左手書きの書『月人石』-乾千恵の書の絵本
1月27日夕、ふらりと入った本屋で平積みされていた一冊の本に目が留まりました。
「確かにそうだ、左手に持っている、筆を。」
およそA4ぐらいの大きさの横組の本でした。なんと言ってもその表紙です。
床に膝をつくようにすわり、左手に太い大筆を持ち、左から右へと書をしたためている人物を向かい側から撮っている写真です。
「左手で字ィ書いたはる!」
もうそれだけで感動ものです!
本を手に取ってみました。
『月人石』乾千恵 福音館書店〈こどものとも傑作集〉 ―サイドバー:左利き関連本 参照―
パラパラとのぞいて見ました。
まだ半信半疑でいましたが、確かにその筆の運び具合も、墨のかすれ具合も左から右に筆を押し付けているような感じに見えます。
横棒が左から右へ少し右下がりになっているものもあります。
トメやハネの具合も微妙に右手書きの書とは違い、明らかに左手書きしているように見えます。
昔子供の頃に左手でお習字したときのことを思い出させます。
写真のミスでも、トリックでもなく、正真正銘左手書きの書です!
大阪在住とあるのが、余計に親近感をそそります。
家に帰って「乾千恵」について調べたいところでしたが、前日からネット接続がうまく行かない状態だったので、あきらめました。
昨日30日から色々調べてみました。
福音館書店|くわしいないよう|月 人 石
「著者紹介」より
乾 千恵(いぬい ちえ)
1970年、大阪に生まれる。1990年から各地で、図書館、お寺、学校、美術館、野外(森や畑)などを会場に、書展と語りの場が開かれてきた。作品集『雲きれて陽のひかり』(雄飛企画)、作品・エッセイ集『『風」といる人、「樹」のそばのひと』(野草社)、『もじと絵』(アートン)がある。大阪在住。
脳性マヒのため身体が不自由で、左手しか使えない、という車椅子の書家さんでした。
ということで、左利きゆえに左手で書いていると言うわけではないようです。
しかし、左手書きをこうして前面に出していただけると、私たち左手書きの者はとてもうれしいものがあります。
もっと日本人は、文字の左手書きを認めて欲しいと思います。
まだまだ、世間一般に、字は右手で書くものといった一方的な思い込みがあります。きれいな字を書きたければ、左利きでも右手で書きましょうといった指導が幅を利かせていたりします。
実際には、右手書きでも、貧相な字を書く人は少なくないし、字に自信のない人も大勢います。(だからこそ、きれいな字の書き方の本や講座が人気を呼んでいます。)
逆に、左手書きでもきちんとした字を書く人もいます。
乾さんのように、迫力と味わいのある書を書く方もいます。
実際は、右利きの人が多いから右手で書くのが一見当たり前のように思えるだけです。右手で書く人が多いから右手で書きやすくしたり、右手で書いた書き方が美しいとか正しいとしているだけです。
ホントのところは、右手で書きやすい人は右手で書けばいいし、左手で書きやすい人は左手で書けばいいのです。
この本を見てもっと自由な発想のできる人間になりたいものです。
少なくともこの絵本を見た子供たちが、左利きの子は左手で字を書いていいんだ、と考えるようになってくれれば、うれしいです。
逆に、大人の方には、この人は右手で書けないから左手を使っているだけなんだよ、ホントは…式の指導だけはして欲しくはないですね。
私も、墨と筆で何か書いてみたくなりました。とりあえず、手元にある筆ペンでやってみましょうか。
*
月人石-乾千恵の書の絵本
乾 千恵 <書> 谷川 俊太郎 <文> 川島 敏生 <写真> 福音館書店 版
定価840円(本体価格800円) ページ数:28 サイズ:19X27cm
初版年月日:2005年01月20日 ISBNコード:4-8340-2028-2
読んであげるなら 3才から 自分で読むなら 小学低学年から
いのちを感じる文字! 初めて出会う「書の絵本」
この絵本は字を覚える絵本ではなく、字を感じ楽しむ絵本です。筆で書かれた「書」のもつ生命力が写真と言葉とともに、生き生きと感じられます。初めて出会う「書の絵本」です。
※本稿は、gooブログ「レフティやすおの新しい生活を始めよう!」に転載して、gooブログ・テーマサロン◆左利き同盟◆に参加しています。
*2008.4.30追記* 左手書字について―
・『左利きを考える レフティやすおの左組通信』
「左手で字を書くために―レフティやすおの左利き私論4―」
・『左利きで生きるには 週刊ヒッキイhikkii』
「左手書字の研究―実技編」(2008年より第三土曜日発行分に掲載)
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