左利きのノーベル文学賞独作家ギュンター・グラス氏死去
「ブリキの太鼓」(1959)等で有名なノーベル文学賞受賞のドイツの代表的作家で、ナチス・ドイツの親衛隊(SS)に所属していたことでも知られる、ギュンター・グラス氏が13日、北部リューベックの病院で死去したという。87歳。
ご冥福をお祈りいたします。
*参照:
ノーベル文学賞受賞の独作家、ギュンター・グラス氏死去 写真あり
グラス氏は左利きでも知られ、〈自発的に不器用な右手を訓練する会で奮闘する左利きの若者たち〉の話「左ぎっちょクラブ」という短編も書いています。
*「左ぎっちょクラブ」収録の短編集:
ギュンター・グラス著『僕の緑の芝生』飯吉光夫訳 小沢書店(1993/10)
一部を引用しましょう。
《僕らの綱領には、右手が左手と同じになるまで、決して怠けぬこと、と書いてある。/この箇条がどれほど力強く決意にみちていようとも、こんな申し合わせはまったくのナンセンスである。こんなことできようはずがない。僕たちのクラブの最右翼はもうしばらくここから、こんな条件は削りとって、代わりに、われわれはわれわれの左手を誇りに思う、われわれは生まれつきの左ぎっちょを恥と思わない、とでも書き直すべきであると主張してきた。》p.45-46
《左手使いとしての僕たちの屈辱感がどれほど深い根を持つものかを十分に知っていた。家庭や学校やそして後になって軍隊での時期、僕らはいつも、この小さいかたよりを―かたよりというのは、他の広く分布したまともさに対してであるが―じっと我慢してこらえて来なければならなかった。それは子ども時代の握手に始まる。》p.46
《《ダメよ、そっちのお手々でなくて、こっちのお手々よ。ちゃんとした方のをね! よい子のお手々の方をね、おりこうさんの、なんでも器用にやる、まちがわない、正しい方のお手々をね!》》p.46
《僕たちのクラブの左利きの娘たちはあるとき、夜なべの仕事をしながら、僕たちの緑色のクラブの旗にこう刺繍したのだった―心臓は左側で搏つ。》p.52
1958年に発表された小説ということですが、ドイツでも昔は左利きが忌避され、右手使いに変えるべきとされていたことが分かります。
同じこの短編集に収録されている「手巻き煙草」という作品の冒頭にも、《僕は煙草を手で巻く。僕はぎっちょである。》とあります。
*参照:
第233号(No.233) 2010/10/16「名作の中の左利き(10)「左ぎっちょクラブ」ギュンター・グラス」
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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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