読書の効用:最初の一冊の選び方(4)文学は連続している
早わかり世界の文学―パスティーシュ読書術 (ちくま新書)/清水 義範
私の読書論-24-初心者のための読書の仕方を考える(7)
最初の一冊の選び方(4)文学は古代から現代まで連続している
―第65号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」別冊 編集後記
★古典から始める レフティやすおの楽しい読書★
2011(平成23)年9月15日号(No.65)-110915-
私の読書論-24-初心者のための読書の仕方を考える(7)
最初の一冊の選び方(4)文学は古代から現代まで連続している
http://archive.mag2.com/0000257388/20110915120000000.html
今月は、文学は古代から現代まで連綿と続いているものだ、というお話でした。
本誌本文で紹介しました、
清水義範『早わかり世界の文学―パスティーシュ読書術』ちくま新書712(2008.3.10)で、
本を読むこと、読書の効用について書いています。
一つは、【論理的思考力を養う】。
『ファーブル昆虫記』の「不思議なスカラべ」という章に関してこう述べています。
《... という話の進め方の論理性ね。頭のいい人間はそういうふうに考えるのか、というくらいの論理的思考力。本を読んで納得していくということは、論理的思考力があるということですから、そういう論理的思考力だって読書すれば身につくの ですよ。... 思考の魅力みたいなことに気がつくでしょう。それが読書の面白さですね。》「講義II 読書で学べること」p.83-4
次に、小説の効用ですが、一つは【人間を知ることができる】。
人間の心の動きについて知ることができる。
《... 小説を読んでいる人は、人間について多くを学ぶことになり、そういう豊かさが増すんだということを言ってきました。言い換えれば、人の心の動きがわかるようになるってことですね。持ってるとすごくチャーミングな能力ですよ。》同p.91
もう一つは、【社会を知ることができる】。
《社会っていうのは、人間が造っている世の中の構造だと考えればいいでしょう。その世の中が、どんなふうに人間を縛りつけているかってことに気がつくのも、社会がわかるっていうことです。人間はどういうふうに自由であって、どういうふうに自由ではないかわかるのも、社会が見えるということです。》同p.92
ゾラの小説『居酒屋』を例に挙げて説明しています。
《... 小説を読むということは、人間には心があるのだということに気がつくことで、人間を理解することにつながるんですね。[...] 小説というものは、自然のうちに書かれた時代だとか、社会というものが色濃く反映されているものです。その時代の一番の文学のテーマは何かというのは、その時代はどういう時代だったかということに関係しているのですから、そこまでわかってくるん です。》同p.101-2
そこで、氏は、古典でなくても現代ものでもいいんですよ、とも書いています。
たとえば、『世界の中心で、愛をさけぶ』でも『電車男』のようなものでも、
《今、話題のものを読んで行けばいいんです》(同p.104)。
《知らないうちにガンガンいろいろなことを教えてくれるはずだ》(同p.104)と。
その時代を表すものが描かれていて、それを読みとれるはずだから、ということでしょう。
この部分は、古典を薦めたい私はカットしたい気持ちですがね。
とにかく、「本を読めば、読んだなりに何かしらプラスになるのだ」、というのが世間一般の「本読み(読書家)」たちの「結論」です。
私も同感!
―というところで今回はおしまい。
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・完訳 ファーブル昆虫記 第1巻 上/ジャン=アンリ・ファーブル
・居酒屋 (新潮文庫)/ゾラ
※
『世界の中心で、愛をさけぶ』について―
この作品は本で読むより、映画やドラマの方が面白いのかもしれません。
本は読みましたが、基本的にはよくあるお話で、現代版リメイクといったところ。
私より上の世代には『愛と死をみつめて』(大島みち子・河野実/著 1963)という名作がありました。
リメイクとしては良くできているとは思いますが、タイトルも"パクリ"だし、
どうしてもマイナス評価にならざるを得ないところがあります。
純愛ものとして読むなら、伊藤左千夫『野菊の墓』の方をおススメします。
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・野菊の墓 (新潮文庫)/伊藤 左千夫
・愛と死をみつめて ポケット版 (だいわ文庫)/大島みち子
・日活100周年邦画クラシック GREAT20 愛と死をみつめて HDリマスター版 [DVD]/吉永小百合,浜田光夫,笠智衆
・世界の中心で、愛をさけぶ/片山 恭一
・世界の中心で、愛をさけぶ スタンダード・エディション [DVD]/大沢たかお,柴咲コウ,長澤まさみ
・世界の中心で、愛をさけぶ <完全版> DVD-BOX/綾瀬はるか,大島さと子,桜井幸子
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※本稿は、『レフティやすおの作文工房』より
2011.9.15「読書の効用:最初の一冊の選び方(4)文学は連続している」を転載したものです。
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