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2007.06.21

異色作家短篇集(新装版)18 狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇

久しぶりに本の話題です。


早川書房/刊 異色作家短篇集(新装版)第18巻 若島正/編『狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇』を読みました。


異色作家短篇集の掉尾を飾るオリジナル・アンソロジー三巻の第一弾、アメリカ作家の作品十一篇を収録


ハヤカワ・オンラインのページによると、以下のようになります。


「11人がやって来て 大風呂敷を広げてみれば 煌めく才気が目を射抜く」


【収録作品】
ジェフを探して(フリッツ・ライバー)/貯金箱の殺人(ジャック・リッチー)/鶏占い師(チャールズ・ウィルフォード)/どんぞこ列車(ハーラン・エリスン)/ベビーシッター(ロバート・クーヴァー)/象が列車に体当たり(ウィリアム・コツウィンクル)/スカット・ファーカスと魔性のマライア(ジーン・シェパード)/浜辺にて(R・A・ラファティ)/他の惑星にも死は存在するのか?(ジョン・スラデック)/狼の一族(トーマス・M・ディッシュ)/眠れる美女ポリー・チャームズ(アヴラム・デイヴィッドスン)


 


で、読後の感想です。


まずは、予想以上のでき。
本邦初訳作品を集めてということで、どの程度過去のこのシリーズの雰囲気に溶け込めるのかという不安もありました。
その点ではよくできています。


(雑誌に埋もれた旧作を使って掘り出し物をそろえる選集を期待していた部分もあるのですが。)


序盤、50年代風のホラーやクライム・ストーリイなどでその気にさせて、
(「どんぞこ列車」で、オッチャンをちょっとほろっとさせたり)
実験小説風があったりしながら、中盤で一発食らわし、SF風で攪乱させた上で、ラスト二編で締める感じです。


 


私のお気に入りは、


本邦初紹介だろうという作家、ジーン・シェパードの「スカット・ファーカスと魔性のマライア」(浅倉久志/訳)
少年時代+魔法のお店ものの一篇というところか。


いかにも怪しい婆さんの言葉―
 <「じゃ、幸運を祈るよ、坊や。気をつけな、そいつは性悪女だからね」> お決まりのラスト―
 <それからもしばらくのあいだ、私は捜索をつづけた。だが、あの店は二度と見つからなかった。>


二番目は、
巻末のアヴラム・デイヴィッドスン「眠れる美女ポリー・チャームズ」(古屋美登利/訳)


架空の王国を舞台にした、エステルハージ博士の連作シリーズの一篇という。
雰囲気も気に入りました。もう少し読んでみたいシリーズです。


見世物の眠れる美女もの。
ラストのオチがなくても私は十分楽しめました。
 <「こうして、いかに速く神話が作られ、伝説が始まっていくことか……ああ! まさか!」> ポーの「ヴァルドマアル氏の病床の真相」などを引っ張り出したり、小細工も楽しめます。


 


三番目は、むずかしい。
表題作(トーマス・M・ディッシュ「狼の一族」)もいいですし、チャールズ・ウィルフォードの「鶏占い師」も、私はどっちかというと怪奇派で、こういう持って行きかたも好きです。
ジャック・リッチー「貯金箱の殺人」も、いかにも彼らしいという気がします。
ついでに、ハーラン・エリスン「どんぞこ列車」も付け加えておきましょうか。


 


三巻にわたる新アンソロジーの開幕第一弾だったのですが、エンタテイメント系で固めた感じのこのアメリカ篇、比較的知った名前が多く、まずは無難にスタートというところでしょうか。
次に期待が持てました。



異色作家短篇集 新装版 18
狼の一族 アンソロジー/アメリカ篇
His own Kind and Other Stories
若島 正(編)
早川書房 2007.1.24刊


 


 


●2007.7.13 異色作家短篇集(新装版)19 棄ててきた女 アンソロジー/イギリス篇 ●2007.7.22 異色作家短篇集(新装版)20 エソルド座の怪人 アンソロジー/世界篇</a

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