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2024.04.30

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(28)陶淵明(5)「居を移す二首」他-楽しい読書365号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

 

2024(令和6)年4月30日号(vol.17 no.8/No.365)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(28)陶淵明(5)
「居を移す二首 其の二」
「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」」

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年4月30日号(vol.17 no.8/No.365)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(28)陶淵明(5)
「居を移す二首 其の二」
「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」」
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 今月の「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」は引き続き、
 陶淵明の詩から「居を移す二首」と
 「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」を。 

 

(陶淵明 第1回)
2023(令和5)年9月30日号(No.351)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(24)陶淵明(1)「五柳先生伝」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.30
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(24)陶淵明(1)
「五柳先生伝」-楽しい読書351号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-b68999.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d371c2c2141932565db7fac1a67c1150

(第2回)
2023(令和5)年10月31日号(No.352)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(25)陶淵明(2)
「飲酒二十首」から「序」と代表作「其の五」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.10.31
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(25)陶淵明(2)
「飲酒二十首 其の五」-楽しい読書353号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-7e3a1c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/fb0ed419e609fae5ca4d419eb039fc2a

(第3回)
2024(令和6)年2月29日号(No.361)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(26)陶淵明(3)
「園田の居に帰る五首 其の一・其の二」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.2.29
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(26)陶淵明(3)
「園田の居に帰る五首(其一・二)」-楽しい読書361号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/02/post-40f92c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/554a8f921e059526fa614aeb7885735b

(第4回)
2024(令和6)年3月31日号(vol.17 no.6/No.363)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)陶淵明(4)
「園田の居に帰る五首 其の三・其の四」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.3.31
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)陶淵明(4)
「園田の居に帰る五首(其三・四)」-楽しい読書363号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2024/03/post-23dc09.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/983a4bfc7e91c974e60c7924b461f563

 

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◆ 農事にいそしむ ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(28)

  ~ 陶淵明(5) ~
 「居を移す二首 其の二」
 「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」」
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今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より
(Amazonで見る)

 

 

 

230930touennmei

 

 ●陶淵明、農事にいそしむ

今回は、隠居後二年で火事にあい、引っ越すこととなり、
その直後に使った詩「居を移す二首」から「其の二」と
「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」を紹介しましょう。

「居を移す二首」は、
 《引っ越し直後に新しい隣近所の人たちと宴会を開き、
  その場で挨拶がわりに“どうぞこれからよろしくお願いします”
  と詠んだもののようです。》p.349

 

 ●「居を移す二首 其の二」

移居二首   居を移す二首  陶淵明

 其二     其の二

春秋多佳日  春秋(しゆんじゆう) 佳日(かじつ)多(おほ)く
登高賦新詩  高(たか)きに登(のぼ)つて新詩(しんし)賦(ふ)す
過門更相呼  門(もん)を過(よぎ)りて更(こも)ごも相(あい)呼(よ)び
有酒斟酌之  酒(さけ)有(あ)らば之(これ)を斟酌(しんしやく)す

 春と秋には天気のよい日が多く
 小高い所に登って新しい詩を作りたくなる
 近所の人々の戸口を訪ねてお互いを呼び合い
 そこに酒があれば酌み交わす

《コミュニケーションを円滑にする、
“これからそういうおつき合いをしましょう”と呼びかけている雰囲気》
p.349 だといいます。

 

農務各自帰  農務(のうむ)には各自(かくじ)帰(かへ)り
閒暇輒相思  閒暇(かんか)には輒(すなは)ち相(あひ)思(おも)ふ
相思則披衣  相(あひ)思(おも)へば
        則(すなは)ち衣(ころも)を披(ひら)き
言笑無厭時  言笑(げんしよう) 厭(あ)く時(とき)無(な)し

 とはいえ、畑のおつとめがあればそれぞれ自分の畑に戻り
 手が空けばその都度、お互いのことを思い出す
 思い出せば、着物をはおって出かけ
 近所の人同士で談笑し、飽きることがない

 

此理将不勝  此(こ)の理(り) 将(は)た勝(まさ)らざらんや
無為忽去茲  忽(たちま)ち茲(ここ)を去(さ)るを為(な)す無(なか)らん
衣食当須紀  衣食(いしょく)
        当(まさ)に須(すべから)く紀(をさ)むべし
力耕不吾欺  力耕(りよくこう) 吾(われ)を欺(あざむ)かず

 こういう生き方の道筋は、さて優れていないか、どうでしょうか
 ふいに深い考えもなしに、この村を立ち去るようなことはしません
 自分が着るものや食べるものは当然、自分で調えるもの
 一心に骨折って農作業する生活は、私たちを欺いたりしませんよね

農作業にいそしみ、《この村でみなさんとずっと一緒に暮らしますよ》
ですから《どうぞよろしく、仲間に入れてください》と、
《彼の社交的な面、公の面》が見られる詩だ、といいます。

 

 ●「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」

次は、陶淵明46歳の秋頃の作品。
火事で焼け出され、貧窮し、
いよいよ農作業に力を入れなければならない状況。

儒教は世直しの思想で、この孔子の教えに従い、官吏となりながらも、
乱れた世に志も遂げられず、職をなげうった陶淵明。

この決断も孔子の教え、『論語』に依拠したもので、そこを押さえれば、
この詩はわかりやすい、と宇野さんは言います。

『論語』「泰伯第八」に「天下道有れば則(すなわ)ち見(あらわ)れ、
道無ければ則ち隠る」とあり、

 《世の中が治まっている時はどんどん出て行って世直しをすべきだが、
  凡人は隠居して農耕生活でもするがよい――
  陶淵明はどうやらこの説に従って隠居したのではないか。
  ところが実際にそうしてみるとうまくゆかない、
  “これはどういうことだ”
  と孔子さまに食って掛かっている感じです》p.350

 

庚戌歳九月中於西田穫早稲  庚戌(こうじゆつ)の年(とし)
              九月中(くがつちゆう)
              西田(せいでん)に於(お)いて
              早稲(そうとう)を穫(か)る  陶淵明

人生帰有道  人生(じんせい) 有道(ゆうどう)に帰(き)す
衣食固其端  衣食(いしょく) 固(もと)より其(そ)の端(たん)なり
孰是都不営  孰(たれ)か是(こ)れ都(すべ)て営(いとな)まずして
而以求自安  而(しか)も以(もつ)て
        自(みづか)ら安(やす)んずるを求(もと)めんや

 “人は道徳を修めることが肝心だ”と孔子さまは言われた
 それはもっともだが、衣食が安定していることがその前提になる筈だ
 衣食のことにまったく関わらず、
 しかも自分を安心させようとするのは誰か、いやそんな人は誰もいない

 

冒頭、『論語』への疑問から始まる。
「人生 有道に帰す」は引用。
『論語』「学而第一」で、
 《学ぼうとする者は、飽食や美食を求めず、安楽な住まいをも求めず、
  やるべき物事はてきぱきと迅速に行い、言葉遣いに気をつけ、
  お手本となる立派な人について正す。そうであればこそ、
  学ぶのが好きな人と言える》p.352
と、
 《学ぶ者は、衣食住にこだわるな、
  物質的満足より精神的充実を目指しなさい》p.352
という。

陶淵明はそれに共感していたけれど、実際に暮らしてみると、
どうもそれだけではすまないぞ、と考えるようになった……。

 

開春理常業  開春(かいしゆん) 常業(じようぎよう)を理(をさ)め
歳功聊可観  歳功(さいこう) 聊(いささ)か観(み)る可(べ)し
晨出肆微勤  晨(あした)に出(い)でて微勤(びきん)を肆(つく)し
日入負耒還  日(ひ)入(い)りて耒(すき)を負(お)うて還(かへ)る

 春のはじめから普段の農作業をきちんとすれば、
 その年の収穫はまずまず見るべきものになる筈だ
 だから私は朝早くから畑に出てささやかな努力を傾け、
 日没とともに農具を背負って帰って来る

 

山中饒霜露  山中(さんちゆう) 霜露(そうろ)饒(おほ)く
風気亦先寒  風気(ふうき)も亦(また) 先(ま)づ寒(さむ)し
田家豈不苦  田家(でんか) 豈(あに) 苦(くる)しからざらんや
弗獲辞此難  此(こ)の難(なん)を辞(じ)するを獲(え)ず

 私の家があるのは山の中で、霜や露がことのほか多い
 風も空気も平地に先立ってどんどん冷えてしまう
 そういう農耕生活がどうして苦しくない筈があろうか、たいへん苦しい
 しかしこの難儀を避けることはできない

 

日々の農作業のつらさを告白します。

 

四体誠乃疲  四体(したい) 誠(まこと)に乃(すなは)ち疲(つか)る
庶無異患干  庶(こひねが)はくは
        異患(いかん)の干(をか)す無(なか)らんことを
盥濯息簷下  盥濯(かんたく)して簷下(えんか)に息(いこ)ひ
斗酒散襟顏  斗酒(としゆ)もて襟顏(きんがん)を散(さん)ず

 両手両足がまったくもうくたくたである
 どうかこの上は、よきせぬ災いが襲うことのないよう願いたい
 一日の終わりに手や足を洗いすすぎ、家の軒下で休み、
 お酒を飲んで心と表情をくつろがせる

 

「斗酒」=少量の酒、これが唯一の楽しみだ、と。

 

遥遥沮溺心  遥遥(ようよう)たる沮溺(そでき)の心(こころ)
千載乃相関  千載(せんざい) 乃(すなは)ち相関(あひかか)はる
但願常如此  但だ願ふ 常に此の如きを
躬耕非所歎  躬耕は歎ずる所に非ず

 こういう生活を続ける中で、遙か昔、孔子に批判的であった隠者、
 長沮(ちょうそ)・桀溺(けつでき)の気持ちが
 千年の隔たりを超えてなんとまあ、今ごろ私と通い合った
 いつまでもこういう生活が続くことをひとえに願う
 私は農作業については、歎くべきこととは思っていない

 

孔子に批判的であった隠者、長沮と桀溺とは、『論語』「微子第十八」に
道に迷った孔子一行が、農作業中の二人に道を尋ねると、
 《「孔子なら中国全体をわたり歩いているから、
  道は知っている筈だろう」と道を教えてくれませんでした。》p.354
という二人で、彼らは孔子の生き方に賛成せず、
 《「世の中は悪い方に流れていて、もう正すことはできない。
  無理して世直しするのではなく、わしらのように宮仕えせず、
  農作業をして生きる方がいい」》p.354
それに対して孔子は、
 《「われわれは人である限り、完全に世の中を避けることはできない。
  鳥や獣と一緒に暮らすのは無理だ。私はあくまで人間たちとともに
  いきてゆきたい。だから世直しを志しているんだ」》p.354

で、陶淵明は千年を隔てて、この長沮と桀溺の気持ちが分かった、
というのです。

とはいえ陶淵明は、元は孔子の教えに従い隠居生活に入った身、
隠者にはなりきれず、新しい村の人たちとやって行こう、
という気持ちでいます。
新しい生活に馴染んでいこうという思いでいます。

 

前回紹介しました「園田の居に帰る五首」では、

 《観念的な理想や、隠居後の折々の感慨を述べた》p.355

陶淵明でしたが、

 《方向性が出ていない印象がありました。
  それがこの辺から農作業の実体験を通じて、
  本当の生き方を探る方向性がとりあえず見えて来たのか。
  なんとなく生き方の糸口がつかめましたよ、
  と孔子さまに報告しているのかな。それを借り物でなく、
  自分の言葉で述懐しはじめたのかもしれません。》pp.355-356

というのが、解説の宇野さんの言葉です。

 ・・・

生きるというのは、志を貫くにこしたことはないのでしょうけれど、
いざ、実際に生活を続けていくことは大変で、様々な問題もあり、
初志貫徹がなるものでもない、志は大切ですが、
一方で現実の中で生きていくためには、お金も必要ですし、
志だけでは生きていけません。
ある程度あきらめながら、どこかで現実とのあいだで、
折り合いを付けていかなければならない。

その辺の迷いなども徐々にその詩の中に出て来るようです。

次回は、その辺の心境を歌っているような作品を見て行ければ、
と思います。

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(28)陶淵明(5)「居を移す二首 其の二」「庚戌の年 九月中 西田に於いて早稲を穫る」 」と題して、今回も全文転載紹介です。

今回も田舎に帰った陶淵明さんの詩です。

田舎で農作業に日々を過ごす隠居さん、といえば今もあこがれる人が結構いそうな気がします。
しかし、これも作物が順調に育ってのことで、ひとたび天候不順や病虫害に見舞われれば、一年の苦労があっという間に水の泡ともなりかねず、なかなか大変な毎日が続きます。

孔子の教えに従いながらの日々の中で、そんな苦労も垣間見れる状況を描いています。

スローライフとか、田舎暮らしについて、色々と言われる時代ではありますが、いつの時代であっても、どこに行っても、人生とは苦労の種が尽きないもの。
強いて言えば、健康でさえあればなんとか我慢できるのかなあ、という感じですね。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.04.20

『左組通信』復活計画(29)『LL』復刻(2)LL3-週刊ヒッキイ第662号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第662号(Vol.20 no.7/No.662) 2024/4/20
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [29]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(2)LL3」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第662号(Vol.20 no.7/No.662) 2024/4/20
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [29]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(2)LL3」
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 今回も、季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の復刻ということで、
 ホームページに公開していたページのコピーです。
 (原文の明らかな誤りは修正しています。)

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [29]

  『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻 (2)
 
   (内容紹介)LL3
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

*(参照)――

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
(参照)※『レフティやすおの左組通信』のページ
○レフティやすおの左利き自分史年表
○レフティーズ・ライフ(LL)再録(1)全号目次 
240316-hgll01

 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代1
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03

 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第650号(No.649) 2023/10/7
「創刊19年に向けて―650号記念号―
 <左利きの人の自覚――意識の覚醒>が最も重要」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2023.10.7
<左利きの人の覚醒>左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
創刊19年記念号-第650号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-158a3d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/8396e0fae38c6eeab56013360f58d18e
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 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』LL3(概要)

LL3 1994-95(平成6-7)年 冬号 A5版4ページ

・前説 The Compliments of the New Year
新年明けましておめでとうございます。
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―鍋を囲む
・知恵小僧の左熟語の基礎知識 なんの意味ダス!? その1
 Words & Phrases―小学館『国語大辞典』より
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その3―はさみ(つづき)
・よい品がいつでも 手軽に 購入できるようにしよう!
―いろんな用途のはさみ
・左利きの本だなぁ その1 お勉強編
 The Books on the Left-handedness―
 スタンレー・コレン著『左利きは危険がいっぱい』
240420-ll3

 

 ●LL3 1994-95(平成6-7)年 冬号

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LL3 1994-95(平成6-7)年 冬号
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前説 The Compliments of the New Year
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新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年は、左利きの人にとって記念すべき年でありました。

新年早々、女子プロテニスの伊達公子選手(ラケットを持つ手は右だが、
 ファンにサインするときは左手にペンを持つ左利きのプレーヤー)が
 四大トーナメントのひとつ、全豪オープンで大活躍!
一月末には、左利き研究の世界的権威スタンレー・コレン博士の
『左利きは危険がいっぱい』の翻訳版が刊行されました。
三月に入ると、新製品情報誌『モノマガジン』に
「左利き生活向上委員会」なる連載コラムが誕生!
 コラム執筆者AK氏自らの発明になる左利き用品に始まり、
様々な情報が紹介されました。
夏には、この「レフティーズ・ライフ」が始まりました。
長島監督率いる巨人軍が熱戦のすえ日本一に輝く一方、
かつて長島と人気を二分した王貞治氏
(米大リーグのハンク・アーロンを上回る八百六十八本のホームランを
うった左の強打者)は、パ・リーグのダイエー監督に就任し、
長島巨人と覇を競うことに!
年末近く、女子バレーボールの大林素子選手(世界のベストテンに
 数えられる左利きのオールラウンド・プレイヤー)が突然の解雇。
 しかし、イタリアのプロリーグ入りが決定し、新しいスタートに!
アメリカでは、クリントン政権に対する批判票を受けて、中間選挙で
 民主党は大敗、上下両院で共和党に過半数を奪われる結果に。
今後のクリントン大統領(第42代。第38代フォード、一代おいて
 第40代レーガン、第41代ブッシュに続いて、近年5人中4人目の
 左利きの大統領*)の政局運営が注目されています。

さて、1995(平成七)年はどういう年になるでしょうか?
 皆様にとって、私にとって、良き年となりますように!

 

悲しいことが起こりました。大地震です!

幸い私のところは、不安定なものが幾つか落ちてきた程度で
無事でしたが…。
阪神淡路大震災の被災者の皆様には心からお見舞い申し上げます。

 

*参照:
『神々の左手―世界を変えた左利きたちの歴史』エド・ライト/著
ricorico/訳 スタジオタッククリエイティブ 2009/6/1
――「左利きの著名人/偉人」本。左利きの特徴(性格的・器質的な)を
挙げて、それが成功の一因であるとして、ラムセス大王から
ホワイトハウスの4人(原書発刊当時直近の米歴代大統領)まで、
世界を動かしてきた左利きの偉人たちの歴史を描く。
(Amazonで見る)

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・第44代大統領バラク・オバマ(2009-2017年)さんも左利き。

 

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左利きの生活 To Live In The Right-Handed World
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木枯らしの季節と言えば、やっぱり鍋がいいですねェ。
気の合った者同士がひとつの鍋をつつく、
楽しそうな雰囲気が漂ってきます。
まるで、つみきみほさんのカネテツのCMみたいな。

でもたったひとり左利きの人が混じるだけで、
なんとなくぎこちなく窮屈な思いをする人が出てきませんか?
 隣の人と手がかち合って、
どちらかが譲りあわなければならないような事が。
もしこんなときに、
「お前ひとりのためにせっかくの輪が乱れるやないか、
みんなで仲良う丸うなって一つの鍋つついてんのに、邪魔しやがって」
なんて言いだす人が出てくると、
それこそ和やかな雰囲気が吹っ飛んでしまう事になりかねません。
もちろん現在では、左利きだから左手にお箸を持つのは当たり前だ、
と考える人が増えてきてはいるのですが…。

小さい頃からずっと私は、
自由に席がとれるときは左端に座るようにしています。
そうすることで少しでも人様の邪魔にならないようにしているのです。
これはほとんどの左利きの人たちに言えることで、
たいていの人はそういう事に気を配っているようです。
右利きの人でそんなことを考えて座る人はいないのでは…?

先程の例で言えば、
私などはなるたけそういう場には出ないようにしています。
どうも人前でご飯を食べるのが苦手です。
ひとりで食べる方が気楽でいられるようです。
特定の人だけが犠牲になるのでなく、
みんなが少しずつ気を配ればいいのに、と思います。

ホラ、湯気の向こうに、≪希望≫という名の笑顔が見える――

 

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左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか? その3
Left-handed tools & goods
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前回につづいてハサミのことをもうしばらく―

ハサミの思い出といえば、こんな事がありました。
学校の工作の時間でしょうか。
級友たちは線に沿ってきれいに紙を切っていく――
試し切りもしないで。
しかし、自分はなかなか一回ではきれいに切れない。
試し切りをして初めて、線と刃の距離の勘が身について、
線に沿って切ることができるようになる。
どうしても人より遅くなるし、勘に頼っている分正確さに欠ける。
線をはみ出したり、切りすぎたりして曲がってしまう。
私は自分が不器用だと思っていました。

ところが、生れて初めて左利き用のハサミを使った時、
この秘密が明らかになったのです。
なんと、自分が特別不器用なのではなく、
自分にあった道具を使っていなかっただけだったのです! 

三十年の歳月が流れた今、
私は自分のことを決して器用だとは思いませんが、
かといって特別不器用だとも思っていません。
こんなささいなことの積み重ねが
大きな問題に発展していくのではないでしょうか。
「もしあの時、左利き用の道具を持っていたら?」
「もしあの時、学校の先生が左利きの子供に対して適切な指導を
していたら?」
自分のなかの何かが変わっていたかもしれない、……。

よい品がいつでも 手軽に 購入できるようにしよう!

さて、前回紹介したハサミは、ごく日常に用いる一般的なものでした。
他にも用途別にいろんな製品が作られています。
例えば、今私の手元にある、イギリスの通信販売会社
ANYTHING LEFT-HANDEDのカタログには、
家庭用・一般事務用・子供用などのふつうのハサミから、
洋裁用の裁ち鋏、ピンキング鋏、レースを切るものなど、料理用、
ヘア・カット用、爪切り用、園芸用、などなど各種掲載されています。

これら外国産のみならず国産でも各社から様々なものが
発売されているのですが、
実際に手に入れるとなると以外に大変なのです。
ごくふつうの事務用ハサミですら、
通りがかりのコンビニでさっと買えるわけではありません。
ましてや他の商品となると…。
また、価格も全体に二、三割高で、
これも普及への大きな壁になっています。

*参照:
イギリスの左利き用品専門通販「Anything Left-Handed」の1990年代の
カタログ表紙
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左利きの本だなぁ その1 お勉強編
The Books on the Left-handedness
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 スタンレー・コレン著『左利きは危険がいっぱい』

新登場のこのコーナーでは、左利きに関する本を紹介します。

先ず第一回目は、お勉強編です。

今回は、今までに私が手にした左利きに関する本の中で
もっとも新しく、かつもっとも詳しく論じられている、
スタンレー・コレン著『左利きは危険がいっぱい』石山鈴子訳
 “THE LEFT-HANDER SYNDROME” (文藝春秋 ¥2000
 1994年1月発行)を紹介します。

著者は、カナダのブリティシュ・コロンビア大学の心理学教授で、
からだの利き側に関する世界的権威。

本書は、長年の研究の成果に基づく、
左利きの謎に迫った決定的な書物である。
学術的な側面の記述もあるが、
長年の研究の日々のなかでの体験も合わせてつづられており、
読み物として充分に楽しめる。

左利きに対する無理解や認識不足の結果から起こる、
さまざまね不便さ、不平等さ、理不尽さなど左利きであることの
ハンディキャップのいろいろな実例や、
社会のなかに潜んでいる差別的な事例の紹介に始まり、
利き手に関する調査の難しさ、利き手研究の歴史の紹介へと進み、
さまざまな研究の成果が紹介される――
高齢出産などの出産時の障害が左利きを生む可能性があること等々。

そして、最大の謎――なぜ高齢者に左利きが少ないのか――に迫る。
 左利きは九年早死にするという、衝撃的な研究結果が示され、
それに対処する社会への提言で結ばれている。

左利きの人はもちろん、
右利きの人々にも広く読んでいただきたい本である。

たとえば、左利きに対して無意識のうちに抱いている
マイナス・イメージの実態を浮かび上がらせる質問がある。

 次の○○○に「左利き」という言葉を当てはめたとき、
二番目の話し手の言わんとする意味をどう解釈するか、というもの。

A 「どんな具合でした?」
B 「彼の振るまいは、まるで○○○のようでしたよ」

 例えば、「天才」とか「英雄」という言葉をあてはめると、
万事うまく行ったことになる。
逆に、「大バカ者」とか「まぬけ」といった言葉を入れると、
ことがはかばかしくなかったことになる。さて、あなたの場合は?

英語で言う”food of thought” 思考の糧、
考えるきっかけを与えてくれる本である。

 

*スタンレー・コレン著『左利きは危険がいっぱい』石山鈴子訳
 文藝春秋 1994/1/1
(Amazonで見る)

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [29]『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(2)LL3」と題して、今回も全紹介です。

昔のことを思い出します。
少しでも左利きの仲間のためになるようなものを、という気持ちではじめたのですが、徐々に情報を得て、より読み応えのあるものに変えて行けた、という印象があります。
偶然、いろんな本と出会うことができ、それらを紹介するだけで内容を充実させることができました。
今のようにネットもなく(アメリカ辺りではすでに始まっていたようですけれど)、情報源としては本や雑誌といったものだけ。
あとは自分の手(問い合わせの手紙等)と足(お店巡り)で見つけていくしかない状況のなかでは、よくやっていたと思います。

それを思いますと、今はちょっとダメだなあ、というところでしょうか。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.04.15

私の読書論183-トールキン『指輪物語』70周年-楽しい読書364号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2024(令和6)年4月15日号(vol.17 no.7/No.364)
「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年4月15日号(vol.17 no.7/No.364)
「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」
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 今年1954年から70年となります。
 この年には、偉大なる人々や偉大なる創作物が生まれています。

 最初に、1月生まれの
 “ユーミン”の愛称で知られる荒井由実、現・松任谷由実さん。

 かつてオリンピックの野球の「長嶋ジャパン」で、
 長嶋さんが倒れて代役の監督を務めた、
 現役時代は「絶好調男」と呼ばれた、元プロ野球巨人軍の中畑清さん。

 歴代最長の任期を記録した元首相、故・安倍晋三さん。

 (もう一人、一部の人々――主に左利きの、
  そのまた一部の人たちの間では、
  左利き界の“第一人者”とか“大師匠”とか呼ばれる、
  「レフティやすお」さんも1月生まれです)

 創作物でいいますと、最新作がアカデミー賞を受賞したことで
 改めて話題となっている<ゴジラ>シリーズの第一作「ゴジラ」。

 海外では、そう、今回取り上げます『指輪物語』です。

 『指輪物語』は全三巻(普及している邦訳版では全六巻)ですが、
 その第一巻(邦訳版「旅の仲間」上下)、
 第二巻(同「二つの塔」上下)が、本国イギリスで出版されたのが、
 この年でした。ちなみに、第三巻(同「王の帰還」上下)は翌1955年。

 ということで今回は、
 J・R・R・トールキンの『指輪物語』について――。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 1954年の奇跡!? ◆

  ~ 『指輪物語』『ホビットの冒険』の作家トールキン ~

 『指輪物語』第一巻・第二巻出版(1954年)から70周年
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 ●『最新版 指輪物語』文庫版・全六巻(評論社)

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2022年に、『指輪物語』の邦訳版の出版元・評論社から、
『最新版 指輪物語』の文庫版・全六巻が出ました。

2022年9月、AmazonのPrime Videoプライム・ビデオ
『ロード・オブ・ザ・リング――力の指輪 第1シーズン』
の配信に合わせたもののようで、その広告の帯が付いています。

出版社の紹介文にも、

《ファンタジー文学の最高峰『指輪物語』が
 日本で初刊行された1972年から奇しくも50年目の2022年、
 訳文と固有名詞を全面的に見直した日本語訳の完成形として、
 本最新版をお届けします。》

 

この文庫のことは知らなかったのですが、
これという気になる本がないなあ、と近所の本屋さんをのぞいていて、
見つけました。

従来あった文庫版は、活字が小さくて、文庫派の私でしたが、
買う気になれずにいたものでした。

本屋さんにあったのは、この全六巻だけでしたが、
第七巻「資料編」も2023年に出ています。


『最新版 指輪物語1 旅の仲間 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
(Amazonで見る)

《遠い昔、魔王サウロンが、悪しき力の限りを注ぎ込んで作った、
 指輪をめぐる物語。全世界に、一億人を超えるファンを持つ
 不滅のファンタジーが、ここに幕を開ける。》
631ページ

『最新版 指輪物語2 旅の仲間 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
(Amazonで見る)

《瀬田・田中訳の集大成
 黒の乗手の追跡から、辛くも逃れたフロドが目を覚ましたところは、
 「裂け谷」のエルロンドの館。翌朝、モルドールに抵抗する種族――
 魔法使い、エルフ、人間、ドワーフ、ホビット――の代表が参加する
 会議がエルロンドの主催で開かれ、指輪をどのように扱うかについて
 話し合われた。さて、その決定は……》
547ページ

『最新版 指輪物語3 二つの塔 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
(Amazonで見る)

《瀬田・田中訳の集大成
 ガンダルフを失った悲しみを、ロスローリエンで癒した一行は、
 大河アンドゥインを漕ぎ下り、とうとう別れ道へ差し掛かる。
 フロドの指輪棄却の決意を知ったボロミルは、それを奪おうとする。
 逃げ出すフロド。悔悟したボロミルは、オークとの戦いに倒れ、
 メリーとピピンはさらわれる。ここに旅の仲間は離散した……》
545ページ

『最新版 指輪物語4 二つの塔 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
(Amazonで見る)

《瀬田・田中訳の集大成
 ボロミルから逃れて一人モルドールに向かおうとするフロド。
 しかし、忠実なサムは、出し抜かれずに後を追う。
 大河アンドゥインの東側に連なる急峻エミュン・ムイルの荒涼たる
 山中を、やっとのことで抜け出した二人だったが、
 その後ろに忍び寄る一つの影が……》
418ページ

『最新版 指輪物語5 王の帰還 上』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
(Amazonで見る)

《瀬田・田中訳の集大成
 堕落した魔法使いサルマンが所持していたパランティールを、
 好奇心に勝てずに覗き込んだピピンは、魔王サウロンの見出すところ
 となる。ガンダルフは、パランティールをアラゴルンに預け、
 ピピンを連れてミナス・ティリスへ。
 一方ローハン軍召集のためにエドラスに向かう騎士たち。
 空にはナズグールが飛び交い、風雲急を告げる中、
 物語は佳境へと近づく。》
436ページ

『最新版 指輪物語6 王の帰還 下』J・R・R・トールキン/著
瀬田貞二, 田中明子/訳 評論社文庫 2022/10/19
(Amazonで見る)

《瀬田・田中訳の集大成
 フロドをオークの手から奪い返した忠実なサム。
 二人は、助け合いながら最後の使命を果たすべく滅びの罅裂を目指す。
 一方、冥王の目をフロドたちから逸らすべく、黒門前に兵を進めた
 ガンダルフやアラゴルンをはじめとする西国の勇士たちは、
 圧倒的な兵力の差のため暗黒の渦に吞み込まれようとしていた……
 ここに「一つの指輪」をめぐる物語の大団円を迎える。》
403ページ

『最新版 指輪物語7 追補編』J・R・R・トールキン/著 瀬田貞二,
田中明子/訳 評論社文庫 2023/5/30
(Amazonで見る)

《瀬田、田中訳の完成形として、日本初刊行以来50年の
 2022年に刊行を始めた『最新版指輪物語』の最終巻。
 固有名詞と訳文の見直しを行った。本編では語られていない
 歴史の記述、固有名詞便覧など、『指輪物語』世界の案内書。》

 

 ●著者J・R・R・トールキンについて

――出版社より(著者について)
1892~1973年。南アフリカのブルームフォンテンに生まれ、3歳のとき、
イギリスに移住。オックスフォード大学卒業。第一次世界大戦に従軍後、
1925年からオックスフォード大学教授。中世の英語学と文学を中心に
講じた。『指輪物語』は、20世紀最高のファンタジーとされる。
これに先立つ物語として『ホビットの冒険』『シルマリルの物語』
『ベレンとルーシエン』があるほか、児童向けの作品に
『トールキン小品集』『サンタ・クロースからの手紙』などがある。

というわけで、2023年に没後50年として出版されたのが、

『ユリイカ 2023年11月臨時増刊号』総特集◎J・R・R・トールキン
 ―没後50年――異世界ファンタジーの帰還― 青土社 2023/10/5
(Eureka 2023 no.811 vol.55-14)
(Amazonで見る)

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《『指輪物語』や『ホビットの冒険』といった作品において壮大かつ
 緻密な世界を構築し、様々な”読み直し”の旋風を巻き起こしてきた
 J・R・R・トールキン。後続世代による模倣と継承から、映像や
 ゲームがもたらしたビジュアライズの時代を経て、没後から半世紀が
 経つ本年、終わらざりしトールキン論に臨みたい。》

目次
❖異世界は何度でも /上橋菜穂子 /小谷真理 /井辻朱美
 /パトリック・カリー(訳=鏡リュウジ)
❖汲み尽くしがたい源流 /鶴岡真弓 /一條麻美子 /石野裕子
❖座談会 /大久保ゆう+川野芽生+逆卷しとね
❖遠く聞ゆるは懐かしき調べ /伊藤尽 /清水知子 /宮本裕子
 /木澤佐登志 /森瀬繚
❖テーブルを囲んで /上田明
❖創造のカレイドスコープ /辺見葉子 /髙橋勇
 /アラリック・ホール(訳=岡本広毅)
❖エルフ語入門 /伊藤尽
❖言葉は輪廻する /山本史郎 /小野文 /小澤実
❖叙述から始めよ /桑木野幸司 /勝田悠紀 /岡田進之介
 /石倉敏明 /渡邉裕子
❖資料 /髙橋勇 編

 

 ●『指輪物語』の思い出

私がこの作品を読んでのは、1979年6月から7月の初めについて。
この作品を読もうと思ったのは、山口の女子大生からお便りをもらい、
その中にオススメ本としてこの本のことが書かれていたからでした。

これではよく事情がおわかりにならないでしょうから、
もう少し説明します。

当時の私の愛読雑誌のひとつだった、
故やなせたかしさん編集の『詩とメルヘン』の読者投書欄に、
私の投書が掲載され、それを読んだ人が手紙をくれたわけです。

以前このメルマガでも紹介しました、ハヤカワSF文庫から出た、
ゼナ・ヘンダースン『果てしなき旅路』のような作品を書いてみたい、
というのが私の投書でした。

疎外された立場の人たちが仲間を得て、彼らの手助けもあり、
自分を肯定できるようになり自立して行く、といった内容の作品で、
私のお気に入りの作品でした。

*参照:
【ゼナ・ヘンダースン <ピープル>シリーズ
  『果てしなき旅路』『血は異ならず』ハヤカワ文庫SF】

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『果てしなき旅路』ゼナ・ヘンダースン/著 深町眞理子/訳
ハヤカワ文庫 SF ピープル・シリーズ 1978/7/1(1959)
(Amazonで見る)

・2023(令和5)年1月15日号(No.334)「私の読書論165-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前編)総リスト&再読編」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.1.15
私の読書論165-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前)総リスト&再読編
-楽しい読書334号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-ce3d4b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/963db458297d62363a53bf4aaefe9930

・2023(令和5)年1月31日号(No.335)「私の読書論166-
私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後編)再読編&初読編」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.1.31
私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後)初読編
-楽しい読書335号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/01/post-059ad0.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/3d8f4210a27677ac55d433cea1778596

 

それに対して、お返しにご自分のお気に入りの作品として、
この『指輪物語』が紹介されていました。

さっそく図書館で借りて読み始めました。
長い作品でしたが、面白く読んだ記憶があります。

その後、この作品の前作というべき児童向けの『ホビットの冒険』も
楽しみました。

45年前の思い出話です。


『ホビットの冒険 上』J・R・R・トールキン/著 瀬田 貞二/訳
岩波少年文庫58 2000/8/18
(Amazonで見る)
《ひっこみじあんで、気のいいホビット小人のビルボ・バギンズは、
 ある日、魔法使いガンダルフと13人のドワーフ小人に誘いだされて、
 竜に奪われた宝をとり返しに旅立つ。79年刊の新版。》
336ページ
『ホビットの冒険 下』J・R・R・トールキン/著 瀬田 貞二/訳
岩波少年文庫59 2000/8/18
(Amazonで見る)
《魔法の指輪を手に入れたビルボとその一行は、やみの森をぬけ、
 囚われた岩屋からもなんとか脱出に成功。ビルボたちは、
 いよいよ恐ろしい竜スマウグに命がけの戦いを挑む。79年刊の新版。》
282ページ

『新版 ホビット――ゆきてかえりし物語 <第四版・注釈版>』
J・R・R・トールキン/著 山本史郎/訳 原書房 2012/11/12
(Amazonで見る)
《映画「ロード・オブ・ザ・リング」で世界中にブームをまきおこした
 J.R.R.トールキンの『指輪物語』。 その前章の物語『ホビット』の
 定本(第四版)の新訳決定版! 著者自筆の挿絵および各国語版の挿絵を
 収録。 時代を越えて読み継がれる“名作"の理解を助ける詳細な
 注釈付の愛蔵保存版。 2012年12月、3部作の第1弾
 「ホビット 思いがけない冒険」がついにロードショー!》
470ページ

(文庫)
『ホビット〈上〉―ゆきてかえりし物語』J・R・R・トールキン/著
山本史郎/訳 原書房 2012/11/1
(Amazonで見る)
《時代を越えて読み継がれる不朽の名作『ホビット』を、
 さまざまな角度から詳細な注釈をつけた新訳決定版。
 トールキン自筆の挿絵つき。持ち歩きしやすい文庫判。》
362ページ

『ホビット〈下〉―ゆきてかえりし物語』J・R・R・トールキン/著
山本史郎/訳 原書房 2012/11/1
(Amazonで見る)
422ページ

 

 ●『指輪物語』の内容について

『指輪物語』は1960年代に欧米の若者たちのあいだで大いに読まれた、
といわれています。
1960年台後半、ベトナム戦争に嫌気したアメリカの若者たちのあいだで、
カンターカルチャーとしてファンタジーが流行し、
『指輪物語』のペーパーバックが300万部も売れたといわれています。

日本では、1972年に翻訳刊行されました。

『ゴジラ』が水爆実験の影響で出現した、とされているのに対して、
この作品は「指輪」が核兵器を表している、という読み方もあります。

実際には、戦時中から書かれた物語ということなので、
その時代背景が著者に影響している、
というのが本当のところではないか、といわれています。

 

さて、なにしろ45年ほど前に読んだっきりですので、
詳しいストーリーも今は忘れてしまい、
あらためて『ホビット』から読み直している状況で、
まだ第一巻「旅の仲間」(上)巻を読んでいるところですので、
具体的な感想などはまだ書けません。

『ホビット』も昔読んだ、岩波少年文庫版『ホビットの冒険』ではなく、
20年ほど前に手に入れたまま放置してあった旧版、
『ホビット―ゆきて帰りし物語― 第四版注釈版』のほうです。

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図書館で岩波少年文庫版の方ものぞいてみましたが、
Amazonのレヴューにもあるように、
ひらがなが多くおとなにはちょっと読みづらく感じました。
おとなが読むなら、
原書房版のおとな向けの翻訳の方が適しているかもしれません。

 

 ●おとな向けファンタジー『指輪物語』

『ホビット』と『指輪物語』の違いについて書いておきましょう。

一言でいえば、「子供向け」と「おとな向け」ということになります。
その分、ストーリーがより複雑になり、
背景となるムードもより深刻になっています。

『ホビット』は、ホビット族のビルボ・バギンズが主人公で、
ドワーフの王様とその一行がドラゴンに奪われたお宝を奪回にゆく旅に、
魔法使いガンダルフの推薦を受けて「忍び」役として同行し、
お宝を奪い返したご褒美と、偶然手に入れた指にはめると姿を消せる、
魔法の「指輪」を持って帰って来るという、副題にあるように、
文字通り<ゆきてかえりし物語>で、
その途中で出会う冒険の数々を語るものです。

『指輪物語』は、このときの「指輪」が実は、
魔王サウロンが探している魔法の指輪で、
この世界を統べることができるというしろもので、
これを奪われないようにどうにかしよう、とビルボから指輪を預かった
養子のフロド・バギンズが仲間たちと旅に出る、というものです。

「黒の乗手」という悪の一味たちから追われる旅です。

――私は、今はまだその辺までですね。

今どきの小説と違って、会話の応酬で進め、
ジョットコースターのようなストーリー展開で読者を離さない、
といったものとは異なり、
詩というか歌も交えて、ゆったりとした地の文で読ませるお話、
というイメージです。

『ホビット』も子供向けにしては長いお話でしたが、
『指輪物語』もまた長大な作品です。

残り5巻とちょっと。
何ヶ月後になるかわかりませんが、読み終えたら
具体的なストーリーの紹介や感想など書いてみたい、と思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論183-トールキン『指輪物語』(第一巻・第二巻)70周年」と題して、今回も全文転載紹介です。

『指輪物語』の映画化作品三部作もありました。
そちらで知っているよ、という人も多いかと思います。
あるいはゲームも出ているそうで、そちらで知ってるという人もいるのかもしれません。

映画にしろゲームにしろどちらにしろ、それはそれでいいのですけれど、やはり本の方を読んでいただきたいと思っています。
それがそもそもの始まりだから。
小説というのは、言葉の芸術なのです。
歌なども言葉の芸術の一つですけれど、これには音、あるいは声が伴います。
しかし、小説のほうは、言葉のみ、それも文字のみの世界です。

それは、人間だけが楽しめる世界といっても過言ではありません。

そういう頭の中だけの空想の世界で遊ぶのも楽しいものなんですよ。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

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2024.04.08

元卓球女子五輪メダリスト石川佳純さんがサウスポー始球式

久しぶりの「サウスポー始球式」の紹介です。

最近は、「左利き」検索もほとんどしていないので、情報不足でこの手の記事は書いていませんでした。
プロ野球も新しいシーズンイン入り、今回は偶然見つけたので、書いておくことにしました。

昨年(森七菜さん、吉高由里子さん他)一昨年(福原遥さん)の偶然知った「サウスポー始球式」は書いていないので、いつか発表できればと思っています。

 ・・・

4月6日、東京・神宮球場でのプロ野球ヤクルト―阪神戦で、昨年引退した元卓球選手、2021年東京五輪の銀など卓球女子団体でロンドン・リオデジャネイロ・東京オリンピックの3大会連続メダリストの石川佳純さんが人生初の始球式に登場。

胸にスワローズのロゴなし、背には「KASUMI 2024」のユニホームを着用――今年パリで開催されるオリンピックのフジテレビ系スペシャルキャスターに就任するのにちなんで。

始球式前には、同じサウスポーの現役最年長のヤクルト・石川雅規投手(44)からボールの握り方などアドバイスも。

残念ながら、本番の始球式では大きく左に外れたワンバウンドでした。

*画像:産経新聞ニュースより――始球式で投球する石川佳純さん=神宮球場(撮影・長尾みなみ、松永渉平)
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始球式で投球する石川佳純さん=神宮球場(撮影・長尾みなみ)
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始球式で投球する石川佳純さん=神宮球場(撮影・松永渉平)
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始球式で投球する石川佳純さん=神宮球場(撮影・長尾みなみ)
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始球式で投球する石川佳純さん=神宮球場(撮影・長尾みなみ)
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始球式を終え、笑顔を見せる石川佳純さん=神宮球場(撮影・長尾みなみ)
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笑顔でグラウンドを後にする石川佳純さん=神宮球場(撮影・長尾みなみ)

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同じ左腕の石川雅規投手から指導を受けている画像

*【過去の<サウスポー始球式>】:

・2023.9.3西武ライオンズファンの乃木坂46向井葉月さんが左腕で初始球式
「新生活」版
・2022.5.18サウスポー始球式二連発(1)5月14日玉木宏(2)5月15日新川優愛、プロ野球西武-楽天戦で始球式
「新生活」版
・2022.3.21サウスポー“スーパーガール”桃月なしこが始球式で左腕から大暴投
「新生活」版
・2021.11.22左利きの女優・吉高由里子さんが4年ぶりプロ野球日本シリーズ第2戦でサウスポー始球式
「新生活」版
・2021.4.2
左利きの女優・森七菜さんのサウスポー始球式
「新生活」版
・2018.4.19
地元アイドルNegiccoのKaedeさんが左投げで新潟知事の代役始球式
「新生活」版
・2017.10.30
吉高由里子がサウスポーで伸びやか始球式 日本シリーズ第2戦
・2017.6.15
左利きの女優・剛力彩芽さん、四度目の始球式登板も…
・2017.5.26
サッポロビールイメージガール川辺優紀子さんの左利き始球式
・2017.5.7
女優の松井愛莉さんがサウスポー始球式
・2017.5.2
ピンクラインのサウスポー、女優でモデルの新川優愛さんが始球式
・2016.8.17
左利きのSKE48日高優月(ひだかゆづき)が始球式
・2016.7.23
左利きの女優すみれさん左腕で始球式
・2016.6.29
左利きの剛力彩芽さんの3度目の始球式は大暴投: レフティやすおのお茶でっせ
・2016.6.5 AKB48Team8/AKB48TeamB兼任の坂口渚沙さん (画像のみ)
AKB48選抜総選挙、暫定21位倉野尾成美・同53位坂口渚沙はTeam8の左利き
・2016.3.7
左利きのあっちゃん前田敦子の始球式

・2014.8.6 右利きの石原さとみさんの左投げ(撮影で右腕を痛めたということで「サウスポーでやります」と宣言。)
終わったはずのクチコミ「右利き? 左利き?」がまた

・2013.12.4 体操新技「シライ」の白井健三選手
体操新技「シライ」の白井健三選手は左利き
・2011.5.12 『五体不満足』の著者の乙武洋匡さん
乙武洋匡さんのサウスポー始球式
・2004.11.11 アテネオリンピック女子マラソン金メダリストの野口みずき選手
素敵な光景:野口選手の左利きの始球式

*【カテゴリ:<サウスポー始球式>


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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.04.06

楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈『日本のヴァイオリン史』から-週刊ヒッキイ第661号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第661号(Vol.20 no.6/No.661) 2024/4/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(19)
 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」
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 前号では、<左利き用楽器>製作プロジェクトの一環として、
 イギリスの利き手・左利き研究の権威、マクマナスさんの著書の邦訳
 クリス・マクマナス『非対称の起源』 (講談社ブルーバックス)
 から、左利きと音楽家についての文章を紹介しました。

 今回は、引き続き、同様の趣旨で、図書館で見つけた本――

 梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
 (青弓社 2022/9/26)
 から、ヴァイオリンの歴史を少し勉強してみます。

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 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆

 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

  梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』から ヴァイオリンの歴史
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

*参照:

梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史――楽器の誕生から明治維新まで』
(青弓社 2022/9/26)
(Amazonで見る)

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 ●初期のヴァイオリンには左右差がない?

まず最初に感じたことは、この点でした。

現代のヴァイオリンには、
正面から見て向かって左の下部に「顎当て」があり、
左右性が見て取れます。

ところが、この本の写真を見ていますと、初期のヴァイオリンには、
これがなく明らかな左右差が見られませんでした。

弦を張り替えれば、どちらで弾くこともできるように思えます。

前回のマクマナスさんの本『非対称の起源』のなかでも、
「両手利き」の楽器も少なくないとして、

 《ギターの弦の順序を逆に張りかえれば、
  左利きの奏者も弾くことができるのは、ポール・マッカートニーや
  ジミー・ヘンドリックスなどのミュージシャンを見れば明らかだ。
  ヴァイオリンやチェロ、コントラバスも、映画『ライムライト』の
  チャップリンが弾いたヴァイオリンのように、
  左利き用に弦を張り替えることはできる。》p.391

クリス・マクマナス『非対称の起源―偶然か、必然か』
大貫 昌子/訳 講談社ブルーバックス 2006/10/21
http://www.amazon.co.jp/dp/4062575329/ref=nosim/?tag=hidarikikidei-22
https://amzn.to/3wnyyVS

と記述されていました。
(実際には内部の構造に差があるのかも知れませんけれど。)

この本の中にはいくつかのヴァイオリンを手にした画像があります。
しかし、みな右弾きスタイルでした。

ヴァイオリンという楽器は、演奏がむずかしいといいます。
この本の著者も、「あとがき」のなかで、

 《ヴァイオリンはそもそも弾くのが難しい。
  三十代くらいまでは、このようなむずかしい楽器を
  どうしてこんな一生懸命に弾いているのだろうかという
  疑問が脳裏をよぎることもしばしばだった。》p.160

というほど。
確かに初めてヴァイオリンを弾く人の演奏は、
「キーコキーコ」という擬音で表現されますからね。

そういう楽器ですから、この楽器を弾く人はそれなりにエリートで、
「選ばれた人」だったのでしょう。
「右使いができる人」で、左手も器用な人というところでしょうか。

 

ちなみに、
ヴァイオリンは「擦弦楽器」と呼ぶようで、
弓や棒などで文字通り「弦を擦って鳴らす」楽器ということのようです。

こすって弾くというのは、いかにもむずかしそうですよね。

ほかの弦楽器には、下の二種類があるようです。

「撥弦(はつげん)楽器」――何らかの方法で弦を弾いて音をだす楽器で、
  抱えて演奏するギターなど、置いて演奏する琴など
「打弦楽器」――弦をたたくことで音を出す楽器で、ピアノなど

 

●ヴァイオリンとはどういう楽器?

本書の概要を伝える「はじめに」の冒頭に、
「ヴァイオリン」の紹介があります。

 《ヴァイオリンは、十六世紀に北イタリアでその原型となる楽器が
  生み出されて以来、西洋の芸術音楽で中心的な役割を果たした...》

また、フィドル(英語―「ヴァイオリン」はイタリア語から派生した言葉)
と呼ばれて、アイリッシュ音楽やアメリカのカントリー音楽等、

 《多くの民族の人々に好まれて演奏され続けている。》

そして、

 《クラシック音楽に用いられるほかの弦楽器や管楽器と比べて
  守備範囲が広く...「楽器の女王」の異名を取る...》

さらに、

 《大きくて重いピアノとは違い、軽便で、低価格の楽器もあるため、
  ...場所をかまわず演奏されてきた歴史もある...》

といい、

 《人々の社会的ヒエラルキーをも超えた多様な文化と社会のなかに
  過去にも現在にも存在している。》

とあります。

 

日本でヴァイオリンが本格的に普及しはじめたのは、明治維新後で、
明治期のヴァイオリン演奏の担い手は、上は西洋音楽の学び手から、
ヴァイオリン演歌師、女学生や若き日本男児まで、

 《...ジェンダーもジェネレーションも超えて、
  時間の経過とともに人々の生活に取り込まれていった。》

と。

 《...今日の日本で、ヴァイオリンはクラシック音楽を演奏するための
  「楽器」という印象が強く、それ以外は邪道という感覚は広く
  共有されているだろう。...》

といいます。

こういう感覚が強くあれば、どうしても
「ヴァイオリンを左手で弾こう」という試みは、
あまり歓迎されえないのでは、という気がします。

しかし、

 《ヴァイオリンは演奏技術の習得が最も難しい
  といわれているにもかかわらず...》

高度経済成長期頃から、世界的な舞台で活躍するヴァイオリニストや、
名器ストラディヴァリウスを所有する個人や団体も増え、
アマチュア演奏家の人口も多く、趣味として楽しむ人もいる、といい、

 《ヴァイオリンを愛する人々の層の厚さに思いを馳せると、この楽器が
  いかに深く日本に根ざしているかを改めて認識させられる。》

 

このように日本でも、世界中でもヴァイオリンが、
民衆の音楽を担う軽便な楽器として存在してきた、
という事実を知りますと、
もっと自由に演奏者の「利き手に合わせた楽器」としての
「左用ヴァイオリン」も登場して良いのでは、という気持ちになります。

 

●ヴァイオリンの歴史――起源

ちょっと結論を先走ってしまいましたが、
本書からヴァイオリンという楽器の歴史についてみておきましょう。

 《ヴァイオリンの起源については諸説あるが、
  イタリアでヴァイオリンの原形が十六世紀に生み出されたというのが
  定説になっている。》「はじめに」p.21

これは不思議なことに、
日本に残っているヴァイオリン関連資料の最古のものと、
ほぼ同時期だといいます。

さて、ヴァイオリンの起源ですが、未だに解明されていないことが多く、
学者も決定的な言及を避けているそうです。

ただ、「原型」があって「完成」された、と説明されるといいます。

弓を用いる楽器は900年頃から彫刻や絵画に現れるが、
文字資料に残された名称に一貫性がなく、
異なる楽器に同じ名称が用いられている場合もあり、混乱しやすい。

 《明らかにされているのは、ヴァイオリン(その原型も含めて)が
  誕生したのは十六世紀前半で、
  北イタリアで進化したということである。》p.24

指揮者が原型と読んでいるものの例として、
1535年、ガウデンツィオ・フェッラーラ(Gaudenzio Ferrari)が
描いたサロンノ大聖堂(Saronno Cathedral)の天井のフレスコ画に
ある楽器、がそれだといいます(カラー口絵の図1)。
ただ、背面しか見えず、三弦で胴体にくびれがあることが確認できる。

 《ヴァイオリン属の楽器はすべて二五年から五〇年にかけて
  生み出された。ヴァイオリンはそのなかの一つである。
  ヴァイオリンを創案した人物は不明で、
  『ニューグローヴ世界音楽事典』で示された
  「一人の人物が成し遂げたことではないだろう」という見解に
  異論は唱えない。》p.25

とし、

 《...ヴァイオリンは、いうならばヨーロッパの擦弦楽器の
  長い歴史の末に生み出された、擦弦楽器の集大成なのである。》p.25

そのように作成された楽器はほかにもあったはずだが、

 《ヴァイオリンが最も成功した例だったのは歴史が証明している。》p.26

と。

 《...一五〇〇年頃前後にはヴァイオリンの原型[傍点]が世に現れ、
  現在の形のヴァイオリンが誕生したのは十六世紀中頃と考えていい。》
   p.26

現存する最古のヴァイオリンは、メトロポリタン美術館所蔵の
イタリアの製作家アンドレア・アマティ(Andrea Amati)の
1560年頃の作とされている。

(p.27に写真が掲載されている)
240406saiko-v

 

A・アマテイの孫ニコロ・アマティ、
その弟子のアントニオ・ストラディバリ、
A・アマテイの弟子のアンドレア・グァルネリを祖父に持つ
バルトロメオ・ジュゼッペ・アントーニオ・グァルネリ、
通称グァルネリ・デル・ジェスといった名匠たちが次々と現れ、
彼らの製作した楽器が今日も頂点とされている、といいます。

 

以下色々と、他の古い楽器のことなどが語られています。
私にはよくわかりませんので、割愛します。

日本での歴史も語られてゆきますが、それもここではふれません。

 

 ●左利き用バイオリンについて

とにかく私の結論としましては、先ほども書きましたように、
西洋音楽に置いてポピュラーな楽器だということで、
それならギターのように、もっと使い手の利き手に沿った楽器――
左利き用の「左用ヴァイオリン」が現れてもいいのではないか、
ということです。

 

「左利き用バイオリン」で検索しますと、ネット上には、
SOLDOUTとなってはいますが、

「ストラディバリモデル」という
「GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ [GCV-VN-800EL]」
https://kreislermusic.ocnk.net/product/1334

240406-gcv800el-lhm-48afee1315

240406gcv800el-lhm-97ff5686b8

240406gcv800el-lhm-f484f53169

(画像:「左利きバイオリン」GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ Soil III [GCV-VN-800EL-SOI] ネットより無断借用)

「Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック」
https://www.autumnvalley.net/product/1708

240406ma-lhm-20130804

(画像:「左利きバイオリン」Ma工房 左利き用・バイオリン・ファインレベル2ピースバック ネットより無断借用)

 

といったものがでています。
必ずしも「存在しない」わけではありません。

 

次回、また取り上げますが、
ネットでは「左利き用バイオリン」に関するYouTubeの動画も
いくつかあるようです。

で、それらの発言を聞いていますと、
「なぜ左手でヴァイオリンを持ち、右手で弓を弾くのか」について、
「なぜ右手で箸を持つのか」「なぜ右手で字を書くのか」
といった疑問への、
昔よく聞かれた回答と同様の“あやまった見解”が認められます。

これらについては、次回改めて……。

 

 ●木琴を反対側から弾くと「左用」?

本書に「木琴」が登場しています。
北斎の絵も掲載されています。

240406mokkin-hokusai

 

思えば「木琴」も一種の鍵盤楽器といえそうですし、
この楽器は、逆方向、向こう側から弾けば、
左側が高音部で右側が低音部となり、「左用」になりそうな気がします。

 

[通常(右用)]
左側(低音部) → (高音部)右側
--------------------------------
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド
--------------------------------
(右腕の自然な動き)→(右へ引いていく)

 

[逆から(左用?)]
左側(高音部) ← (低音部)右側
--------------------------------
ド・シ・ラ・ソ・ファ・ミ・レ・ド
--------------------------------
(左腕の自然な動き)←(左へ引いていく)

 

実際にはどうなのでしょうか。
また、もしそうだとして、そういう演奏の仕方はあるのでしょうか。

両手で弾く(叩く)ので、利き手の違いは関係ない、といわれそうです。

でも、本当にそうでしょうか。
逆弾きもあり、な気がしますが。

演奏法がよくわからないので、これ以上語ることはできません。

今思いついたのですが、私が持っているようなミニ電子キーボードなら、
反対側からキーを押すぐらいならできるので、
逆弾きもできそうな気もします。
試してみようかと思います。

 ・・・

今回はこの辺で。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(19)梶野絵奈著『日本のヴァイオリン史』からヴァイオリンの歴史」と題して、今回も全紹介です。

今回は改めてヴァイオリンについてのお勉強です。
実際に3歳の頃からヴァイオリンを演奏されている方のお言葉なので、これは間違いないでしょう。

演奏が難しいとされる楽器だというのことが改めて分かりました。
それゆえに、やはり演奏者の「利き手に応じた演奏ができる楽器」が必要なのではないでしょうか。

 

また、木琴についても少し書いています。
こういう楽器もあるのですよね。

『ウィキペディア(Wikipedia)』によりますと、「鍵盤打楽器」といった呼び名もあるようです。
文字通りという感じです。
これを逆方向から弾く(叩く)ことで、「左用」になるのかどうか、くわしいかたにお聞きしたいものです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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