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2017.01.30

なりたい自分になる『「内向型の自分を変えたい」と思ったら読む本』渡瀬謙

左利き仲間で営業関係のビジネス書ライターでもある、営業コンサルタントの友人の新著が届きました。

 

今回は、「内向型専門コンサルタント」の肩書をつけての登場です。

 

渡瀬謙
『仕事・人間関係・人生が好転する!
「内向型の自分を変えたい」と思ったら読む本』
大和出版

 

 

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(画像:渡瀬謙氏の“内向型”シリーズと参考にした本)

 

以前の彼の著作の紹介文で、これからの著作に注目したい、と書きました。

 

 

--
 ●「自分への質問」
そして、最後の「自分への質問」。
これを読み、私はこの本が渡瀬謙氏の著述家としてのターニングポイントになるかもしれない、と感じました。
今後の氏の著作に注目したいと思います。
使命感に目覚めた人間として、今後の彼の活躍が楽しみです。
期待しています。
--

 

2016.7.5
内向型トップセールスマン渡瀬謙の新刊『―「質問」で会話を盛り上げる方法』

 

 

今回の新刊が、私の期待に沿うものか、どういうものになっているのか……。

 

 

まずは、著者ご自身の宣伝文を見ておきましょう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『仕事・人間関係・人生が好転する!
「内向型の自分を変えたい」と思ったら読む本』 (渡瀬 謙・大和出版)
_________________________________
極度の内気・口下手・あがり症・・・・
そんな内向型の性格で悩んでいる人のための本です。
著者である私も超内向型の自分に、長年悩んできましたが、
いまではスッキリと克服しました。
仕事も人間関係もストレスがなくなり、
精神的な自由も手に入れることができました。
しかも意外なくらいシンプルな方法で!
おかげで私は人生が180度変わりました。
かつての私と同じような悩みを抱えている人に、
ぜひ読んでほしいと思っています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

一人の人間の自己形成の過程は、さまざまです。

 

ここに描かれているものは、あくまでも彼個人のものではありますが、そこには誰にでも共通する要素もまた必ず見つかることでしょう。

 

 

次に、目次を紹介しましょう―

 

目次
序章 なぜ、超内向型の私がストレスだらけの日々から解放されたのか?―ステップを踏めば、心はこんなにラクになる
第1章 そもそも内向型人間特有の悩みってなんだろう?―ステップ1 「本当の自分」を知る
第2章 内向型特有の性格は単なる「人との違い」である―ステップ2 「いまの自分」を受け入れる
第3章 こうすればストレスのない人づきあいが実現できる―ステップ3 人に伝える
第4章 自分の立ち位置が決まれば何があってもブレなくなる―ステップ4 足場を固める
第5章 仕事はストレスを減らすことを重視すればいい―ステップ5 自分の活かし方を見つける
第6章 これで、あなたはもっとラクに生きられる―ステップ6 自分を認める
終章 さあ、あなたも一歩だけ前に踏み出そう―内向型人間の未来の正しい歩き方

 

 

6段階のステップを踏んで、内向型の自分の悩みを解消しましょう、という内容です。

 

ステップ1 「本当の自分」を知る
ステップ2 「いまの自分」を受け入れる
ステップ3 人に伝える
ステップ4 足場を固める
ステップ5 自分の活かし方を見つける
ステップ6 自分を認める

 

また、章末にコラムとして、秘密の隠れ家を持とう、内向型の雑談のコツ、人に頼るコミュニケーション術、ストレス前にリフレッシュしよう、営業職は内向型向き、内向型でも緊張しない話し方といった、ちょっとした生き方ヒント集があります。

 

 ・・・

 

ここでぶっちゃけてしまいますと、実は、私は同じ内向型の友人として――著者以上の超内向型の先輩として、この著作に関して助言を求められていたのでした。
下書きのメモ書きのようなものを渡され、読んで感想をください、と。

 

ですから、私にとってはかなり既視感のある文章を読んだわけです。

 

そういう点から(本になった段階で)まず一言言えば、非常に整理され、シンプルかつ簡潔にその解消のためのステップが説明されています。

 

文章は、本書にも経歴が書かれているように、コピーライター出身らしく読みやすい簡潔な文章で、普段本を読み慣れていない方でも無理なく親しめます。
安心して手に取ってもらえる本に仕上がっていると言えるでしょう。

 

文字通り「内向型の自分を変えたい」と思った人は読んでみてください。
読めば、何か一つぐらいは得られる、と思いますよ、読む人次第ですけれど、ね。

 

後は実践あるのみです。

 

自己啓発系本で大事なことは、実践です。
やるかやらないか。
読むだけなら誰でも出来ますが、実践は違います。
気を入れないとできません。
できた人だけが、得をするのです。

 

 ・・・

 

今回は、内容に沿った紹介ではなく、私自身が本書から思ったこと・考えたことを中心に書いてゆきます。

 

 

 ●性格には変えられる部分と変えられない部分がある

 

もう50年以上前の本ですが、相場均先生の『性格―素質とのたたかい』(中公新書14番!)という本が今も手元にあります。
(私が買った時点で、11年の間に39版ほど出ています。)

 

 

私が、性格に悩んでいた20歳ころに読んだ本で、その後の自分を作った本の一つです。

 

この本のお陰で性格の悩みを克服できたとは言いませんけれど、手がかりになった本の一つではあります。
(性格は素質なのか環境なのか、あるいは人間の価値について書かれています。
 科学的な部分は、50年たっているので、今とは異なる部分もあるでしょう。
 しかし、哲学的な部分というのでしょうか、人間心理の本質をどうとらえるか、という点は50年前の本でも問題ないでしょう。)

 

この本によりますと、「性格には変わる部分と変わらない部分がある」と言います。

 

心と身体は、一体のものです。
ですから、体質的なものは変わりにくい。

 

体質同様、内因性の素質である気質は、まず変えられないと考えた方がいい。

 

しかし、環境に反応する部分は変わります。

 

そして、人には意志があります。
この部分は自由に変えることができるのです。

 

 

変わらない部分に着目すれば、変えられないことになります。
変わる部分に着目すれば、変えられることになります。

 

たとえば、
テレビのチャンネルは与えられたものしか選べません。
しかし、与えられたものの中からは選ぶことができます。

 

それでは私たちに、選ぶ権利はあるのか、ないのか。
どちらとも言えるのです。

 

 

スーザン・ケイン『内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える』(『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』の文庫版)古草秀子訳 講談社+α文庫

 

 

にはこうあります。

性格を変化させることはできるが、それにはそれには限度があるのだ。年月を経ても、生まれ持った気質は私たちに影響をもたらす。性格のかなりの部分は、遺伝や脳や神経系によって運命づけられている。とはいえ、[...]私たちには自由意志があり、それを使って性格を形づくれるのだ。》「5章 気質を超えて」p.185

(ただし、自由意志をもってしても、遺伝子の限界を超えることはできない、と続けています。)

 

意志については、
ケリー・マクゴニカル『スタンフォードの自分を変える教室』(神崎朗子訳 大和書房/だいわ文庫)

 

 

をお読みになることをおススメします。
(「意志力の科学」について書かれた本です。

意志力とはつまり、この「やる力」「やらない力」「望む力」という3つの力を駆使して目標を達成する(そしてトラブルを回避する)力のことです。[...]この3つの力[...]こそが、人間とは何かを定義するものとさえ言えるかもしれません。》「第1章 やる力、やらない力、望む力」

 

 

では、性格を変えられるとすれば、どの部分でしょうか。
どうすればいいのでしょうか。

 

 

 ●人生は泥沼を渡るようなもの

 

ホントは本書の著者・渡瀬さんも、もっと泥沼をのたうちまわるような経験を経て、現在の域に到達したのです。
それは、下書きのなかに埋もれたままになっています。

 

そんな自虐的とも言える“泥沼もがきの日々”を読まされても意味はない、という著者(もしくは編集者氏)の判断からでしょう。

 

私個人としては、そういう泥沼にこそ人生の真実がある、と思っているのですけれど……。

 

 

人の生の営みというものは、所詮そういうものでしかない、と考えています。

 

どんな聖人君子に見える人でも、本当のところ、一枚皮を剥げば、醜悪な血みどろの肉塊だったりするのです。
正体は、目をそむけたくなるような見苦しいものなのです。

 

でも、人によると、それを美しいと感じる人もいるのです。

 

たとえばそれは、食肉のように見る人の立場です。
(人肉嗜食という意味ではありませんよ。
 単純に肉の一種として見る見方です。)
焼き肉の材料として見る時、肉好きの人は、これはいい肉だなあ、と思うわけですよね。

 

 

 ●「ものの捉え方・考え方」はいつでも変えられる

 

何事も「ものの見方次第だ」といういい方ができる、ということです。

 

ものの見方・考え方、受け止め方で変わる、という事実は、人類の長い歴史のなかで人生の達人たちが語り続けてきたことでもあります。
フランスの哲学者アランの有名な『幸福論』にしてもそうです。

 

(アラン『幸福論』白井健三郎訳 集英社文庫)

 

 

本書の結論も、心の持ち方、もの見方考え方を改めよう、ということです。

 

そして、人生に立ち向かうときも、実際その通りといえるのです。
そういう考え方でやり通すことも可能なのです。

 

「そういう理屈はおためごかしだ/ただしあわせな気分になれるだけだ/実態は変わらない」という人もいます。

 

本当のところは、私にも分かりません。
でも、そういうやり方でしあわせになれる人がいるのも、事実です。

 

 

私の思うのは、所詮「人は自分の持っているもので勝負するしかない」ということです。
そうすると、自分の持ち物を、「弱み」としてマイナスの面で捉えるか、「強み」としてプラスに評価するか、で変わって来ることになります。

 

たとえば、長身の人がいたとします。
本人は、事あるごとに鴨居で頭を打つので、「もう嫌だ」と思っているかもしれません。
でも他人は、「あの人はスラリとしてカッコイイ人だ、自分もああなりたい」とあこがれているかもしれません。

 

どちらも真実でしょう。
それなら、どちらの受け止め方が心地よいでしょうか。

 

 

本書で、著者が言わんとすることも、そういうものです。
「な~んだ、それならもういいや」と思う人もいるでしょう。

 

でも、そこに気付かない、あるいは、そう思いつつもその気になれない人もいるのです。

 

そういう人に、ではどういうふうに納得してもらうか、というと、本書の展開になります。

 

 

 ●汝、自身を知れ

 

まずは、世間的な見方や刷り込まれた思い込みを捨てる、という過程です。

 

私は、左利きの生き方や生活そのもの、人生について考える〈左利きライフ研究家〉を自称していますが、より良き左利きライフに置いても大切なことは、この左利きに対する世間の見方や刷り込まれた思い込みを捨てることだ、と考えています。
これが第一歩になります。

 

そこで思うのは、世の中の評価というものは、大体において間違っているということです。

 

そこまで言うと言い過ぎかもしれませんが、世間とつきあう時には、それぐらいの懐疑心を持って挑むほうがよい、という意味です。

 

 

自分自身に対するマイナスの評価を帯びた、世間の間違った見方や自身の思い込みを持ったまま生きている人が、内向型の人(左利きの人も同じでしょう)には多いのではないでしょうか。

 

そういう人は、自分自身が自分の敵になっているのです。

 

前述のアランは『幸福論』のなかでこう書いています。

人間は自分以外にはほとんど敵はない。人間は、自分のまちがった判断や、杞憂や、絶望や、自分にさし向ける悲観的なことばなどによって、自分が自分自身に対してつねに最大の敵なのである。》「67 なんじ自身を知れ」

 

それらを一旦振り捨てて、ゼロの立場から、自分自身を見つめ直す必要がある、ということです。

 

まさにソクラテスではありませんが、「汝、自身を知れ」ですね。

 

まずは自分を知る。
自分を正しく評価する、という意味です。

 

こうして、もう一度、自分自身を見つめ直せば、その上で見えてくるものがあるはずで、それは、多分プラスのものでしょう。
それを自分のよりどころとして、生き方を改めるのです。

 

(仏教的にいえば、“自灯明”というところかもしれません。
 ――《自分自身を燈明とし、自分自身をよりどころとするがよい。他のものをたよってはいけない。》渡辺照宏訳)

 

 渡辺照宏『涅槃への道 仏陀の入滅』ちくま学芸文庫

 

 

 

道に迷ったときは、まずは現在地がどこかを知る必要があります。
その上で、地図を見るなり、人に尋ねるなりして、道を知るわけです。

 

今の自分を知るというのは、現在地を知るということです。

 

 

 ●ゴールを設定する

 

ここでもう一つの根本的な問題があります。
それは、行き先(ゴール)を知っていることです。

 

道に迷わないためには、今どこにいるかを知ることも大事ですが、どこへ向かうべきかを知っていることも必要条件です。

 

どこへ行くべきかもわからないでは、現在地もくそもありませんから。

 

当面のゴールを設定する。

 

 

これについても、本書では語っています。

 

「スペシャリスト(専門家)になる」》(第5章 p.189)、というのもそれです。
自分を生かす方法として、なんらかの形で専門家になれれば、取り替え可能な使い捨ての単純な歯車ではなくなります。

 

さらに、著者のように独立できれば、なに気兼ねなく、自分のスタイルで生活できるようになります。

 

 

そんなこんなを取り上げているのが、本書だろうと思います。

 

 

 ●内向型について

 

内向型・外向型というのは、一つの分類にすぎません。

 

外向型の人たちの国のようにいわれているアメリカでも、実際には3分の1から2分の1は内向型だ、といいます。
スーザン・ケイン『内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える』(『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』の文庫版)古草秀子訳 講談社+α文庫、「はじめに」p.7
 ローリー・ヘルゴー『内向的な人こそ強い人』向井和美訳 新潮社、「序章」p.12《内向的な内向的な人の割合はサンプル数の50.7%》)

 

 

 

野球で言えば、内野手と外野手というのと同じです。

 

ポジションが違うだけで、同じ野手であり、チームメイトです。
内野手だけでも試合はできないし、外野手だけでもできません。
お互いがお互いの長所を発揮して、それぞれのポジションを守りきって初めて、いい試合ができます。

 

内向型も外向型も、結局は相対的なものです。
野球の守備位置で言えば、変則的なシフトもありますよね。

 

内向型でも、状況によっては、外向的に振る舞うときもあるでしょう。

 

 

ローリー・ヘルゴー『内向的な人こそ強い人』には、日本は、内向型の人に優しい国と書かれています。
(「第二部 第六章 北欧と日本―内向的な人にやさしい社会」)
そんな日本でも、実は、内向型に対する風当たりが強いというのは、アメリカ的なビジネスの考え方が浸透しているからでしょうか。

 

上記の本の訳者・向井和美さんは、「訳者あとがき」にこう書いています。

アメリカは、自分を主張することを求められるために内向的な人にとって苦しいのに対して、日本は和を乱さず行動することを求められるために内向的な人にとって苦しい。》p.345

さらに、「個性的であれ」と言いつつ、周囲と違うことをしようとすると「空気を読め」という、日本は二重の縛りがある、と。

 

 

 ●内向型の人向けの本

 

先に挙げたスーザン・ケインさんの本が、2012年にアメリカでベストセラーになってから、日本でも内向型の人に対する見方が少し変化してきたのでしょうか。
内向型を取り上げた本が少しずつ増えています。

 

本書の著者・渡瀬さんにしても、内向型の著書が売れているそうです。

 

最初の本『内向型営業マンの売り方にはコツがある』(大和出版)が出たのが2009年でした。

 

 

以後、大和出版からシリーズのように出たものが

 

 『内向型人間の人づきあいにはコツがある』
 『“内向型”のための雑談術』
 『内向型人間のリーダーシップにはコツがある』

 

があり、
大和出版以外の本で、それらしい表題のついたものには――

 

 『営業は口ベタ・あがり症だからうまくいく』
 『「あがり症営業マン」がラクに売るための6つの習慣』

 

があります。

 

大和出版の内向型の本が、結構重版が掛かっているそうです。

 

 

 ●ゆるい思考と選択肢を増やす

 

(どうも話が迷走していますね。)

 

内向型の人は、どうも自己評価が低いようです。
それは評価の基準が厳しいからです。

 

渡瀬さんは、本書のなかで「ゆるい思考」でいいと言います。(第4章 p.136)
なにごとに対しても、ゆるくていい、と。

 

それと、逃げ場所を用意する、というと言葉が悪いですが、要は「選択肢を複数用意しておく」ということです。
(《別の選択肢をもっている――。》第5章 p.193 と表現しています。)

 

 

例えば、電通の若い社員さんが過労から自殺した事件でも、人に相談するとかの心の逃げ場所があったり、単純に仕事を切る・会社を辞める等の選択肢があったり、そういう別の道を考える余裕を持っていたら、違った結果になっていたかもしれません。
(もちろん、そんなふうに人を追い込む状況を作る側が悪いのですが。)

 

人間の脳は、基本的に前向きにできているそうです。
ポジティヴな処理をしている、といいます。
串崎真志『心は前を向いている』岩波ジュニア新書)

 

 

心は元々前向きにできている。
しかし、ちょっとした疲労やストレスなどによっても、それがたちまち後ろ向きになってしまうことがある。

 

この女性も、疲労やストレスから解放されるときがあれば、どうなっていたのでしょうか。

 

 

私たちは無自覚に、その場のシステムに自分を組み込んでしまうときがあります。
冷静に判断すれば、異常な環境であっても、それが当たり前のことと思い込んでしまうのです。

 

しかし、必ずしもそれが絶対のものではないはずなのです。

 

前述のケリー・マクゴニカル『スタンフォードの自分を変える教室』にこうあります。

ストレス状態になると、人は目先の短絡的な目標と結果しか目に入らなくなってしまいますが、自制心が発揮されれば、大局的に物事を考えることができます。》第2章 p.96

だからストレスとうまく付き合う方法を学ぶことが大事だ、と書いています。

 

より良き自分でいられるように、自分の環境は、自分で作ってゆくべきなのです。

 

 

 ●楽しく、長く続けられる「理想の仕事」

 

泥沼のような文章もいよいよ終りにしましょう。

 

最後にまとめとして、本書のなかで一番私の心に響いた、渡瀬流の人生訓を紹介しておきましょう。

 

それは、ストレスなく、長く続けられることが、あなたの「理想の仕事」だ、というものです。

人間の才能や特技などというものは、あらかじめ備わっている部分はほんの少しだけで、その後にストレスなく(もっと言うと楽しく)続けていくことで発揮されるものです。[...]私が考える「理想の仕事」というのは、何年も何十年もずっと続けられるものです。》第5章 p.181

ここでいう仕事とは、職業のことを指していますが、職業以外のことも含んでいるように思います。
それは、人の生を充実させるための何か――言ってみれば、人生を賭けるライフワークといったものです。

 

とはいえ、『孟子』「恒産なければ、恒心なし」 (「梁恵王章句上/七」「滕文公章句上/四十九」=一定の生業や収入のない人は常に変わらぬ道徳心を持つことができない。生活が安定していないと精神も安定しない。『広辞苑』第六版より)
と言いますように、あるいは「貧すれば鈍する」とか、「衣食足りて礼節を知る」とか言いますように、生活の資を得る職業の確立は、生きていく上で第一の重要事項です。
職業という裏付けがあって初めて、さらなる何かができるのです。

 

 

 ●不満、または宿題

 

一つだけ不満を書いておきます。
私からの次作への宿題とも言えましょうか。

 

本書に書かれなかったことについて、です。

 

本書のテーマからは外れる部分なので、多分書かれなかったのでしょう。
でも、これはぜひとも尋ねたいポイントです!

 

 

疑問があります。

 

彼の経歴を見ますと、《「明治大学」卒 [...]「リクルート」に転職》(第5章 p.185)とあります。
誰でも知っているような有名大学や有名企業の名が出てきます。

 

高校時代、病気で入院療養していたのに、どうして明治大学に入学できたの?
営業マンとしてこれといった実績も残せなかったのに、どうしてリクルートに入れたの?

 

 

聞くところによりますと、実は彼は「やればできる子」だった、とか。

 

仮にそうだとしても、どうしてやる気になったのか? という疑問が次に湧いてきます。

 

「本来、人の脳は前向きにできている、疲労やストレスがなければ自然と前向きになれる」ということで説明は可能です。
でも、ホントは、そういう切り替えの方法について知りたいものですよね。

 

 

まったく書かれていないわけではありません。

 

それぞれの区切りの段階で、彼は未来の方を見ています。

 

先に紹介しました『心は前を向いている』のなかで、

脳が未来を想像すると、自然にポジティブ・バイアスになることがわかってきました。》第4章 p.85

とあります。

 

未来をしっかり見つめるタイプの人なので、ポイントになると、できる子に変身するんですね。
本書では、分岐点でどういうふうに考え、どう動いたかをさほど具体的に記していないので、分かりにくいのですけれど。

 

読者としては、この辺をきちんと説明してもらいたい、と思うのです。

 

どうしたら、後ろ向きから前向きにスパッと切り替えられるのか?
この方法がわかれば、多くの人にとって福音となること請け合いです。

 

 

 ●がんばりすぎず、自然な自分に任せる―パッションとゆるさ

 

内向型ながら、成功人生とは言えないけれど、どうにかこうにか60年以上生き延びてきた、私から内向型の人にアドバイスがあるとすれば――

 

人間の心というのは、意志と情熱だと思っています。

 

私は「パッション(passion)」という言葉が好きです。
「熱情」「情熱」などと訳されます。

 

熱さは、外向型の人の特徴という印象を持つ人が多いかもしれません。
内向型には熱さは似合わず、冷めた印象を持つ人もいるでしょう。

 

しかし、静けさと冷たさは違います。

 

静かな、秘めた熱さというものもあります。
あるいは、特定のことに対して示す熱さ。

 

 

で、人生は、意志と情熱があれば、なんとかなります。

 

それと、ゆるさ

 

「ねばならない(~でなければならない)」的な考えにこだわらない、心のゆるさが大事なのではないか、という気がします。

 

心も身体と同じで負荷が過ぎれば、疲れます。

 

 

「素直に自分らしく」を心掛ければ、内向型とかは関係ないと思います。
自分を肯定できるようになれば、自然と道は開けるのです。

 

渡瀬さんのように、「なりたい自分」になれる(可能性がある)のです。

 

 

左利き仲間で友人・渡瀬謙の著書についての記事 (◆印:ビジネス書/□印:口ベタ・あがり症の“内向型”営業マンのための営業本
○『左利きの人々』渡瀬けん=名義)
◆□2016.7.5 内向型トップセールスマン渡瀬謙の新刊『―「質問」で会話を盛り上げる方法』 ◆□2016.3.11 相手の話を引き出す渡瀬謙〈無敵〉雑談術の本『超一流の 相手にしゃべらせる雑談術』『負けない雑談力』 ◆2014.12.7 買い手の気持ちに寄り添う商談術:渡瀬謙『相手の「買う!」を自然に引き出す4ステップ商談術』を読む ◆2014.3.16 なんための会話か?~渡瀬謙『朝5分! 読むだけで「会話力」がグッと上がる本』 ◆□2013.10.7 臆病は慎重!… 渡瀬謙『内向型人間のリーダーシップにはコツがある』 ○2013.8.19 雑学フェアにて~渡瀬けん著『左利きの人々』:<国際左利きの日>情報3 ◆2013.3.7 渡瀬謙『元リクルートNo.1の 日本で一番"効率"のよい営業法 このムダをなくすだけで、グングン売上が伸びる!』 ◆2012.5.23 小さな努力で大きな効果:渡瀬謙『あなたの評価をガラッと変える たった3秒の声がけ習慣』 ◆□2012.2.26 克服ではなく付き合う姿勢で:渡瀬謙『「あがり症営業マン」がラクに売るための6つの習慣』 ○2011.12.31 雑学文庫フェアで『左利きの人々』が… ◆2011.7.13 渡瀬謙の新刊『相手が思わず本音をしゃべりだす「3つの質問」』届く ◆2011.6.10 流れ星に願い事…渡瀬謙『たった5秒のあいさつでお客様をザクザク集める法』 ◆【渡瀬謙/監修『毎日役立つ!もう悩まない!!即効ビジネスマナー』日本文芸社2011.1】
・2011.5.19 週刊ヒッキイhikkii260左利き教本について考える(2)おさらい ◆2011.3.4 新社会人奮闘記ラノベ 渡瀬謙『新入社員ヒロと謎の育成メールの12ヵ月』 ◆□2010.6.28 実践で学ぶ本、渡瀬謙『営業は口ベタ・あがり症だからうまくいく』 ◆□2010.6.18 渡瀬謙の新著『“内向型”のための雑談術』届く ◆□【『内向型人間の人づきあいにはコツがある』大和出版】
・2009.12.12 今週の週刊ヒッキイ―第201号「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ<特別編>」  ★左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii第201号(No.201) 2009/12/12「左利きのお子さんをお持ちの親御さんへ<特別編>」  <特別編>原点に戻って―最初につまずかないこと または、左利き人間の生き方にはコツがある
◆□2009.3.4 お知らせ:友人渡瀬謙の新著「内向型営業マンの売り方にはコツがある」 ○2008.12.29 左利き本の新刊『左利きの人々』渡瀬けん著

 

 

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