渋沢栄一 論語の読み方
五十にして「論語」を読む ―その三―
最近読んだ『論語』関係の本で楽しかったのが、『渋沢栄一 論語の読み方』竹内均編・解説 三笠書房 2004年刊 です。
これは明治の実業界の重鎮、渋沢栄一が人生の教えとして、そろばんとともに座右の書としていた孔子一門の教えである『論語』を説く、『論語講義』という本のエッセンスを集大成したもので、以前、三笠書房より『孔子 人間、どこまで大きくなれるか』『孔子 人間、一生の心得』の二冊として出版されたものを元に再編集された本です。
『論語』ひとつひとつの文章を、幕末に豪農の息子に生れ、後に一橋家に仕え、明治に入っては新政府の大蔵省の要職を歴任、さらに下野して実業界で五百を越える会社を設立した氏の実人生を例に取って説明するものです。
幕末から維新にかけての英傑、自身が仕えた徳川慶喜はじめ、西郷隆盛、木戸孝允、三条実美、大久保利通、大隈重信、坂本龍馬、伊藤博文、板垣退助、陸奥宗光、岩倉具視、山県有朋、井上馨、井伊直弼、近藤勇、原敬、などなど書ききれないほどの人物名が次々と登場します。
彼らについての氏の評価も楽しみです。
例えば、"木戸孝允は「温にして厲(れい)」、西郷隆盛は「威あって猛からず」、徳川慶喜は「恭にして安」という人物といえる"という。(述而篇・これぞ沈勇、大勇の人・20)
また、時代をさかのぼって、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などの戦国武将の話など、実に時代物歴史物好きな人なら興味深い話題があふれています。
さらに、荻生徂徠などの江戸時代の『論語』研究者の説も交えて、その意味の解釈を示しています。
『論語』なんて堅苦しい教訓話でおもしろい読み物なんかじゃないと思っている人も、この本なら楽しく入門できるのではないかと思います。
特にビジネスマンは、あの渋沢栄一の書いた本ですから、ビジネスにも応用が効くことがわかりましょう。
ビジネスマン、時代歴史物好きの人向けの『論語』入門書と言えるでしょう。
※本書は『レフティやすおの本屋』「本店」新しい生活のために/古典入門編で紹介しています。
++ 『論語』に関する過去の記事 ++
2005.6.24 五十にして「論語」を読む ―その二― ビギナーズ・クラシックス 中国の古典『論語』加地伸行
2005.6.17五十にして「論語」を読む
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