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2023.07.31

<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』-楽しい読書347号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書【別冊 編集後記】

2023(令和5)年7月31日号(No.347)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・
筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2023(令和5)年7月31日号(No.347)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・
筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2023から――。

 昨年同様、一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介します。

 第二回は、角川文庫から筒井康隆『時をかける少女』を取り上げます。

 

新潮文庫の100冊 2023
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏推し2023
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2023 この夏、一冊分おおきくなろう。
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/
よまにゃチャンネル - ナツイチ2023 | 集英社文庫
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/yomanyachannel/

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(画像:新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023小冊子3点)

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 ◆ 2023年テーマ:わが青春の思い出の一冊 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)
  角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』
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 ●角川文庫 カドブン夏推し2023

カドブン夏推し2023/しらない世界とつながる!
13点 既読:0

カドブン夏推し2023/驚きの謎とつながる!
15点 既読:0

カドブン夏推し2023/語りつがれる想いとつながる!
22点 既読:D坂の殺人事件、蜘蛛の糸・地獄変、海と毒薬、檸檬、
      吾輩は猫である、坊っちゃん、こころ、走れメロス、
      少女地獄、注文の多い料理店、銀河鉄道の夜、馬鹿一、
      羅生門・鼻・芋粥、人間失格、
      ビギナーズ・クラシックス源氏物語(15点)

カドブン夏推し2023/心揺さぶるラストへつながる!
20点 既読:0

カドブン夏推し2023/大人も子どももみんながつながる!
25点 既読:アルケミスト、時をかける少女(2点)

五つのジャンルで95点の中から選べます。

既読といっても、角川文庫版ばかりではなく、
他社版も含めてのもので、近代の日本文学の名作ぐらいですね。
短編集に関しては、内容はそれぞれですので、表題作に関して、
というところです。

最近の作家やその作品は、私にとって、
結構知らない、読んだことのない作家・作品ばかり、
ほとんど手つかず状態です。
そこから選ぶのは非常にむずかしい。

というわけで、未読の作家・作品を選ぶのがいいのでしょうけれど、
新潮文庫では新顔作家を取り上げましたので、
今回は、思い出の作品ということで、既読の本の中から選びましょう。

 

 ●大人も子どももみんながつながる!―『時をかける少女』筒井 康隆

そんな中から選んだのは、
<大人も子どももみんながつながる!>25点中から

 ↓

『時をかける少女』筒井 康隆 角川文庫 新装版 2006/5/25

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(画像:筒井康隆『時をかける少女』と「角川文庫 カドブン夏推し2023」フェア小冊子)
(画像:筒井康隆『時をかける少女』と「角川文庫 カドブン夏推し2023」フェア小冊子の該当ページ)
 

思い出の一冊です。

ある意味で、古典中の古典ともいうべき一冊ですね。

1960年代のジュブナイルSFの名作で、
1970年代から、初々しいヒロインによる青春ドラマとして、
度々テレビ・ドラマに映画にアニメに、
と映像化され続けてきた作品です。

中学時代からSF作品には触れていましたが、
この作品もそういう中学生向けのジュブナイルSFでした
(原作は、学年別学習雑誌、学習研究社『中学3年コース』
 1965年11月号~『高校一年コース』1966年5月号連載)。

 ・・・

映像化作品については、本書の巻末の江藤茂博さんの解説
(「時をかける少女」の文彩(フィギュール))で紹介されています。

まずは、それら映像作品について書いておきましょう。

 

 ●「NHK少年ドラマシリーズ」第一作『タイム・トラベラー』

私が最初に見たのは、1972年1月1日~2月5日(6回)放送
「NHK少年ドラマシリーズ」の一作、『タイム・トラベラー』
(脚本:石山透 主演:島田淳子=浅野真弓)でした。

放送は、私が高校の三年生のお正月からですね。
毎回楽しみに見ていました。

この時間帯(夕方6時代)は昔から子供向け番組が放送されていました。
『ひょっこりひょうたん島』など人形劇が有名でしたが、
それまでの時間帯にドラマが放送されました。

好評で続編『続 タイム・トラベラー』
(昭和47年11月4日~12月2日/5回)も作られました。

『タイム・トラベラー』は、全6話。
原作よりも多くの登場人物を配置し、精神科のお医者さんらも登場、
早い段階でネタ――自分で発明した薬品で、
27世紀の未来からタイム・リープ(時間跳躍)してきた、
ケン・ソゴルが未来へ帰るための秘薬の実験の事故で、
中学三年生のヒロイン芳山和子がタイム・トラベラーとなった――
を割り、ヒロインと未来人の男性のタイム・トラベルの冒険を
科学者が解明しようとしたり、複雑なストーリーに仕立てています。
最終的な結末――過去や未来は変えられない――は同じなのですけれど。

 

今回、何十年ぶりかでシナリオを読んでみますと、
こういう内容だったか、と記憶のなさにびっくり。
印象が変わってきました。

原作は、文庫本100ページぐらいのが中編で、
割とストレートにストーリーが進みます。

連続ドラマということで、膨らませた部分があるということですね。

当時の男の子はタイム・トラベルのSFの部分とその冒険に、
女の子はヒロインの異常な事態による不安と「彼」との冒険に
心ときめかしたのでしょう。

 ・・・

「NHK少年ドラマシリーズ」では、もう一作、
筒井康隆の作品を原作とする名作がありました。

多岐川裕美主演で、テレパス(精神感応者)の七瀬と、
その仲間となる超能力者たちの冒険物語『七瀬ふたたび』です。
これは、人の心が読めるテレパスの飛田七瀬のシリーズ全三作の第二作。

私の選ぶ「NHK少年ドラマシリーズ」のベスト3の一つです。
(残りの一つは、新田次郎原作の『つぶやき岩の秘密』――
 石川セリが歌った主題歌「遠い海の記憶」が印象的でした。)

*参照:
・『タイム・トラベラー』石山透 大和書房 1984/2/1

――1972年、NHKドラマ『タイム・トラベラー』全6話、と
 続編『続・タイム・トラベラー 』全5話のシナリオ集。巻末に
 「NHK少年ドラマシリーズ放送作品リスト」、主題歌楽譜を収録。

・『タイム・トラベラー』石山 透 復刊ドットコム 新装版 2016/12/13

・雑誌『東京おとなクラブ 5号』(1985年6月1日)
 <タイムトラベラーと少年ドラマシリーズ>特集・号
――「NHK少年ドラマシリーズ」のリストと解説や、
 第一作『タイム・トラベラー』制作者のインタビューなど。

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(画像:角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』(2006年新装版)と
「NHK少年ドラマシリーズ」シナリオ集『タイム・トラベラー』石山透・著(大和書房 1984/2/1)と
『カドカワ フィルム ストーリー 時をかける少女』原田知世主演 大林宣彦監督作品 角川文庫 ‎1984/11/1と
雑誌『東京おとなクラブ』5号(「NHK少年ドラマシリーズ」特集から『タイム・トラベラー』の一シーン写真)

・『七瀬ふたたび』筒井 康隆 新潮文庫 改版 1978/12/22
――テレパス(精神感応者)飛田七瀬シリーズ全三作の第二作の長編。
 第一作・連作短編集『家族八景』第三作・長編『エディプスの恋人』。

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(画像:筒井康隆『時をかける少女』と
テレパス(精神感応者)飛田七瀬シリーズ全三作の第二作の長編『七瀬ふたたび』(筒井 康隆 新潮文庫 改版 1978/12/22) 第一作・連作短編集『家族八景』 第三作・長編『エディプスの恋人』)

 ●大林宣彦監督、原田知世主演『時をかける少女』

二度目の映像化が、1983年7月公開の角川映画による
大林宣彦監督、原田知世主演『時をかける少女』でした。

連続ドラマと違い、一気に見せる映画ですので、
ストーリーも比較的ストレートに進行します。

主人公・芳山和子は高校生となり、
舞台も尾道と限定され、また違った雰囲気のお話になっています。

私はラストの薬学教室へ向かう場面で、
タイム・トラベルに関する記憶を奪われた、
大人になった芳山和子が“再来”したケン・ソゴルと出くわし、
何かを感じる和子の様子が印象的でした。

・『カドカワ フィルム ストーリー 時をかける少女』筒井康隆原作
大林宣彦監督作品 角川文庫 昭和59年 ‎1984/11/1

 

 ●その他の映像化作品

その他の映像化作品については、見ていません。

内田有紀主演のフジテレビ系の連続テレビ・ドラマがありました。
それは知っています。

また、この文庫本の新装版のカバーになっている、
劇場版アニメのことも知ってはいます。

懐かしさを感じたものの、改めてみるということはありませんでしたね。

私の場合、先の二作のイメージが強烈に残っていて、
他の作品を受け入れるのは、ちょっと……という気持ちだった、
ということでしょうか。

 

 ●『時をかける少女』の切なさと希望

改めて原作の『時をかける少女』にもどりましょう。

この作品の急所といいますか、象徴的存在がラベンダーの香りです。

文中にもありますように、香水に使われたりして、
よく知られた香りなのでしょうけれど、
私が思い浮かべるのは、北海道のラベンダー畑ですね。

ドラマ『タイム・トラベラー』では、実際にケン・ソゴルが北海道へ、
ラベンダーを探しに行きます。

このラベンダーの香りというのが、
この作品を非常にロマンチックなものにしています。

お花と少女と、幼い頃からの同級生だったはずの男の子――
その彼との別れとともに、共に過ごしたはずのその記憶すら失われる、
という切ない初恋の物語。

《ただ、ラベンダーのにおいが、やわらかく和子のからだをとりまく時、
 かの女はいつもこう思うのだ。/
 ――いつか、だれかすばらしい人物が、
 わたしの前にあらわれるような気がする。
 その人は、わたしを知っている。
 そしてわたしも、その人を知っているのだ……。/
 どんな人なのか、いつあらわれるのか、それは知らない。
 でも、きっと会えるのだ。そのすばらしい人に……
 いつか……どこかで……。》p.115

 

切なくも優しい物語です。

多くの人は映像化作品でストーリーはご存知だったろうと思います。
しかし、実際に読んでみるのとではまた違うでしょう。

小説の方が、もっと心優しいお話、という感じがするのは、
私だけでしょうか。

他の筒井康隆さんの小説をほとんど読んでいませんので、
よくわかりませんが、筒井さんのものとしては、
本当にストレートな小説なのかもしれません。
ジュブナイルならでは、かもしれませんけれど。

若い人も老いたる人も、一度は読んでいただきたいものです。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2023から(2)角川文庫・筒井康隆『時をかける少女』わが青春の思い出の一冊」と題して、今回も全文転載紹介です。

青春時代の思い出の一冊でもあり、私より下の世代の方にも映像化作品でおなじみの一作ではないでしょうか。
それぞれの世代毎に作品は違っているでしょうけれど、それぞれの思い出をお持ちのことと思います。
しばしの間、思い出に浸るのもよいかと思います。

 ・・・

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