宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』―C・ライス『スイート・ホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作というけれど…
今、TBSテレビでドラマ化されて放映中(パナソニック ドラマシアター ステップファザー・ステップ)の宮部みゆきの原作『ステップファザー・ステップ』の文庫版の裏表紙の紹介文に、
《C・ライス『スイート・ホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作》とあります。
宮部みゆき『ステップファザー・ステップ』(講談社文庫)
でも、正直なところ、C・ライス『スイート・ホーム殺人事件』を知っている人、ましてや読んでいる人がどれだけいるのか大いに疑問です。
だいたい「C・ライス」が「クレイグ・ライス」というアメリカの都会派ユーモアの女流ミステリ作家だ、ということさえ知らない人のほうが多いはず!
他の代表作としては、弁護士J・J・マローンのシリーズの『大あたり殺人事件』『大はずれ殺人事件』があります(ただし、絶版状況!)。
短編集『マローン殺し―マローン弁護士の事件簿〈1〉』山田順子/訳 創元推理文庫。
ではこの『スイート・ホーム殺人事件』がどういうものか紹介しましょう。
大まかな内容は、新訳版の紹介文で分かるでしょう。
《カーステアズ家の子どもたち、14歳のダイナ、12歳のエイプリル、10歳のアーチーは、勇んで探偵に乗り出した。お隣りのサンフォード家の奥さんが射殺されたのだ。でもおかしい。銃声は二発聞こえたのに、被害者が撃たれたのは一発だけ。そしてサンフォードさんの旦那さんも姿を消して…ミステリ作家のお母さんを有名にするために、子どもたちの大活躍が始まった!ほのぼのユーモアたっぷりの本格ミステリ、新訳で登場。 》
私が持っている/読んだのは、旧・長谷川修二訳版。
スイート・ホーム殺人事件〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)クレイグ・ライス
スイート・ホーム殺人事件 (ハヤカワ・ミステリ文庫 28-1) クレイグ・ライス/著 長谷川 修二/訳
私が昔(22歳の時/掲載時は23歳)書いた文章(『ミステリマガジン』1977年5月号読者のお便り欄“響きと怒り”に掲載されたもの)を紹介しましょう。
《スク・ゴコ・イキ! 新年年頭からすごいミステリを読むことができました。クレイグ・ライスの「スイート・ホーム殺人事件」です。タイトルどおりのスイートな登場人物たちのステキな楽しいミステリでした。巻末の小泉喜美子さんおおっしゃるとおりでした。ボクもバカの一つ覚えじゃないけど、女流作家はクリスティーとポーター(ドーヴァー物のみ)ぐらいしか読まないのですが、これを機会にライスの本がもっと出ますようにお願いします。(以下略)》
冒頭の「スク・ゴコ・イキ!」は本を読んだことのある人なら、おわかりのはず!
とにかく子供たちの活躍が楽しいミステリです。
宮部さんも『ステップファザー・ステップ』では、そういうところを狙ったのでしょう。
宮部さんの本同様、ぜひ『スイート・ホーム殺人事件』も、外国のものは食わず嫌いなんて言わず、ぜひご賞味あれ!
これだけ世界が狭まってきているのに、それに反比例するように、今の人は海外のものが苦手だそうで、文化的に内向きになっていると聞きます。
それはやはり非常にもったいないことで、いいものは海外にもたくさんあります。
この本をきっかけにして、あなたの読書の世界を広げて欲しいものです。
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 私の読書論158-アリストテレス『ニコマコス倫理学』―<NHK100de名著>から-楽しい読書319号(2022.05.31)
- 2月10日〈左利きグッズの日〉を前にTBSテレビ【新・情報7daysニュースキャスター】で左利き情報(2022.02.09)
- 笑福亭仁鶴さんの思い出―ラジオで“デビュー作”を朗読してもらう(2021.08.25)
- 私の読書論141-私を育てたハヤカワ文庫創刊50周年(5)ハヤカワ文庫の50冊(3)NVの数々-楽しい読書288号(2021.02.15)
- 左利きの人生を考える(3)「わたしの彼は左きき」の時代:1970年代(2)-週刊ヒッキイ第584号(2020.12.05)
「趣味」カテゴリの記事
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)西晋時代の文学者-楽しい読書343号(2023.05.31)
- 私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)-楽しい読書342号(2023.05.15)
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)建安の七子、竹林の七賢-楽しい読書341号(2023.04.30)
- 私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(後)-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画(2023.04.15)
- 私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前)-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画(2023.04.15)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)西晋時代の文学者-楽しい読書343号(2023.05.31)
- 私の読書論170-丸谷才一『文学のレッスン』から(2)-楽しい読書342号(2023.05.15)
- 中国の古典編―漢詩を読んでみよう(22)建安の七子、竹林の七賢-楽しい読書341号(2023.04.30)
- 私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(後)-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画(2023.04.15)
- 私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前)-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画(2023.04.15)
「海外ミステリ」カテゴリの記事
- 私の読書論167-愉快で…な老人探偵小説『木曜殺人クラブ~』他-楽しい読書336号(2023.02.15)
- 私の読書論166-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(後)初読編-楽しい読書335号(2023.01.31)
- 私の読書論165-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前)総リスト&再読編-楽しい読書334号(2023.01.15)
- クリスマス・ストーリーをあなたに~(12)-2022-「飾られなかったクリスマス・ツリー」-楽しい読書331号(2022.11.30)
- <週刊ヒッキイ>×<楽しい読書>コラボ企画:私の読書論161-左利きミステリ-ホームズのライヴァルたち-週刊ヒッキイ第628号(2022.10.15)
「国内ミステリ」カテゴリの記事
- 私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(後)-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画(2023.04.15)
- 私の読書論169-<左利きミステリ>第4回 国内編(前)-週刊ヒッキイ640号×楽しい読書340号コラボ企画(2023.04.15)
- 私の読書論165-私の年間ベスト3・2022年フィクション系(前)総リスト&再読編-楽しい読書334号(2023.01.15)
- 私の読書論152-私の年間ベスト3・2021年フィクション系(前)-楽しい読書310号(2022.01.15)
- 私の読書論151-私の年間ベスト3・2021年リアル系(後)-楽しい読書309号(2021.12.31)
Comments