2023.02.15

私の読書論167-愉快で…な老人探偵小説『木曜殺人クラブ~』他-楽しい読書336号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】


2023(令和5)年2月15日号(No.336)「私の読書論167-
愉快で…な老人探偵小説『木曜殺人クラブ~』他」


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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年2月15日号(No.336)「私の読書論167-
愉快で…な老人探偵小説『木曜殺人クラブ~』他」
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 前号の「私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)」で
 紹介しました<初読ベスト3>の(1)位の
 『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン
 および、選外のマイクル・Z・リューインの『祖父の祈り』は、
 ともに、老人が主人公の小説でした。


 今回、
 『木曜殺人クラブ』のシリーズ第二作
 『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』を読みました。
 これも当然ですが、老人たちを主人公とする物語でした。


 私自身老人となり、これらの登場人物たちのことが
 非常に心に響くことに気付きました。


 今回はこれらについて書いてみようと思います。


【前号】――


古典から始める レフティやすおの楽しい読書
2023(令和5)年1月31日号(No.335)「私の読書論166-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」


2023.1.31
私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後)初読編
-楽しい読書335号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-059ad0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3d8f4210a27677ac55d433cea1778596


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 - 身近に感じるようになった老人小説 -


  ~ 愉快で…な老人探偵小説『木曜殺人クラブ~』他 ~


  古い「男」像を守る男と昔を忘れず今風に馴染もうとする老人たち


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 ●『木曜殺人クラブ』と『祖父の祈り』


まずは、前号の文章を再録しておきます。


--
『木曜殺人クラブ』『祖父の祈り』のふたつは、
老人が主人公となるお話で、今や老人の一人となった私にとっても、
興味深い内容でした。


前者は、高級老人ホームで起きた殺人事件をミステリ好きのメンバーが
探偵に乗り出すというストーリー。過去の事件の影が長い尾を引く物語。
各人の過去の人生の秘密が暴かれて行き、それぞれに興味深い内容で、
人生の重さといったものを改めて実感させられます。


後者は、コロナ禍を思わせるパンデミック下の近未来のアメリカを
思わせる町が舞台とする作品。
感染して亡くなった妻との約束を守るため、
同じく亡くなった娘の夫に代わり、
祖父が娘とその息子(孫の少年)を守り抜くという決意を貫く物語。
男の役割といったものを全うしようとする老人の戦い。
--


以上が簡単な概説で、のちに個々の作品について、
引用文を含めて紹介しました。


昨年読んだ老人の小説としましては、再読編の方でも、
『老人と海』ヘミングウェイ を読んでいます。
文字通り老人が主人公のお話で、
老漁師と大きなカジキとの一騎打ちの物語。


ここでも、老人の人生をプレイバックしながら、
今の老人の姿を克明に綴っています。
そのあたりもグッとくるものがありました。


先にも書きましたが、私自身、一昨年春にぎっくり腰から無理をして、
腰の痛みと左足の痛みが出、一ヶ月杖をついて歩くようになり、
また秋には、高齢男性特有の病気、前立腺肥大症により、
頻尿等の症状が出、生活上、やっかいなことになりました。


自分でもはっきりと「遂に老人になったな」と実感したものでした。


それ以来、読む小説にしても、老人ものに気が向くようになりました。


 


 ●『祖父の祈り』マイクル・Z・リューイン


前号の文章――


--
『祖父の祈り』は、上にも書きましたように、老人が家族を守るお話。
まだまだ俺にもやれる、といった独白もあり、
年老いた男の生き方の一つの在り方を描きます。
今や老人となってしまった私の心に響くものがありました。


p.70(田口俊樹訳)
《生きていくことこそなにより重要なことだ。それが妻との約束だった。
 息を引き取る直前に(略)「あの子たちをお願いね」/
 「任せておけ」老人はそう約束したのだった。》


p.66(同)
《あの男はおれを欲しがってたんだ。このおれを! 
 まだまだおれは現役だということだ。》


p.76(同)
《自分の仕事をきちんとやってのけたのだ。おれは役に立った。》


p.151(同)
《老人の望みはここから出ることだった。
 家族みんなでここを逃れることだ。それができないなら、
 せめて今いる場所でより安全に暮らせるよう努力するしかない。
 壁を強化して、ドアも補強して……
 そういうことこそおれの“役割”だ。》


p.198(同)
《任務はまだ完了していない。今はまだ。
 それでも老人には証明できた
 ――家族のために脱出のチャンスをつくるだけの力は
 おれにはまだ残されている。》
--


 


「まだまだおれは現役だ」「おれは役に立った」
「おれにはまだ残されている」


こういう思いは、今の私にひしひしと伝わってきます。


「衰えゆく自分の力、でもまだやれることがある!」という実感。
それは老人自身にとって、とても貴重な経験であり、
残された人生を生きる活力となるものでしょう。


 


『祖父の祈り』マイクル・Z・リューイン 田口俊樹/訳
 ハヤカワ・ミステリ 2022


220921mzr80


(画像:マイクル・Z・リューイン生誕80周年記念出版――『祖父の祈り』(ハヤカワ・ミステリ 2022)『父親たちにまつわる疑問』(ハヤカワ・ミステリ文庫 2022)『ミステリマガジン』2022年9月号(No.754) 特集:マイケル・Z・リューイン生誕80周年(早川書房 2022.7.25))


 


 ●『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン


次に紹介しますのは、謎解きミステリです。


上にも書きましたが、
本編の主人公たちは、70代の高級老人ホームに住む人々で、
<木曜探偵クラブ>という「老人探偵団」「老年探偵団」
「高齢者探偵団」といいますか、
まあ「年寄探偵団」と呼ぶのが一番ふさわしいでしょうか――
に所属する探偵趣味のある人たちです。
ふだんは、クラブの創始者の元刑事が引退時に持ち出した
未解決事件のファイルを推理するのでしたが、
この施設で実際の殺人事件が発生し、探偵ごっこを始めるという物語。


前号の文章から――


--
『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン


(略)
それはさておき、上にも書きましたように、この長編は、
老人の探偵クラブの謎解きゴッコなのですが、
それぞれの登場人物の過去が暴かれるなかで、人生の重さといいますか、
人の世の浮き沈みと生き方、その心情の動きなど、
なかなか読ませるものがありました。


p.29(羽田詩津子訳)
《人はある年齢を超えたら、やりたいことはほとんどできる。
 医者や子どもたちを除けば、やめろと言う人もいない。》


p.59(羽田詩津子訳)
《トニーは運を信じていない。彼が信じているのは努力だ。
 準備がおろそかになれば、失敗は目に見えている。
 トニーが教わった年老いた英語教師はかつてそう言った。
 それを忘れたことは一度もない。》


p.118(羽田詩津子訳)
《人生では、よい日を数えるようにしなくてはならない。
 そういう日をポケットにしまって、
 いつも持ち歩かなくてはいけない。》
230214mokuyou-tantei-kurabu-p118


 


p.200(羽田詩津子訳)
《おれたち全員が弱ってきている、(略)ちょろいもんだ。
 ひとひねりだ。そうだろ? 造作もないにちがいない。
 だが、いいか、ここには人生で何事かを成し遂げた人もいるんだ。
 ちがうか?》
230214mokuyou-tantei-kurabu-p200


 


p.283 (羽田詩津子訳)
《よく時が傷を癒やすと言うが、人生にはいったん壊れたら、
 決して治せないものがある。》


p.436(羽田詩津子訳)
《自分は一人でやりたいことをして、満足している人間なのか? 
 それとも、手に入れたものだけでどうにか納得しようとしている、
 孤独な人間なのか? 一人なのか孤独なのか?》


等々、気になる文章が出てきます。


次の作品も出版され好評のようです。また読んでみたいものです。
--


 


以下、上の引用文に今の私のコメントを付していきましょう。


《人はある年齢を超えたら、やりたいことはほとんどできる。》


――でも、その勇気があるかどうか、です。


《人生では、よい日を数えるようにしなくてはならない。
 そういう日をポケットにしまって、
 いつも持ち歩かなくてはいけない。》


――そう、そのとおり。
こういう自分に力を与えてくれるような瞬間をいつも持っていないと、
自分が潰れてしまうような時があります。


《おれたち全員が弱ってきている、(略)
 だが、いいか、ここには人生で何事かを成し遂げた人もいるんだ。
 ちがうか?》


――確かに、私たちは、大なり小なり何事かを為してきたのです。
それを自信に残りの人生を生きてゆくべきなのです。


《よく時が傷を癒やすと言うが、人生にはいったん壊れたら、
 決して治せないものがある。》


――耐えるしかない、忘れるしかない事柄があります。
でも、耐えることが、忘れることができない、
そういうこともあるのです。
そういう事柄も抱えながら生きてゆくのが、老人の人生なのです。


《自分は一人でやりたいことをして、満足している人間なのか? 
 それとも、手に入れたものだけでどうにか納得しようとしている、
 孤独な人間なのか? 一人なのか孤独なのか?》


――これは、まだ50歳の独身中年男性の独白です。
まだ、老境に入る前の、まだやり直しのきく年齢。
そこで「孤立」に落ち込むか、「独立」した人格を維持できるか、
その瀬戸際の立ち位置です。


ここでなんとか踏み留まれれば、
悲しい老後にならずにすむのでしょう。


 


『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳
 ハヤカワ・ミステリ 2021


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 ●第二作『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン


好評だった前作に続き、第二作が翻訳刊行されましたので、
読んでみました。


『木曜殺人クラブ 二度死んだ男』リチャード・オスマン
 羽田詩津子/訳 ハヤカワ・ミステリ 2022/11/2


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第二作では、年寄探偵団四人のメンバーの一人、
元精神科医のイブラヒムが一人で町に出て、スマホを使ったり、
セルフ・レジにチャレンジしたり、新しい生活に馴染んでいこう、
としますが、なんと自転車で通りかかった若者たちにスマホを取られ、
袋だたきに遭い、あわや命も……というピンチに。


犯人の一人の名を覚えていたので逮捕はされるが、証拠不十分で……。
しかもどこかへ逃走され、行方不明に。


しかし探偵団は、前回の事件で知り合った地元警察から情報を集め、
娘からスマホのSNSの使い方を教えてもらった、元看護師のジョイスは、
SNSを使って犯人の青年を見つけ出す。


一方、リーダー格のエリザベスは元情報員で、
元夫のMI5の諜報員ダグラスから、
仕事中にギャングの家で偶然見つけたダイヤを盗み、
ギャングとMI5の両方から追われる身になり助けてくれ、
という手紙をもらう。
しかし、ダイヤを盗んだダグラスと
MI5から送り込まれた見張り役の新米女性ポピーは、
何者かに頭を打ち抜かれ殺される。
彼らの隠れ家を知っているのは、MI5の上司の女とダイヤ事件の際の同僚。


地元の警察は、麻薬のディーラーを逮捕するべく網を張るが、
尻尾をつかめない。


で、エリザベス、ジョイス、イブラヒム、
元労働組合の幹部ロン(ロンの孫も手柄を立てます)ら探偵団は、
イブラヒムの復讐と、ダグラスとポピー殺しの犯人逮捕、
ダグラスの隠したダイヤ探しのため、警察とMI5を利用し、
ギャングと足を出さない麻薬ディーラー、イブラヒムの襲撃犯、
ダイヤの持ち主であるニューヨークから来るマフィアらを一堂に集め、 
噛ましあいをさせて事件を解決し、隠されたダイヤも発見する。


それぞれの人物の描写もしっかりしていて、
三人称の章とジョイス一人称の章が織り込まれて進むのですが、
ジョイスの章がなかなかおもしろいのです。
饒舌といいますか、話があちこちするなかで、
真実を見いだすところなど。


ストーリーや謎解きはもちろんですが、
ユーモアとペーソスといいますか、
人生の重さといったなんやかんやについてのお年寄りたちの語り。
500ページも全く長く感じない小説です。


 


 ●イブラヒムにまつわる人生談義


イブラヒムを中心に登場人物の老人たちの人生模様からの引用文――


《「利用しよう、さもないと失ってしまう」たしかにそのとおり。
 だからこそ、イブラヒムはここにいるのだ。騒音のまっただ中に。
 車が横を走り過ぎ、ティーンエイジャーたちが叫び、
 建築業者たちがわめいている。イブラヒムは気分がいい。
 恐怖も薄れている。脳が活性化している。
 利用しよう、さもないと失ってしまう。》p.40(羽田詩津子訳)
230214nido-sinda-otoko-p40


――元精神科医のイブラヒムは、お気に入りの独立系の本屋さんの
レジの壁に掲げてあった看板の標語「地元の書店を利用しよう、
さもないと失ってしまう」をみてそう思うのです。


余談ですが、私も元町の本屋の店員として、
地元の本屋さんをできるだけ利用しています。
まあ、どうしてもAmazonに頼ってしまうケースもあるのですけれど、ね。
左利き関係の本など、一般の町の本屋では入手困難な本が欲しいとき。


年齢に負けず、新規な取り組みに挑むべく街に出てきたイブラヒム。
ところが、非力なお年寄りとして若者に襲われてしまうのです。
そして、外傷後なんとやらに取り憑かれ、萎縮してしまうのですね。


 


《復讐は直線ではなく、円だ。
 復讐は自分がまだ部屋にいるあいだに爆発する手榴弾で、
 自分自身も爆風を受けずにはいられない。》p.105(同)


《復讐するときは慎重にならなければならないが、
 イブラヒムは人生の大半を慎重のうえにも慎重に過ごしてきた。
 ただし、人間として成長したければ、
 ときにはちがう行動をとる必要がある。》p.107(同)


――一方で、復讐を考えもするのです。
仲間たちはもちろん、ですが。


 


《ここの人たちは来ては去り、また来ては去っていく。
 ここは人生の最期を過ごす場所だとわかっているので、
 みんな生き生きしているのだ。彼らの足どりはのろのろしているが、
 その時間は急ぎ足で過ぎていく。(略)彼らはいずれ死ぬだろうが、
 誰でもいつか死ぬ。死ぬときは一瞬だから、
 人は最期のときを待ちながら生きるしかない。騒ぎを起こすもよし、
 チェスをするもよし、何でも好きにやればいい。》p.131(同)


――これは探偵クラブの面々の協力者で、
彼らのためならなんでもしようというボグダンの独白。
彼らの日常を観察しての、人生に対する考えです。


 


《「『困難は人を強くする』と言うのはけっこうだ。賞賛に値する。
 しかし、八十歳になると、もうそれは当てにはまらない。
 八十歳だと、どんな困難であれ、それは人を次のドアへ連れていく。
 それから次のドア、さらに次のドアへ。
 そして、そうしたドアはすべて背後でしまってしまう。
 もはや回復はありえない。
 若さの引力は消え、ただ上へ上へと漂っていくだけなんだ」》p.(同)
230214nido-sinda-otoko-p165


――イブラヒムの自嘲的な言葉。


 


《「時間は戻ってこないことは知っているね? 
 友人、自由、可能性も?」
 (略)
 時間を取り戻すことはあきらめよう。
 過去は幸せだった時間として記憶するんだ。きみは山の頂上にいた。
 今は谷間にいる。今後も数えきれないほど、
 そういうことは起きるだろう」/
 「じゃあ、今は何をすればいいんですか?」/
 「もちろん、次の山を登るんだ」》pp.358-359(同)
230214nido-sinda-otoko-p358


――元精神科医のイブラヒムに相談する地元警察の女性警官ドナ。
元精神科医らしい彼女に対する助言ですけれど、それはそのまま、
事件後のイブラヒムへの助言ともなります。
「次の山を登れ」と。「前を見て、後ろを振り返るな」という。


 


《人はずっと夢を見ていなくてはならない。
 エリザベスはそのことを知っている。ダグラスもそれを知っていた。
 イブラヒムは忘れてしまったけど、わたしがいるのだから、
 時機をみはからって、いずれ思い出させてあげよう。》p.386(同)


――誰もが仲間のためを思い、勇気づけようとします。
「人はずっと夢を見ていなくてはならない」というのは、
私も自分に言い聞かせている言葉です。


 


《「野原にいる馬をみるのが大好きなの」ジョイスは言う。
 「馬たちが幸せだってわかるから。
 幸福は人生のすべてでしょ、そう思わない」/
 イブラヒムは首を振る。「賛成できない。人生の秘密は死だ。
 何もかも死に関係している、わかるだろ」
 (略)
 「本質的には、われわれの存在は死のためだけに意味を持つ。
 死はわれわれの物語に意味を与えてくれる。
 われわれの旅が行き着く先は常に死だ。行動の理由は、死を恐れるか、
 死を否定しようとするか、どちらかだ。一年に一度は、
 この場所を通り過ぎているが、馬もわれわれも若返ることは
 決してない。すべては死なんだ」/
 「それって、一方的なものの見方だと思うわ」
 (略)
 「当然、すべてが死に関係しているなら、
 何ひとつ死に関係していないってことよね?」
 (略)
 「すべてが青いなら、『青い』って言葉は必要ないでしょ?」
 「そのとおりだ」イブラヒムは認める。/
 「そして、青いという言葉がないなら、
 何ひとつ青にはならないんじゃない、どう?」
 (略)
 それで救われた、というのも
 ジョイスはいわば確信を突いていたからだ。》pp.479-480(同)


――「幸福は人生のすべてでしょ」と、人生を肯定的に捉えるジョイス。
私も案外そちら派かもしれません。
結構言われます、楽天的と。


「幸福は人生のすべて」「人はずっと夢を見ていなくてはならない」
「利用しよう、さもないと失ってしまう」――
みんなひとつの方向を示しているように思います。


 


「老いたればこそわかる人生の真実」
のようなものがあるのではないでしょうか。


案外ありきたりな結論になるかもしれませんけれど。


これら、老人小説を読んでみて、
とにかく「生きている限りジタバタしてみる」のがよいのでないか、
とそう思います。


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 ★創刊300号への道のり はお休みです
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本誌では、「私の読書論167-愉快で…な老人探偵小説『木曜殺人クラブ~』他」と題して、今回も全文転載紹介です。


ズバリ読んでもらったそのまんまです。
他にこれといってお話することはありません。


とにかく『木曜殺人クラブ』二作はどちらも500ページ弱ですが、おもしろいので苦にならないと思います。
持って読むには手が疲れるかもしれませんけれど。


謎解きミステリ好きも楽しめますし、人生に一言いいたくなる一言居士も納得の小説ではないかという気がします。


『祖父の祈り』は、前号の後記でも書いています。
コロナ禍の今読む本といった趣もありますが、昔の「男」像の延長なので、その点を不満に思う人がいるかもしれません。
でも、われわれ老人男性には、これが標準だったという意味で、受け止めていただければ、と思います。


これらは、作品のストーリー的にも、人間物語的味付けも優れたものでした。
機会があれば、ぜひお読みください。


 ・・・


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2023.01.31

私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後)初読編-楽しい読書335号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年1月31日号(No.335)「私の読書論166-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年1月31日号(No.335)「私の読書論166-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」
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 今年も「私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)」です。

 <フィクション系>は、文字通りフィクション、
 小説等の創作物を指します。

 まずは、<再読編ベスト3>、次に<初読編ベスト3>を。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 - 懐かしの冒険サスペンスと懐かしの人生?ミステリ -

  ~ 私の年間ベスト3・2022フィクション系(後編) ~

  <再読編ベスト3>&<初読編ベスト3>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●<再読ベスト3>

再読24冊から、前号で<再読ベスト3>の候補をあげています。

『果てしなき旅路』『血は異ならず』ゼナ・ヘンダースン
『マンハンター』ジョー・ゴアズ
『縮みゆく人間』『地獄の家』リチャード・マシスン
『きみの血を』シオドア・スタージョン
『鳥』ダフネ・デュ・モーリア
『怪奇幻想の文学 I 深紅の法悦』紀田順一郎、荒俣宏/編
『ドラキュラのライヴァルたち』マイケル・パリー編
『闇の展覧会1・2』カービー・マッコーリー/編

 

ここから<再読ベスト3>を発表します。

(3)『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン

前号でも紹介しましたように、左利きの問題との関連で、
私にとって忘れられない作品です。
地球に不時着した異星人が、地球人のなかでの生活になじむべく、
超能力を封じて暮らす、というお話。
詳しくは、↓

第625号(No.625) 2022/9/3
「2022年8月13日国際左利きの日合併号(続)
左利きとアイデンティティ ~《ピープル》シリーズから考える」
2022.9.3
2022年8月13日国際左利きの日合併号(続)左利きとアイデンティティ
-週刊ヒッキイ第625号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/09/post-bbbde2.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/4db1239925b49f49fc58073cbe1d5f73

 

(2)『縮みゆく人間』リチャード・マシスン

ある事情で身体が縮んでしまうようになった男性の物語。
冒険サスペンスものでありながら、人間とは何か、夫婦とか家族とか、
人間関係とは? といった問題を考えさせる。
ラスト、いよいよ命の終わりかと思うと、実は……、という傑作。
生きるってことは大変なことなのです。

(1)『マンハンター』ジョー・ゴアズ

アクションたっぷりのハードボイルド・ミステリながら、
いや、それだからか、学生時代の女の子との思いを胸に、
汚れた世界で一人奮闘し、悪と戦う男の姿が、美しい物語です。

 

★☆★☆ <再読ベスト3> ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

・『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン/著 深町眞理子/訳
ハヤカワ文庫 SF ピープル・シリーズ 1978/7/1(1959)

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・『縮みゆく人間』リチャード・マシスン 吉田誠一/訳
 ハヤカワ文庫NV 1977

 

・『マンハンター』ジョー・ゴアズ 山中誠人/訳 角川文庫 1978

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☆★☆★☆★☆★☆★ ☆★☆★☆★☆★☆★ ☆★☆★☆★☆★☆★

 

 ●<初読ベスト3>候補

次に初読21冊から<初読ベスト3>候補を挙げてみましょう。

『バーニーよ銃を取れ』トニー・ケンリック
『ハメット』ジョー・ゴアズ
『探偵コナン・ドイル』ブラッドリー・ハーパー
『オクトーバー・リスト』ジェフリー・ディーヴァー
『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン
『祖父の祈り』『父親たちにまつわる疑問』マイクル・Z・リューイン
『硝子のハンマー』貴志祐介
『下町ロケット ガウディ計画』池井戸潤
『ある日どこかで』リチャード・マシスン

まあ、こんなところでしょうか。

『バーニーよ銃を取れ』は、
ひょんことからギャングの親分を敵に回すことになった
一般人の男三人の戦い。
プロの軍人を教官に訓練に励み、決戦を迎えるが……。

次の二つは、作家ハメットとコナン・ドイルが探偵役となるミステリ。
それぞれ事実と虚構が相まっておもしろいものになっていました。

ラストのどんでん返しが魅力のディーヴァーの意欲作、
『オクトーバー・リスト』は、逆進行のミステリ、スゴイの一語。

『硝子のハンマー』は、テレビ・ドラマで見た作品の原作。
密室殺人の謎解きと、犯人側のドラマと二倍楽しめ、かつ意外なラスト。

『下町ロケット ガウディ計画』は、『下町ロケット』の続編で、
私は、工業高校の機械科卒で、級友にも町工場の社長の息子などいて、
そういう部分での興味もあり、物作りにかける思いといった内容も、
楽しめるものでした。
(そういう意味では、朝ドラの『舞いあがれ』も、
 わが故郷、中小企業の町、東大阪が舞台の一つであり、
 町工場を継いだ父親の夢を実現しようと奮闘する主人公、
 という面も含めて、興味深く毎朝視聴しています。)

 

『ある日どこかで』は、時間の壁を超えて出会う男女の恋物語。
映画化もされ、宝塚歌劇でも上演されたという作品の原作です。
しかし、これは死を宣告された青年の狂喜が生み出した妄想なのか、
実際に起きた奇跡なのか、どちらにも解釈される仕掛けが、
この作家らしいといいますか……。

『木曜殺人クラブ』『祖父の祈り』のふたつは、
老人が主人公となるお話で、今や老人の一人となった私にとっても、
興味深い内容でした。

前者は、高級老人ホームで起きた殺人事件をミステリ好きのメンバーが
探偵に乗り出すというストーリー。過去の事件の影が長い尾を引く物語。
各人の過去の人生の秘密が暴かれて行き、それぞれに興味深い内容で、
人生の重さといったものを改めて実感させられます。

後者は、コロナ禍を思わせるパンデミック下の近未来のアメリカを
思わせる町が舞台とする作品。
感染して亡くなった妻との約束を守るため、
同じく亡くなった娘の夫に代わり、
祖父が娘とその息子(孫の少年)を守り抜くという決意を貫く物語。
男の役割といったものを全うしようとする老人の戦い。

再読したダフネ・デュ・モーリア『鳥』中の表題作「鳥」も、
妻と子供たちを守る夫のお話で、
カービー・マッコーリー/編のホラー・アンソロジー『闇の展覧会1』
巻末の短い長編ともいうべきキングの「霧」も、
息子を守る父親の戦う姿が描かれている作品でした。
こういう物語には、グッとくるものがあります。

『父親たちにまつわる疑問』は、
異星人を名乗る心優しい青年にまつわる事件を、“心優しき私立探偵”
アルバート・サムスンが解決する、心優しいお話。

 

 ●<初読ベスト3>

では、<初読ベスト3>の発表。

(3)『バーニーよ銃を取れ』トニー・ケンリック
他人の講座から預金を盗み取ったものの、相手はギャングの親分。
追い込まれたバーニーたちは銃を取るが……。
鬼軍曹を教官に特訓を受け、作戦を練り、対決する!
この過程と実際の決戦がおもしろい冒険サスペンス。

 

(2)『ある日どこかで』リチャード・マシスン

私は、ジャック・フィニイのノルタルジック・ファンタジーとでも
呼ぶのでしょうか、一連の短編が好きで、大切にしています。
彼には時間を超えるファンタジーの長編もあります。
この『ある日どこかで』も
そういうフィニイの長編をリスペクトした作品になっています。
実はフィニイの作品も未読で、ずっと将来の楽しみに取ってあるのです。
この長編も実は、そういう一冊だったのですが、
このたび、他のマシスンの本を整理するので、これも読んでみました。

ラストの仕掛けをどう評価するのか、というところが分かれ目か?

 

(1)『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン

偶然ですが、こちらもリチャードさんですね。
それはさておき、上にも書きましたように、この長編は、
老人の探偵クラブの謎解きゴッコなのですが、
それぞれの登場人物の過去が暴かれるなかで、人生の重さといいますか、
人の世の浮き沈みと生き方、その心情の動きなど、
なかなか読ませるものがありました。

p.29(羽田詩津子訳)
《人はある年齢を超えたら、やりたいことはほとんどできる。
 医者や子どもたちを除けば、やめろと言う人もいない。》

p.59(羽田詩津子訳)
《トニーは運を信じていない。彼が信じているのは努力だ。
 準備がおろそかになれば、失敗は目に見えている。
 トニーが教わった年老いた英語教師はかつてそう言った。
 それを忘れたことは一度もない。》

p.118(羽田詩津子訳)
《人生では、よい日を数えるようにしなくてはならない。
 そういう日をポケットにしまって、
 いつも持ち歩かなくてはいけない。》

p.200(羽田詩津子訳)
《おれたち全員が弱ってきている、(略)ちょろいもんだ。
 ひとひねりだ。そうだろ? 造作もないにちがいない。
 だが、いいか、ここには人生で何事かを成し遂げた人もいるんだ。
 ちがうか?》

p.283 (羽田詩津子訳)
《よく時が傷を癒やすと言うが、人生にはいったん壊れたら、
 決して治せないものがある。》

p.436(羽田詩津子訳)
《自分は一人でやりたいことをして、満足している人間なのか? 
 それとも、手に入れたものだけでどうにか納得しようとしている、
 孤独な人間なのか? 一人なのか孤独なのか?》

等々、気になる文章が出てきます。

次の作品も出版され好評のようです。また読んでみたいものです。

 

☆★☆★ <初読ベスト3> ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

・『バーニーよ銃を取れ』トニー・ケンリック 上田公子/訳
 角川文庫 1982

・『ある日どこかで』リチャード・マシスン 尾之上浩司/訳
 創元推理文庫 2002

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・『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン 羽田詩津子/訳
 ハヤカワ・ミステリ 2021

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★☆★☆★☆★☆★☆ ★☆★☆★☆★☆★☆ ★☆★☆★☆★☆★☆

 

 ●選外――マイクル・Z・リューイン

220921mzr80

選外として、やはり特筆したいのが、マイクル・Z・リューインの作品
『祖父の祈り』と『父親たちにまつわる疑問』です。

・『祖父の祈り』マイクル・Z・リューイン 田口俊樹/訳
 ハヤカワ・ミステリ 2022

・『父親たちにまつわる疑問』マイクル・Z・リューイン 武藤陽生/訳
 ハヤカワ・ミステリ文庫 2022

・『ミステリマガジン』2022年9月号(No.754)
特集:マイケル・Z・リューイン生誕80周年(早川書房 2022.7.25)

《リーロイ・パウダー警部補ものの本邦初訳の短篇と
 私立探偵アルバート・サムスンものの書籍未収録短篇の再録、
 リューインからの特別メッセージと近況、
 リューイン・ファンの作家たちによるエッセイなどで、
 巨匠の魅力を再確認していく》――という特集号も。

 

『祖父の祈り』は、上にも書きましたように、老人が家族を守るお話。
まだまだ俺にもやれる、といった独白もあり、
年老いた男の生き方の一つの在り方を描きます。
今や老人となってしまった私の心に響くものがありました。

p.70(田口俊樹訳)
《生きていくことこそなにより重要なことだ。それが妻との約束だった。
 息を引き取る直前に(略)「あの子たちをお願いね」/
 「任せておけ」老人はそう約束したのだった。》

p.66(同)
《あの男はおれを欲しがってたんだ。このおれを! 
 まだまだおれは現役だということだ。》

p.76(同)
《自分の仕事をきちんとやってのけたのだ。おれは役に立った。》

p.151(同)
《老人の望みはここから出ることだった。
 家族みんなでここを逃れることだ。それができないなら、
 せめて今いる場所でより安全に暮らせるよう努力するしかない。
 壁を強化して、ドアも補強して……
 そういうことこそおれの“役割”だ。》

p.198(同)
《任務はまだ完了していない。今はまだ。
 それでも老人には証明できた
 ――家族のために脱出のチャンスをつくるだけの力は
 おれにはまだ残されている。》

 

『父親たちにまつわる疑問』は、かつて私が大好きだった
“心優しき私立探偵”アルバート・サムスンの最新作。
久しぶりの新作の翻訳の登場で、おおいに期待しました。
短編集なので、そういう意味ではちょっと物足りないともいえますが、
事件の依頼者の性格といいますか、人間性がまたサムスンと合っていて、
この二人の絡みがおもしろいものでした。

初めての人もぜひ読んでいただきたい、
心優しい気持ちになることでしょう。

 

【追記】――<左利きミステリ>

前回、「●(3)小説や左利き本等著作のための勉強本」
の段で、<左利きミステリ>を二点紹介しました。

もう一つ忘れていたものがあるので、追加しておきます。
<初読ベスト3>にも選んだ

『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン

です。

事件の捜査に当たる地方警察の女性警官ドナーの妄想として、
<左利きネタ>が登場します。
手柄をたてて刑事になりたい彼女は、
実は、老人探偵クラブの警察側の情報源として、
クラブの面々の企みによって捜査にくわえてもらえたのでした。

p.125(羽田詩津子訳)
《「鑑識に筆跡を調べてもらったら、何がわかったと思いますか?」
 クリスは興味がなさそうなふりをするだろうが、
 実はそうではないことはわかっている。
 「トニー・カランは実は左利きだったんです」》

よくある<左利きネタ>です。

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 ★創刊300号への道のり はお休みです
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本誌では、「「私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」」と題して、今回も全文転載紹介です。

再読編と初読編のベスト3の紹介でした。
初読編は選外として、マイクル・Z・リューインの新作を紹介しました。
これもオススメです。
『祖父の祈り』は、コロナ禍に関する本は読んでこなかったので、初めての作品でした。
そういう意味でも家族を守る男/老人(祖父)の本としても、心に残る作品でした。

家族を守る男(父親)の物語としましては、再読本の中に、キングの「壁」や、デュ・モーリアの「鳥」などがありました。
これらは、作品のストーリー的にも優れたものでした。
機会があれば、ぜひお読みください。

 ・・・

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2023.01.15

私の読書論165-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前)総リスト&再読編-楽しい読書334号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年1月15日号(No.334)「私の読書論165-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)総リスト&再読編」

 

例年のことですが、
遅くなりましたが、
明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

レフティやすお <(_ _)>

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年1月15日号(No.334)「私の読書論165-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)総リスト&再読編」
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 今年の一発目になります。
 今年も「私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)」です。

 <フィクション系>は、文字通りフィクション、
 小説等の創作物を指します。

 まずは、「再読編」から。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - 昔の感覚に間違いはなかった!? -
  ~ 私の年間ベスト3・2022フィクション系(前編) ~
  2022年フィクション系ほぼ全書名紹介&<再読編ベスト3>候補作
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●傾向と分類

今年は、冊数そのものは、例年に負けない50冊程度でした。
ただ、再読ものが多数(20冊)となりました。

そこで今年は、<再読編ベスト3>と<初読編ベスト3>とに分けて
紹介してみましょう。

 ・・・

例年のように簡単に分類してみましょう。

(1)メルマガ用のお勉強の本
(2)それ以外の古典の名作
(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

*(再):自分の蔵書の再読本、[再]:作品そのものは再読、本は新本

2022年は、コロナで中断していた本の整理を再開しようということで、
再読ものが増えました。
何十年ぶりかに改めて読み直して不要なものは処分する、ということで、
過去には聖域として除外していた本も、思いきって……。

そこで怪奇・恐怖もの(海外のホラー)をかなり読んでみました。
他にも推理小説(海外ミステリ)も読みました。

 

 ●(1)メルマガ用のお勉強の本

「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から」向けの本から――

・[再]『老人と海』ヘミングウェイ 高見浩訳
 新潮文庫 2020/6/24

・[再]『老人と海』アーネスト ヘミングウェイ 小川 高義/訳 
光文社古典新訳文庫 2014/9/11

2022(令和3)年7月15日号(No.322)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)
新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)」
2022.7.15
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から
(1)新潮文庫『老人と海』-「楽しい読書」第322号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/07/post-0bc97e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/a3c96264c4e3a66832a5f013d7dfd965

・[再]『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外 角川文庫 1967/2022

2022(令和3)年7月31日号(No.323)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から
(2)角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外」
2022.7.31
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(2)
角川文庫『山椒大夫~』森鴎外-「楽しい読書」第323号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/07/post-b6a16c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/68c6961aff920da9831353e34d8a34e3

・『光の帝国 常野物語』恩田陸 集英社文庫 2000/9/20(1997) 

・『蒲公英(たんぽぽ)草紙 常野物語』恩田陸 集英社文庫 2008/5/20(2005)
・『エンドゲーム 常野物語』恩田陸 集英社文庫 2009/5/20(2006)

2022(令和3)年8月31日号(No.325)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から
(3)集英社文庫『光の帝国 常野物語』恩田陸」
2022.8.31
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(3)集英文庫『光の帝国 常野物語』恩田陸
-「楽しい読書」第324号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/08/post-8cf420.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/5d442e3e2fd0fe6a283a313a5147da3d

・(再)『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン/著 深町眞理子/訳
ハヤカワ文庫 SF ピープル・シリーズ 1978/7/1(1959)

・(再)『血は異ならず』ゼナ・ヘンダースン/著 宇佐川晶子, 深町眞理子/訳
ハヤカワ文庫 SF 500 ピープル・シリーズ) 1982(1967)

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『左利きを考える 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第624号(No.624) 2022/8/13
「2022年8月合併号―8月13日 国際左利きの日
 INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY―」
2022.8.13
2022年8月13日左利きの日INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY合併号
-週刊ヒッキイ第624号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/08/post-54feef.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e993c67c3ad6bbfb1ae083afb30873aa
第625号(No.625) 2022/9/3
「2022年8月13日国際左利きの日合併号(続)
左利きとアイデンティティ ~《ピープル》シリーズから考える」
2022.9.3
2022年8月13日国際左利きの日合併号(続)左利きとアイデンティティ
-週刊ヒッキイ第625号

恩田陸さんの<常野物語>は、
ゼナ・ヘンダースンの<ピープル>シリーズに触発された物語でもあり、
そういう意味で参考文献的に、この本も読みました。
そのまえに、私のもう一つのメルマガ
『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』でも、
少数派と差別、多様性といった面から取り上げていました。

 

「世界の十大(重大?)[小]恋愛小説」の試み のための本から――

・[再]『潮騒』三島由紀夫 新潮文庫 新版 2020/10/28

2022(令和4)年11月15日号(No.330)
「私の読書論162 x161 -小説の王道、それは恋愛小説か?(2)
ハッピーエンド型・悲恋型」
2022.11.15
私の読書論162-小説の王道-恋愛小説(2)ハッピーエンド型・悲恋型
-「楽しい読書」第330号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/11/post-f4ce33.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/02969a20ac7c9b91e9e8615f7da6ee3c

この企画は、
今年の「私の読書論」で、閑をみて書いていこうと考えています。

そういう候補作の一つでもあります。
これは、新版が出ているというので、読んでみました。
解説が「〔新解説〕重松清」に変わっているところが異なります。
本編はもちろん変わりません。

 

 ●(2)それ以外の古典の名作

これといってなし。
1950年代、60年代も今では古典ともいえますが、
自分の感覚としましては、つい昨日読んだ本のイメージがあって、
古典にはしづらいものがあります。

一つだけあげれば――

・(再)『怪奇幻想の文学 I 深紅の法悦』紀田順一郎、荒俣宏/編
 新人物往来社 新装版 1979

私の蔵書は、1979年の新装版ですが、元の版は1969年出版で、
吸血鬼ものの怪奇・恐怖小説(ホラー)の短編アンソロジーです。
その収録作には、ジョン・ポリドリ「吸血鬼」(1819)や、
レ・ファニュの「吸血鬼カーミラ」(1872)などの
古典と呼んでいい作品があります。

・(再)『妖怪博士ジョン・サイレンス』アルジャーノン・ブラックウッド
 国書刊行会<ドラキュラ叢書 第三巻> 1976

も、1908年刊のオカルト探偵もののホラー短編集
(<シャーロック・ホームズのライバルたち>の変種といったところ)
もありました。

 

 ●(3)小説や左利き本等著作のための勉強本

「勉強のため」といいますと、考え方により、何でも挙げられます。
特にこれ、というものはありませんでした。

<左利きミステリ>
・『探偵コナン・ドイル』ブラッドリー・ハーパー ハヤカワ・ミステリ
 2020

――「左利きの殺人鬼」として知られるジャック・ザ・リッパー
(切り裂きジャック)を、名探偵ホームズの生みの親コナン・ドイルが、
ホームズ流推理のモデルといわれる医学の恩師ベル博士、
同じく作家の女性マーガレットの三銃士で追いかける時代ミステリ。
・(再)『強盗プロフェッショナル』ドナルド・E・ウェストレーク
 角川文庫 1975

――2012年の<クリスマス・ストーリーをあなたに~>で紹介しました、
天才的犯罪プランナーにして職業的窃盗の第一人者、哀愁の中年泥棒
<ドートマンダー>ものの長編に登場する、
仲間の一人の甥の青年が抱く妄想の中のヒーローが左利き。

2021(令和3)年11月30日号(No.307)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-
「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク」
2021.11.30
クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-「パーティー族」
-楽しい読書307号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/11/post-89135b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/18c776f043925c645747d63c43d02f2c

 

 ●(4)個人的な趣味で、好きな作家、
   ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

<海外ミステリ>
・(再)『リリアンと悪党ども』トニー・ケンリック 角川文庫 1980
・『マイ・フェア・レディース』トニー・ケンリック 角川文庫 1981
・『バーニーよ銃を取れ』トニー・ケンリック 角川文庫 1982

・『暗くなるまで待て』トニー・ケンリック 角川文庫 1984
・『俺たちには今日がある』トニー・ケンリック 角川文庫 1985

 

――トニー・ケンリックは、1974年『スカイジャック』という、
ジャンボ機ともども300人超の乗員乗客を誘拐するという
とんでもないアイデアをひっさげて登場した作家。
その後ボチボチと新作が刊行され、私も次々と買いました。
でも初めの3作は読んだものの、それ以後は買っただけで積ん読でした。
今回、蔵書整理の一貫でまとめて読みました。やっぱりおもしろい。
コメディタッチのサスペンスものから、冒険ものに移行しています。

・(再)『マンハンター』ジョー・ゴアズ 角川文庫 1978

・『ハメット』ジョー・ゴアズ 角川文庫 1985

アメリカの元探偵会社の探偵出身という経歴のハードボイルド系作家。
前者は、金持ちのお嬢さんを麻薬中毒に引き込んだ連中を罰するべく
活動する、しがない私立探偵の物語。その仕掛けがすごくて、かつ……。
後者は、同じく元探偵で作家となったハードボイルド系作家ハメットを
主人公にしたハードボイルド・ミステリ作品。

・(再)『堕ちる天使』ウィリアム・ヒョーツバーグ ハヤカワ文庫NV
 1981
・(再)『ポーをめぐる殺人』ウィリアム・ヒョーツバーグ
 扶桑社ミステリー 1998

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――ヒョーツバーグも、時折、意外な仕掛けのミステリを発表する。
前者は、オカルトもので、後者も一部オカルトがらみで、
コナン・ドイルのアメリカ公演旅行中の事件を描く。
ドイルと共に脱出王ハリー・フーディニが探偵として活躍し、
のちに作家となる新聞記者デイモン・ラニアン、
そしてドイルにしか見えない存在としてポーの亡霊が現れる、
など有名人たちが登場する。

・『タラント氏の事件簿』デイリー・キング 創元推理文庫 2018
――1930年代の短編集。<ホームズのライバル>ものとして読んでみた。
・『サム・ホーソーンの事件簿II』エドワード・D・ホック
 創元推理文庫 2002
――1000編もの短編ミステリを書いたと言われる著者ホックの
田舎医者の名探偵ぶりを描く本格謎解き時代ミステリ第二弾。
・『オクトーバー・リスト』ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫 2021
――事件の終わりから逆に遡って描くという大逆転発想のミステリ。
・『木曜殺人クラブ』リチャード・オスマン ハヤカワ・ミステリ 2021

――老人テーマの小説。養老院のクラブの一つ探偵クラブのメンバーが、
経営者の一人が殺されるという実際の事件を解決に導く物語。
各人の過去が織り込まれた物語が読ませる。

・『祖父の祈り』マイクル・Z・リューイン ハヤカワ・ミステリ 2022

・『父親たちにまつわる疑問』マイクル・Z・リューイン
 ハヤカワ・ミステリ文庫 2022

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――マイクル・Z・リューイン生誕80周年記念出版のうちの新作二冊。
前者は、コロナ禍を思わせるパンデミック下の近未来アメリカを舞台に、
妻と娘の夫を亡くした祖父が、娘と孫の少年を守り抜こうとする物語。
後者は、心優しき私立探偵〈アルバート・サムスン〉シリーズ最新作、
エイリアンだと自称する青年にまつわる事件、連作四中編。

・(再)『世界ショートショート傑作選1』各務三郎/編 講談社文庫
 1978
――海外作家による、<クライム&ミステリー>、<怪奇&幻想>、
<コント>の三部からなるショートショートの傑作アンソロジー。

<SF>
・(再)『世界SFパロディ傑作選』風見潤、安田均編 講談社文庫 1980
――海外作家によるSFのパロディ短編アンソロジー。

<怪奇/恐怖小説(ホラー)>
・(再)『ドラキュラのライヴァルたち』マイケル・パリー編
 ハヤカワ文庫NV 1980

――吸血鬼の短編アンソロジー。古典から1970年代の現代ものまで。
・(再)『きみの血を』シオドア・スタージョン ハヤカワ・ミステリ 1971
――吸血鬼ものの変種。意外な青年のラブ・ロマンスもの。
・(再)『鳥』ダフネ・デュ・モーリア ハヤカワ・ミステリ 1963

――表題作はヒッチコックの映画の原作で、鳥が人を襲うというホラー。
家族を守り抜く父親/夫の活躍。他に二作の心理ものホラー収録。

・(再)『地球最後の男』リチャード・マシスン ハヤカワ文庫NV 1977
・(再)『縮みゆく人間』リチャード・マシスン ハヤカワ文庫NV 1977

・(再)『地獄の家』リチャード・マシスン ハヤカワ・ノヴェルズ 1972

・『ある日どこかで』リチャード・マシスン 創元推理文庫 2002

――リチャード・マシスンは、近年再評価の動きがあるという
アメリカのSF系ホラー作家。『地球――』は吸血鬼もののSF。
『縮みゆく――』は身体が徐々に縮んでしまうという人間の冒険物語。
『地獄――』は幽霊屋敷ものに科学を持ち込んだ本格サスペンス。
『ある日――』は時間旅行による恋物語。

・(再)『ロイガーの復活』コリン・ウイルソン ハヤカワ文庫NV 1977
――『賢者の石』以前の「クトゥールー神話」ものの中編。
・(再)『怪奇な恋の物語』ヘンリー・クレメント ハヤカワ・ノヴェルズ
 1970
――不調の青年画家が田舎の屋敷で出会った戦争で死んだ少女の幻影。
・(再)『闇の展覧会1』カービー・マッコーリー/編 ハヤカワ文庫NV
 1982

――キングの短い長編「霧」を含む怪奇恐怖小説のアンソロジー一冊目。
・(再)『闇の展覧会2』カービー・マッコーリー/編 ハヤカワ文庫NV
 1982

――SFやファンタジー系などの作家によるオリジナル・アンソロジーの2。

<国内ミステリ>
・『リラ荘殺人事件』鮎川哲也 角川文庫 2016
――芸大学生の連続殺人事件の謎を解く本格推理小説。
・『硝子のハンマー』貴志祐介 角川文庫 2007

――テレビドラマ化もされた「防犯探偵・榎本」シリーズの傑作長編。
・『しのぶセンセにサヨナラ』東野圭吾 講談社文庫 1996
――「浪花少年探偵団」シリーズ第二弾、休職中のセンセの事件簿。

<その他一般小説>
・『下町ロケット ガウディ計画』池井戸潤 小学館文庫 2018

・『下町ロケット ゴースト』池井戸潤 小学館文庫 2021

――池井戸さんは、2019年の新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェアで
『陸王』を読んだのが最初で、図書館でこのシリーズ作が並んでいて
『下町ロケット』から順に。私は工業高校の機械科卒なので級友にも
町工場の息子がいたりして、必ずしも他人事でもなく、楽しめました。

2019(令和元)年7月31日号(No.252)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2019から」
2019.7.31
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2019から―『陸王』他
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2019/07/post-e5f434.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/f113ad87a21f783d36d0d35c255ab158

 

 ●<再読ベスト3>の候補

再読24冊、初読21冊というところでしょうか。
他にもあるのですが、ヒ・ミ・ツということで。

今回は<再読ベスト3>を、と考えていたのですが、
詳細なリスト作りに手を取られ、その紹介ができませんでした。
次回に<初読ベスト3>ともども紹介します。

最後に、<再読ベスト3>の候補の書名のみあげておきます。

『果てしなき旅路』『血は異ならず』ゼナ・ヘンダースン
『マンハンター』ジョー・ゴアズ
『ポーをめぐる殺人』ウィリアム・ヒョーツバーグ
『縮みゆく人間』『地獄の家』リチャード・マシスン
『鳥』ダフネ・デュ・モーリア
『怪奇幻想の文学 I 深紅の法悦』紀田順一郎、荒俣宏/編
『ドラキュラのライヴァルたち』マイケル・パリー編
『闇の展覧会1・2』カービー・マッコーリー/編

 

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 ★創刊300号への道のり はお休みです
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本誌では、「私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)総リスト&再読編」と題して、今回も全文転載紹介です。

今年は、コロナ禍で滞っていた蔵書整理の再開で、初読よりも再読本が多くなりました。
読み直して、やはり残しておくべきか否か判断しよう、というわけです。

昔から好みが変わっていたり、価値観の変化が起きているのか等、再確認しています。

案外、好みに変化がなかったものでした。
また当時どうしてこの本が気になっていたのか分からなかった点が今回の再読で理解できた、という経験もありました。

 ・・・

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2022.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-「飾られなかったクリスマス・ツリー」-楽しい読書331号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2022(令和4)年11月30日号(No.331)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-
「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和4)年11月30日号(No.331)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-
「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー」
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 今年もはやクリスマス・ストーリーの紹介の季節となりました。

 昨年は現代編でしたので、今回は古典編です。
 クリスマスらしいハート・ウォーミングな短編を紹介しましょう。

 

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-クリスマス・ストーリーをあなたに (12)- 2022
  ~ 売れ残ったクリスマス・ツリーの運命は……? ~
 「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー

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 ●過去の ~クリスマス・ストーリーをあなたに~

1◆2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節
『あるクリスマス』カポーティ
善意の季節『あるクリスマス』カポーティ
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2011/11/post-2b5f.html

2◆2012(平成24)年11月30日号(No.94)-121130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』から
クリスマス・ストーリーをあなたに ―第94号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2012/11/post-4575.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11415827315.html

3◆2013(平成25)年11月30日号(No.117)-131130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム
・クリスマス・ストーリーをあなたに~
『サンタクロースの冒険』ボーム
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11713521094.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/11/post-2e56.html

4◆2014(平成26)年11月30日号(No.140)-141130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス」
・クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス ―第140号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11958011368.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/11/post-e7fb.html

5◆2015(平成27)年11月30日号(No.164)-151130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『まれびとこぞりて』コニー・ウィリス」
・クリスマス・ストーリーをあなたに―
「まれびとこぞりて」コニー・ウィリス ―第164号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12101006584.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2015/11/post-108a.html

6◆2016(平成28)年11月30日号(No.188)-161130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』」
・クリスマス・ストーリーをあなたに~
ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』 ―第188号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12224275324.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2016/11/post-2cc0.html

7◆2017(平成29)年11月30日号(No.212)-171130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治」
・クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治
―第212号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12332325526.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2017/11/7-eb88.html

8◆2018(平成30)年11月30日号(No.236)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)
『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング」
・クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)
『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング
―第236号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2018/11/8-9bc1.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3a5c8cbafc52eca791e8a99a100b9644

9◆2019(令和元)年11月30日号(No.260)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(9)
『その雪と血を』ジョー・ネスボ」
・クリスマス・ストーリーをあなたに(9)『その雪と血を』ジョー・ネスボ
―第260号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2019/11/post-2d509d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e0b43669289d5be0dd6bc01509240c60

10◆2020(令和2)年11月30日号(No.283)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(10)
「ファンダーハーフェン老人の遺言状」メアリー・E・ペン」
・クリスマス・ストーリーをあなたに~(10)
「ファンダーハーフェン老人の遺言状」ペン-楽しい読書283号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-b1f27c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/32ad800de583f407aaa4dab7f8b3c849

11◆2021(令和3)年11月30日号(No.307)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-
「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク」
・クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-「パーティー族」
-楽しい読書307号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/11/post-89135b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/18c776f043925c645747d63c43d02f2c

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

一回毎、一年ごとに【古典編】と【現代編】を交互に紹介してきました。

【古典編】
 チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』『鐘の音』
 ワシントン・アーヴィング『昔なつかしいクリスマス』
 ライマン・フランク・ボーム『サンタクロースの冒険』
メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」

【現代編】
 トルーマン・カポーティ「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」
 アガサ・クリスティー「水上バス」
 コニー・ウィリス「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」「まれびとこぞりて」
 梶尾真治「クリスマス・プレゼント」、ジョー・ネスボ『その雪と血を』
 ドナルド・E・ウェストレイク「パーティー族」

 

 ●『ミステリ・マガジン』<クリスマス・ストーリー集>より

今年の【古典編】は、今から100年近く前に発表された小品です。

2020(令和2)年、第10回<クリスマス・ストーリーをあなたに~>の
メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」に続き、
<クリスマス・ストーリー>の存在を教えてくれた
文芸雑誌(かつては長年、海外ミステリ専門誌として知られ、
海外の文化――主に英米の――を知らしめる役割も負っていた)
『ミステリ・マガジン』掲載作を紹介します。

アメリカの作家・エッセイストの
クリストファー・モーリー(Christopher Morley、1890~1957)が
1925年に発表した短編「飾られなかったクリスマス・ツリー」です。

売れ残ったクリスマス・ツリーの悲しいけれど、暖かい物語です。

クリストファー・モーリーは、Amazonによりますと、
『取り憑かれた本屋』(2020/1/28)
『ロジャーミフリンの旅する本屋パルナッソス』(2021/12/3)
の2冊の邦訳があります(Kindle版 (電子書籍)もあり)。

 

 ●クリストファー・モーリー「飾られなかったクリスマス・ツリー」

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*「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー
浅倉久志/訳
 『ミステリ・マガジン』1997年12月号(no.501)
   <クリスマス・ストーリイ集>より

 《(略)年老いた高木は――とりわけモミの木は――
  なにかをささやいている。彼らは若木たちに
  “飾られなかったクリスマス・ツリー”の話を
  してやっているところなのだ。
  それは悲しい物語のように聞こえるし、
  古木たちの声にも心なしか厳粛なひびきがある。
  しかし、それは若木たちを励ます物語だ。(略)
  おおぜいの若い常緑樹はこの物語で勇気づけられる。》

 

そのお話とは――?
今まで誰も書かなかった物語だというのですけれど……。

 

 ●ストーリー~ 山から切り出されたツリー

この物語の主役をつとめるツリーは、
そもそも切られたのが間違いでした。
普通なら切られずにすむはずの木だったのですが、
夕暮れ近く、斧を持った男は、斧の切れ味に酔い、
ついつい多くの木を切りたくなってしまい、
その木も切ってしまったのです。

その木は、すくすく育った若木だったのですが、
年齢の割に背が高く、枝も不揃いでした。
もしそのままそこに残されていたら、立派な大木になったことでしょう。

今は、中途半端な年齢で、人々がクリスマス・ツリーに求める、
先細りの形に枝葉もむらなく密生していない、
まっすぐすらりとした円錐形ではなく、いくぶん横に傾き、
梢がふたまたに分かれていました。

運び込まれた大勢の仲間たちと青物屋の壁にもたれていると、
そんなことも分からなかったのです。
寒い12月の日々、やがて訪れるお祭りを夢に描いて、
彼はとても幸せでした。

クリスマス・イヴの楽しさは、ふだんから話にきいていました。

ピカピカ光る玉や星、色とりどりのおもちゃ、ねじり飴、
ロウソク代わりの電球などなど。

 《きっとぼくはとても見栄えがするぞ。
  感心してくれる子供たちがいるといいけど、
  その子供たちが靴下をぼくの枝に吊るすときは、
  すごくいい気分だろうな!》

当初彼は、
買い手が付いて運び去れるモミの木たちを気の毒に思っていました。
クリスマス・イヴまでここに残っていた方がいい。
きらびやかな夜が来れば誰かに選ばれて、
大きな家のギフトの包みの山がの中に颯爽と立つ彼をみて、誰からいう。
「ああ、なんて美しいツリー!」

 

 ●売れ残るツリー

しかし、何日かが過ぎ、次々と買われていくと、
彼も心中穏やかではいられません。

どのお客も彼には厳しい言葉をかけます。

「背が高すぎるわ」
「この木はダメ、枝が貧弱」

青物屋は「てっぺんをちょん切りましょうか」といい、
何本かの枝をねじ曲げましたので、彼は痛くてたまりません。

店の前には10セント・ストアがあり、
飾り窓にはツリーを飾る様々な品物が置かれ、
人々のにぎやかな話し声が聞こえてきます。
クリスマスが近づくにつれ、見てくれのいいツリーが前列に並べられ、
仲間たちが次々に買われていきます。
さすがに、街の賑わいが身にしみて感じられました。

ツリーを安く手に入れたい婦人の前に引き出され、
「このツリーなら1ドルにおまけしますよ」と青物屋がいますが、
その値段は当初の三分の一でした。
それでも婦人には売れませんでした。
青物屋が乱暴の押し戻したため、彼は横倒しになってしまいました。

 

とうとうクリスマス・イヴの日がやってきました。

店の横の道は積もった雪が人々に踏み荒らされぬかるみになり、
壊れた空き箱やヒイラギの切れっ端と共に、
彼はそこに横倒しになったまま、自己憐憫と腹立ちに身震いしました。
「ぼくにはおもちゃも靴下もない」

その晩、
青物屋の主人は売れ残った二、三のツリーを地下室の放り込みます。

クリスマスの翌日、墓地のお飾りに緑の枝を求める客に、
青物屋は、斧を持ってツリーの枝をちょん切って運び去りました。

こうして我々のツリー、いやツリーのなれの果ては、
たっぷり考える時間ができました。

 

 ●売れ残ったツリーの行き先は

さて、売れ残ったツリーがどうなるのか、といいますと、
実は、期以降の農夫たちが、豆の支柱やブドウ棚の支柱にするため、
一本5セントで買っていくのでした。

ですから、最後には、このツリーたちの方が、
サンタクロースのために飾り付けられたツリーたちより幸せだ、
といえるかもしれません。

なぜなら、新鮮で湿った春の土の上に戻され、
太陽が暑く照りつけるころには、蔓が幹を這い上り、
クリスマスの飾り付けにも劣らぬ
美しい赤い豆の花やブドウの青く小さな粒に飾られるのですから。

枝葉のなくなった彼もまた、
ほかのモミの木と共にトラックの荷台に乗せられ田舎へ。

農家の奥さんがこの木を見て、「そういうのが欲しかったのよ」と。
物干し用の柱に、というわけです。

われらの我らのツリーが初めて褒められたのです。

クリスマスの星を飾るには不向きな二股の梢も
物干しにはおあつらえ向き。

農家の奥さんは、そこに色とりどりの子供のたちの靴下を干しました。

クリスマスには飾られなかったモミの木でしたが、
明るい色の小さな衣類が風をはらむのを、
ウキウキしながら見つめていました。

ある日、この柱を移そうとした奥さんは、
「この柱は動かせないわ」といいました。
なんと朝顔の蔓が巻き付いていたのです。
程なく、われらのはだかの柱には、美しい青や赤の花に彩られました。

 《飾られなかったツリーにはなにかすばらしいことが起きる、
  とモミの古木たちは信じている。
  そして、豆の木をよじ登った少年が巨人を倒した
  というおとぎ話にあるように、
  いつかはクリスマス・ツリーから作られた豆の支柱が、
  新しい魔法の豆の木の出発点になると信じている。
  もしもそうなったときには、
  そこから新しいおとぎ話がふたたびはじまることだろう。》

 

 ●飾られなかたツリーにもセカンド・チャンスがある

売れ残った、飾られなかったツリーにも、
また違った生き方(活かし方)があるものなのですね。

人も同じ、華やかな一生をすごす人もいれば、
隠れた場所で、それなりの花を咲かす人もいるのです。

人それぞれに魅力があり、価値があり、活躍の場があるものなのです。

腐らず、チャンスを待ち、来たるべき時には飛躍できるように、
準備を怠らないことが大事でしょうね。

セカンド・チャンスは必ずある、と信じて!

「待て、そして希望せよ」というのは、
『モンテ・クリスト伯』の言葉でした。

必ず報われるときがあるものです。

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 ★創刊300号への道のり はお休みです

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本誌では、「クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー」と題して、今回も全文転載紹介です。

クリスマスのために切られたモミの木でも、見栄えのよいものから売れてゆき、最後に売れ残ってしまったモミの木はどうなるのでしょうか。
そのお話が今回の作品です。

モミの木に限らず、人間の場合も、見場のいい人悪い人、運のいい人悪い人がいます。
能力があっても、活かされる機会のないままに腐ってしまう場合もあります。

しかし、本文にも書きましたように、人それぞれに価値があり、また、そのそれぞれの価値を求める人がいる、というのが現実です。
あとはただマッチングだけです。

大切なのは、本文にも書きましたように、「待て、そして希望せよ」ですね。

生きていれば何かが起こるもの、だと思います。
諦めると、その時点で終わりです。

先日のワールドカップの日本代表も、ドイツ戦では見事な逆転勝利でした。
果敢に攻めた結果でしたよね。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2022.10.15

<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161-私の自作左利きミステリ-「楽しい読書」第328号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書-328号【別冊 編集後記】

2022(令和3)年10月15日号(No.328)
「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161
 【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち+自作紹介」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和3)年10月15日号(No.328)
「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161
 【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち+自作紹介」
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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
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第628号(No.628) 2022/10/15
「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161
 【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち」
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 今回は、私の発行しているメルマガ
 <週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>の三度目のコラボ企画です。

 決して過去二回の企画が好評だったというわけではありませんが、
 二本同じ日に出すのが、苦痛といえば苦痛。
 で、まあ、手抜きといえば手抜き。
 私の好みの問題といえば好みの問題です。

 というわけで、スタートしましょう。

 <楽しい読書>編では、全く同じ内容ではつまらないので、
 一部をカットして、後半に「私の左利きミステリ」を紹介します。

 

*過去のコラボ企画

【第一回】
・左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第577号(No.577) 2020/8/15
左利きの本を読む~ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(1)
×レフティやすおの楽しい読書(No.276)

2020.8.15
ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(1)-週刊ヒッキイ第577号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/08/post-ed8cea.html

・レフティやすおの楽しい読書
2020(令和2)年8月15日号(No.276)
左利きの本を読む~ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(2)
×左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii(No.577)

2020.8.15
ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(2)-「楽しい読書」第276号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/08/post-ec0ad2.html

【第二回】
・左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第595号(No.595) 2021/5/15
「楽しい読書コラボ企画:私の読書論144<左利きミステリ>その後」
・古典から始める レフティやすおの楽しい読書
2021(令和3)年5月15日号(No.294)
「週刊ヒッキイコラボ企画:私の読書論144<左利きミステリ>その後」

2021.5.15
私の読書論144-<左利きミステリ>その後
-週刊ヒッキイ595号&楽しい読書294号コラボ企画
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/05/post-e0ec7a.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/400a7921be1d016f8bfbff350762971a

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  ★ <週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画 ★
 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』

  前半=【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち
後半=「私の自作左利きミステリ」紹介
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

弊誌『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』編では

前半の<左利きミステリ>紹介編は、目次と作品名のみ掲示し、
(内容詳細は、『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』をご覧ください。
 もしくは、同誌「編集後記」ブログを!)
後半の「私の自作左利きミステリ」を紹介します。

 

 ●第二回コラボ【左利きミステリ入門】の続き
 ●<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>
 ●最強のライバルと最大のライヴァル
 ●短編ならでは左利きミステリ
 ●今は二度目のリバイバル・ブームなの?

 

━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
【左利きミステリ入門】
   海外編「20世紀以降」<ホームズのライヴァルたち>
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━

<左利きミステリ>の登場人物・分類表

◆:左利きの探偵
▲:左利きの被害者
●:左利きの犯人
▼:左利きの容疑者
■:左利きのその他の事件関係者

<左利きミステリ>としての紹介の都合上、
作品のネタバレとなるケースがあります。
基本的に、キーポイントとなる読みどころに関しては
問題が起きないように留意しながら紹介していますが、
ときに一部ネタバレになる場合もありますが、ご容赦ください。

 

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1.<隅の老人>▲被害者は左利き
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1904(アメリカ)
バロネス・オルツィ「ミス・ペブマーシュ殺人事件」
『隅の老人[完全版]』作品社 平山雄一訳 2014/1/31

右手にペンを持った被害者のダイイング・メッセージは……
召使いの証言「『奥様の字はいつも読みにくいんですよ。
左手で書くとこうなってしまうんですねえ』」

 

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2.<思考機械>■(番外編――切断された「左手人差し指」の謎)
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1906(アメリカ)
ジャック・フットレル「余分な指」
『思考機械 [完全版] 第二巻』平山雄一訳 作品社

外科医のもとに、労働をしたことのない手を持つ若い女性が
「左手の人差し指の第一関節で切断していただきたいのです」と

 

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3.<思考機械>●犯人は左利き
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1907(アメリカ)
ジャック・フットレル「壊れたブレスレット」
『思考機械 [完全版] 第二巻』平山雄一訳 作品社

思考機械 対 賢い娘
住所を書いてといわれても、左手に鉛筆を持ったまま躊躇する女

 

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4.<ソーンダイク博士>▼左利きの容疑者
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1909(イギリス)
オースチン・フリーマン「アルミニウムの短剣」
"John Thorndyke's Case"
『ソーンダイク博士の事件簿I』大久保 康雄訳 創元推理文庫 1977/8/19

左後方からの短剣による刺し傷から、左利きの人物が容疑者に

 

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5.<怪盗紳士アルセーヌ・ルパン(リュパン)>●左利きの犯人
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1911(1913)(フランス)
モーリス・ルブラン「赤い絹の肩掛け」
L'ECHARPE DE SOIE ROUGE "JE SAIS TOUT"誌 79号(1911/08/15)
『リュパンの告白』(1913)井上勇訳 創元推理文庫 1966/3/24

『ルパンの告白―ルパン傑作集IX』 新潮文庫 1961/11/1

『世界短編傑作集2』江戸川乱歩編 創元推理文庫 1961/1/13

ガニマール警部は、リュパン(ルパン)から
犯人は左利きだから気を付けろと忠告を受け、危機を乗り切る

 

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6.<盲人探偵マックス・カラドス>■ワトソン役が左利き
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(1914)(イギリス)
アーネスト・ブラマ「ディオニュシオスの銀貨」
The Coin of Dionysius(第一短編集 "Max Carrados"(1914))
『マックス・カラドスの事件簿』吉田誠一訳 創元推理文庫 ‎1978/4/10

盲人探偵マックス・カラドス初登場の一編で、
観察眼に優れた従僕パーキンソンが、のちに「ワトソン役」となる
カーライルを語る部分で、左利きと

 

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7.<アブナー伯父(アンクル・アブナー)>●左利きの犯人
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1917(1918)(アメリカ)
メルヴィル・デヴィッスン・ポースト「藁人形」The Straw Man
『アブナー伯父の事件簿(シャーロック・ホームズのライヴァルたち)』
菊池光訳 創元推理文庫 1978/1/20(2022年10月上旬復刊されます)

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『アンクル・アブナーの叡知』吉田誠一訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/1/1

*参照:『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第287号(No.287) 2011/11/19「名作の中の左利き~推理小説編
 -2-「藁人形」M.D.ポースト」

アメリカ開拓時代のウェスト・ヴァージニアを舞台とする時代ミステリ
左右を使わずに、座った位置関係から対座する人物が左利きだと示す

 

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8.<ソーンダイク博士>(惜しくも番外編? ▲左利きの被害者)
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(1918)(イギリス)
オースチン・フリーマン「消えた金融業者」
"The Great Portrait Mystery"(第3短編集)
『ソーンダイク博士の事件簿II』大久保 康雄訳 創元推理文庫 1980/3/28

左手の指を、死体入れ替わりトリックを見破るための証拠に仕立てよう
としているが……、今一歩で「左利きミステリ」の未熟児?

 

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9.<ソーンダイク博士>▲左利きの被害者
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(1925)(イギリス)
オースチン・フリーマン「砂丘の秘密」
短編集"The Puzzle Look"(1925)
『ソーンダイク博士の事件簿I』(創元推理文庫)

浜辺に残されていた服(左の袖口に油絵の具)と
道具(パレットナイフの磨り減り方から)から

 

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10.<ソーンダイク博士>●左利きの犯人
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(1927)(イギリス)
オースチン・フリーマン「ポンティング氏のアリバイ」
"The Magic Casket"(1927) 第6短編集
『ソーンダイク博士の事件簿II』(創元推理文庫)

自殺に偽装した首のナイフの傷跡の方向(被害者自身の左から右へ)と
左利きの犯人の手の動き(相手に向かって右から左へ)

 

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11.<盲人探偵マックス・カラドス>▲被害者の左手指欠損
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(1927)(イギリス)
アーネスト・ブラマ「フラットの惨劇」
"Max Carrados Mysteries" 第3短編集
『マックス・カラドスの事件簿』(創元推理文庫)

左手指に欠損のある被害者の死体の入れ替わりトリック

 

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12.<ルパン(バーネット)>(準左利きミステリ)●左右反転の謎
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

(1928)(フランス)
モーリス・ルブラン「金歯の男」
『バーネット探偵社―ルパン傑作集VII』堀口大學訳 新潮文庫 1960/7/1

私立探偵バーネットを名乗るルパンの事件簿から
泥棒を目撃した神父は、神にかけて犯人の左側の金歯が光っていた、
と証言するが、容疑者の金歯は右側だった……

 

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13.<アプルビイ>(準左利きミステリ)●左右反転像/鏡像
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(1956)(イギリス)
マイケル・イネス「本物のモートン」
"Appledy Talk Again"(1956) 第二短編集
 短編集『アプルビイの事件簿』大久保康雄訳 創元推理文庫

スコットランドヤードの警部アプルビイのショートショート・ミステリ
年代的には、<ホームズのライヴァルたち>からは外れていますが。

 

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――2022年10月現在、
<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>の作品から発見したのは、
<左右の謎>ものの<準左利きミステリ>も含めて、以上13点です。

*チェックした<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>の本
(以下、略)

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  ~「私の自作左利きミステリ」紹介~

 『右手狩り―左利きミステリの講義と実作―』

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 ●なぜ<左利きミステリ>か?

60歳の時に一念発起、二つの短編ミステリの賞に応募しました。
一次選考すら突破できず挫折しましたが、長編のネタを考えていました。
その後、
『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸 新潮新書 2020/12/17

221014kakitaihitono

(画像:[第一章 そもそも「ミステリ」ってどんなもの?] の伏線の説明に関して、犯人を限定する要素が「左利き」とするときの例を挙げている。)

を読み、改めて長編ミステリにチャレンジしてみよう、
という気持ちになり、考えたのがこのストーリーでした。

このアイデアは、ズバリ私が左利きで子供の頃から嫌な思いをしてきて、
特に右利きの人からいろいろ無理解な暴言を受けたりした結果、
「右利きの人に復讐したい」といった思いがあった、
ということが大きな要因でしょう。

それと、小説を書くときに、「自分の知っている世界で勝負しろ」
といった助言をよく聞いていたこともあります。
左利きの問題なら得意ですから。

 

 ●自作ストーリー『右手狩り―左利きミステリの講義と実作―』

【登場人物一覧】

・大林(おおばやし)大作(だいさく):名は体を表す、
  大柄な自称・名探偵、左利きの研究家でもある(左利き)
・幸出(こうで)理亜(りあ):大林名探偵の助手(左利き)
・淀川(よどがわ)正史(まさし):大林の地元の高齢者施設の
  探偵クラブの創設メンバー(右利き)
・長溝(ながみぞ)乱太郎(らんたろう):探偵クラブのメンバー(右利き)
・高木(たかぎ)春光(はるみ):探偵クラブのメンバー(右利き)
・右賀(うが)作法(さくのり):元人気テレビ番組のプロデューサー、
  現在はテレビのワイドショーのコメンテーターとして出演中、
  「左利きは無作法」と発言して、SNSが炎上する(右利き)
・山田(やまだ)隆盛(りゅうせい):第一被害者、右手の骨の男(右利き)
・右野(みぎの)正道(まさみち):第二被害者、右賀の元同僚、
  右賀と共に左利き排斥の言辞を弄する(右利き)
・右田(みぎた)多綱(たづな):右賀の意見をSNS上で擁護する
・左手(ゆんで)真弓(まゆみ):右賀の意見をSNS上で批判する
・太田(おおた)守(まもる):根暗の訪問セールスマン、折波の部下で
  いつも左利きをいじられている(左利き)
・折波(おりは)祐一(ゆういち):第三被害者、太田の上司で右賀派、
  左利きの部下・太田を毛嫌いしている(右利き)
・中立(なかだち)正義(まさよし):O坂府警の刑事(右利き)
・佐和(さわ)最高(もりたか):O坂府警の刑事、中立の部下(左利き)

【プロローグ】 犬も歩けば棒(ポー=POW=(動物の)足)に当たる
  台風のあとの山林で犬の散歩中、犬が「右手」をくわえてくる
【第一章】 論より証拠
  大林が地元の高齢者施設の探偵クラブで講義を行う
  <左利きミステリ>についての講義(その一)――概要を述べる
【第二章】 針の穴から天をのぞく
  解体現場の壁の穴の奥から切り取られた二つ目の右手が発見される
【第三章】 憎まれっ子世にはばかる
  左利きの太田守(おおた・まもる)が右利きの人を口撃する
【第四章】 仏の顔も三度
  三人目の右手を切り取られた死体が発見される
【第五章】 下手の長談義
  大林が地元の高齢者施設の探偵クラブで二度目の講義を行う
  <左利きミステリ>についての講義(その二)本事件を解説する
【第六章】 遠い親類より近くの他人
  名探偵みなを集めて「さて」と言い――真犯人は……

 ・・・

まだほんの概要だけで、登場人物の名前などは仮で詳細は未定です。

私が本来、書こうと思ったのは、

 左利きの独裁者が現れ、
 幼児期に左利きであることで虐待され虐待された仕返しとして、
 右手使用禁止令を出し、違反した者は、
 その右手を切り落とされる、という社会を描くことでした。

まあ、自分自身の復讐ですね、現実には無理ですから。

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本誌では、「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち+自作紹介」と題して、今回も全文転載紹介です。

ただし、前半の<週刊ヒッキイ>編の部分は目次のみの紹介で、詳細は「<週刊ヒッキイ>の編集後記」の方をご覧ください。

自作ミステリは、半分以上でっち上げのようなもので、詳細は未定です。
空想といいますか、妄想ですね。
でも、妄想も思い込んでゆけば、何かになるとも限りません。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161-左利きミステリ-ホームズのライヴァルたち-週刊ヒッキイ第628号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第628号 別冊編集後記


第628号(No.628) 2022/10/15
「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161
 【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち」


 


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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
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第628号(No.628) 2022/10/15
「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161
 【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち」
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 × × × × × × × × × × × × × × × ×
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和3)年10月15日号(No.328)
「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161
 【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち+自作紹介」
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 今回は、私の発行しているメルマガ
 <週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>の三度目のコラボ企画です。


 決して過去二回の企画が好評だったというわけではありませんが、
 二本同じ日に出すのが、苦痛といえば苦痛。
 で、まあ、手抜きといえば手抜き。
 私の好みの問題といえば好みの問題です。


 というわけで、スタートしましょう。


 <楽しい読書>編では、全く同じ内容ではつまらないので、
 一部をカットして、後半に「私の自作左利きミステリ」を紹介します。


 


*過去のコラボ企画


【第一回】
・左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第577号(No.577) 2020/8/15
左利きの本を読む~ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(1)
×レフティやすおの楽しい読書(No.276)


2020.8.15
ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(1)-週刊ヒッキイ第577号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/08/post-ed8cea.html


・レフティやすおの楽しい読書
2020(令和2)年8月15日号(No.276)
左利きの本を読む~ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(2)
×左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii(No.577)


2020.8.15
ツイッター【左利きミステリ入門】まとめ(2)-「楽しい読書」第276号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/08/post-ec0ad2.html


【第二回】
・左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
第595号(No.595) 2021/5/15
「楽しい読書コラボ企画:私の読書論144<左利きミステリ>その後」
・古典から始める レフティやすおの楽しい読書
2021(令和3)年5月15日号(No.294)
「週刊ヒッキイコラボ企画:私の読書論144<左利きミステリ>その後」


2021.5.15
私の読書論144-<左利きミステリ>その後
-週刊ヒッキイ595号&楽しい読書294号コラボ企画
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/05/post-e0ec7a.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/400a7921be1d016f8bfbff350762971a


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  ★ <週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画 ★
 『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』
 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
  【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち
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 ●第二回コラボ【左利きミステリ入門】の続き


まずは、<左利きミステリ>について、


*<左利きミステリ>とは、
 左利きの人が主要登場人物である物語や、左利きの性質を
 トリックに活用した推理小説等のミステリの総称をいう。



 国内ミステリ : 東野圭吾『どちらかが彼女を殺した』
 海外ミステリ : エラリー・クイーン『シャム双子の秘密』


『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』で、
「名作の中の左利き/推理小説編」として紹介してきました。


 


【第一回】のコラボでは、
ツイッターで紹介した【左利きミステリ入門】のまとめでした。


そこでは、海外編として、19世紀以前の作品をツイッターで


 年代・国名・著者名・作品名・左利きの登場人物・
 左利きに関する記述の該当箇所


などの情報を紹介しました。
そのまとめ編でした。


 


【第二回】のコラボでは、「<左利きミステリ>その後」と題して、
過去の『左利きで生きるには 週刊ヒッキイ』の
「小説の中の左利き・推理小説編」やブログ等で紹介したもの以外に、
それ以降に見つけた
<左利きミステリ>(広義のミステリ)のあれこれを


 年代・作品名・著者名(短編の場合は、収録書籍名)


をリスト化して紹介しました。


今回は、【第一回】のツイッター版【左利きミステリ入門】の続きの
海外編「20世紀以降」版から
<ホームズのライヴァルたち>の作品の紹介です。


 


 ●<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>


さて、<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>
または、略して<ホームズのライヴァルたち>とは、


 月刊誌『ストランド・マガジン』で人気を博した
 名探偵<シャーロック・ホームズ>の推理譚に対抗して、
 他の雑誌や新聞紙上に登場した「名探偵」たちの活躍を描いた小説群


を指します。


最初に登場したのは、
アーサー・モリスンの名探偵<マーティン・ヒューイット>でした。


『シャーロック・ホームズの冒険』と『シャーロック・ホームズの回想』
に収録された作品をもって一旦退場した
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズに代わって、
『ストランド・マガジン』の看板(二代目の名探偵)になったのでした。


『ストランド・マガジン』の成功に刺激され、『ピアスン』誌には、
オースチン・フリーマンが<ソーンダイク博士>ものを、
『ロイヤル』誌には、バロネス・オルツィが<隅の老人>ものを。


アメリカでは、『ボストン・アメリカン』紙に
タイタニックとともに最期を遂げたジャック・フットレルによる
名探偵――「まるで考える機械だ」という意味で<思考機械>。
他には、アメリカ開拓時代を舞台にした
メルヴィル・デヴィッスン・ポーストの<アブナー伯父>ものが有名。


 


 ●最強のライバルと最大のライヴァル


そして最強のライヴァルが登場します。
それは、G・K・チェスタトンのローマ・カトリックの小男の司祭
<ブラウン神父>。


第一短編集『ブラウン神父の童心』は、
世界初の推理小説といわれる「モルグ街の殺人」を初めとする、
ポーの推理もの短編集(他の名探偵<オーギュスト・デュパン>もの――、
「マリー・ロジェの謎」「盗まれた手紙」)、
ドイルのホームズものの第一短編集『――冒険』と並ぶ、
3大ミステリ短編集の一つです。


別の面で最大のライヴァルは、やはりこの人、
モーリス・ルブランの<怪盗紳士ルパン>でしょうか。


怪盗であり、時に探偵でもあり、「ホームズ」とも対決しています。


 


 ●短編ならでは左利きミステリ


<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>ものといいますと、
基本的に雑誌に掲載された読み切り短編のスタイルで、
新聞掲載作では何回かで読み終えるスタイルの短編で、
時に問題編と解答編とに分かれる場合もありました。


そういう短編の性質上、ワン・アイデアの謎解きものが多く、
左利きネタを人物の特定に利用する作品が結構ありました。


推理もののドラマやアニメなどでもそうですね。
この場合は、ビジュアル的にわかりやすく表現できるからですが。


 


 ●今は二度目のリバイバル・ブームなの?


そんな<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>ですが、
日本では、今、二度目のリバイバル・ブームとでもいうのでしょうか、
これらの短編集が次々と出版されています。


最初のリバイバルは、1970年代、当時海外ミステリの専門誌だった
『ミステリ・マガジン』(早川書房)で、ズバリ
 <シャーロック・ホームズのライヴァルたち>
という企画がありました。
この企画を進めた人物?押川曠さん編の
『シャーロック・ホームズのライヴァルたち』というアンソロジーが
三巻出版されました。


早川書房からは、他にも個人短編集として、
ポーストの『アンクル・アブナーの叡知』など出ています。


同時期に、もう一つの海外ミステリ専門文庫、創元推理文庫からも
<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>の個人短編集が、
『○○の事件簿』というタイトルで、一〇巻程度出ています。


一部、必ずしも時代的にライヴァルではない人も含まれていました。


そして、近年、またこれらの短編集の完全版といったものが、
各社から出版されるようになりました。


たとえば、
作品社からは、バロネス・オルツィ『隅の老人【完全版】』や
ジャック・フットレル『思考機械【完全版】』全二巻、
アーサー・モリスン『マーチン・ヒューイット【完全版】』。


国書刊行会からは、
R・オースティン・フリーマン『ソーンダイク博士短篇全集』全三巻。


論創海外ミステリからは(10年以上前になりますが)、
バロネス・オルツィ『レディ・モリーの事件簿』、
E・W・ホーナング『二人で泥棒を』『またまた二人で泥棒を』
『最後に二人で泥棒を』(ルパンに先立つ「泥棒紳士」ラッフルズ)。


創元推理文庫からは、
ロバート・バー『ヴァルモンの功績』
(元フランス警察、イギリスで私立探偵のウジェーヌ・ヴァルモン)。


――といったふうに。


 


━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
【左利きミステリ入門】
   海外編「20世紀以降」<ホームズのライヴァルたち>
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<左利きミステリ>の登場人物・分類表


◆:左利きの探偵
▲:左利きの被害者
●:左利きの犯人
▼:左利きの容疑者
■:左利きのその他の事件関係者


<左利きミステリ>としての紹介の都合上、
作品のネタバレとなるケースがあります。
基本的に、キーポイントとなる読みどころに関しては
問題が起きないように留意しながら紹介していますが、
ときに一部ネタバレになる場合もありますが、ご容赦ください。


 


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1.<隅の老人>▲被害者は左利き
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1904(アメリカ)
バロネス・オルツィ「ミス・ペブマーシュ殺人事件」
『隅の老人[完全版]』作品社 平山雄一訳 2014/1/31


右手にペンを持った被害者のダイイング・メッセージは……
召使いの証言「『奥様の字はいつも読みにくいんですよ。
左手で書くとこうなってしまうんですねえ』」


 


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2.<思考機械>■(番外編――切断された「左手人差し指」の謎)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


1906(アメリカ)
ジャック・フットレル「余分な指」
『思考機械 [完全版] 第二巻』平山雄一訳 作品社


外科医のもとに、労働をしたことのない手を持つ若い女性が
「左手の人差し指の第一関節で切断していただきたいのです」と


 


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3.<思考機械>●犯人は左利き
━━━━━━━━━━━━━━


1907(アメリカ)
ジャック・フットレル「壊れたブレスレット」
『思考機械 [完全版] 第二巻』平山雄一訳 作品社


思考機械 対 賢い娘
住所を書いてといわれても、左手に鉛筆を持ったまま躊躇する女


 


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4.<ソーンダイク博士>▼左利きの容疑者
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


1909(イギリス)
オースチン・フリーマン「アルミニウムの短剣」
"John Thorndyke's Case"
『ソーンダイク博士の事件簿I』大久保 康雄訳 創元推理文庫 1977/8/19


左後方からの短剣による刺し傷から、左利きの人物が容疑者に


 


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5.<怪盗紳士アルセーヌ・ルパン(リュパン)>●左利きの犯人
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1911(1913)(フランス)
モーリス・ルブラン「赤い絹の肩掛け」
L'ECHARPE DE SOIE ROUGE "JE SAIS TOUT"誌 79号(1911/08/15)
『リュパンの告白』(1913)井上勇訳 創元推理文庫 1966/3/24


『ルパンの告白―ルパン傑作集IX』 新潮文庫 1961/11/1


『世界短編傑作集2』江戸川乱歩編 創元推理文庫 1961/1/13


ガニマール警部は、リュパン(ルパン)から
犯人は左利きだから気を付けろと忠告を受け、危機を乗り切る


 


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6.<盲人探偵マックス・カラドス>■ワトソン役が左利き
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(1914)(イギリス)
アーネスト・ブラマ「ディオニュシオスの銀貨」
The Coin of Dionysius(第一短編集 "Max Carrados"(1914))
『マックス・カラドスの事件簿』吉田誠一訳 創元推理文庫 1978/4/10


盲人探偵マックス・カラドス初登場の一編で、
観察眼に優れた従僕パーキンソンが、のちに「ワトソン役」となる
カーライルを語る部分で、左利きと


 


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7.<アブナー伯父(アンクル・アブナー)>●左利きの犯人
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1917(1918)(アメリカ)
メルヴィル・デヴィッスン・ポースト「藁人形」The Straw Man
『アブナー伯父の事件簿(シャーロック・ホームズのライヴァルたち)』
菊池光訳 創元推理文庫 1978/1/20(2022年10月上旬復刊されます)


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『アンクル・アブナーの叡知』吉田誠一訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 1976/1/1


 


*参照:『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第287号(No.287) 2011/11/19「名作の中の左利き~推理小説編
 -2-「藁人形」M.D.ポースト」


アメリカ開拓時代のウェスト・ヴァージニアを舞台とする時代ミステリ
左右を使わずに、座った位置関係から対座する人物が左利きだと示す


 


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8.<ソーンダイク博士>(惜しくも番外編? ▲左利きの被害者)
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(1918)(イギリス)
オースチン・フリーマン「消えた金融業者」
"The Great Portrait Mystery"(第3短編集)
『ソーンダイク博士の事件簿II』大久保 康雄訳 創元推理文庫 1980/3/28


左手の指を、死体入れ替わりトリックを見破るための証拠に仕立てよう
としているが……、今一歩で「左利きミステリ」の未熟児?


 


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9.<ソーンダイク博士>▲左利きの被害者
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(1925)(イギリス)
オースチン・フリーマン「砂丘の秘密」
短編集"The Puzzle Look"(1925)
『ソーンダイク博士の事件簿I』(創元推理文庫)


浜辺に残されていた服(左の袖口に油絵の具)と
道具(パレットナイフの磨り減り方から)から


 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
10.<ソーンダイク博士>●左利きの犯人
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(1927)(イギリス)
オースチン・フリーマン「ポンティング氏のアリバイ」
"The Magic Casket"(1927) 第6短編集
『ソーンダイク博士の事件簿II』(創元推理文庫)


自殺に偽装した首のナイフの傷跡の方向(被害者自身の左から右へ)と
左利きの犯人の手の動き(相手に向かって右から左へ)


 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
11.<盲人探偵マックス・カラドス>▲被害者の左手指欠損
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


(1927)(イギリス)
アーネスト・ブラマ「フラットの惨劇」
"Max Carrados Mysteries" 第3短編集
『マックス・カラドスの事件簿』(創元推理文庫)


左手指に欠損のある被害者の死体の入れ替わりトリック


 


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12.<ルパン(バーネット)>(準左利きミステリ)●左右反転の謎
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(1928)(フランス)
モーリス・ルブラン「金歯の男」
『バーネット探偵社―ルパン傑作集VII』堀口大學訳 新潮文庫 1960/7/1


私立探偵バーネットを名乗るルパンの事件簿から
泥棒を目撃した神父は、神にかけて犯人の左側の金歯が光っていた、
と証言するが、容疑者の金歯は右側だった……


 


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
13.<アプルビイ>(準左利きミステリ)●左右反転像/鏡像
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(1956)(イギリス)
マイケル・イネス「本物のモートン」
"Appledy Talk Again"(1956) 第二短編集
 短編集『アプルビイの事件簿』大久保康雄訳 創元推理文庫


スコットランドヤードの警部アプルビイのショートショート・ミステリ
年代的には、<ホームズのライヴァルたち>からは外れていますが。


 


━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━


――2022年10月現在、
<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>の作品から発見したのは、
<左右の謎>ものの<準左利きミステリ>も含めて、以上13点です。


 


*チェックした<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>の本
(上記、<左利きミステリ>に掲載したものは除く)


(イギリス)
アーサー・モリスン<マーティン(マーチン)・ヒューイット>
 短編集『マーチン・ヒューイットの事件簿』


H・C・ベイリー<犯罪捜査部顧問レジー・フォーチュン氏>
 短編集『フォーチュン氏の事件簿』


M・P・シール<貴族プリンス・ザレスキー>
 中短編集『プリンス・ザレスキーの事件簿』


G・K・チェスタトン<ブラウン神父>
 第一短編集『ブラウン神父の童心』第二短編集『ブラウン神父の知恵』
 第三短編集『ブラウン神父の不信』第四短編集『ブラウン神父の秘密』
 第五短編集『ブラウン神父の醜聞』
 <ブラウン神父>以外のミステリ短編集
 『奇商クラブ』1905 『知りすぎた男』1922 『ポンド氏の逆説』1936


――以上、創元推理文庫<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>


 


ロバート・バー<ウジェーヌ・ヴァルモン>
 短編集『ウジェーヌ・ヴァルモンの勝利』 国書刊行会 2010/10/26
――元フランスの刑事局長で、イギリスで私立探偵をやるフランス人


E・W・ホーナング<「泥棒紳士」ラッフルズ>
『二人で泥棒を』『またまた二人で泥棒を』
『最後に二人で泥棒を』論創海外ミステリ
――「ルパン」に先立つの「泥棒紳士」の事件簿全三巻


(フランス)
・モーリス・ルブラン<怪盗紳士ルパン(リュパン)>
 短編集『八点鐘―ルパン傑作集X』 新潮文庫


他に、江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集(全五巻)』創元推理文庫


*参考文献:
『シャーロック・ホームズのライヴァルたち――名探偵読本〈5〉』
中島 河太郎・押川 曠/編 パシフィカ 1979/4/1


221014shr


(画像:パフィシカ版『名探偵読本5 シャーロック・ホームズのライヴァルたち』と創元推理文庫版『マーチン・ヒューイットの事件簿<シャーロック・ホームズのライヴァルたち>』)
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 「★600号までの道のり」は、お休みです。


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本誌では、「<週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161-【左利きミステリ入門】ホームズのライヴァルたち」と題して、今回も全文転載紹介です。


コラボしている、私のもう一つのメルマガ『レフティやすおの楽しい読書』では、私の「自作左利きミステリ」を紹介しています。
といいましても完成品ではなく、これから書く予定の「こんな感じ」という簡単な概要です。
まあ、自己満の書いてみただけ、とも言えますけれど……ね。


221014kakitaihitono 


(画像:『書きたい人のためのミステリ入門』新井久幸 新潮新書 2020/12/17――[第一章 そもそも「ミステリ」ってどんなもの?] の伏線の説明に関して、犯人を限定する要素が「左利き」とするときの例を挙げている。)


 ・・・


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2022.01.31

私の読書論153-私の年間ベスト3・2021年フィクション系(後)-楽しい読書311号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書 別冊編集後記

2022(令和4)年1月31日号(No.311)「私の読書論153-
私の年間ベスト3・2021年フィクション系(後編)」
 

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和4)年1月31日号(No.311)「私の読書論153-
私の年間ベスト3・2021年フィクション系(後編)」
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 年末年始恒例の「私の年間ベスト3」――
 昨2021年に私が読んだ本のなかから
 オススメの「私の年間ベスト3」を選ぶという企画です。

 今回は、フィクション系の後編です。

 前回の全編では、フィクションへの候補作品と
 「ベスト3」から(その1)を紹介しました。

2022(令和4)年1月15日号(No.310)「私の読書論152-
私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前編)」

2022.1.15
私の読書論152-私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前)
-楽しい読書310号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/01/post-96e3b9.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c5c432318b110b539f37ca56d5cb67c8

 

 ●私の年間ベスト3・2021フィクション系(その1)

~ 私の年間ベスト3・2021フィクション系 ~
(その1)小森収編『短編ミステリの二百年』2~5巻 
      創元推理文庫2020,2021

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 今回は残りの二つの紹介です。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - 時を超え、異界を超えて、人の思いは続く -
  ~ 私の年間ベスト3・2021フィクション系(後編) ~
  (その2)梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』
        ソノラマ文庫 2003
  (その3)蒲松齢『聊斎志異』光文社古典新訳文庫 2021
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●私の年間ベスト3・2021フィクション系(後編)

~ 私の年間ベスト3・2021フィクション系 ~

(その2)梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』
      ソノラマ文庫 2003/6/1

 

(その3)蒲松齢『聊斎志異』黒田真美子/訳
      光文社古典新訳文庫 2021/2/9

 

 ●(その2)梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』

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(2)は、前回の全作紹介の時に書きましたように、
デビュー作以来、時間恋愛SFの名手、梶尾真治の同系列の作品で、
<クロノス・ジョウンター>というタイムマシンでの冒険譚4話収録。

時間の壁を超える冒険の成否が、よく考えられた展開で進行する、
恋愛青春物語が感動的です。

古本屋さんで見つけた、今は亡き「ソノラマ文庫」の一冊。

「吹原和彦の軌跡」
――最初のお話。通勤の途上の花屋でやっとこ見つけた恋人候補の女性。
  しかしある朝、目撃した事故に巻き込まれて死んでしまう。
  主人公の男性の勤め先では、過去に物質を移動させる装置
  <クロノス・ジョウンター>を開発中。
  ただし問題があり、一旦過去に戻れるものの
  その“反動”で未来に飛ばされてしまうのです。
  彼女を助けるために彼は極秘にこれを使用します。
  しかし、彼女を説得できず、助けることができません。
  それからも何度も試みるのですが、その度に失敗し、
  次第次第に遠未来へと飛ばされ続けます。
  そして56年後の4度目、遂に助けることができるのですが……。
  最初の一編らしく、最も切ない恋物語でしょうか。

 《「一人じゃ逃げられない。私、和彦さんを信じる。
  和彦さんを待ってる。私を救ってくれる和彦さんを」》p.100

 《四千年後の世界に跳ばされることになっても、
  彼はあえて立ち向かうのだ。
  愛するもののために、信じるもののために。》p.105

 

「布川輝良の軌跡」
――第二話。写真でしか知らない建築家の建物に強い憧憬を抱く彼は、
  <クロノス・ジョウンター>の実験に志願する。
  壊される前に憧れの建築家の最後の建築物を目にするために。
  そこで出会ったのは憧れの建築物と一人の女性だった……。

 《クロノス・ジョウンターを使ったといっても、
  これは奇跡だと思った。輝良は圭の笑顔を見て、愛のためには、
  まだ起こりうる奇跡が存在するのだと確信した。/
  「愛する人のためには、どんな無茶なこともできるって、
  わかったわ。ごめんなさい。驚いた?(略)」》p.217

 

「<外伝>朋恵の夢想時間」
――<クロノス・ジョウンター>とは異なる
  「心」だけが過去に戻れる機械
  <C・C>(クロノス・コンディショナー)での冒険。

 

「鈴谷樹里の軌跡」
――少女時代好きだったヒー兄ちゃんを不治の病から救うため、
  未来から薬を持って過去に飛ぶ。
  一番ヒロイックでハッピーエンドなお話。
  映画『この胸いっぱいの愛を』(2005年10月)の原作。

 《奇跡とは、愛し合う者たちのまわりへ集まってくる……。
  樹里は比呂志の腕の中で、
  そんな真理があるのではないかと考えていた。
  それを司るのは……時の神(クロノス)。》

 

現在は、これらソノラマ文庫版の4篇に、のちに書かれた3編を追加し、
全7編のシリーズ中・短篇を収録した決定版が徳間文庫から出ています。

『クロノス・ジョウンターの伝説』梶尾真治 徳間文庫 2015/2/6

 ・・・

デビュー作「美亜へ贈る真珠」他、
時間&恋愛SFの原点たる八篇を収録した新版の

『美亜へ贈る真珠 〔新版〕』 ハヤカワ文庫JA 2016/12/20

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 ●(その3)蒲松齢『聊斎志異』

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(3)は、中国の清代に書かれた怪異譚集。
短いストーリーの中に、人間の様々な感情などが、
怪異譚の中に散りばめられていて、読みどころがいっぱいです。

子供の頃に『雨月物語』のお子様版を読んで以来、
元々こういう怪異譚の類いを好む私です。

前回も書きましたように、
高校生時代に柴田天馬訳の角川文庫版を読んでいたように、
この作品集にはなじみがあります。

 ・・・

『聊斎志異』蒲松齢/著 黒田真美子/訳 光文社古典新訳文庫 2021/2/9

訳者が選び出し、〈怪〉〈妖〉〈恋〉〈夢〉〈仙〉〈幽〉の6部に
分類した43編収録の選集。

著者・蒲松齢は、かつては神童といわれながら、
役人登用試験である科挙に落第し続けたという。
そのコンプレックスから生み出された、
古来の民間伝承などを元にした
人間と異界・異能のものとの交わりを描いた物語。

巻頭の「聊斎自誌」に「好きこそ物が集まる」と書いていますように、
自分で集めるだけでなく、
同好の士から知らされたお話などを収めています。

 《時には杯に酒を浮かべて筆を取り、
  ようやくこの「孤憤」の書を書き上げたのである。
  かようにわが胸の内を本書に託したが、あわれなことこの上ない。》
   「聊斎自誌」p.14

 ・・・

〈怪〉の巻
――「瞳人語」「画壁」「偸桃」「野狗」「夜叉国」「小猟犬」「酒虫」
  「周克昌」「阿英」「促織」
〈妖〉の巻
――「王成」「画皮」「嬰寧」「双灯」「醜狐」「阿繊」「黄英」
〈恋〉の巻
――「連城」「封三娘」「緑衣女」「瑞雲」「白秋練」「香玉」
〈夢〉の巻
――「鳳陽士人」「続黄粱」「蓮花公主」「江城」「夢狼」「竹青」
〈仙〉の巻
――「労山道士」「西湖主」「蕙芳」「青娥」「雲蘿公主」「丐仙」
〈幽〉の巻
――「王六郎」「陸判」「聶小倩」「連瑣」「李司鑑」「伍秋月」
  「小謝」「席方平」

各篇の多くに末尾、著者の教訓のようなものが書かれており、
そこがまた興味深いものです。

この選集のなかでは、「〈幽〉の巻」の諸編が私の好みでしょうか。

 

 ●ベスト3以外の本

司馬遼太郎『項羽と劉邦(上中下)』は、没後も人気の歴史小説家の
秦帝国崩壊後、漢帝国のできるまでを描いた、
古代中国を舞台にしためずらしい一編。

戦略とか戦術とか、天下を取る人の資格なり人間的な魅力などが
リーダー論として、ストーリーの中に説かれています。

 

ギヨーム・ミュッソ『作家の秘められた人生』は、
別荘地の小島で起きた殺人事件と過去の事件の物語。

登場人物の作家志望の青年と筆を折った人気作家の対話を通して、
作家論や小説論・創作論が語られ、読みどころになっています。

 

 ●私の年間ベスト3・2021年〈フィクション系〉ベスト1――

今年のベスト1は、海外ミステリのオールド・ファン――
特に『ミステリマガジン』のオールド・ファンは必読――
の「思い出がいっぱい」詰まった作品集であり、長編評論である
『短編ミステリの二百年』を挙げましょう。

各巻の前半の各短編も新訳で紹介されています。
後半の小森収さんの「解説」も、ご自身の過去の読書歴とともに
紹介されているところが、
リアルタイムで当時を経験して知っている人には、共感できる部分も多く、
楽しいミステリ談になっていて、懐かしくも嬉しいところがあります。

 

 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡
 
 (1)小森収編『短編ミステリの二百年』2~5巻 
     創元推理文庫2020,2021

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 ★創刊300号への道のり(11) 2018(平成30)年(11年目)

215.
2018(平成30)年1月15日号(No.215)-180115-
「私の読書論101-私の年間ベスト2017(前編)リアル系」
~ 人生は実に旅である ~
『人生論ノート』三木清 新潮文庫 改版 1978/9
216.
2018(平成30)年1月31日号(No.216)-180131-
「私の読書論102-私の年間ベスト2017(後編)フィクション系」
~ 身分(階級)違いの恋愛と結婚 ~
『高慢と偏見(上下)』オースティン 小尾芙佐訳 光文社古典新訳文庫
217.
2018(平成30)年2月15日号(No.217)-180215-
「私の読書論103-産経新聞・朝刊コラム【明治の50冊】」
218.
2018(平成30)年2月28日号(No.218)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(19) 『老子』後編」
219.
2018(平成30)年3月15日号(No.219)
「私の読書論104-大学生の読書時間0分のニュースについて」
220.
2018(平成30)年3月31日号(No.220)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(20) 『荘子』前編」
221.
2018(平成30)年4月15日号(No.221)
「私の読書論105-私をつくった本・かえた本(4) 中3三学期編」
222.
2018(平成30)年4月30日号(No.222)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(21)『荘子』後編」
223.
2018(平成30)年5月15日号(No.223)
「私の読書論106-私をつくった本・かえた本(5)
高校時代前半・冒険探検編」
224.
2018(平成30)年5月31日号(No.224)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(22)『列子』前編」
225.
2018(平成30)年6月15日号(No.225)
「私の読書論107-私をつくった本・かえた本(6)
高校時代後半・ミステリマガジン編」
226.
2018(平成30)年6月30日号(No.226)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(23)『列子』後編」
227.
2018(平成30)年7月15日号(No.227)
「私の読書論108-〈私の読書論〉ベスト集の試み」
228.
2018(平成30)年7月31日号(No.228)
「新潮社・角川書店・集英社―3社<夏の文庫>フェア2018から
川端康成『雪国』(新潮文庫)『山の音』(角川文庫)」
229.
2018(平成30)年8月15日号(No.229)
「私の読書論109-本好きと読書好き ~ものとしての本が好き~」
230.
2018(平成30)年8月31日号(No.230)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(24)『列子』から 楊朱編」
231.
2018(平成30)年9月15日号(No.231)
「私の読書論110-紙の本と電子書籍について ふたたび」
232.
2018(平成30)年9月30日号(No.232)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(25)『墨子』前編 兼愛・非攻」
233.
2018(平成30)年10月15日号(No.233)
「私の読書論111-古本市と古本のこと~四天王寺大古本祭から~」
234.
2018(平成30)年10月31日号(No.234)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(26)『墨子』後編 墨守・墨経」
235.
2018(平成30)年11月15日号(No.235)
「私の読書論112-書物の多さ~『墨子』から~」
236.
2018(平成30)年11月30日号(No.236)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)
『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング」
237.
2018(平成30)年12月15日号(No.237)
「私の読書論113-言葉のちからの鍛え方」
238.
2018(平成30)年12月31日号(No.238)-181231-
「私の読書論114-私の年間ベスト2018(前編)リアル系」
- 好きじゃないけど、やっぱり凄い! -
『ツァラトゥストラ(上下)』ニーチェ 丘沢静也訳
    光文社古典新訳文庫 2010.11、2011.1

 ・・・

この年の月末「古典紹介編」は、引き続き古代中国の思想・哲学編で、
諸子百家を読みし進めています。
なかでも『墨子』の「兼愛・非攻」の考えには惹かれました。

月半ばの発行号の「私の読書論」では、
「私をつくった本・かえた本」について高校時代まで書いています。
そこからのちのお話は、またいずれ書いてみたいものです。

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本誌では、「私の読書論153-私の年間ベスト3・2021年フィクション系(後編)」をお届けしています。

今回も、全編公開しました。

今回は「後編」で、「ベスト3」から(その2)(その3)を、および「ベスト1」を紹介しています。

 ・・・

〔梶尾真治さんの作品について〕

「ベスト3」の(その2)に選んだ『クロノス・ジョウンターの伝説』の作家・梶尾真治さんの他の作品について書いておこうと思います。

一番好きな作品はやはり<エマノン>シリーズですね。

最初の一冊『おもいでエマノン』収録の表題作でシリーズ第一作の「おもいでエマノン」は衝撃的でした。

地球に生命が誕生してからの30億年の記憶を持つという謎の少女エマノンがにまつわる様々なお話です。
基本短編で始まった作品群ですが、日本に来る前の新聞記者時代のラフカディオ・ハーン、画家のゴーギャンが登場する『うたかたエマノン』という長編もあります。

図書館で新作を見つけるとポツポツと借りて読んでいます。

私が今持っているのは、ずっと昔に古本屋さんで見つけた、徳間デュアル文庫版の『おもいでエマノン』『かりそめエマノン』のニ冊だけです。

他には、本文でも紹介している、デビュー作「美亜へ贈る真珠」他、時間&恋愛SFの原点たる八篇を収録した新版の『美亜へ贈る真珠 〔新版〕』ですね。
デビュー作はやはりまだ硬い感じがしますが、結構が『クロノス・ジョウンターの伝説』の第一作につながるような作品です。

他の作品に目を移しますと、長編では『サラマンダー殲滅』(日本SF大賞)、映画化された『黄泉がえり』があります。
短編も面白いですが、これらの長編もなかなかです。

*<エマノン>シリーズ
『おもいでエマノン』梶尾 真治 徳間文庫〈新装版〉 2013/12/6

『うたかたエマノン』梶尾 真治 徳間文庫 2016/11/2

短編で言いますと、弊誌

2017(平成29)年11月30日号(No.212)-171130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治」

クリスマス・ストーリーをあなたに~(7) 「クリスマス・プレゼント」梶尾真治 ―第212号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

で紹介しました一編を含むショートショート集のような、
ユーモアSFの短篇集もあります。

*「クリスマス・プレゼント」収録
『有機戦士バイオム』梶尾真治 ハヤカワ文庫JA 1989.10
 

 ・・・

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2022.01.15

私の読書論152-私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前)-楽しい読書310号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書 別冊編集後記

2022(令和4)年1月15日号(No.310)「私の読書論152-
私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前編)」

 

例年のことですが、
遅くなりましたが、
明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

レフティやすお <(_ _)>

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和4)年1月15日号(No.310)「私の読書論152-
私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前編)」
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 年末年始恒例の「私の年間ベスト3」――
 昨2021年に私が読んだ本のなかから
 オススメの「私の年間ベスト3」を選ぶという企画です。

 今回は、フィクション系の前編です。

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 - 『ミステリマガジン』オールド・ファン必読 -
  ~ 私の年間ベスト3・2021フィクション系(前編) ~
  (その1)小森収編『短編ミステリの二百年』2~5巻
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 ●傾向と分類

昨年も一時期図書館が休館になったこともあり、
コロナ不安症(?)的な精神面もあり、
また、私自身のケガに伴う行動の制約もあり、
フィクション系もあまり読めませんでした。

そんななかで、手持ちの積ん読本や再読本も多く、
新規に読んだ本はかなり減っています。

 

例年のように簡単に分類してみましょう。

(1)メルマガ用のお勉強の本
(2)それ以外の古典の名作
(3)小説や左利き本等著作のための勉強本
(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

 

 ●(1)メルマガ用のお勉強の本

<中国の古典編―漢詩を読んでみよう>
1.司馬遼太郎『項羽と劉邦(上中下)』新潮文庫1984
2.[一部再読]中島敦『李陵 山月記』文春文庫2013

<新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から>
3.[再読]山本 周五郎『さぶ』新潮文庫1965
4.[再読]太宰治『斜陽 人間失格 桜桃 走れメロス』文春文庫
5.ギヨーム・ミュッソ『作家の秘められた人生』集英社文庫2020(原2019)

2021(令和3)年4月30日号(No.293)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(9)漢代(1)項羽と劉邦」
2021.4.30
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(9)漢代(1)項羽と劉邦
-楽しい読書293号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/04/post-4b639f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/6dfa35eb01ce468d12a1b6e80ba0e6c7

2021(令和3)年9月30日号(No.303)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(12)
特別編-中島敦「山月記」より」
2021.9.30
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(12)特別編-中島敦「山月記」より
-楽しい読書303号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-0666dc.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/01e422e6e9e18417a82bd6713f662e3f

2021(令和3)年7月31日号(No.299)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)準古典」
2021.7.31
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(1)
-「楽しい読書」第299号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/07/post-38536e.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/872fb55a4a5a78d989b58cf7878bc188

2021(令和3)年8月31日号(No.301)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家」
2021.8.31
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2021から(2)新顔作家-「楽しい読書」第301号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/08/post-709d62.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/76ed255eb712153d96e6ef9ca568633c

 

 ●(2)それ以外の古典の名作

6.蒲松齢『聊斎志異』光文社古典新訳文庫2021
7.大岡玲訳『今昔物語集』光文社古典新訳文庫2021

――今年もあんまり読んでませんね。

『聊斎志異』は高校生の時に角川文庫で読んでました。
柴田天馬訳で全4巻だったと思います。
芥川龍之介が『今昔物語集』の中の話をネタに小説を書いていたように、
高3の時に、この中の一編を元ネタに小説を書いてみたものでした。

『今昔物語集』は、20代初めぐらいに現代語訳の本――
福永武彦訳の『今昔物語』(ちくま文庫)を買って読んでいました。
龍之介の短編「羅生門」「鼻」「芋粥」などは
高校1年の時に好んで読んでいました。
そんな関係で好きでしたね。
夢枕獏さんの安倍晴明が活躍する作品集『陰陽師』で、
元ネタとして使っているのを知り、また一層好きになりましたね。

 

 ●(3)小説や左利き本等著作のための勉強本

<左利きミステリ入門>
8.ヒュー・ペンティコースト『シャーロック伯父さん』論創海外ミステリ
2020(原1970)
9.アガサ・クリスティー『黄色いアイリス』早川書房クリスティー文庫
2004(原1932,34,35,36,37,39)

ともに短編集で、『シャーロック伯父さん』には
ズバリ左利きの容疑者と犯人が登場する「左腕投手の殺人」、
『黄色いアイリス』には、「仄暗い鏡の中に」という
“鏡”ものの<左右ミステリ>が収録されています。

 

 ●(4)個人的な趣味で、好きな作家、
 ミステリ(推理小説)やSF、冒険小説など

(海外ミステリ)
10-12.G・K・チェスタトン(短編集)
『奇商クラブ』創元推理文庫2018(原1905)
『知りすぎた男』創元推理文庫2020(原1922)
『ポンド氏の逆説』創元推理文庫2017(原1936)

13.ディクスン・カー『カー短編全集1 不可能犯罪課』
創元推理文庫1970(原1940)
14.ディクスン・カー『カー短編集2』創元推理文庫1970
15.フレドリック・ブラウン『シカゴ・ブルース』
創元推理文庫2020(原1947)

[再読(新訳)]
16.エラリー・クイーン『エジプト十字架の謎』
創元推理文庫2016(原1932)
17.エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの新冒険』(短)
創元推理文庫2020(原1940)

[一部再読]
18.19.江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集4』『世界推理短編傑作集5』
 創元推理文庫2019
20-24.小森収編『短編ミステリの二百年』2~5巻 
創元推理文庫2020,2021

[再読](海外ミステリ)
25.トニー・ケンリック『殺人はリビエラで』角川文庫1976(原1970)
26.トニー・ケンリック『スカイジャック』角川文庫1974(原1972)

海外ミステリの短編集の多くは、
<左利きミステリ>の調査のために読んだもの。
長編もそうですけれど。

(国内ミステリ)
27.島田荘司『改訂完全版 占星術殺人事件』講談社文庫2013
28.今村昌弘『屍人荘の殺人』創元推理文庫2019
29.辻真先『仮題・中学殺人事件』創元推理文庫2004
30.連城三紀彦『宵待草夜情』ハルキ文庫1998
31.北村薫『空飛ぶ馬』創元推理文庫1994
32.天城一『天城一の密室犯罪学教程』日下三蔵編 宝島社文庫2020

16.の『エジプト十字架の謎』と上記の32.をのぞく国内ミステリは、
前号の

 2021(令和3)年12月31日号(No.309)「私の読書論151-
 私の年間ベスト3・2021年リアル系(後編)岡本太郎他」
2021.12.31
私の読書論151-私の年間ベスト3・2021年リアル系(後)
-楽しい読書309号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/12/post-ceb6fd.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/b171098bc2132d4d4f7e6cd2a77c3dcd

の「ベスト3以外のオススメ」の一冊
『書きたい人のためのミステリ入門』(新井 久幸 新潮新書)
に紹介されていた作品および作品集です。

国内ミステリはほとんど未読でしたので、この際読んでみました。
確かに名作揃いです。
一番はやはり27.の『占星術殺人事件』でしょう。
トリックは単純ですが、それだけにスゴイ。

(SF)
33.梶尾真治『クロノス・ジョウンターの伝説』ソノラマ文庫2003
34.広瀬正『マイナス・ゼロ』集英社文庫1982

SF系はこの2冊、他に
『復刻 S-Fマガジン NO.1-3』(早川書房1995)がありますが、
まだ途中まで。

『クロノス・ジョウンターの伝説』は、
時間恋愛SFの名手、梶尾真治の同系列の作品で、
<クロノス・ジョウンター>というタイムマシンでの冒険(?)のお話集。
泣ける話もあります。
思わずよかったね、という結末のお話もあります。

『マイナス・ゼロ』も同系統のお話で、時間恋愛SFの長編です。
終戦前から戦後のお話。

(好きな作家:北杜夫)
35.北杜夫『静謐 北杜夫自薦短篇集』中公文庫2021

(その他)
36.池井戸潤『下町ロケット』小学館文庫2013

35.は、北さんの没後10年記念の一冊で、生前の自薦短篇集の文庫版。
初期短編から北さんの自薦の短編を集めています。
私は、北さんの初期短編が好きで、
全集の初期短篇集2巻を買ったときに、
文庫版の短編集は処分してしまったのですが、
こうしてまた買い直しました。
2編程度未読(らしきもの、記憶がないもの)がありました。
既読作品でもやっぱりいいなあと思うものがあります。
ピュアな繊細な作品と、時に狂的なパッショネートな作品があり、
こういうものにいいものがあります。

36.『下町ロケット』は、池井戸さんが直木賞を受賞した作品だそうで、
私が初めて読んだ『陸王』と同じ中小企業の若社長と従業員が一致団結、
新規プロジェクトに賭けて危機を乗り越える企業奮闘もの。
(こちらが先に書かれたもので、続編も出ています。)

 

 ●小森収編『短編ミステリの二百年』

小森収編『短編ミステリの二百年』(全6巻、うち2~5巻) 
は、過去200年の短編ミステリの歴史をたどり、
江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』全5巻 に収録されている
名作中の名作を補完するその代表的な短編を紹介しながら、
その解説を兼ねて、短編ミステリの進化の歴史を描く評論との
二本立て企画です。

(出版社紹介文)
・江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』と収録作品の重複なし
・「短編ミステリ読みかえ史」を改稿した、
 作品解説としても読める評論を各巻に収録

前半が作品集で、後半がその解説を兼ねた評論、という仕掛け。
リアル系で扱うか、フィクション系かで迷った一連の本でした。
内容的には、小説の歴史を扱うという意味で、
フィクション系で扱うことにしました。

こういう一連の本を扱うのは、不公平な感じですが。
今年の一番に選びたいですね。

なぜなら、作品も含めて、解説である評論のなかでも再三、
私の高校生時代以降の若い頃の思い出の一つである、
1970年代の『ミステリマガジン(HMM)』のお話がよく出てくるのです。

『HMM』のオールドファンには楽しい話題が出てきて、
これは最高に嬉しい企画でした。

先に挙げた『シャーロック伯父さん』を読むことになったのも、
この本の「解説」で紹介されていたからでした。

 

 ●私の年間ベスト3・2021フィクション系(その1)

oooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo
~ 私の年間ベスト3・2021フィクション系 ~
(その1)小森収編『短編ミステリの二百年』2~5巻 
      創元推理文庫2020,2021
oooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo

今回、これを「ベスト3」の一つに挙げています。

 

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最終巻『短編ミステリの二百年6』
は、2021年年末に出たばかりで未読。
今年のお楽しみというところです。

改めて全巻通して「解説」(評論)の部分を読み直したいものです。

もちろん、小森さんの見方(価値観・ミステリ観)で書かれていますが、
小森さんと同時期に読んでいる作品も多いので、
そういう共通の読書歴から来る共感できる部分も多く、
読んでいて楽しい作品でした。

1はもう大分前に読み、その後、
2巻からは新刊を買うだけ買って未読のまま積ん読状態でしたが、
昨年の3月にもまたコロナで図書館が休館になり、
それから7月頃まで次々と読むようになりました。

2、3、4、5巻と読んできますと「解説」が、
途中からちょっと駆け足になったような気もしないではありません。

早く全6巻をおわらせたい、
という出版社の思惑が入ってしまったような気がしないでもありません。

〈Webミステリーズ!〉で現在進行形で連載されているなかで
出版が進んでいったため、駆け足になったのでは、という疑いです。

もうちょっと引っ張ってもよかったのでは、という気がします。

 ・・・

最後に、<フィクション系>の「ベスト3」の一冊ですので、
各巻の収録短編作品と<私のお好み>をそれぞれ紹介しておきましょう。

[★:お好み ☆:次点]

 

『短編ミステリの二百年1』2019年10月発行

「霧の中」リチャード・ハーディング・デイヴィス/猪俣美江子訳
「クリームタルトを持った若者の話」
 ロバート・ルイス・スティーヴンスン/直良和美訳
「セルノグラツの狼」サキ/藤村裕美訳
「四角い卵」サキ/藤村裕美訳
「スウィドラー氏のとんぼ返り」アンブローズ・ビアス/猪俣美江子訳
「創作衝動」サマセット・モーム/白須清美訳
「アザニア島事件」イーヴリン・ウォー/門野集訳
「エミリーへの薔薇」ウィリアム・フォークナー/深町眞理子訳
「さらばニューヨーク」コーネル・ウールリッチ/門野集訳
★「ブッチの子守歌」デイモン・ラニアン/直良和美訳
☆「笑顔がいっぱい」リング・ラードナー/直良和美訳
「ナツメグの味」ジョン・コリア/藤村裕美訳
  *
「短編ミステリの二百年」小森収

 

『短編ミステリの二百年2』2020年3月

★「挑戦」バッド・シュールバーグ/門野集訳
「プライドの問題」クリストファー・ラ・ファージ/門野集訳
「チャーリー」ラッセル・マロニー/直良和美訳
「クッフィニャル島の略奪」ダシール・ハメット/門野集訳
「ミストラル」ラウール・ホイットフィールド/白須清美訳
「待っている」レイモンド・チャンドラー/深町眞理子訳
「死のストライキ」フランク・グルーバー/白須清美訳
☆「探偵が多すぎる」レックス・スタウト/直良和美訳
「真紅の文字」マージェリー・アリンガム/猪俣美江子訳
「闇の一撃」エドマンド・クリスピン/藤村裕美訳
「二重像」ロイ・ヴィカーズ/藤村裕美訳

 

『短編ミステリの二百年3』2020年8月

★「ナボテの葡萄園(ぶどうえん)」
 メルヴィル・デイヴィスン・ポースト/門野集訳
「良心の問題」トマス・フラナガン/藤村裕美訳
「ふたつの影」ヘレン・マクロイ/直良和美訳
「姿を消した少年」Q・パトリック/白須清美訳
「女たらし」ウィルバー・ダニエル・スティール/門野集訳
「敵」シャーロット・アームストロング/藤村裕美訳
「決断の時」スタンリイ・エリン/深町眞理子訳
「わが家のホープ」A・H・Z・カー/藤村裕美訳
「ひとり歩き」ミリアム・アレン・ディフォード/猪俣美江子訳
「最終列車」フレドリック・ブラウン/安原和見訳
☆「子供たちが消えた日」ヒュー・ペンティコースト/白須清美訳

 

『短編ミステリの二百年4』2020年12月

「争いの夜」ロバート・ターナー/門野集訳
「獲物(ルート)のL」ローレンス・トリート/門野集訳
☆「高速道路の殺人者」ウィリアム・P・マッギヴァーン/白須清美訳
「正義の人」ヘンリイ・スレッサー/藤村裕美訳
「トニーのために歌おう」ジャック・リッチー/藤村裕美訳
「戦争ごっこ」レイ・ブラッドベリ/直良和美訳
「淋しい場所」オーガスト・ダーレス/藤村裕美訳
「獲物」リチャード・マシスン/白須清美訳
★「家じゅうが流感にかかった夜」
 シャーリイ・ジャクスン/深町眞理子訳
「五時四十八分発」ジョン・チーヴァー/門野集訳
「その向こうは――闇」ウィリアム・オファレル/直良和美訳
「服従」レスリー・アン・ブラウンリッグ/猪俣美江子訳 *本邦初訳
「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」
 マージェリー・フィン・ブラウン/深町眞理子訳 ☆

 

『短編ミステリの二百年5』2021年6月

「ある囚人の回想」スティーヴン・バー 門野集訳
「隣人たち」デイヴィッド・イーリイ 藤村裕美訳
「さよなら、フランシー」ロバート・トゥーイ 藤村裕美訳
「臣民の自由」アヴラム・デイヴィッドスン 門野集訳
「破壊者たち」グレアム・グリーン 門野集訳
「いつまでも美しく」シーリア・フレムリン 直良和美訳
「フクシアのキャサリン、絶体絶命」リース・デイヴィス 猪俣美江子訳
「不可視配給株式会社」ブライアン・W・オールディス 深町眞理子訳
★「九マイルは遠すぎる」ハリイ・ケメルマン 白須清美訳
「ママは願いごとをする」ジェームズ・ヤッフェ 藤村裕美訳
☆「ここ掘れドーヴァー」ジョイス・ポーター 直良和美訳
「青い死体」ランドル・ギャレット 白須清美訳

 

――本格ミステリ(本格謎解きミステリ/本格推理小説)系のもの
(「探偵が多すぎる」「ナボテの葡萄園」「子供たちが消えた日」
「九マイルは遠すぎる」「ここ掘れドーヴァー」)、
もしくは、広義のミステリ系の作品(「ブッチの子守歌」「挑戦」
「笑顔がいっぱい」「家じゅうが流感にかかった夜」)がお好み、
という感じです。

収録作の大半は、既読(別の人の翻訳で)。
なかでも「『ミステリマガジン』で」というものがいくつかあります。
また、創元ではなく「早川の本で」というものも。
そういう意味では、この選集は、
「創元の穴を埋める」という内容かも知れませんね。

 ・・・

――次回は、<ベスト3>の残りの二つについてをお送りします。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ★創刊300号への道のり(10) 2017(平成29)年(10年目)

191.
2017(平成29)年1月15日号(No.191)-170115-
「私の読書論89-私の年間ベスト2016(後編)フィクション系」
192.
2017(平成29)年1月31日号(No.192)-170131-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(11)『論語』を読む (後編)」
193.
2017(平成29)年2月15日号(No.193)-170215-
「私の読書論90-私をつくった本・かえた本(1)幼少期編」
194.
2017(平成29)年2月28日号(No.194)-170228-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(12)『孟子』を読む (前編)」
195.
2017(平成29)年3月15日号(No.195)-170315-
「私の読書論91-私をつくった本・かえた本(2)小説への目覚め編」
196.
2017(平成29)年3月31日号(No.196)「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(13)『孟子』を読む (後編1)」
197.
2017(平成29)年4月15日号(No.197)
「私の読書論92-近況から―本屋ロス ~永遠に続くものはない~」
198.
2017(平成29)年4月30日号(No.198)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(14)『孟子』を読む (後編2)」
199.
2017(平成29)年5月15日号(No.199)
「私の読書論93-本との出会いは偶然か必然か」
200.
2017(平成29)年5月31日号(No.200)
「創刊200号記念―特別編 私の大好きな一冊(名作編)」
◆ 『トム・ソーヤーの冒険』マーク・トウェイン ◆
  \/\ 完璧なエンターテイメント小説 /\/
201.
2017(平成29)年6月15日号(No.201)
「創刊200号突破記念―特別編 私の大好きな一冊(名著編)」
◆ 私の名著ベスト3 ◆
 ★ 海外編 ― ソロー『ウォールデン 森の生活』
☆ 国内編 ― 内村鑑三『後世への最大遺物』
★ 古代編 ― 『スッタニパータ』(ブッダのことば)
202.
2017(平成29)年6月30日号(No.202)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(15)『大学』を読む 」
203.
2017(平成29)年7月15日号(No.203)
「私の読書論94-ソロー生誕200年を迎えて 」
◆わが心のソロー:シンプルに! シンプルに生きよう!◆
(市民的不服従)『市民の反抗』飯田実/訳岩波文庫
『森の生活 ―ウォールデン―』佐渡谷重信訳 講談社学術文庫

Thoreau-walden


204.
2017(平成29)年7月31日号(No.204)-170731-
「新潮社・角川書店・集英社―3社<夏の文庫>フェア2017から
人の心の不思議、人生の重さ」
205.
2017(平成29)年8月15日号(No.205)
「私の読書論95-ソロー生誕200年を迎えて 2-読書について」
『森の生活 ―ウォールデン―』佐渡谷重信訳 講談社学術文庫
「第3章 読書」から
206.
2017(平成29)年8月31日号(No.206)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(16)『中庸』を読む 」
207.
2017(平成29)年9月15日号(No.207)-170915-
「私の読書論96-私をつくった本・かえた本(3) 中学生時代編」
208.
2017(平成29)年9月30日号(No.208)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(17) 諸子百家」
209.
2017(平成29)年10月15日号(No.209)「私の読書論97
-長田弘『読書からはじまる』前編」
210.
2017(平成29)年10月31日号(No.210)「古代中国編―
 中国の古代思想を読んでみよう(18) 『老子』前編」
211.
2017(平成29)年11月15日号(No.211)「私の読書論98
-長田弘『読書からはじまる』後編
本はもう一つの世界へのドア―心の旅」
212.
2017(平成29)年11月30日号(No.212)-171130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治」
213.
2017(平成29)年12月15日号(No.213)「私の読書論99
-図書館が読書の入口になる
 図書館と出版社・書店業界について(前編)」
214.
2017(平成29)年12月31日号(No.214)-171231-
「私の読書論100-自ら改善すべき点がある-
 図書館と出版社・書店業界について(後編)」

 ・・・

この年の月末「古典紹介編」は、古代中国の思想・哲学編で、
「四書五経」からその他の諸子百家に進みました。

200号に到達したのを記念して、
私のお気に入りの名作・名著について書いています。
その名著の一つにも選んでいるアメリカの思想家・著述家、
ソローの生誕200年に当たる年でもあり、
彼の著作についても書いています。
彼の著作「市民的不服従」は、
のちにインドのガンディー首相やアメリカのキング牧師に影響を与え、
孔子、プラトンからアインシュタイン、ケインズまで、
人類の歴史に多大な影響を与えた古今東西の偉人の名著から選んだ
『世界を変えた100冊の本』マーティン・セイモア=スミス/著
BEC, 別宮 貞徳/訳 共同通信社 2003/11/1
にも選ばれています。

月半ばの発行号の「私の読書論」では、
「私をつくった本・かえた本」について書いています。
途中で終わっていますが、いずれ続きを!

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本誌では、「私の読書論152-私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前編)」をお届けしています。

今回も、全編公開しました。

今回は「前編」で、「ベスト3」から(その1)を紹介しています。

 ・・・

では、弊誌を面白いと思われた方は、購読のお申し込みを!

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』

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2021.12.31

私の読書論151-私の年間ベスト3・2021年リアル系(後)-楽しい読書309号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書 別冊編集後記

2021(令和3)年12月31日号(No.309)「私の読書論151-
私の年間ベスト3・2021年リアル系(後編)岡本太郎他」

☆ ☆ ☆

2021年もいよいよいおしまいになりました。

今年も一年本当にご愛顧ありがとうございました。

来年もそれなりに頑張って発行を続けてゆく所存です。

よろしくお願いいたします。

レフティやすお <(_ _)>

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2021(令和3)年12月31日号(No.309)「私の読書論151-
私の年間ベスト3・2021年リアル系(後編)岡本太郎他」
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 いよいよ今年も終わりになりました。
 年末年始恒例の「私の年間ベスト3」の2回目を。

 その年、もしくは前年に私が読んだ本から
 オススメの「私の年間ベスト3」を選ぶという企画です。

 今回は、「リアル系」の後編、
 <岡本太郎>の二冊目の『対極と爆発』と、
 <リアル系>三番目、國方栄二『ストア派の哲人たち』について、
 そして、「ベスト3」以外について。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - 私にもなれる!? ストイックな倫理家たち -
  ~ 私の年間ベスト3・2021リアル系(後編) ~
  2.岡本太郎『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』椹木野衣/編
   ちくま学芸文庫
  3.國方栄二『ギリシア・ローマ ストア派の哲人たち
   セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス』中央公論新社
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~ 私の年間ベスト3・2021リアル系 ~

(1)『自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか』
岡本太郎 青春出版社・青春文庫<新装版> 2017/12/9

(2)『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』岡本太郎
 椹木野衣/編 ちくま学芸文庫 2011/2/8

(画像:『自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか』岡本太郎 青春出版社・青春文庫<新装版> 2017/12/9、『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』岡本太郎 椹木野衣/編 ちくま学芸文庫 2011/2/8) 

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(画像:『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』岡本太郎 椹木野衣/編 ちくま学芸文庫 2011/2/8)

 ●芸術論であり人生論:(2)『対極と爆発』中の『今日の芸術』

(1)の『毒を持て』にも一部紹介されていますように、
『対極と爆発』の中に収録されている『今日の芸術』は、
岡本太郎さんの芸術論であり、人生論、生き方論でもあります。

芸術論といえば、一般人には無関係のように映りますが、
鑑賞も創造だ、自分を作ることだといいます。

 《味わうことによって創造に参加するのです。》p.118

本当に感動した瞬間に、見る世界が変わり、
今まで見ることのなかった、今まで知ることのなかった世界を発見する。
そこで生活が生きがいとなり、

 《あなたはあなた自身を創造しているのです。》p.119

といいます。

 ・・・

『今日の芸術』のなかでもう一つだけ書いておきたいことがあります。
それは、人間の価値といったことについてです。

岡本太郎さんは、こう書いています。

 《路傍にころがっている、石ころとか木の葉がある。
  そこにそのまま、ただ[ある](原書傍点)ということがたいせつです。
  人間はちょうど石ころと同じように、
  それそのものとしてただ[ある](原書傍点)、という面もあるので、
  その一見無価値的なところから
  新しく自分をつかみなおすということに、
  これからの人間的課題があるのです。》p.161

 《自分が自分自身で思い込んでいる自分の価値というものを
  捨てさって、自分の真の姿をはっきりさせ、
  ますます自分自身になりきるということ、
それがまた、じつは、おのれの限界をのり越えて、より高く、
  より大きく自分を生かし、前進させてゆくことなのです。》

 《自分の姿をありのままに直視することは強さです。
  だれでもが絵を描き、おのれをすなおに表現するということは、
  不必要な価値観念をすて、自分を正しくつかむ、
  きわめて直接的で純粋な手段であり、それによってまた、
  もっとも人間的な、精神の自由を獲得することができるのです。》

といいます。

芸術の問題は簡単で、ただ“描くか・描かないか”だけだ、といいます。
「自信を持つこと、決意すること」だけなのだ、といいます(p.162)。

石ころのように、
《そこにそのまま、ただ[ある](原書傍点)ということがたいせつ》で、
《自分の姿をありのままに直視することは強さ》だといい、
「自信を持つこと、決意すること」だけだ、
というシンプルな行き方です。

こういう行き方・生き方ならだれでもできるように思います。
要は、決意するかどうか、というだけですから。

「決意即実現(?/成功?)」というのは、
「発心即菩提」という仏教の考え方を思い起こさせます。

 

 ●私の2021年〈リアル系〉ベスト3――『ストア派の哲人たち』

(3)『ギリシア・ローマ ストア派の哲人たち
 セネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウス』
 國方栄二 中央公論新社 2019/1/9

*参考:
(出版社の紹介文)
 「ストイックに生きる」ことは、
 自分に厳しいだけの生き方なのだろうか?
 キュニコス派のディオゲネスから、ゼノンらの初期ストア派、
 パナイティオスらの中期ストア派、ローマ時代の後期ストア派、
 すなわちセネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウスの思想を紹介。
 初期、中期、後期の特徴を分析し比較し、
 「ストイックに生きる」という意味を探る

第一章 自然にしたがって生きよ――キュニコス派
第二章 時代が求める新しい哲学――ストア哲学の誕生
第三章 沸き立つローマの市民――ストア哲学の伝承
第四章 不遇の政治家――セネカ
第五章 奴隷の出自をもつ哲人――エピクテトス
第六章 哲人皇帝――マルクス・アウレリウス
終 章 ストイックに生きるために

210101sutoaha-tetugaku-hyousi_20211230145101

(画像:『ストア派の哲人たち』ほかストア派の哲学者の本(『人生談義 (上)』エピクテトス 國方栄二/訳 岩波文庫、『幸福論 第1部』ヒルティ 草間 平作/訳 岩波文庫、『自省録』マルクス・アウレーリウス 神谷美恵子/訳 岩波文庫、『ローマの哲人 セネカの言葉』中野 孝次 講談社学術文庫、参考として『モンテーニュ』宮下志朗 岩波新書)

 ・・・

本書は、学術書ではなく、ストア派哲学の一般向けの入門書。

主に後期ストア派の哲人たち――セネカ、エピクテトス、
マルクス・アウレリウスを中心に、
それぞれの哲学者の時代背景とともに、
その人の哲学の生まれた状況を想像させる内容となっています。

巻末に索引とともに、ストア派の名言/名句集が掲載され、
役に立つものになっています。

このストア派の哲学は、哲学というより、
生き方論や処世術的な面があり、私は以前から好きでした。

 ●セネカ

セネカ(前4頃‐前65)は、
第5代ローマ皇帝ネロ幼少期の家庭教師であり、
のちネロが皇帝になってからは、
その執政官として腕を振るった政治家であり、哲学者でもあり、
悲劇作家でもあります。
政治家としては色々な評価がありますが、哲学者としては、
人間的な優しさも見せ、中野孝次さんの著作にもありますように、
道徳書簡等見るべきものがあります。

 

『生の短さについて 他2篇』セネカ 大西 英文/訳 岩波文庫 2010/3/17

(出版社の紹介文) 生は浪費すれば短いが、活用すれば十分に長いと説く
 『生の短さについて』。心の平静を得るためにはどうすればよいかを
 説く『心の平静について』。快楽ではなく、徳こそが善であり、
 幸福のための最も重要な条件だと説く『幸福な生について』。
 実践を重んじるセネカ(前4頃‐後65)の倫理学の特徴がよく出ている
 代表作3篇を収録。新訳。

『ローマの哲人 セネカの言葉』中野 孝次 講談社学術文庫 2020/7/10

(出版社の紹介文) 人間の一生は短くはかない。だから欲の奴隷から脱し、
 自らを見つめよ―「生」を考え抜いたセネカ(?~六五)の魅力を
 再発見した作家が自ら翻訳し、現代を生きる日本人への箴言集として
 最晩年に書き下ろしたエッセイ。「道徳性が完全に欠落」した日本を
 憂え、ときに苛烈な筆致で叱咤激励する。
 よく生きるためのヒントを凝縮した、新しいセネカ入門書。

 

 ●エピクテトス

元奴隷出身のエピクテトスは、その後哲学者となり、その弟子によって、
現在もその思想が伝えられています。
それが『人生談義(語録)』とその要約である『要録』です。
昨年末から今年年初、『ストア派の哲人たち』の著者である
國方栄二さんによる新訳本が出ました。

ヒルティの『幸福論 第1部』に、
その『要録』の翻訳と注が収録されています。
今まではこちらで読む人が多かったように思います。

今回新訳が出たことで、
手軽に原書にふれることができるようになりました。

いちばん有名だと思うエピクテトスの言葉は、

 《物事のうちで、あるものはわれわれの力の及ぶものであり、
  あるものはわれわれの力の及ばないものである。(略)
  われわれの働きによるものはわれわれの力の及ぶものであるが、
  (略)われわれの働きによらないものは、
  われわれの力の及ばないものである。
  そして、われわれの力の及ぶものは本性上自由であり、
  妨げられも邪魔されもしないが、われわれの力の及ばないものは
  脆弱で隷属的な妨げられるものであり、本来は自分のものではない。》

    『エピクテトス 人生談義 (下)』より『要録』「一」p.360

 

要は、自分の自由な意志を重んじ、
「自分が動かせる部分に力を注げ!」ということです。

自分の力の及ばない、世間の評判とか、あるいは生まれとか育ちとかは、
自分の意志でどうにもならないものですが、
自己の欲望や判断などは自分の力でどうにかすることが可能です。

そういう「自分にできることをやれ」というのです。

 

 《ストイックに生きることは
  諦めてなにもせずにひたすら耐えるようなことではなかった。
  エピクテトスは、人間は自分の前に立ち現れる心像に対して、
  みずからの意志によって自由に行動することができる、
  と考えたのである。》

   『ストア派の哲人たち』「第5章 奴隷の出自を持つ哲人」p.185

 

*参照:弊誌
2013(平成25)年12月31日号(No.119)-131231-  
“今年(2013年)読んだ本・買った本”から
(1)教養編:エピクテトス「語録」「要録」

“今年(2013年)読んだ本・買った本”から (1)教養編
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/12/2013-1-236b.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11739419082.html

『エピクテトス 人生談義 (上)』國方 栄二/訳 岩波文庫 2020/12/17

(出版社紹介文) 「君は私の足を縛るだろう。
 だが、私の意志はゼウスだって支配することはできない」。
 ローマ帝国に生きた奴隷出身の哲人エピクテトスは、
 精神の自由を求め、何ものにも動じない強い生き方を貫いた。
 幸福に生きる条件を真摯に探るストア派哲学者の姿が、
 弟子による筆録から浮かび上がる。
 上巻は『語録』第一・二巻を収録。(全二冊)

『エピクテトス 人生談義 (下)』國方 栄二/訳 岩波文庫 2021/2/18

(出版社紹介文) 「もし君が自分のものでないものを望むならば、
 君自身のものを失うことになる」。(略)
 下巻は『語録』第三・四巻、『要録』等を収録。(全二冊)》

『幸福論 第1部』ヒルティ 草間 平作/訳 岩波文庫 1961/1/1
―スイスの哲学者ヒルティの「幸福」に関する論文・エッセイ集(全三巻)。
 「エピクテトス」という表題で、簡潔にまとめた文を収録。

 

 ●マルクス・アウレリウス

マルクス・アウレリウス(121-180)は、
ローマ帝国最盛期の五賢帝の一人、
哲人皇帝と呼ばれ、その著作『自省録』が知られています。

プラトンは、中期の対話篇『国家』において、理想国家の君主として、
哲学者が王になるか、王が哲学者として「哲人王」となるかという、
哲人王による統治を理想としたといいます。

まさにそういう理想の皇帝の一人といえるでしょう。

『自省録』は、そんな彼が戦闘の合間に、
まさに自省のために書いたもので、
人に読ませるための本ではありません。
それ故に、
我々悩める人が読んでも役に立つような言葉が書かれています。

 

『自省録』マルクス・アウレーリウス 神谷美恵子/訳 岩波文庫 2007/2/16

(出版社の紹介文) 生きているうちに善き人たれ―
 ローマの哲人皇帝マルクス・アウレーリウス(一二一‐一八〇)。
 重責の生のさなか、透徹した内省が紡ぎ出した言葉は、
 古来数知れぬ人々の心の糧となってきた。
 神谷美恵子の清冽な訳文に、新たな注を付す。

 

 ●ベスト3以外のオススメ

◎『書きたい人のためのミステリ入門』新井 久幸 新潮新書 2020/12/17

(出版社の紹介文) 読むと書くとは表裏一体。
 書き手の視点を知れば、ミステリは飛躍的に面白くなる。
 長年、新人賞の下読みを担当し、伊坂幸太郎氏、道尾秀介氏、
 米澤穂信氏らと伴走してきた編集長が、
 ミステリの〈お約束〉を徹底的に解説。
 読むほどにミステリの基礎体力が身につく入門書。

先ほども書きましたが、
謎解きミステリとは何か、その魅力とは? 等、
謎解きミステリの書き方を中心に説明されています。

思わず、ちょっと書いてみたいな、という気にさせます。

また、このジャンルの初心者向け読書ガイドとしても使えます。

 

◎『梅原猛の授業 仏教』梅原猛 朝日文庫 2006/10/1

梅原猛さんが、真言宗の東寺にある真言宗の中学校で一学期間に行った
仏教の授業のようすをまとめた本。

一部の記述にどうかと思われる部分がありますが、
全体を通していいますと、
非常によくできた仏教の歴史、日本の仏教の歴史をまとめた教科書、
と言っていいかと思います。

釈迦が始めた原始仏教から、大乗仏教、日本での受容の歴史、
さらにその発展の歴史、最後に現代におけるおける仏教のあり方まで。

 

 ●私の今年2021年〈リアル系〉ベスト1――岡本太郎

今年のベスト1は、これと決めず、岡本太郎さんの二つの著作
という形にしておきたいと思います。

 

 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡
 
  岡本太郎

 (1)『自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか』
青春出版社・青春文庫<新装版> 2017/12/9

 (2)『対極と爆発 岡本太郎の宇宙1』椹木野衣/編
  ちくま学芸文庫 2011/2/8

 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡

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 ★創刊300号への道のり(9) 2016(平成28)年(9年目)

(前回の2015(平成27)年(8年目)の分で、165号が抜けていました。
 改めてその前後から掲載します。)

164.
2015(平成27)年11月30日号(No.164)-151130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『まれびとこぞりて』コニー・ウィリス」
165.
2015(平成27)年12月15日号(No.165)-151215-
「私の読書論74-私の年間ベスト2015(前編)リアル系
竹内照夫『四書五経入門』」
166.
2015(平成27)年12月31日号(No.166)-151231-
「私の読書論75-私の年間ベスト2015(後編)フィクション系」

-2016-

167.
2016(平成28)年1月15日号(No.167)-160115-
「私の読書論76-本との出会い」
168.
2016(平成28)年1月31日号(No.168)-160131-
「古代中国編―中国の古代思想を読んでみよう(3)易経を読む(前)」
169.
2016(平成28)年2月15日号(No.169)-160215-
「私の読書論77-本の読み方-自分の頭で考える」
170.
2016(平成28)年2月29日号(No.170)-160229-
「古代中国編―中国の古代思想を読んでみよう(4)易経を読む(後)」
171.
2016(平成28)年3月15日号(No.171)-160315-
「私の読書論78-〈「私のおススメ古典○○選」の試み〉2
-「50分の1」の古典への道-」
172.
2016(平成28)年3月31日号(No.172)-160331-
「古代中国編―中国の古代思想を読んでみよう(5)書経を読む」
173.
2016(平成28)年4月15日号(No.173)-160415-
「私の読書論79-〈「私のおススメ古典○○選」の試み〉3
-おススメ古典50選候補その1≪海外・古代・フィクション系F≫」
174.
2016(平成28)年4月30日号(No.174)-160430-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(6)詩経を読む(前編)」
175.
2016(平成28)年5月15日号(No.175)-160515-
「私の読書論80-読書について―我流の読書」
176.
2016(平成28)年5月31日号(No.176)-160531-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(7)詩経を読む(後編)」
177.
2016(平成28)年6月15日号(No.177)-160615-
「私の読書論81-読みやすい本(形式)とは」
178.
2016(平成28)年6月30日号(No.178)-160630-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(8)礼記を読む」
179.
2016(平成28)年7月15日号(No.179)-160715-
「私の読書論82-『礼記』学記篇より-古代中国の学問教育論」
180.
2016(平成28)年7月31日号(No.180)-160731-
「新潮社・角川書店・集英社―3社<夏の文庫>フェア2016から
人間の不思議、人生の深さ」
181.
2016(平成28)年8月15日号(No.181)-160815-
「私の読書論83-文章に書いて考えをまとめる」
182.
2016(平成28)年8月31日号(No.182)-160831-
「2016年岩波文庫フェア-名著名作再発見から―森の生活、論語」
183.
2016(平成28)年9月15日号(No.183)-160915-
「私の読書論84-読書と長生きの関連性 について」
184.
2016(平成28)年9月30日号(No.184)-160930-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(9)『春秋左氏伝』を読む」
185.
2016(平成28)年10月15日号(No.185)-161015-
「私の読書論85-読んでいる書物からその人の人格がわかる」
186.
2016(平成28)年10月31日号(No.186)-161031-「古代中国編―
中国の古代思想を読んでみよう(10)『論語』を読む」
187.
2016(平成28)年11月15日号(No.187)-161115-
「私の読書論86-(本/文章を)書くこと(1)とにかく書いてみる」
188.
2016(平成28)年11月30日号(No.188)-161130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』」
189.
2016(平成28)年12月15日号(No.189)-161215-
「私の読書論87-(本/文章を)書くこと(2)まず最後まで書く」
190.
2016(平成28)年12月31日号(No.190)-161231-
「私の読書論88-私の年間ベスト2016(前編)リアル系」

 ・・・

この年の月末「古典紹介編」は、
古代中国の思想・哲学編に移り、「四書五経を読む」でした。

月半ばの発行号の「私の読書論」では、
読書について、文章を書く行為について等の我流の読書論を展開。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論151-私の年間ベスト3・2021年リアル系(後編)岡本太郎他」をお届けしています。

今回も、全編公開しました。

今回は「後編」で、前回の残りの(2)(3)とベスト3以外のこれというものを紹介しています。

 ・・・

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2021.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-「パーティー族」-楽しい読書307号

 ―第307号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★ 2021(令和3)年11月30日号(No.307)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-
「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
------------------------------------------------------------------
2021(令和3)年11月30日号(No.307)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-
「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 

 今年もはやクリスマス・ストーリーの紹介の季節となりました。

 昨年は古典編で、伝統的なクリスマス・ストーリーらしい
 ハート・ウォーミングな短編でした。

 今年は、現代編で、泥棒を主人公にした犯罪コメディの短編です。

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-クリスマス・ストーリーをあなたに (11)- 2021
  ~ クリスマス・プレゼントは…… 軽妙な犯罪者コメディの短編 ~
   「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク

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 ●過去の ~クリスマス・ストーリーをあなたに~

毎年、この時期恒例の
「クリスマス・ストーリーをあなたに」の11回目です。

最初は、2008年12月のクリスマス号として、超有名なクリスマス物語で、
<クリスマス・ストーリー>というジャンルを定着させた
ディケンズ『クリスマス・キャロル』の紹介でした。

その後は、2011年から毎年11月の末に、
「クリスマス・ストーリーをあなたに」と題して
お気に入りのクリスマス・ストーリーを紹介してきました。

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

2008(平成20)年12月クリスマス号(No.11)-081206-
『クリスマス・キャロル』善意の季節

『クリスマス・キャロル』ディケンズ/著 中川敏/訳 
集英社文庫 1991/11/20
―訳者の解説と木村治美の鑑賞など、資料も豊富。

 

~「クリスマス・ストーリーをあなたに」~

1◆2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節
『あるクリスマス』カポーティ

・『誕生日の子供たち』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳
文春文庫 2009.6.10
―クリスマス短編「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」収録
 「―思い出」はクリスマスの懐かしい、でもちょっと切ない思い出を
 振り返る愛情あふれる物語で、少年に与えられたクリスマスの贈り物、
 「ある―」は逆に、
 少年が与えたクリスマスの贈り物の思い出話といえる抒情的名編

善意の季節『あるクリスマス』カポーティ
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2011/11/post-2b5f.html

2◆2012(平成24)年11月30日号(No.94)-121130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』から

・『ベツレヘムの星』アガサ・クリスティー/著 中村能三/訳
ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003/11/11)
―おススメ短篇「水上バス」を含む、クリスマスにまつわる小説と
 詩を集めた、クリスティーが読者に贈るクリスマス・ブック

クリスマス・ストーリーをあなたに ―第94号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2012/11/post-4575.html
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11415827315.html

3◆2013(平成25)年11月30日号(No.117)-131130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム

・『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム/著
田村隆一/訳 扶桑社エンターテイメント(1994.10.30) [文庫本]
―『オズの魔法使い』の作者ライマン・フランク・ボームの描く
 サンタ・クロースの生涯を描く、サンタさん誕生物語

(新訳版)『サンタクロース少年の冒険』ライマン・フランク・ボーム/著
矢部太郎/イラスト 畔柳和代/訳 新潮文庫 2019/11/28

クリスマス・ストーリーをあなたに~
『サンタクロースの冒険』ボーム
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11713521094.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/11/post-2e56.html

4◆2014(平成26)年11月30日号(No.140)-141130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス」

「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」収録短編集:
・『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス/著 大森望/編訳
早川書房・プラチナ・ファンタジイ(2008.9.25)
―もう一つのクリスマス・ストーリー「ニュースレター」も収録

クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス ―第140号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-11958011368.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2014/11/post-e7fb.html

5◆2015(平成27)年11月30日号(No.164)-151130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『まれびとこぞりて』コニー・ウィリス」

「まれびとこぞりて」収録短編集:
・『混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)』
 コニー・ウィリス/著 大森望/訳 ハヤカワ文庫SF1938 2014.1.25

クリスマス・ストーリーをあなたに―
「まれびとこぞりて」コニー・ウィリス ―第164号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12101006584.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2015/11/post-108a.html

6◆2016(平成28)年11月30日号(No.188)-161130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』」

・『クリスマス・ブックス』ディケンズ/著 ちくま文庫 1991/12
―落語調訳「クリスマス・キャロル」小池滋/訳、
 「鐘の音」松村昌家/訳

・『クリスマス・ブックス』田辺洋子/訳 渓水社 2012
―前期(1843-48)のクリスマス中編5編を収録。「クリスマス・キャロル」
 「鐘の音」「炉端のこおろぎ」「人生の戦い」「憑かれた男」

クリスマス・ストーリーをあなたに~
ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』 ―第188号
「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12224275324.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2016/11/post-2cc0.html

7◆2017(平成29)年11月30日号(No.212)-171130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治」

「クリスマス・プレゼント」収録短編集:
・『有機戦死バイオム』梶尾真治/著 ハヤカワ文庫JA 1989.10

クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治
―第212号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
http://ameblo.jp/lefty-yasuo/entry-12332325526.html
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2017/11/7-eb88.html

8◆2018(平成30)年11月30日号(No.236)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)
『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング」

・『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング/著
ランドルフ・コールデコット/挿絵 齊藤昇/訳 三元社 2016.12.1
―1920年刊『スケッチ・ブック』第5分冊(クリスマス編)を基に、
 コールデコットの挿絵をつけて1876年に刊行された。

クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)
『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング
―第236号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2018/11/8-9bc1.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3a5c8cbafc52eca791e8a99a100b9644

9◆2019(令和元)年11月30日号(No.260)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(9)
『その雪と血を』ジョー・ネスボ」

・『その雪と血を』ジョー・ネスボ/著 鈴木恵/訳
 ハヤカワ・ミステリ文庫 2018/11/20
―ノルウェーを代表するサスペンス作家が描くパルプ・ノワール。
 第8回翻訳ミステリー大賞および第5回読者賞をダブル受賞した。

クリスマス・ストーリーをあなたに(9)『その雪と血を』ジョー・ネスボ
―第260号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2019/11/post-2d509d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e0b43669289d5be0dd6bc01509240c60

10◆2020(令和2)年11月30日号(No.283)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(10)
「ファンダーハーフェン老人の遺言状」メアリー・E・ペン」

・メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」
 Old Vanderhaven's Will(1880)小林晋/訳
  (The Argosy誌1880年12月号掲載)
『ミステリマガジン』2020年1月号(738) 2019/11/25 掲載

クリスマス・ストーリーをあなたに~(10)
「ファンダーハーフェン老人の遺言状」ペン-楽しい読書283号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-b1f27c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/32ad800de583f407aaa4dab7f8b3c849

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

一回毎、一年ごとに【古典編】と【現代編】を交互に紹介してきました。

【古典編】
 チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』『鐘の音』
 ワシントン・アーヴィング『昔なつかしいクリスマス』
 ライマン・フランク・ボーム『サンタクロースの冒険』
メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」

【現代編】
 トルーマン・カポーティ「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」
 アガサ・クリスティー「水上バス」
 コニー・ウィリス「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」「まれびとこぞりて」
 梶尾真治「クリスマス・プレゼント」、ジョー・ネスボ『その雪と血を』

今年は、【現代編】です。

 

 ●ドートマンダー・シリーズの一短編

今回紹介しますのは、

「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク
 Party Animal(Playboy 1993-12)
 初出『ミステリ・マガジン』2009年6月号

・ドナルド・E・ウェストレイク
 『<現代短篇の名手たち3> 泥棒が1ダース』
 木村二郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2009/8/21 収録

です。

211130dorobouga1

(画像:ドナルド・E・ウェストレイクのクリスマス・ストーリー「パーティー族」収録のドナルド・E・ウェストレイクの<泥棒ジョン・ドートマンダー>シリーズの短編集<現代短篇の名手たち3>『泥棒が1ダース』(木村二郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2009/8/21))

この小説の主人公ドートマンダーについて、紹介しておきましょう。

 

 《天才的犯罪プランナーにして職業的窃盗の第一人者
  ジョン・ドートマンダー。彼こそ、難攻不落のターゲットを狙い、
  だれも考えつかないような奇想天外の作戦計画を樹立する
  不世出の大泥棒……のはずなのだ。
  だが、どういうわけかその計画が予定通りに運ぶことはまずない。
  うまく運んでいると思っても、
  必ずや不幸の連鎖が襲いかかってくるのだ。
  泥棒稼業はつらいよ! 世界一不幸な男、
  哀愁の中年泥棒ドートマンダー奮闘記。》

↑の出版社の紹介文にありますように、
主人公は、泥棒を稼業とする中年男性。

第一級の犯罪プランナーでプロフェッショナルの窃盗犯
……のはずなのですが、なぜか予想外の出来事が起こり、
そのためあれやこれやと想定外の奮闘を要求される
という運命を背負っています。
まあ、たいていの場合、最後はなんとか切り抜けるのですが、
肝心の獲物は……、といった哀愁に満ちた人物です。

角川文庫で『ホットロック』で初登場し、その後相次いで
『強盗プロフェッショナル』『ジミー・ザ・キッド』
『悪党たちのジャムセッション』と紹介され、
(ここまでは私もリアルタイムで追いかけて読みました。
 仮設銀行を襲う『強盗プロフェッショナル』が一番面白かった。)

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(画像:初期4長編で一番のお気に入りで、今も手元に残っているドナルド・E・ウェストレイクの<泥棒ジョン・ドートマンダー>シリーズの一冊『強盗プロフェッショナル』(渡辺栄一郎/訳 角川文庫 1975))

その後少し合間をおいて、ハヤカワ文庫に版元を移して、
木村二郎(木村仁良)訳で5作が紹介されました。
(これらはすべて長編小説。)

どれもドートマンダーが仲間たちと計画を立て犯行に及ぶ、
という犯罪物語です。

ところが、予想外の出来事に巻き込まれたりして……、
というコメディに仕上がっています。

で、今回紹介しますのは、
そのドートマンダーの短編シリーズの一編です。

 

 ●ジョン・ドートマンダー・シリーズの短編「パーティー族」

お話は、
クリスマスの日、宝石を泥棒して逃げる途中、
警察に追われ、非常階段の途中で絶体絶命のピンチに陥り、
逃げ場をなくしたドートマンダーが、
10年から25年の刑務所入りを覚悟した時――

 《なんというクリスマス・プレゼントなんだ。》p.159

 

左の肘に、二インチほど開いた窓に出くわします。
窓の向こうには、人気のない部屋の反対側にあるドアから
明るい光が差し込んでいます。

まさに希望の光か。

 

ダブルベッドの上に山積みになったコートの中に自分のコートを置き、
パーティー出席者の話し声がする部屋に入っていきます。

仕出し屋の仏頂面の女性がいます。
予定していたメンバーが来ていないのです。

彼はその助手の代わりになりすまします。
服装がちょうど給仕人ぽかったので、
タオルをエプロン代わりに使い、“変装”します。

女性はきりきり舞いしていたので、
大助かりとばかり彼を受け入れます。

この辺のやりとりは本編でお楽しみください。

そこへ、警察官が踏み込んできます。

 

ここでも警察官とのあれこれがあります。

彼女も“救世主”を手放したくなかったのか、
彼のことを告発しません。
で、なんとか無事に切り抜けます。

いってみれば、
チェスタトンのブラウン神父シリーズの推理小説の
「見えない男」や「奇妙な足音」のトリックのようなもので、
給仕人には、余り注意を持たれないというのでしょうか。

 

しばらくするうちに言い争う声が聞こえてきます。

ドートマンダーは“戦利品”の一部を
パーティー出席者の一人の持ち物に隠しておいたのですが、
それが見つかったようです。

この隙に、彼は逃げ出すことにします。

その前に一つ、
仕出し屋の女性が一人でソーセージを並べているところに立寄り、
一つ残してあった“宝物”
(《羽根の形をしたきわめて素敵な黄金のブローチだ》)
を取り出し、女の背後にまわり、女の束髪のなかに隠します。

 《「何? 何? 何なの?」
  女は何が起こっているのかわからなかったが、
  うしろを向くのが怖かった。/
  「家に着いたら」ドートマンダーが忠告した。
  「きみのボーイフレンドにそれをだしてもらうんだ。
  家に着いてからだぞ」/
  「でも、何なの?」/
  「羽根だよ」彼は的確に言ってから、
  変装に使った皿拭きタオルを外した。
  例のジャケットがなくて残念だ。
  「さてと、煙突から出ていくかな」/
   女は笑った。二人が出会ったときよりも
  ずっと楽しそうな人間になっていた。
  そして、ソーセージをのせたトレイをつかみあげた。
  「トナカイさんたちによろしくね」/
  「言っておくよ」》 pp.187-188

 

ドートマンダーは、ベッドルームには入り、
コートの山から自分のコートを取り、
商売道具と今夜の収穫をポケットに入れ、
ベッドサイドの電話で家で待つ同居人に電話します。

 

 《「おれは少し遅くなるぞ、メイ」/
  「確かに遅いわね」メイが同意した。「警察署?」/
  「いや、パーティー会場にいるんだが」ドートマンダーが言った。
  「これから出るところだ」
  厳密に言うと、非常階段をおりていくのだ。
  「問題が起きたんだが」と説明した。/「もう大丈夫だ」/
  「素敵なパーティーなの?」/
  「食べ物がうまい」ドートマンダーが言った。
  「じゃあ、あとで会おう」》 pp.188-189(おしまい)

 

 ●天の助けか、クリスマスプレゼントか

「クリスマス・プレゼントに欲しいものは何ですか?」
と尋ねられたら、人はどう答えるでしょうか。

仕出し屋の女性の行動から思うのは、
給仕作業の手助けをしてくれたドートマンダーという存在は、
素敵なクリスマス・プレゼントだったということでしょうか。

そして、逃げ場として現れた開いた窓は、
ドートマンダーにとってのクリスマス・プレゼントであり、
そこで現れた女性が彼を受け入れてくれたことは、
こちらもまた天の助けであり、
その返礼が金のブローチとなったのでしょう。

では、この女性にとってはどちらが嬉しかったのでしょうか。
たぶん、○○ですよね、って。

 

 ●お楽しみの小説

ディケンズ『クリスマス・キャロル』に見られるように、
クリスマス・ストーリーにはつきものとされるのが、
精霊や幽霊といった存在、
スーパーナチュラル、超自然現象が見られるものです。

現代編では、そういうものが必ずしも出てこない、
ストレートな小説も多く見られます。

今回の作品もそういう一編です。

超常現象は現れませんが、仕出し屋の女性にとっては、
ドートマンダーの登場はまさに天の助け、
というところだったのでしょう。

そして、ドートマンダーにとっても、
彼女は天使のような存在に思えたことでしょう。

 

クリスマス・シーズンといえば、善意の季節というのが、相場です。

泥棒稼業とは相容れない関係かもしれませんが、
小説の中のお話ということで、ご勘弁願いましょう。

四角四面、杓子定規な善悪判断ではなく、融通無礙な受け止め方で、
大らかにお楽しみとしての読書があってもいいでしょう。

こういうお話があってもいいですよね。

重いテーマに裏打ちされた、
人の生き方や社会のあり方を考えさせる小説ばかりが芸術ではない、
と思います。

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 ★創刊300号への道のり(7) 2014(平成26)年(7年目)

120.
2014(平成26)年1月15日号(No.120)-140115-  
私の読書論-53- 年末年始の本屋さんの思い出から
121.
2014(平成26)年1月31日号(No.121)-140131-  
“今年(2013年)読んだ本・買った本”から (2)娯楽編『時の地図』
号外
2014(平成26)年2月15日号-140215-号外「体調不良のためお休み」
122.
2014(平成26)年2月28日号(No.122)-140228-  
-古代インドの哲学-「ウパニシャッド」
123.
2014(平成26)年3月15日号(No.123)-140315-  
私の読書論-54-「私のおススメの古典から」(1)
-古代の古典から- 古代英雄叙事詩
124.
2014(平成26)年3月31日号(No.124)-140331-  
-古代インドの大叙事詩-『マハーバーラタ』
125.
2014(平成26)年4月15日号(No.125)-140415-  
私の読書論-55-「私のおススメの古典から」(2)著作のない四聖
126.
2014(平成26)年4月30日号(No.126)-140430-「生き方の秘訣
-古代インドの宗教詩編-『バガヴァッド・ギーター』」
127.
2014(平成26)年5月15日号(No.127)-140515-  
私の読書論-56-「私のおススメの古典から」(3)
-人生の教科書-『ミステリ・マガジン』
128.
2014(平成26)年5月31日号(No.128)-140531-
「古代英雄叙事詩『ラーマーヤナ』」
129.
2014(平成26)年6月15日号(No.129)-140615-
「私の読書論-57-「私のおススメの古典から」(4)
-人生の教科書-『ミステリ・マガジン』(2)コラム編」
130.
2014(平成26)年6月30日号(No.130)-140630-
「幸福な生のための“性”典『カーマ・スートラ』」
131.
2014(平成26)年7月15日号(No.131)-140715-
「私の読書論-58-「私のおススメの古典から」(5)
-古典を考える- 岩波文庫フェア 小冊子から」
132.
2014(平成26)年7月31日号(No.132)-140731-
「“もう一度 あの頃の…”思い出の名作
 ―3社<夏の文庫>フェア2014から」
134.
2014(平成26)年8月31日号(No.134)-140831-
「原始仏教:ブッダの教え、ブッダになる教え(1)」
135.
2014(平成26)年9月15日号(No.135)-140915-
「私の読書論-60- -古典を考える-
  岩波文庫フェア 小冊子から(3) 外岡秀俊」
136.
2014(平成26)年9月30日号(No.136)-140930-
「原始仏教(2)原始仏典(1)スッタニパータ(前編)」
137.
2014(平成26)年10月15日号(No.137)-141015-
「私の読書論-61- -古典を考える-
  岩波文庫フェア 小冊子から(4) その他あれこれ」
138.
2014(平成26)年10月31日号(No.138)-141031-
「原始仏教(3)原始仏典(1)スッタニパータ(後編)」
139.
2014(平成26)年11月15日号(No.139)-141115-
「私の読書論-62- -古典を考える-
 入門書としての少年少女名作全集(前編)」
140.
2014(平成26)年11月30日号(No.140)-141130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス」
141.
2014(平成26)年12月15日号(No.141)-141215-
「私の読書論-63- -古典を考える-
 入門書としての少年少女名作全集(後編)」
142.
2014(平成26)年12月31日号(No.142)-141231-
「2014年に読んだ本から(前編)
 フィクション編『マハーバーラタ』」

 ・・・

この年は、月末の「古典紹介編」では、
古代インド編を。神話から原始仏教まで。

月半ばの発行号の「私の読書論」では、
年の前半では「私のおススメの古典から」で、
私の個人的なオススメの古典を紹介していました。

また後半では、「-古典を考える-  岩波文庫フェア 小冊子から」で、
各氏の古典読書についてのご意見を紹介しました。

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本誌では、「クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク」をお届けしています。

今回は、全編公開しました。

本文中でも紹介していますように、過去10編のクリスマスストーリーを紹介してきました。

古典編と現代編をそれぞれ交互に。
で、今年は、現代編として、犯罪コメディの短編を紹介しています。

ドートマンダーさんは、私の好きなキャラクターでもあります。
こういう話も楽しいですよね。

エンタメのお手本の一つではないでしょうか。

コロナ禍の時代に、こういうコメディで現実を忘れるのも、気分転換になりますし、精神安定剤としての役目もあるでしょう。

眉間にしわを寄せて生きるのも一つの生き方ですが、私のように気が弱くて怖がりの人間には、こういうふうにお気楽に過ごすのもありでしょう。

 ・・・

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