『ミステリマガジン』2016年7月号創刊60周年記念号を買う
まずは、60周年おめでとうございます。
(画像:2014.6<創刊700号記念特大号>と2016.7<創刊60周年記念号>)
ここまでの頑張りは特筆ものです。
『SFマガジン』と並んで、孤高の雑誌と言ってもよいでしょう。
途中いくつかのライバル誌が登場しましたが、そのすべてをことごとく退けてきたのはひとえに、制作者(作家、訳者、コラムニスト、書評家、イラストレーター、編集者諸氏並びに経営陣、営業担当等社員等)及び印刷製本等製作者、広告主の皆様方一同、その情熱の賜物でしょう。
もちろん、私たち愛読者の力もありますが。
●海外/翻訳ものはオワコンか?
1970年9月号〈E・S・ガードナー追悼特大号〉以来のHMMオールドファンである私の中ではオワコン化しつつある本誌ではありますが、“最後”の〈○十周年/○百号記念号〉だろうと思い、購入に踏み切りました。
数年前のリニューアルで、『SFマガジン』同様、メディア・ミックスの国内海外を含めた情報と文芸(作品)の、ミステリ専門誌となりました。
さらに隔月刊化されてからは、大きく国内作品に偏重したミステリ誌となりました。
海外情報こそ今まで同様といった感じですが、作品に関しては、まったくと言っていいほど掲載されなくなりました。
一度など、一作のみ、それもページ数にして本文2ページのみ、という号もありました。
今でもアマゾンでは《この雑誌について》の欄に《海外ミステリの高級専門誌》と書かれています。
こんな看板はもうとうの昔に下ろされています、よね。
ここまで説明すれば、海外/翻訳もの好きの私がオワコン扱いする理由もおわかりでしょう。
様々な事情があるのでしょう。
版権の問題とか、読者の傾向とか。
そもそも雑誌や書籍の売り上げも落ちている。
特に紙のものが。
本屋さんでも海外の翻訳もののスペースが極端に減っています。
数年前の何分の一かに激減です。
そういう状況で、HMMも海外ものだけでは誰も読んで/買ってくれない、ということなんでしょう。
これは単に本誌に関する話だけではなく、早川書房の翻訳書自体がそうなんでしょう。
雑誌で赤が出ても、書籍が売れれば、雑誌を出す意義もあるというものです。
しかし、掩護射撃するはずの雑誌が足を引っ張る中で? 本体もダメとなりますと……。
かつて〈海外文学の早川〉という看板を挙げていました。
今のように紙の本の売れ行き自体が落ちている中で、特に海外/翻訳ものが読まれない/売れない時代では、どうにもならないのでしょう。
仕方がないとはいえ、残念至極です。
私なりに応援しているのですけれど、ネ。
●代替わりした老舗洋食店
で、もう一度書きます。
最近の本誌は、まったく困ったものです。
老舗の洋食店として通い続けていたのに、代替わりしたら和食中心の店に代わっていたようなものです。
メニューを見ると、一応洋食らしい品目も掲げてありますが、前菜やデザート類で、肝心のメインディシュは和食ばかり。
これでは詐欺だ、とは言いませんが、先代や先々代が見たらどう思うだろうと気になります。
第一、昔の馴染み客はどうすればいいんでしょうか。
年寄のぼやきだと一蹴されるのでしょうか。
昔も、小林信彦さんの『大統領の密使』や矢作俊彦さんの『リンゴゥ・キッドの休日』等がありました。
和食がダメというわけではありません。
一つは配分であり、もう一つはお店としての“らしさ”です。
後者は「伝統」と言い替えることもできるでしょう。
そこを勘違いしては、新規の客は取れても馴染み客は去ってゆきます。
行く末短い客だから切ってもいいと考えるのか、逆に最期を楽しく全うしてもらおうと感謝の気持ちを抱くのかでしょう。
・・・
内容については、後篇で――。
『ミステリマガジン』2016年7月号創刊60周年記念号
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