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2024.03.31

中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)陶淵明(4)「園田の居に帰る五首(其三・四)」-楽しい読書363号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書(まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2024(令和6)年3月31日号(vol.17 no.6/No.363)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)陶淵明(4)
「園田の居に帰る五首 其の三・其の四」」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年3月31日号(vol.17 no.6/No.363)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)陶淵明(4)
「園田の居に帰る五首 其の三・其の四」」
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月末発行の「楽しい読書」は、古典作品の紹介です。
 現在は、中国の古典から漢詩の名作を読んでいます。

 今月の「中国の古典編―漢詩を読んでみよう」は、前回に引き続き、
 六朝時代(東晋末~南朝宋初)の詩人・陶淵明(とう えんめい)の
 「園田の居に帰る五首」の後半部分から「其の三・其の四」です。

(陶淵明 第1回)
2023(令和5)年9月30日号(No.351)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(24)陶淵明(1)「五柳先生伝」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.9.30
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(24)陶淵明(1)
「五柳先生伝」-楽しい読書351号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/09/post-b68999.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d371c2c2141932565db7fac1a67c1150

(第2回)
2023(令和5)年10月31日号(No.352)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(25)陶淵明(2)
「飲酒二十首」から「序」と代表作「其の五」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2023.10.31
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(25)陶淵明(2)
「飲酒二十首 其の五」-楽しい読書353号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-7e3a1c.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/fb0ed419e609fae5ca4d419eb039fc2a

(第3回)
2024(令和6)年2月29日号(No.361)
「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(26)陶淵明(3)
「園田の居に帰る五首 其の一・其の二」」
【別冊 編集後記】『レフティやすおのお茶でっせ』2024.2.29
中国の古典編―漢詩を読んでみよう(26)陶淵明(3)
「園田の居に帰る五首(其一・二)」-楽しい読書361号

 

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◆ 隠居生活の思い ◆

 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)

  ~ 陶淵明(4) ~

 「園田の居に帰る五首 其の三・其の四」

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今回の参考文献――

『漢詩を読む 1 『詩経』、屈原から陶淵明へ』
 江原正士、宇野直人/著 平凡社 2010/4/20
「九、達観を目指して――陶淵明の世界」より
(Amazonで見る)

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 ●陶淵明「園田の居に帰る五首」

40歳過ぎで官職をなげうって、故郷に帰った陶淵明。
その隠居後の生活をうたった42歳頃の連作「園田の居に帰る五首」。

今回は、窮屈な生活から解放された開放感にあふれた第一首とは違い、
農業生活の悩みを実感するようになった思いがあらわれ始めたころの、
後半の三首から、第三首、第四首を紹介しましょう。

 

 ●「園田の居に帰る五首 其の三」陶淵明

・第三首目は、第一首と並んで有名になった歌だそうです。
そこでは、《「其の二」より少し深刻で、自分の経験不足で農作業が
 うまくゆかない悩みを告白しています。》p.344

 

帰田園居五首(其三)
            園田(えんでん)の居(きよ)に帰(かへ)る
             五首(ごしゆ) 其(そ)の三(さん)

・前半四句は、《農作業の大変さを述べる。》p.344

種豆南山下  豆(まめ)を種(う)う 南山(なんざん)の下(もと)
草盛豆苗稀  草(くさ)盛(さか)んにして
        豆苗(とうびよう)稀(まれ)なり
晨興理荒穢  晨(あした)に興(お)きて荒穢(こうわい)を理(おさ)め
帯月荷鋤帰  月(つき)を帯(お)び 鋤(すき)を荷(にな)うて帰(かへ)る

 山のふもとに豆を植えたが
 その畑には雑草ばかりはびこって、かんじんの豆が育たない
 それで私は毎日、夜明けから畑に出て、
 夜になるまで畑の手入れをしている

 

・後半四句は、《“農作業は大変だが、どうかうまくいきますように”と、
 祈るような気持ちを述べます。五・六句めはたとえを使って、
 計画通りにゆかないむずかしさを述べたもの》p.344
 
道狹草木長  道(みち)狹(せま)くして草木(そうもく)長(ちよう)じ
夕露沾我衣  夕露(ゆうろ) 我(わ)が衣(ころも)を沾(うるほ)す
衣沾不足惜  衣(ころも)の沾(うるほ)ふは惜(をし)むに足(た)らず
但使願無違  但(ただ) 願(ねが)ひをして
        違(たが)ふこと無(なか)ら使(し)めよ

 帰り道は狭く、余計な草や木ばかりが茂って邪魔をする
 その上、夜露が私の服をぬらす
 着物がぬれるのは、いやがるほどのことではない
 ただひとえに、私の願いが背かれることのないようにさせてほしい 

《夜の帰り道の描写であるとともに、農耕に生きる道の大変さのたとえ》
で、
《自分で選んだ農耕生活が今後もうまくゆくよう、それだけが願い》だ、
ということだろうといいます。

 

 ●「園田の居に帰る五首 其の四」陶淵明

帰田園居五首(其四)
           園田(えんでん)の居(きよ)に帰(かへ)る
            五首(ごしゆ) 其(そ)の四(し)

・《最後の二句に重みがあります。或る日、
 子どもたちや甥を連れてピクニックに行った時に廃屋に出くわし、
 そこから人生の無常に思いを巡らす――ちょっと深刻な展開です。》
pp.345-346

・第一段は、《隠居直後の正直な感慨か》。p.346

久去山沢游  久(ひさ)しくる山沢(さんたく)の游(あそ)びを去(さ)り
浪莽林野娯  浪莽(ろうもう)たり 林野(りんや)の娯(たのし)み
試携子姪輩  試(こころ)みに子姪(してつ)の輩(はい)を携(たづさ)へ
披榛歩荒墟  榛(しん)を披(ひら)いて荒墟(こうきよ)を歩(ほ)す

 私はもう、長いこと山水を楽しむ遊覧から遠ざかっていて
 森や野原を歩く楽しみなど、ぼんやりとしか考えていなかった
 今日試みに、子どもや甥たちを連れて
 雑木を掻き分け押し分けて、荒れた村里を歩いてみた

 

・第二段の「丘隴(きゅうろう)」を「墓場」ととる説もあるそうですが、
特別な行事の場合は別として、
《墓場にピクニックに行く、というのはどうかなあ。》p.346

徘徊丘隴間  徘徊(はいかい)す 丘隴(きゆうろう)の間(かん)
依依昔人居  依依(いい)たり 昔人(せきじん)の居(きよ)
井竈有遺処  井竈(せいそう) 遺処(いしよ)有(あ)り
桑竹残朽株  桑竹(そうちく) 朽株(きゆうしゆ)残(ざん)す

 ぶらぶら歩き回る、小高い丘の辺り
 どうやらここらには、昔の人の家があったようだ
 井戸やかまどがその名残りをわずかにとどめている
 農家につきものの桑や竹は、枯れ朽ちた株が崩れてしまっている

 

・第三段は、廃屋について、
《ちょうど通りかかった木こりにようすを尋ねます。》
その答えを聞いて、《一挙に無常観に突き落とされます。》p.346

借問採薪者  借問(しやくもん)す 薪(たきぎ)を採(と)るの者(もの)
此人皆焉如  此(こ)の人(ひと) 皆(みな) 焉(いづ)くにか如(ゆ)くと
薪者向我言  薪者(しんじや) 我(われ)に向(むか)つて言(い)ふ
死没無復余  死没(しぼつ)して復(ま)た余(あま)す無(な)しと

 ちょっと尋ねてみた、通りすがりの薪を取る人に
 ここにいた人たちはみんな、いったいどこに行ってしまったのですか
 すると木こりは答えた
 いや、みんな亡くなって、跡を継ぐ人もいないんですよ

 

・第四段、「一世」は三十年の意味。「当(まさ)に~べし」は、
「必ずや~なるであろう」と、《確実性の強い推量です。》

一世異朝市  一世(いつせい) 朝市(ちようし)を異(こと)にす
此語真不虚  此(こ)の語(ご) 真(まこと)に虚(きよ)ならず
人生似幻化  人生(じんせい)幻化(げんか)に似(に)たり
終当帰空無  終(つひ)に当(まさ)に空無(くうむ)に帰(き)すべし

 三十年のうちに、朝廷も市場も、がらっと様変わりするという
 その言葉はまったく正しい
 人が生きるというのはまぼろしであり、
 実態がないもののように思う、結局は無に帰するのであろう

 

「一世異朝市」という慣用句があったようで、「一世代三十年のうちに、
 宮廷や市場が入れ替わるほどの変化がよくある」と、
世の中の移り変わりやすさと取る説もあるといいます。

 《隠居後一年、“こういう人生を選択したけれどいいのかなあ”と
  壁にぶつかった時にたまたま見た廃屋、
  それが自分のこれからの人生に重なって、
  あまり深い思想からではなしに、
  ついこういうことを書き付けてしまったのか……。》p.347

時の流れというものは、無常なもので、
鴨長明『方丈記』の冒頭にもありますように、
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」と。

仏教の無常観というものの表れですが、
陶淵明の時代には、そこまでのものがあったかどうか、
宇野さんの解説では、
後漢の「古詩十九首」あたりから出ているといいます。

 《“人生は朝露のようにはかないものだから、
  夜じゅうろうそくを灯して遊ぼう、酒を飲もう”という考え方が
  見られ、実はそこにも仏教思想が影を落としている
  と言われています。》p.347

ただ、
 《来世に望みを託するということはなく、
  その当時の中国に人々の仏教の受け止め方なんでしょうか――
  もしかしたら来世を考えない儒教の影響が
  大きいかも知れませんね。》p.347
と。

 

 ●田舎生活の陰影

ここでは紹介しませんが、
「其の五」では、
悲しみを抱えたまま険しい道をたどり、山の水で足を洗い流す。
新たな酒と鶏を潰して近隣の人を呼び、酒宴を開き、朝を迎える。

というふうに、隠居し移住した地で新たな生活を送る、
その生活の起伏を描いています。

政治の世界を離れた寂しさも感じさせる反面、
世相の荒波を超えた日常的な田舎の生活――
新たな農家の生活に、日々の収穫の多寡に一喜一憂するような、
そういう生活の陰影も感じさせる詩編です。

 ・・・

次回は、隠居後二年で火事にあい、引っ越すこととなり、
その直後に使った詩「居を移す二首」を。

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本誌では、「中国の古典編―漢詩を読んでみよう(27)陶淵明(4)「園田の居に帰る五首 其の三・其の四」 」と題して、今回も全文転載紹介です。

近年、UターンとかJターンとか、あるいは故郷とは別個に地方への移住をする人も増えていると聞きます。
田舎暮らしのスローライフというのでしょうか。

この陶淵明さんもそういう一人だったようで、都での役人の世界を捨てて故郷に帰って農業に励むという暮らし。
政治や役人の世界も大変でしょうが、農業は農業でそれはそれで楽しみもある反面、自然が相手では思うにならぬむずかしい面もあり、ある種の無常観にとらわれることもあったのでしょう。
酒でも飲まないといられない、ということも……。

まあ、どこで、どのような世界で暮らすにしても仲間がいれば、それで解消される部分もあるでしょうから。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.03.16

『左組通信』復活計画(28)『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次-週刊ヒッキイ第660号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(まぐまぐ!) 【別冊 編集後記】

第660号(Vol.20 no.5/No.660) 2024/3/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [28]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次/LL1・LL2」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第660号(Vol.20 no.5/No.660) 2024/3/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [28]
『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次/LL1・LL2」
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 前回は、「左利き自分史年表」1991(平成3)-1994(平成6)春まで、
 「紙の時代」第一期として『ひだりぐみ通信』の時代を紹介しました。

 今回は、1994(平成6)春以後、夏以降の「紙の時代」の第二期として、
 いよいよ季刊誌『LL(Lefties' life)』の時代に突入です。

 ところが、一月下旬からパソコンの状態が悪くなり、
 とにかくネットもエクスプローラーのファイルもなかなか思うように
 開いてくれず、チェックが進みませんでした。

 二月はなんとか貯金と合併号でのりきりましたが、
 いよいよ時間的余裕がありません。

 申し訳ありませんが、今回・次回辺りは、
 季刊誌『LL(レフティーズ・ライフ)』の復刻ということで、
 ホームページに公開していたページのコピーで、ご勘弁を!

 

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓

ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [28]

  『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)
 
   全号目次/(内容紹介)LL1・LL2

┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

*(参照)――

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第43号(No.43) 2006/8/12
<「国際左利きの日」記念号>「私にとっての左利き活動(3)」
 ■レフティやすおの左利き活動万歳■ ―隔号掲載―
私にとっての左利き活動(3)『LL』の時代
 *** 商品情報から利き手教育へ(承前) ***
 *** 天命 ***
 *** 海外との連携をめざす ***
 *** 『LL』の反応 ***
 *** 『LL』の挫折 ***
 *** 女性問題に取り組む人たち ***
(参照)※『レフティやすおの左組通信』のページ
○レフティやすおの左利き自分史年表
○レフティーズ・ライフ(LL)再録(1)全号目次 

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第602号(No.602) 2021/9/4
「創刊600号突破記念―
 私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代―その1」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2021.9.4
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(2)第二期・紙の時代1
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第602号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/09/post-57d0e5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/e2aaaa56a6400bcc04d24d46a47d1d03
(2)第二期・紙の時代から―その1―
 ◆ 左利き用品の総カタログ的『モノ・マガジン』左利き特集号 ◆
  『モノ・マガジン』「左利き生活向上委員会」編集部A・K氏
 ●第二期・紙の時代―左手用カメラとの出会いに始まる
 ●『モノ・マガジン』左利き特集号がスゴかった!
 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』創刊
 ●左利き関連本あれこれ
 ●「左利き生活向上委員会」のA・K氏

・メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第650号(No.649) 2023/10/7
「創刊19年に向けて―650号記念号―
 <左利きの人の自覚――意識の覚醒>が最も重要」
・ブログ『レフティやすおのお茶でっせ』2023.10.7
<左利きの人の覚醒>左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii
創刊19年記念号-第650号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-158a3d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/8396e0fae38c6eeab56013360f58d18e
 ●左利き活動の「初心」は?
 ●「来た、見た、買(こ)うた」
 ●左利き活動の始まりは、1990年末「世界初左手用カメラ」購入
 ●右手用のハンディカムの違和感
 ●『モノ・マガジン』左利き特集号との出会い
 ●存在を知らなければ、「存在しない」のと同じ
 ●最初はハガキサイズの「左組通信」という紙媒体
 ●左利き活動の「初心」について――もう一度
 ●始まりは左利きの人の覚醒にある
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 ●『Lefties' Lifeレフティーズ・ライフ』全号目次

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(画像:今はなきホームページ『レフティやすおの左組通信』の「レフティーズ・ライフ(LL)再録1・全号目次」のページ冒頭) 

LL1 1994(平成6)年 夏号 A4版1ページ
・前説―To Live In The Right-Handed World―右利き社会を是正する
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その1 Left-handed tools & goods―筆記具・定規・はさみ
・私のお気に入り左利き用品 ベストテン

LL2 1994(平成6)年 秋号 A4版1ページ
・前説―To Live In The Right-Handed World―左右共用の製品を
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その2―はさみ

LL3 1994-95(平成6-7)年 冬号 A5版4ページ
・前説 The Compliments of the New Year
  新年明けましておめでとうございます。
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―鍋を囲む
・知恵小僧の左熟語の基礎知識 なんの意味ダス!? その1
 Words & Phrases―小学館『国語大辞典』より
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その3―はさみ(つづき)
・よい品がいつでも 手軽に 購入できるようにしよう!
―いろんな用途のはさみ
・左利きの本だなぁ その1 お勉強編
 The Books on the Left-handedness―
 スタンレー・コレン著『左利きは危険がいっぱい』

LL4 1995(平成7)年 春号
・前説 The Compliments of the Spring Issue 発信し続けること
・From LHI (Lefthanders International/U.S.A)
  レフトハンダーズ・インターナショナル(アメリカ)より
・From LHC (Left-handers Club/U.K.)
  レフトハンダーズ・クラブ(イギリス)より
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―
 ①私のいちばん嫌(いや)~なことば――
  「○○君は、ぎっちょか。器用やなぁ。」
 ②「転びキリシタン」あるいは「隠れキリシタン」のように

≪スタート! 新学期≫子供用品特集
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その4〔子供用左利き用品の紹介〕―
  文具(はさみ・鉛筆・鉛筆削り・定規・缶ペンケース入り文具セット)、
  野球/ソフトボール用グラブ・ヘルメット・手袋
〔手を使い分けよう〕
 久保田競著『手と脳―脳の働きを高める手』紀伊国屋書店より
〔左利きの子供に対する接し方〕
 箱崎総一著『左利きの秘密』立風書房より

LL5 1995(平成7)年 夏号
・前説The Compliments of the Summer Issue二年目に向けて
  Toward the second year
・From LHC (Left-handers Club/U.K.)
  レフトハンダーズ・クラブ(イギリス)より―
  新たなる希望!THE NEW HOPE!
・From LHI (Lefthanders International/U.S.A)
 レフトハンダーズ・インターナショナル(アメリカ)より―
  左利きの人をガッカリさせるもの
  THINGS THAT ARE FRUSTRATING FOR LEFTIES!
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―
  こんな道具が不満です!
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
  その5―あなたは靴派? スリッパ派?―爪切りはさみセット
・知恵小僧の左熟語の基礎知識 なんの意味ダス!? その2
  Words & Phrase小学館『国語大辞典』より
・左利きの本だなぁ その2 激励編
  The Books on the Left-handedness―斎藤茂太著
  『左ききの人はなぜ才能があるのか―左ききの性格分析』
   KKベストセラーズ/ワニ文庫刊

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(画像:LL第5号より「From LHC (Left-handers Club/U.K.)レフトハンダーズ・クラブ(イギリス)より―新たなる希望!THE NEW HOPE! 」の冒頭――“The Left-hader”に紹介された「LL」と左組についての記事と『LL』第5号の部分) 

LL6 1995(平成7)年 秋号
・前説 The Compliments of the Fall Issue道を切り開こう!
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―
  私の簡単“左利き判別法”
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
  その6Left-handed tools & goods―左利き用万年筆の使い心地良さ!
・左利きの本だなぁ その3 お楽しみ編―
  『左利きの名画』ロジャー・オームロッド著 野中千恵子訳
    社会思想社 現代教養文庫〈ミステリ・ボックス〉
・<特集:左利きアンケート>From LHC (Left-handers Club/U.K.)
  レフトハンダーズ・クラブ(イギリス)より―
   ザ・レフトハンダーズ・クラブ1994年アンケート調査結果

LL7 1995-96(平成7-8)年 冬号
・前説 The Compliments of the Winter Issue―出発点にもどって
  Get back to the starting point
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
  その7Left-handed tools & goods―世界初の左手用カメラ
  〈京セラSAMURAI Z2-L〉
・左利きの本だなぁ その4 雑誌/カタログ編―『モノ・マガジン』
  1991年4月2日号 No.188 ワールド・フォトプレス発行―
  特集/左を制するものは時代を制す/左利きの商品学
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―
  怒りをことばに―「このはさみは欠陥です!」
・左利きの本だなぁ その5 雑誌/コラム編―『モノ・マガジン』
  1994年11月2日号 モノ・インタレスティング「左利き生活向上委員会」
・右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
  Letters from the right/left side seats

LL8 1996(平成8)年 春号
・前説 The Compliments of the Spring Issue―
  見果てぬ夢を追い求めて “To dream the impossible dream,….
   This is my quest.”
・利き手差別をなくせ! Down with handism!
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
  その8 Left-handed tools & goods―てのひら≪掌中≫電卓/
  左利き用 ZELCO DOUBLE PLUS calculator No.10731
・左利きの本だなぁ その6 お楽しみ編―梅田香子『勝利投手』
  河出文庫/河出書房新社―≪日米プロ野球女性サウスポー対決その一≫
・右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
  Letters from the right/left side seats―
  右側の席から/左側の席から/左利き用品メーカーより

LL91996(平成8)年 夏号
・前説 The Compliments of the Summer Issue―
  工作から始めよう、豊かな体験! ≪ありがとう、手≫
夏休み<アイデア>紙工作特集―
その①ゴム動力紙パック外輪船/その②風力帆掛け段ボール・カー
・左利きの生活 To Live In The Right-Handed World―
  あなたの刃はどっち向き? 左利き用ハサミ紹介
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
  その9 Left-handed tools & goods―サウスポー・カッターナイフ/
  田島製作所 LC504
・左利きの本だなぁ その7 お楽しみ編―ロスワイラー
  『赤毛のサウスポー』集英社文庫/集英社―
  ≪日米プロ野球女性サウスポー対決その二≫
・右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
  Letters from the right/left side seats―左利き用品メーカーより

LL10 1996(平成8)年 秋号
・前説 The Compliments of the Fall Issue―
  特集“左利きを科学する”① 
特集“左利きを科学する”①―あなたの<左利き度>をしらべてみよう
・左利きの本だなぁ その8 お勉強編―前原勝也
 『右利き・左利きの科学 利き手・利き足・利き目・利き耳…』
  講談社ブルーバックス
・左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
  その10 いつもポケットにウェンガー―WENGERスイス・アーミー・
  ナイフ/レフトハンダー・シリーズ
・右側の席から/左側の席から (読者のお便りコーナー)
  Letters from the right/left side seats―
  左利き用品メーカーより/右側の席から
・左利きについて知るための本

LL11 1997(平成9)年 夏号終刊号

 

 ●LL1 1994(平成6)年 夏号

I’m a lefty. /Me, too. /We are lefties.
I’m a righty. /But we are human being.
Lefties and righties are friends.

前説―To Live In The Right-Handed World
 左利きで生きていく、といっても最近ではあまり問題にならないようだ
 ――右利きの人のあいだでは。
 少なくとも昔のようにはうるさく言われなくなった。
 以前は、右利きの大人たちがいろいろな事を言ったものだ。
 ――いや、左利きは頭がおかしいのだとか、
 左手に箸を持つのは行儀が悪いとか、
 字は右手で書くようにできているものだとか、言いたい放題。
 もちろん今でもそういうことを言う人がいないわけではないが、
 めっきりと少なくなったようだ。喜ばしいことである。
 とはいえ、つまらぬことを言う人が減ったというだけでは
 世の中が良くなったとはいえない。
 「右利きの人達」が単に干渉しなくなったというだけでいけない。
 彼らが積極的に「この世のなかには左利きの人もいる」ということを
 認め、「右利きの人達」だけでなく、「左利きの人」にとっても
 住みよい社会にしなければ。
 「右利き社会」を是正しなければ、と真剣に考え始めない限り、
 「左利きの人」にとってより良き社会にはならないのだ!
 一人の人間として「左利きで生きていく」ことが
 精神的にも肉体的にも
 苦痛とならない社会を作っていかなければならないのだ。
 「右利きの人達」とともに。
 『Lefties’ Life』即ち、この新聞が対象とする読者の中心は、
 実は人口のおよそ10%を占めるといわれる「左利きの人」ではなく、
 残る90%の「右利きの人達」なのです。
 まず「左利き」とは何か、「左利き」として生きてゆくとは
 どういうことか、ということから始めて、
 「右利き社会」で「左利き」として生きてゆく場合
 どのような問題があるのかを知ってもらい、
 「左利きの人」にとって不利な「右利き社会」を是正し、
 誰もが生活しやすい社会をつくる、のがねらいです。

左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その1
Left-handed tools & goods
 一枚の紙を用意してください。
 定規を使って、適当なところに線を引いてみましょう。
 ところで、今あなたの手にある筆記具は何ですか。
 鉛筆ですか、ボールペンですか?
 まあどちらでもいいのですが、それはどちらのメーカーでしょうか。
 そこになんて書いてありますか?
 右手に持っている方はすぐに読み取れるでしょう。
 では、それを左手に持ち替えてみてください。
 今読んだ文字が逆立ちしていませんか?
 そうなんです。私たち左手に筆記具を持つものは皆、
 こういう文字を目にしているのです。
 実用には問題はないのですが、
 しょっちゅうこういうものを目にしていてはいい気持ちはしません、
 よね。
 さあさあ、線を引きましょう。定規を置いて左から右へ――
 紙の端から仮に五センチメートルにしましょうか。
 あなたの定規に㌢cmの目盛りがあれば簡単ですね。
 でも、左手に鉛筆を持って線を引こうとすると、
 右から左へ引くことになります。目盛りは? 一二の三…、と。
 十五引く十は五と。ウーン――ちょっと抵抗があるなあ。
 さて、線も引いたし、切りましょう。
 ハサミを持って、刃に線をあてがって、と。
 おっと、何度もすいません。
 そのハサミを左手に持ってみてください。
 そして同じように線に刃をあてがってみると…。
 ねえ? 線が見えないのです。
 何とかしようとすると、手をからだの反対側に持っていくか、
 ハサミを傾けるかしなければなりません。アーしんど! 
 そこで、私たち左利きの人は左利き用のものを用意します。
 筆記具、定規、ハサミ、というように。
 でも、どこで手に入れればいいのでしょうか?
 あなたは知っていますか?

私のお気に入り左利き用品 ベストテン
 My favorite left-handed items: BEST 10
Count dawn start!
10 “HAZEL”ビジネス・フォルダー
 メモ・パッドが左側についたA4サイズのフォルダー
9 “OSMIROID”マスター・カリグラフィー・セット
 欧文ペン習字用ペン先セット
8 鉛筆削り(ドイツ製)手持ち式 反時計回りで削る
7 “ALLEX”家庭用・事務用ハサミ 165mm 一般用ハサミ
6 “ZELCO”ダブル・プラス・カリキュレーター
 右掌にすっぽり収まる左手入力電卓
5 15cm定規 30cm定規(イギリス製)
 目盛りが右から左についている定規
4 田島サウスポー・カッター・ナイフ
 握りも刃も左手用 オートロック式 左用替刃別売り
3 “RAYMAY”こどもはさみ 先が丸く安全
 135mm 国産品ではもっとも安価
2 スイス・アーミー・ナイフ
 “WENGER” キャンパー・レフト(スイス製)
 すべて左手用のポケット・ナイフ
1 京セラ “SAMURAI Z2-L” 世界初左手用カメラ
 オートフォーカス 3倍ズーム

 

 ●LL2―1994(平成6)年 秋号

前説―To Live In The Right-Handed World
 秋も深まり、落ち葉の季節。
 掃いても掃いても舞い落ちてくる落ち葉たち…。
 というわけで今回は、『ちりとり』のお話から―― 
 わが家には『変わったちりとり』があるのです。
 どこが変わっているかというと、左利きの私から見ると、
 これは完璧に『右利き用ちりとり』なのです。
 「エエーッ、ちりとりにも右用とか左用とかあるの!?」
 「おまんねんやわぁ。」
 ほうきでお掃除するときの事を考えてみましょう。
 人はだれも無意識のうちに利き手にほうき、
 逆の手にちりとりを持つようです。
 大部分の人達は右利きなので、
 右手にほうき左手にちりとりとなるわけです。
 普通のちりとりは、
 特別に利き手を意識した作りにはなっていないものです
 (単純に左右対称形になっている)が、
 わが家のこの『ちりとり』は、
 左手に持ちやすいように把手の部分が左側に付いており、
 全体の形は包丁のぶっといの、といったところ。
 右利きの人にとってはごく普通に使える代物でしょう。
 しかし「喉から手が出るほど欲しい」という品物ではないはず。
 「多少は便利かなぁ」という程度ではないでしょうか。
 ところが、左利きの私にとっては非常に使いづらいものなのです。
 なぜなら右手でゴミを受けようとすると把手が向こうになり、
 手を伸ばして逆手に持たないと使えないのです。
 「なんでこんなモン作んねん!」と不思議でしかたがないのです。
 この『ちりとり』のように
 「ほんのちょっと便利かな」といった程度の利便性の為に、
 本来阻害されるはずのない人々が
 そういう悲惨な体験を余儀なくされる結果を招くということは、
 理不尽としか言えないのではないでしょうか。
 プンプン!(と怒っている)
 みんなで使うような道具は、左右共用できる製品を作ってほしい。
 単純に左右対称形にさえしておけば、
 それだけで左右共用できる品物が、
 この世の中にはたくさんあると思いませんか?
 にもかかわらず、わが家のちりとりのような
 デザインになっているものが多く見られるのです。
 ウーン、残念!
 結局、右利き社会なのです。
 積極的に左利きを差別、あるいは疎外しようという意志はなくとも、
 社会の底流に「右利きがアタリマエー」の考えが
 浸透しているのでしょう。
 Lefties’ life is tough. 「左利きはつらいよ!」

左利き用の道具を知っていますか? 使ったことがありますか?
 その2
Left-handed tools & goods
 前回は、一枚の紙に定規で線を引き、ハサミで切ることに
 チャレンジしました。
 予想どおり、ハサミが一番の問題だ、というのが大方の意見でした。
 左利きの人が右用のハサミを使う場合の問題点は、
 正確には切れない(「勘で切るんや!」)、
 大きなハサミで厚紙などを切るときに、
 握りの部分が指に食い込んで痛い、の二つ。
 しかし、左利き用のハサミなんて見たこともない、という人が大半。
 これは本当に残念なことです。
 実は日本にも左利き用のハサミを作っているメーカーは
 何社もあるのです。ところが、一般には知られていない。
 近所の小売店、スーパーにも売っていない。
 これはいったいどこに問題があるのでしょうか? 
 宣伝しないメーカーが悪いのか、置かない店が悪いのか、
 「こういう品物がほしい」と要求しない消費者が悪いのか。
 それぞれが少しずつ悪い、というのが本当のところかもしれません。

我がLefties Club『左組』では、次の商品をお勧めしています。
1 子供用―RAYMAY藤井/こどもはさみ左手用 KHH350 ¥350
 近鉄・西武百貨店など ◎指の細い人なら大人でも充分使える
2 一般用―ALLEX林刃物/アレックス事務用はさみ(中)左手用
 S-165(L) ¥1200 DIYの店
 (ホームセンター・コーナン、東急ハンズ、西武ロフトなど)
3 厚紙用―PLUSプラス/ステンレスはさみ左手用
 布地・厚紙用 No.210L ¥2800
 近鉄百貨店、東急ハンズ、西武ロフトなど
 
 さあ、すぐ買いに行きましょう!
 とにかく、左利きの人も右利きの人も、それぞれ使ってみてください。
 そして、右(左)利きの人が今までどんなふうに使っていたか、
 実感してみてください。
 長年右用しか使ってこなかった左利きの人は、
 最初はとまどうかもしれませんが、
 そのうち良さがわかってくると思います。
 「なんや、右利きのやつらはこんなに楽してたんか!」
 と思われるかも…。
 逆に、右利きの人は「左利きの者は、
 ようこんなん使う(ツコォ)てたなあ」とあきれるかも…。

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [28]『LL(レフティーズ・ライフ)』復刻(1)全号目次/LL1・LL2」と題して、今回も全紹介です。

本文中にも書いていますように、1月下旬からパソコンの状態が今ひとつで、昔のデータを調べたり、ネットで調べたりがむずかしくなっています。
一時回復したかと思ったのですが、またときどきサボタージュを起こすようで、この文も書くのは二度目です(なぜか保存されず消えていました)。

というわけで今回は、「LL」の再録です。

調べれば以前にも書いているかも知れません。
今は、メルマガのバックナンバーがネット上にはありませんので、個人的に保存されているもので確認するしか方法はありません。
たぶん初出かなあ、と思います。

 ・・・

「左鍵ハモ計画」の方も、上のような状況で今は動きなしです。
そのうちなんとかしたいものです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
〈左利きメルマガ〉カテゴリ

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.03.15

私の読書論182-渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』から-楽しい読書362号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書 (まぐまぐ!)

【別冊 編集後記】

2024(令和6)年3月15日号(No.362)
「私の読書論182-渡瀬謙のビジネス書の新刊
『一生使える「雑談」の技術』から」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2024(令和6)年3月15日号(No.362)
「私の読書論182-渡瀬謙のビジネス書の新刊
『一生使える「雑談」の技術』から」
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 いつも新刊が出ると本を贈っていただいている、
 友人で左利き仲間の渡瀬謙さんの新刊を取り上げます。

 彼の著作を取り上げるのは、昨年の6月と8月の二度ありました。

 「営業のノウハウを処世術として人生に活かす」という趣向でした。

 今回は「雑談術」を扱ったもので、
 必ずしも「営業のための」、というものではありません。

 近所付き合いでも職場での付き合いでも、またお友達付き合いでも、
 その他色々な場面で応用できるかなあ、ということでご紹介します。

 

・2023(令和5)年6月15日号(No.344)
「私の読書論171-渡瀬謙のビジネス書の新刊
『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』から」
・『レフティやすおのお茶でっせ』2023.6.15
私の読書論171-渡瀬謙『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』
から-楽しい読書344号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/06/post-929a0f.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/59ae185f3daf8eebaec62cad6639e4f4

*渡瀬謙『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』
日本実業出版社 2023/5/26
(Amazonで見る)

 

2023(令和5)年8月15日号(No.348)
「私の読書論173-友人・渡瀬謙の新刊・
 静かな人のための『静かな営業』を読んでみた」
2023.8.15
私の読書論173-友人の新刊・静かな人のための『静かな営業』を
読んでみた-楽しい読書348号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/08/post-a3c1f9.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/18d2f67eff14d96378e59e618cd888a3

*渡瀬謙『静かな営業 「穏やかな人」「控えめな人」こそ選ばれる
 30の戦略』PHP研究所 2023/7/20
(Amazonで見る)

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◆ 平常心――「常にまわりが見える」観察の力で… ◆

  ~ 営業のノウハウを処世術として人生に活かす(3) ~

 渡瀬謙『一生使える「雑談」の技術』(大和出版)から

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●『一生使える「雑談」の技術』全体の概要

『どんな場面でも会話が途切れない 一生使える「雑談」の技術』
渡瀬謙/著 大和出版/2024/2/16
(Amazonで見る)

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目次

 序章 発想さえ変えれば、誰もが“雑談上手”になれる!
 第1章 これだけは押さえておきたい! 雑談の基本&大原則
 第2章 最初が肝心! 話のきっかけづくりと話題の見つけ方
 第3章 ストレスがかからない! 不自然にならない雑談の進め方
 第4章 会話がどんどん弾む! 話の上手な広げ方・掘り下げ方
 第5章 もう、あわてない! 話につまったときの切り抜け方
 第6章 こんなとき、どうする? [シーン別]困った状況での雑談術 
 終章 雑談の技術をマスターできれば、人生が大きく変わる!

 

(出版社の紹介文)
--
ムリに話さなくてもOK!
生来の口下手人間が試行錯誤の末につかんだ
「話のきっかけづくりと見つけ方」「話の広げ方と掘り下げ方」
「困った状況の切り抜け方」etc.を事例とともに初公開。
「雑談が苦手な人」ほど効果がある決定版!
--
カギは「相手ファーストの雑談」にある!
 ◎雑談には5つの目的と効果がある
 ◎「相手ファーストの雑談」の構造は、じつにシンプル
 ◎話題に迷ったときの「新鮮なネタ」の選び方
 ◎オンラインでの雑談にはコツがある
 ◎相手がもち出した話題はこうフォローしよう
 ◎雑談で話が広がらない人の3つの特徴
 ◎自然と距離が縮まる「教えてもらう雑談」
 ◎雑談での沈黙には、この3つで対応しよう 他、全49項
--

 

 ●著者・渡瀬謙さんからの言葉

次に、渡瀬謙さんのメールにあった文章を紹介しましょう。

--
この本の特徴は、読んだ翌日からすぐに使える即効性にあります。

・雑談が苦手な人でも翌日からすぐに使える!
・練習不要!難しいセリフを憶える必要がない!
・相手からの信頼度がグンと上がる!
・人付き合いが一気にラクになる!

そもそも雑談力がゼロだった私がこの方法を実践したとたん、
「雑談が得意」と言えるようになりました。
いまでは、雑談を教える講師もやっています。

もちろん、売れない営業にもおススメです。
--

 

 ●雑談の秘訣は「相手ファースト」

 序章 発想さえ変えれば、誰もが“雑談上手”になれる!
 第1章 これだけは押さえておきたい! 雑談の基本&大原則

ここまでで、「雑談」とは何か、何のために行う行為か、
という大前提について語り、どのような「雑談」が正解かを説きます。

くわしい内容については本書をご覧いただくとして、
正解は「相手ファーストの雑談」。

それは、
 《がんばって自分がしゃべるのではなく、
  いかに相手に気持ちよくしゃべってもらうかに集中する――。》p.56
というもの。

第2章以降が、「相手ファーストの雑談」の具体的な方法の解説です。

第2章以降第6章までの35項目で、それぞれ、
雑談のきっかけや話題作りから、その後の雑談のすすめ方、
話題の広げ方、つまったときの切り抜け方、
困った状況でのシーン別対処法などの具体的な説明が続きます。

ここでも詳しい内容は本書をお読みいただくとして、
その中からいくつか気になった項目を見ておきましょう。

 

 ●「天気」の話題はなぜNGなの?

「第2章 01 雑談で「天気」の話をするのはNG」とあります。

私は雑談の第一歩は「天気」の話題だろうと考えています。

雑談の話題としては、
(1)誰もが知っていること・感じていること・興味があること
(2)相手がよく知っていること・感じていること・興味があること
(3)話者本人がよく知っていること・感じていること・興味があること
(4)本人と相手だけが知っていること・感じていること・興味があること
といったことでしょう。

「天気」の話題は最もポピュラーなもので、
いつでもどこでも可能なもので、一番手っ取り早いものです。
これを利用しない方法はありません。

これは、軽い立ち話で終わる日常的な挨拶の次の雑談の話題として、
最適かつ有効な話題です。

ところが、この本書に於いては、
必ずしもそういう「軽い雑談」について論じているわけではないので、
ここでは「NG」だというわけでしょう。

「天気」の話題が有効なのは「異常気象」の時だ(p.72)というのです。
そういうときこそ、誰もが話したくなるものですからね。

 

 ●「平常心」が良いパフォーマンスを生む

次に大いに気になった項目は、同じ第2章の
「09 まわりを観察するために必要なのは“平常心”」です。

渡瀬流の雑談のポイントは、この「平常心」をいかに保つか、です。

雑談のきっかけとなる話題を見つける上で大切なことで、
それは、広い視野でまわりを見られるかどうか、
そうして、いかに相手にふさわしい内容の話題を見つけられるかどうか、
という面で。
さらに、実際に雑談に入ってからのパフォーマンスにおいても重要です。
雑談が緊張したものでは、何のための雑談か分からず、
そのあとに続く本題の商談への逆効果となり、本末転倒です。

 《「自分が平常心でいられるときに、
  最も高いパフォーマンスを発揮できる」》p.98

からです。

昔読んだ松井秀喜さんの本
(『不動心』新潮新書 2007/2/16)
(Amazonで見る)

の中で、「平常心」について書いておられたと記憶しています。

メジャリーガーとしてワールド・シリーズでMVPとなった、
あの松井秀喜さんの言葉です。

自分がチャンスに強いのではなく、相手の方が負けているだけ。
相手がピンチだと思って、勝手に追い込まれていて、
平常心を保てずにふだんの実力を発揮できないでいる。
一方、自分は平常心で、普段通りの実力を発揮できている、
その差が出るのだろう、と言った内容の言葉でした。

どんなときも動じない、平常心でいられる『不動心』が大事なのだ、
といったお話でした。

 

このお話を渡瀬さんにしますと、
イチローさんも同じような話をしているとのこと。

名選手、天才、偉大な才人等々と呼ばれる人たちはみな、
チャンスに実力を発揮できるように、
どんなときも平常心を心掛けて実践している、ということなのでしょう。

 

 ●「営業に雑談は不要」と考える人もいる

実は、私は「営業に雑談は不要」と考える人間です。
よく「会話が途切れない雑談のコツ」等の文字が並ぶ
『雑談術』の本があります。

あれっ、この本の副題? にも
「どんな場面でも会話が途切れない」とありましたね。

私は「会話が途切れて何が悪い」とも考えています。

が、それはさておき、まずは「雑談不要論」について――。

私は昔、下請けの町工場で「工場長兼雑用係」のような立場でした。
仕事の最中に飛び込みで営業に来る人がいますと、
甚だうっとしいものでした。
こちらは一個組み立てて工賃がいくらといった仕事をしています。
時間=工賃、すなわち「時は金なり」の仕事です。

時間泥棒はお金泥棒です。
営業なら、雑談する閑があるのならさっさと商談を始めなさい、
というわけです。

もちろん、すべての雑談を排除する気はありません。

ルートセールスのような、すでに取引関係がある場合なら、
新商品の紹介とか、偶然近くに来たので挨拶に、とか、
関係を維持するための潤滑剤としての訪問ならば、
相手のようすを伺ったうえで、余裕がありそうなら、
ちょっとした雑談をはさむというのは、有効です。

あくまでも人間関係の潤滑剤が雑談です。

で、大いに感心したのが、
「第3章 06 こんな人には雑談は禁物」p.118 という項目です。

雑談をしていけない場面を説明しています。
忙しい人には雑談をしない、というわけです。

ほかの著者が書いた雑談術の本を読んだことはないのですが、
当たり前と言えば当たり前のことですが、
こういう雑談は禁物発言は、意外と書かれていないような気がします。

 

 ●しゃべりが止まらない人

次にその逆? で、
しゃべりすぎる人を相手にしたときの対処法が次の項目です。

「第3章 07 しゃべりが止まらない人への対処法」p.120
詳しくは本書をご覧ください。

一言言えば、私はこんな言葉を知っています。

 《誰かと会話をはじめる時は、
  まずその相手がこっちの話を聞く性質の人か、
  それともこっちがそのお喋りを聞くほかない人か、
  見きわめることが大切だ。 ――リチャード・スチール――》
    加島祥造『会話を楽しむ』岩波新書 2004/10/20
(Amazonで見る)

(加島さんは、英米文学者で、
 晩年は信州に住み「伊那の老子」と呼ばれた詩人でした。
 現代語の自由詩訳の『老子』で有名です。)

この『会話を楽しむ』では、
会話というものは、二つの基本認識が必要だ、と言います。
対等観と心を開くこと。

この対等観とは、福沢諭吉の有名な『学問のすすめ』の冒頭の、
「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」という時の
「人間としての平等」としての対等な関係という意味です。

目上とか年上とか上役であるとかの形式とは別の意味でのこと。

たかが雑談といえども、本格的な会話と同じことだと思っています。
一人の人間として対応して相手の考えをつかみ、自分の考えを伝える。
それが大事だといいます。

雑談でも、技術的な雑談ではなく、
心のこもった雑談であって欲しいなあ、と私は思いますね。

 

 ●沈黙を恐れるな

次に沈黙について。

「第5章 01 雑談での沈黙には、この3つで対応しよう」

沈黙には、「いい沈黙」と「悪い沈黙」と、
さらには「必要な沈黙」がある、といいます。

私も、沈黙を恐れるな、と言いたいですね。
特に「考えている間」というものは絶対必要です。
お互いに考えなしにダラダラ話し合っても意味はありません。

さきほども言いましたように、会話とは互いの考えを披露し合うもので、
理解し合う手段です。

当然、相手の言葉に対しても、考える時間も必要になります。
考えている間の沈黙は、必要な沈黙となります。

 

 ●自分で動く

「第6章 05 大勢の飲み会で孤立しそうなとき」の中にあった言葉が、
ガーンときています。

それは、
 《孤立するのがイヤだったら、自分で動くこと。》p.191

ここでは、パーティーなどでの対応を述べています。
しかし、人生に置き換えてもいいかもしれません。

私は<左利きライフ研究家>を自称しています。
もう34年ほどになります。
その間、はじめの頃も今も、ほぼ一人で動いてきました。

残念ながら、思うほどには同志は得られませんでしたが、
それは動き方が足りなかったからか、と思われます。

動いた分だけ、何かを得たことは事実です。
もう一度、動いてみたほうがいいのかなあ、という反省はあります。

 

 ●「自信」があれば何でもできる

最後に、「おわりに」にあった言葉「自信」について。

まあ、何事もそうなのですが、人間にとって一番大事なのはこの「自信」。

どんなときも「平常心」でいられるというのも同じで、
これも「自信」にもつながることです。

自分は今までこれだけのことをしてきたのだから――といった意識が、
そのまま自信につながっていて、それがそのまま自分の力になっている。

自信があるので、常に平常心でいられ、何事にも積極的に挑んでいける。

 

雑談に於いても、
本人の精神状態というものが如実に現れてしまうものなのですね。

「平常心」とか「自信」とかは、いきなり身につくものではありません。
色々と経験を積むことで、自然と生まれてくるものなのでしょうけれど、
意識的に極めることはできると思います。

渡瀬さんは、雑談によって人生にこんな変化が生まれた、
といくつかの嬉しい成果を上げています。

しかし、これを見て打算的に雑談の腕を上げようとするのではなく、
人間としてのグレードを一段階上げるのだという、
真摯な気持ちで取り組んでほしいと思います。

この本を読んで各項目の内、一つでも納得のいくことがあれば、
それを実践してゆく。

その結果、何かしら一つでも身につける事ができれば、
それでいいのではないでしょうか。

雑談に関して、その方法論を書いた本でした。

 ・・・

えっと、私から最後に一言――

私は、日々きちんと状況に応じた「挨拶」ができるならば、
その延長として、「雑談」もクリアできるように思いますけれど、ね。

「挨拶から始めよう!」って。

*参照:「コラム4 “あいさつ言葉”はありがたい」p.124

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「私の読書論182-渡瀬謙のビジネス書の新刊『一生使える「雑談」の技術』から 」と題して、今回も全文転載紹介です。

本文でも書いていますが、私は基本的に「雑談」というのが嫌いです。
なんとなく「雑な談話」みたいで。

本当の意味は、雑誌の「雑」で、いろんなジャンルのものといった意味なのでしょう。
でもね。

できるなら、意味のある「会話」、もしくは「対話」にしたいものです。

とはいえ、雑談は「挨拶」同様、「人間関係の潤滑剤」なのでしょう。

有効な雑談術を身につけましょう。
おしまい。

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』

『レフティやすおのお茶でっせ』
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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2024.03.02

楽器における左利きの世界(18)マクマナス著『非対称の起源』から-週刊ヒッキイ第659号

(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第659号(Vol.20 No.4) 2024/3/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(18)
 マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第659号(Vol.20 No.4) 2024/3/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(18)
 マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 前号では、<左利き用楽器>製作プロジェクトを紹介しました。
 こちらについては、また後ほどふれるとして、
 今回は、昨年12月以来の、<楽器における左利きの世界>です。

 イギリスの利き手・左利き研究の権威、マクマナスさんの著書の邦訳
 クリス・マクマナス『非対称の起源』 (講談社ブルーバックス)
 から、左利きと音楽家についての文章を紹介しましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの人は左利き用の楽器で演奏しよう!}

- 「左利きに優しい社会」づくりは左用楽器の普及から! -

  マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

*参照:
クリス・マクマナス『非対称の起源―偶然か、必然か』大貫 昌子/訳
講談社ブルーバックス 2006/10/21
(Amazonで見る) ――左利き研究20年のイギリス人科学者による、左利き・利き手の研究を
中心に、左右に関する話題を含めた科学研究書の訳書。「利き手と社会」
「左利きの苦悩」といった章を含み、左利きには興味深い本。イギリス・
スコットランドの「左利き」についての方言集など一部省略されている。
原著:RIGHTHAND LEFTHAND (c)2002
200215kagamino-2

 

 ●「第4章 利き手と社会」

本書『非対称の起源―偶然か、必然か』の第4章「利きと社会」には、
《相互作用の世界のなかの側方性》について書かれています。

これは、例えばみなが一列になって鎌を手に草刈りをするようすを
一例としてあげています。
全員が右利きで右手に鎌(西洋の草刈り鎌は大きくて1メートルぐらい
ある)を構えて一斉に草を刈るとき、
そのなかに一人でも左利きの人がいて逆方向に鎌を振るようでは、
横にいる人がケガをする可能性がある、というのです。

全員が同じ動作で同じ方向に振れば問題は起きにくい、と。
これが「側方化した作業」ということばの意味です。

 《二人の人が側方化した作業をいっしょにしようとするとき、
  一人がすることは必然的に他方の作業に影響する。
  したがって社会はそのような場合のため、法律であれ、
  規約あるいはエチケットであれ、
  とにかく何らかのルールを作る必要がある。》p.362

そのようなルールやエチケットの例として、握手や
テーブル上でのナイフとフォークの位置を上げています。

これらは
 《左利きにとっては多少不自由かもしれないが、
  その不便さは些細なものだから文句を言う人はいない。》p.362
という。

ここはちょっと同意しかねますが、話の展開上、一旦置いておきます。

もっと複雑な相互作用の時にはどうなるであろうか、
この章で考えてみよう、というわけです。

 

 ●競争ではなく、協力が必要なケースでは?

競争の場合、左利きは時に有利になることがある、といいます。
それに対して、競争ではなく互いの協力が必要な状況では、
左利きにとってはどうだろうか?

最初の例は、何人かが一つのチームとなって行う外科手術の場合、
指示することなく
他の外科医の動きを見てサポートする態勢が整っている必要がある。
そこで、右利きと左利きが混じっていると問題だろう、といいます。

実際に調査した例は一つしかないが、
その聖マリア病院付属医学校の学生の調査では、
医師67人中左利きは12%であるが、
外科医36人中左利きは一人もいなかった。
統計的にはあり得ない結果だが、
外科医に左利きが少ない可能性は考えられる、とあります。

次にあげられている例が今回紹介しようという、オーケストラの場合。

 

 ●「右利き」での演奏

<オーケストラも右利きが多い>という段落を紹介しましょう。

オーケストラのヴァイオリン、チェロなどの弦楽器の弓は
1メートルぐらいあり、これらがぶつかり合うことを考えると、

 《オーケストラの弦楽器が必ずと言っていいぐらい、
  「右利き」で演奏されるのも当然のことだ。》p.391

といい、さらに

 《楽器の中には必ず「右利き」で演奏しなければならないものもある。》

と。

 《ピアノは良い例で、高音のキーは右側の端、
  低音は左側の端と決まっている。》p.391

これは、このシリーズで私がいつも言ってきたことでもあります。

 

 ●「両手利き」の楽器や逆弾きの奏者

次に「両手利き」の楽器も少なくないと、ギターの例をあげています。

 《ギターの弦の順序を逆に張りかえれば、
  左利きの奏者も弾くことができるのは、ポール・マッカートニーや
  ジミー・ヘンドリックスなどのミュージシャンを見れば明らかだ。
  ヴァイオリンやチェロ、コントラバスも、映画『ライムライト』の
  チャップリンが弾いたヴァイオリンのように、
  左利き用に弦を張り替えることはできる。》p.391

これはちょっと違う点もなきにしもあらずですが、
やってやれないことはない、という次元ですね。

さらに、時には左利きの奏者が、右利き用に張った弦を
そのまま「逆に」(左利きで)演奏する例があるといいます。

 《独学でニューオーリンズのジャズベース奏者になった
  シャーウッド・マンジャパーネは、
  ジャズ史研究家ディック・アレンによると、
  「ただ耳で聞いたままを、自己流に弾いている」のだ。
  「何しろ左手だから、まるであべこべに弾いているみたいに見える。
  彼は弦を張り替えずに、そのまま弾くことを覚えただけのことだ」。》
p.391

右利き用が一般化、あるいは標準化して普及している場合、
左利きの人がこういう弾き方をすることは当然起こりうること、
と考えられます。

そうするしか思いつかないのですから。

私のような左利きの年配者たちが右手用のハサミを、
それが右手用(右利き用)と知らないまま、
左手で使っていたのと同じことでしょう。

 

 ●オーケストラ奏者の13%が左利き

著者は、ヴァイオリン独奏者で左利きの弾き方をする人がいるとしても、
現代のオーケストラで左利きの演奏者は見たことがない、といいます。

 《してみると、彼らの大多数、あるいはひょっとすると全部が
  右利きなのだろうか? ほかにも右手と左手とが異なったことを
  するようデザインされているオーケストラ用楽器は数多いが、
  その奏者たちも右利きなのだろうか?》

実はそうではない、といいます。

英国の17のプロのオーケストラを調べた結果は、
《自分の選んだ楽器の種類に関係なく》13パーセント近くが左利きで、
《これは一般の人口よりやや多め》だといいます。

右利き用の楽器しかないので、
左利きの人でも、しょうことなしにそれに慣れた人が生き残ったのか。

右利き用の楽器といえども、左手も何らかの形で使う必要があるので、
両手がある程度使える人が生き残ったのか。

 《左利きだからと言って、必ずしもプロレベルのオーケストラで、
  右利き用の楽器を奏でる妨げになるとは限らないようだ。》p.392

とも書いています。
しかし、妨げにはならないかもしれませんが、
それで左利きの奏者自身に不満がない、とはいえないでしょう。

 

 《社会の中で他人と協力していく必要上、
  左利きのヴァイオリン奏者は「右利き」の弾き方をし、
  食事のときには右利きの人と同じように、
  フォークとナイフを使っているのにちがいない。》p.392

という結論でこの段落の文章を締めています。

 

 ●「右へ倣(なら)え」するということ

他人と協力してゆく上で、少数派が多数派に合わせるということが
必要なケースはあると思います。

交通ルールとしての「車は左側通行」というように。

しかし、これも日本やイギリスのような一部の島国ぐらいの決まりで、
欧米の大陸では逆の「右側通行」になっています。

本書の本章でもそれを取り上げていますが、
これは「偶発性」のものだと結論しています。

何かしら根拠があってというのではなく、偶然の結果としてそうなった、
というもののようです。

 

「右へ倣え」ということの是非というものも考えてみるべきではないか、
と思います。

何事も多数派に合わせなければならない、というものではないはずです。

左利きの人は多く、自分の利き手である「左利き」を
アイデンティティとして感じているものです。

これは右利きの人ではまず見られないことです。

多くの人に聞いたことがあります。
私が聞いたかぎりでは、右利きの人にとって「自分は右利きだ」
という自覚は、ほぼありませんでした。

ところが左利きの人では「自分は左利きだ」という事実が、
自分を表すアイデンティティの一つになっているものです。

そういう意識を持つ人にとって、
何でもかんでも「右へ倣え」というのは、非常に抵抗があります。

例えば、こういう風に考えてみてはどうでしょうか。

オーケストラで、
ヴァイオリン奏者の腕が一斉に右に左に流れるのを見て、
「美しい」と感じる人がいるとしても、
では、その中の一人が逆の動きをしていれば、確かに目立つでしょうし、
なかにはそれを、ひとつの汚点や玉に瑕(きず)のように感じる人も
いるかもしれません。

しかし、左利き奏者と右利き奏者を左右に配置すれば、
鳥が翼を広げるように、左右に大きく展開する場面が生まれ、
視覚的に一つのダイナミズムを生む演奏につながるかもしれません。

ただ単に一列に並んで、一斉に右に左にと動くだけの演奏とは違い、
新たな視覚的表現となる可能性もあるのではないでしょうか。

それによって、今までは右利き動作に馴染めずに
音楽家としての限界を感じていたような左利きの人にも、
新たな職業選択の機会を与えることが可能になると思います。

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(画像:「左利きバイオリン」GCV-800EL 左利き用バイオリン◆ストラディバリ Soil III [GCV-VN-800EL-SOI] ネットより無断借用) 

 ・・・

さて、今回はこの辺で。

 

 ▼「左鍵ハモ計画」

最後に、<左利き用楽器>製作プロジェクトについて――

「左利き用鍵盤ハーモニカ」製作プロジェクト =「左鍵ハモ計画」
についてあちこちメールを出してみようと考えていましたが、
1月下旬からパソコンの調子が今ひとつで、ネットにつながるのに、
時間がかかり、クルクル状態で、思うように、調べることもできません。

保存したファイルも同様で、どうも不調です。

もうしばらく時間がほしいなあ、と思います。

どなたか「我こそは」という人が現れると良いのですけれど……。
(甘い!甘い!)

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(18)マクマナス著『非対称の起源』から<音楽家と利き手>について」と題して、今回も全紹介です。

今回は、マクマナス著『非対称の起源』の音楽関係を取り上げたのですが、この本、部分的に納得のいかない部分がよく出て来るのです。
イギリスの利き手研究の権威だそうで、納得できる話は多いのですが、そのなかでもう一つピンとこないところが出て来るのですね。
単に私の勉強不足もあるのでしょう。

反面、左利きというのは、自分のなかで非常に大きな要素なので、私の場合は自分の実感や体感に基づく考えなわけです。
そこにどうも合わない部分が出て来るわけです。

具体的には、追々お話しする機会があるかと思います。
ではまた。

 ・・・

「左鍵ハモ計画」なんですが、これは大切なことなのですが、どうも突っ込んでいけない自分がいます。
体力不足というところでしょうか。

ここ何年か、ほとんど人と関わるようなことをしなくなりました。
どうしても、色々と考え方の違いや何やかやが出てきます。
それが面倒くさい、という感じですね。

元々一人でコツコツやってきた人間で、社交的な人間ではないので人と関わるのが苦手です。

若い人で精力的な人が現れないかなあ、というのが希望的観測なんですけれど……。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

 

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(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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