私の読書論-わが友フランシス二代目『覚悟』フェリックス・フランシス-楽しい読書397号
古典から始める レフティやすおの楽しい読書
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【別冊 編集後記】
2025(令和7)年10月15日号(vol.18 no.17/No.397)
「私の読書論-わが友フランシス二代目
『覚悟』フェリックス・フランシス 文春文庫」
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2025(令和7)年10月15日号(vol.18 no.17/No.397)
「私の読書論-わが友フランシス二代目
『覚悟』フェリックス・フランシス 文春文庫」
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今回は、五月に発売されました文春文庫の海外ミステリ、
フェリックス・フランシスの『覚悟』を紹介します。
作者フェリックス・フランシスは、父親があの偉大なミステリ作家
ディック・フランシスで、その次男に当たります。
すなわち二代目です。
父親の晩年、父親と共著者として、その名を刻んできました。
父親の死後は、その後継者として、同様の<競馬ミステリ>の作者と
して、10年を超えるキャリアを積み上げています。
彼のX(twitter)によりますと、
"Author of the 'Dick Francis' novels"
(<ディック・フランシス(長編)小説>の作家)とあります。
要するに「ディック・フランシス風の小説」の書き手、
ということでしょうか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
- 私の読書論 -
~ わが友フランシス二代目フェリックス ~
<競馬ミステリ>『覚悟』フェリックス・フランシス 文春文庫
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●<新・競馬シリーズ>
文春文庫5月の新刊として登場したこの作品は、帯に曰く――
《伝説の名シリーズ、復活。
ミステリ史に残る『利腕』『大穴』を嗣ぐ、誇り高き不屈の物語。
英国ヒーローの正統。》
『覚悟』フェリックス・フランシス/著 加賀山 卓朗/訳
文春文庫 フ 37-1 2025/5/8
(Amazonで見る)
がそれ。
(文藝春秋プレスリリース)息子・フェリックス・フランシス『覚悟』
伝説のディック・フランシス〈競馬シリーズ〉が奇跡の再起動!
息子・フェリックス・フランシス『覚悟』、
緑の背表紙で5月8日文春文庫で刊行
(本の話)
2025.05.16 書評
「英国ヒーローの正統、伝説の名シリーズ復活。」加賀山 卓朗
前説でも書きましたように、
英国推理作家協会(CWA)ゴールド・ダガー賞や
アメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀長編賞を受賞した『利腕』、
アメリカ探偵作家クラブ最優秀長編賞を受賞した『罰金』『敵手』、
またミステリ作家としての功績を称える、
CWAダイヤモンド・ダガー賞やMWA巨匠賞を受賞している
「あの偉大なミステリ作家ディック・フランシス」の息子さんです。
そして、協力者であった妻を亡くして以来、筆を折っていたディックの
晩年において父親の復活を助け、共著者の地位を得たのでした。
さらに父親の死後は、〈'Dick Francis' novels〉の後継者と
して、<新・競馬シリーズ>を継承し続けたのです。
彼の単独名義の著書『強襲』は、2011年の本国版に遅れること4年、
2015年に邦訳がなりました。
それまで彼らの邦訳作品を出版していた早川書房の装丁に似せた体裁で、
同じ翻訳者の手によって出版されたのでした。
それ以来、10年――。
ここでついに、この<新・競馬シリーズ>が日本でも翻訳され、
異なる版元である文春文庫でありながら、
かつてのハヤカワミステリ文庫の装丁にそっくりなカタチで、
読めるようになりました。
●名キャラクター、シッド・ハレー登場
次に、出版社の紹介文を掲げておきます。
《落馬事故で左手を失った元騎手シッド・ハレー。
その不屈の意志で競馬界最高の調査員として名を馳せた彼は、
6年前に命がけの仕事から引退し、
現在は妻子とともに平穏な生活を送っていた。
だが競馬界の重鎮スチュアート卿から不正の疑惑のあるレースが
頻発しているという相談を受ける。
調査依頼を固辞したハレーだったが、翌朝、卿は変死を遂げた。
自分は依頼を断るべきではなかったのか――?
スチュワート卿の遺志を継ぎ、
ハレーは卑劣な敵のひそむ闇に敢然と踏む込んでゆく。
だが調査を阻止しようとする敵の魔手は彼の身辺に及ぶ……。
名作『大穴』『利腕』『敵手』『再起』に登場した名キャラクター、
シッド・ハレー登場。
英国スリラーを代表する伝説の名作、〈競馬シリーズ〉。
日本でも著名人や作家はじめ多くの読者に愛された
ディック・フランシスの名シリーズが、
長らく執筆の協力を務めてきたフェリックス・フランシスの手で
よみがえる。〈新・競馬シリーズ〉、ここに始動。》
あの英雄<シッド・ハレー>が主人公、探偵役となる一編で、
フェリックス単独の第3作となります。
シッド・ハレーは、英国のテレビドラマの主人公としても知られます。
早川版のポケミス『大穴』(原著1965)で初登場しました。
落馬事故で左手に重症を負い引退した元騎手で、調査員となった男。
ディック・フランシスは、毎作異なる主人公を立てる人でしたが、
このシッドだけは、その後も『利腕』(先ほども紹介しましたように、
この作品で、イギリスとアメリカのミステリ大賞をダブル受賞。1979)、
『敵手』(1995)、そして復活作『再起』(2006、父子共著の始まり
ともいわれています)と続いています。
父ディックのお気に入りのキャラクターだったのでしょうか、
要所でこの人物を起用していました。
そのキャラクターが息子さんによって復活したのが、この作品です。
●良くも悪くもフランシス印!?
私もこの登場人物を起用した意欲作に大いに興味をそそられて、
買うことにしました。
以前『強襲』を、図書館で見つけて読んだときに感じたのは、
非情によく父親の諸作を研究して、『強襲』の場合は、
彼の単独作としての「処女作」でもありましたので、父親の処女作
『本命』を思い出させるような印象があった、と記憶しています。
そして、この印象的なヒーローの登場となる、彼自身の単独作としては、
三作目という本書『覚悟』です。
お父さんの一連の名作群と比べると、やはりもう一つ、という印象は
否めませんでした。
が、これは高望みというものかも知れません。
お父さんなら、もっと極度に困難な状況を設定し、
そこからの脱出劇を見せてくれたかも、というのは。
●二冊目の<新・競馬シリーズ>
47歳のなった元騎手で元調査員のシッドは、
英国競馬統括機構会長サー・リチャードから調査を依頼されます。
《「できません」私が言った。「絶対に」/
「だが、シッド、やるしかない」/「どうしてです?」/
「健全なレースのために」/よく使われる戦術であった。》p.7
しかし、今の彼は再婚して一人の娘を持つ親として、
危険を伴う仕事から7年前に引退し、
デスクワークで金融取引を生業としています。
ところが、そのサー・リチャードが一見自殺に見える形で死亡します。
シッドが相談した、シッドの前妻の父親であるチャールズは、
彼が自殺するような人間ではないことを知っており、
サー・リチャードの疑惑が現実のことである可能性を否定できない、
と考え、彼に調査を進めることを進言します。
関係者に話を聞く内に、彼に調査を辞めるように、という脅迫の電話が
かかってきます。
警察に通報すると、主任警部が彼に言います。
《「シッド・ハレーに何かしろと言えば言うほど、彼は反対のことを
するとね」ニヤリとした。「脅して遠ざけようとすればするほど、
執拗に迫ってくる」》p.69
こうしてシッドは事件に巻き込まれていきます。
《チャールズが言ったことは正しかったのかもしれない。
[一度探偵になった者は、ずっと探偵だ]([]内傍点)》p.205
よくできたストーリーです。
手慣れたという言葉がピッタリかも知れません。
●<新・競馬シリーズ>始動
この時点では三作目ですが、巻末のリストを見ますと、
コロナ禍の2020年をのぞいて、2011年の『強襲』から
2023年まで毎年、都合13作の新作を発表しています。
このうち、この『覚悟』を含めた三作が、今回文春文庫から
<新・競馬シリーズ>として刊行される予定となっています。
本書の帯の裏の方に、
《競馬シリーズを心から愛する翻訳者と編集者が全力でお届けする
「新・競馬シリーズ」。続々刊行!》
とあり、
《『虎口(仮)』厩舎放火事件に挑む 危機管理専門の若き弁護士
フォスター。(2025年秋予定)
『勝機(仮)』シッド・ハレー再登場。 新・競馬シリーズ中、
話題の傑作。(2026年春予定)》
と、二作が示されています。
これらの売上次第では、次の予定も上がってくるかも知れません。
まず、この新作に期待! です。
なんと、今調べてみますと、
2025年秋の予定だった、2018年作品の“Crisis”が、
『虎口』と仮題のまま、10月の新刊として出ていました。
・・・
『虎口』フェリックス・フランシス/著 加賀山 卓朗/訳
文春文庫 2025/10/7
(Amazonで見る)
●わが友フランシス二代目、フェリックス
「わが友フランシス二代目」についてふれておきましょう。
実は、これ「わが友フランシス」は、青木雨彦さん
(1932年11月17日‐1991年3月2日)という著述家・コラムニストの
『ミステリマガジン』に連載されていたミステリコラム「夜間飛行」の
ディック・フランシスについてのミステリ・エッセイの題名でした。
ダニエル・ロークという『興奮』(日本で最初に翻訳されたディック・
フランシス作品)の主人公に「魅かれた」といい、
《おおげさにいえば、そこに、私の友人と呼ぶにふさわしい男を
発見した。》
というのです。
(『敵手』のハヤカワミステリ文庫版の巻末にある、茶木則雄さんの
「解説」の冒頭に引用されています。)
私も主人公に似ているとはいいませんが、このフランシスの二代目、
1953年生まれのフェリックスさんとはほぼ同年代。
共著時代の訳書に掲載されている写真は、まだまだ若く、
それが今では孫に本書を捧げています、そういうお年頃なのです。
ということで、ちょっと似ているかも、と思いつつ、
長年、お父さんの作品を読んできた者として、
その息子さんも「わが友」といえそうな人物、という気になっています。
まあ、それだけのお話ですけれど、ね。
●復活を言祝ぐ
ちなみに書いておきますと、
私がディック・フランシスのファンになったのは、評判を聞いて
1972年に『興奮』、そして『大穴』を続けて読んだとき。
いっぺんにやられてしまいました。
それ以来、ずっと追いかけてきました。
39作目『勝利』(原著2000)で、途切れたときは、
年齢的にも致し方ないか、と思ったものの、非常に残念でした。
それだけに復活したときの喜びは、
言葉では言い表しがたいものがありました。
そして死後、日本では翻訳が途切れていた間も、
息子さんフェリックスは単独で書き続けていたことを知ったときの
驚きもまた、大きな驚きでした。
残念ながら、一作のみの紹介で終わってしましましたが、
このたび一部の作品が再度<新・競馬シリーズ>として登場したことは、
なにものにも代えがたい喜びです。
これからも「これは」という作品があれば、
ぜひ紹介していただきたいものです。
*参照:
『左利きライフ研究家(本屋の兄ちゃん)レフティやすおのお茶でっせ』
2015.9.23
“わが友フランシス”息子フェリックス単独作『強襲』を読む
・『夜間飛行 ミステリについての独断と偏見』青木雨彦/著 早川書房
1976
(Amazonで見る)
(旧シリーズを概観するガイドブック)
『ミステリマガジン 二〇一〇年六月号
特集ディック・フランシスの弔祭』(早川書房刊)――追悼特集号
(画像:『ミステリマガジン 二〇一〇年六月号 特集ディック・フランシスの弔祭』表紙、特集目次)
【ディック・フランシス作品から<シッド・ハレー>もの】
(筆者の所蔵する本)
『大穴』菊池光/訳 ハヤカワミステリ 1967
・ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-2 競馬シリーズ 1976/4/20
(Amazonで見る)
『利腕』菊池光/訳 早川書房 1981
・ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-18 競馬シリーズ 1985/8/1
(Amazonで見る)
『敵手』ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-35 競馬シリーズ 2000/8/1
(Amazonで見る)
『再起』北野 寿美枝 ハヤカワ・ミステリ文庫 フ 1-41) 文庫 – 2008/11/7
(Amazonで見る)
(画像:<シッド・ハレー>もの(筆者所蔵本)=ディック・フランシス著『大穴』『利腕』『敵手』『再起』、フェリックス・フランシス著『覚悟』)
【フェリックス・フランシス作品】
『強襲』(新・競馬シリーズ) フェリックス・フランシス/著
北野寿美枝/訳 イースト・プレス 2015/1/24
http://www.amazon.co.jp/dp/4781612784/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
(Amazonで見る) https://amzn.to/4nE9LT3
(画像:フェリックス・フランシス/著、新・競馬シリーズ『強襲』『覚悟』『虎口』)
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本誌では、「私の読書論-わが友フランシス二代目『覚悟』フェリックス・フランシス 文春文庫」と題して、今回も全文転載紹介です。
日本では、2015年の『強襲』以来の<新・競馬シリーズ>の翻訳本です。
ディック・フランシスの死後も、期間をおかず、二代目のフェリックス・フランシスさんが書き継いできたのが、「'Dick Francis' novels」でした。
「ディック・フランシス風の小説」とでもいうのでしょうか、それともそのものズバリの「ディック・フランシスの小説」なのでしょうか。
すでに十三作発表しています。
まだ二作しか読んでいませんが、安定の仕上がりです。
早くも、新刊が出ています。手に入れました。
次作の予定も上がっています。
今度はまた<シッド・ハレー>ものとのこと。
大いに期待しています。
装丁を似せているのが、違う版元ながらファンを思う気持ちが伝わってきます。
早川さんも<シッド・ハレー>ものだけでも重版してもらえないものでしょうか。
新しいファンのためにも。
・・・
*本誌のお申し込み等は、下↓から
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