クリスマス・ストーリーをあなたに
―第94号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★ 2012(平成24)年11月30日号(No.94)-121130-
クリスマス・ストーリーをあなたに~ アガサ・クリスティー『ベツレヘムの星』から
本誌では、アガサ・クリスティーのクリスマス・ストーリーとクリスマスに関する詩を集めた、クリスティーが読者に贈るクリスマス・ブック『ベツレヘムの星』から、「水上バス」を中心に紹介しています。
本誌でも書いていますように、ディケンズの『クリスマス・キャロル』以降、欧米の作家は、生涯に一つはクリスマス・ストーリーを書く、といわれています。
クリスティもまた、ミステリでも『ポアロのクリスマス』や『クリスマス・プディングの冒険』というクリスマスにまつわる小説を書いています。
そして、本書のように純粋なクリスマス・ストーリーも発表しています。
クリスマス・ストーリーの一つの基本パターンは、『クリスマス・キャロル』にもみられますように、クリスマスという愛と善意の季節に、奇蹟を交えて人の心を改心させるような出来事を描いたものと言えるでしょう。
ほかには、クリスマス及びサンタクロースの起源を描いたもの、キリスト生誕にまつわる秘話といった趣向のものがあります。
2008(平成20)年12月クリスマス号(No.11)-081206-『クリスマス・キャロル』善意の季節
当然キリスト教や聖書についての基本的な知識があるほうが楽しめます。
そういう点では、日本人には多少不利な面があります。
しかし、そんなに難しい教義にまつわる話などは出て来ませんし、仮に出てきたとしても、無視して気軽に楽しめばよいと思います。
例えば、村上春樹訳のカポーティの「クリスマスの思い出」「あるクリスマス」などは、少年のクリスマスの思い出を語ったもので、非常に抒情的な作品に仕上がっています。
2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節『あるクリスマス』カポーティ
『誕生日の子供たち』トルーマン・カポーティ/著 村上春樹/訳 文春文庫(2009/6/10)
「クリスマスの思い出」「あるクリスマス」を含むイノセンスな少年たちを描いた短編集
推理小説やSFでも、優れた作品があり、かつては日本でも翻訳物のアンソロジーが何点か出ていたものでした。
最近は、翻訳ものの出版は冬の時代といった感じで、ほとんど目にすることもなくなり、さびしく思います。
かつてはこの季節に、『クリスマス・ボックス (講談社文庫)』とか『クリスマスの木
』といった作品が出版され、そこそこ売れたものでした。
その証拠に、古本屋さんではこれらの単行本や文庫本を今でもよく見かけます。
*本誌で取り上げた本: 『ベツレヘムの星』アガサ・クリスティー/著 中村能三/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003/11/11)
『ポアロのクリスマス』アガサ・クリスティー/著 村上啓夫/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003)
ご存知名探偵ポアロもの。クリスマス・イヴの殺人事件。
『クリスマス・プディングの冒険』アガサ・クリスティー/著 橋本福夫〔ほか〕/訳 ハヤカワ文庫(2004)
英国の古風な楽しいクリスマスを描く表題作を含む短編集。
『火曜クラブ』アガサ・クリスティー/著 中村妙子/訳 ハヤカワ文庫―クリスティー文庫(2003)
「クリスマスの悲劇」を含むミス・マープルものの短編集。
*本稿は、アメブロ『レフティやすおの作文工房』より「クリスマス・ストーリーをあなたに」を転載しています。
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