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2025.08.31

<夏の文庫>フェア2025から(3)新潮文庫・『ボッコちゃん』星新一-楽しい読書394号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)


【最新号】


 


2025(令和7)年8月31日号(vol.18 no.14/No.394)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(3)新潮文庫・
『ボッコちゃん』星新一~いのち輝く未来社会は?~」


 


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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和7)年8月31日号(vol.18 no.14/No.394)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(3)新潮文庫・
『ボッコちゃん』星新一~いのち輝く未来社会は?~」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2025から――。


 今年も、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。
 今回は最終回となります。


 今年のテーマは、大阪関西万博の年ということで、
 「大阪」もしくは、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」
 ということで、大阪ものの小説や「いのち」に絡んだ作品を紹介して
 きました。
 三本目の今回は、未来社会ということで、星新一さんのSF系の
 ショートショート集『ボッコちゃん』を取り上げます。


 


角川文庫夏フェア2025 | カドブン
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/


ナツイチ2025 広くて深い、言葉の海へ| web 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2025 | 集英社文庫
https://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/


新潮文庫の100冊 2025
https://100satsu.com/


2025-natubunko-sansha


 


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 ◆ 2025年テーマ:<大阪関西万博2025> ◆


  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(3)


  ~ いのち輝く未来社会は? ~
  新潮文庫―『ボッコちゃん』星新一
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●新潮文庫の100冊 2025


新潮文庫の100冊 2025
https://100satsu.com/


今回も対象書目100冊から、気になる本、既読書目を上げておきます。


 


▼シビレル本(20冊)


ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディみかこ
ようこそ地球さん 星新一
砂の女 安部公房
変身 フランツ・カフカ/著 高橋義孝/訳
梟の城 司馬遼太郎
老人と海 ヘミングウェイ/著
シャーロック・ホームズの冒険 コナン・ドイル/著 延原謙/訳
百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス/著 鼓直/訳


 


▼愛する本(19冊)


塩狩峠 三浦綾子
雪国 川端康成
こころ 夏目漱石
きらきらひかる 江國香織
月と六ペンス サマセット・モーム/著 金原瑞人/訳
吾輩も猫である 赤川次郎/著 、新井素子/著 、石田衣良/著 、
 荻原浩/著 、恩田陸/著 、原田マハ/著 、村山由佳/著 、
 山内マリコ/著
春琴抄 谷崎潤一郎
博士の愛した数式 小川洋子


 


▼考える本(20冊)


罪と罰〔上〕ドストエフスキー/著 工藤精一郎/訳
罪と罰〔下〕ドストエフスキー/著 工藤精一郎/訳
注文の多い料理店 宮沢賢治
沈黙 遠藤周作
車輪の下 ヘッセ/著 高橋健二/訳
ボッコちゃん 星新一
金閣寺 三島由紀夫
センス・オブ・ワンダー レイチェル・カーソン/著 上遠恵子/訳
星の王子さま サン=テグジュペリ/著 河野万里子/訳


 


▼泣ける本(22冊)


新編 銀河鉄道の夜 宮沢賢治
蜘蛛の糸・杜子春 芥川龍之介
小泉八雲集 小泉八雲/著 上田和夫/訳
キッチン 吉本ばなな
ハムレット ウィリアム・シェイクスピア/著 福田恆存/訳
オズの魔法使い ライマン・フランク・ボーム/著 河野万里子/訳


 


▼ヤバイ本(19冊)


ロリータ ウラジーミル・ナボコフ/著 若島正/訳
インスマスの影―クトゥルー神話傑作選― H・P・ラヴクラフト/著
南條竹則/編訳
江戸川乱歩名作選 江戸川乱歩
人間失格 太宰治
異邦人 カミュ/著 窪田啓作/訳
遠野物語 柳田国男


 


結構既読があるようです。
昔に読んだっきりのも含めて、ですが。


 


 ●『ボッコちゃん』星新一


今回は、大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会」から、
未来社会を描いた作品が多い、SF系のショートショート集である、
星新一さんの最初の文庫本である『ボッコちゃん』を取り上げましょう。


この作品を初めて読んだのは、もう何十年も前のことです。
この本が出た頃ですから、初版が昭和46年ですので、高校二年ぐらい。


「あとがき」によりますと、この本は星さんの自薦作品集で、
初めての文庫本で、新潮社から出版された二冊の本『人造美人』
『ようこそ地球さん』と他社の本の中から
主に初期の短い“ショートショート”作品を、
それもバラエティを多くするように収録した、といいます。


ミステリーもあれば、SFもあれば、ファンタジーも、寓話がかったもの、
童話めいたものも。すべて、星さんの関心のある分野だそうです。


星さんは、旧著であっても、時代によって古びることのないように、
常に文章の表現を見直し、手直しをしていたそうです。
たとえば、「電話のダイアルを回して」のような文章があれば、
「ダイアル」というものが時代に合わない表現ですので、書き改める――
といったように。


『ボッコちゃん』星新一 新潮文庫 1971/5/25
(Amazonで見る)


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 ●表題作「ボッコちゃん」


表題作の「ボッコちゃん」は、
単行本になった時は『人造人間』(昭和36年)という表題でしたが、
「ボッコちゃん」のタイトルの方が星さんは好きといいますか、
お気に入りだったそうです。


前年に発売された「ダッコちゃん」という名の女の子のビニール製の
お人形がありました。
大人気を博したもので、貧乏だった我が家にもありました。
それと紛らわしいということで、『人造人間』になったといいます。


ダッコちゃん、ボッコちゃん、ね!
本当のところは、ロボットの人形だから「ボッコちゃん」。


この作品が完成して、星さんは、作家としてやっていける、
という感触を持つことができた、といいます。


 《「書き終わった時、内心で『これだ』と叫んだ。
   自己を発見したような気分であった。大げさな形容をすれば、
   能力を神からさずかったという感じである」
  (「星くずのかご」No.1)》『星新一 空想工房へようこそ』
    最相葉月/監修 新潮社 とんぼの本 2007/11/1
    「最相葉月column(2)」より


 《「これは自分でも気に入っており、そのごのショート・ショートの
   原型でもある。自己にふさわしい作風を発見した。自分では
   この作を、すべての出発点と思っている。私の今日あるは
   『ボッコちゃん』のおかげである」(『気まぐれ博物誌・続』)》
   同上「最相葉月column(2)」より


 《星さんの口から聞いたことですが、先生が一番お好きな作品は、
  「ボッコちゃん」とのことでした。(略)》
   同上・「chapter4 エス氏のDNA/ショートショートの遺伝子
   江坂遊」<考察一>より


*参照:
『星新一 空想工房へようこそ』最相葉月/監修 新潮社 とんぼの本
2007/11/1
(Amazonで見る)


 


これが、のちのショートショートの神様? を生み出すきっかけとなった
名作の生まれた瞬間だったようです。


ぜひ、その記念碑的作品を味わってみましょう。


 ・・・


「ボッコちゃん」は、バーのマスターが自作したロボットでした。
歩いたりはできないので、カウンターのなかで、
お客さんの相手をするだけ。


でも、そっけない対応しかできず、ただただ酒を飲むだけ。
(「お世辞をいわない女のロボット」というキャラクター像が最初から
 設定されていた、と思われるそうです。)


何とかものにしたいと思った青年客、あまりにも対応がひどいので、
ついにボッコちゃんにすすめる酒に毒を入れて飲ませます。


マスターは、ボッコちゃんの飲んだお酒を……。


 


 ●集中一番、世界でも一番の名作「おーい でてこーい」


本作品中でオチまで覚えているのは、集中一番の名作だと思っている
「おーい でてこーい」です。


「おーい でてこーい」は、今まで読んだショートショートのなかでも、
いえ、他の作家さんの作品も含めて、長編も含めた全小説作品中でも、
文句なしに一番だと思っている作品です。


なんというのでしょうか、スケール感といいますか、
まさに底なしの恐ろしいオチの作品でした。


 


 ●完全殺人もの「殺し屋ですのよ」


当時二番目?! にすごいと思ったのが、「殺し屋ですのよ」でしょうか。


完全殺人もののミステリーの傑作でしょう。
思いつけば、簡単なネタですが、思いつくまでが大変、という
完全トリックです。


なかでもこの登場人物とお話の進め方、というのでしょうか。
その辺の組み合わせで読ませる作品でしょう。
タイトルの「~ですのよ」が、良い味を出しています。


 


 ●輝ける未来? のかずかす「生活維持省」「ゆきとどいた生活」


「生活維持省」――理想的な生活を維持するために、
どうしても避けられないものは? という作品。
本来なら、もっと恐ろしいお話になっても良いはずなのですが、
穏やかな心清々しいような結末です。


お役人さん自身がこういう事態に出くわしたとき、
こんな風に反応できる人は、単に洗脳された結果なのか、
それとも、そこまで社会の在り方が成熟していれば、
人は素直にそういう状況にさも悟りきったような反応ができる、
ということなのか、どうなのでしょう。


「ゆきとどいた生活」――すべて機械が準備してくれる生活、
自分はその場にいるだけで良いのですが……。


こっちは、もっと単純で皮肉な結末を描いています。


 


 ●発明家の落ちた落とし穴「冬来たりなば」


SFによくあるテーマの異星人とのファースト・コンタクトものも、
この短編集にもいくつかありますが、
これは商業主義と発明家の経済不案内ぶりが面白いところでした。


いかにも叙情的なタイトルとのギャップが皮肉な一編です。
来春の支払いの約束をして、商品を置いてゆくのですが……。


 


 ●悪魔や魔法使いの願い事もの「悪魔」


悪魔や魔法使いの願い事ものというテーマの作品があります。
冒頭の一編がそんなひとつで、「悪魔」。


凍った池の氷を割り、魚釣りをしている男。
一つの壺を拾い上げます。そこから出てきたのは、悪魔。
助けてもらったお礼に何でも欲しいものを出してやる、といいます。
欲張りな男は、金貨を求めます。
そして、際限なく欲望を膨らませた結果は……。


 


 ●一番の叙情作?「月の光」


こんな風に書いてゆきますと、切りがありませんので、
最後に一編、今回気に入った作品を一つ紹介しておわりとしましょう。


集中一番の叙情的な作品といっても良いかもしれないと思った作品です。


60歳近い品の良い老人は愛するペットを飼っています。
その子は15歳の混血の少女。
15年前生まれたばかりのこの子を貰い、
それ以来言葉を使わず育ててきました。
餌は必ず自分が与え、召使いを部屋にも入らせなかったのです。


 《このペットの美しいからだのなかには、愛情ばかりがいっぱいに
  つまっている。そして、それ以外のものはなにもない。この静かな
  部屋のなかにも、世の中のみにくいことは、なにひとつしみ込んで
  いないのだ。》p.45


 《甘い、夢のような夜。だが、彼はこれを、あらゆる遊びを断った
  十数年をつぎ込んで得たのだ。その忍耐と努力を思えば、決して
  不当なものと呼ぶことはできない。》p.46


召使いは70過ぎの老人のみで、飼い主がすべての世話をしていました。
あるとき、その飼い主の老人が自動車事故に遭い、重態で、
「餌をやらないと」といっていた、と病院から連絡が来ます。
召使いは、初めて餌をやろうと部屋に入ります。
ペットは怖がって隠れます。
餌を置いておいても食べず、いつしか弱ってゆくペット。
そして、飼い主の死、どう伝えたらいいのだろうか、と悩む召使い。
しかし……。


理想的な生活がちょっとしたことで崩壊する、というパターンです。
人権的にどうか、というところですが、
まあ、その辺はおとぎ話ということで。


美しくも悲しい物語、というところでした。


 


 ●新たなる未来につながる第一歩「最後の地球人」


いよいよラストの一編を紹介しましょう。
人口爆発に悩む地球人。
人間の生活スペース確保のためにすべての生物も犠牲にし、
食料も人工のものにとって代わり、それでも限界に達し……。
しかしいつしか人口が減り始め、人間の時代も終わろうとします。
最後に残った男女に一人の子が生まれ、保育器のなかで育てられます。
ついに最後の女が死に男も死を迎えます。
残ったのは保育器の中の子供だけ、その子は男でも女でもなかった。


 《(略)一人しかいない人間にとって、一つしかない生物にとって、
  性の区別など意味がなかった。(略)》


薄暗い保育器の中で、その子は声を上げたのです。
その瞬間からすべて――新たな未来が始まるのでした。


実に印象的な作品です。
まさにこの作品集50作を締めくくるにふさわしい内容の一編でした。


 


 ●まとめ


昔はどういう読み方をしていたのか、という気がしてきました。
覚えている作品が、「おーい でてこーい」と「殺し屋ですのよ」ぐらい
ですので、その印象からいいますと、ミステリー的なものの方が、
SFSFした作品よりも、グッときたのではないか、と考えられます。


SFショートショートは、結構読んでいたような気がします。
創元SF文庫のフレドリック・ブラウンのような作品など。


ミステリー的なショートショートでは、
ヘンリー・スレッサーの「走れ、ウィリー」が一番だ、
という印象があります。


*参照:
『ミステリマガジン(Hayakawa's Mystery Magazine)』1970年11月号
(No.175) 掲載
「走れ、ウィリー」 Run, Willie, Run ヘンリー・スレッサー
『世界ショートショート傑作選(1)』各務三郎編 講談社文庫 1978/11/15


(Amazonで見る)


 


ということで、今回改めて何十年ぶりかで再読して、
「小学生から読める本」としても知られる
星新一さんのショートショート集は、やはり偉大だという気がしました。


かなり読んできた人には、ちょっと古くさく感じられる部分もあります。
しかし、新鮮な驚きもある作品集だと実感しました。
もう一度、1000編もあるという、星作品を楽しんでみたいものです。


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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2025から(3)新潮文庫・『ボッコちゃん』星新一~いのち輝く未来社会は?~」と題して、今回も全文転載紹介です。


いよいよ2025年の新潮・角川・集英社<夏の文庫フェア>も、最終回となりました。
何十年かの久しぶりの再読です。
やっぱりおもしろいのが星さんのショートショートです。
人生のことも少しは分かるようになって、少しは読み方も変わるかと思いましたが、昔の記憶がなくなっているので、まったく新しい作品にふれたような印象でした。
ほんの一部の作品だけは記憶にありましたが、これら作品は、今回読んでもやはり「すごい!」ものでした。


また、星さんの作品をポツポツとでも読んでみようかという気持ちになりました。
まだ、1000編もあるというので、当分読むものに困ることなさそうです。
いや、それ以前に自分にその時間があるのかな、という感じですね、ハイ。


 ・・・


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2025.08.24

『NHK100分de名著』152「人間の大地」サン=テグジュペリ2025年8月放送中

本当に久しぶりに『NHK100分de名著』を見てみました。
まだ二回目と三回目をみただけですが。

久しぶりに本屋さんへ行くと、『NHK100分de名著』「人間の大地」サン=テグジュペリ のテキストがありました。
実は、岩波文庫から5月の新刊として、この放送の【指南役】野崎歓さんの翻訳本を見つけて買っていたのでした。
いつかそのうちどこかで書こうと思っていたのですが、チャンスのないまま日が経ってしまっていました。

せっかくの好機ですので、ちょっと書いてみましょう。

『NHK100分de名著』の初期には、私の好みのよく読むような名著が多く取り上げられたこともあり、結構このブログで紹介してきました。
最終は、

2022.5.31
私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』―<NHK100de名著>から-楽しい読書319号

以来です。
で、その前はといいますと、

2017.11.06
努力で幸福になれる―ラッセル「幸福論」NHK100分de名著2017年11月

になります。

カテゴリ:「NHK100分de名著」(41本)

 ・・・

NHK 名著152「人間の大地」サン=テグジュペリ(公開:2025年7月28日(月)午後8:36

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永遠のベストセラー「星の王子さま」の作者サン=テグジュペリ(1900– 1944)。彼にはもう一冊の代表作がある。「人間の大地」。航空産業の黎明期だった20世紀前半、飛行機の操縦士でもあった彼が、その経験をもとに、時期も場所も異なる8つのエピソードに託して、人間の行動の本質と、人間同士の絆の大切さを描いた、自伝的な作品である。人類が初めて体感した飛行体験と、それがもたらしたものを鮮やかに描く「人間の大地」から、「職業を通じて培われる責任と友情」「はるか天空から眺めたとき人間世界はどう見えてくるのか?」「過酷な環境が炙り出す人間の本質とは?」といったさまざまなテーマを読み解いていく。
 1932年以来、折に触れて新聞や雑誌にエッセイやルポルタージュを発表してきたサン=テグジュペリ。事故で大きな負傷をして静養を余儀なくされた期間に、それらの文章の再利用について構想し始めた。その際に彼の頭をよぎったのが文豪アンドレ・ジッドの助言だった。「一続きの物語」ではなく、「花束」「穀物の束」のような作品を創ったらどうだろうか……その言葉からインスピレーションを得たサン=テグジュペリは、過去の文章に徹底的に加筆修正を加え、何度も並べ替えながら吟味していくことで、「人間の大地」を完成させていった。その結果、自伝、小説、エッセイ、哲学、寓話、箴言集といった既存のあらゆるジャンルにおさまりきらない、文学史上類例のない形式の傑作となったのである。
 「人間の大地」の新訳を手掛けたフランス文学者の野崎歓さんは、この作品が単なるノンフィクションにはおさまらない文学的、思想的な魅力に溢れているという。近代文明の中で窒息しそうになっている「人間」を再び探し、「人間」を甦らせ、目覚めさせるための「人間探究の書」として描かれたものであり、厳しい状況の中に生きている現代人にこそ読んでほしい作品だというのだ。野崎歓さんに名著「人間の大地」を新しい視点から読み解いてもらい、サン=テグジュペリの稀有な体験を一緒に味わいながら、さまざまな知恵や豊かな生き方を学んでいく。
 【MC】伊集院光/安部みちこアナウンサー

 

サン=テグジュペリ“人間の大地” (1)飛行機乗りの仲間たち
初回放送日:2025年8月4日
【指南役】野崎歓…放送大学教授。フランス文学者。
【朗読】山口馬木也(俳優)【語り】目黒泉

航空産業の黎明期、人類は、これまで体験したことがない視点や感情をもつに至った。まだエンジンなどの技術も不安定な時代、常に死の危険と隣り合わせだったプロフェッショナルの操縦士たちが頼れるのは、かすかな予兆を感じとる研ぎ澄まされた感覚と、互いに支えあう仲間たちの絆だけ。それを裏打ちするのは、「人間であること、それはまさしく責任をもつことだ」という言葉の象徴されるプロフェッショナルたちならではの倫理だった。第一回は、黎明期の航空産業で働くプロフェッショナルたちの行動のドキュメントから、「責任とは?」「友情とは?」「人間同士の絆とは?」といった普遍的なテーマを考えていく。

サン=テグジュペリ“人間の大地” (2)惑星視点で見る
初回放送日:2025年8月11日(月)

飛行という体験によってもたらされた、大地を「惑星」としてみる視点。サン=テグジュペリは、その視点から、人間の営みのかけがえのなさを鮮やかに描き出す。星空へ落下していくような、めまいと重力の体験をもたらす夜間飛行は、宇宙との交感ともいうべき壮大なスケールの体験だが、それと鮮烈なコントラストをなす、家々に灯る小さな灯火を彼は見逃さない。広大な荒れ野の中にわずかばかり広がる人間の生存圏、日常の中で毎日清潔なシーツを用意してくれる老女の営み……宇宙的スケールの体験は、むしろ人間のささやかな営みの大切さを照らしだしてくれるのだ。第二回は、惑星視点から世界を眺めることで浮かび上がる、人間の営みのかけがえのなさ、尊さに迫っていく。

サン=テグジュペリ“人間の大地” (3)砂漠に落っこちる
【放送時間】2025年8月18日(月) 午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】 2025年8月22日(金) 午後3時5分~午後3時29分/Eテレ

砂漠のど真ん中にある、航路の中継基地「キャップ=ジュピー」の過酷な環境がサン=テグジュペリの思想を鍛えた。「サハラ、それが姿を現すのはわれわれの内側においてである」との言葉が示す通り、砂漠では、時間が明晰な身体感覚として立ち現れ、大きな変化につながるわずかな自然の予兆を鮮烈な感覚として受け取るようになる。極めつけは、機関士プレヴォとともにした苛烈な遭難体験だ。飢えと渇きがもたらす極限状況では、すべてをはぎ取られた「いのちのかたまり」ともいうべき人間の本質が浮かび上がっていく。第三回は、砂漠という過酷な環境が炙り出す、人間の本源的な姿を明らかにしていく。

第4回 人間よ、目覚めよ!
【放送時間】2025年8月25日(月) 午後10時25分~10時50分/Eテレ
【再放送】 2025年8月29日(金) 午後3時5分~午後3時29分/Eテレ

軍靴の音が響き始める第二次世界大戦前夜、生と死のはざまにあった人々の姿も、サン=テグジュペリは活写する。出撃前にかすかな笑顔をみせるスペイン内戦に従軍した兵士の姿、三等列車で移送される粘土のように疲れ切った移民の群れ、その中で唯一輝く存在だった子ども。人間性を踏みにじる過酷な状況を「モーツァルトの虐殺」と呼ぶ彼は、どんなに目立たないことであっても、自分の役割を自覚することで人間は幸福になれると考え、「愛するとは互いに見つめあうことではない。一緒に同じ方向を見つめることだ」という言葉を刻み込む。「絆」、そして「精神の息吹きを通わせること」だけが、人間を再び創造することになるというのだ。第四回は、生と死のはざまにあって、なお、朽ちずに輝きわたる人間の尊厳や絆について考える。

NHKテキスト ▼
100分de名著 サン=テグジュペリ『人間の大地』 2025年8月 [講師] 野崎 歓
定価:700円(本体636円)2025年07月26日 発売
(Amazonで見る)

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 ・・・

サン=テグジュペリは、私の好きな作家の一人で、最初の出会いは、たぶん中学1年の国語の教科書に出ていた『星の王子さま』の冒頭の大蛇がゾウを飲み込んだ絵の部分でした。

こちらの情報から見て、まず間違いないところでしょう。

飛行機の本#1 星の王子さま(サン・テグジュペリ) - note

2020/06/16 ... 確か、光村図書の教科書だったと思う。「星の王子さま」冒頭部分の抜粋だ。今から50年以上前のことなので定かでないことが多いが、二つの ...

 

私はここから「大人はわかってくれない」という教訓?を得たものでした。

それ以来気になっていたのですが、当時はどこから出ているどういう本のなのかよくわかっていませんでした。
のちに、岩波少年文庫版『星の王子さま』のことを知りました。
でも、当時私の近くの本屋さんで見ることはありませんでした。
置いていたかも知れませんが見つけられませんでした。
今と違って、当時は版権の都合で岩波少年文庫版の『星の王子さま』しかありませんでした(愛蔵版という挿絵がオールカラーの本もありましたが)。
で、街中に出たときに買いました。すでに二十歳ぐらいになっていました。

サン=テグジュペリについては、高校生になって文庫本をあれこれ読むようになってから、新潮文庫から堀口大學訳『夜間飛行』『人間の大地』『戦う操縦士』という三冊の本が出ていることを知りました(いつの間にか『戦う操縦士』は消えてしまいましたが)。
そして図書館の存在を知り、そこで先の二つの本を借りて読むようになりました。
その後、みすず書房版の『サン=テグジュペリ・コレクション』(山崎 庸一郎 /訳)の本をいくつか読みました。
さらに、光文社古典新訳文庫から出た、『夜間飛行』『人間の大地』(この二つは新訳がいいと思いました、堀口訳が悪いというのではなく、やはり時代色というものを感じてしまうので)そして『戦う操縦士』(これは買いました)を読みました。

 ・・・

『人間の大地』アメリカ版には、別に一章追加されていることも知りました。
残念ながら文庫本には収録されていません(元々なかったものなのだから、ということなのでしょうか?)。

今私の手元にある『人間の大地(人間の土地)』は、新潮文庫版堀口大學訳『人間の土地』と、この5月に出た、この「100分de名著」の講師役の野崎歓さん訳の岩波文庫版です。

さて作品の詳細は、この放送を最後まで聞いて、この新訳本を読み終えてから、その感想を私の読書メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』(まぐまぐ!)の9月15日号で書いてみたいと思います。
お楽しみに!

ここでは、この新訳本をペラペラ見ていて、気になった個所を引用して、一言触れるだけにしておきます。

一つ目は、

そのときから、惑星のあいだで宇宙空間をさまよっているような気分になった。近づくことのできない百もの星々のただなかで、唯一の本当の星、われわれの星、なじみのある風景や大切な家や愛情がそこにだけ保たれている、ただ一つの星を求めて飛び続けた。/ただ一つの星、そこには……。(略)》野崎歓訳・岩波文庫版『人間の大地』p.157
そのとき以来、ぼくらは、百の遊星のあいだに、ただ一つまことの遊星、ぼくらの遊星、ぼくらの目に慣れた親しい風景、ぼくらになつかしい家々、ぼくらの愛情をいだいている、その遊星をたずねて、道に迷ってしまったと、しみじみ感じだすのであった。/あれ(傍点―引用者注)をいだいているただ一つの遊星……。》堀口大學訳/新潮文庫版『人間の土地』p.31

二つ目は、

なぜ憎みあうのか? 同じ惑星によって運ばれ、同じ船の乗組員であるわれわれは運命をともにしている。諸文明が対立しあうのは、新たな統合を促すためならばよしとしても、互いをむさぼり食らうなど言語道断だ。》野崎歓訳・岩波文庫版『人間の大地』p.370
なぜ憎みあうのか? ぼくらは同じ地球によって運ばれる連帯責任者だ。同じ船の乗組員だ。新しい総合を生み出すために、各種の文化が対立することかもしれないが、これがおたがいに憎みあうにいたっては言語道断だ。》堀口大學訳/新潮文庫版『人間の土地』p.251

空から見つめるこの地上は、一つの星として彼には見えるようです。
それは、まさにタイトルの『人間の大地』。

私はフランス語は分かりませんが、私なりに翻訳――解釈すると、『(私たち)人間の星<地球>』といったところでしょうか。

*参照:
『夜間飛行・人間の大地』サン=テグジュペリ/著 野崎 歓/訳 岩波文庫 赤N516-2 2025/5/19
(Amazonで見る) ――『星の王子さま』の新訳本『ちいさな王子』の訳者でもあるフランス文学者でこの番組の指南役でもある野崎さんの手になる、代表作二作『夜間飛行』と『人間の大地』の黄金のカップリング新訳本。

『人間の土地』サン=テグジュペリ/著 堀口 大学/訳 新潮文庫 1955/4/12
(Amazonで見る) ――名訳で知られる堀口大學さんの訳書。ただ訳語や言葉の言い回しにどうしても時代色が感じられます。宮崎駿さんの解説とカバー・挿絵が楽しめます。

250804-ningen-no-daiti

 

『ちいさな王子』サン=テグジュペリ/著 野崎 歓/訳 光文社古典新訳文庫 2006/9/7
(Amazonで見る)

 

[2025.10.6 追記]
*参照:
古典から始める レフティやすおの楽しい読書
(まぐまぐ!)

・2025(令和7)年9月30日号(vol.18 no.16/No.396)
「私の読書論-岩波文庫『夜間飛行・人間の大地』サン=テグジュペリ
から(2)『人間の大地』」
【別冊 編集後記】
『左利きライフ研究家(元本屋の兄ちゃん)レフティやすおのお茶でっせ』2025.9.30
私の読書論-岩波文庫『夜間飛行・人間の大地』サン=テグジュペリ(2)-楽しい読書396号

・2025(令和7)年9月15日号(vol.18 no.15/No.395)
「私の読書論-岩波文庫『夜間飛行・人間の大地』サン=テグジュペリ
から(1)『夜間飛行』」
【別冊 編集後記】
『左利きライフ研究家(元本屋の兄ちゃん)レフティやすおのお茶でっせ』2025.9.15
私の読書論-岩波文庫『夜間飛行・人間の大地』サン=テグジュペリ(1)-楽しい読書395号 

 ・・・

*NHKテレビ「100分 de 名著」の記事:
1 2011年11月放送:2011.10.31
アラン『幸福論』喜びは、行動とともにある!
2 2011年12月放送:2011.12.6
宮沢賢治『銀河鉄道の夜』悲しみを、乗り越えよ-「100分 de 名著」NHK
3 2012年1月放送:2012.1.5
吉田兼好『徒然草』両面から物事を見よ!-「100分 de 名著」NHK
4 2012年2月放送:2012.1.29
新渡戸稲造『武士道』日本的思考の根源を見る-「100分 de 名著」NHK
5 2012年3月放送:2012.3.6
仏教は「心の病院」である!NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』2012年3月
6 同:2012.4.2
NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで
7 2012年4月放送:2012.4.3
紫式部『源氏物語』NHKテレビ100分de名著
8 2012年5月放送:2012.5.2
確かな場所など、どこにもない―100分 de 名著 カフカ『変身』2012年5月
9 2012年6月放送:2012.6.6
<考える葦>パスカル『パンセ』NHK100分 de 名著2012年6月
10 2012年10月放送:2012.10.2
鴨長明『方丈記』NHK100分 de 名著2012年10月
11 2012年12月放送:2012.12.5
<心で見る努力>サン=テグジュペリ『星の王子さま』NHK100分de名著2012年12月
12 2013年1月放送:2013.1.11
呪文に頼るのもよし?~100分de名著『般若心経』2013年1月
13 2013年2月放送:2013.2.5
待て、そして希望せよ~NHK100分de名著『モンテクリスト伯』2013年2月
14 2013年3月放送:2013.3.28
どんな時も、人生には、意味がある。フランクル『夜と霧』~NHK100分de名著2013年3月(再放送)
15 2013年4月放送:2013.4.11
真面目な私とあなた―夏目漱石『こころ』~NHK100分de名著2013年4月
16 2013年5月放送:2013.5.20
水のように生きる『老子』NHK100分de名著2013年5月
17 2013年6月放送:2013.6.5
生きる喜びは、どこにあるのか?『戦争と平和』トルストイ~NHK100分de名著2013年6月
18 2013年7月放送:2013.7.9
哲学とは、愛である『饗宴』プラトン~NHK100分de名著2013年7月
19 2013年11月放送:2013.11.10
「物語」に終わりはない『アラビアンナイト』~NHK100分de名著2013年11月
20 2013年12月放送:2013.12.11

切り離された者たちへ~ドストエフスキー『罪と罰』~NHK100分de名著2013年12月
21 2014年1月放送:2014.1.21
花とは何か~『風姿花伝』世阿弥~NHK100分de名著2014年1月
22 2014年3月放送:2014.3.4
戦わずして勝つ『孫子』~NHK100分de名著2014年3月
23 2014年6月放送:2014.6.1
目前の出来事・現在の事実『遠野物語』NHK100分de名著2014年6月
24 2014年12月放送:2014.12.3
生きるべきか、死ぬべきか-シェイクスピア『ハムレット』~NHK100分de名著2014年12月
25 2015年4月放送:2015.3.29
自分を救えるのは自分自身である-NHK100分de名著『ブッダ 最期のことば』2015年4月
26 2015年5月放送:2015.5.5
何もないことを遊ぶ『荘子』-NHK100分de名著2015年5月
27 2015年6月放送:2015.6.2
運命と人間―ギリシア悲劇/ソポクレス「オイディプス王」NHK100分de名著2015年6月
28 2015年7月放送:2015.6.30
ラフカディオ・ハーン/小泉八雲『日本の面影』NHK100分de名著2015年7月
29 2015年8月放送:2015.8.5
自然淘汰による進化「生命の樹」-ダーウィン『種の起源』NHK100分de名著2015年8月
30 2015年9月放送:2015.9.1
恋と革命~太陽のように生きる-太宰治『斜陽』NHK100分de名著2015年9月
31 2015年10月放送:2015.10.7

処世訓の最高傑作「菜根譚」NHK100分de名著2015年10月
32 2016年1月放送:2016.1.4
真面目なる生涯~内村鑑三『代表的日本人』NHK100分de名著2016年1月
33 2016年4月放送:2016.4.4

弱者(悪人)こそ救われる『歎異抄』NHK100分de名著2016年4月
34 2016年5月放送:2016.5.1
人に勝つ兵法の道-宮本武蔵『五輪書』NHK100分de名著2016年5月
35 2017年2月放送:2017.2.6
欲望から自由になれ-ガンディー『獄中からの手紙』NHK100分de名著2017年2月
36 2017年3月放送:2017.3.5
永久の未完成これ完成である〈宮沢賢治スペシャル〉NHK100分de名著2017年3月
37 2017年4月放送:2017.4.4
人生は実に旅である―三木清「人生論ノート」NHK100分de名著2017年4月
38 2017年6月放送:2017.6.4
大乗仏典『維摩経』NHK100分de名著2017年6月
39 2017年7月放送:2017.7.3
ジェイン・オースティン『高慢と偏見』-NHK100分de名著2017年7月
40 2017年11月放送:2017.11.6
努力で幸福になれる―ラッセル「幸福論」NHK100分de名著2017年11月


41 2022年5月放送:2022.5.31
私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』―<NHK100de名著>から-楽しい読書319号
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★ 別冊 編集後記

2022(令和4)年5月31日号(No.319)

「私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』―<NHK100de名著>から」

 

「NHK100分de名著」カテゴリ:
NHK100分de名著

 

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.08.16

<国際左利きの日>50回記念特別編―本から学ぶ左利き・オススメ左利き本2025-週刊ヒッキイ第692号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【最新号】

第692号(Vol.21 no.13/No.692) 2025/8/16
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―<国際左利きの日>
50回記念特別編― 本から学ぶ左利き・オススメ左利き本2025」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第692号(Vol.21 no.13/No.692) 2025/8/16
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―<国際左利きの日>
50回記念特別編― 本から学ぶ左利き・オススメ左利き本2025」
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 今回もまた、<左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界>をお休みして、
 「<国際左利きの日>特別編」として、
 「本から学ぶ左利き・オススメ左利き本2025」年版をお送りします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ
   ―<国際左利きの日>50回記念特別編―

  ◆ 右利きも左利きも共存の社会のために、左利きを知ろう! ◆

   本から学ぶ左利き・オススメ左利き本2025
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●<国際左利きの日>について

『レフティやすおのお茶でっせ』2025.8.11
2025年8月13日は50回目の<国際左利きの日>INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/08/post-7486e1.html

にも書いていますように、

今年2025年の8月13日は、1976年の第一回から、
50回目の8月13日<国際左利きの日>になります。

<国際左利きの日>INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY の始まりは――

1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで
自身左利きである、ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、
開店一周年を機に、左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を
「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に
制定し、行事を開催しました。

 

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)

200813dean-r-campbell-2
(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)

2025813-lhd-lm1995ja
(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

 

今年は50回目ということで、ちょっと色々ブログを書いてみました。

2025.8.1
7月31日、二宮和也さんがガンホー協賛ロッテ戦でサウスポー始球式
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/08/post-d33bb8.html

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2025.8.3
7月12日、元SKE48須田亜香里さんのドラゴンズ戦サウスポー始球式
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/08/post-8ba161.html

250712-suda3

2025.8.8
7月25日、神戸新聞くらし欄に左利き用品オンラインストア
「左ききの道具店」紹介される
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/08/post-6ce6ba.html

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 ●<国際左利きの日>特別編―本から学ぶ左利き――2025年最新版

それでは、私<左利きライフ研究家>レフティやすおの
オススメ左利き本の2025年版を紹介してゆきましょう。

 

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【左利きライフ研究家】レフティやすおの選ぶ
オススメ「左利き」の本:2025(令和7)年最新版・ベスト5
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250816-lhb2025

(画像:下段左から(1)『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27 (2)『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫 2022/5/16―2008年DOUJIN選書の増補文庫版 (3)『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16
上段左から(4)『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を 120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社 2021/9/29 (5)「できるかな絵本」シリーズ『おはしを じょうずに もてるかな』深見春夫 作・絵 岩崎書店‎ 2024/11/18)

 

■1. 2024年6月 日本語版翻訳出版
『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
ピエール=ミシェル・ベルトラン/著 久保田 剛史/訳 白水社 2024/6/27
(Amazonで見る)

 

著者は、1962年生まれの左利きのフランス人で、『左利き事典』
(Dictionnaire des gauchers, Imago, 2004)という著書もあり、
《フランスでは在野の歴史家として知られ、左利きの歴史をテレビや
ラジオなどで解説することもある。》という、フランスの左利き研究家。

原書は2008年の第二版で、その翻訳となり、翻訳者も左利きとのこと。

ヨーロッパ、特にフランスでの左利き差別の歴史を中心に、
時に左利き容認の時代もあったという、差別と容認、迫害と称賛
(というよりは、私の感覚では“緩和”?)とを綴った著作です。

注釈が豊富で、そのいう意味で資料としてしっかりしている印象でした。

フランス中心ですが、欧米の左利きの歴史がよくわかる一冊です。
今までに知っていたことも、改めてその時代であったり、
詳細のあれこれであったり、うわべしか知らなかったことも、
より深く理解できたように思います。

さらに、左利きに関した著作など、もっと色々と邦訳されていない
(であろう)作品のことなども知ることができて、私の作っている
(まだまだいい加減なものではありますが)<左利き文化史年表>なども
さらに充実させられそうで、うれしく思っています。

 

*参照:
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.7.3
新しい左利き本『左利きの歴史:ヨーロッパ世界における迫害と称賛』
発売される
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/07/post-e66fa0.html

 

240702-20212024-hidarikiki-no-hon

(画像:2021年から2024年にかけて出版された左利きの本および関連本(実用書をのぞく)――
上段左から(1)八田武志『左対右 きき手大研究』DOUJIN文庫 2008年DOUJIN選書の増補文庫版 (2,3)マーティン・ガードナー『新版 自然界における左と右』(上下)ちくま学芸文庫 2021年 1992年紀伊國屋書店版の文庫化再刊
下段左から(4)加藤俊徳1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を120%活かす方法』ダイヤモンド社 2021年 (5)本書『左利きの歴史』白水社 2024年 (6)大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』PHP新書 2023年)

 

■2. 2023年9月 出版
『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著
PHP新書 2023/9/16
(Amazonで見る)

 

「日本左利き協会」発起人・大路直哉さんの、左利きの社会学的研究書
『見えざる左手』(三五館 1998/10/1)以来、25年ぶりの新著。
左利き入門的な左利きの割合や成因などを簡単にまとめた上で、
日本における左利きの歴史における“迫害と称賛”というわけでは
ありませんが、差別の歴史と現状がいかに「右利き社会」であるか、
および左利きの才人偉人たちの左利きに関する話、
さらに、今後の左利き解放への在り方についても解説しています。

巻末に「左利きのためのサポートファイル」という情報もあり、
ここに、弊誌も紹介されています。

この本も各章末に注釈が豊富にあり、巻末には参考文献も掲載されていて、
基本となる情報がしっかりしているのが特徴でしょう。

 

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.6
「日本左利き協会」発起人大路直哉さんの新著『左利きの言い分』
9月16日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-64dede.html
2023.9.20
大路直哉『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』(PHP新書)
買いました
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-78206b.html

 

■3. 2022年5月 増補文庫版出版
『左対右 きき手大研究』八田 武志/著 DOJIN文庫 2022/5/16
(Amazonで見る)

 

日本の左利き・利き手研究の第一人者・八田 武志さんの2008年刊
『左対右 きき手大研究』(DOJIN選書)の増補文庫版。1996年刊の前著
『左ききの神経心理学』以後の研究成果をもとにした、1996年刊の前著が
学術書的体裁だったのに比べ、どこからでも読める一般向けに書いた
というトピック本。

 

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2022.2.22
利き手と左利きの科学的研究書・八田武志『左対右 きき手大研究』
増補版?文庫化4月22日発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/02/post-8e1d20.html

2022.5.19
利き手と左利きの科学的研究書・八田武志『左対右 きき手大研究』
加筆・文庫版発売
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/05/post-c45ad7.html

『左対右 きき手大研究』八田武志 化学同人(DOJIN選書 18) 2008/7/20
(Amazonで見る)

 

■4. 2021年9月 出版
『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を
 120%活かす方法』加藤俊徳/著 ダイヤモンド社 2021/9/29
(Amazonで見る)

 

著者は左利きの「脳内科医、医学博士」で、脳科学的な見地から左利きの
人の特性を描いて、左利きの人の優秀さを示します。左利きの人を応援
する、<左利きに特化した脳科学を応用した自己啓発本>といったもの。

 

*参照:『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.16
久しぶり?の左利き本近刊『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き 「選ばれた才能」を120%活かす方法』
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-6a4985.html

 

■5. 2024年11月 出版
「できるかな絵本」シリーズ
『おはしを じょうずに もてるかな』深見春夫 作・絵 岩崎書店‎
2024/11/18
(Amazonで見る)

 

左手右手、左右対等・平等に同じ大きさの絵で扱い、お箸の持ち方を
教える絵本。十何年か前、左手箸を「直すべき持ち方」とする本が出て
いた時代からは信じられないほどの、うれしい大変化。

 

*参照:
第689号(Vol.21 no.12/No.689) 2025/7/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ―特別編―
右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本
『おはしを じょうずに もてるかな』」

2025.7.5
<親御さんへ>特別編―左右共存お箸持ち方絵本
『おはしをじょうずにもてるかな』-週刊ヒッキイ第689号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/07/post-1e32
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/4957237300a94d9647a22df9ff910703

 

 ●オールタイム・ベスト「左利き」の本

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【左利きライフ研究家】レフティやすおの選ぶ
オールタイム・ベスト「左利き」の本・ベスト10
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◆1.『左利きの秘密』箱崎総一 立風書房マンボウブックス
 1979(昭和54)
(Amazonで見る)

 

箱崎先生の左利きの著作第二弾。「左利き友の会」の解散の顛末なども
含めて、箱崎先生の左利きに関する活動のまとめ的な一冊。
この本を読んで、
「左利きである自分が間違っているのではなく、
 左利きを受け入れない社会の方が間違っているのだ」
と、左利きであることに自信と勇気を与えてくれた本でした。
私にとっては、いまでも大切な宝物のような一冊です。

 

◆2.『左ききの神経心理学』八田武志 医歯薬出版 1996(平成8)/12/6
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2025年版オススメの左利きの本の3.『左対右 きき手大研究』で書名
のみ紹介しました八田さんの前著。左利きの研究専門書。20年余りにわた
って収集した左利き・利き手研究に関する文献と自らの研究をまとめた
もの。学術的な内容でちょっと難しいのですが、左利きや利き手・利き側
というものの性質を知る上で読んでおくべきかな、という一書です。1996
年刊と出版からかなり経っていますが、基本は理解できると思います。

 

◆3.『見えざる左手―ものいわぬ社会制度への提言』大路 直哉 三五館
1998/10/22
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この本も、2025年版オススメ本の2.『左利きの言い分』でもふれて
いますが、日本での左利きの迫害の歴史や現状認識、将来への展望など、
社会的文化的な面での研究書。題名に「左利き」とないので損をした本。
巻末に、左利き筆法等の実用情報も。

 

◆4.『左ききでいこう!!―愛すべき21世紀の個性のために』大路直哉・
フェリシモ左きき友の会/編著 フェリシモ出版 2000(平成12)/6/1
(Amazonで見る)

 

左利きの私は今までに何冊かの左利きの本を読んできました。それらは、
医科学的研究書・解説書、精神科医や左利き自身による左利きを応援し
激励する本の二つに大別できるようです。本書は後者です。しかし今まで
の本とは少し違います。前半は、左利きを社会学的に考察した書
「見えざる左手」の著者で左利きの大路氏による、左利きの歴史と現状を
コンパクトにまとめた左利き入門書。そして後半は本書の目玉ともいう
べき、左利き用品を製作販売していた通販のフェリシモの担当者とその
購入者の声からなる、この右利き社会で少数派の左利きが生きていく上で
必要ないくつかの技術(左利き筆法、左利き編み物法、左利きギター奏法
)と、左利き生活を便利で豊かにする左利き用品(フェリシモ左利き用品
カタログ)を紹介する実用書です。左利きに勇気と希望と、実用的な知識
と技術を与える、まさに左利き必見必読必携の書です。

 

◆5.『非対称の起源 偶然か、必然か』クリス・マクマナス/著
講談社ブルーバックス 2006/10/21
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イギリスの利き手研究20年の権威による、左利き・利き手の研究を中心に、
左右に関する話題を含めた科学研究書。一部抄訳。「利き手と社会」
「左利きの苦悩」といった章を含み、左利きには興味深い本。

 

◆6.『左利きの人々 悲しくも笑える』渡瀬 けん/著 中経の文庫 2009/1/1
(Amazonで見る)

 

かつて週刊で発行された左利きメルマガ「レフティサーブ」の書籍化。
家庭で学校で街中でファッションで趣味で、と各項目ごとに1ページで
綴る、よくぞ集めた右利き仕様の社会における左利きの不便を紹介する
短文エッセイ集。こんなものも右利き用だったんだ? と気付かせられ、
<右利き社会>の現実を教えてくれます。

 

◆7.『神々の左手―世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト
‎ スタジオタッククリエイティブ 2009/6/1
(Amazonで見る)

 

「左利きの著名人/偉人」本。左利きの特徴(性格的・器質的な)を挙げ
て、それが成功の一因であるとして、ラムセス大王からホワイトハウスの
4人(原書発刊当時直近の米歴代大統領)まで、世界を動かしてきた
左利きの偉人たちの歴史を描く。歴史上の人物の場合、本当のところ、
その利き手を知るのは難しいのですが、どうなんでしょうか。

 

◆8.『左利きの子 右手社会で暮らしやすくするために』
ローレン・ミルソム/著 笹山裕子/訳 東京書籍 2009/4/28
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イギリスの左利き用品専門通販ANYTHING LEFT-HANDEDのオーナーで、自身
左利きで左利きの子を持つ母親でもある著者の経験に基づく、左利きの
子供のための教育保育ガイド。左利き用品の紹介、学校への要望など、
いかにしてまわりのものが左利きの子供たちに配慮し支援して、右利き
仕様偏重の社会に順応させていくか、その方法を様々な場面に応じて
解説。左利きの子を持つ親だけでなく、教育・保育関係者も必読。
一般の人にも読んで欲しい一冊。筆者が巻末資料作成に協力した本。
訳者も左利きで、左利きと右利きの子の母でもある。

 

◆9.『「左利き」は天才?―利き手をめぐる脳と進化の謎』デイヴィッド・
ウォルマン/著 梶山 あゆみ/訳 日本経済新聞社 2006.7
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自身左利きの科学ジャーナリストが、左利きの謎に挑み世界を駆け巡る
サイエンス・ノンフィクション。著者自身も参加した、日本での左利き
ゴルフ大会や日本人研究者も登場。

 

◆10.『新版 自然界における左と右(上下)』マーティン・ガードナー/
著 坪井 忠二, 藤井 昭彦, 小島 弘/訳 ちくま学芸文庫 2021/1/9
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1992/5/1刊の紀伊國屋書店版『新版 自然界における左と右』の文庫化。
上巻では「9 人のからだ」「10 少数派の左利き」という人体における
非対称(左利き)に関する章があり、「9 人のからだ」p.162 に、
日本の左利き事情として「左利き友の会」を主宰された箱崎総一先生や
麻丘めぐみさんのヒット曲「わたしの彼は左きき」の話などが登場。

 

(元の単行本)『新版 自然界における左と右』マルティン・ガードナー
坪井忠二・小島弘訳 紀伊國屋書店 1992/5/1(原著:1990年刊)
(Amazonで見る)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―<国際左利きの日>50回記念特別編― 本から学ぶ左利き・オススメ左利き本2025」と題して、今回は全紹介です。

本文でも書いていますように、今年2025(令和7)年の8月13日は、1976年の第一回から数えて50回目の「国際左利きの日」に当たります。

というわけで、このメルマガもその特別記念として、最近出版された左利き関連本を5冊取り上げてみました。

また、私のオールタイムベスト10冊も並べてみました。
ほかにも、歴史的に重要勝つ、今も読む価値あり、と思えそうな本もあります。
そちらはスペース的なこともあり割愛しました。

この機会に一冊でも手に取ってみて頂けたら、と思います。

 ・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.08.13

2025年8月13日は50回目の<国際左利きの日>INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY

今年2025年の8月13日は、1976年の第一回から、50回目8月13日<国際左利きの日>になります。
(詳細は、以下に↓)

 ・・・

毎年書き続けていることですが(継続は力、といいます)、
8月13日の<国際左利きの日>を日本語でGoogle検索しますと、
《イギリスにある「Left-Handers Club」という団体により、1992年に制定》といった結果が上位に登場します。
以前は上位10件すべてこの調子、ということもありました。

でも今年は違いました。
7番目にこういうのが出ていました。

8月13日は49回目の「国際左利きの日」INTERNATIONAL ...

https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/0c08203a44b3c0b279250570c69aa9d2

元の記事は、
「レフティやすおのお茶でっせ」版 2024.08.13
8月13日は49回目の「国際左利きの日」INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY――始まりは1976年アメリカ

https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/08/post-2af44d.html

 

次に<左利きの日>で検索しますと、こっちは残念ながら大半が「1992年イギリス説」でした。

私の上記のブログ記事は、14番目でした。

8月13日「(国際)左利きの日」について調べるのなら、英語の<INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY>で、検索していただくのが一番です。
外国で始まった行事ですので。
イギリスにしろ、アメリカにしろ、英語の国ですので、英語で調べるのがベストでしょう。

もちろん、現役で頑張っているイギリスの「Left-handers Club」は偉大ですが、先駆者も忘れて欲しくはありません。

 

 ●イギリスの「Left-handers Club」からのメールには――「our first ~ 」

ついでに書いておきますと、今年8月3日に届いたイギリスの「Left-handers Club」からのメール「Lefthanders Day 2025 - Special Offers & more」には、

This August 13th, Anything Left Handed is celebrating 33 years since we launched our first Left Handers Day,
(筆者訳)この8月13日、エニシング・レフト・ハンデッドは、33年お祝いし続けています、私たちの最初の「レフトハンダーズ・デイ」を始めてから。

とあります。
続けて以下の商品を、8月1日から14日までの2週間「信じられない33%のディスカウント」で販売するとも、ありましたね。

ここで、明確に書かれていますように、「Anything Left Handed(エニシング・レフト・ハンデッド)」が、「our first Left Handers Day(私たちの最初のレフトハンダーズデイ)」を始めてから33年祝い続けている、ということです。
あくまでも「私たちの~」であって、何も「世界で最初に私たちが始めてから」と書いていない、という事実です。

 

 ●世界で最初の「レフトハンダーズ・デイ」

話を戻して、世界で最初の「レフトハンダーズ・デイ」について書いておきます。 

昨年の上記記事から、そのまた前年(2023年)の文章を孫引きしておきます。

『レフティやすおのお茶でっせ』2023.8.12
8月13日国際左利きの日を前に~メディアに注文-週刊ヒッキイ第647号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/08/post-dd7ed1.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/b11781e6833732e47b64409bf34f9f78

--
 英語の「International Lefthanders Day」
 「International Lefthander's Day」等で検索しますと現れます、
 英語版のWikipediaやその他の左利き系サイトには、

 (私の英語読解力に誤りなければ)
 1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカに開店した
 左利き用品店のオーナー、ご自身左利きである、
 ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、
 開店一周年を機に左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
 左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
 開店記念日にあたる<8月13日>
 「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という
 記念日に制定したのです。
--

昨年の記事の写真も再掲しておきます。

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)
200813dean-r-campbell-2

(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)

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(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

 

来年は、この「goo」ブログ版の記事は消滅してしまいますので、どうなるかわかりません。

この記事なり、過去の私の記事なりが上位に入ってくることを祈っています。
っていうか、何年も前から言っている、たぶん日本における誤認識の元凶だと思われます、日本語版ウィキペディアの記述が改められれば済む問題、だと思うのですけれど。

 

ちなみに、左利きの本の類いで、この「国際左利きの日」の情報を正しく記述している日本人による著作は、私の知るところでは、

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16
(Amazonで見る)
230919hidarikiki-no-iibun-600

250813-iibun-lhd1976

『左利きあるある 右利きないない』左 来人/著 小山 健/イラスト ポプラ社 2017/2/7
(Amazonで見る)
200811

200811-200811

ぐらいでしょうか。

 

*参照:上記昨年の記事より

『左利きの言い分 右利きと左利きが共感する社会へ』大路 直哉/著 PHP新書 2023/9/16
――旧著『見えざる左手』から二十数年、新たに「日本左利き協会」を設立された発起人の一人として、左利きの問題に取り組んだ著作。
 「国際左利き日」については、イギリス「Left-Handers Club」による活動を紹介する箇所の注に、始まりは1976年アメリカのキャンベルさんによると明記している。

 

 ●50回目の記念日

1976年の第一回から数えますと、今年はなんと50年、50回目となります。

50年記念といいましても、私は別になにもいたしませんけれど。
どなたが何かしていただければ、幸いです。

ちなみに、8月13日の「国際左利きの日」の行事で記憶に残っているのは、飲食店でお箸を右向き(⇒)に置く運動を続けておられた「レフチャス」という活動がありました。

2007年8月13日から始まり、2019年8月までは、Facebookに情報が残っています。
しかし「レフチャス」サイト(http://www.lefteous.jp/)は消えています。
2020年に始まったコロナ禍により外食産業や旅行業界は大きな被害を受けました。
「レフチャス」運動も被害を免れなかったようで残念なことです。

*参照:
LEFTEOUS - Facebook

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『レフティやすおのお茶でっせ』の「レフチャス」過去記事

・2007.8.14
少数派の気持ち伝える「左利きの日」企画開催される
・2013.8.18
レフチャス(LEFTEOUS)day2013:<国際左利きの日>情報2

■ お箸を左右逆さまに置くイベント/お箸をいつもと反対に置くことで、左利きの人たちの感じる違和感を右利きの人たちに楽しんでもらうイベント》【レフチャスDAY2013】fecebookより

・2016.8.10
今年もやります!8月13日レフチャス(LEFTEOUS)の日―国際左利きの日

今年もやらせてもらいます!8月13日レフチャスの日。
今年は、「れふ茶す」!みなさんをレフチャスのお茶の世界へご招待します。
(略)お散歩がてら、マイノリティの気持ちを体験にいらっしゃいませんか?

 

 

 ●この一年に出版された<左利き関係の本>を紹介

最後に、この一年のうちに新たに出版された<左利き関係の本>を紹介しておわりにします。

「できるかな絵本」シリーズ
『おはしを じょうずに もてるかな』深見春夫 作・絵 岩崎書店‎ 2024/11/18
(Amazonで見る)

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岩崎書店サイトより

おはしを じょうずに もてるかな

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左ききも大丈夫!箸の持ち方がわかる絵本
おはしの正しい持ち方をわかりやすく、ていねいに伝えます。/
 右きき、左きき、どちらでもおはしをじょうずに持てるようになる、
 画期的な絵本!

右手例と左手例が対等に、同じ大きさで説明されています。
しかも、ちょっとお姉さんふうの「左手」さんが幼児ぽい「右手」ちゃんに教えるという設定になっています。
この点は、いつも嫌な思いをしてきた私のような左利きさんには、少しですが優越感のようなものを感じさせてくれて、ちょっと溜飲が下がるといったところでしょうか。

*参照:
メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

第689号(Vol.21 no.12/No.689) 2025/7/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ―特別編―
右利きも左利きも共存のお箸持ち方絵本
『おはしを じょうずに もてるかな』」

ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2025.7.5
<親御さんへ>特別編―左右共存お箸持ち方絵本『おはしをじょうずにもてるかな』-週刊ヒッキイ第689号

 


参照:ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』―過去の「8月13日は<国際左利きの日>」の関連記事

・2024.8.13
8月13日は49回目の「国際左利きの日」INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY――始まりは1976年アメリカ
goo「新生活」版

・2023.8.12
8月13日国際左利きの日を前に~メディアに注文-週刊ヒッキイ第647号
goo「新生活」版

・2022.8.13
2022年8月13日左利きの日INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY合併号-週刊ヒッキイ第624号
goo「新生活」版
メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
 第624号(No.624) 2022/8/13
 「2022年8月合併号―「8月13日は国際左利きの日」―」

・2021.8.12
8月13日「国際左利きの日」を前に、左利きメルマガ「週刊ヒッキイ」創刊600号達成
goo「新生活」版

・2021.8.7
「左利き差別」問題と「みにくいアヒルの子」-週刊ヒッキイ創刊600号記念号
goo「新生活」版

・2020.8.12
2020年8月13日は1976年の制定から45回目の国際左利きの日

・2019.8.13
8月13日は国際左利きの日-1976年の制定より今年は44度目

・2018.8.13
8月13日国際左利きの日ILHDとAKB48Team8左利き選抜のことなど

・2017.8.13
8月13日はハッピーレフトハンダーズデー!

・2016.9.1
8月13日は〈国際左利きの日〉特別編-左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii第474,475,476号

・2016.8.14
昨日(8月13日)アメブロで「今日は左利きの日」をやってました

・2016.8.10
今年もやります!8月13日レフチャス(LEFTEOUS)の日―国際左利きの日

・2015.8.12
明日8月13日は1976年制定から40回目の国際左利きの日

・2014.8.12
8月13日は39回目の国際的な<左利きの日>&LEFTEOUS2014年

・2013.8.13
8月13日<国際左利きの日>企画「ヒダリキックマガジン」で始まる!

・2013.9.2
『グリグリくりぃむ』左利き選手権:<国際左利きの日>情報5

・2013.8.28
ブログネタ「両利きになる練習したことある?」:<国際左利きの日>情報4

・2013.8.19
雑学フェアにて~渡瀬けん著『左利きの人々』:<国際左利きの日>情報3

・2013.8.18
レフチャス(LEFTEOUS)day2013:<国際左利きの日>情報2

・2013.8.13
8月13日<国際左利きの日>企画「ヒダリキックマガジン」で始まる!

・2012.8.12
8月13日は37度目の“左利きの日”

・2011.8.13
国際“左利きの日”を迎えて&週刊ヒッキイ273号特別編「個人モデル」から「社会モデル」へ

・2010.8.21
今週の-週刊ヒッキイhikkii225名作の中の左利き(番外編)はさみ

・2010.8.14
今週の-週刊ヒッキイhikkii224《矯正/直す》表現に思う(5)前編

・2010.8.13
13日の金曜日はナント…左利きの日

・2009.8.22
今週の週刊ヒッキイ―第193号「<左利きプチ・アンケート>再版第33回」

・2008.8.13
33回目の8月13日国際左利きの日

・2007.8.14
少数派の気持ち伝える「左利きの日」企画開催される

・2006.8.13 
きょう8月13日は≪国際≫左利きの日です

・2005.8.13 
今年も今日8月13日はINTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY

・2004.8.13 
きょう8月13日はINTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY 「左利きの日」

・2004.8.12 
明日8月13日は「左利きの日」

 

カテゴリ:8月13日国際左利きの日

カテゴリ:2月10日左利きグッズの日

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.08.08

7月25日、神戸新聞くらし欄に左利き用品オンラインストア「左ききの道具店」紹介される

【1976年から、50回目の8月13日<国際左利きの日>をまえに】
(※末尾に詳細を↓ )

 ・・・

兵庫県の30年来の右利きの“支援者”である友人からの一報です。
(この方は、現在、聴覚障害者の支援を仕事にされています。
 筆者と知り合い、「左利き」という「少数派」の「社会的弱者」に接したことが、「社会的弱者」の存在に気付き、その支援者となる決心をするきっかけになったのかも……、と勝手に想像しています。)

 ・・・

神戸新聞7月25日(金)の“くらし”欄に、「左ききの道具店」(オンライン販売、岐阜県各務原市に実店舗)の店長・加藤礼(あや)さんが登場。
お店や左利き用品と共に紹介されていました。

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左ききの道具店(https://hidari-kiki.jp/) 

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左利き、専用グッズで快適に》の見出しのもと、前説として

 左利きの人にとって、左利き用の使いやすい道具は重宝されるアイテム。そんな人向けに実用的でおしゃれな用品を扱う「左ききの道具店」(岐阜県各務原市)が人気を集めている。自身も左利きという店長の加藤礼(あや)さん(46)は「暮らしが快適になったり、料理や勉強などが少しでも楽しいものになったりすればうれしい」と笑みを浮かべる。

とあります。

次に《オンライン販売、岐阜に実店舗》と小見出しが出ています。
まずは、日本人の約一割は左利き、右利きを前提に製造された道具は多いが、左利き用は数もバリエーションも少ないという現状を紹介しています。
さらに、《左右兼用も》と小さく、《台所用品や文房具100種以上》と大きめの見出し。

内容は、

 昔は、左利きの子どもが親に右利きに強制されるケースが珍しくなかった。加藤さん自身も箸は右手に持てるように直したが、筆記はどうしても左手の方が書きやすく、変えられなかった。「隠れて左手で書いて、怒られたこともあった」

といいます。

この「お箸は右で筆記(書字)が左」というのは、筆者の経験からいいますと、非常に稀な例ではないか、と思います。
筆者の知る“どちらかのみ左右転換成功派”(元々左利きだけれど、○○は右使いになった)の人の場合、「お箸など食べるのは元々の左使いで、字は右使いに変わった」という人が多かったものです。
やはり食べるのは本能的な行動で早い時期から始まりますが、字を書くのはある程度年齢がいってから始まる教育的な行動です。
そのへんに原因があるのでは、と筆者は考えています。
「隠れて左手で書いて、怒られたこともあった」という経験は、本当に悲しいものです。
右利きの人でこういう経験をする人はまずいないでしょう。
上に紹介したお箸を変えられなかった人のなかには「隠れて弁当を食べていた」という人がいました。
これも悲しい経験でしょう。
筆者は、外食が苦手でした、人前で字を書くのも嫌なものでした。

 

さて、こうして加藤さんは、自身の経験や

買いたいと思える左利きの道具があまり見つからなかったことから、2018年に左利き御人のためのオンラインショップをオープン

しました。
加藤さん自身が使って良かったという製品や、

品質やデザインが良い100種類以上を販売している

2023年に実店舗での営業も始めましたが、月に4、5回程度の不定期とのこと。

「みんなが使いやすければそれがベスト」

という加藤さんのお考えで、

左利き、右利きどちらでも使いやすい商品も積極的に取り扱っている

という方針のようです。

 

この点ですが、左右性のある道具類では、左用が絶対必要です。
例えばハサミや片刃の刃物類、料理道具ではフライ返し(ターナー)、バターナイフなど。
しかし、左右性のない道具、例えばお箸などは絵柄さえ横配置でなければ、どちらでも使えます。
スプーンなどの左右対称の道具類は、そのままで右手左手に関係なく使えます。
(ただし、へんに角度をつけた右手用のようなスプーンも時にはありますが。)

そういう観点から「何が何でも左利き専用」と力み返ると、かえって消費者に優しくない価格になってしまうケースもあります。
どうしても譲れない部分と譲り合える部分をうまく調整することが重要でしょう。

このお店特有の「左右兼用の商品」例として、初期に発売されていたシロクマさんの「左右兼用オリジナルクリアファイル」というのがありました。
切り欠き部分が左右にあり(位置が上下にずらしてある)、どちらからでも利用できるというものでした。

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(画像:シロクマの左右兼用「左ききの道具店」オリジナル・クリア・ファイル)

 

「左利き専用の商品」例として、このお店オリジナルの商品の一つとして有名な「左利き用の手帳」があります。

この新聞紙上では、「左利き用の手帳」や左右どちらでも使いやすいレードルや左利き用のフライ返し等が写真で紹介されていました。

 

この「左利き用の手帳」は、初めはクラウドファンディングで製作されたと記憶しています。
新規に左利き用の商品を開発するというのは、メーカーさんにとっても冒険のようで、左利きのユーザーの意見は通りにくいものです。

左利き用品店の場合、どうしても取り扱う商品の性質上、一般人のお客様にとって消耗品ではないものが多く、どうしても一回ポッキリの購入が多くなります。
経営上、左利きという限られたユーザーが顧客となりますので、常に新鮮な商品の確保というのが、ポイントになると思われます。

新商品に果敢に挑戦する姿勢は、これからも大事にしていただきたいものです。
また、私たち左利きのユーザーも、メーカーさんや販売店さんの心意気をむだにしないように、できる範囲で協力したいものです。

 

このお店も、8月13日の<国際左利きの日>にオープンだった、と記憶しています。
今年もその記念日が近づいています。
この機会に大いにお店の存在と商品のあれこれを大いにアピールしてほしいものです。

(ちなみに、『左ききのブログ』の「みんなで祝おう! 8月13日は「左利きの日」」の説明に誤りがあります。訂正をお願い致します。
 詳細は↓に書いております。)

 

今後もかわらず、新商品の開発や世界中からの発掘、そして第一に永年継続しつづける安定経営を期待しています。

世界的に見ましても、左利き用品のお店というのは、かつて結構ありました。
1990年代の半ば過ぎぐらいが一つのピークだったかも知れません。
当時筆者が定期購読していたイギリスの左利きの会「Left-Handers Club」の雑誌「The Left-hander」のなかで世界各地の支店? の紹介が出ていたものがありました。
その後、こういうお話は出なくなり、たぶんその多くが閉店されたのではないか、と考えています。
海外旅行者の間でもあそこにあった、ここにあったといった情報が飛び交っていたものでしたが、いつしか聞かなくなりました。
それらも、たぶん閉店の憂き目に遭ったということではないか、と考えています。
どうしても左利き用品店の場合、主だった製品がお客さまに一巡してしまいますとリピーターではなくなってしまう、という事情があるのではないでしょうか。

「左ききの道具店」さんの今後の方向性として、できれば文具や調理道具といった生活用品のみならず、もっと広く「趣味」の世界の道具類にも領域を広げてもらえれば、うれしく思います。
今、筆者は、楽器類の左用について、メルマガで可能性を探っています。
そういう展開も考えてもらえればいいなあ、という思いがあります。
例えば、子供用の鍵盤ハーモニカのような商品を!

 ・・・

「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)の始まり――
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで自身左利きである、
ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、開店一周年を機に、
左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に制定し、行事を開催した。

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)

200813dean-r-campbell-2
(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)

2025813-lhd-lm1995ja
(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.08.03

7月12日、元SKE48須田亜香里さんのドラゴンズ戦サウスポー始球式

【1976年から、50回目の8月13日<国際左利きの日>をまえに】
(※末尾に詳細を↓ )

 ・・・

(左利きの芸能人等による<サウスポー始球式>の拾遺です。)

 

脚がピン!元SKE48・須田亜香里が衝撃始球式 白ミニスカ姿で豪快脚上げにバンテリンDどよめき 見事ノーバンに飛び跳ねガッツポーズ によりますと、
名古屋出身の元SKE48須田亜香里さんが、7月12日のバンテリンドームで行われた「中日-広島」戦で始球式に登場。
中日のユニホームに白のミニスカート姿でピンと脚を伸ばしての豪快フォームで観客を沸かせて、ボールは見事ノーバウンド、とのこと。

 

(画像:始球式に登場した須田亜香里(撮影・市尻達拡)((C)デイリースポーツ))
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「ネオドラちゃんねる」のYouTube
元SKE48の須田亜香里による始球式!!足を大きく上げた投球に会場から驚きの声が上がる!(2025/7/12)

 

 

*【過去の<サウスポー始球式>】:

・2025.8.1
7月31日、二宮和也さんがガンホー協賛ロッテ戦でサウスポー始球式
・2024.8.16
左利きの鈴木福くん、大好きな広島カープでマエケン体操から入ったサウスポー始球式
「新生活」版
・2024.8.4
8月1日「日本ハム-オリックス」戦でGACKTさんサウスポー始球式
「新生活」版
・2024.4.8
元卓球女子五輪メダリスト石川佳純さんがサウスポー始球式
「新生活」版
・2023.9.3
西武ライオンズファンの乃木坂46向井葉月さんが左腕で初始球式
「新生活」版
・2022.5.18
サウスポー始球式二連発(1)5月14日玉木宏(2)5月15日新川優愛、プロ野球西武-楽天戦で始球式
「新生活」版
・2022.3.21
サウスポー“スーパーガール”桃月なしこが始球式で左腕から大暴投「新生活」版
・2021.11.22
左利きの女優・吉高由里子さんが4年ぶりプロ野球日本シリーズ第2戦でサウスポー始球式
「新生活」版
・2021.4.2
左利きの女優・森七菜さんのサウスポー始球式
「新生活」版
・2018.4.19
地元アイドルNegiccoのKaedeさんが左投げで新潟知事の代役始球式
「新生活」版
・2017.10.30
吉高由里子がサウスポーで伸びやか始球式 日本シリーズ第2戦
・2017.6.15
左利きの女優・剛力彩芽さん、四度目の始球式登板も…
・2017.5.26
サッポロビールイメージガール川辺優紀子さんの左利き始球式
・2017.5.7
女優の松井愛莉さんがサウスポー始球式
・2017.5.2
ピンクラインのサウスポー、女優でモデルの新川優愛さんが始球式
・2016.8.17
左利きのSKE48日高優月(ひだかゆづき)が始球式
・2016.7.23
左利きの女優すみれさん左腕で始球式
・2016.6.29
左利きの剛力彩芽さんの3度目の始球式は大暴投: レフティやすおのお茶でっせ
・2016.6.5 AKB48Team8/AKB48TeamB兼任の坂口渚沙さん (画像のみ)
AKB48選抜総選挙、暫定21位倉野尾成美・同53位坂口渚沙はTeam8の左利き
・2016.3.7
左利きのあっちゃん前田敦子の始球式

・2014.8.6 右利きの石原さとみさんの左投げ(撮影で右腕を痛めたということで「サウスポーでやります」と宣言。)
終わったはずのクチコミ「右利き? 左利き?」がまた

・2013.12.4 体操新技「シライ」の白井健三選手
体操新技「シライ」の白井健三選手は左利き
・2011.5.12 『五体不満足』の著者の乙武洋匡さん
乙武洋匡さんのサウスポー始球式
・2004.11.11 アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずき選手
素敵な光景:野口選手の左利きの始球式

*【カテゴリ:<サウスポー始球式>】 

 

 

※「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)の始まり――
1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで自身左利きである、
ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、開店一周年を機に、
左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に制定し、行事を開催した。

 

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)

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(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン・R・キャンベルさんによって設立された「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」発行の左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」から、チェアマンのキャンベルさん)

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(画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える)

 

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.08.02

週刊ヒッキイ第691号-楽器における左利きの世界(33)まつのじんさんのご意見(2)右手と左手

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【最新号・告知】

第691号(Vol.21 no.12/No.691) 2025/8/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(33)
過去のブ左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える(2)右手と左手・他」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第691号(Vol.21 no.12/No.691) 2025/8/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(33)
過去のブ左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える(2)右手と左手・他」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前々回、過去6回に渡ってご紹介しました、
 左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
 左利きに関するサイト、エッセイ集の左利きに関する文章をヒントに、
 私なりに左利きにおける楽器の演奏について考えようという企画の下、
 私自身の「うれしかった情報」について書きました。
 今回は、その二回目です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きと楽器演奏について考える

  左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの
   ご意見から考える(2)右手と左手・他

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●まつのじん(松野仁)さんの左利きエッセイ

まつのじん(松野仁)さんの本とサイトの左利きエッセイは下のとおり

著作:
『すみれのスミレの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅
 未來社 1992/1/1

 

(Amazonで見る)

 

a.「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>

第676号(Vol.20 no.21/No.676) 2024/12/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(27)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(2)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.12.07
週刊ヒッキイ第676号-告知-楽器における左利きの世界(27)まつのじん(2)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/12/post-55f0a7.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3b193894c6d7a3499fa16569f8282e7a

 

サイト:
 まつのじんのエッセイ&書評 Essays(Japanese)
b.「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日
http://mjin.m1001.coreserver.jp/2019/07/27/%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5%e3%81%8b%e3%82%89%e3%81%ae%e5%b7%a6%e5%8f%b3%e8%80%83/

第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.11.02
週刊ヒッキイ第674号-告知-楽器における左利きの世界(26)まつのじん(1)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/11/post-9afc9f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c61c87eab970c035e076d6c9e5e0876d

 

c.「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
(2019年8月13日)
http://mjin.m1001.coreserver.jp/%e3%83%92%e3%83%80%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88/

 

 ●利き手は、「好み」と「巧みさ」

b.「ゴーシュからの左右考」から――

 《わたくし、まつのじんは、
  幼い頃からヴァイオリンを演奏してまいりました。
  楽器(Violin)を左手に、弓(Bow)を右手に持って演奏しています。
  (略)
  幸せなことに私は左利きで、同時に「左手利き」です。
  ヴァイオリンを演奏する際、私の右手が持つ弓はなかなか思い通りに
  動いてはくれません。私はそれもひとつの個性と捉えながら、
  今もなお楽しく、時に厳しくつきあっています。》

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「左手利き」なので、

 《私の右手が持つ弓はなかなか思い通りに動いてはくれません。》

といいます。

当然といえば当然のことでしょう。
だって、「左手利き」なんだもん! です。

利き手というものには、二つの性質があります。
一つは「好み」といわれるもの。
もう一つは「巧みさ」です。

「好み」というのは、
特に理由はない(理由は利き手だから、です!)のですが、
「つい使ってしまう側の手」ということです。

「巧みさ」は、説明の必要はないでしょう。

で、この二つの性質を鑑みて、先のまつのさんの言葉がいかに当然か、
は分かりますよね。

利き手ではない右手が思い通り動いてくれない、当然のことでしょう。

 

 ●「まつのじん稽古場」

このあと、

 《「まつのじん稽古場」には、左(手)利きの方々が
  自然に参集しています。》

とあります。

これも当然のことでしょう。

 《楽器や社会、そして人間関係と向き合う中で、各々が悩みと苦闘の
  体験の末に出逢った、かけがえのない接点を持っているのです。》

同じ悩みを共有できる「仲間」「同志」なのですから。

私にもこれだけの師匠がいれば、もっと活躍できたのでしょうけれど、
残念ながら、出会う機会がありませんでした。

今ならいろんなSNSなどでつながりを持つ機会がありますけれど。
昔は今のように知らない人同士で出会う機会が少なかったのです。

左利きは「組織化されていない数少ない少数派」といった言い方を
されます。
しかし、それはあくまでも、漠とした共通性のない現場でのことです。

「まつのじん稽古場」のような親密な集団が生まれるケースは、
実際の仕事上の困難さによるのでしょう。
音楽家、なかでもヴァイオリニストのような人々は、
非常に限られた職人さんというイメージですので、
そういう特殊な職業の場合には、また違うのかも知れません。

次に紹介します、まつのさんの著作にこうあります。

 《 左利き特有の演奏上の苦労は、本当は左利き同士でないと
  分かり合えないだろうと思う。》

 《 人知れぬ苦労を
  胸にしまって、左利きは成長していくのだ。》p.100

 

 ●左利きのままで育つ

a.『すみれのスミレの花かご』
「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>から――

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241207sumire-no-hankagohidarikiki

 《 小学校に入る前から、僕は左利きだった。文字を書くのも、
  絵を描くのも、箸を持つのも左である。それで、
  不自由を感じたことは、子供の頃はただの一度もなかった。
   しかし、いろんな人から言われて戸惑った記憶はある。
  「お箸を持つ手が右手で、お茶碗を持つのが左手でしょ」。
  その度に、ずいぶん困ったのである。》p.96

子供の頃から「左利き」で、
字も箸もという典型的な「左利き」だったようです。
「右と左」の混乱は、左利きの子供によくある悩みですね。

左利きの子にとっての最初で最大の危機というものがあります。
それは、左利きの「矯正」(右手使いへの転換させられること)、
もしくは「強制」です。

 《さいわい、僕には誰も、そんな強制はしなかった。》

これはよかったですね、と私は思います。
人間として当然のことなのですけれど、自然なままで育つのが一番です。

「社会がこうだから~」云々ではなく、自分本位でいいのです。

だって、右利きの人はそういう風に育っているわけじゃないですか。
それで誰も「アカン!」とか、何もいわないわけですから。

右利きが右利きのままでいいのなら、
左利きも左利きのままでなぜいけないのでしょうか?

 

 ●右利き社会の実態と左利き

 《左利きの人間は、右利きの人が気づかないところで、
  右利き社会のギャップとたたかいながら、
  さまざまな不便さを味わっているのである。》p.97

例として、よくあることですが、ハサミがあげられています。
まつのさんは、左手ではなく右手で使うそうです。

こういう人も多いようです。
子供なりの知恵なのでしょう。

通常のハサミは右手用ですので、右手用なので右手で使う、というのは、
当然のことなのでしょうけれど、私には思いつかないことでした。

 

ヴァイオリンもまた右利き用なので、左利きとの関係は?

 《 じつは、関係がないどころか、大ありなのである。
  ヴァイオリンをはじめ、すべての楽器の演奏が、右利きに適した
  構造になっている。とりわけ弦楽器は、
  左手で弦を押さえるだけでは音は出ない仕掛けになっている。
  弓で弾いたり、弦をはじいたり……、
  つまり右手が音を出す手段となっているのである。》p.99

音を出すのが、音楽の基本です。
“音を楽しむ”と書くぐらいですから。

そして、“音を楽しむ”のは心の作用です。
私の持論は、いつもいいますように、「利き手は心につながっている」。
すなわち心の作用を演じるのは、利き手です。

「利き手で音を出せない楽器」=「楽器ではない」
といっても過言ではない、というのが私の考えになります。

 

左手の動きと右手の動きについては、こうあります。

 《 ヴァイオリン演奏は、左手が細かく動くので、右手より左手の
  ほうがむずかしいように見えるのだが、じつは逆なのだ。》p.99

 《 右手、つまりヴァイオリニストにとっては弓を持つ手の方が、
  音量、奏法ともにむずかしいのである。だから右利きの人なら、
  何も考えなくてもできるテクニックが、左利きの僕らには、
  ときに非常に困難なものになったりもする。》p.99

右利きの人なら《考えなくても》勝手にできてしまう演奏テクニックが、
左利きの人には難しい、といいます。

なるほど、ですね。
この《考えなくても》という点がポイントです。

自然にできてしまう、これが利き手の不思議なのです!

 《 その代わり、左手のビブラートなどの、細かい音色の変化を
  表現することなどでは、何の不自由も感じないのである。》

このへんが、
「“左手の方が難しいから”左利きの人でも右利き用でいいのだ」
といった右利きの人の発言につながってきます。

しかし、何度も言いますが、音を出す方の手が本来の主役です!

左手でいかに巧みに弦を押さえて見せても、音は鳴りません。
巧みに弓を弾いてこそ、音が出て、名演奏ともなるのです。

 

 ●左用のヴァイオリンとその演奏へのまつのさんの感想

ヴァイオリンにも、左用に作り替えた楽器がある、といいます。

 《 弦を左右張り替えたり、内部の魂柱(こんちゅう)(表板と裏板を
  つなぐ柱。これによって音の振幅を広げる)やバスバー(力木=
  低音を響かせるために表板の裏につけられた板)をチェンジしたり
  しなければならないそうだ。/ でも、そのために名器を改造した、
  などという勇ましい話は聞いたことがない。》p.100

こういう事情もあってか、「名器を弾きたければ右利きで」といった
「迷言?」が出て来るのでしょうか。

名器といっても、所詮は人間が作ったもの、
今後はどうなるのかわかりません。

ストラディヴァリウスも、世界中で数百台とか。
いってみれば、メジャーリーグのレギュラー選手の数ぐらいでしょうか。
日本のプロ野球選手にも、
メジャー級の選手もいるのではないでしょうか。
メジャーだけがメジャー級ではないはずです。
さらに、準メジャー級といえる選手も、当然いるでしょう。

名器だけが名器ではないのでは?
少なくともストラディヴァリウスだけが名器ではないでしょう。

どこかのだれかのお言葉ではありませんが、「二番じゃダメなんですか」
ならぬ「名器でなくちゃダメなんですか?」みたいな。

もちろん、実力があれば試してみたいと思うのが人情です。
でも「オレが名器を作る」ぐらいの意気込みではダメなのでしょうか。

名器を上回るほどの左弾きの名手になる、というのでは?

そして、
ドイツの楽団の中に左利き用のヴァイオリンで演奏している人を見た、
まつのさんの感想です。

 《(隣りの人と弓がぶつからないかなぁ?)などと、余計な心配ばかり
  しながら、演奏を聴いたのを覚えている。》p.101

このへんは、事情を知っているゆえの心配ごとなのでしょう。
それで演奏を聞くのに身が入らない、ということはあるかも知れません。

右利きの人たちも、そういう余計な“雑音”に気を取られてしまう、
ということはあるかも知れませんね。
だから、(右利きとは違う“異端”? の存在の「左利き」は)嫌だと。

 ・・・

――次回は、c.「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
から、主に「左利きヴァイオリニストあるある」についてのご意見を
みてみましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(33)左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんのご意見から考える(2)右手と左手・他」と題して、今回は全紹介です。

左利きのまつのじんさんの左利きエッセイから、左弾きのヴァイオリニストとしての左利きに関する専門的なご意見を、<左利きライフ研究家>としての左利きの観点から改めて紹介しています。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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2025.08.01

7月31日、二宮和也さんがガンホー協賛ロッテ戦でサウスポー始球式

【1976年から、50回目の8月13日<国際左利きの日>をまえに】
(※末尾に詳細を↓ )

 

久しぶりに、<サウスポー始球式>です。

7月31日、東京ドームで行われた、ロッテ―楽天16回戦のファーストピッチセレモニーに二宮和也さんが登場しました。

二宮和也 お見事!ノーバン投球に超満員の東京D大歓声“虹色球”&背番号「23」 自己採点「100点」
「ノーバン始球式」二宮和也が感動、25歳ドラ1からの〝たった一言〟に「こんな嬉しい事…」 によりますと、
《ロッテはガンホー・オンライン・エンターテインメントの冠協賛試合「ガンホースペシャルナイター」を開催。ガンホーのスマホゲーム「パズドラ」のイメージキャラクターを務め、CMに出演中の二宮が始球式を行った。》
見事ノーバン投球だったといいます。

(画像:<ロ・楽(16)>ファーストピッチセレモニーに登場した二宮和也(撮影・長久保 豊))
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(画像:ロッテ対楽天 ファーストピッチで投球する二宮和也(撮影・鈴木みどり))
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*【過去の「二宮和也」さんの左利き記事】:

・2015.06.11
『嵐にしやがれ』次回予告「左利きの大変さのニノ」のこと
・2015.06.14
『嵐にしやがれ』「左利きの大変さのニノ」のことpart2

 

*【過去の<サウスポー始球式>】:

・2024.8.16
左利きの鈴木福くん、大好きな広島カープでマエケン体操から入ったサウスポー始球式
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※「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)の始まり―― 1976年、アメリカ・カンザス州の州都トピカの左利き用品店のオーナーで自身左利きである、
ディーン・キャンベル(Dean R. Campbell)さんが、開店一周年を機に、
左利きの人の会(Lefthanders International)を始め、
左利きの人の生活向上のために左利き用品の普及を目指し、
開店記念日にあたる<8月13日>を「国際左利きの日」(INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY)という記念日に制定し、行事を開催した。

210813international-lefthanders-daywikip

(画像:英語版ウィキペディアの「INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY」の項目冒頭――下線部分:「国際左利きの日」は「レフトハンダー・インターナショナル」の創設者ディーン・R・キャンベルによって1976年に最初の祝祭が行われた-2021.8.13)
200813dean-r-campbell-2

(画像:1993年11・12月号~1996年3・4月号 定期購読していた、アメリカ・カンザス州トピカのディーン R. キャンベルによって設立された「Lefthanders International」発行の隔月刊の雑誌「Lefthander Magazine」から、チェアマンのキャンベルさん)
 

2025813-lhd-lm1995ja (画像:ディーン・R・キャンベル(Dean R. Campbell)さんがチェアマンを務めるアメリカの左利きの人の会「レフトハンダーズ・インターナショナル(Lefthanders International)」が発行していた左利きの人のための隔月刊の雑誌「レフトハンダー・マガジン(Lefthander Magazine)」1995年7-8月号(JULY/AUGUST 1995)の「国際左利きの日」を祝う記事の一部――《"Some 20years ago"(約20年前)》の文字が見える) 2025.8

 

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