本当に大切なこと、またはソローのこと―2011年を振り返る
―第72号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2011(平成23)年12月31日号(No.72)-111231-本当に大切なこと―2011年を振り返る
今年もご愛読ありがとうございました。
本誌では、今年を回顧しながら、この機会にこれだけは読んでいただきたいと思う本をいくつか取り上げています。
中でもヘンリー・デイヴィッド・ソローはここ数年、私の最も注目し、読み継いできた作家・思想家です。
代表作『ウォールデン 森の生活』は、今まで何度も書いていますように、彼がエコライフ・シンプルライフを実践した魂の記録です。
この森での暮らしの最中にあの有名な事件が起こります。
そう、人頭税支払拒否により牢屋に入れられるのです。
たった一日のことではありましたが、これを契機に彼は講演で、政府による奴隷制やメキシコ戦争といった事柄に対し反対する「市民的不服従」「非暴力抵抗主義」を訴えます。
これらの著作により、彼は“世界を変えた”とたたえられています。
彼が本当に言いたかったことは、単に「自分らしく生きよう」ということでしょう。
あるいは「人間らしく」、もしくは「“HIGH LIFE(高貴な生活)”を」、「物ではなく心の充足を」と言い換えても良いかもしれません。
東日本大震災・原発事故を経た今こそ、エコライフ・シンプルライフ、そして多様性を容認する生き方が必要です。
その先駆者としてのソローをぜひ知っていただきたい、と思います。
まずは、
『平和をつくった世界の20人』岩波ジュニア新書
―ソローに始まり、ガンディー、キングといった非暴力、平和の教育・実践、多様性、あらゆる生命、地球環境を大切にする人たち20人を挙げ、それぞれの小伝と言葉を紹介。
『ソロー語録』岩政伸治/編訳 文遊社
―自然愛好家、奴隷制反対論者等の顔を持つソローの著作『ウォールデン』他から名言集。ソローへの入門としても良し。
そして、代表作『ウォールデン 森の生活』をお読みいただきたいものです。
『ウォールデン 森の生活』今泉吉晴/訳 小学館 2004.5.1
―山梨県の森に小屋を建て「森の生活を始めた」学者による訳書。原書を模した装丁にビニールカバー装。高価なのが難点? 著者のイラストや訳注を欄外に収めてあり、眺めて楽しい本。本書は19世紀半ばに出版された、エコライフ、シンプルライフの先駆者であるソローが自ら実践した森での暮らしの魂の記録。
『森の生活 ウォールデン』上下 飯田実/訳 岩波文庫 1995.9
―《湖とその周辺の写真多数を収め》た二分冊。巻末に詳細訳注。
『森の生活 ウォールデン』佐渡谷重信/訳 講談社学術文庫961 1991.3
―各章末に訳注を配す。
次いで、「市民的不服従(市民の反抗)」もお読みいただければ、良しと言えるでしょう。
『ソローの市民的不服従―悪しき「市民政府」に抵抗せよ』佐藤雅彦/訳 論創社 2011.3.20
―講演録らしい訳文で再現した。パラグラフごとに分けて読みやすくし、背景の解説を入れわかりやすくした。
『市民の反抗 他五篇』飯田実/訳 岩波文庫
―「市民の反抗」他、「ジョン・ブラウンを弁護して」等、各ジャンルからソローの代表的エッセイを選んだエッセイ選集。
『一市民の反抗 良心の声に従う自由と権利』山口晃/訳 文遊社
―巻末に原文(英語)を掲載。
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2011(平成23)年5月31日号(No.58)-110531-非暴力抵抗主義
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2011(平成23)年10月31日号(No.68)-111031-《死すべき者》人間~
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2011(平成23)年11月30日号(No.70)-111130-善意の季節
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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2011.12.31「本当に大切なこと、またはソローのこと―2011年を振り返る」を転載したものです。
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