ビギナーズ・クラシックス 中国の古典『論語』加地伸行
五十にして「論語」を読む ―その二―
いくつか読んだ『論語』関係の本の中で、今一番のおすすめは、加地伸行先生の『論語』です。
講談社学術文庫版は、『論語』の現代訳本の中では、一番新しいものではないでしょうか。平成16年3月発行です。
一部新解釈もあり、図版を含め、字も大きめで、わかりよい、読みやすいものになっているように感じます。
もうひとつ、実はこちらが私は好きなのですが、角川ソフィア文庫<ビギナーズ・クラシックス 中国の古典>『論語』です。(※)
先生が、今はまだ幼い自分のお孫さんが中学生になったら読んで欲しい、という願いをこめて中学生にわかるように書いた(でも決してそれは程度を落としたというのではなく、気持ちの上で語りかけるものとして)ものです。
昔ならこんなことを聞けばかえってじじむさいとか何とか言って敬遠していたでしょう。ところが、加齢のせいか、この言葉に心打たれました。優しさを感じました。この本は読まねば、という気になりました。
読んでみると本当にわかりやすく書かれています。
例えば「仁」について―。この字の左側は「人」を表しています(これは知っています)。右側(二)は敷物を意味するそうです。そこで、人が敷物の上に座っているとほんわか暖かい、この暖かい気持ちで人と接することが「仁」なのだというのです。
なるほどそういうことか、とよくわかります。
私は孔子の生涯といったものについて書いた本も先に読んでいました。だいたいのことは知っている(つもりです)ので、孔子の生涯に則って書き進める第一部は、ちょうどおさらいするようで、楽しく読み進めました。
第二部の『論語』のことばの各章も、儒教についての簡単な講義も含めて『論語』や儒教というものが良く理解できました(特に「孝」)。
まさに入門書としてはうってつけな気がしました。
漢文の知識がなくても理解できるようにと配慮されているので、漢文は横目で眺めるだけでいいわけですし、書き下し文はふりがなが全部振ってあり、スイスイと読み進められます。
先生は、講談社学術文庫版を書き上げた後にこちらの執筆に入られたそうで、平成16年10月の出版の本です。学術文庫版を元に一段と平易に解説したものになっています。
50歳にして『論語』を初めて読んだ私を待っていたかのような出版です。もし十年前に『論語』を読もうとしていたら、この本はまだ出ていなかったのです。
世の中にはめぐり合わせというものが確かにあるのだなぁ、と改めて実感しました。
※本書は「レフティやすおの本屋」本店「新しい生活のために/古典編」で紹介しています。
※参照:「「レフティやすおの本屋」店長日記」本店「新しい生活のために/古典編」に角川ソフィア文庫『論語』を追加
―追記(2005.8.12):本書は『レフティやすおの本屋』「本店」新しい生活のために/古典入門編に移動しました。
++『論語』に関する記事 ++
・2005.7.5 五十にして「論語」を読む ―その三― 渋沢栄一 論語の読み方
・2005.6.17五十にして「論語」を読む
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