クリストファー・プリースト『魔法』
爆弾テロに巻き込まれ負傷した報道写真家リチャード・グレイは、リハビリ中。記憶喪失に陥り、事故以前数週間の記憶がない。そこへスーザンという元ガールフレンドという人物が現れる。
彼は恋におち、彼女との会話と催眠療法のおかげで、徐々に記憶を取り戻すのだが…。
スーザンをめぐる奇妙な三角関係の物語の行く末は…?
クリストファー・プリースト『魔法』古沢嘉通訳 ハヤカワ文庫FT(FT378) 2004(平成16)
1995年刊早川書房<夢の文学館>の文庫化(訳文改稿) 原著1984,85年刊(85年再版による訳書)
まさに魔法の物語。
一転二転する物語における真実とは…。
とにかく読んでください。としか言えない。
ストーリイを紹介することはたやすいのだが、それでは多分何も伝わらないと思う。
第一部から第六部まで記述の視点となる人称を変え、この不思議な物語は語られる。
リチャードの視点から見た物語、スーザンの視点からの物語、三人称で語られる章…。
どれが真実の姿を映しているのか、まさに魔法の雲に包まれたようなストーリイである。
書名である「glamour(グラマー)」という言葉に多くの意味が込められている、という訳者と解説の法月綸太郎各氏のお話の通りであろう。
ジャンル的には、SFともファンタジーともメタ・フィクションとも言えそうで、記憶喪失を扱ったミステリとも言える。まあ、無難にいえば奇想小説と呼ぶのが一番ふさわしいのかもしれない。
とにかく、おもしろかった。
次はいよいよ、評判になった『奇術師』を読んでみよう!
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