飢えと渇き―左専用のグローブ/筑紫哲也「私の<盗み読み>時代」より
岩波文庫編集部編『読書のすすめ 第10集』岩波書店に、筑紫哲也「私の<盗み読み>時代」という一文が収録されています。
その枕に当たる部分にこんな文章がありました。
飢えと渇きは、食べものについてだけではなかった。/終戦後、多くの男児たちは野球少年となったのだが、私もふくめて、その少年たちにとって、満足な野球用具がどんなに渇望の的だったことか。/(略)元野球少年のかなりの人たちが、長じて収入のゆとりが生れると、使いもしないグローブを買ったことを私は知っている。/左利きで、ついぞ左専用のグローブに出会うことのないまま野球少年時代を送った私がまずやったのも、晴れてそれを手に入れることであった。
「晴れて」の部分が傍点付きで強調(照れ隠し?)されています。
筑紫氏ほどではないにしても、私も家が貧しかったこともあり、子供の頃は左専用のグローブにあこがれたものでした。運動音痴の私でしたが自分のグローブがあれば…、などと思ったことがあります。
そして、後年働くようになり、あちこちで左用のグローブも見かけられるようになると、ひとつ欲しいなぁと思ったものでした。実際に買うことはありませんでしたが。
子供にとってこういうものはひとつの武器でもあり、戦友でもあるわけです。人生の荒波のなかを戦い抜くための。
また、仲間に入れてもらえるかどうかの分岐点ともなります。道具は仲間入りするための許可証でもあるわけです。
同じように、左利きの子にとって左利き用品というのは、生活の利器であり、頼れる親友でもあると言えるでしょう。
ぜひ、左利きの子には左利き用の道具を与え、その力を人並みに活用できる機会を与えてあげて欲しいと思います。
※岩波文庫編集部編『読書のすすめ 第10集』は、非売品です。岩波文庫取扱書店で配布中です。(お早めに!)または、こちら⇒ http://www.iwanami.co.jp/moreinfo/bun_nonfiction/susume10.html
*「私の<盗み読み>時代」収録の<各界34人の読書のすすめエッセイ集>
『読書という体験』 岩波文庫編集部/編 (岩波文庫2007.2)
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