澁澤龍彦「左利き」『私の少年時代』より
サド裁判やエロティシズム、幻想文学の紹介等で有名なフランス文学者・評論家、澁澤龍彦(1928年(昭和3年)5月8日-1987年(昭和62年)8月5日)氏のオリジナル編集の自伝エッセイ集、
『私の少年時代』澁澤龍彦/著 (河出文庫 2012.5)
に収録されている<少年時代>の思い出を綴ったエッセイに「左利き」という小文があります。
昨年夏ごろにこの文庫本が出ていると知ったのですが、近所の本屋にはなく、現物を見る機会がないままになっていました。
(調べてみますと、これは新版で、以前から旧版は出ているようです。)
昨日大阪市内の本屋に行った際見つけました。
でも結構薄い文庫本なのに千円近いということで、結局今回は買わず、立ち読みですましておく、ということにしました。
肝心の「左利き」というエッセイも2~3ページぐらいの小文なのです。
記憶で、だいたいの内容をメモしておきましょう。
文字だけは右手で書くように母親からうるさく言われた。
始めは左手で書いていたが、母親から言われるとすばやく右手に持ち替えて書いていた。
そのうち右手で書くようになった。
今では左手では書けない。
理由は、字は右利きに向いているようで、左では書きにくいせいではないか。
それ以外は大抵左。
それで特に困ったこともない。
腕時計は右手にはめる。
(これって、字を書くとき邪魔にならないのかなあ?、と思うのですが…。)
でも、一つだけつらいことがあった。
それは左利き用のグローブがなかったこと。
右利き用のグローブの小指を入れるところに親指を入れて使っていた。
それと、刃物類も左利きには使いづらい。
昔は切り出し小刀で鉛筆を削ったりした。
右手用の小刀を左手で使うと、刃が裏返しになる。
ヨーロッパ諸国に行った時でもナイフとフォークは逆に持ち替えていた。
左手でナイフ、右手でフォーク。
末尾で、外国人の誰やらによると、左利きは頑固で偏屈、変わり者が多い。
とにかくそういう性格的にあまりよからぬ所があるという。
これは当たっていそうな気がする。
しかし左利きには犯罪者が多いという意見には、これはどうか?
・・・
改めて書いておきますが、一度読んだだけの記憶で書いています。
なので、正確な引用ではありません。
間違いがあればご容赦ください。
それでも、だいたいの内容は伝わったかと思います。
1928年(昭和3年)生まれと言いますから、戦前の左利きの子供の一例といえるでしょう。
ウィキペディアなどを見ていれば、澁澤龍彦という人がいかに変わり者とされているかがわかります。
私に言わせれば、これもやはり「左利き」の人の一つの性格と言えるでしょう。
なぜそうなるのか、なぜ変わり者扱いされるのか?
それはこういうことでしょう。
「左利き」の人というのは、ただそれだけで既に人とは違うと認識されてしまう、ということです。
右手より先に左手が出る、等の行動だけで。
自分にとっては自然なことが自然でないと見なされることへの違和感から、人とは異なった反応を取らざるを得ない、ということです。
自分は(あ)だと思っていることを、他人は(い)だと言えば、当然、あれっ? って気になりますよね。
そういうことを積み重ねれば、どうなるか。
自分の意見を出せば、その都度「違う」と言われてしまうとなると?
素直な人であればあるほど、このギャップには悩まされることになるのです。
それを外から見れば、変人とか変わり者ということになるのではないでしょうか。
そんな気がします。
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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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