『脳を探検する』久保田競
最近、本屋さんに行くと脳を鍛える大人のドリルといったものが色々並んでいます。
やれ計算が良いとか音読が良いとか、なかなかにぎやかです。
私は人間が古いので、そんな最新流行のものではなく、ちょっと前の本を紹介しましょう。
9.9の記事「脳の性差と非利き手使い」でもふれた久保田競『脳を探検する』(講談社 1998年刊)です。
脳を鍛えて、うまく使い、うまく生きてゆこう、という本です。
著者は、東大医学部、同大学院を経て、京大霊長類研究所所長をつとめ、サルの利き手なども研究された方で、著書には『手と脳』他、脳に関するものがいくつもあります。ブルーバックスのフロイド・E・ブーム他著『新・脳の探検』の監修にも関わっておられる学者です。
「新しい生き方をするのに脳をどう使えばよいか、その時に脳がどのように働いているかを書いたものです。新しい生き方を模索する時に、今までなら、人生読本、哲学書、宗教書、文学書を読むのが普通でした。今は、脳の本を読む時代なのだと、脳の研究をしてきた者として、確信しています。」
専門用語を極力減らした記述で読みやすく、楽しめました。
前半は、脳の働き、記憶のシステム、感情や心の発生など脳についての勉強。
そしていよいよ第4章「脳を鍛えれば老いや病に勝てる」が、気になります。
五感を使うことで脳を強くすることができるそうです。
まず一番は手。手は運動器官であるだけでなく感覚器官でもあるという。
「遊びながらできる手の訓練法」として、子供の場合は楽器のキーボード、組立ブロック、ジグソー・パズル、テレビ・ゲーム(特にテトリスは図形を扱うので良いという)、キャッチボールなど。
音楽は太鼓でリズムを作るなど、楽器を使うことで運動を通じて感情を表現するので脳をよく使うことになるそうです。
もちろん大人でもそうで、ダンスなどは、異性との会話も必要なので楽器の演奏だけよりもっと脳を使うことになり、ぼけ防止にも良いようです。
50歳を越えると男女ともに手の筋力の衰えが著しくなるそうで、これを鍛える必要があるそうです。ものをつかむ力、握力を鍛えることが大事だそうです。
そして両手を使う。両手を使うといっても、どちらの手でもお箸が使える、字が書けるということではなく、利き手は利き手らしく器用に、そうでない手もそれなりに使うということ。
現代は便利になって、片手だけ使って片手を遊ばせていることが多い。つとめて利き手でないほうの手を使うようにしましょう、という。
右利きの人は左手を補助として使うだけでなく、絵を書くなど頭の中の像を表現するときは左手を使う。また、感覚器官として左手を使う。大工さんがかんなかけをするときは、右手でかんなを使い、左手で削った面を触って確認する、というように。あるいは寄席の「紙きり」のように、両手をたくみに動かす芸など。
また脳力は体力が支えるという。
足元から鍛える。ジョギングやエクササイズ・ウォーキングなど。
さらに、五感のうち、目耳鼻、そして口(歯)を鍛える。意識してものを見る、聞く、嗅ぐ、そしてしゃべる(会話)。
からだに入ってくる外界の感覚情報を減らさないこと、外の世界への働きかけを減らさないこと、手も足も使う。筋力もスピードも落ちるがその分時間をかけて補う。
脳細胞は年々減ってゆくかもしれないが、細胞と細胞をつなぐシナプスは使えば使うほど増える、太くなる。より連絡の良い脳に変えることができる。
もう年だからと運動を減らしたり脳を使わないようにするのが「老化」の第一歩。「老け込み」気分を一掃するのが脳の活性に有効だそうです。
また、物忘れについては、「物事は忘れやすいものだ」ということを忘れないこと、忘れて失敗したことを必要以上に悔やまないことが、大事。名まえなどは大声に出して覚える、字に書いて、右脳と左脳を使って覚えるなど工夫すると良いそうです。
実行できることから始めたいものです。
私が気に入ったのは、目の見る運動として、スピードリーディングというもの。
「黙読で字面を追うだけでなく、読みすすめる行に指を当てて一定のスピードで動かしていき、その指先の字を目で追う方法」。
これだと目がギクシャクせず、直線を滑らかに追うことができ、スムース追跡トラッキングができるという。
*
―利き手に関する記述―
第2章 記憶の仕組みと創造の秘密
②右脳と左脳の独自性と共働のシステム
★左右の脳と利き手の関係 (ヒトにはなぜ利き手ができたか)
第4章 脳を鍛えれば老いや病に勝てる
①五感を使えば脳は強くなる
★遊びながらできる手の訓練法 (両手使いのすすめ)
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