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2025.06.21

週刊ヒッキイ第688号-『左組通信』復活計画[38]『LL』復刻(11)LL11 1996年秋号(後)

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

 

第688号(Vol.21 no.11/No.688) 2025/6/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [38]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(11)
LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第688号(Vol.21 no.11/No.688) 2025/6/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [38]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(11)
LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号」
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 今回も、季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の復刻の新規入力分で
「ネット初公開!」――で、これが『LL』最終号となります。

 この号は前号(LL10 1996(平成8)年 秋号)の発行から
 半年以上(3シーズン)あいており、
 「終刊号」と銘打っていますように、これが最後の一号となりました。
 
 ペラペラ一枚、見開き2ページで、いかにもな、
 「最後の一号」という出来になっていました。

 

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [37]

  『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻 (11)
 
   (内容紹介)LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

*(参照)――

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
(参照)※『レフティやすおの左組通信』のページ
○レフティやすおの左利き自分史年表
○レフティーズ・ライフ(LL)再録(1)全号目次 

 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代1
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03

 

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 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』LL11 概要

 

 LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号 A4 2ページ

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<新聞から――>What the newspaper says,...
 朝日新聞 1969(平成8)年9月12日 朝刊「生活」面
右ページ(見出し)危険・不便…あきらめず 「画一社会」を変える力に
左ページ(見出し)左利きにもっと愛を 世の便利は「しゃくの種」
 「個性…」増える専用品
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左利きの本だなぁ(9)夏目漱石『坊ちゃん』
――<坊ちゃん>は左利き!
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

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<新聞から――>What the newspaper says,...

 朝日新聞 1969(平成8)年9月12日 朝刊「生活」面
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 今回ご紹介するのは、すでに「旧聞」に属する記事ですが、
「朝日新聞」1969(平成8)年9月12日朝刊「生活」面に
掲載されたものです。
 “大新聞”が「左利き」について記事にするというので、大いに期待
したのですが、内容的にいうと、「左利き問題」が存在するという、
まずは無難な紹介に終わっており、もう一段突っ込んで、真剣に
「左利き問題」をうんぬんする、というレベルまでは達していない点が
残念でした。

 特に、昨今話題に上がることが多い、「バリアフリー」(障壁なき
社会)の観点からのアプローチが見られなかったのが、ものたりなく
感じられた。/「次回」に期待したい。

 実は、筆者もこの記事を書かれた大村美香記者から、電話で取材を
受けたのだが、もう少し派手に宣伝しておけばよかったかな、
と反省している。(やすお)

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 ――以下、見開き2ページにわたる新聞の記事をコピーしたものを、
 特にコメントも付けないで、そのまま掲載していました。

 今回は、一部原文を交えて内容の要約を紹介しておきましょう。

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 ●左側ページ【見出し】改札機 ビデオ 世の便利は「しゃくの種」

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[朝日新聞 1969(平成8)年9月12日 朝刊「生活」面]
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 まずは左側ページ、こちらがメインの記事に当たり、

【大見出し】<左利きにもっと愛を>

 の下に記事が展開されます。
 まず冒頭に、記者氏による前説が入ります。
 全文を紹介しましょう。

 

 《首都圏や京阪神で急速に普及してきた駅の自動改札機。
  すばやく多人数の人が通れる効率的な機械だが、
  左利きの人たちにはどうも使い勝手が悪い。
  「便利」や「楽しみ」をうたい文句に、新たに生活に入ってきた
  自販機やビデオカメラなども、左利きに冷たい。
  長年使われてきた道具類には専用のものが作られ始めたものの、
  人口の一割を占めるといわれる「少数派」の不便は
  簡単には解消しそうにない。(大村 美香)》

 

【見出し】改札機・ビデオ 世の便利は「しゃくの種」

 横に「自動改札機を通りぬける人々」の写真
 (ぐきっ!!=体をひねるときの擬音)が入っています。
 真ん中の一人が、左腕を身体の前にクロスするように出して、
 自分の向かって右側にある改札機の切符投入口に伸ばしています。

 記事は、自動改札機の不便についての証言と共に始まっています。

 ・・・

日本民間鉄道協会によりますと、
自動改札機は1990年代に急速に普及し始め、
1995年には千駅以上、53%に達している。
しかもそのすべてが、投入口が右側にあるものだといいます。

左利きの人の証言(1)
 《「大きな荷物がある時は、さらにバランスを崩しやすい。
  こんな不便を毎日味わっているんです」》

左利きの人の証言(2)
 《「左右両方に投入口をつけるとか、たくさん自動改札機があるなら、
  一台の投入口を左側にしてもらえれば、楽なのですが」》

という要望に関して――

 《「両方作ってしまうと利用者が混乱する」(名古屋鉄道)
  「設置台数は限られているので……」(小田急鉄道)。
  鉄道会社は消極的。
  「現在の機械が右利き専用というわけではないが、お客様は右利きが
   多数。左利きの方には慣れていただくしかない」(営団地下鉄)
  と左利きの努力を求める。》
 
次に家庭用ビデオカメラについて――
片手で持つタイプはほとんど右手用で、ソニーは国内で発売している
17種類はすべて右手で支えて操作する形。

 《「左利きの方に使いづらいのは承知しているが、慣れの問題。
  ボタンを押すだけだし、さほど支障はないのでは」と同社広報室。》
  
左手用の開発予定はない。

一方、日本ビクターが開発した新方式デジタルビデオカメラは、
テープが小さくなった利点を生かして、
縦長で両手で持つことができ、利き目も選ばない。
左利きばかりではなく、右手を失った人からも注文が来ている、という。

自動改札機も、多少の工夫が出てきた。
阪急電鉄は、左手でも入れやすいように、
投入口を左に5度傾けた機種をすべての駅に置いている。
(写真=ぼちぼち 阪急電鉄梅田駅)

東急電鉄でもこの形式を。
JR東日本も1995年3月から設置を始め、
今後は新規導入や機械の取り換え時に改善してゆく予定。

 

 

 ●左側ページ【見出し】はさみ・調理具「個性…」増える専用品

(写真=逆も真ナリ 岐阜県関市川嶋工業、左利き用調理用具シリーズ)

 《はさみや包丁など、左利きが不便を耐えて長く使ってきた道具に、
  専用品が多くなってきた。》

として、らせんが逆のコルク抜き、刃の向きが逆の缶切り、
といった調理用具を販売している、川嶋工業(岐阜県関市)を紹介。

バブル崩壊後、特徴のある製品が求められるようになったこと。
左用に向きを変えるだけなので、設計は難しくなかった。
市場が狭い分、採算は取りにくいが、価格は右と同じにしている。

遠藤民雄課長さん――「正直言って、売れ行きはよくない」
しかし、百貨店などには、個性がある商品として人気が高いという。

 《「最近は左利きを苦にしないし、右に直される人も少ないですから、
  これから育つ子供たちに使ってもらえるのでは……。
  将来への布石です」》

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東京中央区の刃物専門店「木屋」は、左利き用の刃物約50点を
取り扱っており、その数は徐々に増えつつあるという。

企画課・石田克由課長さん――
 《「左利きを隠さなくなって需要が増えたことと、
  不便だというお客様の声が大手小売店を通じて伝えられて、
  対応せざるを得なくなっている。最近は発売しなくてはならない
  という意識がメーカーに広がっているようです」》

 

 

 ●右側ページ【見出し】危険・不便…あきらめず

(写真=ナイスショップ 東京都内のゴルフショップの左利きコーナー)

 《左利きは古くて新しい問題だ。二年前、左利きの人にとっては、
  衝撃的な本が出た。》

スタンレー・コリン著『左利きは危険がいっぱい』を紹介している。

世の中のテクノロジーやデザインが右手に便利にできているので、
左利きの人は日常生活で、不快な思いをするだけでなく、
事故を起こしやすく、寿命を縮める原因になっている――
左利きには危険がいっぱいだ。

 

【見出し】「画一社会」を変える力に

工業デザイナー・秋岡芳夫さん――
 《「左利きのような少数派が冷遇されるのは今の工業製品の宿命」》

金型を起こす作る現在の製法は、
生産性は高いが画一的な製品しかできない。
それゆえ、少数派の人には対応しづらい、という。

 《「技術的に未熟なんです。多種類を生産できるような技術を
  開発する時代に来ているのですが」》

現状は、「あきらめ使いのあきらめ暮らし」と秋岡さん。

 《「出来の悪いものに自分を合わせて暮らすと生活が貧しくなる、
  ということです。不便なら、使う側も、文句を伝えた方がいい」》

 

東京都中野区立区立中野昭和小学校・草場純教諭さん――
麺類の給食配膳用に、左利き児童に特製のおたまを用意している。

右手ですくいやすいように、片側がフォーク状になっているおたまは、
左利きの児童には使いづらい。
そこで逆向きのおたまを注文して作ってもらった。

草場純教諭さん――
 《「文字の学習や習字など、児童が苦労し、親もどうしたらよいか
  迷っているケースが多い。教師が少しでも手助けする方法を知って
  いる方がいいのでは」》

おたまを作ったのも、使いやすい道具を児童に渡すべきだと考えたから。

 《「ただ、いずれ子供は社会へ出ていく。教育現場だけの努力でなく、
  社会全体が変わらないと」》

 

誰もが使いやすい商品やサービスについて、研究調査、普及活動をして
いる、メーカーの企画開発担当者やデザイナーが参加する
「E&Cプロジェクト」会長、工業デザイナー・鴨志田厚子さん――
 《「公共で使うもの、日用品だからこそ、左右を選ばない形がいい」》

自動改札機の場合、左右に投入口があれば、荷物を持っているときや、
杖をついているときなど、右利きの人でも使いやすくなる。

 《「左利きの人への配慮は、左利きの人のためばかりでなく、
  誰もが便利になることだと思います」》

 

 

 ●右ページ【見出し】人口の1割 なぞだらけ

 右ページの端一列は「左利き」についての専門家の科学的説明。

 ・・・

京都大学名誉教授(神経生理学)久保田競さん――
 《「利き手についてはまだ分からないことが多い」》

手を動かすとき、手と反対の側の脳が働く。
右手を動かすのは左脳、左手は右脳というように。
脳のどの領域が関連して手が動くのか、大まかな仕組みは分かっている。
しかし、脳の仕組みと利き手の関係については、まだ手つかずの状態。

左利きの人の割合は人口全体の一割程度。
 
 《日本人は直す習慣があるためか結果として少ないが、
  発現率は時代や民族で変わることはないと考えられている。》

両親が左利きの場合、その子供が左利きになる割合が高く、
片方の親が左利きの場合も平均よりは高いので、
左利きの原因は遺伝による、という説もある。

 《しかし、「左利きを決める遺伝子が発見されているわけではなく、
  類推の域を出ない」と久保田教授。左利きにはまだなぞが多い。》

 

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左利きの本だなぁ(9)夏目漱石『坊ちゃん』

――<坊ちゃん>は左利き!
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 千円札の肖像にもなっている明治時代の文豪・国民作家、夏目漱石の
代表作であり、また日本を代表する青春文学のひとつでもある
『坊っちゃん』。その主人公“坊っちゃん”が実は左利きだった、
ということはあまり知られていない。

 “坊っちゃん”の性格を紹介する冒頭のエピソードのなかに、
親戚からもらった西洋製のナイフで、「右手」の親指を切ってみせる
というのがある。
 右手にナイフを持って、右手を切ることはできないので、
ナイフは左手に持っていたと考えられる。
ゆえに彼は左利きだったのだ!

 何度も映画やテレビドラマになった作品だが、「左利き」の
“坊っちゃん”を演じた人はいなかったのではないでしょうか。

 だれでも一度は読んだことのある小説でありながら、
案外知られていない事実です。(やすお)

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*参照:
『坊っちゃん』夏目 漱石/著 新潮文庫 改版 2003/4/1
(Amazonで見る)

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(冒頭の“坊っちゃん”の無鉄砲ぶりを示す第二エピソード)

 親類のものから西洋製のナイフを貰って奇麗な刃を日に翳かざして、
友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。
切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。
そんなら君の指を切ってみろと注文したから、
何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込んだ。
幸ナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、
今だに親指は手に付いている。然し創痕は死ぬまで消えぬ。

 

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [38]『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(11)LL11 1997(平成9)年 夏号 終刊号」と題して、今回は全紹介です。

今回、改めてこの新聞記事を読み、色々と思うところがありました。
当時は、前号からかなり日を置いた最終号ということで、私自身、ちょっと疲れていたのか、旧聞ということで遠慮もあったのか、記事内容に関してのコメントを残していません。

今回のこの機会に少しだけ書いておこうかとも思いましたが、書けばどうも単なる愚痴になるような気もします。
遅れてきた意見はない方がいいのでしょう。

この終刊号発行まで約半年のブランクがありました。
当時私は、仕事が忙しくなり、ちょっと病気をしたこともあり、疲れてしまったのでしょう。

やりたいことと望みが大きかった反面、当時の自分には荷の重い仕事だったのかも知れません。
まあ、今でも荷の重い仕事をしているのかも知れませんけれど。

この左利きメルマガも長くやっている割りには、購読者も増えず、特に世間的にも話題にならず、何かしらオファーがなかったとは言いませんが。

まあ、自分が有名にはなりたくない、目立ちたくはない、という気持ちがあるので、どうしても突っ込んでいけないのですね。
まあ、それでもいいかと思っています。

ただ、後に続く人が出てきて欲しいということだけは、言っておきます。

第一土曜日発行分で左利き用の楽器のことを書いていますように、現実の問題としてやはり左利きは冷遇されています。
左利きゆえに楽器の演奏をあきらめた人も多いと思うのです。

左利きの問題は、まだまだ未解決の部分が大半です。
突き詰めて頑張ってくださる後継者がどんどん現われることを期待して止みません。

では。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2025.06.15

私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『富嶽三十六景』-楽しい読書390号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2025(令和6)年6月15日号(vol.18 no.10/No.390)
「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』
 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2025(令和6)年6月15日号(vol.18 no.10/No.390)
「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』
 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」
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 今月は、恒例となりました岩波文庫のフェアから、
 一点を選んで紹介します。

 直近3年のものでは↓

2024(令和6)年6月30日号(vol.17 no.12/No.369)
「私の読書論187-2024年岩波文庫フェアから『タタール人の砂漠』」
『レフティやすおのお茶でっせ』2024.6.30
私の読書論187-2024年岩波文庫フェアから『タタール人の砂漠』
-楽しい読書369号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/06/post-833bdb.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/1a2dfc9f51edb19c7b68c715e2fefd78

2023(令和5)年6月30日号(No.345)
「私の読書論172- 2023年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!
 小さな一冊をたのしもう」から 上田秋成『雨月物語』「蛇性の婬」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.6.30
私の読書論172-2023年岩波文庫フェアから上田秋成『雨月物語』
「蛇性の婬」-楽しい読書345号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/06/post-ec8330.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/417d68371321fb4e635a0fa83166e4d2

2022(令和4)年6月15日号(No.320)
「私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―『語録』『要録』
―<2022年岩波文庫フェア>名著・名作再発見!から」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2022.6.15
私の読書論159-エピクテトス『人生談義』―
<2022年岩波文庫フェア>から-楽しい読書320号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/06/post-98be91.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/6a52aba9e4f9468c46611a84cd31f14f

2022(令和4)年 海外(エピクテトス『人生談義』)
2023(令和5)年 国内(上田秋成『雨月物語』)
2024(令和6)年 海外(ブッツァーティ『タタール人の砂漠』)
 と来ましたので、今年は国内作品を――。

 

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 - ジャポニスムへの影響 -
  ~ 藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃 ~

  私の読書論-2025年岩波文庫フェア
 「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」から

  『北斎 富嶽三十六景』日野原健司/編 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 ●<2024年岩波文庫フェア「名著・名作再発見!」>から

今年も<2025年岩波文庫フェア>が始まっていますので、
私の「これは」という一冊を紹介しましょう。

 

2025年岩波文庫フェア
「名著・名作再発見! 小さな一冊をたのしもう」(5/28発売)

 毎年ご好評をいただいている岩波文庫のフェア「名著・名作再発見!
 小さな一冊を楽しもう!」を今年もご案内いたします。
 岩波文庫は古今東西の典籍を手軽に読むことができる、
古典を中心としたシリーズです。できるだけ多くの皆さまに
名著・名作に親しんでいただけるよう、本文の組み方を見直し、
より読みやすい文庫をと心がけてまいりました。
 いつか読もうと思っていた一冊、誰もが知っている名著、
意外と知られていない名作──岩波文庫のエッセンスが詰まった
当フェアで、読書という人生の大きな楽しみの一つを存分に
ご堪能いただけましたらと存じます。

Bunfair2025_pop

<対象書目> 58

■:以前弊誌、もしくはブログで取り上げた作品
◆:同、他社の本による
▼:既読、本文庫・他社本等による
・:部分読み、本文庫・他社本等による

 

◆ 学問のすゝめ【青102-3】  福沢諭吉
◆ 遠野物語・山の人生【青138-1】  柳田国男
新版 きけ わだつみのこえ──日本戦没学生の手記【青157-1】
  日本戦没学生記念会 編
君たちはどう生きるか【青158-1】  吉野源三郎
・忘れられた日本人【青164-1】  宮本常一
手仕事の日本【青169-2】  柳 宗悦
イスラーム文化──その根柢にあるもの【青185-1】  井筒俊彦
◆ 論語【青202-1】  金谷 治 訳注
■ 歎異抄【青318-2】  金子大栄 校注
中世荘園の様相【青N402-1】  網野善彦
北斎 富嶽三十六景【青581-1】  日野原健司 編
◆ アリストテレス ニコマコス倫理学(上)【青604-1】
◆ アリストテレス ニコマコス倫理学(下)【青604-2】 高田三郎 訳
■ 生の短さについて 他二篇【青607-1】  セネカ/大西英文 訳
■ マルクス・アウレーリウス 自省録【青610-1】  神谷美恵子 訳
◆ アラン 幸福論【青656-2】  神谷幹夫 訳
・論理哲学論考【青689-1】  ウィトゲンシュタイン/野矢茂樹 訳
精神の生態学へ(上)【青N604-2】
精神の生態学へ(中)【青N604-3】
精神の生態学へ(下)【青N604-4】
   グレゴリー・ベイトソン/ 佐藤良明 訳
■ ロウソクの科学【青909-1】  ファラデー/竹内敬人 訳
生物から見た世界【青943-1】
   ユクスキュル、クリサート/日高敏隆、羽田節子 訳

伊勢物語【黄8-1】  大津有一 校注
◆枕草子【黄16-1】   池田亀鑑 校訂
■ 雨月物語【黄220-3】  上田秋成/長島弘明 校注
説経節 俊徳丸・小栗判官 他三篇【黄286-1】  兵藤裕己 編注

断腸亭日乗(一) 大正六―十四年【緑42-14】
  永井荷風/中島国彦、多田蔵人 校注
銀の匙【緑51-1】 中 勘助
◆晩年【緑90-8】  太宰 治
・江戸川乱歩短篇集【緑181-1】  千葉俊二 編
自選 谷川俊太郎詩集【緑192-1】  谷川俊太郎
石垣りん詩集【緑200-1】  伊藤比呂美 編
原爆詩集【緑206-1】  峠 三吉
俺の自叙伝【緑229-1】  大泉黒石
中上健次短篇集【緑230-1】  道籏泰三 編
左川ちか詩集【緑232-1】  川崎賢子 編

◆ 君主論【白3-1】  マキアヴェッリ/河島英昭 訳
アメリカの黒人演説集──キング・マルコムX・モリスン 他【白26-1】
  荒 このみ 編訳
職業としての政治【白209-7】  マックス・ヴェーバー/脇 圭平 訳
支配について Ⅰ 官僚制・家産制・封建制【白210-1】
支配について Ⅱ カリスマ・教権制【白210-2】
  マックス・ウェーバー/野口雅弘 訳
贈与論 他二篇【白228-1】  マルセル・モース/森山 工 訳
シャドウ・ワーク【白232-1】  イリイチ/玉野井芳郎、栗原 彬 訳

■ バガヴァッド・ギーター【赤68-1】  上村勝彦 訳
尹東柱詩集 空と風と星と詩【赤75-1】  金 時鐘 編訳
知里幸惠 アイヌ神謡集【赤80-1】  知里幸恵/中川 裕 補訂
■ ホメロス イリアス(上)【赤102-1】  松平千秋 訳
■ ホメロス イリアス(下)【赤102-2】  松平千秋 訳
◆動物農場──おとぎばなし【赤262-4】
  ジョージ・オーウェル/川端康雄 訳
暗闇に戯れて──白さと文学的想像力【赤346-1】
  トニ・モリスン/都甲幸治 訳
◆ 森の生活 (ウォールデン)(上)【赤307-1】
◆ 森の生活 (ウォールデン)(下)【赤307-2】
  H.D.ソロー/飯田 実 訳
・人間とは何か【赤311-3】  マーク・トウェイン/中野好夫 訳
・新編 悪魔の辞典【赤312-2】  ビアス/西川正身 訳
・カフカ短篇集【赤438-3】  池内 紀 編訳
ベートーヴェンの生涯【赤556-2】  ロマン・ロラン/片山敏彦 訳
■ 星の王子さま【赤N516-1】  サン=テグジュペリ/内藤 濯 訳
伝奇集【赤792-1】  J.L.ボルヘス/鼓 直 訳

声でたのしむ 美しい日本の詩【別冊25】  大岡 信、谷川俊太郎 編

 ・・・

■:9点 ◆:12点 ▼:0点 ・:6点
残念ながら読んでいるのは25、6点ほどでした。

 

 ●『北斎 富嶽三十六景』日野原健司 編【青581-1】

今年は、冒頭でも書きましたように、
日本の古典、名作を取り上げてみましょう。

『北斎 富嶽三十六景』日野原健司 編 岩波文庫【青581-1】2019/01/16

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(Amazonで見る)

https://www.iwanami.co.jp/book/b431810.html

 

まずは出版社の内容紹介文を!

 《葛飾北斎の富士を描いた浮世絵版画の代表作.
  カラーで全画を掲載,各画毎に,解説を付した.》

(この本の内容
 《富士を描いた葛飾北斎(1760─1849)の浮世絵版画の代表作.
  輪郭線が藍摺りの36図に続いて,輪郭線が墨摺りの10図
  (通称,裏富士)が加えられ,計46図からなる.
  遠近法や陰影法の西洋の画法を取入れた奇抜な構図が
  一大人気を呼んだばかりか,
  ヨーロッパの芸術家達にも多大な影響を与えた.
  各画に,鑑賞の手引となる解説を付した.〔カラー版〕》
(目次
・富嶽三十六景図版一覧 ・富嶽三十六景
・関連地図 ・解説(日野原健司) ・主要参考文献
(編者略歴
日野原健司(1974― )
 千葉県生まれ.太田記念美術館主席学芸員.慶應義塾大学非常勤講師.
 慶應義塾大学大学院文学研究科前期博士課程修了.
 江戸時代から明治時代にかけての浮世絵史を研究.
 『北斎 富嶽三十六景』(岩波書店),『ヘンな浮世絵 歌川広景の
お笑い江戸名所』(平凡社),『かわいい浮世絵』『歌川国貞 これぞ
江戸の粋』(東京美術),『戦争と浮世絵』(洋泉社)など著書多数.

*参考:
 岩波書店ウェブマガジン「web岩波 たねをまく」著者エッセイ
“北斎という山に登る” (日野原健司)2019.10.17
https://tanemaki.iwanami.co.jp/posts/2659?_gl=1*1f7iwuh*_ga*MTI5MDgzNTI1Mi4xNzQ0NzAyNzg0*_ga_L95Q1BL1G0*czE3NDg1MjUyNDMkbzQkZzEkdDE3NDg1MjY1MDQkajU5JGwwJGgw

・関連書誌
『カラー版 北斎』大久保 純一/著 岩波新書 新赤版 1369 2012/5/23

250615-hokusai

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 《「画狂人」と称した葛飾北斎(1760-1849)は、生涯自らの到達点に
  満足することなく、画業に専心し、多彩な作品を遺した。
  初期の役者絵から、美人画、摺物、読本挿絵、絵手本(北斎漫画)、
  風景画、花鳥画、そして晩年の肉筆画まで、傑作・代表作を収録し、
  その画業を江戸絵画史の中に位置づけながら、読みとく。》

 

 ●『富嶽三十六景』

本書冒頭に、全46景の図版一覧があります。

巻末の日野原健司さんの「解説」によりますと、
それぞれの署名の形態により、出版/制作の時期を推定できるようです。

 Aグループ 「北斎改為一筆」印なし 10点
1「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」
2「凱風快晴(がいふうかいせい)」
3「山下白雨(さんかはくう)」
4「深川万年橋下(ふかがわまんねんばしした)」
5「尾州不二見原(びしゅうふじみばら)」
6「甲州犬目峠(こうしゅういぬめとうげ)」
7「武州千住(ぶしゅうせんじゅ)」
8「青山円座松(あおやまえんざまつ)」
9「東都駿台(とうとすんだい)」
10「武州玉川」(ぶしゅうたまがわ)

 Bグループ 「前北斎為一笔」印=極・永寿堂 10点
11「相州七里浜(そうしゅうしちりがはま)」
12「武陽佃嶌(ぶようつくだじま)」
13「常州牛堀(じょうしゅううしぼり)」
14「甲州石班沢(こうしゅうかじかざわ)」
15「信州諏訪湖(しんしゅうすわこ)」
16「遠江山中(とおとうみさんちゅう)」印なし 
17「甲州三嶌越(こうしゅうみしまごえ)」
18「駿州江尻(すんしゅうえじり)」
19「東都浅艸本願寺(とうとあさくさほんがんじ)」
20「相州梅沢左(そうしゅううえめざわのひだり)」印なし

 Cグループ「前北斎為一筆」(「為」が屈曲)印=極・永寿堂 5点
21「下目黒(しもめぐろ)」
22「上総ノ海路(かずさのかいろ)」印なし 
23「登戸浦(のぼとうら)」印なし 
24「東海道吉田(とうかいどうよしだ)」印なし 
25「礫川雪ノ且(こいしかわゆきのあした)」

 Dグループ「前北斎為一筆」(「為」が草書体で主版が藍摺)
  印=極・永寿堂 11点
26「御厩河岸より両国橋夕陽見(おんまやがしよりりょうごくばしせき
ようをみる)」
27「東海道江尻田子の浦略図(とうかいどうえじりたごのうらりゃくず)」
印なし 
28「相州江の嶌(そうしゅうえのしま)」
29「江戸日本橋(えどにほんばし)」印なし 
30「江都駿河町三井見世略図(えどするがちょうみついみせりゃくず)」
印なし 
31「相州箱根湖水(そうしゅうはこねのこすい)」印なし 
32「甲州三坂水面(こうしゅうみさかのすいめん)」印なし 
33「隠田の水車(おんでんのすいしゃ)」
34「東海道程ヶ谷(とうかいどうほどがや)」印なし 
35「隅田川関屋の里(すみだがわせきやのさと)」印なし 
36「五百らかん寺さゞゐどう(ごひゃくらかんじさざいどう)」

 Eグループ「前北斎為一筆」(「為」が正方形に近い、主版が墨摺)
  印=極・永寿堂 10点
37「身延川裏不二(みのぶがわうあらふじ)」印なし 
38「従千住花街眺望ノ不二(せんじゅうはなまちよりちょうぼうのふじ)
」印なし 
39「駿州片倉茶園ノ不二(すんしゅうかたくらちゃえんのふじ)」印なし 
40「東海道品川御殿山ノ不二(とうかいどうしながわごてんやまのふじ)」
41「甲州伊沢暁(こうしゅういさわのあかつき)」
42「本所立川(ほんじょたてかわ)」
43「東海道金谷ノ不二(とうかいどうかなやのふじ)」
44「相州仲原(そうしゅうなかはら)」
45「駿州大野新田(すんしゅうおおのしんでん)」
46「諸人登山(しょじんとざん)」

 

以上の順に、見開き2ページで絵を、次の見開き2ページが解説文です。

実際に刊行された順はわかっていないようで、これは一つの説です。

 

 ●私のお気に入り――幾何学的な奇抜な構図と鮮やかな色彩の青

全46図のうち、1番の大波の躍動感で有名な「神奈川沖浪裏」や、
通称「赤富士」で知られる2番「凱風快晴」、
弓なりの橋の下に小さな富士が見える、4番「深川万年橋下」、
職人さんが大きな樽を作っている、その樽の中に富士山が見える、
通称「桶屋の富士」の5番「尾州不二見原」、
水面に突出した岩の上で投網の綱を引いている漁師の上に
遠く富士山が見える14番「甲州石班沢」、
斜めに大きな角材を配し、その上に乗り切る職人と下から切る職人、
その木材を支える二本の木の下に富士を配した16番「遠江山中」。
その辺が私も知っていた、けっこうお気に入りのいい感じの作品です。

今回、解説を読んで気に入ったのが、3番の「山下白雨」――山頂は
晴れた空で、その下は暗雲に閉ざされた山腹に稲光が走っている。
これがいい、ですね、私のベスト3かも知れません。

ちなみに、1位は1番の「神奈川沖浪裏」――波の躍動感と
それに負けまいとする舟と、巨大な波と富士のバランス。
作画的にすごいですし、色彩感覚的にも波と海の白と青のバランス。
2位は、2番「凱風快晴」――風に吹き飛ばされ、
山肌があらわになった姿が美しい。
4番目になってしまいましたが、岩と網の綱の線が富士の裾野の稜線と
重なる構図の14番「甲州石班沢」。
5番目が奇抜な構図が目を惹く5番「尾州不二見原」。

企画のスタートとなった若い番号が振られている作品群は、
さすがに力が入っているように感じます。

250615-fugaku-15

 

 ●プルシアン・ブルーの衝撃

『富岳三十六景』の特徴となっているのが、藍色の絵の具です。
海や川、水のこれまでの浮世絵版画にはない、色鮮やかな藍色です。

『富岳三十六景』の出版広告に、「藍摺一枚 一枚ニ一景ズツ追々出版」
と強調宣伝されていたというように、藍摺であることが大きな目玉だった
といいます。

この藍摺に使われた絵の具がプルシアン・ブルーと呼ばれるものでした。

ヨーロッパ(プロイセン王国のベルリン)で発見された合成顔料で、
日本へは延享四年(1747)にオランダ経由で長崎から入り、
「ベロ」と呼ばれていました(現在はベロ藍と表記することが多い)。
十九世紀に入り中国製ができて価格が安くなり、庶民向けの低価格の
浮世絵版画にも使われるようになります。

浮世絵版画での青は、昔は露草や本藍が用いられていたのですが、
露草は色が滲みやすく光に弱い、本藍は水に溶けにくく、ぼかし、
グラデーションをつけて摺ることが難しいかった。
風景を描くのに欠かすことのできない、空や海、川を沈んだ青でしか
表現できなかったのです。

その悩みを解決してくれたのが、プルシアン・ブルーでした。
特徴は、鮮やかな透明感のある青色で、顔料でありながら
水に溶けやすいため、美しいグラデーションでぼかしを表現できる。

この藍摺による団扇絵の流行をきっかけにして、
『富岳三十六景』が刊行され大評判を取ることになります。

 《まさしくプルシアン・ブルーの効果によって、北斎による富士山の
  景色は、それまでにはない鮮やかさに包まれた。もしこの藍色の
  鮮やかさがなければ、「富岳三十六景」の魅力も半減することで
  あろう。》p.216(日野原健司「解説」)

まさに、この色合いは衝撃的です。
『富岳三十六景』最大の魅力といってもいいかもしれません。

 

 ●死の直前まで富士山を描く

三十六景が終わってからも好評で十景が追加され、
最終的に四十六景となりました。
これは当初から予定されていたことでした。
ただ版元の経営が悪くなり、その後の刊行は見送られたようです。
北斎は、その後も『富岳百景』という絵本を刊行します。

北斎は、「画狂老人卍」として、その死の直前まで画業を続け、
版画から肉筆画へと筆を進め、嘉永二年(1849)1月「富士越龍図」を描き、
4月18日、数え年90歳で亡くなります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論-2025年岩波文庫フェアから『北斎 富嶽三十六景』藍摺―プルシアン・ブルーの衝撃」と題して、今回も全文転載紹介です。

6月は、岩波文庫フェアを紹介するのが近年の恒例になりました。
で、7・8月は、新潮・角川・集英社の夏の文庫三社を取り上げていますので、夏の3カ月は、もっぱら文庫本の紹介になっています。
私自身が文庫派なのと、本屋の兄ちゃん時代の風習といいますか、癖が残っているというのでしょうか、そういうものが影響しているのでしょう。

古典や名作を廉価に提供してくれるのが元々の文庫の在り方だったわけで、そういう意味では我がメルマガ向きといってもいいかもしれません。

ただ、“元本屋の兄ちゃん”といいながら、そういうフェアの紹介の本のほとんどを図書館本で行うのというのはどうなのだ? という意見はあるかと思います。
しかしこれも、出版社から協賛を頂いているわけでもなく自分勝手にやっていることで、当然すべて自前でまかなっているわけで、年金生活者としましては致し方のないことといってもいいか、と思います。

余裕のある人はみなさん自前で、できれば身近な書店で購入して読んでいただければよろしいかと思います。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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『レフティやすおのお茶でっせ』より転載

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2025.06.07

週刊ヒッキイ第687号-楽器における左利きの世界(32)松野迅さんから

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!)

【最新号】

 

第687号(Vol.21 no.10/No.687) 2025/6/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(32)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える」

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
  【左利きを考える レフティやすおの左組通信】メールマガジン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第687号(Vol.21 no.10/No.687) 2025/6/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(32)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
ご意見から考える」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前回までは、左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんの
 左利きに関するサイト、エッセイ集の左利きに関する文章を紹介して
 きました。
 今回は、それらの文章をヒントにして、
 私なりに左利きにおける楽器の演奏について考えようと思います。

 

■1回目――まつのじんさんのサイトから

 「まつのじん」さんについて知る意味で、
 <まつのじんWebsite> 平和ねがいて 弦なりやまず
 http://mjin.m1001.coreserver.jp/
 「ゴーシュからの左右考」2019年7月27日

241102-matunojin-1s

第674号(Vol.20 no.19/No.674) 2024/11/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(26)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(1)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.11.02
週刊ヒッキイ第674号-告知-楽器における左利きの世界(26)まつのじん(1)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/11/post-9afc9f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/c61c87eab970c035e076d6c9e5e0876d

 ●左利きのヴァイオリニスト「まつのじん」さんについて
 ●「左(手)利き」=「強度の左利き」
 ●「不便益」という考え方
 ●日本は漢字文化の影響で書き方が二通りある
 ●左利きの「矯正」(=右使いへの転換)行為について
 ●「ヴァイオリン弾きのゴーシュ」として

 

■2回目――まつのじん(松野迅)さんのエッセイ集から

『すみれの花かご ヴァイオリンのある喫茶室』松野迅 未來社 1992/1/1
241207sumire-no-hankago

(Amazonで見る)

 「II マイ・プライベート・ライフ」<涙のひだりきき>

第676号(Vol.20 no.21/No.676) 2024/12/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(27)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(2)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.12.07
週刊ヒッキイ第676号-告知-楽器における左利きの世界(27)まつのじん(2)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/12/post-55f0a7.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3b193894c6d7a3499fa16569f8282e7a

 ●<左利き者の証言>――ヴァイオリニスト松野迅さんの場合
 ●子供時代から、僕は左利きだ
 ●『左利きの歴史』の記述
 ●左利きのままで育つ
 ●右利き社会と左利き用品について
 ●鏡文字の話、食事の話など
 ●左利きとヴァイオリン演奏について――音を出すのが右手
 ●左手の動きと右手の動き
 ●左利き特有の演奏上の苦労について
 ●余談――左利きの人への共感、等
 ●左利きのヴァイオリン演奏についての結論に満足、満足

 

■3回目――まつのじんのサイトの左利きページから

 「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
(2019年8月13日)
http://mjin.m1001.coreserver.jp/ [ヒダリスト/]
%e3%83%92%e3%83%80%e3%83%aa%e3%82%b9%e3%83%88/

2019813-matunojin-lefty

第679号(Vol.21 no.2/No.679) 2025/2/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(28)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(3)」
【最新号・告知】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.2.1
週刊ヒッキイ第679号-告知-楽器における左利きの世界(28)まつのじん(3)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-5db9f0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/9d54a490b52746a60f5212b9afc3b88a

 ●「左ききは、アカン!? WHO is LEFTY■(?の倒立像)」
 ●「ひだりきき 異世界の民たち」
 ●「鏡の世界へ ようこそ」
 ●「左利き演奏者の おもい」=右利き社会に生きる左利き者の悩み
 ●「左利き演奏者の おもい」続き
 ●左利きは

 

■4回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第681号(Vol.21 no.4/No.681) 2025/3/1
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(29)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(4)」
【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.3.1
週刊ヒッキイ第681号-告知-楽器における左利きの世界(29)まつのじん(4)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/02/post-4c221d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/ec35e4d1f81a0ac9153e695fbaaef719

 ●「左利き用の楽器 あるの?」
 ●ヴァイオリンの構造
 ●Amazonの「左利き用ヴァイオリンセット」
 ●「左利きの個性 おしえます^^」【松脂編】
 ●「左利きの個性 おしえます^^」【演奏編】右手と左手の動き
 ●「左利きの個性 おしえます^^」【演奏編】脳の違い?

 

■5回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第683号(Vol.21 no.6/No.683) 2025/4/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(30)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(5)」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.4.5
週刊ヒッキイ第683号-告知-楽器における左利きの世界(30)まつのじん(5)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/04/post-99dd44.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/9c05f485df40b156b80fc269468ffb6e

 ●「演奏家の登場です」(1)左弾きヴァイオリニスト
 ●「演奏家の登場です」(2)左弾きピアニスト
 ●通常の「右用」鍵盤楽器について
 ●「左(手)利き用」の鍵盤楽器
 ●「右(手)利き用」鍵盤楽器との違い
 ●クリストファー・シードの左利き演奏の感想
 ●左利きの人は左利き用の道具を!

 

■6回目――まつのじんのサイトの左利きページから

第685号(Vol.21 no.8/No.685) 2025/5/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(31)
左利きのヴァイオリニストまつのじん(6)」

【最新号】『レフティやすおのお茶でっせ』2025.5.3
週刊ヒッキイ第685号-楽器における左利きの世界(31)まつのじん(6)
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2025/05/post-144cd2.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/eeb3d80c9a6227df747486f64257adf9

 ●「LEFTY-INFO-BOX」
 ●「HOW TO PLAY for LEFTY VIOLINIST」冒頭解説
 ●突撃する弓
 ●ウォーミングアップ<左(手)利き編>
 ●自分の指なのに…
 ●右手は今どこにいるのだろう…
 ●いつも曲線を意識してみませんか。
 ●「【ひだり図書館】です」

 

 今回は、過去6回に渡ってご紹介しました、
 左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの
 ご意見から、色々と考えてみようという試みです。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

 左利きと楽器演奏について考える

  左利きのヴァイオリニスト・まつのじん(松野迅)さんの
   ご意見から考える(1)うれしかった情報

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●まちがいじゃなかった私の「鍵盤楽器は右利き用」という意見

一番うれしかった?情報は、やはり現行のピアノが右利き用だ、
というご指摘でした。

*参照:
■5回目――まつのじんのサイトの左利きページから
・第683号(Vol.21 no.6/No.683) 2025/4/5

 ●「演奏家の登場です」(2)左弾きピアニスト
 ●通常の「右用」鍵盤楽器について
 ●「左(手)利き用」の鍵盤楽器
 ●「右(手)利き用」鍵盤楽器との違い
 ●クリストファー・シードの左利き演奏の感想

↑このへんのお話です。

 

<●「演奏家の登場です」(2)左弾きピアニスト> のくだりで、
この連載でもたびたび取り上げてきた、
左利き用ピアノを使って演奏される
クリストファー・シードChristopher Seedさんのお話が出てきます。

Lefthandpiano

まつのさんは、

 《私はこの動画に接した時、生まれて初めて、鍵盤楽器の演奏を
  緊張しないで観る&聴くことができました。楽しめました。それまで、
  なんらかのストレスを伴っていたことに気づかされました。》

と、書いておられます。

 《登場する楽器は、フォルテピアノです。
  現代のピアノ(ピアノフォルテ)の前身です。
  そして調律は現代社会でよく用いられている「平均律」ではなく、
  古典調律のようです。
  ロベルト・シューマン(1810-1856)作曲の「蝶々」作品2(1829-1831)
  が演奏されています。》

だそうです。

そして、<●通常の「右用」鍵盤楽器について> のなかで、

 《一般的にチェンバロ(ハープシコード)、オルガン、ピアノなどの
  鍵盤楽器は、左側の鍵盤から右側の鍵盤へと音程が順に高くなって
  ゆきます。》

 《右(手)利きの人にとっては、音楽・音程の高揚が
  右側へと拡がるので、そのように創られたと推察されます。》

 《人それぞれによって異なりますが、
  左(手)利き人間は、
  音楽・音程の高揚が利き手側=左側に向かう方が、
  自然に感じられます。》

と、まつのさんの言葉を紹介しています。

<●「左(手)利き用」の鍵盤楽器> では、

 《↓この動画で使用されている鍵盤楽器のキーボードは、
  音程の並び方向が真逆にできています。「左(手)利き用」です。》

 《下図の上は、私たちが日ごろ目にしているキーボードの並び順です。
  白鍵(前鍵)は、左側から右側へ〔ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・
  ド〕と並び、音程が上昇します。
  この動画で使用されているキーボードの白鍵(前鍵)は、
  下図の下のように、右側から左側へ
  〔ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド〕と配置されています。
  それに添って黒鍵(後鍵)の並び方も逆仕様となっています。
  左側に向かって音程が上昇します。》

と、この左弾き用のピアノの鍵盤の並び方が説明されています。

250405-2019813-matunojin-hidarikiki-14

この鍵盤の並び方は、私も以前に書いています。

左から右(⇒)の動きが右利き用であれば、
左利き用は右から左(←)への動きなのです。

音楽素人の私の考えであった、
(1)現行のピアノや鍵盤楽器が右利き用であること、
(2)左利きの人用の左弾きピアノの鍵盤の並び方の例
とが、
まつのさんの言うところのものと同じだったのが、うれしかったのです。

 

*参照:

【右用ピアノの鍵盤】

(音階が上がる)⇒⇒⇒
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(左)ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド(右)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(音階が下がる)←←←
   
(左腕を押す)⇒┃    ┃⇒(右腕を引く)
(左腕を引く)←┗(身体)┛←(右腕を押す)

 

第616号(No.616) 2022/4/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(2)演奏時の腕の移動方向」
『レフティやすおのお茶でっせ』2022.4.2
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(2)-週刊ヒッキイ第616号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2022/04/post-7b0072.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/90951982e3ad1c1498e325ea8915cd0f

 

 ●右利き用であることに無自覚な右利きの人たち

次の<●「右(手)利き用」鍵盤楽器との違い> で紹介しているのは、

 《演奏する手も入れ替わります。
  私たちが日ごろ目にしていますがる「右(手)利き用」鍵盤楽器では、
  (原則として)楽譜(大譜表)の上段〔高音域〕を右手、
  下段〔低音域〕を左手が演奏します。
  ところが「左(手)利き用」鍵盤楽器では、
  その逆手で演奏することになります。》

 《下図の中央ように、(原則として)上段〔高音域〕の音符を左手が
  担当し、下段〔低音域〕の音符を右手が演奏することになります。
  こうなりますと、
  【音程の方向性と楽譜の地図(ながれ)が一致しない】
  と感じられませんか? 
  楽器のつくりと同様、楽譜のしつらえも「右(手)利き脳」に即して
  発想され、そして発達・発展してきたことがわかります。》

このお言葉の通り、鍵盤の並べ方という楽器の製作の発想も、
演奏にまつわる楽譜の表記の発想もすべて、
「右利きの人のための、右利きの人用」になっているのです。

こういう発想が根底にあるにもかかわらず、
実際に演奏している人たち(要するに右利きの人)は、
その事実をどの程度意識しているのか、
という疑問が強く!強く!湧いてくるのです。

たぶんほとんどの人は、意識していないのでしょう。

そういう「右利き優先、右利き偏重」の利き手に関する実態に
無自覚な態度が、また腹が立つのです。

 

 ●私も強調したい部分

<●クリストファー・シードの左利き演奏の感想> では、
彼の演奏の動画に関して、

 《この動画をごらんになって、「右(手)利き」の方の中には
  ⚡️違和感を感じる方がたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
  違和感を通り越して、気持ちが?不安定になる方がいらっしゃる
  かもしれません。あるいは、しばらく時を経てから
  不快感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。

  私は、その心の衝動を充分に理解できます。
  なぜならその不安定な心の動きは、私たち「左(手)利き族」が
  日常的に内心と精神で味わっている 〈試練〉に他ならないからです。
  それは、生涯にわたり切り離せないものでしょう。》

と書いておられます。

後半の 《不安定な心の動きは、私たち「左(手)利き族」が
  日常的に内心と精神で味わっている 〈試練〉に他ならない》
の部分こそ、私も強調したい部分です。

 

 

 ●現実を知らしめる努力を!

結局、右利きの人たちは、
この現実の社会において多数派だというだけの理由で、
多大な恩恵を受けているのだという事実を、
しっかり受け止めて欲しいのです。

その事実に気付けば、少数派への配慮もおのずから生まれてくる、
はずです。

こういう現実社会における実態をもっと声高に発言して知ってもらう
という努力を、われわれは続けていかなければいけないのです。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(32)左利きのヴァイオリニストまつのじん(松野迅)さんのご意見から考える」と題して、今回は全紹介です。

ピアノのような鍵盤楽器はみな右利き用だ、という事実をもっと多くの人に知っていただきたいものです。
「左利きは左利き用の道具を!」という時代に逆行しているという現実を、考え直していただきたいのです。

音楽は器楽演奏も含めて、幼児から親しむことが多いので、特に幼児向けの音楽教室では、当然のごとく右利き演奏を教えています。
しかし、先ほども言いましたように、「左利きは左利きのままで!」という時代にこれはやはり逆行している、というのが私の考えです。

幼児はまだ利き手が十分発達していないので、どちらでもいいじゃないか、と考える人もいるかもしれません。
しかしよく観察していれば、「強度の左利きの子」はすぐに分かります。
「中間的な子」の場合は、右使いでもいいじゃないか、となり得ますが、それ以外は絶対に左利き対応がふさわしいと考えます。

余談が長くなりました。
今日はこのへんで。

 

*注:
利き手には、“「右利き」と「左利き」の2種類がある”のではありません。
各人の利き手を調べる「利き手テスト」というものがあります。
最もよく知られたスタンダードな「エディンバラ(EDINBURGH)利き手テスト」、日本人向けに考えられた「H.N.きき手テスト」、比較的新しい「チャップマン(CHAPMAN)利き手テスト」、もっとも新しい「フランダース(FLANDERS)利き手テスト」などがあります。
それぞれの調査結果を右端に「強い右利き」、左端にその逆のほとんど動作で左手を使う「強い左利き」を置いたグラフに描きますと、それぞれに該当する人たちが「J」字型に分布するといいます。

右端に、ほとんどの動作で右手を使う「強い右利き」の人が最も多く(「J」字の長い部分に相当する)、左端に「強い左利き」の人がちいさな山(「J」字の左端のはねた部分に相当する)を作ります。
この間の「J」字の鍋底の部分に当たるのが、主に右手を使うが時に左手を使える「弱い右利き」からその逆の主に左利きだけれど右手も使える「弱い左利き」の人たちです。

この、「弱い右利き」や「弱い左利き」の人たちを「強い右利き」と「強い左利き」のあいだに存在するという意味で「中間の人(子)」と私は呼んでいます。
人は、それぞれに利き手の偏りの度合いが異なり、一言で「○○利き」と決め付けられるものではないということです。

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