3.11からのソロー:非暴力抵抗主義『市民的不服従(市民の反抗)』H・D・ソロー
(画像:ソロー「市民的不服従」と関連本)
※本稿は、5月31日発行の無料メルマガ『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』第58号
2011(平成23)年5月31日号(No.58)-110531-非暴力抵抗主義『市民的不服従(市民の反抗)』H・D・ソロー
「別冊 編集後記」を『レフティやすおの作文工房』より3.11からのソロー:非暴力抵抗主義『市民的不服従(市民の反抗)』H・D・ソローを転載したものです。
ここ何年か前から気になっている作家が、このH・D・ソローでした。
初めてソローの名を知ったのは、いつだったでしょうか?
まったく記憶にありません。
しかし、いつ頃からか、ソロー『ウォールデン 森の生活』を読んでみようと思うようになりました。
その理由は、この本からの引用となる名言の類を色々と読んでいたからでした。
たとえば、こういうものがあります。
《貧しくても、生活を愛したまえ。 》『森の生活』(下)岩波文庫
《書物は、それが書かれたときとおなじように思慮深く、また注意深く読まれなくてはならない。》『森の生活』(上)
私はいわゆる名言集といったものが好きで、あれこれ読んでいます。
こういう本は閑な時に気軽にペラペラやって、それでいて、何かしら手に入れることができ、勉強した気分になり、偉くなったような気にさせてくれるので、非常にお得感のあるものです。
私はそういうものを入り口にして、色々な古典の名著・名作を読むようになりました。
ですから、こういう本をバカにする人もいますが、意外に効用あり、なのです。
ただ、気をつけなくてはいけない点は、できるだけ、引用文献の情報を正確に記しているものを選ぶ、ということです。
そうでないと、いざその本を探す場合大変です。
その本を読んでいても、肝心のどういう場所で登場するのかがわかっていると、気が楽です。
さて、ソローを読むようになって、すぐに知ったのがこの『市民的不服従』であり、キング牧師とのつながりです。
(余談になりますが、実は私にとって、キング牧師は特別な人物でもあるのです。)
当初、自然に寄り添い、物質的な贅沢に流されず、むしろ貧しいともいえるほどの質素で、簡素な生活の実践を綴った『ウォールデン 森の生活』のソローとは違い、こちらのソローは私には少し意外でした。
しかし、あれこれ読んでいるうちに、何かしらそこに統一したものを感じるようになりました。
この辺が、本文にも書いた事柄でもあるのですが…。
ぜひ、この二つを読んでいただきたいと思います。
3.11の東日本大震災を経験した私たちは、今、何かしら現状に対する不信感を持っているのではないでしょうか?
今までの生活に対して。
西洋近代思想の基盤である、自然は人間が征服支配し、利用するためにあるとの考え。
科学技術でそれが成し遂げられるという考えに、私たちは慣らされてきました。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
もう一度、日本人の原点に立ち返って考えますと、日本という国に住む私たちは、自然の猛威と恵みとの間で過ごしてきた、といえます。
自然に寄り添って生きてきたのです。
そういう生き方は決して間違いではなかったのではないでしょうか?
科学技術を否定するものではありませんが(ソローも省エネのため、暖炉や焚火をやめ、調理用ストーブを使っていました!)、もう少し、本当の省エネやエコ・ライフ、持続可能な生き方を考える必要があるように思います。
私たちは、今、ソローのように、西洋近代思想をもう一度見直し、東洋思想も含めて古代からのあらゆる人間の英知を結集して、新たな生き方を模索しなければならないような気がします。
※ 本誌で取り上げた本(抄)他
【H・D・ソロー/著】
・『ソローの市民的不服従―悪しき「市民政府」に抵抗せよ』佐藤雅彦/訳 論創社 2011.3.20
・『市民の反抗 他五篇』飯田実/訳 岩波文庫 1997.11
・『ウォールデン 森の生活』今泉吉晴/訳 小学館 2004.5.1
・『ソロー語録』岩政伸治/編訳 文遊社 2009.10
・『市民的不服従 政治理論のパラダイム転換』寺島俊穂/著 風行社 2004.3
・『平和をつくった世界の20人』ケン・べラー、ヘザー・チェイス/著 作間和子、淺川和也、岩政伸治、平塚博子/訳 岩波ジュニア新書 2009.11.20
※【『ウォールデン 森の生活』H・D・ソロー】
4.30 『古典から始める レフティやすおの楽しい読書』
・2011(平成23)年4月30日号(No.56)-110430-簡素で高貴な生活『ウォールデン 森の生活』H・D・ソロー
・簡素で高貴な生活『ウォールデン森の生活』H・D・ソロー―第56号「古典から始める レフティやすおの楽しい読書」
「別冊 編集後記」~『レフティやすおの作文工房』~
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