私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『富嶽三十六景』-楽しい読書390号
古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)
【別冊 編集後記】
2025(令和6)年6月15日号(vol.18 no.10/No.390)
「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』
藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」
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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和6)年6月15日号(vol.18 no.10/No.390)
「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』
藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」
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今月は、恒例となりました岩波文庫のフェアから、
一点を選んで紹介します。
直近3年のものでは↓
2024(令和6)年6月30日号(vol.17 no.12/No.369)
「私の読書論187-2024年岩波文庫フェアから『タタール人の砂漠』」
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.6.30
私の読書論187-2024年岩波文庫フェアから『タタール人の砂漠』
-楽しい読書369号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/06/post-833bdb.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/1a2dfc9f51edb19c7b68c715e2fefd78
2023(令和5)年6月30日号(No.345)
「私の読書論172- 2023年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!
小さな一冊をたのしもう」から 上田秋成『雨月物語』「蛇性の婬」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.6.30
私の読書論172-2023年岩波文庫フェアから上田秋成『雨月物語』
「蛇性の婬」-楽しい読書345号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/06/post-ec8330.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/417d68371321fb4e635a0fa83166e4d2
2022(令和4)年6月15日号(No.320)
「私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―『語録』『要録』
―<2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!から」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2022.6.15
私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―
<2022年岩波文庫フェア>から-楽しい読書320号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/06/post-98be91.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/6a52aba9e4f9468c46611a84cd31f14f
2022(令和4)年 海外(エピクテトス『人生談義』)
2023(令和5)年 国内(上田秋成『雨月物語』)
2024(令和6)年 海外(ブッツァーティ『タタール人の砂漠』)
と来ましたので、今年は国内作品を――。
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- ジャポニスムへの影響 -
~ 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃 ~
私の読書論-2025年岩波文庫フェア
「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」から
『北斎 富嶽三十六景』日野原健司/編
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●<2024年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」>から
今年も<2025年岩波文庫フェア>が始まっていますので、
私の「これは」という一冊を紹介しましょう。
2025年岩波文庫フェア
「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」(5/28発売)
毎年ご好評をいただいている岩波文庫のフェア「名著・名作再発見!
小さな一冊を楽しもう!」を今年もご案内いたします。
岩波文庫は古今東西の典籍を手軽に読むことができる、
古典を中心としたシリーズです。できるだけ多くの皆さまに
名著・名作に親しんでいただけるよう、本文の組み方を見直し、
より読みやすい文庫をと心がけてまいりました。
いつか読もうと思っていた一冊、誰もが知っている名著、
意外と知られていない名作──岩波文庫のエッセンスが詰まった
当フェアで、読書という人生の大きな楽しみの一つを存分に
ご堪能いただけましたらと存じます。
<対象書目> 58
■:以前弊誌、もしくはブログで取り上げた作品
◆:同、他社の本による
▼:既読、本文庫・他社本等による
・:部分読み、本文庫・他社本等による
◆ 学問のすゝめ【青102-3】 福沢諭吉
◆ 遠野物語・山の人生【青138-1】 柳田国男
新版 きけ わだつみのこえ──日本戦没学生の手記【青157-1】
日本戦没学生記念会 編
君たちはどう生きるか【青158-1】 吉野源三郎
・忘れられた日本人【青164-1】 宮本常一
手仕事の日本【青169-2】 柳 宗悦
イスラーム文化──その根柢にあるもの【青185-1】 井筒俊彦
◆ 論語【青202-1】 金谷 治 訳注
■ 歎異抄【青318-2】 金子大栄 校注
中世荘園の様相【青N402-1】 網野善彦
北斎 富嶽三十六景【青581-1】 日野原健司 編
◆ アリストテレス ニコマコス倫理学(上)【青604-1】
◆ アリストテレス ニコマコス倫理学(下)【青604-2】 高田三郎 訳
■ 生の短さについて 他二篇【青607-1】 セネカ/大西英文 訳
■ マルクス・アウレーリウス 自省録【青610-1】 神谷美恵子 訳
◆ アラン 幸福論【青656-2】 神谷幹夫 訳
・論理哲学論考【青689-1】 ウィトゲンシュタイン/野矢茂樹 訳
精神の生態学へ(上)【青N604-2】
精神の生態学へ(中)【青N604-3】
精神の生態学へ(下)【青N604-4】
グレゴリー・ベイトソン/ 佐藤良明 訳
■ ロウソクの科学【青909-1】 ファラデー/竹内敬人 訳
生物から見た世界【青943-1】
ユクスキュル、クリサート/日高敏隆、羽田節子 訳
伊勢物語【黄8-1】 大津有一 校注
◆枕草子【黄16-1】 池田亀鑑 校訂
■ 雨月物語【黄220-3】 上田秋成/長島弘明 校注
説経節 俊徳丸・小栗判官 他三篇【黄286-1】 兵藤裕己 編注
断腸亭日乗(一) 大正六―十四年【緑42-14】
永井荷風/中島国彦、多田蔵人 校注
銀の匙【緑51-1】 中 勘助
◆晩年【緑90-8】 太宰 治
・江戸川乱歩短篇集【緑181-1】 千葉俊二 編
自選 谷川俊太郎詩集【緑192-1】 谷川俊太郎
石垣りん詩集【緑200-1】 伊藤比呂美 編
原爆詩集【緑206-1】 峠 三吉
俺の自叙伝【緑229-1】 大泉黒石
中上健次短篇集【緑230-1】 道籏泰三 編
左川ちか詩集【緑232-1】 川崎賢子 編
◆ 君主論【白3-1】 マキアヴェッリ/河島英昭 訳
アメリカの黒人演説集──キング・マルコムX・モリスン 他【白26-1】
荒 このみ 編訳
職業としての政治【白209-7】 マックス・ヴェーバー/脇 圭平 訳
支配について Ⅰ 官僚制・家産制・封建制【白210-1】
支配について Ⅱ カリスマ・教権制【白210-2】
マックス・ウェーバー/野口雅弘 訳
贈与論 他二篇【白228-1】 マルセル・モース/森山 工 訳
シャドウ・ワーク【白232-1】 イリイチ/玉野井芳郎、栗原 彬 訳
■ バガヴァッド・ギーター【赤68-1】 上村勝彦 訳
尹東柱詩集 空と風と星と詩【赤75-1】 金 時鐘 編訳
知里幸惠 アイヌ神謡集【赤80-1】 知里幸恵/中川 裕 補訂
■ ホメロス イリアス(上)【赤102-1】 松平千秋 訳
■ ホメロス イリアス(下)【赤102-2】 松平千秋 訳
◆動物農場──おとぎばなし【赤262-4】
ジョージ・オーウェル/川端康雄 訳
暗闇に戯れて──白さと文学的想像力【赤346-1】
トニ・モリスン/都甲幸治 訳
◆ 森の生活 (ウォールデン)(上)【赤307-1】
◆ 森の生活 (ウォールデン)(下)【赤307-2】
H.D.ソロー/飯田 実 訳
・人間とは何か【赤311-3】 マーク・トウェイン/中野好夫 訳
・新編 悪魔の辞典【赤312-2】 ビアス/西川正身 訳
・カフカ短篇集【赤438-3】 池内 紀 編訳
ベートーヴェンの生涯【赤556-2】 ロマン・ロラン/片山敏彦 訳
■ 星の王子さま【赤N516-1】 サン=テグジュペリ/内藤 濯 訳
伝奇集【赤792-1】 J.L.ボルヘス/鼓 直 訳
声でたのしむ 美しい日本の詩【別冊25】 大岡 信、谷川俊太郎 編
・・・
■:9点 ◆:12点 ▼:0点 ・:6点
残念ながら読んでいるのは25、6点ほどでした。
●『北斎 富嶽三十六景』日野原健司 編【青581-1】
今年は、冒頭でも書きましたように、
日本の古典、名作を取り上げてみましょう。
『北斎 富嶽三十六景』日野原健司 編 岩波文庫【青581-1】2019/01/16
https://www.iwanami.co.jp/book/b431810.html
まずは出版社の内容紹介文を!
《葛飾北斎の富士を描いた浮世絵版画の代表作.
カラーで全画を掲載,各画毎に,解説を付した.》
(この本の内容
《富士を描いた葛飾北斎(1760─1849)の浮世絵版画の代表作.
輪郭線が藍摺りの36図に続いて,輪郭線が墨摺りの10図
(通称,裏富士)が加えられ,計46図からなる.
遠近法や陰影法の西洋の画法を取入れた奇抜な構図が
一大人気を呼んだばかりか,
ヨーロッパの芸術家達にも多大な影響を与えた.
各画に,鑑賞の手引となる解説を付した.〔カラー版〕》
(目次
・富嶽三十六景図版一覧 ・富嶽三十六景
・関連地図 ・解説(日野原健司) ・主要参考文献
(編者略歴
日野原健司(1974― )
千葉県生まれ.太田記念美術館主席学芸員.慶應義塾大学非常勤講師.
慶應義塾大学大学院文学研究科前期博士課程修了.
江戸時代から明治時代にかけての浮世絵史を研究.
『北斎 富嶽三十六景』(岩波書店),『ヘンな浮世絵 歌川広景の
お笑い江戸名所』(平凡社),『かわいい浮世絵』『歌川国貞 これぞ
江戸の粋』(東京美術),『戦争と浮世絵』(洋泉社)など著書多数.
*参考:
岩波書店ウェブマガジン「web岩波 たねをまく」著者エッセイ
“北斎という山に登る” (日野原健司)2019.10.17
https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/2659?_gl=1*1f7iwuh*_ga*MTI5MDgzNTI1Mi4xNzQ0NzAyNzg0*_ga_L95Q1BL1G0*czE3NDg1MjUyNDMkbzQkZzEkdDE3NDg1MjY1MDQkajU5JGwwJGgw
・関連書誌
『カラー版 北斎』大久保 純一/著 岩波新書 新赤版 1369 2012/5/23
《「画狂人」と称した葛飾北斎(1760-1849)は、生涯自らの到達点に
満足することなく、画業に専心し、多彩な作品を遺した。
初期の役者絵から、美人画、摺物、読本挿絵、絵手本(北斎漫画)、
風景画、花鳥画、そして晩年の肉筆画まで、傑作・代表作を収録し、
その画業を江戸絵画史の中に位置づけながら、読みとく。》
●『富嶽三十六景』
本書冒頭に、全46景の図版一覧があります。
巻末の日野原健司さんの「解説」によりますと、
それぞれの署名の形態により、出版/制作の時期を推定できるようです。
Aグループ 「北斎改為一筆」印なし 10点
1「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」
2「凱風快晴(がいふうかいせい)」
3「山下白雨(さんかはくう)」
4「深川万年橋下(ふかがわまんねんばしした)」
5「尾州不二見原(びしゅうふじみばら)」
6「甲州犬目峠(こうしゅういぬめとうげ)」
7「武州千住(ぶしゅうせんじゅ)」
8「青山円座松(あおやまえんざまつ)」
9「東都駿台(とうとすんだい)」
10「武州玉川」(ぶしゅうたまがわ)
Bグループ 「前北斎為一笔」印=極・永寿堂 10点
11「相州七里浜(そうしゅうしちりがはま)」
12「武陽佃嶌(ぶようつくだじま)」
13「常州牛堀(じょうしゅううしぼり)」
14「甲州石班沢(こうしゅうかじかざわ)」
15「信州諏訪湖(しんしゅうすわこ)」
16「遠江山中(とおとうみさんちゅう)」印なし
17「甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)」
18「駿州江尻(すんしゅうえじり)」
19「東都浅艸本願寺(とうとあさくさほんがんじ)」
20「相州梅沢左(そうしゅううえめざわのひだり)」印なし
Cグループ「前北斎為一筆」(「為」が屈曲)印=極・永寿堂 5点
21「下目黒(しもめぐろ)」
22「上総ノ海路(かずさのかいろ)」印なし
23「登戸浦(のぼとうら)」印なし
24「東海道吉田(とうかいどうよしだ)」印なし
25「礫川雪ノ且(こいしかわゆきのあした)」
Dグループ「前北斎為一筆」(「為」が草書体で主版が藍摺)
印=極・永寿堂 11点
26「御厩河岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしせき
ようをみる)」
27「東海道江尻田子の浦略図(とうかいどうえじりたごのうらりゃくず)」
印なし
28「相州江の嶌(そうしゅうえのしま)」
29「江戸日本橋(えどにほんばし)」印なし
30「江都駿河町三井見世略図(えどするがちょうみついみせりゃくず)」
印なし
31「相州箱根湖水(そうしゅうはこねのこすい)」印なし
32「甲州三坂水面(こうしゅうみさかのすいめん)」印なし
33「隠田の水車(おんでんのすいしゃ)」
34「東海道程ヶ谷(とうかいどうほどがや)」印なし
35「隅田川関屋の里(すみだがわせきやのさと)」印なし
36「五百らかん寺さゞゐどう(ごひゃくらかんじさざいどう)」
Eグループ「前北斎為一筆」(「為」が正方形に近い、主版が墨摺)
印=極・永寿堂 10点
37「身延川裏不二(みのぶがわうあらふじ)」印なし
38「従千住花街眺望ノ不二(せんじゅうはなまちよりちょうぼうのふじ)
」印なし
39「駿州片倉茶園ノ不二(すんしゅうかたくらちゃえんのふじ)」印なし
40「東海道品川御殿山ノ不二(とうかいどうしながわごてんやまのふじ)」
41「甲州伊沢暁(こうしゅういさわのあかつき)」
42「本所立川(ほんじょたてかわ)」
43「東海道金谷ノ不二(とうかいどうかなやのふじ)」
44「相州仲原(そうしゅうなかはら)」
45「駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん)」
46「諸人登山(しょじんとざん)」
以上の順に、見開き2ページで絵を、次の見開き2ページが解説文です。
実際に刊行された順はわかっていないようで、これは一つの説です。
●私のお気に入り――幾何学的な奇抜な構図と鮮やかな色彩の青
全46図のうち、1番の大波の躍動感で有名な「神奈川沖浪裏」や、
通称「赤富士」で知られる2番「凱風快晴」、
弓なりの橋の下に小さな富士が見える、4番「深川万年橋下」、
職人さんが大きな樽を作っている、その樽の中に富士山が見える、
通称「桶屋の富士」の5番「尾州不二見原」、
水面に突出した岩の上で投網の綱を引いている漁師の上に
遠く富士山が見える14番「甲州石班沢」、
斜めに大きな角材を配し、その上に乗り切る職人と下から切る職人、
その木材を支える二本の木の下に富士を配した16番「遠江山中」。
その辺が私も知っていた、けっこうお気に入りのいい感じの作品です。
今回、解説を読んで気に入ったのが、3番の「山下白雨」――山頂は
晴れた空で、その下は暗雲に閉ざされた山腹に稲光が走っている。
これがいい、ですね、私のベスト3かも知れません。
ちなみに、1位は1番の「神奈川沖浪裏」――波の躍動感と
それに負けまいとする舟と、巨大な波と富士のバランス。
作画的にすごいですし、色彩感覚的にも波と海の白と青のバランス。
2位は、2番「凱風快晴」――風に吹き飛ばされ、
山肌があらわになった姿が美しい。
4番目になってしまいましたが、岩と網の綱の線が富士の裾野の稜線と
重なる構図の14番「甲州石班沢」。
5番目が奇抜な構図が目を惹く5番「尾州不二見原」。
企画のスタートとなった若い番号が振られている作品群は、
さすがに力が入っているように感じます。
●プルシアン・ブルーの衝撃
『富岳三十六景』の特徴となっているのが、藍色の絵の具です。
海や川、水のこれまでの浮世絵版画にはない、色鮮やかな藍色です。
『富岳三十六景』の出版広告に、「藍摺一枚 一枚ニ一景ズツ追々出版」
と強調宣伝されていたというように、藍摺であることが大きな目玉だった
といいます。
この藍摺に使われた絵の具がプルシアン・ブルーと呼ばれるものでした。
ヨーロッパ(プロイセン王国のベルリン)で発見された合成顔料で、
日本へは延享四年(1747)にオランダ経由で長崎から入り、
「ベロ」と呼ばれていました(現在はベロ藍と表記することが多い)。
十九世紀に入り中国製ができて価格が安くなり、庶民向けの低価格の
浮世絵版画にも使われるようになります。
浮世絵版画での青は、昔は露草や本藍が用いられていたのですが、
露草は色が滲みやすく光に弱い、本藍は水に溶けにくく、ぼかし、
グラデーションをつけて摺ることが難しいかった。
風景を描くのに欠かすことのできない、空や海、川を沈んだ青でしか
表現できなかったのです。
その悩みを解決してくれたのが、プルシアン・ブルーでした。
特徴は、鮮やかな透明感のある青色で、顔料でありながら
水に溶けやすいため、美しいグラデーションでぼかしを表現できる。
この藍摺による団扇絵の流行をきっかけにして、
『富岳三十六景』が刊行され大評判を取ることになります。
《まさしくプルシアン・ブルーの効果によって、北斎による富士山の
景色は、それまでにはない鮮やかさに包まれた。もしこの藍色の
鮮やかさがなければ、「富岳三十六景」の魅力も半減することで
あろう。》p.216(日野原健司「解説」)
まさに、この色合いは衝撃的です。
『富岳三十六景』最大の魅力といってもいいかもしれません。
●死の直前まで富士山を描く
三十六景が終わってからも好評で十景が追加され、
最終的に四十六景となりました。
これは当初から予定されていたことでした。
ただ版元の経営が悪くなり、その後の刊行は見送られたようです。
北斎は、その後も『富岳百景』という絵本を刊行します。
北斎は、「画狂老人卍」として、その死の直前まで画業を続け、
版画から肉筆画へと筆を進め、嘉永二年(1849)1月「富士越龍図」を描き、
4月18日、数え年90歳で亡くなります。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本誌では、「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」と題して、今回も全文転載紹介です。
6月は、岩波文庫フェアを紹介するのが近年の恒例になりました。
で、7・8月は、新潮・角川・集英社の夏の文庫三社を取り上げていますので、夏の3カ月は、もっぱら文庫本の紹介になっています。
私自身が文庫派なのと、本屋の兄ちゃん時代の風習といいますか、癖が残っているというのでしょうか、そういうものが影響しているのでしょう。
古典や名作を廉価に提供してくれるのが元々の文庫の在り方だったわけで、そういう意味では我がメルマガ向きといってもいいかもしれません。
ただ、“元本屋の兄ちゃん”といいながら、そういうフェアの紹介の本のほとんどを図書館本で行うのというのはどうなのだ? という意見はあるかと思います。
しかしこれも、出版社から協賛を頂いているわけでもなく自分勝手にやっていることで、当然すべて自前でまかなっているわけで、年金生活者としましては致し方のないことといってもいいか、と思います。
余裕のある人はみなさん自前で、できれば身近な書店で購入して読んでいただければよろしいかと思います。
・・・
*本誌のお申し込み等は、下↓から
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載
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