渡瀬謙の新刊『トップ営業を生み出す最強の教え方』を読む
友人で左利き仲間の渡瀬謙さんの久しぶりの新刊が出ました。
『トップ営業を生み出す 最強の教え方』(渡瀬 謙・日本実業出版社)
著者からのメールによりますと、
《私のミッションは売れずに悩む営業マンを救うことですが、
そのためにはどうしたらいいのかを考えたときに、
今回のテーマにたどり着きました。
いわば営業を教える人の教育です。
これによって悩める部下と同時に、
育成で悩んでいる上司も救えるというものです。》
―とのこと。
営業社員を部下に持つリーダー向けの本――教科書です。
いかにも教科書らしく? A5版の一般の単行本(四六判)よりちょっと大きめの本で、しかも横書きです。
・・・
余談になりますが、【左利きライフ研究家】としましては、この左開きの横書き本は、やはり右利き仕様だなと感じました。
この文を書こうと、ペラペラとページをめくりながら、改めて書くべき内容についてチェックしようとしたのです。
ところが、右手に本を持って左手でページを繰ろうとしたら、後ろから前へ、になってしまうのです。
縦書きの本ならこれでよかったのですけれど、ね。
前から順番に見ていくつもりだったのに……。
思えば昨今の教科書は、皆こういうスタイルになっているのですよね。
国語以外はみんな横書き、と聞いています。
困ったもんです、これも新たな左利き差別!? かもしれません。
●営業の教え方を書きにふさわしい人物
閑話休題。
話を『トップ営業を生み出す 最強の教え方』に戻りましょう。
著者の渡瀬さんは、営業のコンサルをやっています。
売れなくて困っている営業社員向けのセミナーなどを専門にしています。
そして、売れる営業社員になるための営業の虎の巻ともいうべき著書を色々と書いてきました。
要するに、売れる営業の方法を教えるのが仕事な訳です。
ですから、営業の方法をよく知っているわけですね。
当然、この『トップ営業を生み出す 最強の教え方』を書くにふさわしい人物と言えます。
●本書の内容
では内容について少しだけ書いてみましょう。
・・・
人間には三種類あるといいます。
(上の人)初めからわかっている人
(中の人)教えられて気づく人
(下の人)教えられてもわからない人
『論語』やアリストテレス『ニコマコス倫理学』や
江國香織の小説『こうばしい日々』に登場します。
洋の東西を超えて、人間の評価として考えることは同じ、ということでしょう。
◎:上の人
論) 生まれながらにして知る人
ニ) 自ら悟る人
こ) はじめから知っている人
○:中の人
論) 学びて知るもの
ニ) 語る人に耳を傾け従う人
こ) 途中で気がつく人
×:下の人
論) 困しみて学ばざる民
ニ) 自ら悟ることもなく、
他人の言葉を聞いて心に刻むこともない人
こ) 最後までわからない人
◎ 初めから分かっている人
↓
○ 言われて気付く人
↓
× 最後まで学ばない人
まあ一応、これは倫理的な意味での評価ということになります。
・・・
次に、私は工業高校の出身で、今でも覚えていますが、最初に専門の授業で教えてもらったのは、「技術と技能の違い」でした。
「技術」とは、言葉で教えることができるもの
「技能」とは、言葉だけでは教えられないもので、身をもって獲得するもの
そういう意味の説明でした。
営業にも、技術と技能があるはずです。
私が思うに、売れない営業社員に下の三通りがあるのではないでしょうか。
(1)技術も技能もない場合―知識も能力もない
(2)技術は知っていても、技能が伴っていない場合―知識はあるが、能力はない
(3)技能はあるが、技術を知らない場合―能力はあるが、知識がない
先に挙げた上中下の人もそうですが、営業においても言えそうです。
いきなり売れる人(上の人)もいれば、教えられてだんだんと売れるようになる人(中の人)もいます。
あるいは、自分なりに努力をしても、人から教えられても、いつまでたっても全く売れない人(下の人)もいることでしょう。
そこにはどういう違いがあるのでしょう。
・・・
さてそこで、売れない人を売れる人に変えるには、この営業の技術と技能を教える、ということでしょうね。
本書では、5章に渡って説明しています。
第1章 営業をうまく教えられない5つの理由
第2章 部下を営業指導する前に押さえておくべき6つのポイント
第3章 営業を6つのステップで整理する
第4章 売れる営業マンを育成するステップ式営業マニュアルのつくり方
第5章 「ほめて認める」いまどきの部下とのコミュニケーション
そして最後に、教科書ですから、付録として「演習問題」を掲げています。
営業の知識を教え、営業の技術を知らしめ、営業の能力を上げ、技能を磨かせる方法を伝授しています。
●「誰もがトップになれるしくみをつくろう!」
本書で私の印象に残ったいちばんは、「第5章 9 目標を分散して成功体験のチャンスを増やそう」の中の
「誰もがトップになれるしくみをつくろう!」
という部分。
「売れない人にチャンスを与えるのが目的」
だというのです。
「部下が自信をつけるしくみを用意する」
ということです。
期間を設けたり指標を増やしたりすることで、目標を増やし、それぞれにおいてトップになれる機会という、成功体験の機会を増やせ、というのです。
子供を育てるときと同じで、小さな成功体験を積み重ねることで、自分に自信をつけさせ、何事にも積極的にチャレンジする精神を植え付ける、ということですね。
●著者・渡瀬謙の告知文
最後に、著者・渡瀬謙自身による告知文を紹介しましょう。
↓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『トップ営業を生み出す 最強の教え方』(渡瀬 謙・日本実業出版社)
__________________________________
売れない部下をなんとかして育てたい!
そんな思いを抱えている営業リーダー向けの本です。
売れている人が無意識に行っている「営業センス」を可視化することで、
誰でも売れる営業マンに育つ方向を解説。
・なぜ同じトークを教えても人によって結果にバラつきがでるのか?
・自分のやり方を惜しみなく伝えても、全く売れる気配がないのはなぜ?
・同行営業で自分のスタイルを見せるだけではダメなのか?
これらの悩みはすべて明快に解決できます。
ぜひ、「がんばれ」「気合いだ」などの精神論ではなく、
自信を持って論理的に営業を語れるリーダーになってください。
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*参照:
・PHP THE21 オンライン
売れる営業マンが、売れる営業マンを育てられない根本的な理由
2019年11月27日 公開
渡瀬謙(サイレントセールストレーナー)
※本稿は、渡瀬謙著『トップ営業を生み出す 最強の教え方』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
*(注)人間の三種類について
・『論語』【季氏 第十六】(9)
《孔子曰く、生まれながらにして之を知る者は、上なり。(以下略)》
『論語 増補版』加地伸行/全訳注 講談社学術文庫 2009/9/10
・『ニコマコス倫理学』「第一巻 第四章」
ヘシオドス『仕事と日々』からの引用
《あらゆることを自ら悟るような人は、もっともすぐれた人(以下略)》
『ニコマコス倫理学(上)』アリストテレス/著 渡辺邦夫・立花幸司/訳 光文社古典新訳文庫 2015/12/8
・『こうばしい日々』
黒人の教師が、アメリカに移住してきた日本人少年に話した、人種差別に関しての言葉
《「一つのことを、はじめから知っている人もいるし、(以下略)》
『こうばしい日々』江國香織/著 新潮文庫 1995/5/30
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