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2007.07.13

異色作家短篇集(新装版)19 棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇

異色作家短篇集(新装版)第18巻『狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇』に引き続き、


早川書房/刊 異色作家短篇集(新装版)第19巻 若島正/編『棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇』を読みました。


異色作家短篇集の掉尾を飾るオリジナル・アンソロジー三巻の第二弾、イギリス(アイルランドを含む)作家の作品十三篇を収録


ハヤカワ・オンラインのページによると、以下のようになります。


「ここに、そこに、あそこにも 隠れているぞ 目には見えない影法師」


【収録作品】時間の縫い目(ジョン・ウインダム)/水よりも濃し(ジェラルド・カーシュ)/煙をあげる脚(ジョン・メトカーフ)/ペトロネラ・パン--幻想物語(ジョン・キア・クロス)/白猫(ヒュー・ウォルポール)/顔(L・P・ハートリー)/何と冷たい小さな君の手よ(ロバート・エイクマン)/虎(A・E・コッパード)/壁(ウィリアム・サンソム)棄ててきた女(ミュリエル・スパーク)/テーブル(ウィリアム・トレヴァー)/詩神(アントニイ・バージェス)/パラダイス・ビーチ(リチャード・カウパー)


 


前巻のアメリカ篇とはかなり趣が変わっています。
前巻は、SF系のエンターテイメントが中心でした。


今回は、いかにもイギリスの怪奇幻想談といった雰囲気の小説が多くを占めています。


それにしても、前巻は、20~25年ぐらい昔を思い起こすラインナップでした。


今回は、もう少し遡って、25~30年、あるいは35年前の一般向けの本を読み始めた当時を思い出させるようなラインナップがそろっています。


ミステリマガジンやSFマガジン、創元推理文庫のアンソロジーなどで一作二作読んだような作家が並んでいます。


ウインダム(唯一?のSF系の作家によるSFですが)を筆頭に、カーシュ(この人だけは最近短編集を読みましたが)、メトカーフ、ウォルポール、ハートリー、エイクマン、コッパード、スパーク、バージェス。


ジョン・キア・クロス、ウィリアム・サンソム、ウィリアム・トレヴァーの三人が初顔でしょうか。


 


では、私のベストを紹介しましょう。


一番は、なんといっても表題作でもある、ミュリエル・スパーク「棄ててきた女」


短いけれど、こういうのはいいですね。
(でも、ホントに本邦初訳? どっかでこういうものを読んだような気もしますが…。)


この作家はなかなか興味深いものを書いていました。


記憶によれば、「落葉掃き」という作品がありました。


調べてみますと(ベッドの下這いずって探すの大変なんだから! 一部ネット翻訳アンソロジー/雑誌リスト:雑誌一覧:ミステリマガジン/EQMMによる。)、
The Leaf-Sweeper、『ミステリマガジン』1971年6月号や、角川文庫版の『クリスマス・ストーリー集1/贈り物』に収録されています。(二冊とも手元にあるにはあるんですが…。)


昔のノートを紐解きますと、私の71年度の『ミステリマガジン』掲載短編の<年間ベスト12>の7位に選んでいます。
(こんな遊びしてたんですね。ちなみに、1・エリン「画商の女」2・ラファティ「恐るべき子供たち」3・ラニアン「プリンセス・オハラ」4・フィニイ「ゲイルズバーグ...」5・ジャクスン「家じゅうが...」―みんな懐かしいですね。不思議と異色作家系が上位に入ってますね。本格的なミステリがない?)


 


次は、時間(異次元?)SFだけれど、シェイクスピアは本当にあのような名作群を一人で書いたのか、という謎に挑む、アントニイ・バージェスの「詩神」を興味深く読みました。


三番目は、同じく時間SFのジョン・ウインダム「時間の縫い目」
ちょっと平凡な選択になりますが。昔懐かしいほのぼの系です。


意外なところでは、消防士経験を生かしたウィリアム・サンソム「壁」
どうってことはないのですが、こういうところに混じっていると、おもしろく感じます。


 


本格的な怪談物は、それなりに面白いのですが、これはすごい! というレベルまでは…。
また、普通小説風の奇談?も、それなりにいいのですが、もう一つ突き抜けたものを感じません。


微妙に読み方・感じ方が昔と変わってきているような気がします。


ラストの(もろにSFミステリ系の)、リチャード・カウパー「パラダイス・ビーチ」がそこそこおもしろいと感じるのは、ちょっと自分としては許しがたいような気もしています。


怪奇小説は、昔はもっとおどろおどろしいもの、出るぞ出るぞ的なものが好きだったはずなのですが…。
でも、そういう作品は、異色作家短篇集のイメージとは違うからでしょうか。


これでいいのかなあ。



異色作家短篇集 新装版 19
棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇
The Girl I Left Behind Me and Other Stories
若島 正(編)
早川書房 2007.3.23刊


 


 


●2007.07.22 異色作家短篇集(新装版)20 エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇


 


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