【左利きライフ研究家レフティやすおのできるまで】第1回
これからお話しするのは、私がどのような経過をたどって「左利きライフ研究家」となるに至ったか、という物語です。
できうる限り幼少期より順を追って、私の左利き活動に影響を及ぼした重要な事項―そのときどきの(記憶に残っている)私の考えや私が読んだ左利きに関する本の記録、話題になった出来事などを振り返りつつ綴ってゆきます。
本稿は、無料メルマガ『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』(第39号 2006/7/15 ~ 第112号 2007/12/15)での連載記事「レフティやすおの左利き活動万歳/私にとっての左利き活動」(全19回)に、ホームページ『左利きを考える レフティやすおの左組通信』「レフティやすおの左利き人生 少年時代」等の記事を交え、加筆修正したものです。
このメルマガ連載記事は、第69号(No.69) 2007/2/17「私にとっての左利き活動(10)」にも書きましたように、
《私がそもそもいかなる理由で左利きの活動を始めたのか、そのきっかけや動機について語りつつ、その当時の一般社会における左利きに対する見方といったものも伝えられるものなら、という考えで書いてきたシリーズです。》
なぜ左利きの活動を始めたのか、という左利きライフ研究家としての私の原点となる部分と言えます。
この文章をお読みいただくことで、私および私の左利きに対する考え方をご理解いただく一番の早道になるだろうと考えます。
●右利きにあらずんば…
私の小さい頃―昭和の30年代、今から半世紀ぐらい前―は、まだまだ左利きというものは、忌避される存在でした。
極端な言い方をすれば、真っ当な人間にあらずといった所でした。
行儀作法を身に付けた人間なら右手を使うものだ、というわけです。
そこで左利きの子供に対しても、右手使いが正しい作法であるという考えから、「左利き(利き手)の矯正」<※>と称して、右手を使うように指導することが、躾として行われていました。
食事の席で箸を使うとき、文字を書くときなど。
少なくともこの二つぐらいは右手でできなければ、という考えでした。
しかし、この二つこそは、ある意味では最も人間らしい―すなわち、他の動物と人間とを区別する―所作でもあります。
(そんな人間としての存在に関わるような動作を非利き手で行え、というのは、考えてみれば、エゲツナイ虐めといえますまいか!)
幸い、すでにその頃から日本でも、左利きは左手を使えばいいじゃないか、という(今日から見ればごく当たり前の)発想が教育界にも浸透し始めていたのでしょう。
私の小学校入学時、母が相談したときには、担任の先生からそのままでよいという言葉を得て、私の左利きは公に「認められる」ことになりました。
(今から考えますと、この先生の考え方は進歩的なものだったようです。
かなり時代を先取りしていた、といえます。
なぜなら、その後左利きライフ研究の活動を続けているうちに気付いたことなのですが、同世代や私より下の世代でもかなりの人たちが学校で「変換(矯正)指導」を受けた、と話していたからです。
ただし、わが校では他の児童も皆そういう扱いだったようで、学校全体、先生たち全体のお考えだったように思われます。)
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<※>【「左利き(利き手)の矯正」について】
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今までにもあちこちで書いていますが、あえて、もう一度。
「矯正」とは、正しく矯(た)める = 正しく形を整える・悪い性質や癖を正しく直す、ことを言います。
言葉の意味としましては、広辞苑第六版によりますと、
きょう‐せい【矯正】
欠点をなおし、正しくすること。「歯並びを―する」
熟語として挙げられているのは、以下の通りです。
きょうせい‐いん【矯正院】
きょうせい‐きょういく【矯正教育】
きょうせい‐じゅつ【矯正術】
きょうせい‐しょぶん【矯正処分】
きょうせい‐しりょく【矯正視力】
きょうせい‐やく【矯正薬】
また「矯」という字は、
意味:(1)ゆがみを正す。ためる。「角つのを矯ためて牛を殺す」(小さな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにする)「矯正・矯風」
(2)うわべをかざる。いつわる。「矯飾・矯詐」
(3)つよい。はげしい。「矯激・奇矯」首をそらすようにもたげて勇みたつ意から。
解字:形声。「矢」(=まっすぐな矢)+音符「喬」(=高くて先端がしなる)。曲がったものをまっすぐに直す意。
(広辞苑第六版より)
以上のように、「矯正」とは、欠点や誤りを正す、悪い癖を直す、といった意味で使う言葉であり、用例としては、歯列矯正・視力矯正・非行少年の矯正などがあります。
かつては、左利きの左手使いは、作法にもとる行為・悪い習性・悪癖であり、右手使いこそが正しい、とされていました。
そこで、右手を使うように指導することを指して、「矯正」と呼んだのです。
「左利き(利き手)の矯正」という言葉には、そういう背景があり、本来、そういう考えの上で使われているものなのです。
これを最近の人は、単に「変える」の漢語表現と勘違いしていることがあります。
が、これは明らかに誤りです。
英語で言えば、correct(訂正する、矯正する) とchange(変える、交換する) の違いでしょうか。
(矯正施設 a correctional facility. 矯正視力 corrected eyesight. 矯正措置 corrective measures. 矯正体操 corrective exercises.)
(パーソナル和英辞典より)
私のサイトでは、「アピール左利き」として、この言葉を使わないようにして欲しい、とお願いしています。
過去の経験として受けた「矯正」事例についてのみ使用し、「左利きの子を矯正すべきかどうか迷っています」といった際には現在形・未来形の文章では用いないように、という意味です。
「右手を使わせる」「右手使いにさせる」などで充分伝わります。
「矯正」という言葉から、さも正しいことであるかのような誤った印象を与えかねません。
子供のときに「左利き」や「矯正」という言葉を辞書で引いた記憶があります。
やはり自分の左利きはいけないことなのかな、と疑問に思ったからでした。
辞書には「左利き」については、善悪・正邪といった価値判断にはふれていませんでした。
しかし「矯正」に関しては、「欠点を正す」といった意味が書かれていました。
調べた結果は、「良い」とは言い切れない、といった印象で、決してはかばかしいものでありませんでした。
子供にも「正」しいの字は読めます。
大人の会話の前後の文脈から、かつての私のように、いらぬ想像をすることは充分考えられます。
1970年代「左利き友の会」を主宰された精神科医・箱崎総一先生は、その著書『左利きの秘密』(立風書房・マンボウブックス 1979.6)の中でこう書いておられます。
《私は、この矯正といういい方が好きではない。「曲がったこと、悪いことを改め、正しくする」という意味で使っているのだろう。だが、矯という字には「偽造する、いつわる、かこつける」という意味もあるのをご存知だろうか。》(第七章自然界の左利き現象)p.174
すなわち、左利きの子を「矯正」するということは、左利きの子が自分自身を「いつわる」ように指導すること、という解釈も成り立つのです。
人間たとえ子供であっても、自分自身を偽って生きるというのは、あまりいい気もちのするものではないでしょう。
この「矯正」が誤った指導であるということは、すでに私の一連の記事の読者の皆様には充分ご理解いただけているものと考えます。
▼参照記事:
・『レフティやすおの左組通信』<レフティやすおの左利き私論2>
右手使いへの変更(矯正)について
・『レフティやすおのお茶でっせ』
「利き手(左利き)の矯正」という言葉の使用について
他、etc...
▼アンケート:
・「矯正」という言葉の不使用のお願いアピールについて
(『左組通信』表紙、『お茶でっせ』サイドバーにて)
『左組通信』<左利きプチ・アンケート>第11回
・「利き手(左利き)の矯正」という言葉をどう思いますか
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※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載しています。
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