私の読書論193-私の年間ベスト3-2024年〈フィクション系〉初読編『エクトール・セルヴァダック』ヴェルヌ-楽しい読書383号
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2025(令和6)年2月28日号(vol.18 no.2/No.383)
「私の読書論193-私の年間ベスト3-2024年〈フィクション系〉初読編
『エクトール・セルヴァダック』ジュール・ヴェルヌ」
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2025(令和6)年2月28日号(vol.18 no.2/No.383)
「私の読書論193-私の年間ベスト3-2024年〈フィクション系〉初読編
『エクトール・セルヴァダック』ジュール・ヴェルヌ」
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2月も終わりますが、昨年2024年の私の年間ベスト3を紹介する
〈フィクション系〉の2回目、初読編です。
〈フィクション系〉は、小説や詩などの創作ものです。
昨年読んだ本は、全部で60冊まで届かず、
フィクション系も、再読を含めてなんとか40冊程度。
そのうち初読は、25冊程度。
その中から、<フィクション系>の初読編ベスト3を――。
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- 今年はジュール・ヴェルヌ没後120年 -
~ 私の年間ベスト3・2024フィクション系(後編) ~
2024年フィクション系<初読編ベスト3>
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●<初読編ベスト3>候補――メルマガ用の本から
まずは、メルマガ用に読んだ本の中から、
これは良かったという本を上げてみましょう。
◎<左利きミステリ>から
・『日本探偵小説全集1 黒岩涙香 小酒井不木 甲賀三郎』」
創元推理文庫 1984/12/22
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――黒岩涙香の翻案小説「血の文字」は、フランスのガボリオの
<左利きミステリ>「バティニョールの老人」が元となった短編。
甲賀三郎の「琥珀のパイプ」も<左利きミステリ>でした。
◎2024年岩波文庫フェアの作家<ディーノ・ブッツァーティ>から
・『神を見た犬』ディーノ・ブッツァーティ 関口 英子/訳
光文社古典新訳文庫 2007/4/12
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――『タタール人の砂漠』の参考として読んだ短編集でしたが、
いくつか印象に残る作品がありました。
そのうちのひとつ「七階」は、色々調べてみましたところ、
『謎の物語』紀田 順一郎/編 ちくま文庫 2012/2/1
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の一編でした。
他に、「コロンブレ」や表題作「神を見た犬」「天国からの脱落」
「驕らぬ心」「戦艦《死(トート)》」など、一読の価値ありでしょう。
◎「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2024から
・『博士の愛した数式』小川洋子 新潮文庫 2005/11/26
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――このフェアで選んだ三作のなかでは、これが一番でしょうか。
いわゆる「奇蹟」がストーリー内で起きていない、
といえばそうですが、奇跡的な出会いの物語でした。
●<初読編ベスト3>候補――短編集から
・『ガイズ&ドールズ』デイモン・ラニアン/著、田口俊樹/訳
新潮文庫 2024.5.29
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――一部の短編は、加島祥造さんの訳で昔読んでいるのですが、
改めて読んでも楽しい作品ばかりでした。一見軽い小説に見えますが、
人生を考えさせる一面もあり、人情ものという言い方もできます。
・『クイーンの定員I 傑作短編で読むミステリー史』
エラリー・クイーン/著 各務 三郎/編 光文社 1984/5/1
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・『クイーンの定員II 傑作短編で読むミステリー史』
エラリー・クイーン/著 各務 三郎/編 光文社 1984/6/1
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・『クイーンの定員III 傑作短編で読むミステリー史』
エラリー・クイーン/著 各務 三郎/編 光文社 1984/9/1
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――エラリー・クイーン選の海外の短編ミステリ史を改めてお勉強。
上のラニアンの短編集もその一冊として紹介されています。
おしまいの方の短編集のいくつかは、
私のリアルと一致している部分があり、懐かしいものがありました。
【エドワード・D・ホック】
・『怪盗ニック全仕事2』エドワード・D・ホック/著 木村 二郎/訳
創元推理文庫 2015/8/29
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・『怪盗ニック全仕事3』エドワード・D・ホック/著 木村 二郎/訳
創元推理文庫 2016/6/22
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――その昔、雑誌『ミステリマガジン』やハヤカワ・ミステリ等で
親しんでいた、好みのキャラクターの一人。軽い娯楽小説で、
今読んでも楽しめます。続けて読んでいるとちょっとマンネリっぽく
感じることもあります。しかし、一作ずつ工夫が凝らしてあり、
雑誌掲載時、人気シリーズだったことが実感できます。カバー絵には、
それぞれの作品での盗品が散りばめられていて、これを探すのも
楽しみの一つでしょうね。
・『ガラスの橋 ロバート・アーサー自選傑作集』
ロバート・アーサー/著 小林 晋/訳 扶桑社 海外文庫 2023/7/2
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――アンソロジーで読んだ名品「マニング氏の金の木」「ガラスの橋」
他、「極悪と老嬢」や「非常な男」といったおもしろい作品も収録。
・『歌うダイアモンド』ヘレン・マクロイ/著 好野 理恵ほか/訳
創元推理文庫 2015/2/27
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――別れた夫ブレッド・ハリデーによる序文がいい。
ベイジル・ウィリング博士ものの長編の原型「鏡もて見るごとく」や
表題作「歌うダイアモンド」等のミステリ意外にSFも含めた短編集。
・『おもいでエマノン』梶尾 真治/著 鶴田 謙二/イラスト
徳間デュアル文庫 2000/9/1
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――表題作は<エマノン>シリーズの第一作で、
SF短編のオールタイム・ベストでも上位に上がる名編です。
鶴田さんのイラストとともに、気になる一編といっていいでしょう。
●<初読編ベスト3>候補――長編から
【ジュール・ヴェルヌ】
・『エクトール・セルヴァダック』ジュール・ヴェルヌ/著 石橋正孝/訳
インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション 2023/4/21
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――小彗星の接近という天変地異により、地球から小惑星側に移動した
人々の冒険というヴェルヌには珍しい宇宙ものの冒険物語。
・『ハテラス船長の航海と冒険』ジュール・ヴェルヌ/著 荒原邦博/訳
インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉コレクション 2021/6/30
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――地理的冒険の時代の小説で、当時はまだ人類未踏の地であった、
北極点を目指す狂的なハテラス船長に率いられた人々の冒険を描く。
・『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/著 上野 元美/訳
ハヤカワ・ミステリ 2013/12/6
――小惑星衝突が不可避という極限の状況の中でも職務に励む新人刑事の
真摯な姿が読ませます。
《私は、あたえられた務めをきちんと果たそうとする人間が好きだ。》
《私は警察官だ。ずっとなりたいと思っていた。》
夜勤専門のパトロール警官だったときも、
《すごく楽しかった。去年の夏でさえも楽しかった。
とんでもないことが起きて、時代が変わり、そして秋になって、
仕事がどんどんやりにくくなり、どんどん訳もわからなくなって
いっても、やっぱり大好きだった。》
残された時間を自分のために使うために職場を離れる人々がでるなか、
欠員補充で刑事に昇格したのですが、
タイミングが悪かったのか運が悪かったのか、失望感を味わっていた。
そんなとき、殺人事件が起き、期待に胸を躍らせる……。
《そしていま、今日、ここでついに、(略)なんとまあ、
これがそうかもしれないと考えている。ついに出会えたかも。》
(文庫版)『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/著 上野 元美/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2016/6/9
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・『受験生は謎解きに向かない』ホリー・ジャクソン/著 服部 京子/訳
創元推理文庫 2024/1/11
――日本でも好評だった<女子高生ピップ>シリーズ三部作の主人公の
前日譚。架空の殺人事件の犯人当てゲームを描く小品(中編)ですが、
いかにもな高校生ピップらしさと、第一作の人物がチラッと登場する
ラストが読みどころで、三部作の読者なら十分楽しめるでしょう。
(Amazonで見る)
●2024年フィクション系<初読編べスト3>
☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡
【2024年フィクション系<初読編べスト3>】
(1)『エクトール・セルヴァダック』ジュール・ヴェルヌ/著
石橋正孝/訳 インスクリプト ジュール・ヴェルヌ〈驚異の旅〉
コレクション 2023/4/21
(Amazonで見る)
(2)『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/著 上野 元美/訳
ハヤカワ・ミステリ 2013/12/6
(文庫版)『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース/著 上野 元美/訳
ハヤカワ・ミステリ文庫 2016/6/9
(Amazonで見る)
(3)『ガイズ&ドールズ』デイモン・ラニアン/著、田口俊樹/訳
新潮文庫 2024.5.29
『ガイズ&ドールズ』(Amazonで見る)
★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡
(3)は、その一部をかつて読んだ、という名短編を含む新訳短編集。
昔なじみといった感じで、特別な感情が入っているかもしれませんね。
(1)は、中学生時代から私の大好きな作家である、ジュール・ヴェルヌの
貴重な、宇宙版の<ロビンソン>ものの長編冒険小説といった印象。
結末が本となったものはヴェルヌのものではなく、編集者である
エッツェルによるもので、ヴェルヌが認めたものだといいます。
(2)は、上のヴェルヌの長編同様、来たるべき彗星の衝突という終末を
背景に描く、人々の生き方に関わる小説で、読み応えがありました。
続刊が二冊あり、それを読むのも楽しみです。
ヴェルヌの作品も、ヴェルヌの結末を採用しますと、地球環境の破壊に
伴う、文明社会の崩壊なども当然起こり、その後の物語をあれこれと
想像してしまいます。
ひょっとすると、そういう続きの物語もあったのかもしれません。
奔放なイマジネーションで読ませる冒険物語『地底旅行』の作家、
ヴェルヌのイマジネーションをもってすれば、こういう結末もありか、
という気がします。
それに対して、夢オチのようにまとめる編集者エッツェルの結末は、
無難ではありますが、ある意味で軽いとも言える結末です。
小説としてまとめる意味では、
それはそれでいいのかもしれませんけれど……。
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本誌では、「私の読書論194?-私の年間ベスト3-2024年〈フィクション系〉初読編『エクトール・セルヴァダック』ジュール・ヴェルヌ」と題して、今回も全文転載紹介です。
今回は、全文紹介です。
特に理由はありませんけれど、ときどきこういう風に、メルマガ内容を公開することで、メルマガの宣伝をしてみようということです。
宣伝になればいいのですが。
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