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2006.06.21

福沢諭吉『学問のすすめ』二冊の文庫本

いやあ、ホントにすごい本です。
そして、偉大な人物です。
幕末から明治にかけてこの人物がいなければどんなことになっていたか、という気にさせます。
もちろん、きっと彼に代わるような人物が現れていたでしょうが…。

『学問のすすめ』です。福沢諭吉です。
福沢諭吉といえば、一万円札の人。明治時代の思想家・教育者、慶応義塾の創立者です。


最近読んで感銘を受けた本といいますと、今年に入って相次いで文庫版が出ました、福沢諭吉『学問のすすめ』、これが一番です。

現在、政治的には、諸外国とのあいだに様々な問題が発生し、国内にも考えの違いが顕著となっています。
また、経済・社会面でも、拝金主義を思わせる事件が相次ぎ、一方では様々な部門で無責任な管理体制が明らかになってきました。
年間の自殺者が3万人を越える状況が8年も続いているといいます。
一方では少子化で出生数が死者を下回り、人口が減少する時代になってきたといいます。

国家や社会のあり方、人権および国民としての責務、政治と経済の関わり、そして個人としての人の生き方について、などなど改めて考えるべき必要がありそうです。

そんな折、維新直後の激動の時代に書かれた、先人のこの名著が役に立ちそうです。

初編冒頭の「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」の言葉は有名で知らぬ人はいないでしょう。
しかし、実際に本書を読んだ人がどれぐらいいるでしょうか。

読もうと思ったけれど、途中で挫折したという人も少なくないかもしれません。
明治の人びとにやさしく書いたといわれる本書ではありますが、すでに135年がたち、現代人には読みにくいものになっています。

さいわい現代人にも読みやすい形でふたつの本が文庫版で出版されました。


6月4日に『レフティやすおの本屋』にこの二冊を追加しました。

ひとつは、
<新しい生活のために/古典入門編>の棚に収めた、
ビギナーズ日本の思想「学問のすすめ」
福沢諭吉/著 佐藤きむ/訳 坂井達朗/解説 角川ソフィア文庫 SP330 角川学芸出版 2006年2月
スマイルズ『自助論』の中村正直訳『西国立志編』共々、明治初期の二大ベストセラーのひとつの現代語訳版。見出しをつけて読みやすく段落わけしてある。激変の時代、維新直後の若者たちを大いに鼓舞した名著。国家と個人のあり方、新しい時代の学問とは何か、どう学ぶべきか、をやさしく説いた。
参考として、第七編への保守派の批判に答えた「学問のすゝめの評」を収録。

もうひとつは、
<新しい生活のために/古典編>の棚に収めた、
学問のすゝめ
 福沢諭吉/著 伊藤正雄/校注 講談社学術文庫 1759 講談社 2006年4月
原文を尊重しつつ、適宜ルビをつけ、新字体に改め、段落ごとに見出しを追加し、豊富な注釈を付し、現代人向けにも読みやすくした。
1967年12月旺文社刊『学問のすゝめ』を底本にしたもの。

ともに、巻末に丁寧な解説が付いています。

文中に挙げられた例え話は古臭くなり、ピンと来ない部分もあるでしょう。
あるいは、今では思わず笑ってしまうようなたとえ話も少なくありません。
それだけに親しみやすくもあり、福沢諭吉がいかに苦心して書いたかが伝わって来ます。

百数十年を経た現在でも、物事の本質は変わりません。
人の世に役立つ学問―実学を身に付けよう、個人の独立が国家の独立につながる、の考えは今も変わらず有効です。

この機会にぜひご一読を。


●参照:「本屋」の店長日記 2006.6.4 文庫版「学問のすすめ」二点追加

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