左投手は危険がいっぱい―『サウスポー・キラー』水原秀策
ダブルプレイ―おお、なんという美しい響きの言葉だろう。私は思わずぽんと左手でグラヴを叩いた。
『サウスポー・キラー』水原秀策 宝島社(2005年)を紹介しましょう。
2004年度第三回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。
もちろん私が興味を持ったのは、このタイトルでした。しかし、それだけではありません。
巻末選評によりますと、内容はディック・フランシス・タイプのハードボイルド野球ミステリーだというのです。
これはフランシス・ファンとしては見逃せません。
期待にたがわず、フランシスの主人公張りのクールで頭脳派のサウスポー、左ピッチャー沢村が主役です。彼の一人称で綴られる物語です。時にちょっとくさいせりふもありますが…。ロマンスも盛り込まれ、まずまず心地よい読後感です。
ストーリイは―
プロ入り二年目のローテーション投手の沢村は何者かに襲われます。そのとき男は約束を守れという謎の言葉を残します。さらに後日、チームの先輩で同じく左投手三浦の百五十勝達成記念パーティで再び暴行事件に巻き込まれます。幸い、同席していた女優黒坂美鈴や三浦に発見され、事なきを得ますが…。
なんとその後、球団やマスコミに沢村は八百長をやっているという怪文書がメールで送られ、その添付ファイルには、最初の暴行事件の際のビデオが添えられています。そこには確かに約束を守れの一言が。
彼は自宅謹慎処分に―。
その後、何とか解除され二軍で投げることになり、また彼の無実を叫ぶ声を支持するマスコミも現れ、無事一軍に復帰します。
しかし、彼はこの疑惑を晴らすべく事件解決に努めます。そして浮かび上がってきたのは、彼のチームでは左投手ばかりがトレードされているという事実でした。
さらに暴行事件の被害者で選手生命を失くした左投手の存在も浮かんできます。
一体このサウスポー・キラーの正体は?
途中で予想は付きますが、黒坂美鈴の謎の行動はなかなかでした。
ラストの犯人との出会いと別れも意外でした。
将来が楽しみな新人作家の登場です。
*
この記事のタイトルを見て、ニヤッとした人は正解です。
わからない人は、少し勉強してください。左利きの勉強を。
最後に一言、私は登場人物の名前が少しひっかかりました。ちょっとね。
まあ、近鉄バファローズ・ファンだから、というわけではありませんが、ね。
もうひとつ。
言い忘れていましたが、この球団やある人物はあのチームとあの人がモデルのようです。
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