今生における幸せを求める教え―原始仏教(2)原始仏典(1)スッタニパータ(前編)
―第136号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2014(平成26)年9月30日号(No.134)-140930-
「原始仏教(2)原始仏典(1)スッタニパータ(前編)」
本誌では、お釈迦様(ゴータマ・ブッダ、釈尊)の肉声に最も近づける、最古の原始仏典の一つ、『スッタニパータ』について書いています。
今回初めて、来月に続きます。
従来、この月末の古典紹介は、原則として一回一冊、一冊一回でやってきました。
どんな長編であろうと、お気に入りの書持つであろうと。
しかし、今回初めて(前編)となりました。
それだけ伝えたい言葉があるということです。
まあ、それだけではなく、勉強したことを少しでも伝えたいという気持ちもあります。
いつもこの紹介のために平均して原典とも十点ぐらいの本を読んでいます。
ところが、私の年刊読書量はせいぜい百ちょっと。
週に二冊ぐらいのペースです。
これでは、実際にはお勉強の本だけでも、一月にはこなしきれないのです。
ですから事前に、そう三か月前ぐらいから色々とお勉強の本を読んでいます。
それでもどうしても追いつけない、というか、追いつかれてしますのですね。
そのため、古代インド編でも『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』のような大長編は、最初の二三巻を読んだだけで、あとはダイジェスト本を読んでお茶を濁している状態です。
これではやはり問題ありでしょう。
ということで、時間稼ぎもあって、今回は次回に続く、となっているのです。
ご了承ください。
・・・
私の仏教理解について書いておきます。
私の思うところによりますと―。
原始仏教では、出家者向けと在家者向けと二通りの教えがあったのではないか、と思います。
どちらにしろ、それは今生における幸せを求める教えだったのではないでしょうか。
インドでは、人生の三大目的というのがあり、それぞれアルタ(実利)、カルマ(性愛)、ダルマ(法)です。
さらに四大目的と呼ぶ場合もあり、その場合はもう一つモークシャ(解脱)が加えられることもあるのです。
そして、この解脱こそが、輪廻からの解脱であり、ニルヴァーナ(涅槃)なのです。
それは真の安らぎとも言うべき境地であり、ブッダの教える激流を越えたとされる境地です。
輪廻から解脱した境地ですから、今生を終える時は、入滅・入定と呼ばれる二度と戻ることのない永遠の死(眠り?)となるわけです。
出家者の場合は、このように解脱により今生限りの生となり、この今生において、自分の努力――修行によって、安らぎの境地を得、幸福になろうという教えが仏教(ブッダの教え)ということになります。
在家者においては、今生において道徳的な生活を送り、出家者へのお布施によって安らぎの境地を得て、幸福を目指そうとする教えであり、かつ解脱できない身なので、輪廻の上、来世に期待しなさいという教えとなるでしょう。
そういう意味では、今生限りの幸福論というわけではないように見えますが、実際に生きるのは今生であり現世ですので、今生第一主義とでも呼んでよいものと思います。
一方、日本の仏教でもある北伝の大乗仏教では、今生、もしくは後生において、自分の努力――修行と、超絶的存在としての仏の助けを借り、安らぎの境地に達し、幸福を得ようとする教えではないか、と思います。
現世でできないことも来世に期待する、という面が出て来ます。
これも自力では難しい修行を積まねばならず、一般の在家者には難しい。
ゆえに、他力でということになるのは、ある意味では必然かもしれません。
最初期における仏教というのは、単純に良く生きるためにどうするか、という基本的にはずっと道徳的な生き方論のようなものとして始まったのではないか、という気がします。
もちろん、(人)生は苦であるという認識に基づき、解脱を目標として始まった道であっても、瞑想による安らぎの境地へ向かう、修行による自利行として始まったものであったとしても、です。
しかし、出家者が生きて行くためには、在家者によるお布施がなければ成立しないものでもあるわけで、当然、出家者は自利だけではなく、在家者への利他的行為が必要になって来るのではないでしょうか。
出家者への布施が功徳になる、来世に期待できるといった考えだけではなく、在家者がさらなる確かな何かを求める姿勢も生まれてくるのではないでしょうか。
それにこたえる必要も生まれてきたのではないでしょうか。
そういった背景から、利他行といった考え方が生まれたのかもしれません。
まあ、わかったようなことを書きましたが、私なりのメモ書きです。
適当に読み流してください。
・・・
本誌もぜひお読みください。
*本誌のお申し込み等は、下↓から
(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
*本誌で取り上げた本:
『ブッダのことば―スッタニパータ』中村元/訳 岩波文庫 1958/1/1
―最古の聖典。第4章、第5章が最も古い部分といわれる。《人間として正しく生きる道が対話の中で具体的に語られる》
『万人に語りかけるブッダ 「スッタニパータ」をよむ』雲井昭善/著 NHKライブラリー 2003/11
―他の原始仏典も多数引用し、ゴータマ・ブッダの教えをひもとき、現代に生きる私たちへの助言を導く。
【原始仏典についての入門書】
『原始仏典を読む』中村元/著 岩波現代文庫 2014/9/17
―1985年刊、岩波セミナーブックスの文庫化。原始仏典の岩波文庫版翻訳に基づき、それら訳書では解説できなかったブッダの説いた原始仏教の思想、時代背景などを一般向けに解説した書。
『原始仏典』中村元/著 ちくま学芸文庫 2011/3/9
―《テレビ・ラジオ連続講義を中心に歴史的・体系的にまとめたシリーズから、『原始仏典1釈尊の生涯』『原始仏典2人生の指針』をあわせた一冊》。ブッダのことば―『スッタニパータ』、真理のことば―『ダンマパダ』、悪魔の誘惑―『サンユッタ・ニカーヤ』、アショーカ王のことば―『岩石詔勅』、ギリシア思想との対決―『ミリンダ王の問い』
『原始仏典の世界―仏典の教えを現代にどう生かしていくか』奈良康明/著 NHKライブラリー 1998.4.1
―原始仏典の教えを噛み砕いて示し、自分の身に置き換え、現代を生きる智慧として活かす道を明らかにする。
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