偕成社文庫版ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』と映画『80デイズ』
偕成社文庫版(小学校高学年以上向け)のジュール・ヴェルヌ『神秘の島』(全3巻)が、9月に出ました。
先に同文庫に収録されている『二年間の休暇』(上下全2巻―『十五少年漂流記』の名で有名な作品の原題の邦訳題名)、『海底二万里』(上中下全3巻)同様、大友徳明氏による完訳版で原書の挿絵付(ただし今回はすべて収録できなかったようです。)
ジュール・ヴェルヌ『神秘の島』の邦訳書は、児童書では福音館書店版のハードカバー全2巻本があります。
過去には、集英社コンパクトブックス版(上下全2巻)―この作品を原作とする海外ドラマがNHK教育テレビで放映された際に、集英社文庫〈ジュール・ヴェルヌ・コレクション〉に『ミステリアス・アイランド』上下全2巻で収録―や、抄訳で角川文庫版『謎の神秘島』(はじめて読んだのがこれ!)がありました。
福音館書店版はきれいな本で、原書の挿絵もすべて収録されているという立派なものですが、その分お値段も張る上活字も小さめで本も重く、気軽に読むにはちとつらい感じは否めませんでした。
こちらは、一冊が700円(本体のみ、税込735円)とお手ごろですし、ソフトカバーの軽装なので気軽にどこでも読めます。挿絵も楽しめて、子供だけでなく、ヴェルヌ・ファンの大人も十分堪能できそうです。解説も丁寧で新たな発見があって楽しめます。
巻頭、嵐に流される気球に乗った男たちのやり取り―今も昔読んだときのこの場面の印象が頭にくっきり残っています。
謎に満ちた無人島に漂着した男たちの物語。いわゆる漂流ものの傑作冒険小説です。
来年は没後100年ということですので、ここまできたら、今年復刻版が出た『グラント船長の子供たち』(7.2記事「復刊された『グラント船長の子供たち』」参照)ですが、これも偕成社文庫から大友先生の手で完訳版・原書挿絵付の本を出して欲しいものです。
そうすれば、『海底二万里』『グラント船長の子供たち』『神秘の島』と3部作が出揃うことになります。
ぜひ、よろしくお願いいたします。
ちなみに現在本屋さんでは、映画『80デイズ』の封切りにあわせて、原作の『八十日間世界一周』の文庫本が映画の帯付で平積みされていたり、関連でヴェルヌの他の既刊本も併置されています。この機会にぜひ一度ヴェルヌの作品をお読みください。
子供のときに『十五少年漂流記』ぐらいは読んだことがあるという方も少なくないでしょう。見てから読むか読んでから見るか、ぜひヴェルヌの"驚異の旅"の世界をお楽しみください。
そしてもっともっと多くの作品があります。どれもこれも非常におもしろい、そしてちょっと考えさせる部分もある名作ぞろいです。
せっかくの機会ですので、豊かな空想力にあふれるヴェルヌ作品のあれこれにふれてみてください。
*** 私のおすすめヴェルヌ作品(現行本から) ***
『八十日間世界一周』岩波文庫(原書挿絵多数入り)、創元SF文庫
『地底旅行』岩波文庫(原書挿絵多数入り)、創元SF文庫、(児童書)偕成社文庫
『海底二万里』岩波文庫(原書挿絵多数入り)、創元SF文庫、角川文庫(原書挿絵数葉入り)、(児童書)偕成社文庫
『二年間の休暇』/『十五少年漂流記』創元SF文庫(原著挿絵数葉入り)(児童書)偕成社文庫
『神秘の島』(児童書)偕成社文庫
*** 私のヴェルヌ作品お気に入りベスト3 ***
1 『アドリア海の復讐』(コンパクトブックス版はなくしたけど、文庫版を持っていますが、ぜひ復刊を! ヴェルヌ版『モンテクリスト伯』)
2 『地底旅行』(最初にふれたヴェルヌ作品、巨大きのこの森を歩む一行の挿絵が記憶に焼きついている!)
3 『悪魔の発明』(昔読んだきり。本をなくしたので、ぜひ重版を!)
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Comments
「悪魔の発明」(ジュール・ヴェルヌ)は今年2005年、復刊されるそうですよ。東京創元社のサイトを覗いてみてください。
Posted by: ハーディング42 | 2005.01.26 11:07 PM
ハーディング42様、うれしいニュースのコメントありがとうございます。
まさかハーディング42さんが拙文を読んでくださったとは、光栄です。
よく調べてらっしゃるんですね、ホントに。
synaさんのJules Verne Boardの掲示板で存じ上げています。
しかもこんなうれしいニュースまで知らせてくださるなんて、最高です。
東京創元社のサイト 今月の本の話題
[ジュール・ヴェルヌ歿後100年 映像の魔術師カレル・ゼマン『悪魔の発明』上映中]
>原作『悪魔の発明』(創元SF文庫)は、本年2月のSFフェアで復刊いたします。
なるほど、楽しみです!
今年は私なりにサイトでヴェルヌを扱ってみようと思っています。
たいしたことはできませんが、一人でもヴェルヌを読んでくださる人を増やしたいものです。
子供の頃に読んだきりの人や、子供の本のように考えて読まずにいる人もいますからね。
読書のおもしろさを知る入り口の意味でも、貴重な作家の一人ですし、読めば読むほど、違った意味で色々楽しめる作家ですから。
その節はまた遊びに来てやってください。
Posted by: レフティやすお | 2005.01.30 04:12 PM