 今回も引き続き、
 ネットで見たギター演奏に関するご意見を紹介します。

 「知恵袋」の中のご意見を紹介するのは、トラウマがあり、
 正直、ちょっと怖いのですが……。
 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界 (8)
  ◆ 利き手と非利き手の役割 ◆
   ~ 「知恵袋」の相談から ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●「知恵袋」の相談から――右利き演奏へ変えることは可能か?

知恵袋トップ>カテゴリ一覧>エンターテインメントと趣味>音楽>
楽器全般
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1433114104

--
kei********さん
2009/11/18 15:35

私は左利きなんですが、
右利き用のギターで上手くなりたいと思っています。
利き手と同じように上達することは可能なんでしょうか?
今私は、左利き用のギター(4万円程度)を持っています。
・・・が、右利き用のギターに変えようかなと思っています。
理由は、左利き用のギターがお店(イオン)に少ないからです。
お店の店員の方が、(品数が少ないということで)
「右利き用のギターで弾いても上達するよ」と言ってくれたのです。
そこで質問なのですが、
この店員の方が言ってくれているのは信じていないわけじゃないんですが
一応聞いてみたいと思って聞いてみました。
利き手とは逆の手でも上達するんでしょうか?
左利きのギターは買って8ヶ月程度なんですが、
正直言うと未経験者と変わらないレベルです。
それでも今から買い換えて練習していきたいと思っています。
今持っている左利きのギターを売ってそのお金を足して分割払いで
右利きのギター(10万程度)を買いたいと思っています。
回答よろしくおねがいします。
--

 

 ●「左利きのまま技術を伸ばしたほうが・・・」

回答の中の一つで、私が一番気に入ったのが、下のご意見でした。

 

--
Pieceさん
2009/11/18 16:13

できますよ。練習さえすれば必ず弾けます。
松崎しげる氏は、
右用のギターを逆さまにして左に持ち替えて上手に弾きます。
彼曰く「他の人と違うことをしなければ芸能界にはいられない
と思ったから」だそうです。

左利きの方でしたらもちろん利き手で弾いた方が上達が早いです。
利き手じゃないほうで文字を書く、球を投げる、球を蹴る・・・
それと同じです。
逆の手足を使ったらめちゃくちゃやりづらいですよね?
でも、練習すれば上達はします。ただし道のりがかなり険しいです。

確かに左利きは楽器選びでハンディがありますが、
見た目のインパクトは左利きのほうがあります。
昔、某楽器屋さんのキャッチフレーズに
「左利きはマネのできない才能」と書いてありました。
まぁマネできないことはないのですが、非常に大変です。なので、
左利きも才能の一つとしてそのまま練習したほうが私はいいと思います。

余談ですが、バクチクの今井さんというギタリストは、
右利きですが左で弾いています。彼も相当練習したでしょう。
何度も繰り返しますが、出来ないことはありません。
でも、私個人の意見としては、
左利きのまま技術を伸ばしたほうが後々ライブとかでも目立ちますし
いいのではないかな、と。
--

 

 ●出発点の違い

前回も書きましたが、利き手というものは、もうその時点で、
出発点が違っているのです。

Pieceさんも書いていらっしゃるように、
《練習すれば上達はします。ただし道のりがかなり険しいです。》

富士山に登るとき、ふもとから登るのと
バスで五合目まで行って、そこから登るのとでは、全然違いますよね。

まあ、人により異なりますが、五合目ではないにしても、
左利きとして何年なり何十年なりか生きてきた人は、
当然その分だけ、利き手も成長しているので、
出発点が違うということは当然でしょう。

 

もちろん、達成感という点では、
ふもとから登ったときの方が大きいかもしれません。
それだけの苦労をしたのですから。

ただ、一時的な達成感
(もちろん、それが「生涯の糧」(!)になる可能性もありますけれど)
よりも、実利を取る方がいいでしょう。

 

 ●「音苦」にならないために

特に、音楽というものは、「音を楽しむ」と書くように、
楽しくなければ演奏する意味がない、と思うのです。
心の高まりが演奏に伝わるのではないでしょうか。

窮屈な「非利き手」で一生懸命がんばるというのは、
「音苦」にはなっても「音楽」にはならないのではないでしょうか。

音楽は心の表現です。

私の持論は、「利き手は心につながっている」です。

その利き手で演奏したとき、最も心が表現できるのではないでしょうか。

 

最近本屋で見つけた本
(「楽器の歴史」と副題にあるので、参考になるかと思い、
 買ってみました。)

『世界の音 楽器の歴史と文化』郡司すみ/著
(講談社学術文庫 2022/11/10)

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この本の「はじめに」に、こんなことが書いてありました。

(本書で扱う)
 《“音”とは第一に人間が“心の耳”で聞くものを指している。》

といい、

 《“音”はそれが意識されなければ存在し得ないものである。》

と。

221203sekai-no-oto-hajimeni-yori

心の耳で聞くという音を作るのが演奏なのですから、
心がこもりやすくなる演奏の仕方を心掛けるべきでしょうね。

 

仮に、左利きの人が非利き手を鍛えて、
右手で演奏できるようになったとしても、
「人一倍」苦労しても、
結果は「人並み」にしかならないのではないでしょうか。

「Piece」さんのご意見にもありましたように、
《左利きの方でしたらもちろん利き手で弾いた方が上達が早いです。》

しかも、

《見た目のインパクトは左利きのほうがあります。》

まさにその通りです。

 

上記の本には、こんなことも書かれていました。

 《楽器の音は人間が思想や感情など心に浮かぶもの(心像)を
  表現する際に使用するメディアの一つであり、
  楽器はその音というメディアを作るために人間の抱いている心像と
  音との間に立つもう一つのメディアである(略)》

といい、

 《心像は、聴覚的に具体化されるばかりでなく、
  視覚的な具体化も可能で(略)》

とも書かれていました。

ここでの視覚的な具体化の指摘は、
単純な右演奏と左演奏といった意味ではないのですけれど、
演奏というものは、
やはり単に聴覚だけの問題ではない、
ということは間違いではないでしょう。

 

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(ポール・マッカートニーの左演奏が写っているCD)

 

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(ジミー・ヘンドリックスの左演奏が写っているCD)

 

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(松崎しげるの左演奏が写っているCD)

 

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(アニメ「けいおん!!」の恥ずかしがり屋の左弾きベーシスト秋山澪が表紙に出ているコミック第2巻表紙)

 

 ●利き手と非利き手の役割

結論として、Pieceさんは、

 《左利きも才能の一つとしてそのまま練習したほうが
  私はいいと思います。》

まさに正論でしょう。

上達までの時間や練習量という部分、実際に演奏するときのインパクト
――等々、左利きには左利きならでは道があり、
結果としての演奏に魅力が出てくるのではないでしょうか。

 

もし利き手にそういう力がないのなら、
右利きの人も右演奏ばかりではなかったはずでしょう。

演奏するにあたって、演奏する手/腕にも主役と脇役があり、
そこに利き手と非利き手の役割がある、と私は思います。

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 「★600号までの道のり」は、お休みです。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(8)利き手と非利き手の役割 」と題して、今回も全紹介です。

前回も書きましたが、利き手とそうでない方の手(非利き手)の役割分担については、次回にでも説明しようと思います。

 ・・・

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