古典を考える-岩波文庫フェア小冊子から(2):私の読書論59
―第133号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2014(平成26)年8月15日号(No.133)-140815-
「私の読書論-59- -古典を考える-
岩波文庫フェア 小冊子から(2) 伊藤真」
本誌では、「岩波文庫フェア 小冊子から」の二回目として、伊藤真さんの「ゆっくりいそげ」を取り上げ、古典についての考えを紹介しています。
さてそこで、今回は古典について、このフェアの一冊である『ブッダのことば― スッタニパータ ―』(中村 元 訳) からの言葉を交えて、お話しましょう。
本書「第四 八つの詩句の章」(八四四)にこんな言葉があります。
《古いものを喜んではならない。また新しいものに魅惑されてはならない。滅びゆくものを悲しんではならない。牽引する者(妄執)にとらわれてはならない。》p.24
前半部分は解説はいらないと思います。
古いものだからといって、それだけでありがたがっていてはいけない。
それでは進歩というものを否定することになりかねません。
だからといって新しいというだけでありがたがっているのも、バカなことです。
単に目新しだけでは意味がない。
文化・文明というものは、過去の遺物の上に積み上げられるものでもあるのです。
古典もそうです。
古いから価値があるのではなく、現代にも通じる何かがあるから、価値があるのです。
新作は確かにその時代にあったものだから、一見役に立つように見えます。
しかし、時代におもねっただけかもしれないし、一時的な人気に過ぎないかもしれないのです。
その時だけの一瞬の輝きをもたらす花火のようなものかもしれないのです。
持続する輝き、燃え続ける炎―そういうものが古典であるといってもよいでしょう。
後半の部分は、少し解説が必要でしょうね。
《滅びゆくものを悲しんではならない。牽引する者(妄執)にとらわれてはならない。。》
《滅びゆくものを―》というくだりはそのままに解釈していいでしょう。
次の《牽引する者―》というのは、(妄執)とありますように、自己の欲望とか、他人の言説とかに振り回されてはいけないということでしょう。
中村先生は訳注で、《人間の根底に潜む、眼に見えぬ、どす黒いもの》(p.403)というふうに書いておられます。
それは進路を誤らせ、破滅につながる、と。
また、この詩句について先生は、この訳注でこんなふうに書いておられます。
転換期にあって古いものを残すか、新しいものを採用するかの決断を迫られる。
その際には、一つの原理に従ってなさねばならない。
その原理は、《人間のためをはかり、人間を高貴ならしめるものでなければならぬ。》(p.403)。
それは、邦語でいえば「ため」で、「ひとのため」であり、同時に高い意味で「わがため」となるもの。
《人間のよりどころであり、人間を人間のあるべきすがたにたもつものである。》という意味で、原始仏教では「法(ダルマ)」と呼ぶ。
―と。
・・・
少し話がずれましたが、古典は古いから大切なのではなく、現代人にとっても意味があるから価値があるのだ、ということです。
その意味をどこに見出すかは、人それぞれの発見によるのです。
発見するためには、出会ってみなければ始まりません。
より良き出会いの目安に、このようなフェアの品目、および小冊子を利用するのも一法です。
*
『ブッダのことば― スッタニパータ ―』中村 元 訳
―来月以降、ブッダについて見て行こうと考えています。
もっとも古い仏典とされている、この書物には人間ブッダの姿とそのそもそもの教えが描かれていると言われています。
詳細は本誌で!
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(まぐまぐ!)『(古典から始める)レフティやすおの楽しい読書』
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