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2023.11.30

クリスマス・ストーリーをあなたに~(13)-2023-「道」もうひとつのサンタ物語-楽しい読書355号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】


2023(令和5)年11月30日号(No.355)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(13)-2023-
 シーベリン・クィン「道」もうひとつのサンタ物語」


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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年11月30日号(No.355)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(13)-2023-
 シーベリン・クィン「道」もうひとつのサンタ物語」
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 今年もはやクリスマス・ストーリーの紹介の季節となりました。


 昨年は古典編でしたので、今回は現代編です。
 といいましても、必ずしもつい最近の作品というのではなく、
 過去の現代編でもそうでしたが、二十世紀の後半や
 前半の作品も含まれていました。
 今回もそういう一つと思われる作品で、正確な発表年代は不明です。


 


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-クリスマス・ストーリーをあなたに (13)- 2023


  ~ もうひとつのサンタ物語 ~


  シーベリン・クィン「道」


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 ●過去の ~クリスマス・ストーリーをあなたに~


一回毎、一年ごとに【古典編】と【現代編】を交互に紹介してきました。


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


【古典編】
 チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』『鐘の音』
 ワシントン・アーヴィング『昔なつかしいクリスマス』
 ライマン・フランク・ボーム『サンタクロースの冒険』
メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」
 クリストファー・モーリー「飾られなかったクリスマス・ツリー」


【現代編】
 トルーマン・カポーティ「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」
 アガサ・クリスティー「水上バス」
 コニー・ウィリス「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」「まれびとこぞりて」
 梶尾真治「クリスマス・プレゼント」、ジョー・ネスボ『その雪と血を』
 ドナルド・E・ウェストレイク「パーティー族」


 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 


参照:
『レフティやすおのお茶でっせ』2023.11.27
クリスマス・ストーリーをあなたに~全リスト:
『レフティやすおの楽しい読書』BNから
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/11/post-1995dd.html


 


 ●サンタクロース誕生物語


今回は、角川文庫の昭和53(1978)年発行の
クリスマス・ストーリーのアンソロジー全二巻のうち、
『贈り物 クリスマス・ストーリー集1』に収録されている作品
シーベリン・クィン「道」を紹介します。


実は、もうひとつの「サンタ物語」です。


サンタクロースの誕生物語というのが、結構色々あります。


以前紹介しました、『オズの魔法使い』の作者
ライマン・フランク・ボームの『サンタクロースの冒険』も、
そういうものの一つです。


*参照
2013(平成25)年11月30日号(No.117)-131130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム


『サンタクロースの冒険』
The Life and Adventures of Santa Claus (1902)
ライマン・フランク・ボーム/著 田村隆一/訳 和田誠/イラスト
扶桑社エンターテイメント(1994.10.30) [文庫本]


 


新訳版で――
『サンタクロース少年の冒険』矢部 太郎/イラスト 畔柳 和代/訳
新潮文庫 2019/11/28


 


 ●シーベリン・クィン「道」荒俣宏訳


『贈り物 クリスマス・ストーリー集1』長島良三/編 角川文庫
 1978(昭和53)/11/30


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(画像:角川文庫版のクリスマス・ストーリーのアンソロジー全二巻『贈り物 クリスマス・ストーリー集1』、『クリスマスの悲劇 クリスマス・ストーリー集2』)


 


ボームのサンタ物語は、オズの作者らしく、
童話っぽいファンタジーでした。


一方こちらのシーベリン・クィンの作品は、
パルプ・マガジンの作家だけあって、
おとな向けのリアル系のファンタジーです。


パルプ・マガジンといいますのは、
アメリカの1920年代あたりから始まった、安っぽい紙に印刷され、
ドラッグストアなどで売られていた、お手頃値段の、
主に労働者や子供向けのミステリやSF、怪奇・幻想小説などを掲載した
娯楽読み物雑誌の総称です。
今では文学史にも登場するダシール・ハメットにしろ、
新潮文庫にも収録されたH・P・ラヴクラフトなども、
ここを舞台に活躍していた作家でした。


そういう雑誌に長短いくつもの作品を発表していたのがクィンです。
本編収録アンソロジーの巻末の編者・長島良三さんの
「解説・作者紹介」によりますと、1925~1952年にかけて、
怪奇・幻想小説、冒険小説、探偵小説など145篇を書きまくった
といいます。
本編もそういう一つです。


私は、本編をこの作品集以前にどこかで読んだ記憶があります。
たぶん雑誌、『SFマガジン』だったかと思います。
1970年代だったでしょう。
その時もこういうサンタクロースの誕生までを描く物語という、
クリスマス・ストーリーもあるんだなあ、と思ったものでした。


 


 ●ストーリー「一 ベツレヘムへの道」


主人公はヘロデ王に仕え、闘技場で多くの剣闘士たちと戦い、
勝ち抜いてきた剣闘士だった男。
ノルウェー式の単純なクラウスという名を
クラウディウスと呼ばれる北方人。
奉仕の期間を終え、故郷に帰る途中、ヘロデ王の私兵が、
ユダヤ人の女から抱いている赤子を奪い殺すところを見る。
その後、エジプトへ逃げる赤子をつれた夫婦を襲う私兵を殺し助ける。


そのとき、赤子の声が心に聞こえる――


 《「クラウス、クラウス」やさしくその声は響くのだった。
  「なんじが余に慈悲を与えたゆえに、なんじの生命を
  幼児の自由のために投げ捨てたゆえに……余はなんじに告げる。
  なんじが余のためになすべき仕事を果たし終えるまで、
  なんじは決して死の暗き翼に包まれることなきを……」》p.199


 《なんじは汝の生命と引きかえに幼子の生命を守った。
  それはなんじの両親の賜物。(略)笑い合う幸福な子供たちが、
  永久になんじの良心と愛の美しさを称えることだろう。
  そして人々が、余の生誕日を祝うかぎり、なんじは永遠にすべての
  幼な子の心に生きるのだ」》p.200


 《「なんじの名を子供たちが口にするかぎり……」/
  「わしは万能の英雄になるのだろうか」/
  「幼い時代のなつかしい思い出を胸にいだくすべての人類によって
  称えられる愛の英雄……」》pp.200-201


 


 ●「二 カルバリへの道」


その結果、彼は追われる身となり、避難所としてローマ軍の兵士となり、
ヘロデ王の後継者の追っ手に捕まることなく、
いつしか、ローマのユダヤ提督ピラトとともに
イェルサレムの胸壁に立つ百人隊長となる。


ユダヤの僧侶たちは、総督を意のままにしようとするが、ピラトは
一個の軍隊しか持たず、彼らを屈服させることができないことを歎く。


今、ガリラヤから来た説教師がユダヤの王を名乗っているという話が、
ピラトの悩みだという。
しかし、クラウディウスは、彼は我々はみな兄弟、神を畏れ、王を敬い、
ローマ皇帝のものはローマ皇帝に返すのだ、という。


ところが大祭司カヤパは、彼は謀反を企てているので、
帝国への反逆を説いた人物として、十字架刑にかけよ、
と圧力をかけているという。


街の人々からイエスは救世主だと言われているなかで、
ゴルゴタの丘で三人の十字架刑が行われる。


ピラトは、「こはイエス、ユダヤの王なり」と書いたものを
受刑者の頭の上に掲げるように、クラウディウスに持たせる。


クラウディウスは、茨の冠をかぶせられた血まみれの男に
施しの水を与え、足を砕けというカヤパの言葉に逆らい、
人間らしい死に方を与えてやれと、槍を心臓に打ち込む。


その時、彼は声を聞く。
この預言者こそ、そのむかし、
エジプトへ逃げる夫婦を助けたときの赤子だったと知る。


その後、地震に襲われ足を痛めた女を助けるが、
その女は、その朝、処刑された預言者のあとを追うため
卑しい職業を捨てた売春婦だった。


彼女は恐ろしい病に犯されていたが、
十字架を背負って丘を上る途中の彼に声をかけ、
主の治療を受け、治った、元の汚れのない乙女のように清らかとなった、
という。


しかし、彼女を蔑むクラウディウスに、また声が聞こえる。


 《「女をさげすむのではない。余は彼女に慈悲を垂れた。
  そしてなんじも――余も――彼女を必要とするのだ。
  クラウス、彼女をなんじのものとするのだ》pp.222-223


こうしてクラウスは、彼女をウナと名付け、妻とする。


 《「いとしい妻よ、主はいわれたぞ。わしにはおまえが必要だとな」
  (略)「主ご自身もおまえが必要だと、そういわれたぞ。
  わしたちは主のお声を聞き、主に召されるときはいつでも、
  喜んで応えるのだ。(略)」》p.227


 


 ●「三 長い長い道」


ピラトと共に過ごしたクラウディウスは、ピラトの死後、
武勇の誉れ高い強者を必要とするローマへ。


今や、かの預言者は広くヨーロッパで信仰されていた。
しかし、クラウスは言う。


 《「この世に生きる人間のうちでも、僧侶ぐらい
  性質を変えん人種はおらんな。あの薄汚い奸計を弄して
  主を十字架にかけたのは、カヤパとその一党だったし、近ごろでは
  主が生命とひき替えにされた真実を偽りに変え、
  秘に付してしまっているのは、なんと主の神官であり奴隷であると
  自称する僧侶たちなのだからな!」》p.233


ときは移り変わり、ある年のクリスマス、
二人はライン川沿いの小さな町に仮の小屋を設け暮らしていた。
その年の収穫は少なく、農家はその日の飢えをしのぐのがやっとで、
クリスマスの宴を祝う気力さえなかった。


貧しい家の子供たちを喜ばせるためにクラウスは、
小さな橇を削り出した。
それを見たウナは、もっと作るようにいい、
自分は倉にある蓄えでお菓子を作るという。


冷たいクリスマス・イヴ、クラウスは赤いマントをまとい、
ささやかな贈り物を積んだ小さな橇を子供たちの家に届けてまわった。
寒さに眠れなかった一人の子供だけがその姿を見かけた。


子供はその体験を語った。
だれもが口をそろえて、聖(サンタ)クラウスと呼んだ。


しかし、聖職者たちは、町の統治者に堕天使の汚れた企みに違いない
と非難し、取り押さえるように進言する。


町の人の知らせに、二人は脱出に成功し、北の国へと逃避行を続ける。


こうして二人は北欧のラップランドをこえ、土地の人が寄りつかない、
九つの小さな丘が環状に取り囲む谷間に辿り着く。


そこには、古い言い伝えにより人々が恐れる小人たちが住んでいた。
しかし彼らは隣人のために奉仕することを願っていた。 


すると、クラウスに再び、あのなつかしい声がこう告げた。


 《「クラウス、なんじにはこの小さき者たちの手助けが要る。
  なんじの足もとに開ける道を、彼らとともに歩め」》


クラウスは、彼らの職工としての腕を活かし、
おもちゃと作るように提案する。
できた贈り物は自分が、
お前たちの名を呼んで歓んでくれる子供たちのもとに届ける、と。


小人たちをのせて魔法の橇でさらなる北方の地に赴き、一軒の家を建て、
そこでウナの指導もあって、彼らはおもちゃ作りに精を出す。


そして、ふたたびクリスマスの季節が来る。
クラウスは、できあがったおもちゃを魔法の橇に乗せ、
八頭のトナカイを呼び寄せて、おもちゃを配ってゆく。
配り終えたクラウスは家に帰り、妻のウナや小人たちと宴を催し、
子供たちの幸福を祈りながら、杯を重ねるのだった。


 《今日でもクラウスは現に生きている。
  毎年十億人もの幸福な子供たちが彼の訪れを待っている。
  彼はもう百人隊長クラウディウスでもなければ、
  北方の戦士クラウスでもない。幼な子を守護する慈愛ぶかい聖者、
  サンタクロースなのだ。彼の職務は、二千年前のあの夜、
  主が選びたもうたもの。彼の道は、救世主の生誕日が人々に
  祝われるかぎりもどることを知らない、長いながい道――》p.242


―終わり―


 


 ●リアルでホットな物語


サンタクロースのモデルになったといわれるのが
「聖(セント)ニコラス」または「聖(セント)ニコラウス」。


小アジア(現在のトルコ)のミラという町の司教で、
町の貧しい人たち、特に小さな子供たちを大事にして、
死後、聖人としてあがめられ、亡くなった12月6日は、
「聖ニコラウスの祭日」とされた、とか。


クリスマスやサンタクロースに関しては、色々なお話があります。


だれもがこういう起源についてのお話を書いてみたい、
と思うものでしょう。


クィンもそういう一人だったようです。
彼のお話は、リアルなファンタジーと言えるのではないでしょうか。


「講釈師、見てきたようなウソをつき」とかいいますが、
エジプトへ逃げようとする赤ちゃん連れの夫婦を襲う兵士との戦闘、
ゴルゴタの丘でのイエスの磔の場面など、リアルに描きつつ、
だんだんとイエスの声を通して、
ファンタジーの世界へと導いてゆきます。


リアルでホットな物語という気がします。
機会があれば、一度読んでみても損はないでしょう。


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本誌では、「クリスマス・ストーリーをあなたに~(13)-2023-シーベリン・クィン「道」もうひとつのサンタ物語」と題して、今回も全文転載紹介です。


本文中でも紹介していますが、過去の「~クリスマス・ストーリーをあなたに~」で紹介した作品をリストアップしてみました。


『レフティやすおのお茶でっせ』2023.11.27
クリスマス・ストーリーをあなたに~全リスト:『レフティやすおの楽しい読書』BNから


クリスマス・シーズンの読書ガイドの足しにでもしていただけると嬉しく思います。


 ・・・


*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』


『レフティやすおのお茶でっせ』
〈メルマガ「楽しい読書」〉カテゴリ


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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
--

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2023.11.27

クリスマス・ストーリーをあなたに~全リスト:『レフティやすおの楽しい読書』BNから

今年もはやクリスマス・ストーリーの紹介の季節となりました。
例年、11月末発行の読書メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』では、<クリスマス・ストーリーをあなたに>と題して、古今東西の“クリスマス・ストーリー”――ディケンズの『クリスマス・キャロル』に始まるとされるクリスマスにまつわる、幽霊が登場したり、奇跡が起きたりといった愛と善意とにくるまれたハート・ウォーミングな物語が展開される――の中から、私の心に響いたお話を、海外・国内・新旧の作家による長短の作品を取り混ぜて紹介しています。

ここでは過去のそれらの作品をリストアップしておきましょう。

 

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 ●過去の ~クリスマス・ストーリーをあなたに~

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(読書メルマガ)『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
(「まぐまぐ」版)

 

201127xmas1
(画像:(上段左から)(2017年紹介)梶尾真治「クリスマス・プレゼント」収録の『有機戦士バイオム』ハヤカワ文庫JA、(2019年)ジョー・ネスボ『その雪と血を』ハヤカワミステリ文庫、(2012年)アガサ・クリスティー「水上バス」収録のクリスティーのクリスマス・ブック『ベツレヘムの星』、
(下段左から)(2008年)チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』(2016年)『鐘の音』収録の『クリスマス・ブックス』ちくま文庫、(2013年)ライマン・フランク・ボーム『サンタクロースの冒険』)

 

0◆2008(平成20)年12月クリスマス号(No.11)-081206-
『クリスマス・キャロル』善意の季節

『クリスマス・キャロル』ディケンズ/著 中川敏/訳 集英社文庫 1991/11/20
―訳者の解説と木村治美の鑑賞など、資料も豊富。

 

 

1◆2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節
『あるクリスマス』カポーティ

別冊 編集後記:『レフティやすおのお茶でっせ』
善意の季節『あるクリスマス』カポーティ

『誕生日の子供たち』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 文春文庫 2009.6.10
―クリスマス短編「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」収録
 「―思い出」はクリスマスの懐かしい、でもちょっと切ない思い出を振り返る愛情あふれる物語で、少年に与えられたクリスマスの贈り物、
 「ある―」は逆に、少年が与えたクリスマスの贈り物の思い出話といえる抒情的名編

 

 

2◆2012(平成24)年11月30日号(No.94)-121130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』から

クリスマス・ストーリーをあなたに ―第94号

(「作文工房」版)

『ベツレヘムの星』アガサ・クリスティー/著 中村能三/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003/11/11)
―おススメ短篇「水上バス」を含む、クリスマスにまつわる小説と詩を集めた、クリスティーが読者に贈るクリスマス・ブック

 

 

3◆2013(平成25)年11月30日号(No.117)-131130-  
クリスマス・ストーリーをあなたに~
 『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム

クリスマス・ストーリーをあなたに~『サンタクロースの冒険』ボーム

(「作文工房」版)

 

『サンタクロースの冒険』ライマン・フランク・ボーム/著 田村隆一/訳 扶桑社エンターテイメント(1994.10.30) [文庫本]
―『オズの魔法使い』の作者ライマン・フランク・ボームの描くサンタ・クロースの生涯を描く、サンタさん誕生物語

(新訳版)『サンタクロース少年の冒険』ライマン・フランク・ボーム/著 矢部太郎/イラスト 畔柳和代/訳 新潮文庫 2019/11/28

 

 

4◆2014(平成26)年11月30日号(No.140)-141130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス」

クリスマス・ストーリーをあなたに~『ひいらぎ飾ろう@クリスマス』コニー・ウィリス ―第140号 「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
(「作文工房」版)

「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」収録短編集:
・『マーブル・アーチの風』コニー・ウィリス/著 大森望/編訳 早川書房・プラチナ・ファンタジイ(2008.9.25)
―もう一つのクリスマス・ストーリー「ニュースレター」も収録

 

 

5◆2015(平成27)年11月30日号(No.164)-151130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
『まれびとこぞりて』コニー・ウィリス」

クリスマス・ストーリーをあなたに―「まれびとこぞりて」コニー・ウィリス ―第164号 「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
(「作文工房」版)

「まれびとこぞりて」収録短編集:
・『混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)』コニー・ウィリス/著 大森望/訳 ハヤカワ文庫SF1938 2014.1.25

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6◆2016(平成28)年11月30日号(No.188)-161130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~
ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』」

クリスマス・ストーリーをあなたに~ディケンズ『クリスマス・ブックス』から『鐘の音』 ―第188号 「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
(「作文工房」版)

・『クリスマス・ブックス』ディケンズ/著 ちくま文庫 1991/12
―落語調訳「クリスマス・キャロル」小池滋/訳、「鐘の音」松村昌家/訳

・『クリスマス・ブックス』田辺洋子/訳 渓水社 2012
―前期(1843-48)のクリスマス中編5編を収録。「クリスマス・キャロル」「鐘の音」「炉端のこおろぎ」「人生の戦い」「憑かれた男」

 

 

7◆2017(平成29)年11月30日号(No.212)-171130-
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)
「クリスマス・プレゼント」梶尾真治」

クリスマス・ストーリーをあなたに~(7)「クリスマス・プレゼント」梶尾真治 ―第212号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
(「作文工房」版)

「クリスマス・プレゼント」収録短編集:
・『有機戦士バイオム』梶尾真治/著 ハヤカワ文庫JA 1989.10

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8◆2018(平成30)年11月30日号(No.236)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)
『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング」

クリスマス・ストーリーをあなたに~(8)『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング ―第236号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
(「新生活」版)

・『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング/著 ランドルフ・コールデコット/挿絵 齊藤昇/訳 三元社 2016.12.1
―1920年刊『スケッチ・ブック』第5分冊(クリスマス編)を基に、コールデコットの挿絵をつけて1876年に刊行された。

Mukasinatukasii (画像:『昔なつかしいクリスマス』ワシントン・アーヴィング/著 ランドルフ・コールデコット/挿絵 齊藤昇/訳 三元社 2016.12.1 と同作収録の『スケッチ・ブック(下)』ワシントン・アーヴィング/著 齊藤 昇/訳 岩波文庫 2015/1/17) 

 

9◆2019(令和元)年11月30日号(No.260)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(9)
『その雪と血を』ジョー・ネスボ」

クリスマス・ストーリーをあなたに(9)『その雪と血を』ジョー・ネスボ ―第260号「レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
(「新生活」版)

・『その雪と血を』ジョー・ネスボ/著 鈴木恵/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2018/11/20
―ノルウェーを代表するサスペンス作家が描くパルプ・ノワール。
 第8回翻訳ミステリー大賞および第5回読者賞をダブル受賞した。

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10◆2020(令和2)年11月30日号(No.283)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(10)
「ファンダーハーフェン老人の遺言状」メアリー・E・ペン」

クリスマス・ストーリーをあなたに~(10)「ファンダーハーフェン老人の遺言状」ペン-楽しい読書283号

(「新生活」版)

・メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」Old Vanderhaven's Will(1880)小林晋/訳 (The Argosy誌1880年12月号掲載)
『ミステリマガジン』2020年1月号(738) 2019/11/25 掲載

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(画像:メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」を掲載した『ミステリマガジン』2020年1月号(738) )

 

11◆2021(令和3)年11月30日号(No.307)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-
「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク」

クリスマス・ストーリーをあなたに~(11)-2021-「パーティー族」-楽しい読書307号

(「新生活」版)

・「パーティー族」ドナルド・E・ウェストレイク Party Animal(Playboy 1993-12) 初出『ミステリ・マガジン』2009年6月号
・ドナルド・E・ウェストレイク『<現代短篇の名手たち3> 泥棒が1ダース』木村二郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2009/8/21 収録

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(画像:ドナルド・E・ウェストレイク「パーティー族」収録の『<現代短篇の名手たち3> 泥棒が1ダース』ドナルド・E・ウェストレイク 木村二郎/訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 2009/8/21)

 

12◆2022(令和4)年11月30日号(No.331)
「クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-
「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー」

クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-「飾られなかったクリスマス・ツリー」-楽しい読書331号

(「新生活」版)

・「飾られなかったクリスマス・ツリー」クリストファー・モーリー 浅倉久志/訳
 『ミステリ・マガジン』1997年12月号(no.501)<クリスマス・ストーリイ集>より

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一回毎、一年ごとに【古典編】と【現代編】を交互に紹介してきました。

【古典編】  チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』『鐘の音』
 ワシントン・アーヴィング『昔なつかしいクリスマス』
 ライマン・フランク・ボーム『サンタクロースの冒険』
メアリー・E・ペン「ファンダーハーフェン老人の遺言状」
 クリストファー・モーリー「飾られなかったクリスマス・ツリー」

【現代編】  トルーマン・カポーティ「あるクリスマス」「クリスマスの思い出」
 アガサ・クリスティー「水上バス」
 コニー・ウィリス「ひいらぎ飾ろう@クリスマス」「まれびとこぞりて」
 梶尾真治「クリスマス・プレゼント」、ジョー・ネスボ『その雪と血を』
 ドナルド・E・ウェストレイク「パーティー族」

 

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※本稿は、レフティやすおの他のブログ『レフティやすおの新しい生活を始めよう』に転載しています。
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2023.11.18

『左組通信』復活計画(25)左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている-週刊ヒッキイ第653号

☆彡 Congratulations! ☆彡

11月17日、アメリカ大リーグ、ロサンゼルス・エンゼルスで活躍した、
大谷翔平選手が、2年ぶり2度目となる
アメリカン・リーグ最優秀選手(MVP)に選ばれました。

一昨年同様、投票権を持つ全米野球記者協会の記者30人全員が
1位票を投じる「満票」での選出で、2度目の満票は史上初の快挙!
今季は、打者として44本塁打を放って日本人初の本塁打王に輝き、
打率3割4厘、95打点、20盗塁を記録。
投手でも10勝5敗、防御率3・14、167奪三振をマークし、
史上初の2年連続の「2桁勝利、2桁本塁打」を達成!

輝かしい成績での受賞となりました。
おめでとうございます!

写真等でもご存知のとおり、大谷選手は、投打二刀流で知られますが、
実は、右投げ左打ちの“左右”ニ刀流でもあります。

左利きライフ研究家の私にとっては、
こちらの意味での二刀流――右投げの投手としてと左打ちの打者として
――での大いなる成績を大いに賞賛したいものです。

ケガを治してさらなる二刀流のプレイを拝見したいものです。

私はコロナ禍のここ数年は、
将棋の藤井聡太さんと大谷選手の活躍を見るのが、
数少ない楽しみの一つでした。

今後とも今までにまして大活躍されることを祈っています。

レフティやすお

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『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

(『まぐまぐ!』: https://www.mag2.com/m/0000171874.html)

第653号(No.653) 2023/11/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]
レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」

 

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【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第653号(No.653) 2023/11/18
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]
レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」
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 前回は、1954(昭和29)年の誕生から1972(昭和47)年春の高校卒業まで
 をお送りしました。

第651号(No.651) 2023/10/21
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [24]
レフティやすおの左利き自分史年表(1)1954-1971―高校卒業まで」

2023.10.21
『左組通信』復活計画(24)左利き自分史年表(1)1954-1971―高校卒業まで
-週刊ヒッキイ第651号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/10/post-ed7f5f.html

 今回はそれ以後のいよいよ左利きに目覚める時期を取り扱います。

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ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]

  <レフティやすおの左利き自分史年表>(2)
 
  1972-1979―世界が間違っている
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 ●「1972-1979―世界が間違っている
  【左利きライフ研究家】レフティやすおの左利き自分史年表-2」

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(太文字=西暦(元号)年齢) レフティやすおの出来事 (茶文字=社会の出来事)(青文字=左利き・利き手関連文献
====================================================================

1972(昭和47)18歳

3/高校卒業後、就職先で電気アーク溶接の仕事をする。これは
電線がつながった洗濯バサミの親分のようなものに溶接棒をはさんで
使うもので、裏返せば右手でも左手でも使えるので、左手で使った。
――横に溶接する場合は当然右利きの人と違い、右から左に移動してゆく。
(学校で実習したときはみんなと同じ右手で使った。機械の配置など
そういうふうに使うようにセットされていたから。)
しかしガス溶接機の場合は右手で持って左手で弁を調節する形式に
なっているので、これは右利き用の道具であった
(免許を取るところまで行かず、結局使う機会はなかったが)。

『右きき世界と左きき人間』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会(発売・産学社)
(原著 Left-handed Man in a Right-handed World, 1970)
――左利きのイギリス人左利き研究家の著者が代表を務める
左利きクラブのこと、ロンドンに開店した左利き専門店のことなど。
1978年刊『左と右の心理学―からだの左右と心理』M・C・コーバリス、I・L・ビール(白井、鹿取、河内訳 紀伊国屋書店)
の中で、「第八章 対称性と非対称性の進化」<右利き世界と左利きの問題>p.178に、「バーンスリ(1970)」として取り上げられている。

6/(左利きSF小説)『鏡の国のアリス』広瀬正 河出書房新社 ――〈左利き友の会〉主宰者で精神科医の箱崎総一をモデルにした人物と
会も登場する、左右逆転の世界に転移した左利きのサキソフォン奏者の
青年の物語。
初出:1972年6月(1972年3月9日死去,3ヶ月後)河出書房新社書き下ろし
『鏡の国のアリス』広瀬正 集英社文庫 1982/5/1

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第639号(No.639) 2023/4/1「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ
―その25― 楽器における左利きの世界(11)
広瀬正『鏡の国のアリス』より」
2023.4.1
左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界
(11)広瀬正『鏡の国のアリス』より-週刊ヒッキイ第639号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2023/04/post-bd12d8.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/da5e6246a452d429fefd7456233ff4a5

 

1973(昭和48)19歳

4/25『左ききの本』マイケル・バーズリー 西山浅次郎訳 TBS出版会(発売・産学社) ――『右きき世界と左きき人間』に続く、左利き研究・応援本第二弾。
実は原書はこちらが先。

7/5(音楽)麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」(作詞千家和也 
作編曲筒美京平)のレコードが発売され、ヒットする。
――左利きがちょっとしたブームになる。新聞やテレビが、
左利き友の会の存在とその活動なども含めて左利きの話題を取り上げたり、
百貨店などに左利き用品のコーナーが設けられたりした。

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(野球)王貞治、日本で二人目、自身初の三冠王になる
(翌年も二年連続で)。
――「右の長嶋、左の王」は打順に合わせてイニシャルをとって「ON砲」
と呼ばれ、戦後の日本プロ野球を代表する選手の一人。左打ち左投げの
王選手の活躍に、左利きの子供たちは大いに勇気づけられた。

 

1975(昭和50)21歳

1/箱崎総一による左利き友の会『左利きニュース』42号を
もって活動停止。

(アメリカ)左利きの会“Lefthanders International”
カンザス州トピーカの左利きのMidge(ミッジ?)とディーン・キャンベルは
「レフトハンダーズ・インターナショナル」を設立し、
「Lefty(レフティ)」と呼ばれる隔月の雑誌を出版しました。
...その雑誌は1980年代後半まで発行され続けました。
(イギリスの著名な左手・左利き用品の通販“Anything Left-Handed”
 開業50周年記念サイトより、筆者訳)

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※注:《“Lefthanders International”》と
《「Lefty(レフティ)」と呼ばれる隔月の雑誌》
1991(平成3)年3月発行『モノ・マガジン』1991年4月2日号 No.188
「特集/左を制するものは時代を制す/左利きの商品学」
(ワールド・フォトプレス)で紹介されている。
私は、1993(平成5)年9月に、問い合わせの手紙を出し、
『Lefthanders Magazine』の既刊号をもらいました。
リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー『左利きで行こう! 
目からウロコの左利きツアー』丸橋良雄、尾島真奈美訳 北星堂書店(2002.6)
(原著 THE LEFT-HANDER'S GUIDE TO LIFE, 1992)

「第3章 左利きの歴史ハイライト」の「1976年」の項で、
《「レフトハンダー」という雑誌(もともとは「レフティ」と
呼ばれていた)》と紹介。
私もその後、11・12月号から定期購読を始めました。
雑誌内の通信販売で左利き用品を購入(電卓、フォルダー、他)。
少なくとも「90年代半ばすぎ」までは続いていた、と思われます。
上記『左利きで行こう!』の「第11章 左利き関連情報」に、
〈左利き関連団体〉及び〈左利き用品の小売店と通信販売会社〉として、
この「Lefthanders International, inc」が紹介されています。
原著の段階では、1992年刊なので活動していましたが、
邦訳版の出た2002年当時は、どうだったのでしょうか。
1980(昭和55)年12月に出版された、ジェームス・ブリス、ジョセフ・モレラ
『左利きの本――右利き社会への挑戦状』
(原著 The Left-handaers' Handbook) 草壁焔太訳(講談社)

「第I部 外国編/第四章/(3)入会できる左利きの組織」にも紹介。
《ジャンシー・キャンベル夫人が指揮をとっている。
 最初の左利き大会が一九七九年八月十日から十二日まで行われた
 (“左利きの日”は八月十三日である)。》
原著の発行年が不明ですので、資料としては不確かな部分もありますが。

(参照)
第529号(No.529) 2018/11/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
左利き者の証言から~ (特別編)ALH50年史概略(後編・第二回)」

 

1976(昭和51)22歳

(野球)張本勲巨人入り、ONに変わるOH砲の誕生。 ――安打製造機と言われた左打ちの張本選手と、左打ちのホームラン王・
王選手が並ぶ〈左利きの時代〉を現す代名詞のようにいわれる。
産経新聞(大阪版夕刊10月27日)の記事
「プレミアム+(plus)1 名球会リレーコラム 3000本安打 張本勲氏」
に、「世界のホームラン王」王貞治選手と並んで
「安打製造機」と呼ばれた左打ちの名選手だった、張本勲さん。
幼少時に右手を火傷して、右利きから左利きになった話、
野球を始めた話が語られています。
《私は4歳の12月、寒いときに右手にやけどを負った。
それまで右利きだった。半年ぐらい右手を使えず、
左手で生活していたものだから、字を書くことなど以外は
全部左利きになった。10歳のとき、待ちのお兄さんたちに
「1人足りないから来て」と言われ、初めて本格的な野球をやった。
右手が悪くて、その時は左打ち。覚えていないが、
いきなり二塁打を打ってびっくりされたらしい。
守るときに右にグラブをはめ、左手で投げたら遠くに投げられた。
右手投げるときはわしづかみ。薬指と小指がなくて、
残りの3本は中にひん曲がって球を握れず、遠くへ投げられない。
左は普通の指だから、これはいいと左投げになった。》

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(画像は「編集後記」で)

8/13(アメリカ)「LEFTHANDERS INTERNATIONAL(LHI)」の
チェアマン、ディーン・キャンベルが「International Lefthandaers
Day」(国際左利きの日)を制定
――左利き用品販売店のオープン二年目を記念して、「LEFTHANDERS
INTERNATIONAL(LHI)」という左利きの会とともに、左利き用品の普及と
左利き生活の向上と左利きの啓蒙活動を目的に始めた。
私の手元にある、雑誌「レフトハンダーズ・マガジン」の各年の
「国際左利きの日」INTERNATIONAL LEFTHANDERS DAY(LHD)の記事には、
記念日を設けたいきさつや催された行事等が記載されています。
リー・W・ラトリッジ、リチャード・ダンリー『左利きで行こう!
 目からウロコの左利きツアー』の「1976年」の項の後には、
 《1976年8月13日を最初の「国際左利きデー」としました。
  キャンベルがその日を13日にしたのは、左利きにまつわる
  すべての迷信を嘲笑するためだったと言っています。》と記載。
(参照)
第529号(No.529) 2018/11/3
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その23―
左利き者の証言から~ (特別編)ALH50年史概略(後編・第二回)」

1976(昭和51)-1977(昭和52)22-23歳

(野球漫画)水島新司『野球狂の詩(うた)』<水原勇気編> 1976年、日本プロ野球初の女性左腕投手となる水原勇気(東京メッツ)が
魔球ドリームボールで活躍。(『野球狂の詩』講談社『少年マガジン』
1972(昭和47)-1977(昭和52)連載、のちにその他の作品でも登場した。)
(以上、日本語版ウィキペディアによる)
――1977年の木之内みどり主演の実写版映画の記憶はある。
『新装版 野球狂の詩 水原勇気編(1)』水島 新司 講談社漫画文庫 2009/2/6

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『野球狂の詩 HDリマスター版 [DVD]』木之内みどり, 高岡健二/出演
加藤彰/監督

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1977(昭和52)23歳

(TV CM)日清食品「どん兵衛」 テレビCM始まる  「きつねうどんから おあげとったら何になると思う」…
 「ただの素うどん」出演:山城新吾、川谷拓三
――左利きコンビが左手にお箸を持って「どん兵衛」を食べるCMは
とても好ましく、左手箸の左利きの人に大いに勇気を与えた。
日清食品「どん兵衛きつね」――

「どん兵衛」はヒットした。最大の要因はテレビCMだった。山城新伍と川谷拓三のひょうきんコンビのCMが人気を呼び、売り上げが急上昇したのである。小品を擬人化したどん兵衛というネーミングがあったからこそ、あのかけ合い漫才のCM世界が生まれたのだと思う。山城新伍の突っ込みと川谷拓三のぼけ具合が絶妙だった。
 / 発売二年目の一九七七(昭和五十二)年に売り上げ数量が一億食を超えた。きつねうどんの発祥の地は大阪である。根強いうどん人気もあってか、その年の二月の調査で、西日本ではカップヌードルを抜き第一位になってしまった。もちろんしばらくして巻き返しにあったが、一瞬でもカップヌードルの牙城を崩したのはすごいことだった。...
》p.78

――『カップヌードルをぶっつぶせ!――創業者を激怒させた二代目社長のマーケティング流儀』安藤宏基(あんどう・こうき) 中央公論新社 2009.10.7
「第2章 創業者とうまく付き合う方法/パッケージ戦力第二弾。ドンブリ型容器の「どん兵衛きつね」がヒット。「どんくさくてもいい」。社内の猛反対を押し切って商品名に。」より

8/30(野球小説)『赤毛のサウスポー』ロスワイラー 稲葉明雄訳 集英社 ――アメリカ・メジャーリーグ初の女性左腕投手の奮闘物語。

9/5(野球)王貞治、国民栄誉賞受賞(第1号) ――ホームラン世界記録通算756号を達成。

 

12/15(童話/ファンタジー)ライマン・フランク・ボーム
『オズのつぎはぎ娘』佐藤 高子/訳 新井 苑子/イラスト ハヤカワ文庫
NV158(原書The Patchwork Girl, 1913)
――左利きで13日の金曜日生まれのマンチキンの少年<不運なオジョ>
《「ぼく、左ききなんだ」/「偉大なる人物の多くは左ききだ」皇帝が、
 心配ないというようにいいました。「左ききは、ふつう、両方が使える。
 右ききはだいたいにおいて右しか使えない」》p.309
《ブリキの木樵りはいいました。「いまきみがあげた理由はどれも
 くだらないことばかりだよ。(略)」》p.310
『新版 自然界における左と右』(上)マーティン・ガードナー 坪井 忠二,
藤井 昭彦, 小島 弘/訳「9章 人のからだ」に紹介されていた
(ちくま学芸文庫 2021/1/9 p.161)。
このオズのシリーズは、高校生の時に創刊されたハヤカワ文庫で、
第一作『オズの魔法使い』から刊行されこの作品が第7作。
私は6作まで購読していたのですが、もういいやという気になって、
この第7作は未読でした。『新版・自然界における左と右』の記述を
読んでから本を探し読みました。

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1978(昭和53)24歳

1/1カール・セイガン『エデンの恐竜 知能の源流をたずねて』長野 敬/訳 秀潤社 ――『新版 自然界における左と右』(上)マーティン・ガードナー
坪井 忠二, 藤井 昭彦, 小島 弘/訳「9章 人のからだ」で紹介
(ちくま学芸文庫 2021/1/9 p.162)。
《過去、世界各地において、左利きに対する偏見がいかに実害を
 もたらしてきたかという例については、カール・セイガン『エデンの
 恐竜』(The Dragons of Eden, Random House,1977)の第七章と(略)》

3/25(音楽)ピンクレディー「サウスポー」(作詞阿久悠 作曲都倉俊一)
のレコードが発売されヒットする。
――左利きのケイちゃんよりミーちゃんが好きだった…。

3/1『左と右の心理学―からだの左右と心理』M・C・コーバリス、I・L・ビール 白井、鹿取、河内訳 紀伊国屋書店 (The Psychology of Left and Right, 1976)
――左右を区別すること、左右対称性について、右利きと左利きの問題を
含め、物理的・身体的・文化的・心理的に考察した著作。

1978(1980)「第二話 偽装の殺人現場」「第三話 消えた配偶者」山村美紗(『京都殺人地図』) ――京都府警捜査一課の検視官の警視・江夏冬子の事件簿。
 (第二話)被害者の傷跡から左利きの犯人と断定。
容疑者の中から左利き捜し。
 (第三話)同じく左利きの犯人捜し。左利きを示す証拠。
初出:「第二話 偽装の殺人現場」『問題小説』昭和53年1月号
 「第三話 消えた配偶者」『問題小説』昭和53年9月号
初出単行本:『京都殺人地図―女検視官江夏冬子』
『京都殺人地図』山村美紗 徳間書店 Tokuma novels 昭和55(1980)年10月

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第368号(No.368) 2013/6/15「名作の中の左利き ~推理小説編17~
検視官の見る左利きの特徴・山村美紗」
2013.6.18
名作~推理編17~山村美紗『京都殺人地図』~
左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii368号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2013/06/17-hikkii368-1d.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/4046bc5e70c8002d237372c8fffdf2e1

1978(左利きミステリ[番外編]<左手>)「ある東京の扉」連城三紀彦 ――「右手のための協奏曲」というアリバイ・トリック小説。
ラヴェル「左手のための協奏曲」をモチーフに。
 初出:1978(昭和53)年3月号
(収録短編集)『変調二人羽織』連城 三紀彦/著 光文社文庫 2010/1/13

 

1979(昭和54)25歳

12/8箱崎総一『左利きの秘密』立風書房マンボウブックス を
図書館で見つけ、読む。
――大いに共感するが、左利き友の会がすでに解散しているのが
残念だった。
なかでも私の心に響いたのは、左利きの自分が間違っているのではなく、
左利きの存在を受け入れないこの世界、社会の方が間違っているのだ、
という考えでした。

6/1『左利きの秘密』箱崎総一 立風書房 マンボウブックス 《右利きと左利きとが真に対等である社会――
 これは、単に左利きに対する偏見がないということだけでは、
 成り立たない。生活を営んでいく上で、
 両者の間に差別やハンデがまったくないということも、
 大きな条件である。いいかえれば、左利きの人たちが日常生活の中で
 なんら不便をを感じない社会、これこそが、
 ほんとうに平等な社会なのだ。》p.56
《いま、私は声高らかにこう訴えたい。左利きの人たちよ、
 右利きの人たちに対して何ら劣等感を抱く必要はない。
 左利きというのはひとつのりっぱな個性なのだ。その個性を磨いて
 右利き偏重社会、右きき偏重文化に挑戦しようではないか。》p.95
《その差別はいわれなきものであり、その迫害は理不尽なものなのだ。
 また冷遇・無視はじつに不当なものなのである。(略)
 右利きが右利きとして生まれてきたのと同じように、左利きもまた
 左利きとして生まれてきたのである。》p.96

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(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第564号(No.564) 2020/2/1
「2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年
(その1)初めの30年」
『レフティやすおのお茶でっせ』2020.2.1
2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年(1)初めの30年-週刊ヒッキイ第564号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/02/post-a8b3b5.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/00be8ff2471350b61738e5f8e0efcae3
--
 ●世界が間違っている

「左利きの自分が間違っている」のではなく、

左利きを忌避し、右利き仕様を標準とする、
右利き偏重の「右利き社会」という
「この世界のほうが間違っているのだ」ということを教えられました。

左利きで悩む人の駆け込み寺的な存在だった
「左利き友の会」は解散したけれど、
その活動のおかげもあり、少しは社会も変化し、
左利きの人たちも勇気と自信を持てるようになれた、と思います。

たとえ左利きに生まれようと、右利きの人と同じように、
胸を張って生きてゆけばいいのだ、と。
--

(参照)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
第601号(No.601) 2021/8/21「創刊600号突破記念―
  私が影響を受けた左利き研究家・活動家(1)第一期・箱崎総一」
『レフティやすおのお茶でっせ』2021.8.21
私が影響を受けた左利き研究家・活動家(1)第一期・箱崎総一
(創刊600号突破記念)-週刊ヒッキイ第601号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/08/post-f1f34b.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/d8a221789ac39a8af77d97a96f2d9873
1954-1989(0-35歳)第一期「左利きライフ研究家以前」
◆日本の左利き解放運動の父「左利き友の会」主宰―精神科医・箱崎総一
--
この時期は、私が左利きであることを意識させられた時期であり、
かつ左利きであることを容認され、
自覚するようになった時期でもあります。

いいことも悪いこともあった時代です。

そして、左利きであることに
少しずつ自信を持てるようになっていく過程の時期でもあります。
--

4/25(文庫化再刊)『赤毛のサウスポー』ロスワイラー 稲葉明雄訳 集英社 集英社文庫 c1976

12/20(音楽)アリス「秋止符」(作詞谷村新司 作曲堀内孝雄)発売~♪左ききのあなたの手紙~。

-- 1972-1979 ――世界が間違っている --

 

*参照:◆ 1970年代は日本における左利きの転換点 ◆

第582号(No.582) 2020/11/7
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(2)
 「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(1)」
2020.11.7
左利きの人生を考える(2)「わたしの彼は左きき」の時代:
1970年代(1)-週刊ヒッキイ第582号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/11/post-2a8f44.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/0ca665ee810b3e7d76930fa440e09892

第584号(No.584) 2020/12/5
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(3)
 「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(2)」
2020.12.5
左利きの人生を考える(3)「わたしの彼は左きき」の時代:
1970年代(2)-週刊ヒッキイ第584号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2020/12/post-353947.html

第588号(No.588) 2021/2/6
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その24―
 左利き本のために――左利きの人生を考える(4)
 「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(3)」
 ――1970年代は日本における左利き観の転換期だった
2021.2.6
1970年代は左利き観の転換期「わたしの彼は左きき」の時代
-週刊ヒッキイ第588号
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2021/02/post-be0a5a.html
https://blog.goo.ne.jp/lefty-yasuo/e/25ecbd3c5e0310ed2de154eec14acfef

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [25]レフティやすおの左利き自分史年表(2)1972-1979―世界が間違っている」と題して、今回も全紹介です。

私の趣味の研究範囲として<左利きミステリ>も含めて、参照事項として弊誌のバックナンバーの記事などもはさみ、ホームページ時代の年表を補充しています。
思いの他、また長いメルマガになってしまいました。

記憶をたどり記録をあさり、できるだけ正確に事実を書き残しておきたいと考えています。

これが役に立つことがあるのかどうか現時点ではわかりませんが、もし将来において左利き文化史的なものを研究する人が出てきたとき、何かの足しになれば、という思いです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』

 

『レフティやすおのお茶でっせ』
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2023.11.15

私の読書論176-読書週間に関する新聞記事から思ったこと-楽しい読書354号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年11月15日号(No.354)
「私の読書論176-読書週間に関する新聞記事から思ったこと」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年11月15日号(No.354)
「私の読書論176-読書週間に関する新聞記事から思ったこと」
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 先日、新聞に<読書週間>に関する記事が出ていました。
 11月3日の「文化の日」をはさんで、
 10月27日から2週間(9日まで)だそうです。

 産経新聞で見た記事をもとに、思うところを書いてみます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 - <読書週間>は読書習慣を付ける機会に -

  ~ より良い人生のために ~

  「本を読むから偉い」のでなく「本を読んだから偉くなれた」!? 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●月0冊が半数

2023年11月5日の産経新聞で見た記事によりますと、

活字離れ、月0冊が半数…本探しの一助に「選書サービス」
https://www.sankei.com/article/20231105-SFM3YMKRGJJZBD4YLJFOCSVJWY/

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(画像:2023年11月5日産経新聞記事 活字離れ、月0冊が半数…本探しの一助に「選書サービス」より あなたは一ヶ月に何冊程度本を読みますか グラフ)

 半数の人が月に一冊も読まないというのです。

《9日までの読書週間も残りわずか。
 「秋といえば…」の代表格は「読書」だったが、
 活字離れがさけばれて久しく、あるアンケートでは、
 1カ月間に全く本を読まないとする回答が半数近くを占めた。
 原因の一つは「読みたい本が分からない」こと。
 そんな状況を変え、活字離れに歯止めをかけようと、
 編集者や書店員といった本の「プロ」がお勧めを紹介するなどの
 「選書サービス」がインターネット上で展開されている。》

というのですけれど……。

記事冒頭にもありましたように、
《「秋といえば…」の代表格は「読書」だった》のですが、
昨今では色々な娯楽や時間を潰す遊びも多く、情報源としても、
パソコンやスマホを使ったネットのSNSや動画サービスなども増え、
「本」に頼らなくても良い状況になっています。

そうはいっても、まとまった内容の知識を入手しようと思ったら、
本による方が安定した結果をえられるもの、と考えますけれど、ね。

 

 ●系統だった情報を入手する方法としては本が上では?

迅速かつ断片的な情報で良いのなら、ネット検索等で得られるものが、
手っ取り早いと思います。

ただ、じっくりと取り組むつもりなら、本による情報の方が、
自分の程度に合わせることもできますし、都合がいいはずです。

自分に合うレベルの情報をネットで探す方が、かえって時間がかかり、
結果的に内容理解までにかかる総時間数では
かなり不利になるのではないでしょうか。

系統だった知識を入手する方法としては、まとまった本による方が
結果的に速くかつ的確なものを得られるでしょう。

 

 ●「読書週間」と読書習慣

「読書週間」は、

《もともとは読書の力で平和な国家をつくろうと、
 先の大戦後まもなく始まった運動だった。
 文化の日を中心とした2週間は読書週間として定着し、
 読書の習慣をつける一助となってきた。
 しかし、現在、人々の読書に対する姿勢は様変わりしているようだ。》

といいます。

戦争に負けた?――戦争に至った?のは、文化の力の差だ、
という認識だったと記憶しています。

読書によって、物事を考える力を養おうというもの。

読書は習慣化することで身につけられるという考えで、
この「週間」をそのきっかけにしてほしい、ということだったのです。

 

 ●「本を読むから偉い」のでなく「本を読んだから偉くなれた」

読書について一言言いますと、勘違いしてはいけないこととして、
「本を読むから偉い」のでない、ということ。

ショウペンハウエル(昨今ではショーペンハウアーと表記するようです)
の『読書について』という名著があります。

岩波文庫他いくつかの訳書が出ています。
(私の手持ちの岩波文庫は1960年第一刷、1976年第18刷)

 

・『読書について 他二篇』ショウペンハウエル 斎藤忍随/訳 岩波文庫
改版 1983/7/1

・『読書について』アルトゥール・ショーペンハウアー 鈴木 芳子/訳
光文社古典新訳文庫 2013/5/14

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そこにある有名な言葉――

 《読書は、他人にものを考えてもらうことである。》p.91
   ショウペンハウエル「読書について」
   (『読書について 他二篇』斎藤忍随/訳 岩波文庫)

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同書収録の「思索」には、

 《読書は自分の頭ではなく、他人の頭で考えることである。》p.9

ともあります。

要するに、本を読むだけではダメで、
その上で自分なりに思索することで、
初めて自分の思想というものが生まれてくる。

それでこそ、読書の意義があるということなのです。

すなわち「本を読むから偉い」のでなく
「本を読んだから偉くなれた」というのが正しい理屈です。

これは一般人にも当てはまることだ、といいます。

 《作品は著者の精神のエキスである。(略)
  普通の人間の書いたものでも、結構読む価値があり、
  おもしろくて為になるという場合もある。
  まさしくそれが彼のエキスであり、
  彼の全思索、全研究の結果実ったものであるからだ。》p.99
   「読書について」

とも書いています。

私のような普通の人間の場合も同様であることを願っています。
私なりに考えた上で書いている文章ですので、
それなりに読む価値があるのでは、と。

そういう思索につながるものが本来の読書という行為です。

 

 ●「読む時間が確保できない」

さて、先の新聞記事の話題に戻って――

月に一冊も読まない、というのは、
やっぱり本好き、読書好きの私としては寂しいものがあります。

私自身、仕事で忙しかった時期でも月に一冊は読んでいたものでした。
本を読むことが私の心の安らぎでもあり、
“前進”感(物事を前に進めているという実感)
を抱かせるものでもありました。

読まない理由の最も多かったのは「読む時間が確保できない」、
3番目に多かったのが「読みたい本がない」だそうです。

時間に関しては、これは何事においても言われることですが、
要するに気持ちの問題ですね。
要はやる気があるかないか、です。
切実な理由があれば人はやるものなのです。
そういう切実な理由がない、ということでしょう。

もう一つは、先ほどもいった習慣化しているかどうか。
朝起きて顔を洗うとか、夜寝る前に歯を磨くとかと同じで、
一日に一度は本を開かないと落ち着かない、といったものです。

昨今、小学校では朝読という時間を作って、
子供たちに読書の習慣を付けようとしてきました。
小学生ではそれが一応の成果を出しているようです。
しかし、それが上の学年になるにつれて、失われてしまっている。

その辺の事情が、他の活動や遊びの時間の増加というところに、
原因があるというのでしょう。

しかし、実際には必要性の問題があるのではないか、と考えられます。
必要性を感じさせないので辞めてしまうということ。

勉強したい、研究したいという欲求があれば、
本を読むという行動につながると思うのです。

そういう目標を持たせるものがあるかどうかではないでしょうか。

○○を究める、というものですね。

イチローさんや大谷さんも、
若い頃に目指すべきものを見つけるということが大事だ、
とおっしゃっていますよね。

そういう目標のために本を読んで勉強する、という形ですね。
これなら、時間がない、などという気持ちにはなりませんよね。

 

 ●「読みたい本がない」について

次に「読みたい本がない」についていいますと、
先ほども書きましたように、自分の求めるものがあれば、
こういう現象は起きません。
よく言われるように、一冊の本から芋づる式に
次はこれその後にあれというふうに、
読むべき本、読みたい本が出て来るものです。

そういう目標を持たない人には、自分の好みにあわせて、
自分なりにガイド本を当たってみる、という方法があります。

自分の好みすら分からない、という人には、
最近、話題が出ている選書サービスというものがあります。

「フライヤー」というのは、ビジネス本、自己啓発本などを
その道の専門家(経営者や出版業界関係者、大学教授など)が紹介する
というもの。

あるいは、書店員やさまざまな経歴を持つ選書のプロが選ぶというもの。

というふうに色々な取り組みがあるそうです。

ただ思うのですが、基本的に本を読もうという意思がなければ、
このような選書サービスも心に引っかからないでしょう。

要は、いかに興味を湧かせるか、ということでしょうか。

いくら種をまいても、条件が整わなければ、芽は出ないわけです。
しかし条件だけ整えても、肝心の種がなければ……、というところです。

 

 ●書店の新形態――無人の店舗、コンビニ併設

最近テレビの情報番組でも、取り上げていましたが、
近年、急速に減っている書店について、新たな形態の書店が現れました。

この新聞記事にも出ていました。

無人の店舗だったり、コンビニに併設されているものだったり。

人件費が一番のネックという意味では無人店舗は、
これからの商業施設での必須条件になるかもしれません。
ただ、物を買うという行為での楽しみの一つに、
店員さんとのやりとりというものもあると思います。
そういう意味ではちょっと寂しいですよね。

 

コンビニとの併設なども、昔からあります。
他の物品販売業と協業するというパターンですね。

それは前回も書いたかと思いますが、悪くはないのですが、
あまり大きな変化は期待できません。

絶対的な救世主にはなり得ない気がしています。

 

 ●本屋さんの生き残りに期待

とにかく、本屋さんがなくなるというのが一番の悲劇だと思っています。
何らかの形で残って欲しい、という強い願望があります。

ふらりと入った本屋さんであれこれ見ることで、
「あっ、こんな本が出てる!」という偶然の出会いがあります。

それが本好きにとっての一番の至福の時間かもしれません。

私は、本屋さんにいるときが一番楽しい時です。
図書館も楽しみですが、本屋さんの方が、より新しい顔を見られる、
という点で楽しみが大です。

今の私があるのは、ひとえに本屋さんあればこそ、と思っています。
私の人生の一番の友、それが本で、その友との出会いの場が本屋さん、
なんです。

最近読んだ本に著者が「謝辞」のなかで
書店員さんにお礼を述べる文章がありました。

 《書店員の方々にお礼を申しあげたい。
  みなさんは読者の手に本を届けるというすばらしい仕事に従事され、
  この一年、信じられないほどの困難に直面しながらもその仕事を
  つづけてくださった。本と読書に対するみなさんの尽きることのない
  情熱と献身、そして<自由研究には向かない殺人シリーズ>の成功に
  おいて計り知れないほど大きな役割を果たしてくださったことに、
  心の底から感謝申しあげる。》

   ホリー・ジャクソン『卒業生には向かない真実』服部京子/訳
    創元推理文庫 2023/7/18

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コロナ禍の感染拡大期には、
書店も一部では休業するところもありました。

地方の書店のみならず、都会の書店でも店舗の賃貸料の値上げ等で、
店をたたむところが増えています。

私は、書店・本屋さんは、地域の文化の担い手だと考えています。

がんばれ本屋さん!

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本誌では、「私の読書論176-読書週間に関する新聞記事から思ったこと」と題して、今回も全文転載紹介です。

今回は「読書週間」という読書の習慣を付けましょうという、年間行事に関連した新聞記事から感じること、思ったことを書いています。

私にとっては、読書=人生みたいなものがあり、月に一冊も本を読まないという人がいることが考えられない、というのが本当のところです。

そうはいいましても、私も子供の頃は必ずしもそういう人間ではありませんでした。
私が本を読む日々を過ごすようになったのは、中学3年の三学期が始まるお正月以降のことでした。
それまでは時に娯楽として本を読む時期があるという程度で、毎週漫画雑誌を読むことはあっても、毎日のように書籍を読むということはありませんでした。

そういう人間からみて、どうすれば本を読む習慣を身につけられるか、という観点から少し書いています。

どうでしたでしょうか。

 ・・・

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2023.11.04

楽器における左利きの世界(16)鍵盤ハーモニカの世界(2)-週刊ヒッキイ第652号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』【別冊 編集後記】

第652号(No.652) 2023/11/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(16)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」

 

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第652号(No.652) 2023/11/4
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(16)
 左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」
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 9月以来の「楽器における左利きの世界」です。

 9月は「左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界」でした。
 左用の<鍵盤ハーモニカからピアノへ>の展開を考えて、
 鍵盤ハーモニカについて勉強してみました。
 いくつか思うところが見つかりました。
 それをどう具体的なものに変えてゆくか、という点がまだ不明です。

 まずは、過去のメルマガで左利きと鍵盤ハーモニカ始め楽器を
 どう扱ってきたのか、その辺を振り返ってみたいと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 ◆ <めざせ!実現!!左用ピアノ!!!>プロジェクト ◆
 {左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界}(2)

- 人のためにあるのが「作法」 -
  過去の弊誌の音楽・楽器関連記事から
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 ●弊誌の音楽・楽器関連号

まずは最近のものから、2018年には
 <【左手・左利き用品を考える】右用と左用の違い(19) 楽器編>
があります。

--
第512号(No.512) 2018/2/17「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(19) 楽器編(1)バイオリン」
バイオリン―右手用と左手用との違い
 ●楽器とカメラ
 ●利き手で行うべき心の作用
 ●楽器には左用がない
 ●左利き用バイオリン
 ●純丘曜彰さんの左利きバイオリンに関する意見
 ●「RISAバイオリン教室」の瀧澤理紗さんの意見
 ●左利き用のバイオリンが普及しない理由
 ●利き手を無視して教えてきた楽器
 ●プロ野球の王選手も鳥谷選手も転向派
 ●自分の持って生まれた特質を活かす
 ●<楽器は心につながる利き手で演奏する>

第514号(No.514) 2018/3/17「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(20) 楽器編(2)カスタネット」
最初に出会う楽器―カスタネット
 ●最初に出会う楽器
 ●「正しい」? 楽器の叩き方
 ●既定の枠にこだわらないクリエイティブなやり方
 ●いつも変らぬ結論
--
私の持論――
「利き手は心につながっている」
のですから、

楽器の演奏も心の表現であるかぎり、
利き手主役で行うべきことです。

おんがく(音楽)は、「音学」ではなく、
「音を楽しむ」と書きます。

楽器の演奏も、辛いだけの“訓練”や“勉強”ではなく、
“楽しめるもの”であるべきでしょう。

そのためにも、楽器メーカーさんは
利き手に対応した楽器を用意して欲しいものです。
--

第516号(No.516) 2018/4/21「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(21) 楽器編(3)リコーダー」
学校で出会う楽器―リコーダー
 ●鍵盤ハーモニカ
 ●リコーダーは左右平等?
 ●リコーダーの正しい持ち方
 ●左用リコーダー
 ●片手リコーダー
 ●両用リコーダーの試み

第518号(No.518) 2018/5/19「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(22) 楽器編(4)鍵盤ハーモニカ・前編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・前編
 ●なぜ鍵盤ハーモニカを習うのか
 ●ピアノ演奏と左利きの苦悩
--
ガボちゃんのブログの3月30日の記事
「楽器の利き側の話を読むと思う事」
https://plaza.rakuten.co.jp/gabochan2007/diary/201803300000/

に紹介されていた
《学校では教えてくれない、音楽のことを書いてい》る
ブログ『ブー先生の音楽教室』の3月28日の記事

「左利きとピアノ演奏」
http://boosensei.hatenablog.com/entry/left-handed-play-piano-lesson

 《ピアノの楽譜は大体が2段で出来ていて、
  大抵の場合は右手がメインのメロディー、
  左手はサブ的存在の伴奏を担当しています。》

 《たとえ上級になっても、左手のための曲や、
  左手で弾く指示が無い場合、
  楽譜は「上段が右手」「下段が左手」が普通なんですよね。》

上段が右手担当で、下段が左手担当らしいのですが、

 《右利きの自分からしたら考えたことも無かったのですが、
  左利きの人は「メインが左・サブが右」
  が当たり前の生活をしているのに、
  ピアノを弾くときだけ逆にしろ
  っていうのは難しい話なわけで…。

  ピアノの「右手メイン」に違和感を感じてしまうのも
  当然でしょう。》
--
 ●縦書き右開き本と横書き左開き本の違い
 ●ピアノも左利き仕様と共存へ
 ●左用ピアノと心の表現としての音楽
 ●ピアノと鍵盤ハーモニカとの左用の可能性

第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」
学校で出会う楽器―鍵盤ハーモニカ・後編
 ●鍵盤ハーモニカと左利き
--
事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」
http://www.pianonymous.com/entry/2014/08/19/%E5%B7%A6%E5%88%A9%E3%81%8D%E7%94%A8%E3%81%AE%E9%8D%B5%E7%9B%A4%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%AB%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6
■対策1:ホースを延長して、反対側まで伸ばす。
■対策2:右手を鍛えるための試練とおもって頑張る
■対策3:もういっそのこと私と同じスタイルで弾こうよ!
 《…以上、あまり解決に導けなくて申し訳ない。》
 《※追記 2014/09/04
  左利き用の鍵盤ハーモニカについて
  スズキ楽器製作所へ直接問い合わせを行った。
  結論からいうと、
  現状どのメーカーも製造は一切していないようだ。
  というのも左利き用のパーツを製造するには
  倍以上のコストがかかり、
  作りたくてもどこも作れない状況とのこと。
  うちのサイトにきてくれた左利きの皆様、
  有力な情報が提供できずすみません。》
 ●相談サイトでは……
 ●「ちょっと」だからこそ簡単!?
--
身体に服を合わせるのが、普通の考え方です。
服に身体を合わせるなんて、あり得ない! のでは?
手や腕は、右と左の二つしかありません。
単純に考えれば、
右用があれば、左用があっていいのではないでしょうか。
作っても二つだけです。
利用者全体の総数が違う、というかもしれませんが、
だからといって、多数決で決める必要はありません。
洋服のサイズを多数決で決められても困るでしょう。
...
結局は、心がけの問題ではないでしょうか。

発想の問題。

一人でも多くの人に音楽を楽しんでもらいたい、
と考えるかどうか。

心の優しさ、思いやりの問題とも言えそうです。
--
 ●左右平等の思想で……
--
右利きが多数派だから「右へならえ」せよ、
ではなくて、
左右平等で考えてほしいものです。

人は、みんなやっぱり人なのです。
心もあれば、それぞれに痛みも感じるのです。

「自分だけがしあわせであれば良い」
なんて、誰も思いませんよね。

「みんながしあわせになれる」
そういう社会にかえてゆきましょう

まずは楽器から、始めてみませんか?
--

第522号(No.522) 2018/7/21「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(24) 楽器編(6) 最終回まとめ編」
―最終回まとめ編
 ●心と身体の能力
 ●自分がされてうれしいことを他人にする
 ●楽器も学用品
 ●演奏方法と利き手
 ●右尊左卑を改めよう
 ●やる気があるかどうか、やる気になるかどうか
 ●上に立つ人の考え方と疑問に思う想像力
 ●左用の楽器の有無
--

「右用と左用の違い 楽器編」は、以上です。

第520号(No.520) 2018/6/16「【左手・左利き用品を考える】
右用と左用の違い(23) 楽器編(5)鍵盤ハーモニカ・後編」

で、《事業機関「鍵盤ハーモニカ研究所」の運営する
鍵盤ハーモニカ情報サイト
「鍵盤ハーモニカ奏者ピアノニマス公式ブログ」の記事
「左利き用の鍵盤ハーモニカについて」》
を紹介しています。

これは、前回の「鍵盤ハーモニカの世界(1)」で紹介しました、
『鍵盤ハーモニカの本』の著者・南川朱生(ピアノニマス)さんの
記事でした。
鍵盤ハーモニカの専門家なので、それについて検索すれば、
この出会いは偶然ではなく当然のこと、だったようです。

こんな風に色々と考えてきたわけですが、
基本的に私の姿勢は変わっていないと思います。

「左利きには左利きの楽器が必要だ」という考え方です。
なぜなら、それが利き手というものの性質だから、です。

 

 ●「左利き講座<左利きQ&A>」

その十年前、2007~2008年には、
「左利き講座<左利きQ&A>」のなかで、【左利き用の楽器】や
「左利きに有利な楽器」という問いについての文章を書いていました。

--
第127号(No.127) 2008/4/5 
  「<左利きQ&A>(17)左利き用品って?《3》」
  ☆【左利き用の楽器】☆彡 
  ――――――――――――

・第84号(No.84) 2007/6/2「<左利きQ&A>(8)左利きと音楽」
「左利き講座<左利きQ&A>/(8)左利きと音楽―序の口」
 
「左利きと音楽」と題して、左利き用の楽器を調べてみました。

●左利き用ギター
 これは単純に弦を張り替えるだけでは、
 必ずしも左利き用にはならない、
 やはり専用のギターを購入すべきだそうです。

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(画像:左利き用と右利き用の違い それぞれフェンダー・ストラトキャスター、ギブソン・レスポール(「エレキギター博士/左利き用(レフティ)エレキギターについて」https://guitar-hakase.com/lefty/より無断拝借)) 

●左利き用ピアノ
 「左側が高音、右側が低音」と従来のものとは逆の構造で、
 右利きの人同様に利き手(左手)でメロディラインが弾け、
 伴奏には非利き手(右手)を使える、という。

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(画像:左利きピアニストで、自分で左利き用ピアノを作り演奏しているクリストファー・シード(Christopher Seed)さん) 

●左利き用バイオリン
 「全てを左右逆に作ってある特注品」を使っている人がいる。

しかし、幸いなことに、
左利き用バイオリンを市販する会社も出てきました。
前回「左利き用品って?《2》」(第122号)で紹介しました。

2007.09.07 左利き用バイオリン
https://lefty-yasuo.tea-nifty.com/ochadesse/2007/09/post_3896.html
「e-String」というネット通販サイトで販売
トップページ > 楽器 > ・ 左利き用バイオリン
 楽器 バイオリン 左用
 バイオリン 左利き用 130,000円(税込)

Gcv800el_soil_iii_gcvvn800elsoi48af

(画像:左利き用バイオリン) 

●リコーダー、ホルン
 サイト「クラシックギターのフォーラム」の
 「左利きって?」の質疑応答、
 ギター初心者は右利き用がよいのか左利き用がよいのか、
 のなかで「待雪」氏のコメントより。

「リコーダーには左利き用の楽器が存在していた」
「現在でもリコーダーの一番下の管(足部管)は回転しますが、
 これは左利き右利きを切り替えるため」
「ホルンはベルに突っ込んでいる手の操作が音色や音程にダイレク
 トに影響するので、極めて稀ですが、左利き用(つまり左手をベ
 ルに突っ込む)のホルンというのがある」

さらに探してみれば、
色々な楽器において左利き用が作られているケースがある、
と思われます。

20141119hidarikiki-flute

(画像:左利き用(左)と右利き用(右)のフルート(『フルートと音楽の日々』「Aihara 左利き用フルート:Yamano Flute World '14」より)) 

  ☆ 左利き用の鍵盤ハーモニカ ☆彡 
  ―――――――――――――――――

相談でよく問われるのが、
「左利き用の鍵盤ハーモニカ」の有無です。

・第89号(No.89) 2007/7/7
「<左利きQ&A>(9)鍵盤ハーモニカ」
「左利き講座<左利きQ&A>/(9)左利きと音楽・序二段
―鍵盤ハーモニカ」

どうやら、「鍵盤ハーモニカは右手で使う」というのが、
現状では仕方のないこと、ということに落ち着きそうです。

しかし、左手用鍵盤ハーモニカが現れ、
それを左利きの子供たちが左手で扱うようになれば、
その発展形として、
将来、左利き用ピアノが普及するようになるかもしれません。
--

第97号(No.97) 2007/9/1
「<左利きQ&A>(11)左利きに有利な楽器」

では、音楽人類学の研究者の著作
『楽器からのメッセージ 音と楽器の人類学』西岡信雄/著
 音楽之友社(2000)より「利き手と楽器の右左」の章から紹介。

西岡信雄氏は、利き手との関連で楽器を三種に分類しています。

 1・左右の手の役割が自由に交代できるタイプ…打楽器
 2・どちらか一方の手が演奏を主担するタイプ…金管楽器
 3・両手がつねに演奏に関与するタイプ…木管・弦・鍵盤楽器

1は、「好きなように叩けばよいのであるから
    利き手の左右に有利不利がない」
2は、「逆にこれが明確である」
「トランペットやトロンボーンは右利き、
ホルンは左利きが絶対に有利である。」

ところが、ネットで調べてみますと、ホルンにおいて、
実際に楽器を持ち、機械的なバルブの操作を行うのは左手ですが、
右手には重要な音の調節という役割があることがわかり、
決して左手有利な楽器ではない、というのです。

リコーダーの件も、
フィルドゥング(S. Virdung 1465~?)の音楽教本
『Musica getutscht und ausgezogen』のリコーダーの挿絵を示し、
左右の手のどちらが上でも下でもよかったこと、
楽器もそれに合わせて穴位置が工夫された構造になっていること
(リコーダーの一番下の小指が担当する穴は、
左右両側にあいていて、使わないほうをろうでふさぐ。)
というふうに、昔は左右の手の決まりはなかった、というのです。

次に、「音大生の利き手と楽器アンケート」を紹介しています。

--
「木管楽器に限らず、作法が成立する以前の時代の絵画には
現在から見ると左右逆の例がいくらでもある。」

これらの左右逆転の例は、

「右利き左利きの問題を提起しているというより、
当時は作法がなかったということを伝えているに過ぎない
と思いたい。」

  ☆ 音大生の利き手と楽器アンケート ☆彡 
  ――――――――――――――――――――

「このあたりを解明するためのヒントになれば」

と1993年5月、氏の講義を受講する音大生約200人に
アンケート調査をしたそうです。

3のタイプの楽器に対して

・自分の専攻する楽器に自分の利き手が不利と感じている者 …31%
・自分の専攻する楽器で左手が音楽的により重要な役割を果たしている
 と感じている者  …34%
・現状とは左右逆の作法で演奏できる楽器が存在したらいい
 と願っている者  …7%
・将来左利きの子供が生まれたら
 右利きに矯正したいと思っている者  …61%

この結果に対して、氏は、
「非常に複雑な心理的葛藤が内在していることを示す」
と注釈されています。

「三人に一人が自分の利き手を不利に思い、
 現在の楽器は左手がより重要と感じている」
「一方で現状の作法が変わって欲しくない」
「しかし右利き優位社会を肯定する」
「作法という文化的条件が
 利き手という生理的条件に優先していることを示す」
「器楽の場合、左利きがぎっちょと考えるより、
 作法に対して左右逆であることをぎっちょと考えるほうが
 説明しやすいことを示している」

結語として、詭弁と断りながら、

「現状の作法が全世界的に解体したとしたら、
 左利きの人も右利きの人もその三分の一が
 晴れて今とは逆の作法で演奏することを予言している」
「オーケストラなどはなかなか愉快の光景であろう。」
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本来、人のためにあるのが「作法」であり、
「作法」のために人が「ある」わけではありません。

多数派のための文化から、少数派も無視しない文化へ
と踏み出して欲しいと願っています。
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というふうに、私は締めています。

 ・・・

今回はあちこちの文章をつぎはぎしたものです。

次回は、
9月に出版された大路直哉さんの著書『左利きの言い分』から、
「第5章 左利きの才人、偉人たち」の音楽家たちについて
思うところを書いてみましょう。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(16)左利きの知らない 鍵盤ハーモニカの世界(2)」と題して、今回も全紹介です。

といいましても、今回は過去の弊誌の記事をあれこれ継ぎはぎしたような内容になっています。

過去に2007~2008年のものや、2018年のものです。
そんな前から左利き用品の一つとして左用の楽器について考えていたのだと知っていただきたい、という気持ちです。

ハサミを筆頭に生活必需品的な左手・左利き用品に関しては、かなり普及してきました。

そういう状況にあって、楽器は、一番遅れている左利き用品のジャンルの一つだ、と思っています。

しかし、楽器こそ“心”の生活必需品だと思っています。

音楽というのは、いつもいいますが、音を楽しむもの。
心から楽しむためには、心につながっている利き手で、利き手主体で演奏してこそ、心を満たすことができるものだと思います。
演奏する自分自身の心も、演奏を聴く人の心にも、届くようになるのだ、と。

音楽(楽器)こそ利き手で演奏を! と力説したいものです。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

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