魅力の人カエサル~真紅の外套『ガリア戦記』
―第98号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2013(平成25)年1月31日号(No.98)-130131- 魅力の人カエサル~真紅の外套『ガリア戦記』ユリウス・カエサル
●カエサルの真紅の外套について
本文で紹介しました、カエサルの真紅の外套についてのくだりです。
《七・八八 戦場ではいつもひときわ目立つ真紅の外套の色でカエサルが来たことが伝わり、後を追うよう命じておいた騎兵隊や大隊の姿も見えると(高い位置からだとこの下り斜面がよく見えたのである)、敵も戦闘にかかった。... 》p.316
『ガリア戦記』カエサル/著 石垣憲一/訳
平凡社ライブラリー664 2009.3.10 「第七巻」より
このくだり岩波文庫版・近山金次訳によりますと、
《八八 下り斜面の場所は小高い所から見渡せたから、カエサルが戦闘でいつもしるしに使う衣服の(一)色でカエサルの到着が知られ、... 》p.282
『ガリア戦記』カエサル 近山金次/訳 (岩波文庫 1964改版)
とあり、訳注として 《(一) これは真紅であった... 》p.283 となっています。
平凡社ライブラリー版・石垣憲一訳では、読みやすさを一義に一部本文中に訳注を組み込んでいるということ(「凡例」による)なので、この違いはそうした一例かもしれません。
あるいは単純に翻訳の底本の違いにあるのかもしれません。
なにしろ古代の著作はみな、写本として伝えられています。
本書も大きく分けて二種の写本の系統があり、細かくは十数種に分類できるそうですから。
(底本の違いは確認していません。)
因みに、講談社学術文庫版・國原吉之助訳『ガリア戦記』では―
《88 カエサルの来ることを、彼の深紅の将軍外套で知り――彼はいつも戦場でこれを羽織り、自分の目印としていた――... 》p.311とあります。
この真紅の外套に関しましては、原書房『シリーズ絵解き世界史3 ローマ帝国と皇帝たち』(ニック・マッカーティ/著 本村凌ニ/監修 2007/10/25)の中に、真紅の外套を羽織ったカエサルの絵が出ています。
捕えられた全ガリア反乱軍の総指揮官であったウェルキンゲトリクスを見下ろす構図です。
視覚効果抜群で、この辺にもカエサルの、いやローマ人の美的センス及び賢明さが窺われます。
こういう面でもカエサルという男の魅力が伝わってくるように思います。
まあ、なにしろ世界的美女クレオパトラからも愛された人物ですから。
・ガリア戦記 (平凡社ライブラリー)/平凡社
・ガリア戦記 (講談社学術文庫)/講談社
・ガリア戦記 (岩波文庫)/岩波書店
・シリーズ絵解き世界史3 ローマ帝国と皇帝たち/原書房
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