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2022.07.31

新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(2)角川文庫『山椒大夫~』森鴎外-「楽しい読書」第323号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書-322号【別冊 編集後記】

2022(令和3)年7月15日号(No.322)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から
(2)角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外」

※「森おう外」の「おう」は正確には「鷗」ですが、
 この文字は「環境依存文字」ですので、
 当メルマガでは、新字の「鴎」を代用しています。

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和3)年7月31日号(No.323)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から
(2)角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2022から――。

 当初は、年一回7月末に、
 三社の文庫フェアから一冊ずつ紹介していました。

 近年は、読書量の減少もあり、
 自分にとっての“新規の作家を発掘”しようという試みもあり、
 7月、8月の月末二回程度に分けて紹介してきました。
 
 で、今年は一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介しよう
 と思います。

 二回目は、角川文庫です。

 

新潮文庫の100冊 2022
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏フェア2022
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2022
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/

 

 ~<夏の文庫>三社フェア2022・第一回~

2022(令和3)年7月15日号(No.322)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)
新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)」
2022.7.15
新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)新潮文庫『老人と海』
-「楽しい読書」第322号

「新生活」版 

 

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 ◆ 2022テーマ(2)森鴎外 没後100年・晩年の名作 ◆

  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から

  (2)角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外

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 ●森鴎外、没後100年

角川文庫からは、森鴎外の没後100年ということで、
(1862年2月17日(文久2年1月19日)-1922年(大正11年)7月9日)
鴎外を取り上げてみることにしました。

角川文庫のこの本を読むのは初めてですが、
以前、弊誌で森鴎外の「舞姫」を取り上げた際に、
他社文庫(岩波文庫、文春文庫)で、
これらの収録作品を読んでいました。


2011(平成23)年2月28日号(No.53)-110228-
人知らぬ恨「舞姫」森[鴎おう]外

※「別冊 編集後記」~『レフティやすおの作文工房』~
2.28
森[鴎]外を読む:「舞姫」人知らぬ恨
―第53号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」

 

ちなみに、鴎外の「鴎(おう)」は、正しくは、偏の「区」の部分が旧字、
囲いの中の「メ」の部分が「口」3つです。
メルマガではこの漢字は使用できない(「×」になってしまう)ので、
便宜上、新字で紹介しています。

 ・・・

角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外
https://www.kadokawa.co.jp/product/201202000090/

角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外

220729sanshoudayuu-kadokawa

目次:(o:私のお気に入り)

o「山椒大夫」
o「じいさんばあさん」
o「最後の一句」
o「高瀬舟」
 「附高瀬舟縁起」
「魚玄機」
「寒山拾得」
 「寒山拾得縁起」
「興津弥五右衛門の遺書」
o「阿部一族」
「佐橋甚五郎」

 ・・・

ちなみに、「新潮文庫の100冊 2022」からも、
森鴎外の後期の作品集が選ばれています。

『山椒大夫・高瀬舟』新潮文庫‎ 改版 2006/6/1

220729sanshoudayuu

 

全12編収録で、共通するのは、
「興津弥五右衛門の遺書」「山椒大夫」「最後の一句」
「高瀬舟」「高瀬舟縁起」の5作。

個人的には、角川文庫版の方が、
後期の名作中の名作とも言うべき作品を集めていて「買い」でしょう。

 

 ●「山椒大夫」

まずはそれぞれの作品について軽くふれておきましょう。

「山椒大夫」は、安寿と厨子王の物語として有名でしょう。

私は子供の頃に東映動画のアニメ『安寿と厨子王』として親しみました。

父を訪ねて西国へ向かう安寿と厨子王とその母と女中の四人旅。
人買いの山岡大夫に騙されて、母は佐渡への船に売られ、
女中はこれまでと身を投げて死ぬ。
一方、子供二人は富山からさらに西へ向かう船に売られます。
で、題名となっている山椒大夫のもとに。
安寿は潮汲みで、厨子王は柴刈り。
で、心定めた安寿は、ある日、弟の厨子王を都に逃げろと教え、
自分は入水自殺します。
近くの寺に逃げ込み、都へ逃げ延びた厨子王は、
清水寺で関白師実(もろざね)と出会い、守り本尊の仏像のお陰もあって、
出世し、丹後の国守となって人買いをやめさせ、
佐渡に渡り、母とも出会い、めでたしめでたし――。

安寿の思い定めた心の強さが心に残る作品です。

「じいさんばあさん」は、仲のよい老夫婦のお話。
これはあとでふれます。

 

 ●「最後の一句」

「最後の一句」は、大阪の町奉行に直訴した少女のお話。
高校時代の教科書で初めて読んだ、鴎外作品。

 《「お上(かみ)の事には間違(まちがい)はございますまいから」》p.76

という当年16歳の長女いちが、
西町奉行所の白洲での取り調べで最後につけ加えた、
この<最後の一句>が厳しく心に残ります。

 《白洲を下がる子供等を見送って、佐佐は太田と稲垣とに向いて、
  「生先(おいさき)の恐ろしいものでござりますな」と云った。
  心の中には、哀な孝行娘の影も残らず、
  人に教唆(きょうさ)せられた、おろかな子供の影も残らず、
  只(ただ)氷のように冷かに、刃のように鋭い、
  いちの最後の詞(ことば)の最後の一句が反響しているのである。
  元文(げんぶん)頃の徳川家の役人は、
  固(もと)より「マルチリウム」という洋語も知らず、
  又当時の辞書には献身と云う訳語もなかったので、
  人間の精神に、老若男女の別なく、
  罪人太郎兵衞の娘に現れたような作用があることを、
  知らなかつたのは無理もない。
  しかし献身の中に潜む反抗の鋒(ほこさき)は、
  いちと語(ことば)を交えた佐佐のみではなく、
  書院にいた役人一同の胸をも刺した。》p.76

安寿の思い定めたような心と同じような厳しい決意が感じられます。

 

 ●「高瀬舟」

弟殺しの罪で島流しになる罪人を護送する
京都の高瀬川を行く高瀬舟の役人が、その罪人喜助の態度が
今までの罪人たちと異なる様子に思わず事情を聴くというお話。

身寄りのない兄弟二人だけで生活におわれていたが、
弟が病気になり、兄貴助の負担になるのを嫌い、
自殺を図るが、死にきれずにいる。帰った喜助に殺してくれと言う。
仕方なくカミソリを引いたとき、近所の女が現れ……。
罪人となり遠島になるにあたって、ただ飯を食わせてもらった上、
二百文のお金までもらえたことに、素直に喜んでいるのです。
今までまじめに働いていてもこのような大金を手にしたことはない、
というのです。
役人は、この弟殺しというものが本当に罪なことだったのか、
と考え込んでしまいます。

 《これが果して弟殺しというものだろうか、
  人殺しと云うものだろうかという疑(うたがい)が、
  話を半分聞いた時から起(おこ)って来て、聞いてしまっても、
  其(その)疑を解くことが出来なかった。(略)
  喜助はその苦(く)を見ているに忍びなかった。
  苦から救って遣(や)ろうと思って命を絶った。
  それが罪であろうか。殺したのは罪に相違ない。
  しかしそれが苦から救うためであったと思うと、
  そこに疑が生じて、どうしても解けぬのである。》p.92

役人は、上のものの判断に任せるしかない、と思う。
お奉行さまの判断を自分の判断にしようと思うのでした。

安楽死問題を扱った医師らしいとも言えるお話です。
文豪ミステリ的な意味合いもあり、有名な作品です。

「附高瀬舟縁起」は、作品の背景を語るもの。

 

 ●「魚玄機」「寒山拾得」

この二つは、中国ものの歴史物です。
「魚玄機」は、詩の才能を持った女性(名前がタイトル)のお話。
漢詩が出てきます。

「寒山拾得」は、仏教もののユーモア編という感じです。
(「寒山拾得縁起」は、その背景を語るもの。)

 

 ●「興津弥五右衛門の遺書」「阿部一族」

江戸時代の殉死もの二編。
「興津弥五右衛門の遺書」は、殉死の覚悟を決めた男の遺書。

「阿部一族」は、この短篇集中ももっとも長い短編
(といっても50ページほど)。
殉死を許されなかった侍が追い腹を切るが認められず、討手を出され、
阿部一族は閉じこもり対抗するが……。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」の世界の物語。
殉死の範囲というものも規定があるわけではなし、
追い腹を認められる場合もあり、
討手となっても死をもって奉公の態度を示さねばならなかったり、
武士の道とは死ぬことという言葉を文字通り示すお話。
名誉を重んずる故の行動とはいえ、
理不尽でもあり、悲劇でもあるという、
何かしら割り切れない気持ちになります。

「佐橋甚五郎」は、逆に生きのびることにつくした男のお話。

 

 ●「じいさんばあさん」

本書はまさに、鴎外の晩年の名作を集めた一冊です。

その中で、最後に、今年の私のこの企画のテーマともいうべき、
老人問題から、「じいさんばあさん」を取り上げましょう。

非常に仲のよい老夫婦の謎とは?

江戸時代の話です。
武家屋敷の一角の離れに引っ越してきた老夫婦は、非常に仲がよい。
近所のものの話では、
もしこれが若い男女だったら平気で見ていられないというほど。
なかには、夫婦ではない、兄弟だろうという人も。
なぜなら
 《隔てのない中(うち)に礼儀があって、夫婦にしては、
  少し遠慮をし過ぎているようだと云うのであった。》p.50

 《二人の生活はいかにも隠居らしい、気楽な生活である。
  爺いさんは眼鏡を掛けて本を読む。細字で日記を附ける。
  毎日同じ時刻に刀剣に打粉(うちこ)を打って拭(ふ)く。
  体(たい)を極(き)めて木刀を揮(ふ)る。
  婆あさんは例のまま事の真似をして、
  その隙(すき)には爺いさんの傍(そば)に来て団扇(うちわ)であおぐ。
  もう時候がそろそろ暑くなる頃だからである。
  婆あさんが暫しばらくあおぐうちに、
  爺いさんは読みさした本を置いて話をし出す。
  二人はさも楽しそうに話すのである。》pp.50-51

 《どうかすると二人で朝早くから出掛けることがある。(略)
  二人が出歩くのは、最初のその日に限らず、過ぎ去った昔の
  夢の迹(あと)を辿(たど)るのであろうと察した。》p.51

男のほうは伊織という武家だが、癇癪持ちが玉に瑕という。
嫁のるんは、決して美人ではないが、
長年、屋敷奉公をしていて行き遅れたが、押し出しが立派で賢く、
才気にあふれている、良き嫁であった。

新婚間もなく、伊織は京に出向くことになる。
無事に任務を終えるが、良い刀の出物があり、同役に借金をして買う。
そのお披露目会で招かれていない借金の主が現れ、言い争いになり、
かんしゃくを破裂させた伊織は相手を切りつけ殺してしまう。

その結果、よそへお預けの身となり、二人は離ればなれに。
夫の祖母も息子も亡くしたるんは、武家に奉公に出る。

そしてようやく夫がお預け御免となり、
こうして、37年ぶりに二人は夫婦として暮らすことになったのでした。

 

こういう事実が明らかになりますと、
この老夫婦お二人の仲の良さというものも理解できるように思います。

凍結されていた新婚時代が、時を超えて復活した、というわけですね。
とてもいいお話だと感じました。

ということで今回はおしまいです。

 

 ●鴎外と漱石

森鴎外という人は、明治の文豪としては、
夏目漱石(1867年2月9日〈慶応3年1月5日〉-1916年〈大正5年〉12月9日)
と並ぶ二大文豪とされています。

私自身は、夏目漱石よりは、鴎外の短編の方が好き
という印象があります。

今回紹介しましたような一連の短編ですね。
他にも、処女作の「舞姫」のような作品ですね。

ちなみに、「新潮文庫の100冊 2022」に選ばれている
森鴎外『山椒大夫・高瀬舟』に収録されている「普請中」は、
この「舞姫」のモデルとされる外国人の女性が
日本にやってきたというお話で、興味深いものがあります。

仕事を持っていたということもあるのでしょうが、
夏目漱石が長編が多いのに対して、鴎外は短編が多い、
という違いがあります。

一つは、鴎外が軍医であったという兼業作家だったのに対して、
漱石は東京帝大の先生を辞めてから
(漱石はラフカディオ・ハーンに代わって日本人の文学部講師になった
 ――余談ですが、ハーンの研究もある、
 比較文学研究家の平川祐弘(ひらかわすけひろ)さんの説では、
 ハーン同様、熊本の第五高等学校の先生をやり、イギリス留学後、
 ハーンの後釜として、東京帝大文学部の講師になった、そして、
 ハーンの「怪談」に対抗して「夢十夜」を書いた、といいます。)、
朝日新聞に入社、新聞に小説を連載する仕事を始めた、
という専業作家だったという事実もあります。
鴎外は、時間的に長いものを書く余裕がなかった、というわけですね。

しかし、基本的にはその人の作家としての資質の問題でもあるのでしょう。
長編作家と短編作家という違いがあります。

同じ小説でも、やはりワン・アイデアでも書ける短編に対し、
ある程度の構想が必要な長編という違いがありそうです。

読む場合でも、私のように体力に自信のない人は、
一気に読める短編を好み、
体力のある人はじっくり長編に取り組めるのではないでしょうか。

まあ、そんな気がします。

漱石の印象が悪いのは、
高校時代に国語の宿題で『こころ』を読まされた
という経験がマイナスになっています。

その後、漱石も自主的に明治の文豪ということで、
『こころ』の再読のほか、『坊ちゃん』や『吾輩は猫である』『草枕』
『三四郎』などを読みました。
マイナスな印象はあまり変わっていません。

『坊ちゃん』などはもう一度きちんと読んでみたいものです。

ほかの作品も読み進めれば、
また違ってくるのかもしれませんけれど……。

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 ★創刊300号への道のり は、お休みします。

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本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から (2)角川文庫『山椒大夫・高瀬舟・阿部一族』森鴎外」と題して、全文紹介です。

明治の文豪で、今年没後100年になる森鴎外の晩年の名作集を取り上げました。

本文中にも書いていますように、印象に残っている作品がいくつもあります。
東映動画の「安寿と厨子王」でよく知られた物語「山椒大夫」、高校の教科書で読んだ作品で、この一言は現代でも大きな意味を持つ「最後の一句」、安楽死問題、下層階級の経済問題など多くの社会性を持つ「高瀬舟」、武士道とは死ぬことと見つけたりという殉死問題を扱う「阿部一族」などなど。

なかでも、若夫婦のように仲のよい老夫婦の謎の真相を描く「じいさんばあさん」は、今年のこの夏の三社フェアの私のテーマ<老人>問題に関連して取り上げてみました。
正直、仲のよい老夫婦をみますと、あこがれますよね。

 

[追記] 本文中、「山椒大夫」に関連して、

 《私は子供の頃に東映動画のアニメ『安寿と厨子王』として親しみました。》

と記載しましたが、調べてみますと、『安寿と厨子王丸』が正しい題名でした。
1961年7月19日公開作品。

 

*『安寿と厨子王丸』DVD
 

220729anju-to-zusioumaru

 ・・・

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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2022.07.16

『左組通信』復活計画<左利きプチ・アンケート>(15)利き手調査(3-2)第37回H.N.きき手テスト-週刊ヒッキイ第623号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第623号 別冊編集後記

第623号(No.623) 2022/7/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [15]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(15)「利き手調査」その3-2
 第37回新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト」

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◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
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第623号(No.623) 2022/7/16
「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [15]
<左利きプチ・アンケート> 全公開(15)「利き手調査」その3-2
 第37回新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト」
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 <利き手調査アンケート>編の3種類目の利き手テストを紹介します。

 H.N.きき手テストのアンケートの新版の紹介です。

 このテストは、日本人の利き手を正しく判断する上で、
 「日本人による日本人のための利き手テスト」
 とでもいうべきものになっています。

 日本では、長年左利きが忌避され、
 右手使いが正しい作法という考えから、「矯正」と呼んで、
 特に箸使いと字を書くことに関して、
 無理矢理、左利きの子供を右手使いに転換させることが
 行われてきました。
 
 その影響から、
 エディンバラ利き手テストの項目の「字を書く」等の項目が
 真の「利き手」を判断する指標にはなりにくい
 という事実がありました。

 その欠点を補正するために調査項目の変更が為されたのです。

 前回の「第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト」アンケートは、
 テスト結果からご自身の利き手の傾向を判断する、
 という形になっていました。

 今回は、
 アンケート結果を「右利きの投票者」と「左利きの投票者」と、
 投票者ご自身の自己申告の利き手別に集計する形にしました。

 本人の意識と実態の間にギャップがあるのかどうかを確認する、
 といったところでしょうか。

┏ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┓
2020年は左利き公認60年&左利きライフ研究30年(その22)
ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [15]
  <左利きプチ・アンケート> 全公開(15)
  「利き手調査」アンケート編・その3-2
  第37回新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
┗ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ┛      

 ●第37回 新版・利き手調査3回目―H.N.きき手テスト

220709-enq37

 

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左利きを考える レフティやすおの左組通信
 Lefty Yasuo's HIDARIGUMI Announcement
 
  <左利きプチ・アンケート>
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<左利きプチ・アンケート>
第37回新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト 
 2007.1.28-2.24(4weeks)

(初出)2007.2.25(最終)
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<左利きプチ・アンケート>
第37回新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト

「第33回新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる」
「第35回新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査」に続く、
利き手別に投票する新版利き手調査アンケートの第三弾!
「第23回利き手調査3回目―H.N.きき手テスト」の新版です。

・・・

H.N. きき手テスト

これは、エディンバラ利き手調査や
アネット尺度(イギリスの利き手研究家の使用した利き手テスト)では、
社会的文化的影響を強く受けている日本人の利き手を正しく判断できない
という考えによって作成されています。

文字や絵を書/描く動作、およびナイフやスプーンあるいは箸を使う
といった摂食に関わる動作を割愛して、
いわゆる「矯正」の影響を省こうとしています。
(八田武志・中塚善次郎氏によって作成された故、
 その頭文字をとってこう呼ばれているようです。)

※参照―八田武志『左ききの神経心理学』医歯薬出版 1996.11

220412hidarikiki-no-sinkeisinrigaku

 

以下の動作においてあなたはどちらの手を使いますか。

▼調査項目:

1・消しゴムはどちらの手に持って消しますか?
2・マッチをするのに軸はどちらの手に持ちますか?
3・ハサミはどちらの手に持って使いますか?
4・押しピンはどちらの手に持って押しますか?
5・果物の皮をむくときナイフはどちらの手に持ちますか?
6・ネジまわしはどちらの手に持って使いますか?
7・クギを打つときカナヅチはどちらの手に持ちますか?
8・カミソリ、または口紅はどちらの手に持って使いますか? 
9・歯をみがくとき歯ブラシはどちらの手に持って使いますか?
10・ボールを投げるのはどちらの手ですか?  

▼判定基準:

左手の場合には、-1点、
どちらでもないとき(どちらともいえない場合)は、0点、
右手の場合は、+1点、
 を配点する。

その合計点数が、
-4点以下は、左利き、
+8点以上は、右利き、
それ以外(-3~+7)は、両手利き、
 とします。

さて、あなたは右利き、それとも左利き、あるいは両利き、
いずれに判定されましたか。
以下の中で当てはまる番号に投票してください。

*投票者の利き手別で選択肢を用意しています。
ご自身でご自分の利き手を右もしくは左と、
どちらか判断した上で投票してください。

*一言言わせて、という方は投票後に表示されます一番下の
「ご意見ボード」をご利用ください。
もっと言わせて、という方は掲示板もご利用ください。
貴方のご意見ご感想をお聞かせください

1 (右利きの投票者)+10~+8
2 ( 〃 )+7~+4
3 ( 〃 )+3~-3
4 ( 〃 )-4~-10
5 (左利きの投票者)+10~+8
6 ( 〃 )+7~-3
7 ( 〃 )-4~-7
8 ( 〃 )-8~-10

現在の結果を見る(ご意見ボードはこちら)

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初出締め切り時(2007.2.25)の投票結果

実施期間2007.1.28-2.24(4週間・総数t33/R8:L25)
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1 (右利きの投票者) +10~+8 1
2 (   〃   ) +7~+4 5
3 (   〃   ) +3~-3 1
4 (   〃   ) -4~-10 1
5 (左利きの投票者) +10~+8 8
6 (   〃   ) +7~-3 4
7 (   〃   ) -4~-7 2
8 (   〃   ) -8~-10 11

ご意見ボードへの書き込み
(ご意見はありません)

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途中経過(2007/12/22 t=278, R=125, L=153)
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1 (右利きの投票者) +10~+8  30
2 (   〃   ) +7~+4   33
3 (   〃   ) +3~-3   34
4 (   〃   ) -4~-10  28
5 (左利きの投票者) +10~+8  36
6 (   〃   ) +7~-3   30
7 (   〃   ) -4~-7   31
8 (   〃   ) -8~-10  56

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途中経過(2009/01/22 t=573, R=267, L=306)
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1 (右利きの投票者) +10~+8  73
2 (   〃   ) +7~+4   72
3 (   〃   ) +3~-3   56
4 (   〃   ) -4~-10  66
5 (左利きの投票者) +10~+8  76
6 (   〃   ) +7~-3   73
7 (   〃   ) -4~-7   66
8 (   〃   ) -8~-10  91

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途中経過(2009/06/26 t=783, R=365, L=418)
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1 (右利きの投票者) +10~+8  103
2 (   〃   ) +7~+4   90
3 (   〃   ) +3~-3   77
4 (   〃   ) -4~-10  95
5 (左利きの投票者) +10~+8  102
6 (   〃   ) +7~-3   102
7 (   〃   ) -4~-7   92
8 (   〃   ) -8~-10  122

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途中経過(2016.9.19 t=1108, R=518, L=590)
------------------------------------------------------------------

1 (右利きの投票者) +10~+8 145
2 (   〃   ) +7~+4 124
3 (   〃   ) +3~-3 117
4 (   〃   ) -4~-10 132
5 (左利きの投票者) +10~+8 156
6 (   〃   ) +7~-3 139
7 (   〃   ) -4~-7 135
8 (   〃   ) -8~-10 160

ご意見ボードへの書き込み(ご意見はありません)
------------------------------------------------------------------

 ★ ★ ★

------------------------------------------------------------------
最終結果( t=1170, R=544, L=626)
------------------------------------------------------------------

1 (右利きの投票者) +10~+8 152
2 (   〃   ) +7~+4 132
3 (   〃   ) +3~-3 122
4 (   〃   ) -4~-10 138
5 (左利きの投票者) +10~+8 164
6 (   〃   ) +7~-3 150
7 (   〃   ) -4~-7 143
8 (   〃   ) -8~-10 169

ご意見ボードへの書き込み(ご意見はありません)

Enq37-37hn

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~過去に実施した主な<左利きプチ・アンケート>~

第1回 左利きイメージ調査
第2回 左利きで困ったこと(物理的バリア編)
第3回 左利きの子に右手使いを試みるか否か
第5回 左利き?と思うのはどんな仕草ですか
第7回 左利きでも字は右手で書くべきか
第11回 「利き手(左利き)の矯正」という言葉をどう思いますか
第17回 学校での配膳は左利きの子も伝統的ルールに従うべきか
第29回 左手での毛筆(習字/書道)は是か非か?
第32回 非利き手使い指導を受けたことがありますか

●利き手調査テスト関連アンケート
第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
第51回 新版・利き足は右左どちらですか―利き足テスト

○最近のアンケート
第34回 あなたの父母は右利きor左利き?
第36回 利き手は変えられると思いますか
第38回 LYグランプリ2006 があったら…
第40回 スポーツで左利きは有利だと思いますか
第42回 左利きの日はどっちがいい?
第43回 タレントさんの左手使いは気になりますか
第44回 じゃんけん、ポン!はどっち?
第45回 左利きのための生活技術指導者・コーチは必要か?
第47回 左利き(利き手)研究会は必要?参加協力する?
第48回 「ぎっちょ」は差別的な言葉だと思いますか?
第52回 利き手をケガしたとき不便を感じましたか?

------------------------------------------------------------------

↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

2022.7.7 (追記)

初出締め切り時(2007.2.25)の投票結果をみますと、
右利きの投票者に関しては、
8人中5人が右利きより(+7~+4)で、
私自身、違和感はありませんでした。

ところが、左利きの投票者の結果を見ますと、8,4,2,11で、
「右利き」に分類される人(8+4)と
「左利き」に分類される人(11+2)で、ほぼ拮抗しています。

この傾向はどういうところにあるのでしょうか。

私の考えでは、俗に「左利き」といわれる人は、
何かしら一つの動作が左使いであれば、
「あなた、左利き?」と訊かれたりする、
という経験があるように思います。

例えば、TOKIOの国分太一さんのように、
食事の際のみ左(箸使いやスプーンが左)という人でも、
世間的には「左利き」の人と認識する人がいる、ようなものです。

そういう風に見ていきますと、大半の動作が右であっても、
何か一つでも左使いであれば、自分は「左利き」と考える、
というケースもあるのかな、ということですね。

 ・・・

最終結果をみますと、右利き・左利きそれぞれの投票者で、
それぞれの両端に当たる人が一番多くなっています。

1 (右利きの投票者) +10~+8 152
4 (   〃   ) -4~-10 138

5 (左利きの投票者) +10~+8 164
8 (   〃   ) -8~-10 169

といいましても、その実数は、逆の投票者とあまり大差がありません。
特に左利きの投票者で、ほぼ同数(164:169)といってもいいほどです。

右利きの投票者にしろ左利きの投票者にしろ、
その中間の人が少なめになっています。「( 」こんな感じです。

両極端がほぼ同数というアンケート結果については、
正直、私には、どう解釈すればいいのかよくわかりません。

先ほども書きましたように、「左利きの人」の場合には、
「あなた、左利き?」認識の問題があるのかもしれません。

それにしても、うーん、やっぱり、
もう一つ理解しがたいものがあります。

このアンケートが成功なのかどうかも、本当のところわかりません。
そういう意味では残念な結果になっているともいえそうな気がします。

 ・・・

 次回は、新たに「第24回 利き手調査第4回 chapman利き手テスト」
 を紹介します。
 アンケート投票者の利き手別に投票するタイプの新版を紹介します。

 <左利きプチ・アンケート>
  第24回 利き手調査第4回 chapman利き手テスト

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<左利きプチ・アンケート>
●利き手調査テスト関連アンケート
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第14回 貴方の利き目は右左どちらですか
第20回 利き手調査1回目―側性係数を調べてみよう
第22回 エディンバラ利き手調査
第23回 利き手調査3回目―H.N.きき手テスト
第24回 利き手調査第4回chapman利き手テスト
第28回 利き足を調べてみよう・チャップマン利き足テスト

(自己申告による利き手別の投票アンケート)
第33回 新版・利き手調査第1回―利き手テスト側性係数を調べる
第35回 新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査
第37回 新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト
第39回 新版・利き手調査第4回-chapman利き手テスト
第41回 新版・利き手調査第5回 マクマナスの利き手テスト
第46回 利き手テストと意識の一致度は?
第49回 新版・利き目は右左どちらですか?
第51回 新版・利き足は右左どちらですか―利き足テスト

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 「★600号までの道のり」は、お休みです。

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本誌では、「ホームページ『レフティやすおの左組通信』復活計画 [15] <左利きプチ・アンケート> 全公開(15)「利き手調査」その3-2 第37回新版・利き手調査第3回―H.N.きき手テスト」と題して、今回も全紹介です。

利き手調査のアンケートの3種類目のその2回目です。

今回は、投票者の自己申告による利き手別に投票していただいたものです。
自己認識と実際の結果とのあいだに違いがあるのかどうかを確認しようという試みです。

最終的には、私自身、どう考えればよいのかよくわからない結果になっています。
どのように判断すればよいのでしょうか。
おわかりの方、教えてください。

 ・・・

弊誌の内容に興味をお持ちになられた方は、ぜひ、ご購読のうえ、お楽しみいただけると幸いです。

*本誌のお申し込み等は、下↓から
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2022.07.15

新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)新潮文庫『老人と海』-「楽しい読書」第322号

古典から始める レフティやすおの楽しい読書-322号【別冊 編集後記】

2022(令和3)年7月15日号(No.322)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)
新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)」

 

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◇◆◇◆ 古典から始める レフティやすおの楽しい読書 ◆◇◆◇
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2022(令和3)年7月15日号(No.322)
「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)
新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)」
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 今年も毎夏恒例の新潮・角川・集英社の
 <夏の文庫>フェア2022から――。

 当初は、年一回7月末に、
 三社の文庫フェアから一冊ずつ紹介していました。

 近年は、読書量の減少もあり、
 自分にとっての“新規の作家を発掘”しようという試みもあり、
 7月、8月の月末二回程度に分けて紹介してきました。
 
 で、今年は一号ごと三回続けて、一社に一冊を選んで紹介しよう
 と思います。

新潮文庫の100冊 2022
https://100satsu.com/

角川文庫 カドブン夏フェア2022
https://kadobun.jp/special/natsu-fair/

集英社文庫 ナツイチ2022
http://bunko.shueisha.co.jp/natsuichi/

220711natu-no-bunko2022

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 ◆ 2022年テーマ(1)「老人の戦い」 ◆
  新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1)
  新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●「新潮文庫の100冊 2022」から古典的な「名作」

新潮文庫は、三社のなかでは文庫の老舗でもあり、
海外文学から日本文学まで、
古典的な名作から現代の人気作家の作品まで、
また、小説やエッセイなどの文芸作品からノンフィクションまで、と
かなり幅広いジャンルから作品が選ばれています。

なかでも内外の古典的な名作――
特に、三社のなかでは際だって多くの海外作品を広く集めている、
という点が特徴でしょう。

 

まずは、「新潮文庫の100冊 2022」から
主な「古典的な名作」っぽい作品をピックアップしてみましょう。

(海外)
赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ1―
ルーシー・モード・モンゴメリ/著 村岡 花子/訳

あしながおじさん ジーン・ウェブスター/著 岩本 正恵/訳

異邦人 カミュ/著 窪田 啓作/訳

悲しみよ こんにちは フランソワーズ・サガン/著 河野 万里子/訳

グレート・ギャツビー フィツジェラルド/著 野崎 孝/訳

ジキルとハイド ロバート・L・スティーヴンソン/著 田口 俊樹/訳

シャーロック・ホームズの冒険 コナン・ドイル/著 延原 謙/訳

車輪の下 ヘッセ/著 高橋 健二/訳

十五少年漂流記 ジュール・ヴェルヌ/著 波多野 完治/訳

月と六ペンス サマセット・モーム/著 金原 瑞人/訳

罪と罰〔上〕 ドストエフスキー/著 工藤 精一郎/訳
罪と罰〔下〕 ドストエフスキー/著 工藤 精一郎/訳

変身 フランツ・カフカ/著 高橋 義孝/訳

星の王子さま サン=テグジュペリ/著 河野 万里子/訳

老人と海 ヘミングウェイ/著 高見 浩/訳

ロミオとジュリエット ウィリアム・シェイクスピア/著
 中野 好夫/訳

若きウェルテルの悩み ゲーテ/著 高橋 義孝/訳

(国内)
伊豆の踊子 川端 康成

海と毒薬 遠藤 周作

江戸川乱歩傑作選 江戸川 乱歩

金閣寺 三島 由紀夫

新編 銀河鉄道の夜 宮沢 賢治

黒い雨 井伏 鱒二

こころ 夏目 漱石

山椒大夫・高瀬舟 森 鴎外

塩狩峠 三浦 綾子

砂の女 安部 公房

痴人の愛 谷崎 潤一郎

人間失格 太宰 治

燃えよ剣〔上〕 司馬 遼太郎
燃えよ剣〔下〕 司馬 遼太郎

羅生門・鼻 芥川 龍之介

檸檬 梶井 基次郎

 

 ●新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)

ということで、例年のことなのですが、
新潮文庫では主に古典的な名作、
それも海外の作品を取り上げてきました。
今回もそういう作品を取り上げてみます。

それが、このヘミングウェイの晩年の作品といっていい、
『老人の海』です。

220711sinchou-roujin-to-umi

アーネスト・ヘミングウェイ(Ernest Hemingway)は、
1899(明治32)年7月21日、アメリカ・イリノイ州オークパークに、
医師の父と芸術家肌の母の長男に生まれる。

(この年には、彼同様ノーベル賞を受賞し、その後自殺した小説家、
 川端康成さんが6月14日に生まれています。)

1961(昭和36)年7月2日、猟銃により自殺、享年61歳。

 

『老人の海』(The Old Man and The Sea)発表は、1952(昭和27)年9月、
アメリカの「ライフ」誌の特別号に一挙掲載。

直後に出版され、翌53年5月、ピューリッツァー賞を受賞。
1954年10月、ノーベル文学賞を受賞。

51歳当時に書かれた作品で、
70年ほど前とはいえ、決して老齢とはいいがたい年齢です。

その辺はやはり作家なのでしょう、
しっかりと老人の漁師の肉体の状態や心情などを描いています。

 

 ●ストーリー

84日間不漁続きのキューバの老漁師が、85日目、一人で海に出る。
一気に挽回しようと沖まで出て大物を狙う。
その甲斐あって大物に出会い、二晩の格闘の末、仕留めるものの、
あまりの大きさに舟の横にくくりつけることしかできず、
港に戻るまでに次々と鮫に襲われ、ほとんど骨ばかりにされてしまう。
夜、疲労困憊の身体で帰り着いたものの、収穫は無し。
帆を巻き付けたマストを担いで、一人自分の小屋に戻り付く。

 ・・・

初めのうちの40日目まで、老人とともに漁に出ていた少年が、
翌朝老人の家を訪問する。
他の漁師が魚の骨の全長を測っている。

 《「鼻から尻尾まで十八フィート」》

 《「たいした代物だな」店主は言った。
  「初めてお目にかかったよ、あんな魚には。
   おまえが昨日釣り上げた二匹も、立派なものだったが」/
  「ぼくのなんか、どうでもいいよ」少年は言って、
  また泣き出した。》p.130
 
少年はこの老人から漁師としての仕事を教えられたのだった。
今でも本当は、一緒に漁にで出たかったのだが、
漁の運に見放された老人の舟に乗るのを辞め、ほかの舟に乗るように、
親からいわれていたのでした。

 《「(略)サンチアゴをそっとしておきたいんだ。
   みんなにそう言っといて。ぼく、また来るから」/
  「残念だったな、と言っといてくれ」/「ありがとう」》p.130

小屋に少年が戻ると、
舟や漁の後始末をしてくれている男に、頭は漁の仕掛けにでも、と老人。

「あの槍みたいな嘴は?」と少年が問うと、
「ほしけりゃ、おまえのものにするさ」と老人。

 《「(略)また一緒に漁に出ようよ。
   もっともっと、教えてもらいたいんだ」》p.132

老人は、漁の間、何度も「あの子がいてくれたら」と思いつつ、
一人奮闘するのです。
その独り言が、小説の軸になっていると言ってもいいでしょう。

双方が相思相愛といってもいい、すばらしい師匠と弟子の関係、
という感じでしょうか。

早くケガを治して、と色々と世話を焼く少年。
老人はまた眠りにつき、ライオンの夢を見る……。
(老人は少年くらいの年ごろ、アフリカ通いの船に乗っていて、
 夜になると砂浜を歩くライオンをよく見た、という。)

*新潮文庫
『老人と海』ヘミングウェイ 高見浩訳 2020/6/24

*参考:光文社古典新訳文庫
『老人と海』アーネスト ヘミングウェイ 小川 高義/訳 2014/9/11

220711roujin-to-umi

 

 ●この「老人」と「海」の関わりについて

私もいつしか老人の仲間入りをしていました。
特に昨年、腰を痛めてそれが左足に来て、
一か月、杖をついて歩いていた時期があったのですが、
それ以来、一気に自分が老人になったな、と自覚させられたものでした。

 

この小説の主人公の老人は、腕相撲のチャンピオンになったり、
漁師として長年漁獲を出してきたベテラン漁師。
愛する妻を亡くし、今は一人暮らし、
小屋には妻の形見のイエスとマリアの絵を飾っている。
かつては色づけした妻の写真を飾っていたが、
見ているとさびしくなるのでしまってある、という。

「老人」と「海」との交流――仕留めるまでの大魚との戦い、
シイラ、マグロ、トビウオ等の魚や鳥たち、そしてサメとの戦い、
海流や風など――孤独な戦いですけれど、何かしら読んでいると、
ジーンとくるものがあります。
そして幾度も少年がいたら、という繰り返す老人。

遅くなった長い漁の帰りに、村人のことを気遣う老人。

 《(略)村のだれにも心配をかけていなければいいが。
  もちろん、あの子だけは気を揉んでいるだろう。
  だが、おれの力はわかっているはずだ。年をくった漁師たちは、
  気を揉んでいるのが多いかもしれん。他にもたくさんいるかもな。
  おれはつくづくいい村に住んでいるんだ。》p.121

と。

釣り上げた大魚に対しても、サメに襲われたときには、
自分の身が襲われたように感じ、
サメを銛で突き、倒したときには、仇は取ってやった、と。

大魚にもかわいそうなことをした、
よっぽど、家で寝転んでいた方がよかったとも思いつつも
彼は思います。

《「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」(略)
 「叩きつぶされることはあっても、負けはせん」》p.109

漁の技のみならず、不屈の精神と、他を思う心情の深さが――
いってみれば、人生への<こだわり>の強さを持っている人、
ともいえそうです。
その辺が、この老人が愛されている理由なのではないでしょうか。

 

茂木健一郎さんの英語の著書
『生きがい ―世界が驚く日本人の幸せの秘訣―』
(邦訳版 恩蔵詢子訳 新潮文庫 令和4(2022)/05/01)

に、<こだわり>についてこう書かれています。

 《<こだわり>は本質的に私的なものであり、
  自分がやっていることへのプライドの表明である。
  要は、<こだわり>は、
  ものすごく小さな細部を尋常でなく気にする、
  その方法のことなのだ。》p.49

また、こうも書いています。

 《<こだわり>は本質的に、
  他人に合わせるという可能性を一切排除するくらいに、
  頑固で、自己中心的な得失であるように見える。》p.51

例として、こだわりのラーメンを出す店主をあげています。

 《しかし、実際には<こだわり>が目指すゴールは、
  つまるところコミュニケーションの成立である。》p.51

といいます。
店主で言えば、<こだわり>の先にある“報酬”は、客の笑顔だ、と。

さらに、

 《<こだわり>の重要な点の一つは、
  市場原理に基づいた常識的予測のはるか上を行くところに、
  自分自身の目標をおくことである。》p.52

と。

この老人の場合も、漁のやり方はもちろん、
人生の様々な場面での<こだわり>のあれこれが
この小説の中心に描かれているように思います。

 

私も老人となり、
色々と身体の不調や精神的に落ち込むこともあります。

しかし、この老人のように、
なにかしら「これは」という<こだわり>を、
心の強さを持って生きていきたい、と思いました。

 

 ●左利きの観点から

まあ、これ以下は余談になりますが――。

『老人と海』は、
私のライフワークと呼んでいる左利きライフ研究の方面で、
一度取り上げています。

『レフティやすおのお茶でっせ』2005.5.26
『老人と海』に見る右利きの人の左手観 「新生活」版

 

--
 八十四日も不漁続きの老人が
 ついに大きなカジキマグロを二昼夜かけて釣り上げたものの、
 帰る途中でサメに食われ、港に持ち帰ったのは骨だけだった、
 という短いけれどドラマティックな名作です。

 今回は作品についてどうこう言うつもりはありません。
 このなかで
  主人公が左手について色々と述べている部分
 が気になりました。その辺を紹介してみましょう。
 右利きの人の非利き手である左手に対する考え、
 左手観といったものが垣間見れそうです。
--

新潮文庫の福田恆存訳の旧訳版から――

 《その気になれば、どんなやつだってやっつけられる。
  だが漁には右手が大切だ、かれはそう思った。
  そして左手で二、三度勝負をこころみたことがある。
  しかし、かれの左手はいつも裏切者だった。
  自分の思いどおりには動かない。
  それからというもの、かれは左手を信用しなくなった。》

--
 …私は、若い頃、
 右手で書字や箸使いを幾度となくこころみたことがある。
 しかし、私の右手はいつも裏切者だった。
 自分の思い通りには動かない。それからというもの、
 私は右手のみならず自分のすべての能力を信用しなくなった。…
--

というように、
この作品のなかで老人が示す左手に対する考えを紹介しながら、
右手観と左手観の違いについて書いています。

 

*参考:
新潮文庫 福田恆存訳の旧訳版『老人と海』2003/5/1

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

本誌では、「新潮・角川・集英社<夏の文庫>フェア2022から(1) 新潮文庫『老人と海』ヘミングウェイ(高見浩訳)」と題して、全文紹介です。

 

本文にも書きましたが、私もいつしか老人の仲間入りしてしまいました。
いつの間にか、もう戻れないぐらいのところまで来ています。
棺桶の方が近い、というところでしょう。

でも、この老人のように、精一杯大魚に挑んでみたい、という気持ちは残っています。
結果はどうあれ、そのチャレンジ精神というのは、大事です。
そして、単にチャレンジするだけでなく、実際にそれなりの成果をあげる、ということはなんとか実現したいものです。

AmazonのKindleという電子書籍も、著者が友人への贈答用などに使える紙版が出せるようになったそうです。
左利きの本を出すというのは、自費出版ならいざ知らず、現実にはなかなか難しいものです。

Kindleなら自分の力で出せるので、チャレンジしてみたいと思ってはいたのですが、友人に贈れないなあ、と躊躇する部分がありました。
こういうサービスが始まれば、そういう友人にも贈れれるし、チャレンジのハードルも下がりそうです。

「老人力」という言葉があるようです。
『老人と海』の主人公のように、最後まで諦めることなく、死ぬまでに何か一つでも「これは」というものを残すべく、奮闘してみたいものです。

 ・・・

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2022.07.02

左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ(25)楽器における左利きの世界(5)フルート-週刊ヒッキイ第622号

『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』第622号 別冊編集後記

第622号(No.622) 2022/7/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(5)フルート演奏の右左」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇◆◇◆◇◆ 左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii ◆◇◆◇◆◇
【左利きを考えるレフティやすおの左組通信】メールマガジン

  右利きにも左利きにも優しい左右共存共生社会の実現をめざして
  左利きおよび利き手についていっしょに考えてゆきましょう!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第622号(No.622) 2022/7/2
「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界(5)フルート演奏の右左」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 「左手・左利き用楽器」による左利き楽器演奏について考える、
 の5回目です。

 前回に引き続き、フルートのお話を。

 今回は、思うようにお勉強が進んでいないので、
 以前見つけたサイトの記事から、フルート演奏の右左について。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25―
 楽器における左利きの世界 (5)
  ◆ フルート演奏の右左 ◆
   ~ 右と左が逆になるだけで…… ~  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ●フルートの左演奏

前回、オランダの画家、ユディト・レイステル
(Judith Jans Leyster:1609ー1660) 描くところの
絵画「フルートを吹く少年」を紹介しました。

昔のこのように人により、「左演奏」で吹く人もあった
という事実を紹介しました。

実は、現代においてもこの少年のように左演奏で吹く人ともいるのだ、
という事実を紹介しましょう。

 

20141119hidarikiki-flute

(画像:左利き用のフルートって右手すごい疲れそう...(<フルート 吹奏楽垢> 2014.11.19twitter より))

 

 ●その1「左利き用フルート」

「フルートと音楽の日々」というサイトの記事

Aihara 左利き用フルート:Yamano Flute World '14 [楽器]

「左利き用フルート」が紹介されています。

相原さんという人が作ってしまった、といいます。

201489hidarikikiflute

(画像:左利き用フルートの構え(『フルートと音楽の日々』「Aihara 左利き用フルート:Yamano Flute World '14」より))

 

201489flute-hidari-migi

(画像:左利き用(左)と右利き用(右)のフルート(『フルートと音楽の日々』「Aihara 左利き用フルート:Yamano Flute World '14」より))

普通のフルートと左利き用フルートの写真が見れます。

左利き用フルートは、

 《鏡に映したようです。/
  リッププレートも反対です。/
  実際に構えるとこんな感じです。》

 《左利きの方がフルートを習い始めるには良いかもしれませんね。》

 《例えば普通のフルートを構える先生と向き合って
  レッスンを受けると、まるで鏡に向かっているようで、
  考えようによってはやりやすいかもしれません。》

これは、大いにありではないでしょうか。

今でも右利きの親御さんが、左利きのお子さんに何かしら教える際に、
どうすればいいですか、という問いには、
私は「向き合って教えるのがよいでしょう」とお答えしてきました。

それと全く同じですね。

 

「リハビリ用にも良いかも」という意見もあったそうです。

 《フルートやヴァイオリンは非常に不自然で
  体に無理がある姿勢を取り続けます。/
  反対に構えることによって体のバランスを取る
  という意味だそうです。》

右投げのダルビッシュ投手が、
試合前の練習で左投げするようなものですね。

身体の左右のバランスを取るために、よいそうです。

整体の先生も、こういう助言をしているとききました。
右利きの人は、ふだん右手だけでたいていのことはできてしまうので、
意識して左手・左側を使うようにした方がいいそうです。

 

 《吹いてみましたが、いや吹こうとしてみましたが、
  まずいちいち考えないと持つ事さえできません。/
  なんとか構えて息を吹込みましたが、
  いつもの音とは全然違うただのボーッという音が出るのみで、
  キーを間違いなく押さえる事に気を取られて、
  正しい指使いをするどころではありません。》

単に左右が入れ替わっただけで思うように吹けないというのは、
「慣れ」という力のせいなのか、「利き手」の違いの問題なのか、
おもしろいと思います。

最後に、こうあります。

 《面白い試みですが、何本売れるかは想像するのも難しいですね。》

この辺が、左手・左利き用品を作る際の問題なのですね。

単純に、使ってくれる人(左利きの人)の絶対数が少ない上に、
そのうち、習慣に逆らってあえて左用を使ってみよう、
と試みてくれる人が何人いるのか、という問題です。

左利きの人の場合、一般的な製品が本来右利き用のものであっても
「右利き用」と認識できておらず、
「こういうものだ」という思い込みがあり、
改めて「左利き用」がありますよ、といわれても、
素直に「そうなんだ、使ってみよう!」とはならないものなのです。

左利きの人は、とにかく生まれたときから
右利き仕様の社会にどっぷりつかって生活してきたので、
右利き仕様が一般的になっている、その習慣に逆らう、常識を覆す、
慣れた道を外れるというのは、なかなかできないものです。

私のように一旦、違和感に目覚めてしまった人でもない限り、です。

 

 ●その2・特別注文の「左利き用フルート体験」

「ThinkingCatHouse」というサイトには、
2013年9月 2日 (月)
左利き用フルート体験

という記事がありました。

左利き用フルートの初体験の感想です。
特別注文のフルートだそうです。

 《ただ単に、左側に構えるだけなんですが。。。》

結構大変だったそうです。
みなさんフルートの先生だった、というのですが。

 《まず、唇と手で楽器がうまく安定しない!
  日頃と逆に指を使わないといけないため、もーぐちゃぐちゃです。》

 

 《フルート、初めての時にどんなに大変だったか、
  思い出した〜/
  生徒さんの気持ちがよくわかるようになったかも。

  当たり前にできてることを、ちょっと反対にしただけで、
  こんなにできないとは。/

  できない時のあせり、緊張感。/
  脳にとっては、とても刺激的な体験をすることができました。》

左右が逆になるだけで、「脳が混乱する」んですね。

この左利き用フルートを右利きの人たちに体験してもらうと、
左利きの苦労というものが少しは実感してもらえるのかもしれません。

とはいえ、こういう感想もありますので、
本当のところはどうなのか分かりませんけれど……。

 《(フルートやってない方には、
  どっちでも同じかもしれませんね。。。》)

しかし、ということはですね、
初心者なら右利き用も左利き用も関係ない、
ということかもしれませんね。

初心者は、自分の好きな方で演奏すればいい、ということです。

ただし、教えてくれる人の問題があるかもしれません。
先生はみな、
右用しか練習してこなかった人ばかりでしょうから。

 

 ●「両手を使うので……左右は関係ない」のウソ

左手・左利き用品について何か話そうとすると
よく言われることの一つに、

 「○○は両手を使うので、利き手の左右は関係ないのでは?」

という言葉があります。

この場合の「両手を使う」とされる動作の場合、
たいていは本当に左右差のない動作なのかどうか、
という点は無視されています。

たとえば、字を書く動作にしても、実際には「両手」を使っています。
字を書くために「筆記具を持つ手」がある一方、
反対の手では字を書こうとする「用紙を押さえている」ものです。

この場合も「両手を使っている」という表現は無効ではないでしょう。

 

「楽器は両手で演奏するものが多いので左右はあまり関係ないのでは?」
という意見があります。

これもよく考えればわかると思いますが、
実態を無視した言葉といえるのではないでしょうか。

 

一眼カメラの時にも書きましたが、
「両手を使う」といいましても、
それぞれの手には役割分担というものがあります。

一眼カメラの場合は、「シャッターを切る」のが右手、
「絞りやピントを合わせる」のが、左手。
写真はシャッターを切らないと写りません。
一番大事な動作は、(シャッターを切る)右手で行います。

パソコンのタイピングなどもそうです。
両手の作業量だけをみれは、
若干右手側が多い(エンターキーやカーソルキー等で)
だけかもしれません。
反面、AやE、便利なタブTabといった
比較的使用頻度の高そうなキーが左手側に割り振られています。

タイピングの回数のみでは左右差は少ないかもしれません。

しかし、それぞれのキーの重要度ではどうでしょうか。
エンターEnterキーやカーソルキー、バックスペースBackSpaceや
デリートDeleleteキーなど、重要度の高いものはみな右手側にあります。
さらにいえば、
両側にあるキー(シフトShiftキーなど)でも
その面積が左右で違っていたりします。
当然のように、
右利きの人にとって不自由な筈の左手側のキーのほうが大きいのです。

 

楽器に話を戻しましょう。

楽器でもギターやバイオリンを例に取れば、
よくおわかりになると思います。

通常のこれらの楽器は、
弦を弾いて音を出す方の手は右手。
弦を押さえて音の調整をするのが左手。

このシリーズの初回にも書きましたように、
楽器で一番大事なことは、まずは「音を出す」ことです。

これらの楽器では、右手で音を出します。

「両手を使う」といっても主体は「右手」です。
極言すれば、左手はなくても音は出せます。

それが何を意味するか、言葉は不要でしょう。

「両手を使っているから、利き手の左右は関係ない」は、
まったくのウソです。

 ・・・

今回は、簡単ですがこの辺で。

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 「★600号までの道のり」は、お休みです。

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本誌では、「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ ―その25― 楽器における左利きの世界(5)フルート演奏の右左」と題して、今回も全紹介です。

前回に引き続き、フルートの左利き用についてのネット情報の紹介です。

 ・・・

フルートに関しましては、結構左利き用の記事があり、それだけ「左利き用フルート」という楽器そのものがある、ということなんですね。
この事実は、全く知りませんでした。

探せば、結構いろんな楽器で左利き用があるのかもしれません。

 ・・・

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