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2012.04.02

NHKテレビ「100分 de 名著」ブッダ『真理のことば』を見て本を読んで

2012年3月の4回の放送を見ました。
中村元訳の「ブッダの真理のことば」(『ブッダの真理のことば・感興のことば』岩波文庫 1978.1 収録)も読んでみました。
本は図書館にあったので借りてきて読みました。

 

 

文庫本で60ページちょっとです。
内容も基本的に日常的な言葉で書かれたもので、字面を理解するのは難しくありません。
すぐに読めます。

しかし、日常的な言葉で表現されているものが、実際には何を意味しているのかを読みとるのが難しい場面もありました。
その辺は訳注を読まないと理解できません。

一応、基礎的な仏教の教えについての用語―例えば、四苦・生老病死とか、諸行無常とか、四諦八正道とか無明とかの言葉は知っていましたが、改めて勉強になりました。

実はこの本には、そういう教条的なことはあまり出て来ません。
まだそういう教団といった組織が完全にでき上がる以前の経典?だから、ということのようです。

 

最古の仏典と言われる『ブッダのことば―スッタニパータ』(中村元訳 岩波文庫―こちらは古本屋さんで美麗本の安いのを見つけ購入。)は、ブッダが弟子たちに説いたお話を求めたものです。
言ってみれば、孔子と弟子たちとの言行録を後年になって弟子たちがまとめた『論語』に相当するもの、といったところでしょうか。

 

それに対して『真理のことば』の方は、ブッダの教えを受け継いだ弟子たちが次なる世代の弟子たちや一般の人たちに申し渡す教えのようなものです。

 

私たちが普段接している仏教は、大乗仏教―修行している自分たちだけの自利的なものでなく、利他的な広く衆生を救う大きな乗り物の仏教と言われています。
それに対して、本来のブッダが説いたものは、個人の心の在り方を意識したものであった、ということです。

一種倫理学的な、道徳の本に書かれているような、処世術的な側面を持っています。
「信じる者は救われる」的な信仰心を重んじる宗教というより、思想・哲学的な態度です。

 

これは番組でも言われていることですが、心の持ち方が大事なのだ、ということです。

精神を集中して客観的に正しくものを見る。
自分の心を観察して自分を変えてゆく。

世の中はどんどん変化してゆく、絶対不変なものなどないのだという認識、それに合わせて自分も変化してゆくべきだ。
その都度必要なものを選び、列車を乗り換えつつ目的地にたどり着くように。
そして、いつまでもその選んだものに捉われない。
しかし、真実という変わらないものもあり、そこは自分もしっかり見極めて対応する柔軟さを持て。
―とでもいうべきでしょうか。

 ・・・

以下、4回の放送のサイトに掲載された概要紹介と、放送で紹介されました『真理のことば』からの言葉中村元訳から引用しておきます。

【】{}内は私なりの解釈、覚書です。
(放送中にメモしたもので、録画して再確認したものではありません。正確さは保障できませんのであしからず。)

 

【第1回】生きることは苦である 2012年3月7日(水)午後10:00~10:25/Eテレ(教育)
ゲスト講師 佐々木閑(花園大学国際禅学科教授)
9月は、仏教の創始者・ブッダが語った言葉をまとめたとされる「ダンマパダ」(邦訳「真理のことば」)を取りあげる。釈迦族の王子だったブッダは、成長するにつれ、人の生、老、病、死について、深く考えるようになった。そして29歳の時に、家族を捨てて出家、修業しながら深い思索に励んだ。悟りを開いた時、ブッダは、自らが考えた真理を人々に語る。それが最初の説法とされる「ダンマパダ」191番である。ブッダは、人生は、老いや病など、苦しみの連続であるが、心のあり方を見直せば、苦しみを克服することが出来ると説いた。第1回では、ブッダが見抜いた「人生」と「苦」の本質に迫る。

 

【避けられない苦をどうするか。】

{生きていること自体が苦となる。→生老病死=四苦}

▼113、物事(ものごと)が興りまた消え失せることわりを見ないで百年生きるよりも、事物が興りまた消え失せることわりを見て一日生きることのほうがすぐれている。

{栄枯盛衰、興亡を繰り返すのが人生であり、「諸行無常」=万物は流転するということを知ることが大事。}

▼190、191、さとれる者(=仏)と真理のことわり(=法)と聖者の集(つど)い(=僧)とに帰依する人は、正しい知慧をもって、四つの尊い真理を見る。――すなわち(1)苦しみと、(2)苦しみの成り立ちと、(3)苦しみの超克と、(4)苦しみの終滅(おわり)におもむく八つの尊い道(八聖道 はっしょうどう)とを(見る)。

{仏法僧―三宝に帰依するものは、正しいものの見方を知り実行する。}
{「四聖諦(ししょうだい)」=「四諦(したい)」―苦諦、集諦、滅諦、道諦。「諦」=真理。}
{「八聖道」=「八正道(はっしょうどう)」―正しい見解(正見)、正しい思い(正思)、正しいことば(正語)、正しい行為(正業)、正しい生活(正命)、正しい努力(正精進)、正しい気づかい(正念)、正しい心の落ち着き(正定)。}
{ものの考え方を変えてゆく―自己中心的から客観的に正しくものを見る。}

▼153、わたくしは幾多の生涯にわたって生死の流れを無益に経めぐって来た、――家屋の作者(つくりて)をさがしもとめて――。あの生涯、この生涯とくりかえすのは苦しいことである。 ▼154、家屋の作者(つくりて)よ! 汝の正体は見られてしまった。汝はもはや家屋を作ることはないであろう。汝の梁(はり)はすべて折れ、家の屋根は壊れてしまった。心は形成作用を離れて、妄執を滅ぼし尽くした。

{「私」という世界はないことに気付く。}
{苦しみは自己中心の世界から生まれる。}
{執着心を捨てる。}

 

【第2回】うらみから離れる 2012年3月14日(水)午後10:00~10:25/Eテレ(教育)
【再放送】2012年3月21日(水)午前5:35~6:00/Eテレ(教育)
 2012年3月21日(水)午前11:30~11:55/Eテレ(教育)
ゲスト講師 佐々木閑(花園大学国際禅学科教授)
人間は、現実と希望とのギャップに常に苦しむものだとブッダは説いた。人には生存への欲求があり、世の中が自分にとって都合の良い状態であることを願っている。しかしその願いがかなわないと知る時、人は正常な判断力を失い、「あの人は私に意地悪をしている」などと、根拠なく思いこむことがある。ブッダはこうした状態を「無明」と称した。第2回では、「無明」から生まれる「うらみ」について学ぶ。

 

【人工(自分が作りだす)の苦をどうするか。】

▼197、 怨みをいだいている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは大いに楽しく生きよう。怨みをもっている人々のあいだにあって怨むこと無く、われらは暮していこう。

{うらみを抱かないように自分自身の心の持ちようを変える。}
{自分の生きてゆく環境を変える。}

▼5、実にこの世においては、怨みに報いるに怨みを以てしたならば、ついに怨みの息(や)むことがない。怨みを捨ててこそ息む。これは永遠の真理である。

{サンフランシスコ講和条約でセイロン代表の言葉。}
{苦しみ(怨み)は愛によってやむ。}

{うらみは煩悩の一つ。}
{煩悩を消そうとした人=ブッダ→どうしたら煩悩を消せるか考えた。}
{おおもとのうらみ=無明=おろかさ ←知恵}

▼242、不品行は婦女の汚(けが)れである。もの惜しみは、恵み与える人の汚れである。悪事は、この世においてもかの世においても(つねに)汚れである。

▼243、この汚(けが)れよりもさらに甚だしい汚れがある。無明(むみょう)こそ最大の汚れである。修行僧らよ。この汚れを捨てて、汚れ無き者となれ。

{汚れ=心の煩悩。}
{「無明」=無智→迷いの根本原因。}

▼63、もしも愚者がみずから愚であると考えれば、すなわち賢者である。愚者でありながら、しかもみずから賢者だと思う者こそ、「愚者」だと言われる。

{愚かさに気付くことが大事。}
{苦行では煩悩は消せない。}
{うらみから離れるには?。}
{ブッダの教えは 毎日一歩一歩。}
{自分が中心だという思いを捨てる―自分を俯瞰で見る。}

 

【第3回】執着を捨てる
2012年3月21日(水)午後10:00~10:25/Eテレ(教育)
【再放送】2012年3月28日(水)午前5:35~6:00/Eテレ(教育)
 2012年3月28日(水)午前11:30~11:55/Eテレ(教育)

 

人は様々なものに執着して生きている。しかし執着が過度に強くなると、家族や財産といった、本来幸せをもたらすはずのものも、自分の思い通りにならないことにいらだち、苦しみを感じてしまう。ブッダは、自分勝手な執着をいましめるとともに、自分の教えについても、過度に執着してはならないと説いた。そして、自分を救えるのはあくまでも自分自身であり、自分の心を正しく鍛えることによって、心の平安を得ることが出来るとした。第3回では、依存ではなく、心の自立を説いたブッダの思想について考える。

【苦しみを生む執着とは?】

▼347、愛欲になずんでいる人々は、激流に押し流される、――蜘蛛がみずから作った網にしたがって行くようなものである。思慮ある人々はこれをも断ち切って、顧みることなく、すべての苦悩をすてて、歩んで行く。

{ものの見方が一つにかたまっている。}
{自分の作った道に流され、自分の人生を縛り付ける。}

▼62、「わたしには子がある。わたしには財がある」と思って愚かな者は悩む。しかしすでに自己が自分のものではない。ましてどうして子が自分のものであろうか。どうして財が自分のものであろうか。

{自分の所有物とおもい、自分の思い通りにしようとする―自分勝手。}
{自我のまわりに自分の世界を作る。}
{自分自身がそもそも自分のものではない。私は仮に存在しているだけ。}
{執着にとらわれない柔軟な意思―自由意思を持って生きる。}
{将来の道筋を決めてゆく。}
{その場で一番大切なものを選ぶ。}

▼160、自己こそ自分の主(あるじ)である。他人がどうして(自分の)主であろうか? 自己をよくととのえたならば、得難き主を得る。

{自分こそ自分の主―自己の救済者は自分。}
{ブッダの最期の教え→「自灯明法灯明」}
{原因と結果を見定める。}
{執着を捨てるには? 普遍的なもの、真実、世の中を正しく見る。}
{自分勝手な世界を作って執着するのは、~のないこと。}
{意思に従って正しい方向に向かってゆく。}

 

【第4回】世界は空なり 2012年3月28日(水)午後10:00~10:25/Eテレ(教育)
【再放送】2012年4月4日(水)午前5:35~6:00/Eテレ(教育)
 2012年4月4日(水)午前11:30~11:55/Eテレ(教育)
【特別ゲスト】 藤田一郎(大阪大学大学院教授)

 

ブッダは、人の心がどのように変化するかを、因果関係に基づいて論理的に分析した。そして瞑想によって集中して考え、自分の心の状態がどうなっているか、きちんと把握することが悟りへの道であるとした。最終回では、大阪大学大学院の教授で認知脳科学を研究している藤田一郎さんを招く。人間の脳は、物事をどのように認識しているのか、ブッダの教えを脳科学の面から検証する。そして今シリーズの講師役・佐々木閑教授とともに、「真理のことば」が、現代に生きる私たちに発しているメッセージについて語り合う。

【人の心とは?】

▼1、ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によってつくり出される。もしも、汚れた心で話したり行なったりするならば、苦しみはその人につき従う。――車をひく牛の足跡に車輪がついて行くように。

{ものごとを客観的に見る。心の持ち方}
{心の持ちようでものの見方が決まってしまう。}
{心の持ちようを訓練する。}
{世の中を「空」と見る。}

脳認知科学・藤田一郎登場。

{科学―客観的にものを見る。}
{科学の因果関係に基づく合理的精神を持っているブッダ。}
{網膜に映るものを脳が解釈している。→
 過去の経験、知見、知識から補完している。}
{客観的に見るには? 瞑想―精神を集中させる←ブッダ。}
{自分の心を観察して、自分を変える―強い意志が必要。}

(注)
内容のしっかりした解釈・結論につきましては、他のネット情報を参考にされた方がいいかと思います。
番組は見ましたし、メモも取りましたが、正確な結論と言えるものを十分把握した上で書き留めたという自信はありません。

--

○NHKテレビテキスト「100分 de 名著」
ブッダ『真理のことば』2012年3月 (昨年9月の分と同じ)
『ブッダ 真理のことば』2012年3月 (NHK100分de名著) 佐々木 閑

『NHK「100分 de 名著」ブックス ブッダ 真理のことば』佐々木 閑
―テキスト未収録の第4回放送分の対談/読書案内/年譜を新たに収録した保存版。

 

*「真理のことば(ダンマパダ)」(漢訳「法句経」)に関する本: ・漢訳「法句経」の全訳/現代語訳
『法句経』友松 圓諦/訳 講談社学術文庫679 1985.3.6
・その解説書
『法句経講義』友松 圓諦/著 講談社学術文庫533 1981.3.6

 

・初心者向け解説書(一部の言葉を抜き出して解説したもの)
『寂聴 生きる知恵 法句経を読む』瀬戸内 寂聴/著 集英社文庫 1997.3.11
『心に怒りの火をつけない ~ブッダの言葉〈法句経〉で知る慈悲の教え』アルボムッレ・スマナサーラ/著 角川文庫 2011.10.25
『「いいこと」がいっぱい起こる!ブッダの言葉』植西 聰/著 三笠書房 王様文庫 2010.11.30

 

・ブッダおよび『ダンマパダ』など原始仏典について
『原始仏典』中村元/著 ちくま学芸文庫 2011.3.9
『ゴータマ・ブッダ』早島鏡正/著 講談社学術文庫 1990.4

 

 

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NHK100分de名著

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※本稿は、レフティやすおの他のブログに転載しています。
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