北さんが死んじゃった―わが敬愛する作家、北杜夫さん死去
10月26日の訃報によりますと、<体調を崩して23日に入院した後、容体が急変した>という。
<24日午前6時2分、腸閉塞(ちょう・へい・そく)のため東京都内の病院で死去した。84歳だった。>
いずれは、と思いつつも、とうとうその日がやってきました。
正直残念です。
お兄様の茂太先生が亡くなられたとき、総じて長寿なご一家だと思っていました。
次は北さん(私にとっては本当は「先生」と呼ぶべき存在ですが、「先生」というよりは「北さん」と呼ぶ方がふさわしい感じがする人柄です。)の番だなあ、とは思っていたのですが…。
思えば、
高校時代私をして、将来物書きになりたい、と思うようにさせたきっかけを作った人とも言えます。
当時の北さんは、司馬遼太郎氏などと共に長者番付の作家部門の上位に名を連ねる流行作家の一人でした。
(私も微力ながら協力した一人でした。)
時にテレビにも出演され、決して滑らかとは言えないおしゃべりながら、いかにも北さんらしい軽妙なお話をされていたものでした。
私は、近所の本屋で見つけた角川文庫版の『どくとるマンボウ航海記』を読んだのが最初でした。
その後『昆虫記』を読み、『船乗りクプクプの冒険』を読み、『幽霊』で完全にファンになりました。
さらに、『怪盗ジバコ』や『さびしい王様』シリーズといった軽小説や『青春記』他のマンボウものはもちろん、芥川賞を受賞した「夜と霧の隅で」はじめ初期短編集、登山もの『白きたおやかな峰』、斎藤家をモデルにした大長編『楡家の人々』など数々の本を読みました。
友人でもあられた狐狸庵先生こと遠藤周作氏もそうですが、一方でシリアスな純文学を書きながら、一方で痛快なユーモア・エッセイをものにし、さらにエンターテインメント小説も書けるという才人でもありました。
誠にさびしい思いです。
先日、最近出た文庫本『マンボウ家族航海記』(実業之日本社文庫)の巻末解説で娘のエッセイスト斎藤由香さんの文章で、かなり弱っておられると知り、少しでも長生きしてもらいたいものと願ったものでした。
しかし…。
考えてみれば、この本の冒頭が「葬式」―お母さんの輝子さんの―というのは、いかにも…、という感じです。
ご冥福をお祈りいたします。
北杜夫[本名:斎藤宗吉(さいとう・そうきち)]1927年5月1日-2011年10月24日
・【北杜夫さん死去】重厚な純文学と、ユーモア作品が同居 - MSN産経
・asahi.com(朝日新聞社):作家の北杜夫さん死去「どくとるマンボウ」シリーズ...
・作家·北杜夫さん 死去 NHKニュース
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