オイディプス王~エディプス・コンプレックスの語源
ギリシア悲劇:
"ギリシャ悲劇の代表作"ソポクレス「オイディプス王」
―第78号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2012(平成24)年3月31日号(No.78)-120331-ギリシア悲劇:
"ギリシャ悲劇の代表作"ソポクレス「オイディプス王」
心理学の用語として、「エディプス‐コンプレックス Oedipus complex」という言葉があります。
広辞苑第六版には以下のように説明されています。
〔心〕男の幼児が無意識のうちに母親に愛着を持ち、自分と同性である父に敵意を抱くことで発生する複雑な感情。父と知らずに父を殺害し、生母と結婚したギリシア神話のオイディプスにちなんでフロイトが提唱した用語。
女性の場合は、「エレクトラ‐コンプレックス」と呼ばれることもあります。
これも、ギリシア神話の「アトレウス家」の一族の悲劇の中の一人、トロイア戦争におけるギリシア方の総大将を務めたアガメムノンの娘であるエレクトラにちなんだものです。
彼女は、父アガメムノンが妻であるクリュタイメストラに愛人と共に殺された、その仇を弟のオレステスと共に討つのです。
要するに、父殺しの息子オイディプスに対して、母殺しの娘エレクトラということになります。
もちろん、オイディプスの悲劇性は単に父殺しだけではありません。
しかし、実母との母子相姦という悲劇も、当然のことですが、彼自身(そして、妻であり母でもあるイオカステ自身も)のおよそ知らない出来事です。
それゆえの悲劇と言えるのですが、必ずしも父殺し母子相姦だからゆえの悲劇というわけでもありません。
父もそしてオイディプスも、ともに神託を受けた人物がその信託の運命を逃れようとあがいたにもかかわらず陥ったというところに悲劇性があるのです。
本誌・本文でも書いていますように、
こういう極端なまでの現実を、人生の悲劇性を乗り越える力が人間にあるのでしょうか。
そこをこの一連のギリシア悲劇は取り扱っています。
神の支配と運命に逆らおうとする人間の知恵と意思の闘争劇。
ここにギリシア悲劇の面白さがあると言ってもよいかもしれません。
*本誌で取り上げた本:
『ギリシア悲劇全集 3』岩波書店 1990.6
『ギリシア悲劇ノート』丹下和彦/著 白水社 2009.10
『ソフォクレース『オイディプース王』とエウリーピデース『バッカイ』―ギリシャ悲劇とギリシャ神話』逸身喜一郎/著 岩波書店 書物誕生―あたらしい古典入門 2008.11.18
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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2011.12.31「オイディプス王~エディプス・コンプレックスの語源」を転載したものです。
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