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2012.02.02

最良の処世訓『イソップ寓話』―または古典の価値

―第74号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記

★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2012(平成24)年1月31日号(No.74)-120131-最良の処世訓『イソップ寓話』

今回は、古代ギリシアの文学から、<イソップ寓話>を取り上げました。

古代ギリシアの文学と言いましても、フランスでは17世紀にラ・フォンテーヌ『寓話』の中に取り込まれたり、日本でも16世紀、安土桃山時代に天草のキリシタンによって「イソポのハブラス」として日本語に翻訳され、江戸時代も幾つもの読み本となったり、明治以降も教科書に取り入れられたり、と様々な形で知らず知らずに社会に受け入れられてきました。

今回改めて読むほどに、人間というものは、相も変らぬ存在だということを認識させられました。
多分皆様の印象も同じでしょう。

ここに古典の価値があるとも言えるのです。

古典を読む価値がある、と。


「現代の問題は、現代のものを読まなければわからない」というのは、一つの真理ではあります。
しかし、主役の人間が相も変らぬ存在であれば、舞台背景や時代背景だけが変わっても、結局演じる内容はさほど変わらないのではないでしょうか?

観客もまた同じでしょう。
同じネタに笑い、同じ場面で泣く。

古典と呼ばれる著作は、長い年月を越えて伝えられてきたもので、各世代を超えて多くの人の心に訴えるものを持っていたからです。

それは人の心の根底にひそむ根源的な思いというものが、大なり小なり表現されていたからこそでしょう。


野球で言えば、実績を残した偉大なプレーヤーだということです。

記録を残した人、記録よりも記憶に残る人などなど。
いつの時代にも各世代が支持する代表的な選手がいるでしょう。

そして、それらの選手の中でもさらにひと際この人はスゴイと言われる選手がいるはず。
そういう選手こそ、<古典>と呼ぶに匹敵する選手だということなんですね。

本の場合は、そういう選手ならぬそういう著作を指して<古典>と呼ぶのです。


*本誌で取り上げた本:
● 原典【現代訳】
『イソップ寓話集』中務哲郎/訳 岩波文庫 1999.3.16
―第11部まで471編を収録。ベン・エドウィン・ペリー『アエソピカ』のうちギリシア語の寓話を全訳したもの。シャンブリ版、その他の版、邦訳本との対照表が巻末に付されている。

【旧訳】
『吉利支丹文学集2』新村出・柊源一/校註 東洋文庫570 1993.10
―後半に「イソポのハブラス」を収録。「イソポが生涯の物語略」というイソポ伝の略から始まり、「イソポが作り物語の抜き書」として70編が収録されている。外国人宣教師の日本語の教科書として用いられたといわれ、当時の口語文をローマ字筆記したもの。
『絵入り伊曽保物語を読む』武藤禎夫/著 東京堂出版 1997.9.30
―万治二年刊『伊曽保物語』天保十五年刊『絵入教訓近道』明治二十年刊『密画挿入 伊曽保物語』から、絵入りイソップ物語を。

●<イソップ寓話>について書いた本
『人間力(にんげんりき)』谷沢永一/著 潮出版社 2001.4.5
―「人間力」としか呼べないような存在感を持つ人がいる!―そんな人間力の秘密に迫るエッセイ集。

ラ・フォンテーヌ『寓話』〈上〉 (岩波文庫)


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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2011.12.31「最良の処世訓『イソップ寓話』―または古典の価値」を転載したものです。
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