ジュール・ヴェルヌ『ジャンガダ』を読む
以前の記事、
2013.8.6 ジュール・ヴェルヌ『永遠のアダム』を読む&『ジャンガダ』出版
の★新刊ニュース★でもお伝えしましたように、7月27日(28日?)、文遊社からヴェルヌ復刊の第2弾『ジャンガダ』が出版されました。
『ジャンガダ』ジュール・ヴェルヌ/著 レオン・ベネット/イラスト 安東 次男/訳 文遊社(2013/7/27)
《「夜は美しく、大筏(ジャンガダ)は流れのままに進む」 イキトスの大農場主の秘めたる過去、身に覚えのない殺人事件、潔白を示す暗号は解けるのか!? アマゾンの川面が黒く、金色に光る……ジュール・ヴェルヌ、圧巻の長篇小説。レオン・ベネットによる、挿画84点を収録した完全版。書容設計:羽良多平吉 》
《イキトスの大農場主の秘めたる過去、身に覚えのない殺人事件、潔白を示す暗号は解けるのか!?アマゾンの川面が黒く、金色に光る―ジュール・ヴェルヌ、圧巻の長篇小説。 》
(復刊第一弾:『永遠のアダム』)
元本は、集英社コンパクトブックス版<ヴェルヌ全集>第20巻『ジャンガダ』(1969)。
*参照:
・『レフティやすおの左組通信』
「ジュール・ヴェルヌ Jules Verne コレクション」
ようやく読み終えました。
簡単に言いますと、暗号解読+アマゾン川下り紀行小説です。
暗号解読は、ポーの「黄金虫」の解読法を試みるなど、なかなか読ませます。
ジュール・ヴェルヌと言えば、「SFの祖」と呼ばれるなど、当時の科学技術の延長上の空想科学による冒険物語といったイメージがあります。
(本作で言えば、アマゾン川下り紀行の部分―当時知られていたアマゾン川流域の地理や風物、動植物を描いている部分。)
しかし、実は意外と純粋にミステリとして読める冒険小説を書いているのです。
本作はそういう一つの典型でしょう。
(もう一つ挙げるとしますと、ヴェルヌ版「モンテクリスト伯」と言われる『アドリア海の復讐』。ここでも暗号が登場します。)
・・・
冒頭から暗号文が登場し、盛り上げます。
この暗号文が金になるらしいという、いかにもいやらしげな印象の森番の男が、二人の青年紳士と出会います。
出だしから、なかなか意味ありげです。
しかも、アマゾンのジャングルの様子、動物たちの描写も含めて、いかにも臨場感あふれる展開です。
その後、農場主の娘が先の紳士の片方(もう一方は、農場主の息子で兄)と結婚することになる。
農場主は、アマゾンの支流の奥地の町イキトスから新郎の住む町、アマゾン河口のパラまで、大筏を組んで下ってゆく。
実は農場主は長らくこの地を出ようとしなかった。
どうやら何かしら隠し事を持っていたようなのです。
ところが、ようやく決意し、この川下りに出ることにしたのでした。
その旅の途中で若者たちは、一人の男(移動床屋)を助け、彼は旅に加わります。
さらに先の森番が姿を現し、一行は彼も筏に相乗りさせてあげるのですが…。
・・・
初めにも書きましたように、いかにもヴェルヌの主人公の典型とも言うべき、謹厳実直誠実な男性とその愛すべき理想的家族と友人たちによる善意に満ちた物語です。
ヴェルヌの面白さを満喫できる作品だと思います。
ぜひ一度お読みください。
そして、売れて欲しいと思います。
文遊社さんにはまた、何かヴェルヌの本を復刊して欲しいですね。
他社のみなさんも、ヴェルヌの有名作の新訳ばかりでなく、未訳の作品に取り組んでいただけたら、と願わずにいられません。
本邦未紹介の長編もたくさん残っています。
ぜひ、チャレンジを!
・・・
ヴェルヌの本と言えば、最近、光文社古典新訳文庫から『地底旅行』の新訳本が出ています。
でも、正直値段が高いし、その割に物足りない感じで、残念です。
(昨年、新潮文庫から出た『海底二万里』のような、原著の挿絵を全点収録しているとか、力の入った詳細な訳注がついているとか、決定版的な要素がありません。
ちょっと立ち読みしただけですが、訳者あとがきに、教授と現地の案内人との関係をドン・キホーテと従者サンチョ・パンサとの関係と解釈して訳した、といったことが書かれていて、この辺が新味なのでしょうけれど、ちょっと違和感を抱きました。)
地底旅行 (光文社古典新訳文庫)
海底二万里(上) (新潮文庫)
海底二万里(下) (新潮文庫)
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