エド・マクベインが死んでいる
先週の金曜日、八日の夕刊にエド・マクベイン(本名エヴァン・ハンター)の訃報が出ていた。
七月六日、喉頭がんのため米コネティカット州の自宅で死去、享年七十八歳。慎んでご冥福をお祈りいたします。
エド・マクベインは、人気警察小説、87分署シリーズで有名なアメリカのミステリの巨匠。
1954年(ちなみに、私の生れた年)に発表した『暴力教室』(ハヤカワ文庫)で一躍人気作家となり、1956年に発表したミステリ『警官嫌い』(ハヤカワ・ミステリ文庫)で警察(捜査)小説というジャンルを確立し、以後このシリーズは晩年まで書き継がれ50作を越える人気シリーズとなった。他にも、ホープ弁護士シリーズ、エヴァン・ハンター名義の普通小説やミステリ風作品、カート・キャノン名義の酔いどれ探偵カート・キャノンものなど、著書多数。ヒッチコック監督の映画『鳥』の脚本家としても有名。
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私が初めて氏の本を読んだのは、記憶をたどれば、角川文庫の青春小説『去年の夏』(1968/角川文庫版・井上一夫訳・昭和45年刊)だった。これは映画化もされた作品で、ミステリ作家になる人らしい、ちょっと犯罪のにおいのする小説だった(と思う)。『冬が来れば』(ハヤカワ・ノヴェルズ)という続編もある。これも持っている。(また、そのうち実物を出して調べてみよう。)
その後に読んだのが、例の87分署シリーズだ。
何冊か読んだ中で一番印象に残っているのが、分署の刑事バート・クリングの恋人が事件に巻き込まれ殺される『クレアが死んでいる』(ハヤカワ・ミステリ文庫)だ。そんなんありか、といった感じで当時純情な青年だった私にはショックだった。
恋人の知らない部分を探るという展開がスリリングだ。あなたはご自分のパートナーのことをどれだけ知っていますか?
第十作目の『キングの身代金』(ハヤカワ・ミステリ文庫)は、黒澤明監督によって『天国と地獄』というタイトルで映画化されたのは有名なお話。
またこのシリーズは、渡辺謙主演で「わが街」シリーズとしてテレビ・ドラマ化されている。
このシリーズは半世紀に渡って書かれ、日本でも人気が高く、継続して翻訳紹介されてきた。
そんな中でおもしろいと思うのは。「デフ・マン」の訳語の変遷だ。シリーズ屈指の悪役の名前なのだが、その昔は「つんぼ男」、その後「死んだ耳の男」、そして今ではカタカナにしただけの「デフ・マン」へと変わって来ている。
年代もののシリーズならでは話題だろう。
シリーズ外でおもしろかったのは、エヴァン・ハンター名義の『ハナの差』(ハヤカワ文庫)、コミカル・タッチの犯罪小説だった(よね?)。
幸い私には、まだ未読の氏の本がたくさんある。この機会にまたボチボチ読んでみようと思う。
*版元、早川書房のサイト:http://www.hayakawa-online.co.jp/
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