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2019.01.14

「日本左利き協会」サイト「左利きQ&A」Q1~Q3更新について

すでに、

『レフティやすおのお茶でっせ』記事:
2018.8.11
8月13日「国際左利きの日」を前に「日本左利き協会」プレサイトがオープン!

でもお知らせしましたように、8月1日にプレ・オープンしました「日本左利き協会」のサイトが、少しずつですが本格的に動いています。

「左利きQ&A」のページ

で、Q1~Q3まで。

また、左手での習字・毛筆の書き方(もちろんペン字にも応用できる)を伝授する「左利き筆法」や、左手書きには厄介な万年筆についてのアドバイス「左利き便利帳 001:左きき用万年筆」も紹介されました。

ここでは「左利きQ&A」のページを取り上げてみましょう。

 ・・・

Q 001:子どもが左利きになるのは両親の利き手が大いに関係あるのですか?

では、「両親の利き手の組み合わせにより子どもが左利きとなる出現率」が紹介されています。

--
【本文より】

北米における両親の利き手の組み合わせと子どもの右利きの出現頻度、および双生児における利き手の一致率(こちらに関しては今回は割愛)について、ポラックとコレンという二人の学者によってまとめられた過去の研究資料の集成(1981年)を紹介してみましょう。

「両親の利き手の組み合わせと子どもの右利きの出現頻度」

・右利きの父×右利きの母の場合・・・88パーセントの子どもが右利き
・右利きの父×左利きの母の場合・・・73パーセントの子どもが右利き
・左利きの父×右利きの母の場合・・・79パーセントの子どもが右利き
・左利きの父×左利きの母の場合・・・60パーセントの子どもが右利き

[参考文献]
『かくれた左利きと右脳』坂野登,青木書店,1982年

--


Q 002:自分自身や我が子や児童の利き手を知りたいのですが

では、以下の新旧三つの「利き手テスト」が紹介されています。


(A)八田武志氏と中塚善次郎氏が作成した
 [N.H.「利き手」テスト]
(B)チャップマン夫妻が作成した
 [チャップマン利き手テスト]
(C)ニコルス等が作成した
 [フランダース(フリンダース)利き手テスト]

[参考文献およびウェブサイト]
・『左ききでいこう!』フェリシモ左きき友の会&大路直哉編著、2000年


・http://www.flinders.edu.au/sabs/psychology-files//research/brainandcognition/FLANDERS%20Japanese.pdf

Q 003:左利きが活かせる職業はありますか

では、「左手が器用に使えると有利な職業のリスト」が紹介されています。

これは、20世紀初頭イギリスで誕生した「両手利き文化協会」の発起人ジョン・ジャクソン1905年の著書『両手利き』に紹介されていたものからリストアップされています。


「右利き優位の社会」のなかで両手利き――「右手」だけでなく「左手」が器用に使える――が有利かつ有益な職種(スポーツ・商業を含む)の一覧表です。驚くことなかれ。その数ざっと504職種。よくもまあこれだけ根気強く紹介したものです。
とのこと。

[参考文献]
・Jackson,J.Ambidexterity,London:Kegan Paul Trench,Trubner & Co.Ltd.,1905
・Paul, D. Living Left-handed, London:Bloomsbury Publishing Ltd.,1990
・『リーダーズ英和辞典』研究社

 ●更新内容について

さて、この一連の更新ですが、それぞれに左利きの人や左利きに関心をもつ人たちにとって「重要な事柄」「多くの方が興味を抱く疑問」でもあります。
この点は、非常によい「Q&A」だと言えるでしょう。

ただ、一つ注文をつけるとしますと、参考とする情報に古いものが多く見られ、その辺で「もうひとつ」な気もします。

左利きの性質は、基本的にはかわらない部分も多々あります。
左利きや利き手の研究が進んでいない部分もあるかもしれません。

それにしても、二十世紀初頭の著書や30年以上前の著書などが参考文献では、今一つ説得力に欠ける気味があります。

 ・・・

Q1の左利きの子の出現率で言いますと、正確な研究の時期は明らかになっていませんが、2002年に出版された本で「少しまえのこと」として紹介している、クリス・マクマナスとフィル・ブライデンによる関連文献に基づく研究があります。

クリス・マクマナス/著『非対称の起源』大貫昌子/訳(講談社ブルーバックス 2006年刊、原題"RIGHT HAND, LEFT HAND"(2002年刊)、イギリスの利き手研究の権威による20年の集大成という比較的新しい利き手、および左利きに関する研究書)


によりますと、

両親が二人とも右利きかまたは左利き、片方が右利きか左利きの親を持つ子、合計7万人余を調べた結果、
 

両親とも右利きで子供が左利きになる可能性は9.5%
 片方が右利きで片方が左利きの場合は19.5%
 両親とも左利きのときは26.1%

 親のひとりが左利きだと左利きの子を持つ可能性は、両親とも右利きの場合の2.05倍
 両親とも左利きの場合は、2.75倍


とあります。(pp.247-248)


大雑把に見れば、1981年の研究結果と比較しても、大きな差はありません。
マクマナスの著書の数値のほうが全般に低めになっている程度です。

この二つの例から、左利きの子の出現率というものの大体の傾向がつかめるのではないでしょうか。

一つの結果より二つの結果、この方がより信頼度が上がるでしょう。


さらに参考として、イギリスの左利き研究家(「イギリス左きき協会」の主宰者)マイケル・バーズリー『右きき世界と左きき人間』(邦訳1972/昭和47年、西山浅次郎訳 TBS出版会/発売・産学社、原著 Left-handed Man in a Right-handed World, 1970)


のフランスにおける左利き労働者の問題に関する調査(1962年、フランス労働医学会、委員長H・デゾワル教授、指揮リール大学クリスチャーン氏)によりますと、
 

両親が右利きの場合、左利きの子は平均して2.1%
 一人が右利き一人が左利きの場合、左利きの子は17.3%
 両親が左利きの場合、左利きの子は46%

これらの数字は他の報告と比較して非常に高い。》と紹介しています。(p.58)


1962年、1981年、2000年前後という、これら三つの結果を見ますと、大雑把に見て左利きの子の出現率は――

 両親とも右利き=10%程度
 片方が左利き=20%程度
 両方とも左利き=30-40%程度

という感じです。

調査によって数字は異なるものの一定の傾向はつかめます。


Q2の新旧利き手テストの紹介でも、最新版の「フランダース利き手テスト」を取り上げているのは非常によいと思います。

(私も以前、ブログで紹介しています。日本語版作製の大久保先生からコメントもいただきました。)
2014.12.29
2014年版利き手テスト:日本語版フランダースFLANDERS利き手テスト


一方で、よく知られている「エディンバラ利き手テスト(調査)」の紹介はありません。

(こちらも以前私のブログで紹介しています。)
2006.11.30
左利きアンケート第35回新版・利き手調査第2回―エディンバラ利き手調査


古くなっている(1971年)とはいえ、従来からよく活用されている、最もよく知られたものです。

それぞれのテストにおいて、「エディンバラ利き手テスト」との違いについて部分的な説明はありますが、利き手判断のための目安とする具体的な動作項目の時代的な変化を全面的に比較参照することができません。
これはもったいない気がします。

ついでに言えば、利き手以外の要素――「利き眼」「利き足」等も示して欲しいものです。

「利き手」とこれらには、相関関係があると言われています。
一方で、意外に一致していない人も多いものです。
「右手利きだが左目利き」、もしくは「左足利き」といった「利き側」が混在している人も多いのです。

「クロスドミナンス」(交差利き)という言葉も結構知られてきています。


Q3の左利きが活かせる職業に関しても、先に挙げた『右きき世界と左利き人間』の中で、色々と書かれています。

フランス労働医学会の調査もそうですし、「イギリス左きき協会」への手紙の紹介でも、様々な職種の話が出ています。
(歯科医では治療用のいすの問題などあるが、一般労働者の場合と同じで両手が使える人が多いので有利だとか。)

ここでも、傑出しているとはいえ一つの例よりはできるだけ多くの例を示すほうが、閲覧者にもアピールできるでしょう。

 ・・・

せっかくの更新にケチをつけていると思われるのは心外です。

あくまでも長年左利きライフの問題を考えてきたものとして、老婆心からの助言であり、提案です。

もう一歩調査を進めて付加情報を入れていただければ、よりよいものになるのではないか、と思います。

サイトの、「日本左利き協会」の信頼度を増すためにも、今一つの踏ん張りを期待しています。

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